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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1354532
審判番号 不服2018-5951  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-27 
確定日 2019-08-13 
事件の表示 特願2015-238308号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月19日出願公開、特開2016-83404号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月20日に出願した特願2012-34428号の一部を平成27年12月7日に新たな特許出願(特願2015-238308号)としたものであって、平成28年8月10日に手続補正書が提出され、同年12月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年1月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月17日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年1月25日付けで拒絶査定(拒絶査定の謄本の送達日:同年1月30日)がなされ、それに対して、同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、平成31年2月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月11日に意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Lは、本願発明を分説するために当審で付した)。

「A 遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段と、
B 演出表示手段と、
C 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段と、
D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを主制御手段からの演出コマンドにもとづいてセットするスケジュールデータに従って制御する演出制御手段と、
E 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段と、を備える遊技機において、
C1 前記第1音量調整手段と前記第2音量調整手段のうち、前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ、
D 前記演出制御手段は、
F 前記第1音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段と、
F1 前記演出音音量設定制御手段は、前記第1音量調整手段が操作された場合には直ちに前記演出音の音量を変更設定し、
G 前記演出表示手段が待機状態の表示態様とされている期間において、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段と、
H 前記演出音音量変更制御手段により変更されている状態において初期化条件が成立した場合に、前記演出音音量変更制御手段により変更されていた演出音の音量を遊技者の設定によらない初期音量として前記第1音量調整手段で調整されている音量に設定する演出音初期化制御手段と、
I 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を、前記演出音音量設定制御手段で設定される前記演出音の音量、および前記演出音音量変更制御手段で変更された前記演出音の音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段と、
J 前記異常報知期間が発生した際に前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータの進行を停止することなく継続した状態で音量を消音に変更設定し、当該異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるように、前記特定条件が成立していない場合においては前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定し、前記特定条件が成立していた場合においては前記第2音量調整手段の操作に応じて設定されていた音量に復旧設定することで、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音の音量が復旧設定される際に前記演出音が消音に変更設定されてから前記音生成用スケジュールデータが所定時間分進行した状態で復旧させる演出音進行継続制御手段と、
K 前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段を備え、
I 前記報知音音量設定制御手段は、
I1 前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態又は前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を小さく変更している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定し、
I2 前記異常報知期間において所定時間経過する前に新たな異常が発生した場合、新たな異常が発生する前の異常の発生から所定時間経過しても、新たな異常が発生してから所定時間経過していない場合には、消音にされた前記演出音の音量を復旧することなく、当該新たな異常の発生から所定時間経過するまで前記演出音を消音したままで当該演出音の進行を停止することなく継続する
L ことを特徴とする遊技機。」

第3 拒絶の理由
平成31年2月14日付けで当審が通知した拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1
・引用文献等 1-3

引用文献等一覧
1.特開2009-5735号公報
2.特開2005-288020号公報
3.特開2008-253577号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

ア 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2009-5735号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(ア)「【0019】
A.遊技機の装置構成:
A-1.装置前面側の構成:
図1は、本実施例の遊技機1の正面図である。」

(イ)「【0027】
中央装置26には、演出表示装置27が設けられている。演出表示装置27は、液晶画面を搭載しており、キャラクタ図柄や背景図柄などの種々の演出用図柄を変動停止表示することが可能となっている。」

(ウ)「【0035】
また、裏機構盤102の中央部付近においては、演出制御基板ケース114、アンプ基板ケース115、装飾駆動基板ケース116、サブ制御基板ケース117などが設けられている。演出制御基板ケース114は、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230を収容している。アンプ基板ケース115は、各種スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226を収容している。装飾駆動基板ケース116は、装飾用の各種LEDやランプを駆動する装飾駆動基板228を収容している。サブ制御基板ケース117は、これら演出制御基板230、アンプ基板226や装飾駆動基板228などを制御するサブ制御基板220を収容している。そして、サブ制御基板ケース117の前面には、各種スピーカ5y,6cから出力される音量を調節するための音量設定スイッチ300が設けられている。」

(エ)「【0075】
ここで、前述したように主制御基板200は、図10に示した遊技制御処理を実行する中で、遊技の演出に関する種々の制御コマンド(演出コマンド)をサブ制御基板220に向かって出力する。サブ制御基板220では、受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6c、各種LEDやランプ類4b?4fを用いて様々な演出を行っている。また、遊技機1において何らかの異常が発生した場合には、その旨が主制御基板200からサブ制御基板220に伝達され、サブ制御基板220は、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6c、各種LEDやランプ類4b?4fを用いてエラーの発生を報知するようになっている。そして、本実施例の遊技機1では、エラーの発生を効果音によって確実に報知するために、サブ制御基板220によって効果音のボリューム設定を変更する特別な処理が行われている。以下では、サブ制御基板220が効果音のボリューム設定を変更するために行う処理(ボリューム設定処理)の内容について詳しく説明する。」

(オ)「【0077】
ここで、音源IC224は、効果音出力チャンネルと呼ばれる複数のチャンネルを備えており、各チャンネルには、それぞれ異なる効果音データが予め割り当てられている。図12は、本実施例の遊技機1における効果音出力チャンネルの構成を概念的に示した説明図である。図示されているように、本実施例の音源IC224は、チャンネル0?7の全部で8チャンネルの効果音出力チャンネルを有している。このうち、チャンネル0?6の7チャンネルは、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)がそれぞれ割り当てられたチャンネル(演出用チャンネル)である。本実施例の遊技機1では、演出の態様(図柄変動演出、予告演出、リーチ演出、大当り演出など)に応じた7種類の効果音データ(演出音データ)が予め用意されており、それぞれ演出用チャンネル(チャンネル0?6)の何れかに割り当てられている。一方、チャンネル7は、演出に用いられることない(当審注:「ことない」は「ことのない」の誤記と認められる。)エラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたチャンネル(エラー報知用チャンネル)である。尚、ここでは、エラー報知用チャンネルは1チャンネルのみであるものとして説明するが、エラー報知の態様を増やしたい場合には、エラー報知用チャンネルを複数にして、それぞれ異なる効果音データ(エラー音データ)を割り当てることも可能である。また、本実施例の遊技機1では、演出用チャンネルの各チャンネルに割り当てる効果音データ(演出音データ)を演出態様毎に分けているが、これに限られるわけではなく、例えば、音の高さや、楽器の種類、あるいは楽曲などの違いによって分類しておいてもよい。」

