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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1354797
審判番号 不服2017-5341  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-14 
確定日 2019-09-09 
事件の表示 特願2011-203232「三次元リアルタイムMR画像誘導下手術システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日出願公開、特開2013- 63158〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月16日の出願であって、平成26年12月11日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月7日付け及び同月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで意見書が提出され、平成28年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年7月29日付けで意見書が提出され、同年12月21日付けで拒絶査定されたところ、平成29年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明は,平成27年3月9日付け手続補正により補正された請求項1及び2に記載された事項により特定される発明である。そのうち,請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
三次元リアルタイムMR画像下での手術システムであって:
MRI装置と;
MRI装置及び撮像面を制御し、MRI装置からのMR画像を連続的に伝送することにより、リアルタイムMR画像をメインワークステーションに伝送するMRワークステーションと;
マイクロ波デバイスの位置を特定し、該位置情報をメインワークステーションに伝送する磁気トラッキング装置及び/又は光学式の位置センサー装置と;
マイクロ波デバイスの制御・操作のための制御ワークステーションと;
予め取得した生体内画像、該リアルタイムMR画像、並びにマイクロ波デバイスの位置情報を統合可能なメインワークステーションと、を有し、
術者がリアルタイムに生体の内部状況とマイクロ波デバイスの位置を画像によって確認し、処置する生体物及びマイクロ波デバイスの位置を確認しながら手術できる手術システム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献5に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献5.特開2008-18172号公報
引用文献6.特開2007-125240号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7.特許第4035100号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8.特開2005-34653号公報(周知技術を示す文献)
引用文献9.佐藤浩一郎,MRガイド下肝腫瘍マイクロ波凝固における治療部位3次元記録の有用性,日本コンピュータ外科学会誌,2011年 1月25日,vol.4, No.3,195-196頁(周知技術を示す文献)
引用文献10. Yoshimasa KURUMI,Clinical Experiences with MR-Guided Microwave Ablation for Liver Tumors,Proceedings of International Society for Magnetic Resonance in Medicine[CD-ROM],2001年 4月21日(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献5の記載
引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(引5a)「【0002】
近年、MRI装置などを手術時の穿刺モニタリング、経皮的治療などに応用する技術が開発されている。その一つは手術や治療中にリアルタイムで撮像する断層面を任意に設定して撮像するという技術で、インタラクティブスキャン(ISC)と呼ばれる。ISCを行うためのMRI装置として、例えば特許文献1などに断層面指示デバイス(ポインタなど)を用いて撮像する断層面を決定するMRI装置が提案されている。」

(引5b)「【0006】
そこで本発明は、術具を用いた手術や治療において、術具先端と目的部位や危険部位との位置関係の情報をリアルタイムで術者に提供することが可能な手術支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、術前に撮像したボリュームデータを用いて特定領域を描出し、特定領域以外の各ピクセル位置から特定領域における最長距離、最短距離、方向等の相対位置情報を求めてデータベースとして登録を行い、実際の手術時には位置検出装置を用いて検出した術具先端位置とボリュームデータに相当するピクセル位置からデータベースに登録した情報を瞬時に読み取ることができる手術支援装置を提供する。」

(引5c)「【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態の手術支援装置の概要を示す図である。この手術支援装置は、主として、MRI装置などの撮像装置10と、撮像装置10の撮像空間内の位置を検出する三次元位置検出装置20と、画像処理や手術支援に必要な各種演算を行なう演算装置30と、演算装置30が処理する三次元画像(ボリューム画像)等を格納する記憶装置40と、インターフェイス装置50とを備えている。撮像装置10としては、MRI装置のほか、X線CT装置、超音波診断装置、PET装置、X線診断装置、核医学システム等の医療画像装置のいずれでもよい。
【0013】
図2は、撮像装置10がMRI装置である場合の全体構成を示す図である。このMRI装置10は、撮像空間を挟んで上下に磁石を配置した垂直磁場方式の装置で、上部磁石13、下部磁石15、これら磁石を連結するとともに上部磁石13を支持する支柱17、ベッド19、液晶モニタ11、制御部14などを備えている。図示していないが、上部磁石13および下部磁石15に近接して、撮像空間に傾斜磁場を与える傾斜磁場コイル、検査対象(手術や治療を受ける患者)60に高周波磁場を印加するための送信用高周波コイル、検査対象からの核磁気共鳴信号を受信するための受信用高周波コイル、これらコイルを駆動するための電源や受信用高周波コイルが受信した信号を処理するための信号処理系などが備えられている。」

