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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05D
管理番号 1354708
審判番号 不服2018-14405  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-31 
確定日 2019-09-10 
事件の表示 特願2016-196301「移動ロボット用の制御機器、移動ロボット用のシステム及び移動ロボットを制御する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月23日出願公開、特開2017-41262、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)9月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月3日、米国)を国際出願日とする出願である特願2013-526502号の一部を平成28年10月4日に新たな特許出願としたものであって、平成29年8月14日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年1月19日に手続補正書及び意見書が提出され、平成30年6月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年10月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1(特許法第29条第2項)
本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2003-532218号公報
2.特開平11-149315号公報(周知技術を示す文献)

理由2(特許法第36第4項第1号)
段落【0029】に記載されている「最後に1個」、「1個またはプログラム」は何を表しているのか、日本語として意味が不明確であり、当業者が請求項1-11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。


第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成30年10月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
移動ロボット(1)用の制御機器(9)であって、前記ロボット(1)が、当該ロボット(1)からみたシーンの画像を撮影するカメラ(3)および通信装置(4)を含み、前記制御機器(9)が、
前記カメラ(3)により撮影されて前記通信装置(4)により送信された画像に対応する画像をリアルタイムに表示するディスプレイ装置(10)と、
ユーザーインターフェース(11)とを含み、
前記ユーザーインターフェース(11)が、前記ディスプレイ装置(10)により表示された前記画像上のポインタ(15)の位置をユーザーが制御できるように構成され、
前記ユーザーインターフェース(11)が、前記ディスプレイ装置(10)により表示された前記画像上の前記ポインタ(15)の位置を前記ユーザーが選択できるようにする選択装置(16)を含み、
前記制御機器(9)が更に、計算装置(13)および通信システム(14)を含み、
前記計算装置(13)が、移動命令を計算してそれを前記通信システム(14)を介して前記ロボット(1)に送るべく構成され、前記移動命令が、前記ユーザーにより選択された前記画像上の前記ポインタの位置に対応する物理位置へ前記ロボットを移動させるべく計算されるべく計算されるものであり、
前記ユーザーは、前記制御機器(9、131)を介して前記ロボット(1)に移動命令を送ることにより、前記ロボット(1)の移動を制御することができ、
前記ロボット(1)は、さらに障害物(130)を検知すべく構成された少なくとも一個のセンサ(107)を含み、前記計算装置(13)は、前記少なくとも一個のセンサ(107)によって障害物(130)が検知されたときに、前記ロボット(1)が前記制御機器(9、131)を介して前記ユーザーから移動命令を受信した場合、当該移動命令を無視して、前記ユーザーに警告すべく、前記ディスプレイ装置(10)により提供された画像の上に、重ね合わせて障害物(130)を指示する視覚パターン(133)を表示させるべく構成されており、
前記ポインタ(15)の大きさが、
前記ロボットと、
前記画像内で前記ポインタが置かれた位置に対応する物理位置との間の距離に依存する、制御機器。
【請求項2】