(カ)「【0079】
効果音指定信号を受け取ると、音源IC224では、効果音指定信号に何れの効果音出力チャンネルが指定されているかに基づいて、サブ制御基板220に搭載された音源ROM225から効果音データの読み出しを行う。音源ROM225にはチャンネル数に対応する様々な効果音データが予め記憶されており、その中から指定されたチャンネルに割り当てられた効果音データを読み出して、アンプ基板226に向かって効果音データ信号を出力する。こうして出力された効果音データ信号はアンプ基板226で増幅されて、スピーカ5y,6cから効果音が出力される。尚、効果音指定信号には同時に複数のチャンネルを指定することも可能である。このような効果音指定信号を受け取った音源ICは、指定された複数のチャンネルの各々に割り当てられた効果音データを音源ROM225から読み出して、複合効果音データ信号をアンプ基板226に向けて出力する。これにより、種類の異なる複数の効果音を組み合わせて出力することも可能である。ただし、本実施例の遊技機1では、演出用チャンネル(チャンネル0?6)とエラー報知用チャンネル(チャンネル7)とを明確に区別しており、効果音指定信号に演出用チャンネルとエラー報知用チャンネルとを同時に指定しないようになっている。また、音源IC224から出力された効果音データ信号はアンプ基板226で増幅されて、スピーカ5y,6cから音波として出力されることから、本実施例の第1スピーカ5yおよび第2スピーカ6cは、本発明の「効果音出力手段」の一態様を構成している。」

(キ)「【0080】
ここで、音源IC224がアンプ基板226に向かって出力する効果音データ信号の出力レベル(効果音のボリューム)は、サブ制御基板220のCPU221からのボリューム設定信号に基づいて設定される。また、効果音のボリュームは、効果音出力チャンネルの各チャンネルに対して個別に設定されるボリューム(チャンネルボリューム)と、全てのチャンネルに対して一律に設定されるボリューム(トータルボリューム)とから構成されている。本実施例の遊技機1では、チャンネルボリュームおよびトータルボリュームは、それぞれ4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)に設定可能であり、チャンネルボリュームは、トータルボリュームの設定の範囲内で設定に応じて4段階に切り換わる。従って、トータルボリュームの設定が「消音」であると、チャンネルボリュームの設定にかかわらず、効果音は全て消音されることになる。また、チャンネルボリュームの設定が「消音」であれば、トータルボリュームの設定が「大」音量であっても、効果音は消音される。
【0081】
そして、サブ制御基板220のCPU221は、音源IC224に向かって出力するボリューム設定信号によって、チャンネルボリュームあるいはトータルボリュームの何れかの設定変更を指示するようになっている。このうち、チャンネルボリュームの設定変更については、主制御基板200から演出コマンドを受け取ったCPU221が演出の進行に合わせて適宜指示しており、例えば、効果音(演出音)をフェードアウトあるいはフェードインさせるなど、遊技状況に応じて効果音の音量(ボリューム)を変更することが可能となっている。また、図11に示されているように、サブ制御基板220のCPU221には、音量設定スイッチ300が接続されており、CPU221は、この音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームの設定を決定して、変更を指示するようになっている。尚、トータルボリュームの設定および各チャンネルボリュームの設定を指示する処理はサブ制御基板220のCPU221によって行われていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「全体音量設定手段」および「個別音量設定手段」の一態様を構成している。」

(ク)「【0089】
こうして音量設定スイッチ300の状態に基づくトータルボリュームの設定を指示するボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力したら、ボリューム設定処理の先頭に戻って、再び電源投入時か否かを判断する(S200)。当然ながら、2回目以降のS200の処理では必ず「no」と判断されるので、続いて、演出の進行に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(S206)。前述したように、主制御基板200から演出コマンドを受け取ったサブ制御基板220のCPU221は、演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、演出の進行に合わせて適宜変更するようになっている。そして、演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には(S206:yes)、まず、各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)を、サブ制御基板220に搭載されたRAM222(図11参照)の所定領域に記憶する(S208)。ここで、各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)、すなわち変更後の音量は、サブ制御基板220のCPU221の制御下で行われる種々の演出パターンに応じて予め設定されている。また、音量の変更時期も演出パターンに応じて予め設定されている。このため、サブ制御基板220のCPU221は、主制御基板200から受信した演出コマンドを解析することで、その演出コマンドに対応する演出の実行時における音量の変更時期や変更後の音量を特定することができる。尚、演出の進行に合わせて各チャンネルボリュームを個別に変更する処理はサブ制御基板220のCPU221が行っていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「個別音量変更手段」の一態様を構成している。また、変更後のチャンネルボリュームの設定をRAM222に記憶しておくことから、本実施例のサブ制御基板220に搭載されたRAM222は、本発明の「個別音量記憶手段」の一態様を構成している。
【0090】
こうして各チャンネルボリュームの新たな設定を記憶したら、サブ制御基板220のCPU221は、エラーの発生を報知するための効果音(以下、エラー報知音という)の出力中であるか否かを判断する(S210)。本実施例の遊技機1では、音源IC224がアンプ基板226に向けて効果音データ信号を出力するのに同期させて、効果音の出力中である旨を示す信号(出力通知信号)を音源IC224からCPU221に向かって出力するようになっている。CPU221では、この出力通知信号に基づいて、効果音の出力中であるか否かを判断可能となっている。そして、エラー報知音の出力中ではない場合は(S210:no)、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームを、S208で記憶した新たな設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力した後(S212)、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する。尚、サブ制御基板220のCPU221がボリューム設定信号を出力することにより、演出用チャンネルのチャンネルボリュームの新たな設定(変更後の音量)を音源IC224に指示していることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「個別音量反映手段」の一態様を構成している。
【0091】
これに対して、エラー報知音の出力中であった場合は(S210:yes)、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を変更する旨のボリューム設定信号を出力することなく、すなわち、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を維持したまま、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する。
【0092】
以上では、演出の進行に伴うボリューム設定の変更を行う場合(S206:yes)について説明したが、演出の進行に伴うボリューム設定の変更を行わない場合には(S206:no)、次いで、エラーの発生に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(図15のS214)。前述したように、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、主制御基板200からエラー報知コマンドが出力される。本実施例の遊技機1では、例えば、前述した大入賞口31dが閉鎖中であるにもかかわらず大入賞口スイッチ31sで遊技球が検出されたことによって、大入賞口31dに異常が発生したものと判断された場合(大入賞口エラー)や、前述した下皿満杯スイッチ6sからの検出信号によって、下皿6が満杯状態になっている異常が発生したと判断された場合(下皿エラー)等に、エラー報知コマンドが主制御基板200から出力されるようになっている。そして、このコマンドを受け取ったサブ制御基板220のCPU221は、エラー発生に伴うボリューム設定の変更を行うと判断して(S214:yes)、演出用チャンネル(チャンネル0?6)の全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定する旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S216)。
【0093】
次いで、サブ制御基板220のCPU221は、エラー時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S218)。図17は、本実施例の遊技機1で用いられるエラー時用のボリュームテーブルを例示した説明図である。図示されているように、エラー時用のボリュームテーブルでは、音量設定スイッチ300の全ての状態(スイッチ0?3)に対して、「大」音量が対応付けられている。従って、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定するようになっている。こうしてトータルボリュームを「大」音量に設定するボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力したら、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する。
【0094】
以上、エラー発生に伴うボリューム設定の変更を行う場合(S214:yes)について説明したが、エラーの発生に伴うボリューム設定の変更を行わない場合は(S214:no)、次に、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(S220)。本実施例の遊技機1では、遊技ホールの管理者(店員)等によってエラーが解除されると、その旨を示す制御コマンド(エラー解除コマンド)が主制御基板200から出力されるようになっており、サブ制御基板220のCPU221は、このコマンドに基づいてエラー報知の終了時期を判断することができる。尚、CPU221がエラー報知の効果音指定信号を音源IC224に向かって出力するのと同時にタイマをセットしておき、所定時間の経過後にエラー報知を終了するようにしてもよい。
【0095】
そして、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は(S220:yes)、通常時用のボリュームテーブル(図16)を参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S222)。そして、エラー発生に伴い「消音」とされていた演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を「大」音量(電源投入時の状態)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し(S223)、更に、この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、S208で記憶しておいた設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S224)。前述したように、サブ制御基板220のCPU221は、演出の進行に合わせてボリューム変更を行う場合、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)を記憶するようになっている(図14のS208)。そして、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、CPU221は、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっている(S210:no)。そのため、音源IC224では、エラー報知音の出力中にチャンネルボリュームの設定を変更することはなく、従前の設定(エラー報知音の出力中はすべて「消音」)を維持している。そこで、エラー報知音の出力が終了したら、CPU221は、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する。こうしてトータルボリュームおよびチャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力すると、ボリューム設定処理の先頭に戻って、再びS200以降の一連の処理を実行する。尚、エラー報知の終了に伴って、各チャンネルボリュームを、RAM222に記憶しておいた設定に変更する処理はサブ制御基板220のCPU221によって行われていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「個別音量回復手段」の一態様を構成している。
【0096】
以上では、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合(S220:yes)について説明したが、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行わない場合には(S220:no)、今度は、音量設定スイッチ300の操作に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(S226)。前述したように、本実施例の音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており(図5参照)、遊技ホールの管理者(店員)は、この音量設定スイッチ300を操作してスイッチ0?3(図13参照)の何れの状態にしておくかによって、トータルボリュームの設定を選択できるようになっている(図16参照)。また、このような音量設定スイッチ300の操作は、遊技機1に電源を投入した後においても可能である。そして、電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされていない場合には、音量設定スイッチ300の操作に伴うボリューム設定の変更を行わないと判断して(S226:no)、そのままボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を繰り返す。
【0097】
一方、電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、音量設定スイッチ300の操作に伴うボリューム設定の変更を行うと判断して(S226:yes)、次いで、エラー報知音の出力中であるか否かを判断する(S228)。そして、エラー報知音の出力中ではない場合は(S228:no)、通常時用のボリュームテーブル(図16)を参照しながら、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S230)。その後、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を再び実行する。
【0098】
これに対して、エラー報知音の出力中であった場合は(S228:yes)、エラーの発生に伴ってS218で決定したトータルボリュームの設定(本実施例では、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず「大」音量。図17参照)を維持するために、ボリューム設定信号を出力することなく、そのままボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の上述した一連の処理を繰り返す。尚、本実施例のエラー時用のボリュームテーブル(図17)では、音量設定スイッチ300の全ての状態(スイッチ0?3)に対して、「大」音量が対応付けられているが、各状態に対して「消音」以外の音量が対応付けられていれば、エラー時用のボリュームテーブルはこれに限られるものではない。そして、スイッチ0?3の各状態に対して、「消音」以外の音量をそれぞれ対応付けておく場合には、S228で「no」と判断されたら、エラー時用のボリュームテーブルを参照しながら、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力するようにしてもよい。」