(引5d)「【0015】
図示する実施の形態では、制御部14はワークステーションで構成され、撮像シーケンスに基づく撮像制御および三次元位置検出装置20からの位置情報を利用したISC制御を行うほか、画像処理を行なう演算装置30としても機能する。制御部14には記憶装置40、インターフェイス装置50、映像記録装置70などが接続されている。映像記録装置70は、手術中に撮像装置10によってリアルタイムで撮像される画像や内視鏡などを用いる場合には内視鏡映像などを記録するためのものである。インターフェイス装置50にはディスプレイ等の表示装置およびキイボード、マウスなどの入力装置が備えられている。インターフェイス装置50を介してユーザは撮像条件の入力、表示の指示など各種指令を制御部14に与えることができる。
【0016】
記憶装置40には、予め手術対象である患者60のボリューム画像が格納されている。ボリューム画像は、三次元画像データであれば、この手術支援装置が接続された撮像装置(ここではMRI装置)10により撮像した画像でもよいし、それ以外の撮像装置で撮像されたものでもよい。また記憶装置40には、このボリューム画像から算出される患者の特定部位への最長距離/最短距離などの相対位置情報が格納される。相対位置情報はボリューム画像とともに手術支援手段として利用される。相対位置情報の算出およびその利用については後述する。
【0017】
三次元位置検出装置20は、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの種々の方式が知られており、そのいずれも使用することが可能である。ただし撮像装置がMRI装置の場合には、磁気式以外のものが好適である。図2に示す実施の形態では、光学式の三次元位置検出装置が採用されている。この三次元位置検出装置20は、位置検出デバイス21、小型コンピュータ23、基準ツール25、ポインタ27などから構成される。
【0018】
位置検出デバイス21は、2台の赤外線カメラ29と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを備え、ポインタ27に固定された3つの反射球の位置を検出することにより、ポインタ27の位置及び姿勢を検出する。位置検出デバイス21は、アーム16により移動可能に上部磁石13に連結され、MRI装置10に対する配置を適宜変更することができる。」

(引5e)「【0022】
次に手術支援装置の動作を説明する。図3は、上記手術支援装置を用いたISC危険領域警告機能の手順を示すフロー図である。ISC危険領域警告機能は、大きく分けて、術前プランニング300と手術中機能310とがあり、前者で患者のボリューム画像の取得、記録、ボリューム画像からの相対位置情報の算出、登録を行い、手術中機能310では、手術を進めながらISCと危険領域へ術具が接近したことを検出し報知する機能を実現する。以下、各ステップを詳細に説明する。
【0023】
まず図4(a)に示すように、患者60をMRI装置10の撮像空間に配置し、患者60の手術部位を含む範囲61のボリューム画像を取得するための撮像を行う(ステップ301)。撮像方法は特に限定されず、スライス方向のエンコードを用いる3D撮像でもよいし、マルチスライス撮像でもよい。取得したボリューム画像は、記憶装置40に格納される。次にボリューム画像に対し、MPR (Multi Planar Reconstruction)、3D ボリュームレンダリング等の画像処理を施し、3軸2次元表示する(ステップ302)。図4(b)に3軸2次元表示による3断面406?408とボリュームレンダリング画像409の表示例を示す。これら3軸2次元表示された画像をもとにセグメンテーション領域を登録する(ステップ303)。セグメンテーション領域は、例えば、手術の目的とする部位や術具が触れてはならない臓器や動脈などを対象に、1ないし複数の領域を指定する。表示画像をもとに輪郭などを描画してセグメンテーション領域を指定する技術は公知であり(例えば特許文献4など)、これら技術を用いることができる。図4(b)に示す例では、術具の経路近傍にある大動脈がセグメンテーション領域410、411、412、413として登録されている。」