前記ポインタ(15)が、前記画像内における前記ポインタの空間定位および/または位置に自身のアスペクトが依存するパターンである、請求項1に記載の制御機器。
【請求項3】
前記ポインタ(15)が遠近法で表現され、且つ前記ロボットが移動する物理環境の平面に平行なパターンである、請求項1または2に記載の制御機器。
【請求項4】
前記平面が、壁の平面、または床の平面、または前記物理環境に存在する物体の平面に対応している、請求項3に記載の制御機器。
【請求項5】
カメラ(3)および通信装置(4)を含むロボット(1)と、
請求項1?4のいずれか1項に記載の制御機器(9)と
を含む移動ロボット用のシステム(12)。
【請求項6】
移動ロボットを制御する方法であって、前記ロボット(1)が、当該ロボット(1)からみたシーンのカメラ(3)および通信装置(4)を含み、制御機器(9)が、
前記カメラ(3)により撮影されて前記通信装置(4)により送信された画像に対応する画像をリアルタイムに表示するディスプレイ装置(10)と、
ユーザーインターフェース(11)と
計算装置(13)と、
前記ロボットの前記通信装置(4)と通信すべく構成された通信システム(14)とを含み、
前記方法が以下のステップ、すなわち
-ユーザーが、前記ユーザーインターフェース(11)を介して、前記ディスプレイ装置(10)により表示された前記画像上のポインタ(15)の位置を制御するステップと、
-前記ユーザーが 選択装置(16)を介して、前記ディスプレイ装置(10)により表示された前記画像の前記ポインタの位置を選択するステップと、
-前記計算装置が、移動命令を計算してそれを前記通信システムを介して前記ロボット(1)へ送り、前記移動命令が、前記ユーザーにより前記画像上で選択された前記ポインタの位置に対応する物理位置へ前記ロボットを移動させるべく計算されるステップとを含む方法であり、
前記ユーザーは、前記制御機器(9、131)を介して前記ロボット(1)に移動命令を送ることにより、前記ロボット(1)の移動を制御することができ、
前記ロボット(1)は、さらに障害物(130)を検知すべく構成された少なくとも一個のセンサ(107)を含み、前記計算装置(13)は、前記少なくとも一個のセンサ(107)によって障害物(130)が検知されたときに、前記ロボット(1)が前記制御機器(9、131)を介して前記ユーザーから移動命令を受信した場合、当該移動命令を無視して、前記ユーザーに警告すべく、前記ディスプレイ装置(10)により提供された画像の上に、重ね合わせて障害物(130)を指示する視覚パターン(133)を表示させるべく構成されており、
前記ポインタの大きさが、
前記ロボットと、
前記画像内で前記ポインタが置かれた位置に対応する物理位置との間の距離に依存する、方法。
【請求項7】
前記ポインタが、前記画像内における前記ポインタの空間定位および/または位置に自身のアスペクトが依存するパターンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポインタが遠近法で表現され、且つ前記ロボットが移動する物理環境の平面に平行なパターンである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記平面が、壁の平面、または床の平面、または前記物理環境に存在する物体の平面に対応している、請求項8に記載の方法。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付与した。

「【0018】
1.好適な実施形態のハードウェア
図1は、パーソナル・コンピュータ210から遠隔ユーザ200によって制御することができる移動ロボット100を示す。本発明の全ての可能な機能を記載する目的のために、ここに説明するロボットは、いくつかの関連機構を含む。
【0019】
好適な実施形態のロボットは、特定の回転半径内で回転する機能を含む、全ての方向にロボットを移動させることができるホイール110を備えている。この好適な実施形態では、一組のホイール160は、ヒンジまたはたわみによって(by a hinge or flexure)シャーシの順方向部分に取付けられており、この“フリッパ”の操作によって、ロボットを上昇または降下させることができる。図示した設計は、マサチューセッツ州、SomervilleのiRoboto Corporationによって製造され、引用により本明細書中に組み込まれる米国特許出願第09/826,209号に詳細が開示されるロボット、iRobot-LEに類似するロボットを示す。この設計は、ロボット100を同じ場所で回転させることができ、それは明らかな利点を有し、好適な実施形態の方法で利用される。当業者は、ロボットは、多くの方法で構成することができ、あらゆる構成のホイール、トラック、アーム・リンク機構またはそれらの組合せを含むいかなる数の種々のモビリティ・プラットフォームをも備えることができるということを認識するであろう。