(ケ)「【0106】
そして、遊技機1にエラーが発生すると、エラー報知用チャンネルが指定される。前述したように、音源IC224では、エラー報知用チャンネル(チャンネル7)の指定を受けると、エラー報知用チャンネルに割り当てられた効果音データ(エラー報知音データ)を音源ROM225から読み出して、アンプ基板226に向かって効果音データ信号を「大」音量で出力する。この信号はアンプ基板226で増幅されて、スピーカ5y,6cからエラー報知音が出力される。その後、エラーが解除されると、エラー報知用チャンネルの指定が解かれ、音源IC224は効果音データ信号の出力を停止するので、エラー報知音は出力されなくなる。
【0107】
以上に説明したように、本実施例の遊技機1では、何らかのエラーが発生すると、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームが「大」音量に設定され、演出用チャンネル(チャンネル0?6)のチャンネルボリュームの全てが「消音」に設定されるとともに、チャンネルボリュームが「大」音量に設定されたエラー報知用チャンネル(チャンネル7)が指定されるようになっている。このため、演出の進行中にエラーが発生しても、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量(トータルボリューム「大」、チャンネルボリューム「大」)で出力される。その結果、遊技機1にエラーが発生した旨を効果音によって確実に報知することが可能となる。この点について、さらに補足して説明する。」

(コ)「【0111】
もちろん、エラー報知の終了と同時に演出の進行を確認し、その結果に応じて演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの変更を直ぐに演出用チャンネルに反映させる場合には、進行中の演出にあった音量で演出音の出力を再開することが可能である。しかし、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームは、常に(連続的に)変更されているわけではなく、演出の進行に伴って演出音の音量を変化(例えば、フェードアウト)させるときにだけ変更される。このため、エラー報知の終了後しばらくの間、演出の進行に伴う演出音の音量変化がない場合には、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定が変更される(新たな設定に変更される)ことはなく、「消音」のまま維持される。結果として、エラー報知を終了しているにもかかわらず、演出音の出力を再開できないということが起こり得る。そこで、エラー報知音の出力中(演出用チャンネルのチャンネルボリュームの全てが「消音」に設定されている間)も、演出の進行に合わせて変更される各チャンネルボリュームの変更後の設定を記憶しておき、エラー報知音の出力終了と同時に、記憶しておいた設定を各チャンネルボリュームに反映させるようにすれば、エラー報知を終了した直後から、進行中の演出に合った適切な音量で演出音の出力を再開することができる。その結果、異常が解消された遊技機1を円滑かつ速やかに通常時の状態へと復帰させることが可能となる。」

イ 以上の記載事項から、引用文献1には、「実施例」を中心に、次の技術的事項が記載されているものと認められる(見出し(a)?(l)は、本願発明の分説A?Lに対応させて付与した)。

(a)記載事項(カ)から、スピーカ5y,6cから効果音が出力されることが、記載事項(ケ)(【0106】)から、遊技機1にエラーが発生すると、スピーカ5y,6cからエラー報知音が出力されることが、また、記載事項(オ)から、演出の態様に応じた効果音データ(演出音データ)があることが、それぞれ記載されている。これらのことからすると、引用文献1には、遊技機1にエラーが発生すると出力するエラー報知音と、演出に関する演出音とを効果音として出力するスピーカ5y、6cが記載されている。

(b)記載事項(イ)から、演出表示装置27が記載されている。

(c)記載事項(ウ)から、スピーカ5y,6cから出力される音量を調節するための音量設定スイッチ300が記載されている。

(d)記載事項(ウ)から、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230と、スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226とを制御するサブ制御基板220が記載されている。また、記載事項(エ)から、主制御基板200は、遊技の演出に関する種々の制御コマンド(演出コマンド)をサブ制御基板220に向かって出力し、サブ制御基板220では、受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6cを用いて様々な演出を行っていることが記載されている。これらのことからすると、引用文献1には、主制御基板200から受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230と、スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226とを制御して様々な演出を行うサブ制御基板220が記載されている。