(引5f)「【0028】
こうして術前プランニング(図3:ステップ300)が終了した後、手術を開始する(図3:ステップ350)。実際の手術時においては、まずISCを開始する(ステップ306)。ISCでは三次元位置検出装置20(位置検出デバイス21)がポインタ27の位置を検出することにより、術具位置をリアルタイム検出し(ステップ307)、術具位置を含む断面の撮像を行う。ISCによる撮像は、三次元位置検出装置20の位置検出頻度に合わせて繰り返される。撮像と同時に、演算装置30は、術具先端位置に相当するピクセル位置からデータベースに登録した相対位置情報をリアルタイムに読み取る(ステップ308)。読み取った相対位置情報は、図4(b)に示したような先端位置とともにモニタに表示される。相対位置情報において、例えば、術具が触れてはならない部位や臓器との距離(最短距離)が予め設定しておいた警告閾値と比べて小さい場合は(ステップ309)、GUI又は音声による警告を発し(ステップ310)、ターゲットまでの距離をユーザに対して表示する(ステップ311)。この処理を終了指示があるまで繰り返す(ステップ312)。」

(引5g)「【0033】
図8に示すように、手術中の操作画面800も画像表示部810、データ表示部820、操作ボタン表示部830、手術中情報表示部840が設置されていることは術前プランニングのGUIと同じである。手術時にはISC機能844が選択され、ONとなっている場合は、その旨が色の変化などで表示され、三次元位置検出装置を用いて術具位置を追随することにより、術具815を含む3軸断面(Axia1 811、Sagital 812、Colona1 813)及びVolume Rendering画像814が時系列的に変化する。同時にデータベースから術具先端位置の画像ピクセル座標821と各種登録情報822?825を読み出して、リアルタイムにデータベース情報を表示する。」

(引5h)「【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態の手術支援装置の構成を図9に示す。この手術支援装置も撮像装置10と、演算装置30と、ボリューム画像等を格納する記憶装置40と、インターフェイス装置50とを備えていることは、図1に示す第1の実施の形態と同様である。三次元位置検出装置20は、ISCを行なうために備えていてもよいがなくてもよい。また術前プランニングとして、過去に撮像したボリューム画像を用いてセグメンテーションを行い、各ピクセルからセグメンテーション領域までの距離・方向等の相対位置情報を算出し、登録することも第1の実施の形態と同様である。」

(引5i)「【0038】
ただし本実施の形態では、術具はロボット80のロボットアームに固定されており、ロボットアームを介して手術が行なわれる。術具の位置情報は、ロボット80に内蔵される駆動・制御系(図示せず)においてロボット座標系の位置として把握されている。演算装置30は、ロボット80から術具先端のロボット座標系における位置を受け取り、これを画像座標に変換し、対応するピクセルについて登録された相対位置情報を読み取る。」

(引5j)「図4



(引5k)「図8



2 引用発明
(1)上記(引5f)には、「相対位置情報を、図4(b)に示したような先端位置とともにモニタに表示」すると記載されている。
図4(b)より、「3軸2次元表示による3断面406?408」と「ボリュームレンダリング画像409」が表示されている点が見て取れる(引5j)。
そして、図4(b)の手術中に対応する画像である図8の左上には、「3軸断面(Axia1 811、Sagital 812、Colona1 813)」及び「Volume Rendering画像814」が、「術具815」と共に表示されている画像が見て取れ、図8の「術具815」を含む「3軸断面(Axia1 811、Sagital 812、Colona1 813)」及び「Volume Rendering画像814」は、「3次元位置検出装置を用いて術具位置を追随することにより」、「時系列的に変化する」画像であるから(引5g)、「図4(b)に示したような先端位置とともにモニタに表示」することは、「術具位置を含む断面の画像及びVolume Rendering画像814上に先端位置とともにモニタに表示」することであるといえる。