【0020】
また、ロボット100は、ロボットの環境に関する情報を集めることができる一つ以上のセンサと、および遠隔ユーザ200に情報を送信する手段とを包含しなければならない。本発明の好適な実施形態で用いられるロボットでは、主要センサは、ロボットの本体125(またはシャーシ)の上に取付けられたビデオ・カメラ140を備えている。好適な実施形態のロボットは、標準NTSC出力信号を生成する小型カメラ140を用いており、かかる信号は既成の(off the shelf)フレーム・グラバー・カードを用いてデジタル化される。このカメラは、USBまたはファイヤ・ワイヤ・カメラ、または遠隔エンド・ユーザ200へのアナログ送信を用いるカメラのような、エンド・ユーザのユーザ・インタフェース内に画像を結果として供給するようなあらゆる装置でありうる。カメラ取付けは、シャーシに関して固定でありうるか、またはカメラは、ロボット・シャーシ125に関して1、2、3またはそれ以上の度の自由度で動くことができる“アーム”または“ネック”120に取付けられうる。好適な実施形態では、カメラ140は、ネック120の上にある、ヘッド130内に取付けられる。ネック120は、ロボットのシャーシ125内の点のまわりに回転し、1の自由度を有する。
【0021】
さらに、好適な実施形態では、カメラ装置それ自体は、パン150、ティルト160およびズーム・コントロールを有する。さらにまた、ロボット100は、ロボットのヘッド130の上に取付けられたスピニング・ソナー・スキャナ135、および図示しないがロボット本体125内に配置された様々な赤外線エミッタおよび検出器を有する。好適な実施形態では、赤外線エミッタおよび検出器のペアは、ロボット・シャーシ125の周囲360度の適用範囲を供給するように配置される。
【0022】
図2は、好適な実施形態のロボット100のヘッド130の拡大平面図を示す。ヘッド130は、パン150を制御するための電動式リンク機構およびティルト160を制御するためのモータに接続され、(ピンホールであると仮定する)カメラ・レンズ145を有する、カメラ140を包含する。当業者は、ロボットが、ソナー・トランスデューサおよび受信機、レーザ・スキャナ、レーダ、赤外線カメラ、ステレオ・ビジョン、動き検出器、オムニカムズ(omnicams)およびその他の類似する装置を含む、あらゆる数のセンサを包含しうるということを認識するであろう。
【0023】
好適な実施形態では、ユーザに情報を送信するための手段は、アンテナ170を介した無線インターネット・リンクである。インターネットへのロボットのリンクは、無線モデムを通して、または無線送信(例えば、ホームRFまたはIEEE802.11)をまず通して、インターネットに接続された定置形コンピュータ(stationary computer)を指向することができる。上記は、好適な実施形態であるが、別のアプローチは、ブルートゥース(Bluetooth)またはシリア・ラジオ・モデムのような、ロボットと静止コンピュータとの間の低スピード・デジタル・ラジオ・リンクを用いるもの、それからロボットから定置形コンピュータの近くのアナログ・ビデオ受信機へのブロードキャスト・アナログ・ビデオおよびサウンドを用いるものでありうる。定置形コンピュータのオーディオ-イン・ジャックおよび定置形コンピュータに接続された安価なUSBフレーム・グラバーは、ロボットからオーディオおよびビデオを入手するために用いることができる。その他の実施形態では、エンド-ユーザからロボットへ、デジタル無線ラジオを経由したインターネットからのオーディオ・リンクを用いることができる。代替では、定置形コンピュータのオーディオ-アウト・ジャックに接続されたアナログ・オーディオ・ブロードキャスタを用いることができ、それからの信号は、ロボットのラジオによって受信されかつロボットのスピーカを通してプレーされる。
【0024】
この無線インターネット・リンクにわたって用いられるプロトコルは、H261のようなビデオ・テレカンファレンシング・プロトコル、MJPEGのようなビデオ・プロトコル、およびGSMのようなオーディオ・エンコーディングを含むことができる。これらは、無線リンクにわたり直接実行することができるか、またはHTTP、HTTPSまたはこのタスク用に作られた専用プロトコルのようなプロトコルに便乗することができる。
【0025】