(e、l)記載事項(ア)から、遊技機1が記載されている。

(c1)記載事項(ク)(【0096】)から、音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており、遊技ホールの管理者(店員)は、この音量設定スイッチ300を操作することが記載されている。

(f)記載事項(キ)から、効果音のボリュームは、効果音出力チャンネルの各チャンネルに対して個別に設定されるボリューム(チャンネルボリューム)と、全てのチャンネルに対して一律に設定されるボリューム(トータルボリューム)とから構成されており、チャンネルボリュームおよびトータルボリュームは、それぞれ4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)に設定可能であり、サブ制御基板220のCPU221は、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームの設定を決定することが記載されている。これらのことからすると、引用文献1には、効果音のボリュームのうちトータルボリュームについて、音量設定スイッチ300の状態に基づく4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)の設定を決定するサブ制御基板220のCPU221が記載されている。

(f1)記載事項(ク)(【0097】)から、電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、エラー報知音の出力中ではない場合は、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力することが記載されている。

(i)記載事項(ク)(【0092】-【0094】)から、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定する、サブ制御基板220のCPU221が記載されている。

(j)記載事項(オ)から、音源IC224は、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)が割り当てられた演出用チャンネルと、演出に用いられることのないエラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたエラー報知用チャンネルを有していることが記載されている。また、記載事項(ク)(【0089】)から、演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には、種々の演出パターンに応じて音量の変更時期と共に予め設定されている各チャンネルボリュームの変更後の設定を、RAM222に記憶する(S208)ことが記載されている。さらに、記載事項(ク)(【0092】)から、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、サブ制御基板220のCPU221は、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定することが、記載事項(ク)(【0095】)から、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、CPU221は、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、音源IC224では、エラー報知音の出力中はすべて「消音」を維持していることが、記載事項(ク)(【0095】)から、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、また、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、S208で記憶しておいた設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力することが、記載事項(ク)(【0094】、【0095】)から、エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、CPU221は、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、こうしてトータルボリュームおよびチャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力することが、記載事項(コ)から、エラー報知の終了と同時に演出の進行を確認し、進行中の演出にあった音量で演出音の出力を再開することが、それぞれ記載されている。これらのことからすると、引用文献1には、音源IC224は、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)が割り当てられた演出用チャンネルと、演出に用いられることのないエラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたエラー報知用チャンネルを有し、サブ制御基板220のCPU221は、演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には、種々の演出パターンに応じて音量の変更時期と共に予め設定されている各チャンネルボリュームの変更後の設定をRAM222に記憶し、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定し、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、音源IC224では、エラー報知音の出力中はすべて「消音」を維持しており、エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、こうしてトータルボリュームおよびチャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力する、サブ制御基板220のCPU221が記載されている。

(k)記載事項(エ)から、サブ制御基板220では、各種スピーカ5y,6cを用いて様々な演出を行い、また、エラーの発生を報知するようになっていることが記載されている。また、上記認定事項(a)を踏まえ、引用文献1には、演出音とエラー報知音とをスピーカ5y,6cから出力させるサブ制御基板220が記載されている。

(i1)記載事項(ケ)(【0107】)から、何らかのエラーが発生すると、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームが「大」音量に設定され、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量で出力されることが記載されている。

ウ 以上の記載事項(ア)?(コ)及び認定事項(a)?(l)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている(分説a?lは、本願発明の分説A?Lに対応させて付与した)。
「a 遊技機1にエラーが発生すると出力するエラー報知音と、演出に関する演出音とを効果音として出力するスピーカ5y、6cと、
b 演出表示装置27と、
c スピーカ5y,6cから出力される音量を調節するための音量設定スイッチ300と、
d 主制御基板200から受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230と、スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226とを制御して様々な演出を行うサブ制御基板220と、
e を備える遊技機1において、
c1 音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており、遊技ホールの管理者(店員)は、この音量設定スイッチ300を操作し、
d サブ制御基板220は、
f 効果音のボリュームのうちトータルボリュームについて、音量設定スイッチ300の状態に基づく4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)の設定を決定するサブ制御基板220のCPU221と、
f1 電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、エラー報知音の出力中ではない場合は、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、
i 遊技機1に何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定する、サブ制御基板220のCPU221と、
j 音源IC224は、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)が割り当てられた演出用チャンネルと、演出に用いられることのないエラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたエラー報知用チャンネルを有し、サブ制御基板220のCPU221は、演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には、種々の演出パターンに応じて音量の変更時期と共に予め設定されている各チャンネルボリュームの変更後の設定をRAM222に記憶し、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定し、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、音源IC224では、エラー報知音の出力中はすべて「消音」を維持しており、エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、こうしてトータルボリュームおよびチャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力する、サブ制御基板220のCPU221と、
k 演出音とエラー報知音とをスピーカ5y,6cから出力させるサブ制御基板220とを備え、
i1 何らかのエラーが発生すると、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームが「大」音量に設定され、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量で出力される、
l 遊技機1。」

エ 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2005-288020号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(ア)「【0041】
サブ統合基板90は、主制御装置30から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御装置40、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、各制御部位に送信する。そして、音制御用のデータに基づいて音LSIを作動させることによってスピーカ5からの音声出力を制御し、同様にランプ制御用のデータに基づいてランプドライバを作動させることによって特別図柄保留記憶LED17、普通図柄保留記憶LED、普通図柄用LED29、各種ランプ等を制御する。このように構成することで、例えば図柄変動における音、ランプ、図柄表示装置15の演出タイミングの同調をはかることができる。このことから、サブ統合基板90はランプ・音声制御装置と言うこともできる。
【0042】
また、サブ統合基板90は、操作ボタン75の操作信号が入力される。詳細は後述するが、サブ統合基板90は、操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更するので、音声制御装置に該当する。


(イ)「【0053】
次に、操作ボタン75の操作と音量変更等と関係を説明する。
まず図4を参照してサブ統合基板90が実行する初期音量設定処理を説明する。この初期音量設定処理においては、サブ統合基板90は主制御装置30からの電源投入時であることを示す信号が入力されると(S1:YES)、音量変更処理により、スピーカ5から出力する音声の音量を初期音量に設定する(S3)。初期音量は、サブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチ(図示略)によって、遊技店が設定できる。
【0054】
また、電源投入時以外でも(S1:NO)、一定期間遊技が行われていないときには(S2:YES)、音量変更処理で初期音量に設定する(S3)。遊技が行われているか否かは主制御装置30が判断し、それを示す信号が主制御装置30からサブ統合基板90に与えられる。本実施例においては、主制御装置30は、一定時間以上にわたって始動入賞が発生していなければ遊技が行われていないと判断する構成であるが、例えばタッチ信号を主制御装置30に入力し、これに基づいて遊技の実行、不実行を判断する構成とできる。」