(2)上記1の(引5a)?(引5g)より、引用文献5には「手術時には位置検出装置を用いて検出した術具先端位置とボリュームデータに相当するピクセル位置からデータベースに登録した情報を瞬時に読み取ることができる手術支援装置」の第1の実施の形態として、

「術具を用いた手術や治療において、術具先端と目的部位や危険部位との位置関係の情報をリアルタイムで術者に提供することが可能な手術支援装置であって、
画像処理や手術支援に必要な各種演算を行なう演算装置30と、
ISCを行うためのMRI装置である撮像装置10と、
ワークステーションで構成され、撮像シーケンスに基づく撮像制御および三次元位置検出装置20からの位置情報を利用したISC制御を行うほか、画像処理を行なう演算装置30としても機能する制御部14と、
位置検出デバイス21、小型コンピュータ23、基準ツール25、ポインタ27などから構成される三次元位置検出装置20とを有し、
位置検出デバイス21は、2台の赤外線カメラ29と、赤外線を発光する発光ダイオードを備え、ポインタ27に固定された3つの反射球の位置を検出することにより、ポインタ27の位置及び姿勢を検出し、
術前プランニング300で、患者60をMRI装置10の撮像空間に配置し、患者60の手術部位を含む範囲61のボリューム画像を取得するための撮像を行い、取得したボリューム画像は、記憶装置40に格納され、ボリューム画像からの相対位置情報の算出、登録を行い、ボリューム画像に対し3D ボリュームレンダリング等の画像処理を施し、ボリュームレンダリング画像409を表示し、
ISCでは三次元位置検出装置20(位置検出デバイス21)がポインタ27の位置を検出することにより、術具位置をリアルタイム検出し、術具位置を含む断面の撮像を行わせ、
ISCによる撮像は、三次元位置検出装置20の位置検出頻度に合わせて繰り返され、
撮像と同時に、演算装置30は、術具先端位置に相当するピクセル位置からデータベースに登録した相対位置情報をリアルタイムに読み取り、読み取った相対位置情報を、術具位置を含む断面の画像及びVolume Rendering画像814上に先端位置とともにモニタに表示し、
手術時には、三次元位置検出装置を用いて術具位置を追随することにより、術具815を含むVolume Rendering画像814が時系列的に変化する、
手術時には位置検出装置を用いて検出した術具先端位置とボリュームデータに相当するピクセル位置からデータベースに登録した情報を瞬時に読み取ることができる手術支援装置」