また、図1は、ユーザ200および制御手段の好適な実施形態も示す。図1では、ユーザ200は、インターネットに接続されたパーソナル・コンピュータ210を通してロボット100と通信する。パーソナル・コンピュータは、コンピュータ・モニタ240、キーボード220およびマウス230を備えている。当業者は、制御手段が、タッチ・スクリーン、ジョイスティック、無線コントロール、仮想実現ヘッドセットおよびセンサ・グローブのような、あらゆる数の既知のコンピュータ入力装置を含むように構成できるということを認識するであろう。さらに、ユーザは、ロボットから物理的に遠隔な場所に存在する必要はない。ユーザがロボットに対して物理的に近くにいるときには、ロボットにコマンドを与えるために、ロボットへの直接的なボタンや制御、またはテレビジョン遠隔操作に類似する赤外線遠隔操作を含む、さらなる制御をラジオ・リンクとは別個に用いることができる。
【0026】
好適な実施形態では、制御手段は、あらゆるインターネットに接続されたコンピュータからのロボットの制御を許容する、標準ウェブ・ブラウザ上で実行するように実装されたユーザ・インタフェースを備えている。ロボットを操作する好適な方法では、ユーザは、ウェブ・ブラウザにログし、ユーザ名およびパスワードを入力することによってセキュアなウェブサイトにアクセスする。次いでユーザは、ここに記載したユーザ・インタフェースを包含するJava(登録商標)アプレットにアクセスすることができる。別の実施形態は、ブラウザへプラグ-インをインストールすることであり、エンド-ユーザのパーソナル・コンピュータ上でのソフトウェアインストール段階を必要とするというコストを払って、アプリケーションにおけるより良いパフォーマンスを可能にする。さらに別の実施形態は、ウェブ-ドライビング・インタフェースを包含するパーパス・ビィルット・アプリケーション(purpose built application)をインストールすることであり、このアプリケーションを用いて、エンド-ユーザのパーソナル・コンピュータ上のあらゆるウェブ・ブラウザから独立して、必要な全てのネットワーク操作を実行する。
【0027】
2.ユーザ・インタフェースの詳細な説明
ロボットを遠隔操縦するための方法およびシステムの詳細な説明をする前に、ユーザ・インタフェースの好適な実施形態の説明をする。
【0028】
図3は、ロボットを制御するためのユーザ・インタフェース300の好適な実施形態を示す。ユーザ・インタフェースの好適な実施形態は、ヘッドアップ・ディスプレイ310、ジョイスティックまたはダイレクト・ドライブ・コントロール320、パノラマ・ディスプレイ330、オーバーヘッド・マップ340、ステータスバー350、カメラ・コントロール360、およびヘッド/ネック・コントロール370を含む。当業者は、ユーザ・インタフェースをユーザの特定の必要性に合致するように設計することができ、ユーザ・インタフェースの内容とディスプレイ内のあらゆる要素の配置の両方を変えることができるということを認識するであろう。図3に示すこれらの要素のそれぞれは、以下により詳細に説明され、かつ図4?10により詳細に示される。
【0029】
本発明の好適な実施形態を実行するために必要なユーザ・インタフェースの唯一の部分は、ヘッドアップ・ディスプレイ310である。ヘッドアップ・ディスプレイ310は、ロボットから受信した最新のカメラ画像を連続的に示す。好適な実施形態では、カメラ・レチクル(camera reticle)312、フロアー・プレーン・グリッド314、およびローテーション・テープ(rotation tapes)316および318を含む、多数のコンピュータ生成画像が、カメラ画像上に重畳される(overlaid)。以下に説明するように、目標位置または中間地点を選択することにおいてユーザを支援する目的でカーソルがヘッドアップ・ディスプレイ310内に一度配置されたならば、その他のヘッドアップ・ディスプレイ・オーバーレイ(例えば、ターゲティング・サークルおよびパースペクティブ・ボックス)が用いられる。」

「【0049】