(ウ)「【0056】
このパチンコ機50においては、遊技状態や図柄の変動状態等に応じて、遊技者が操作ボタン75を操作することで音量を調整できる音量調節可能期間(当審注:「音量調節可能期間」は「音量調整可能期間」の誤記と認められる。)がある。そのための音量調整処理を図5に従って説明する。」

(エ)「【0109】
設定時間以上にわたって遊技が行われていない場合には音量を初期音量にするので、前の遊技者が音量を大きくしたままで立ち去った後に遊技を開始した人が、突然大きな音が流れて驚いたり、或いは音量を小さくしてあったために音が聞こえなくて故障と誤解したりする不具合を防止できる。」

(オ)「【0114】
また、実施例では音量調整可能期間が特定変動の特定時以外の時であるが、デモ表示されている期間のみ音量調整が可能になるといった構成でもよい。上述したように変動表示中に音量調整する場合であると、音量表示、図柄、遊技球などを見なければならず遊技に集中できなくなってしまうおそれがあるが、デモ表示中であれば音量調整のみ行なえばよいので、通常中は遊技に集中できる。」

オ 以上の記載事項(ア)?(オ)を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている(分説e、c1、g、hは、本願発明の分説E、C1、G、Hに対応させて付与した)。

「e、c1 スピーカ5から出力する音声は図柄表示装置15の演出タイミングの同調をはかることができるものであり、遊技店がスピーカ5から出力する音声の音量を初期音量に設定するサブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチと、ホール用音量調整スイッチとは異なる音量調整可能期間に遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75を備えるパチンコ機50において(【0041】、【0053】、【0056】、【0114】)、
g 音量調整可能期間がデモ表示されている期間のみであり、操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更するサブ統合基板90と(【0114】、【0042】)、
h 一定期間遊技が行われていないときには、音量を初期音量にすることで、前の遊技者が音量を大きくした或いは音量を小さくしたことによる不具合を防止できるサブ統合基板90(【0054】、【0109】)、を備えたパチンコ機50(【0056】)。」

カ 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2008-253577号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(ア)「【0079】
計時部603は、エラーコマンド記憶部602によってエラーコマンドが記憶されるごとに、記憶されたエラーコマンドが受信されてからの経過時間を、記憶されたエラーコマンドごとに計時する。複数のエラーコマンドが順番に受信された場合、計時部603は、各エラーコマンドが受信された時点からの経過時間をそれぞれ計時する。計時部603は、たとえば、上記の演出制御部202におけるCPU241が備えるタイマ機能によって実現することができる。」

(イ)「【0081】
エラー報知制御部604は、エラーコマンドごとに設定された報知時間、音声出力部277を制御して、エラーコマンドに基づく音声によるエラー報知を継続しておこなう。ここで、報知時間とは、エラーコマンド受信部601によってエラーコマンドが受信されてから、あらかじめ定められた所定時間が経過するまで、の時間である。」

(ウ)「【0113】
また、本実施の形態の遊技機によれば、エラーコマンドを受信した際にすでにエラー報知をおこなっている他のエラーコマンドの方が、受信されたエラーコマンドよりも優先順位が高いあるいは同じである場合、エラー報知の実行中のエラーコマンドに基づく報知が終了した時点で、後から受信されたエラーコマンドの報知時間の計時中であれば、当該受信エラーコマンドに基づく報知を開始し、RAM213において計時される時間が満了するまでの間、後から受信されたエラーコマンドに基づく報知を継続しておこなうことができる。」

キ 以上の記載事項(ア)?(ウ)を総合すると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「エラーコマンドごとに設定された報知時間、音声出力部277を制御して、エラーコマンドに基づく音声によるエラー報知を継続しておこなうエラー報知制御部604を備え(【0081】)、
前記報知時間は、エラーコマンド受信部601によってエラーコマンドが受信されてから、あらかじめ定められた所定時間が経過するまでの時間であり(【0081】)、
複数のエラーコマンドが順番に受信された場合、計時部603は、各エラーコマンドが受信された時点からの経過時間をそれぞれ計時し(【0079】)、
エラーコマンドを受信した際にすでにエラー報知をおこなっている他のエラーコマンドの方が、受信されたエラーコマンドよりも優先順位が高いあるいは同じである場合、エラー報知の実行中のエラーコマンドに基づく報知が終了した時点で、後から受信されたエラーコマンドの報知時間の計時中であれば、当該受信エラーコマンドに基づく報知を開始し、RAM213において計時される時間が満了するまでの間、後から受信されたエラーコマンドに基づく報知を継続しておこなうことができる遊技機(【0113】)。」

第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する(見出し(a)?(l)は、本願発明の分説A?Lに対応させて付与した)。

(a、b、c、l)引用発明1の「スピーカ5y、6c」、「演出表示装置27」、「音量設定スイッチ300」及び「遊技機1」は、それぞれ本願発明の「音声出力手段」、「演出表示手段」、「第1音量調整手段」及び「遊技機」に相当する。

(d)引用発明1のdの「サブ制御基板220」が「演出表示装置27を駆動する演出制御基板230と、スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226とを制御」することは、本願発明のDの「演出制御手段」が「前記音声出力手段と前記演出表示手段とを」「制御する」ことに相当する。また、引用発明1のdに「主制御基板200から受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し」・・・「制御して様々な演出を行うサブ制御基板220」とあることからすると、引用発明1の「具体的な演出の態様」は、「様々な演出を行う」ように、「演出表示装置27を駆動する演出制御基板230と、スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226とを制御する」ためのものであり、本願発明の「前記音声出力手段と前記演出表示手段とを」「制御する」ための「スケジュールデータ」に相当する。
そうすると、引用発明1の「d 主制御基板200から受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230と、スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226とを制御して様々な演出を行うサブ制御基板220」は、本願発明の「D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを主制御手段からの演出コマンドにもとづいてセットするスケジュールデータに従って制御する演出制御手段」に相当する。

(c1)引用発明1のc1の「音量設定スイッチ300」は、「遊技ホールの管理者(店員)は、この音量設定スイッチ300を操作」し、「遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されて」いることから、遊技者が操作することができないものとされていることは明らかである。
したがって、引用発明1の「c1 音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており、遊技ホールの管理者(店員)は、この音量設定スイッチ300を操作し」との点は、本願発明の「C1 前記第1音量調整手段と前記第2音量調整手段のうち、前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ」との点と、「前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ」との点で、共通する。

(f)引用発明1の「f 効果音のボリュームのうちトータルボリュームについて、音量設定スイッチ300の状態に基づく4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)の設定を決定するサブ制御基板220のCPU221」は、本願発明の「F 前記第1音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段」に相当する。

(f1)引用発明1の「f1 電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、エラー報知音の出力中ではない場合は、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力」することは、エラー報知音の出力中でなければ直ちに行うものといえるから、本件発明の「F1 前記演出音音量設定制御手段は、前記第1音量調整手段が操作された場合には直ちに前記演出音の音量を変更設定」することに相当する。