が記載されている。

(2)上記1の(引5h)より、第2の実施の形態は、「撮像装置10」と、「演算装置30」と、ボリューム画像等を格納する「記憶装置40」と、「インターフェイス装置50」とを備えていることは、第1の実施の形態と同様であり、また術前プランニングとして、過去に撮像したボリューム画像を用いてセグメンテーションを行い、各ピクセルからセグメンテーション領域までの距離・方向等の相対位置情報を算出し、登録することも第1の実施の形態と同様である。そして、(引5i)より、「術具」は「ロボット80」のロボットアームに固定され、ロボットアームを介して手術が行なわれ、「ロボット80」には「駆動・制御系」が内蔵されているから、引用文献5の第2の実施の形態には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「術具を用いた手術や治療において、術具先端と目的部位や危険部位との位置関係の情報をリアルタイムで術者に提供することが可能な手術支援装置であって、
画像処理や手術支援に必要な各種演算を行なう演算装置30と、
ISCを行うためのMRI装置である撮像装置10と、
ワークステーションで構成され、撮像シーケンスに基づく撮像制御および三次元位置検出装置20からの位置情報を利用したISC制御を行うほか、画像処理を行なう演算装置30としても機能する制御部14と、
位置検出デバイス21、小型コンピュータ23、基準ツール25、ポインタ27などから構成される三次元位置検出装置20とを有し、
位置検出デバイス21は、2台の赤外線カメラ29と、赤外線を発光する発光ダイオードを備え、ポインタ27に固定された3つの反射球の位置を検出することにより、ポインタ27の位置及び姿勢を検出し、
術前プランニング300で、患者60をMRI装置10の撮像空間に配置し、患者60の手術部位を含む範囲61のボリューム画像を取得するための撮像を行い、取得したボリューム画像は、記憶装置40に格納され、ボリューム画像からの相対位置情報の算出、登録を行い、ボリューム画像に対し3D ボリュームレンダリング等の画像処理を施し、ボリュームレンダリング画像409を表示し、
ISCでは三次元位置検出装置20(位置検出デバイス21)がポインタ27の位置を検出することにより、術具位置をリアルタイム検出し、術具位置を含む断面の撮像を行わせ、
ISCによる撮像は、三次元位置検出装置20の位置検出頻度に合わせて繰り返され、
撮像と同時に、演算装置30は、術具先端位置に相当するピクセル位置からデータベースに登録した相対位置情報をリアルタイムに読み取り、読み取った相対位置情報を、術具位置を含む断面の画像及びVolume Rendering画像814上に先端位置とともにモニタに表示し、
手術時には、三次元位置検出装置を用いて術具位置を追随することにより、術具815を含むVolume Rendering画像814が時系列的に変化し、
術具はロボット80のロボットアームに固定され、ロボットアームを介して手術が行なわれ、ロボット80には駆動・制御系が内蔵された、
手術時には位置検出装置を用いて検出した術具先端位置とボリュームデータに相当するピクセル位置からデータベースに登録した情報を瞬時に読み取ることができる手術支援装置」

3 周知技術
(1)引用文献6の記載
(引6a)「【0002】
MRI装置、X線装置等の医用画像診断装置を用いた撮影手法にフルオロスコピーと呼ばれるリアルタイム動態画像化法があり、その臨床応用が進められている。フルオロスコピーは、従来、X線装置を用いた透視撮影で実現されていたが、近年、MRI装置に高速撮影法の開発に伴い実用化されている。このようなフルオロスコピーは、オープンタイプのMRI装置の開発と相俟って、画像診断装置でモニタ画像を撮影しながら手術や治療を行なうインターベンショナルMRI(IMRI)を可能にしている。IMRIにおけるフルオロスコピーの用途として、具体的には、穿刺針やカテーテルを誘導する際のモニタリングや、腫瘍細胞に電磁波や赤外線を照射して死滅させる温熱療法(ハイパーサーミア治療)やクライオサージェリー(凍結療法)の治療効果の確認等があり、そのための撮影手法も提案されている。」

(引6b)「【0024】
図3に示す温熱治療装置は、RF交流電流を発生するジェネレータ303を備えた制御部301と、ジェネレータ303にディスポーザブルケーブル305、306を介して接続されたハンドピース(穿刺電極)304及び対極板307を備えたプローブ302とからなり、制御部301には図示しない操作部が備えられている。
この温熱治療装置では、ジェネレータ303からの高周波電流をハンドピース304を介して病変組織に伝達して病変組織を熱凝固壊死させる(図中、Lは病変、Hは熱凝固領域である)。この際、ディスポーザブルケーブル305、306には温度センサが付いており凝固温度をリアルタイムでモニタすることができる。また病変の大きさに応じてハンドピースの数を増減することができる。」