目標サークル。図11に示すように、カーソル矢印405がヘッドアップ・ディスプレイ310内で移動するときに、特定の中間地点が選択された場合にロボットが移動するエリアを表す一つ以上の投影が、ヘッドアップ・ディスプレイ上に重畳される。好適な実施形態では、このエリアは、一つ以上の目標サークル410および412によって表される。ただし、このエリアを、特定のロボットの寸法および輪郭を近似するように選択された形状を含む、(二次元または三次元の)あらゆる形状によって表すことができる。目標サークル410および412は、現在の視界のパースペクティブにより、ヘッドアップ・ディスプレイ上に楕円として表される。好適な実施形態では、目標のために二つの同心円が用いられる。内側の円410は概ねロボットの寸法であり、外側の円412はロボット・システムに固有な不正確性に基づく目標のよりルーズな近似を供給する。好適な実施形態では、これらの円410および412の半径は、リアル・タームにおいて(in real terms)一定のままである(しかしながら、円は、中間地点がロボットからかなり離れた距離にあるときには、より小さくなるように見える)。その他の実施形態では、外側の円412は、ロボットに近い中間地点に対しては内側の円410と一致し、中間地点の距離が増大すると離れていく。」

「【0052】
3.ウェブドライビングの好適な方法
図11?14は、本発明の方法の実施形態を実行している間のユーザ・インタフェースのヘッドアップ・ディスプレイ部分を示す。図11では、ヘッドアップ・ディスプレイ310は、ロボットのカメラから送信されたビデオを通して、ロボットの環境からの視界を含んでいる。ロボットから視界にあるように、ロボットの前方概ね5メートル、ロボットの多少右側にドア450がある。図11では、カメラ140は、パン・カーソル362およびローテーション・バーの両方によって示されるように、順方向に直接向いている(即ち、カメラ・レチクル312は、ローテーション・バー316および318の角度マークのゼロに一致する)。ユーザがヘッドアップ・ディスプレイ内でカーソル矢印405を動かすと、ユーザ・インタフェースは、カーソル矢印405の位置に対応する目標サークル410および412とパースペクティブ・ボックスとを絶えず描き直す。ユーザがヘッドアップ・ディスプレイのあちこちに(around the heads-up display)カーソルを動かすことにより、ユーザは中間地点を選択することができる。」

「【0053】
図12は、ヘッドアップ・ディスプレイ・ウィンドウ内でマウスをクリックすることによって中間地点が選択された直後のヘッドアップ・ディスプレイを示す。好適な実施形態では、一度中間地点460が選択されたならば、中間地点は現在の中間地点駆動目標のセットに追加され、目標サークル410および412は影付けされる(shaded)。選択した中間地点が唯一の現在の中間地点(または中間地点リストの最上部にある中間地点)である場合には、ロボットは、選択した中間地点460の方向に向けて動き始める。換言すると、中間地点駆動リストが最新の選択の前に空であって、ロボットが駆動モードにある場合には、ロボットは、選択した中間地点の方向に向けて駆動することを開始する。さらなる選択がなされた場合には、第2の中間地点がリストに追加されることになる。ロボットが中間地点に達すると、その中間地点は、ヘッドアップ・ディスプレイから消える。現在の中間地点リストにさらなる中間地点が存在する場合には、ロボットは、第2の中間地点の方向に向けて駆動することを直ちに開始する。」

「【0056】
さらに、ロボットは、特定のシステムの設計によって指示されるように、次の中間地点まで駆動することよりも高いかまたは低い優先順位で、さらなる動作を実行することができる。好適な実施形態では、ロボットは、障害物回避を実行するために、そのオン-ボード・ソナー・スキャナ135および赤外線検出器(ロボット本体125内に配置されるが図示を省略する)を用いる。その場合には、障害物の存在(および障害物回避ルーチンの実行)は、中間地点への駆動に対して優先し、回り道をするためにロボットを障害物から離れるように向きを変えさせる。かかるシステムは、リアルタイムデータ送信の保証なしでロボットを制御する状況、ダイナミック環境で動作するロボットを制御する状況において、特に有利である。多数の障害物回避ルーチンがこの技術分野でよく知られている。好適な実施形態では、多くの代替の動きコマンドが、中間地点の方向に向けて駆動すること、障害物の周りで向きを変えること、そしてさらに非常に近い障害物を回避するためにバックすること、に対応する行動から生成される。これらのコマンドのそれぞれは、その動き動作を引き起こす挙動コードによって、優先順位が与えられる。これらのコマンドの優先順位およびその重要度(magnitudes)は、それらがロボットを障害物と接触させるかまたは障害物の近くに移動させるかどうかに依存して、予定動作(the proposed movement)が突発または急激すぎる動きをもたらすかどうかといったその他の基準に関して、調整される。次いで、調整後の最も高い優先順位を有する予定動作が、現在のコマンドとして、動きコントローラへ付与される。この処理は、毎秒何回も起こる。その他の実施形態では、ロボットは、障害物が存在する場合に、その現在の中間地点を解放し、ユーザからのさらなる命令を待機することができる(即ち、駆動モードから抜ける)。ある実施形態では、ユーザは、障害物に対する感度のレベルを遠隔制御することができ、これには、障害物検出を無効とし、駆動モードの状態で継続するためのアイコンを選択する場合が含まれる。