(i)引用発明1の「i 遊技機1に何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定する、サブ制御基板220のCPU221」は、本願発明の「I 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を、前記演出音音量設定制御手段で設定される前記演出音の音量、および前記演出音音量変更制御手段で変更された前記演出音の音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段」と、「I’ 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を、前記演出音音量設定制御手段で設定される前記演出音の音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段」である点で、共通する。

(j)引用発明1の「種々の演出パターンに応じて音量の変更時期と共に予め設定されている各チャンネルボリューム」の「設定」は、「演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合」に用いられるのであるから、上記対比(d)で示した点を踏まえ、本願発明の「スケジュールデータの音生成用スケジュールデータ」に相当する。また、引用発明1において、「演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には、各チャンネルボリュームの変更後の設定をRAM222に記憶」することは、本願発明の「前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータ」が「進行」することに相当する。そして、引用発明1において、「遊技機1に何らかのエラーが発生すると、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定し、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになって」いることは、本願発明において、「前記異常報知期間が発生した際に前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータの進行を停止することなく継続した状態で音量を消音に変更設定」することに相当する。
また、引用発明1の「エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定」することは、上記対比(f)で示した点を踏まえ、本願発明の「異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるように、前記特定条件が成立していない場合においては前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定し、前記特定条件が成立していた場合においては前記第2音量調整手段の操作に応じて設定されていた音量に復旧設定すること」と、「異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音が前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定」する点で共通する。
さらに、引用発明1の「エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)」は、「エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておく」のであるから、本願発明の「前記演出音が消音に変更設定されてから前記音生成用スケジュールデータが所定時間分進行した状態」に相当する。そうすると、引用発明1の「演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し」、「チャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力する」ことは、本願発明の「前記異常報知期間に亘って消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音の音量が復旧設定される際に前記演出音が消音に変更設定されてから前記音生成用スケジュールデータが所定時間分進行した状態で復旧させる」ことに相当する。
以上のことから、引用発明1の「j 音源IC224は、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)が割り当てられた演出用チャンネルと、演出に用いられることのないエラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたエラー報知用チャンネルを有し、サブ制御基板220のCPU221は、演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には、種々の演出パターンに応じて音量の変更時期と共に予め設定されている各チャンネルボリュームの変更後の設定をRAM222に記憶し、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定し、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、音源IC224では、エラー報知音の出力中はすべて「消音」を維持しており、エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、こうしてトータルボリュームおよびチャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力する、サブ制御基板220のCPU221」は、本願発明の「J 前記異常報知期間が発生した際に前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータの進行を停止することなく継続した状態で音量を消音に変更設定し、当該異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるように、前記特定条件が成立していない場合においては前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定し、前記特定条件が成立していた場合においては前記第2音量調整手段の操作に応じて設定されていた音量に復旧設定することで、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音の音量が復旧設定される際に前記演出音が消音に変更設定されてから前記音生成用スケジュールデータが所定時間分進行した状態で復旧させる演出音進行継続制御手段」と「J’ 前記異常報知期間が発生した際に前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータの進行を停止することなく継続した状態で音量を消音に変更設定し、当該異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音が前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定することで、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音の音量が復旧設定される際に前記演出音が消音に変更設定されてから前記音生成用スケジュールデータが所定時間分進行した状態で復旧させる演出音進行継続制御手段」である点で、共通する。

(k)引用発明1の「演出音とエラー報知音とをスピーカ5y,6cから出力させるサブ制御基板220」は、本願発明の「前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段」に相当する。

(i1)引用発明1の「i1 何らかのエラーが発生すると、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームが「大」音量に設定され、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量で出力される」ことと、本願発明の「I1 前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態又は前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を小さく変更している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」することとは、「I1’ 前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」する点で、共通する。

上記(a)?(l)によれば、本願発明と引用発明1とは、次の7点で相違し、その余の点で一致する。

[相違点1](構成E、C1)
本願発明は「前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段」を備えると共に、「前記第1音量調整手段」が「前記第1音量調整手段と前記第2音量調整手段のうち」であるという構成を備えるのに対して、
引用発明1は、そのような構成でない点。

[相違点2](構成G)
本願発明は「前記演出表示手段が待機状態の表示態様とされている期間において、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段」を備えるのに対して、
引用発明1は、そのような構成でない点。

[相違点3](構成H)
本願発明は「前記演出音音量変更制御手段により変更されている状態において初期化条件が成立した場合に、前記演出音音量変更制御手段により変更されていた演出音の音量を遊技者の設定によらない初期音量として前記第1音量調整手段で調整されている音量に設定する演出音初期化制御手段」を備えるのに対して、
引用発明1は、そのような構成でない点。

[相違点4](構成I)
「異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を、前記演出音音量設定制御手段で設定される前記演出音の音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段」に関して、
本願発明は、「前記演出音音量変更制御手段で変更された前記演出音の音量」にも「依存させることなく設定する」のに対し、
引用発明1は、そのような構成でない点。

[相違点5](構成J)
「前記異常報知期間が発生した際に前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータの進行を停止することなく継続した状態で音量を消音に変更設定し、当該異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音が前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定することで、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定され前記音生成用スケジュールデータに従って進行が継続されている前記演出音の音量が復旧設定される際に前記演出音が消音に変更設定されてから前記音生成用スケジュールデータが所定時間分進行した状態で復旧させる演出音進行継続制御手段」に関して、
本願発明は、「前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるように、前記特定条件が成立していない場合においては前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定し、前記特定条件が成立していた場合においては前記第2音量調整手段の操作に応じて設定されていた音量に復旧設定する」のに対して、
引用発明1は、「第2音量調整手段」に相当する手段がなく、そのような構成でない点。

[相違点6](構成I1)
「前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」する点に関して、
本願発明は「前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を小さく変更している状態であっても」「当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」するのに対して、
引用発明1は、「第2音量調整手段」及び「演出音音量変更制御手段」に相当する手段がないため、そのような状態のときに、設定する構成でない点。

[相違点7](構成I2)
本願発明は「前記異常報知期間において所定時間経過する前に新たな異常が発生した場合、新たな異常が発生する前の異常の発生から所定時間経過しても、新たな異常が発生してから所定時間経過していない場合には、消音にされた前記演出音の音量を復旧することなく、当該新たな異常の発生から所定時間経過するまで前記演出音を消音したままで当該演出音の進行を停止することなく継続する」のに対して、
引用発明1は、そのような構成であるのか不明である点。