(引6c)「【0027】
次いでプローブ先端を治療部位(ターゲット)に挿入するための穿刺を行う(ステップ402?404)。ターゲットまでの穿刺針(プローブ)の挿入は、フルオロスコピーを用いたインタラクティブスキャンを利用することができる。この手法は、穿刺針の挿入方向に合わせて適宜撮像断面を変えながらリアルタイム画像の撮像・表示を繰り返し、穿刺針をターゲットに誘導する手法であり、具体的には、ターゲットを含む3軸断面の撮像(ステップ404)と穿刺(ステップ403)とを、穿刺針がターゲットに到達したかどうかをモニタ画像で確認しながら繰り返す(ステップ404、405)。この繰り返しにおいてステップ401で撮像する3軸断面に常にターゲットが含まれるように撮影断面を決定する。位置決め画像取得時に穿刺の自動シミュレートを行った場合には、シミュレート結果を画像上に表示し術者を支援することが可能であり、術者がシミュレート結果と異なる行動をとった場合には、警告を発することもできる。この判断は、例えばシミュレートした経路と穿刺過程で取得した画像における穿刺針とのずれが閾値を超えるかを判断することにより行うことができ、閾値を超えた場合には、音声の発生や点灯などで警告を発する。」

(2)引用文献7の記載
(引7a)「【0023】
外部導体と第二導体とを相対変位可能とした構成によれば、第一導体と外部導体とを、いわゆる同軸線により形成することができるため、第一導体から放射される電磁的なノイズを外部導体によりシールドすることが可能となる結果、ノイズレベルを低下させることができるので、医療用処置具の全体構成を非磁性体金属により形成することにより、例えば、MRIシステムによる磁場環境下においても好適に使用することができる。」

(引7b)「【0050】
上記医療用処置具1において、上記中心電極12a及び外部電極16aが中心導体12及び移動導体16の軸線方向に対して互いに上方に湾曲しているため、複雑に重なった生体組織Sにおける深部に治療対象部位S1が位置している場合に、両電極12a、16aを生体組織Sの間へ速やかに滑り込ませる(刺入する)ことができ、また、このとき両側の生体組織Sに対する損傷等を抑制し、非侵襲的にスムーズな刺入処置を施すことができる。そして、このように治療対象部位S1に到達した両電極12a、16aにより、治療対象部位S1を把持して手前側に引出すことや、両電極12a、16a間にマイクロ波電圧を印加して治療対象部位S1を凝固、切断することができる。」

(引7c)「【0056】
上記医療用処置具1において、高周波電源の接地側と電気的に接続し、絶縁層13を介して中心導体12の外側を被覆するとともに、中心導体12と同心に配設される導電性の外部導体14をさらに備え、上記移動導体16は、この外部導体14の外周部と接触しつつ、外部導体14に対して前後方向に相対変位可能に構成されているため、中心導体12と外部導体14とを同軸線により形成することができ、中心導体12から放射される電磁的なノイズを外部導体14によりシールドすることが可能となる結果、ノイズレベルを低下させることができるので、医療用処置具1の全体構成をリン青銅等の非磁性体金属により形成することにより、例えば、MRIシステムによる磁場環境下においても好適に使用することができる。」

(3)引用文献6及び7に記載があるように、MR画像下で、マイクロ波デバイスを使用することは周知技術である。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

1 引用発明の「手術支援装置」は、本願発明の「手術システム」に相当する。また、引用発明の「術具815を含むVolume Rendering画像814」は、「手術時には、三次元位置検出装置を用いて術具位置を追随することにより、時系列的に変化」するものであるから、本願発明の「三次元リアルタイムMR画像」に相当する。そして、引用発明の「術具先端と目的部位や危険部位との位置関係の情報」は「術具815を含むVolume Rendering画像814」より提供されるから、引用発明の「術具を用いた手術や治療において、術具先端と目的部位や危険部位との位置関係の情報をリアルタイムで術者に提供することが可能な手術支援装置」は、本願発明の「三次元リアルタイムMR画像下での手術システム」に相当する。