【0057】
4.計算の詳細
詳細に説明したロボットを遠隔操作するための方法およびシステムを用いる、編成、設計および方法として、ヘッドアップ・ディスプレイ内の目標のユーザによる選択を、ロボットに対する目標位置に変換するための好適な実施形態の方法をここで説明する。ヘッドアップ・ディスプレイ内のクリック位置からロボットに対する目標位置への変換を実行する処理は、(a)ロボットの現在の位置及び向きを決定すること、(b)カメラ(またはロボットの周辺の領域を表す画像情報を供給するために用いられるその他の装置)の現在の位置を決定すること、(c)クリック・ベクトル(即ち、カメラに関係するヘッドアップ・ディスプレイ上の位置)を決定すること、および(d)目標位置を生成するためにクリック位置を三次元世界地図に投影することを必要とする。これらの段階を実行するための好適な方法を以下に説明する。」

「【0068】
差動駆動(differential drive)を有するロボットに対する好適な実施形態では、ロボットをその現在の位置(518)から目標位置(690)に移動するための命令を生成するための処理は、順方向速度および回転速度を指示することを含み、回転速度は、現在のロボットの回転角と、現在のロボットの位置と所望のロボットの位置との間の角度と、の間の差の正弦関数である(the rotational velocity is the sine of the difference between the current robot rotational angle and the angle between the current robot position and the desired robot position)。順方向速度は、当該角度の二乗されたものの余弦関数である(The forward velocity is the cosine squared of the same angle)。当業者は、代替のステアリングおよびナビゲーション方法機構を生成することができるということを認識するであろう。」

















上記段落【0052】、【0053】、第11図、第12図の記載から、ユーザ・インタフェース300は、ヘッドアップ・ディスプレイ310により表示された画像上の目標サークル410および412の位置をユーザ200が制御できるように構成され、ユーザ・インターフェース300が、ヘッドアップ・ディスプレイ310により表示された画像上の目標サークル410および412の位置をユーザ200が選択できるようにするマウス230を含んでいるということができる。

また、上記段落【0023】の記載から、パーソナルコンピュータ210は、無線モデム又は無線送信を通してインターネットに接続されているということができる。

さらに、上記段落【0023】、【0057】、【0068】の記載から、クリック位置をロボットに対する目標位置へ変換する処理が、移動命令を計算してそれを無線モデム又は無線送信を介してロボット100に送るべく構成され、移動命令が、ユーザ200により選択された画像上の目標サークル410および412の位置に対応する物理位置へロボット100を移動させるべく計算されるものであるということができる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「移動ロボット100用のパーソナルコンピュータ210であって、前記ロボット100が、当該ロボット100からみた画像を撮影するビデオ・カメラ140およびアンテナ170を含み、前記パーソナルコンピュータ210が、
前記ビデオ・カメラ140により撮影されて前記アンテナ170から受信した最新のカメラ画像を連続的に示すヘッドアップ・ディスプレイ310と、
ユーザ・インタフェース300とを含み、
前記ユーザ・インタフェース300が、前記ヘッドアップ・ディスプレイ310により表示された前記画像上の目標サークル410および412の位置をユーザ200が制御できるように構成され、
前記ユーザ・インターフェース300が、前記ヘッドアップ・ディスプレイ310により表示された前記画像上の前記目標サークル410および412の位置を前記ユーザ200が選択できるようにするマウス230を含み、