第6 判断
以下、各相違点について、検討する。

ア 相違点1?3について
相違点1?3は、関連するのでまとめて検討する。
引用発明2の「スピーカ5」、「サブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチ」、「遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75」、「音量を変更するサブ統合基板90」、「一定期間遊技が行われていないとき」及び「音量を初期音量にするサブ統合基板90」は、本願発明の「音声出力手段」、「第1音量調整手段」、「第2音量調整手段」、「演出音音量変更制御手段」、「初期化条件が成立したとき」及び「演出音初期化制御手段」に相当する。
また、引用発明2は「スピーカ5から出力する音声は図柄表示装置15の演出タイミングと同期をはかることができるもの」であり、演出に関する音声が出力されているといえるから、引用発明2の「音声」は演出音であるといえる。
そして、引用発明2のgの「操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更するサブ統合基板90」は、「ホール用音量調整スイッチ」(第1音量調整手段)の操作により設定された音量を変更することは明らかである。
また、引用発明2のe、c1には「遊技店がスピーカ5から出力する音声の音量を初期音量に設定するサブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチ」と記載されているから、引用発明2のhの「音量を初期音量にするサブ統合基板90」の「初期音量」は、遊技者が設定できない「ホール用音量調整スイッチ」により設定される音量である。
さらに、引用発明2のhに「音量を初期音量にすることで、前の遊技者が音量を大きくした或いは音量を小さくしたことによる不具合を防止できる」とあることから、引用発明2のhの「一定期間遊技が行われていないときには、音量を初期音量にすること」は、「遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75」により音量が変更されている状態におけるものである。
これらのことから、引用発明2は、相違点1?3に係る本願発明の構成を備えるといえる。
引用発明1と引用発明2とは、共に音量調整手段を設けた遊技機の技術であり、技術分野及び機能が共通しており、遊技機の興趣向上のため、遊技者も所望の音量に調整ができるように、引用発明1に引用発明2を適用することに当業者にとって格別の困難性はない。
そうすると、引用発明1に、引用発明2を適用して、上記相違点1?3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点4、6について
相違点4、6は、関連するのでまとめて検討する。
引用発明1は、「i 遊技機1に何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定する」ものであり、また「i1 何らかのエラーが発生すると、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームが「大」音量に設定され、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量で出力される」ものであるところ、上記「ア 相違点1?3について」で検討したように、引用発明1に引用発明2を適用した発明(引用発明1に引用発明2の「遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75」[第2音量調整手段]及び「音量を変更するサブ統合基板90」[演出音音量変更制御手段]を適用した発明)において、遊技者が「操作ボタン75」(第2音量調整手段)により調整した音量にかかわらず、「遊技機1に何らかのエラーが発生すると、所定時間、トータルボリュームを「大」音量に設定する」ようにし、また、「操作ボタン75」(第2音量調整手段)の操作に応じて「音量を変更するサブ統合基板90」(演出音音量変更制御手段)より調整した音量にかかわらず、トータルボリュームが「大」音量に設定され、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量で出力されるようにすることで、上記相違点4、6に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点5について
引用発明1はjとして「エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定」する構成を有している。このことから、引用発明1に引用発明2の「遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75」(第2音量調整手段)を適用した発明において、「操作ボタン75」(第2音量調整手段)が操作されなかった場合、エラー終了後の演出音の音量は、「音量設定スイッチ300」(第1音量調整手段)によって設定されたトータルボリュームの音量であるといえると共に、「操作ボタン75」(第2音量調整手段)が操作された場合、エラー終了後の演出音の音量は、「操作ボタン75」(第2音量調整手段)によって変更されたトータルボリュームの音量であるといえる。
そうすると、上記「ア 相違点1?3について」において既に検討したように、引用発明1に引用発明2を適用した場合、エラー報知の所定時間の経過後に再開される演出音を、エラー報知の所定時間が発生する以前に「操作ボタン75」(第2音量調整手段)が操作されなかった場合(「特定条件が成立していない場合」)、エラー終了後の演出音の音量を「音量設定スイッチ300」(第1音量調整手段)によって設定されたトータルボリュームの音量になるようにし、エラー報知の所定時間が発生する以前に「操作ボタン75」(第2音量調整手段)が操作された場合(「特定条件が成立していた場合」)、エラー終了後の演出音の音量を「操作ボタン75」(第2音量調整手段)によって変更されたトータルボリュームの音量になるようにして、上記相違点5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 相違点7について
引用発明3の「報知時間」、「所定時間」及び「他のエラー」は、本願発明の「異常報知期間」、「所定期間」及び「新たな異常」に相当する。
そうすると、引用発明3の「エラーコマンドを受信した際にすでにエラー報知をおこなっている他のエラーコマンドの方が、受信されたエラーコマンドよりも優先順位が高いあるいは同じである場合、エラー報知の実行中のエラーコマンドに基づく報知が終了した時点で、後から受信されたエラーコマンドの報知時間の計時中であれば、当該受信エラーコマンドに基づく報知を開始し、RAM213において計時される時間が満了するまでの間、後から受信されたエラーコマンドに基づく報知を継続しておこなうこと」は、相違点7に係る本願発明の構成の「前記異常報知期間において所定期間経過する前に新たな異常が発生した場合、新たな異常が発生する前の異常の発生から所定期間経過しても、当該新たな異常が発生してから所定期間経過していない場合には」異常報知を継続することに相当する。
そして、引用発明1と引用発明3とは、共にエラー報知を行う遊技機の技術であり、技術分野及び機能が共通しており、引用発明1において、すでにエラー報知をおこなっているときに他のエラーが発生した場合に対処するために、引用発明3を適用することに当業者にとって格別の困難性はない。
そうすると、引用発明1に、引用発明3を適用して、上記相違点7に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

オ 効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明1、2及び3の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ 小括
したがって、本願発明は、引用発明1、2及び3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第7 請求人の主張について

ア 審判請求人は、平成31年4月11日付け意見書において、次のとおり主張している。

(ア)「つまり、引用文献1はエラー報知の終了時に設定する変更後の音量(各チャンネルボリュームの変更後の設定)を主制御基板から受信した演出コマンドを解析することによって事前にサブ制御基板が特定し記憶しているものであります。そして、このサブ制御基板が演出コマンドから事前に特定し記憶したエラー報知の終了時に設定する変更後の音量をエラー報知の終了時に演出用チャンネルの各チャンネルボリュームに設定する(S208で記憶しておいた設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する)ことで「エラー報知の終了時に進行していた演出に合った設定に復帰する」ものであることが明らかであります。
・・・本願発明の「J」と分説された構成と引用発明1の「j」と分説された構成との一致点のご認定でされた『さらに、引用発明1のjの「エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており」、「エラー報知の終了と同時に演出の進行を確認し、進行中の演出にあった音量で演出音の出力を再開する」ことは、本願発明のJの「前記異常報知期間に亘って消音に変更設定される前記演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続させ、復旧設定される際に進行した状態で復旧させる」ことに相当する。』というご認定については、引用文献1に記載された技術が段落[0089]などの記載から上述したように「エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶している」ものであり、本願発明のように演出音の進行が継続されていればエラー終了時の変更後の音量を事前に特定して記憶する必要がないことは自明であるため、引用文献1の記載を本願発明のように演出音の進行が継続されているとするご認定には疑問があります。」