前記パーソナルコンピュータ210が更に、クリック位置をロボットに対する目標位置へ変換する処理を行い、無線モデム又は無線送信を通してインターネットに接続されており、
前記クリック位置をロボットに対する目標位置へ変換する処理が、移動命令を計算してそれを無線モデム又は無線通信を介して前記ロボット100に送るべく構成され、前記移動命令が、前記ユーザ200により選択された前記画像上の前記目標サークル410および412の位置に対応する物理位置へ前記ロボット100を移動させるべく計算されるべく計算されるものであり、
前記ユーザ200は、前記パーソナルコンピュータ210を介して前記ロボット100に移動命令を送ることにより、前記ロボット100の移動を制御することができ、
前記ロボット100は、さらに障害物を検知すべく構成されたオン-ボード・ソナー・スキャナ135を含み、前記オン-ボード・ソナー・スキャナ135によって障害物が検知されたときに、現在の中間地点を解放し、ユーザ200からのさらなる命令を待機するべく構成されており、
前記目標サークル410および412の大きさが、
前記ロボット100からかなり離れた距離にあるときには、より小さくなるように見える、パーソナルコンピュータ210。」

2.引用文献2について
周知技術を示す文献として引用された上記引用文献2の段落【0031】、【0032】及び第4図の記載からみて、当該引用文献2には、障害物14を認知した場合、ロボット1のみ、すなわち知識ベースのみによる行動判断(自律移動)が不可能な状態に陥ったものとして、その時点の行動を一旦安全を確保できるレベルまで縮退させるため、ロボット1の速度をゼロにするという技術的事項が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「移動ロボット100」は、本願発明1における「移動ロボット」に相当する。以下、同様に、「ビデオ・カメラ140」は「カメラ」に、「アンテナ170」は「通信装置」に、「パーソナルコンピュータ210」は制御機器に、「ヘッドアップ・ディスプレイ310」は「ディスプレイ装置」に、「ユーザ・インタフェース300」は「ユーザーインターフェース」に、「目標サークル410および412」は「ポインタ」に、「マウス230」は「選択装置」に、「無線モデム又は無線通信」は「通信システム」に、「オン-ボード・ソナー・スキャナ135」は「センサ」に、それぞれ相当する。また、「クリック位置をロボットに対する目標位置へ変換する処理」はそのような処理を行うための計算手段が存在することを当然の前提とするから、当該計算手段が「計算装置」に相当する。
また、引用発明の「前記目標サークル410および412の大きさが、前記ロボット100からかなり離れた距離にあるときには、より小さくなるように見える」ことは、本願発明1の「前記ポインタの大きさが、前記ロボットと、前記画像内で前記ポインタが置かれた位置に対応する物理位置との間の距離に依存する」ことに相当する。
引用発明の「前記オン-ボード・ソナー・スキャナ135によって障害物が検知されたときに、現在の中間地点を解放し、ユーザ200からのさらなる命令を待機」することと、本願発明の「前記少なくとも一個のセンサによって障害物が検知されたときに、前記ロボットが前記制御機器を介して前記ユーザーから移動命令を受信した場合、当該移動命令を無視」することを対比すると、両者は、「前記少なくとも一個のセンサによって障害物が検知されたときに」、「当該移動命令を無視」することに限って一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「移動ロボット用の制御機器であって、前記ロボットが、当該ロボットからみたシーンの画像を撮影するカメラおよび通信装置を含み、前記制御機器が、
前記カメラにより撮影されて前記通信装置により送信された画像に対応する画像をリアルタイムに表示するディスプレイ装置と、
ユーザーインターフェースとを含み、
前記ユーザーインターフェースが、前記ディスプレイ装置により表示された前記画像上のポインタの位置をユーザーが制御できるように構成され、
前記ユーザーインターフェースが、前記ディスプレイ装置により表示された前記画像上の前記ポインタの位置を前記ユーザーが選択できるようにする選択装置を含み、
前記制御機器が更に、計算装置および通信システムを含み、
前記計算装置が、移動命令を計算してそれを前記通信システムを介して前記ロボットに送るべく構成され、前記移動命令が、前記ユーザーにより選択された前記画像上の前記ポインタの位置に対応する物理位置へ前記ロボットを移動させるべく計算されるべく計算されるものであり、
前記ユーザーは、前記制御機器を介して前記ロボットに移動命令を送ることにより、前記ロボットの移動を制御することができ、
前記ロボットは、さらに障害物を検知すべく構成された少なくとも一個のセンサを含み、前記計算装置は、前記少なくとも一個のセンサによって障害物が検知されたときに、当該移動命令を無視するべく構成されており、
前記ポインタの大きさが、
前記ロボットと、
前記画像内で前記ポインタが置かれた位置に対応する物理位置との間の距離に依存する、制御機器。」

(相違点)
本願発明1は、「前記計算装置は、前記少なくとも一個のセンサによって障害物が検知されたときに、前記ロボットが前記制御機器を介して前記ユーザーから移動命令を受信した場合、当該移動命令を無視して、前記ユーザーに警告すべく、前記ディスプレイ装置により提供された画像の上に、重ね合わせて障害物を指示する視覚パターンを表示させるべく構成されて」いるのに対し、引用発明では、「前記オン-ボード・ソナー・スキャナ135によって障害物が検知されたときに、現在の中間地点を解放し、ユーザ200からのさらなる命令を待機」するものの、障害物を検知して、ユーザーからの移動命令を受信した場合に、ユーザーに警告すべく、ディスプレイ装置により提供された画像の上に、重ね合わせて障害物を指示する視覚パターンを表示させていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記第4.2.で記載したように、引用文献2には、障害物14を認知した場合、ロボット1のみ、すなわち知識ベースのみによる行動判断(自律移動)が不可能な状態に陥ったものとして、その時点の行動を一旦安全を確保できるレベルまで縮退させるため、ロボット1の速度をゼロにするという技術的事項が記載されている。しかしながら、引用文献2には、上記相違点について、「前記少なくとも一個のセンサによって障害物が検知されたときに前記ロボットが前記制御機器を介して前記ユーザーから移動命令を受信した場合」「前記ユーザーに警告すべく、前記ディスプレイ装置により提供された画像の上に重ね合わせて障害物を指示する視覚パターンを表示させる」事項までは記載されていない。そして、当該事項がロボット制御の分野において一般的に周知技術とまでは言うことができない。
したがって、引用発明および引用文献2には、上記事項が記載されていないから、本願発明1は引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、本願発明1が有する上記相違点の事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は、本願発明1の「制御機器」に対して、当該制御機器を用いてロボットを制御する方法であるが、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明7ないし9について
本願発明7ないし9も、本願発明6が有する上記相違点の事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
本願発明1-9は、「前記計算装置は、前記少なくとも一個のセンサによって障害物が検知されたときに、前記ロボッが前記制御機器を介して前記ユーザーから移動命令を受信した場合、当該移動命令を無視して、前記ユーザーに警告すべく、前記ディスプレイ装置により提供された画像の上に、重ね合わせて障害物を指示する視覚パターンを表示させるべく構成されて」いるという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第4項第1号)について
段落【0029】に記載されている「最後に1個」、「1個またはプログラム」という記載は、平成30年10月31日付け手続補正書において、それぞれ「少なくとも」、「1個以上のプログラム」という記載に補正されており、当業者が請求項1-9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとなっている。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-27 
出願番号 特願2016-196301(P2016-196301)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 栗田 雅弘
小川 悟史
発明の名称 移動ロボット用の制御機器、移動ロボット用のシステム及び移動ロボットを制御する方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
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