(イ)「また、審判合議体は、本願発明の「J」と分説された構成と引用発明1の「j」と分説された構成との一致点のご認定において『また、引用発明1のjの「エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定」することは、本願発明のJの「異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定されていた前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるように、前記特定条件が成立していない場合においては前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定」することと、「異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定されていた前記演出音が前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定」する点で共通する。』とご認定されておりますが、引用文献1に記載された技術は上述したとおり「エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶している」ものであるため、エラー報知の発生時の状況に応じて処理や判断を異ならせずに変更後の音量のみ特定していることは明らかであり、本願発明のように異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるようにされておりません。」

(ウ)「以上のことから、審判合議体の本願発明の「J」と分説された構成と引用発明1の「j」と分説された構成との一致点について『引用発明1の「j 音源IC224は、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)が割り当てられた演出用チャンネルと、演出に用いられることのないエラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたエラー報知用チャンネルを有し、サブ制御基板220のCPU221は、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定し、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、音源IC224では、エラー報知音の出力中はすべて「消音」を維持しており、エラー報知の所定時間の経過後にエラー報知音の出力が終了したら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、エラー報知の終了と同時に演出の進行を確認し、進行中の演出にあった音量で演出音の出力を再開する、サブ制御基板220のCPU221」は、本願発明の「J 前記異常報知期間が発生した際に前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、当該異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定されていた前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるように、前記特定条件が成立していない場合においては前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定し、前記特定条件が成立していた場合においては前記第2音量調整手段の操作に応じて設定されていた音量に復旧設定するとともに、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定される前記演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続させ、復旧設定される際に進行した状態で復旧させる演出音進行継続制御手段」と「J’ 前記異常報知期間が発生した際に前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、当該異常報知期間が所定時間経過したことによって終了すると、当該消音に変更設定されていた前記演出音が前記第1音量調整手段の操作に応じて設定されている音量に復旧設定するとともに、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定される前記演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続させ、復旧設定される際に進行した状態で復旧させる演出音進行継続制御手段」である点で、共通する。』とするご認定には妥当性がなく、特に、「エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶している」引用文献1には、本願発明の「当該消音に変更設定されていた前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定される」点および「異常報知期間に亘って消音に変更設定される前記演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続させ」る点について記載されていないものと思料いたします。」

イ 上記審判請求人の主張については、以下のとおりである。
(ア)審判請求人は、引用文献1に記載された技術は、段落[0089]などの記載から、「エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶している」ものであるとしている。
一方、引用文献1には、「主制御基板200から演出コマンドを受け取ったサブ制御基板220のCPU221は、演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、演出の進行に合わせて適宜変更するようになっている」(【0089】)ことが記載されており、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定は、演出の進行に合わせて変更されるものである。また、「各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)、すなわち変更後の音量は、サブ制御基板220のCPU221の制御下で行われる種々の演出パターンに応じて予め設定されている。また、音量の変更時期も演出パターンに応じて予め設定されて」おり、「サブ制御基板220のCPU221は、主制御基板200から受信した演出コマンドを解析することで、その演出コマンドに対応する演出の実行時における音量の変更時期や変更後の音量を特定することができる」(【0089】)ことから、「サブ制御基板220のCPU221が実行するボリューム設定処理」(【0085】、【図14】、【図15】)として、「演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には(S206:yes)」、「各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)を、サブ制御基板220に搭載されたRAM222(図11参照)の所定領域に記憶する(S208)」(【0089】)という処理を行うものであり、変更後の音量は、“事前に特定し記憶しているもの”ではない。
仮に、審判請求人が主張するように、エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶しているものであるとすると、サブ制御基板は、演出コマンドを、事前に(一度だけ)解析して特定し記憶すればよく、演出の進行に合わせて各チャンネルボリュームの変更後の設定を、サブ制御基板220に搭載されたRAM222の所定領域に記憶することを行う必要はないと考えられるが、引用文献1には、演出の進行に伴うボリューム設定の変更を行う場合に、「エラー報知音の出力中ではない場合は(S210:no)、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームを、S208で記憶した新たな設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力した後(S212)、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する」(【0090】)こと、「エラー報知音の出力中であった場合は(S210:yes)、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を変更する旨のボリューム設定信号を出力することなく、すなわち、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を維持したまま、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する」(【0091】)こと、また、他のボリューム設定の変更を行ういずれの場合にも、「ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する」(【0093】)、「ボリューム設定処理の先頭に戻って、再びS200以降の一連の処理を実行する」(【0095】)、「ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を繰り返す」(【0096】)、「ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を再び実行する」(【0097】)、「ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の上述した一連の処理を繰り返す」(【0098】)ことが記載されるように、サブ制御基板220のCPU221が実行するボリューム設定処理は、繰り返し実行されるものであり、演出コマンドを、一度だけ解析して特定し記憶するようなことは記載されていない。
さらに、引用文献1の「演出の進行に伴うボリューム設定の変更」(【0089】)は、「演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、演出の進行に合わせて適宜変更する」(【0089】)ことで行われるものであり、本願発明の「第1音量調整手段」に対応する「音量設定スイッチ300」の状態に基づく「トータルボリュームの設定」(【0089】)に関するものではない。
そうすると、審判請求人の主張するような、引用文献1に記載された技術の認定は失当であり、それに基づく主張に根拠はない。

(イ)審判請求人の「引用文献1に記載された技術は上述したとおり「エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶している」ものであるため」との主張については、上記(ア)のとおり、審判請求人の主張するような、引用文献1に記載された技術の認定は失当である。
また、審判請求人の「エラー報知の発生時の状況に応じて処理や判断を異ならせずに変更後の音量のみ特定していることは明らかであり、本願発明のように異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定されるようにされておりません」との主張については、上記「第5 対比」にて相違点5として抽出し、「第6 判断 ウ 相違点5について」で示したとおりである。

(ウ)審判請求人の「「エラー報知の終了時に設定する変更後の音量をサブ制御基板が演出コマンドを解析することで事前に特定し記憶している」引用文献1」との主張については、上記(ア)のとおり、審判請求人の主張するような、引用文献1に記載された技術の認定は失当である。
また、「引用文献1には、本願発明の「当該消音に変更設定されていた前記演出音が前記異常報知期間発生以前に特定条件が成立していたかに応じて異なる音量で復旧設定される」点」「について記載されていない」との主張については、上記(イ)のとおりである。
さらに、「引用文献1には、本願発明の」「「異常報知期間に亘って消音に変更設定される前記演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続させ」る点について記載されていない」との主張については、上記「第5 対比」の「(j)」として、「引用発明1において、「演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には、各チャンネルボリュームの変更後の設定をRAM222に記憶」することは、本願発明の「前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータ」が「進行」することに相当する。そして、引用発明1において、「遊技機1に何らかのエラーが発生すると、演出用チャンネルの全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定し、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになって」いることは、本願発明において、「前記異常報知期間が発生した際に前記スケジュールデータの音生成用スケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の前記音生成用スケジュールデータの進行を停止することなく継続した状態で音量を消音に変更設定」することに相当する」と示したとおりである。

ウ したがって、平成31年4月11日付け意見書における審判請求人の主張は、いずれも理由がない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-19 
結審通知日 2019-06-20 
審決日 2019-07-02 
出願番号 特願2015-238308(P2015-238308)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 田邉 英治
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  

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