2 引用発明の「ワークステーション」で構成された「制御部14」は、「撮像シーケンスに基づく撮像制御」「を行う」から、本願発明の「MRI装置及び撮像面を制御」する「MRワークステーション」に相当する。

3 引用発明の「三次元位置検出装置20」は、「術具位置をリアルタイム検出し」ている。そして、「ISC」では、「術具位置を含む断面の撮像」を行い、「ISCによる撮像」は、「三次元位置検出装置20の位置検出頻度に合わせて繰り返され」、「ISCによる撮像」は、「MRI装置」が行うものであるから、引用発明の「ISC」により「撮像」された「術具位置を含む断面」の画像は、「MRI装置」により、連続的に撮像された、リアルタイムな画像であるといえる。
そうすると、引用発明の「手術支援装置」と、本願発明の「手術システム」とは、「MRI装置からのMR画像を連続的に撮像することにより、リアルタイムMR画像を生成する」点で共通する。

4 本願発明の「マイクロ波デバイス」は術具の一つである。そして、引用発明の「三次元位置検出装置20」は、「位置検出デバイス21、小型コンピュータ23、基準ツール25、ポインタ27などから構成され」、「位置検出デバイス21は、2台の赤外線カメラ29と、赤外線を発光する発光ダイオードを備え、ポインタ27に固定された3つの反射球の位置を検出することにより、ポインタ27の位置及び姿勢を検出」するものであるから、引用発明の「三次元位置検出装置20」は、本願発明の「光学式の位置センサー装置」に相当する。
また、引用発明の「三次元位置検出装置20」は、「術具位置をリアルタイム検出し」、「演算装置30」が、「撮像と同時に」、「術具先端位置に相当するピクセル位置からデータベースに登録した相対位置情報をリアルタイムに読み取り、読み取った相対位置情報を、先端位置とともにモニタに表示し」ているから、「三次元位置検出装置20」が検出した「術具位置」は、「演算装置30」に伝送されていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「三次元位置検出装置20」と、本願発明の「光学式の位置センサー装置」とは、「術具位置を特定し、該位置情報を伝送する光学式の位置センサー装置」である点で共通している。

5 引用発明の「術具は、ロボット80のロボットアームに固定され、ロボットアームを介して手術が行なわれ、ロボット80には駆動・制御系が内蔵され」ているから、引用発明の「術具」と、本願発明の「マイクロ波デバイス」とは、「術具の制御・操作のための駆動・制御系」を有している点で共通する。

6 引用発明の「患者のボリューム画像」は、「術前プランニング300」で取得されるから、本願発明の「予め取得した生体内画像」に相当する。また
、引用発明の「ISC」により「撮像」された「術具位置を含む断面」の画像は、上記3で検討したとおり、本願発明の「リアルタイムMR画像」に相当する。そして、引用発明の「演算装置30」は、「ISC」による「術具位置を含む断面」の画像の「撮像と同時に、術具先端位置に相当するピクセル位置からデータベースに登録した相対位置情報をリアルタイムに読み取り、読み取った相対位置情報を、術具位置を含む断面の画像及びVolume Rendering画像814上に先端位置とともにモニタに表示し」ており、この「相対位置情報」は、「ボリューム画像」から「算出・登録」されるものであるから、引用発明の「患者のボリューム画像」、「ISC」により「撮像」された「術具位置を含む断面」の画像及び「術具先端位置に相当するピクセル位置」は、「演算装置30」により統合されているといえる。そうすると、引用発明の「演算装置30」としても機能する「制御部14」と、本願発明の「メインワークステーション」とは、「予め取得した生体内画像、該リアルタイムMR画像、並びに術具の位置情報を統合可能なワークステーション」である点で共通する。

7 引用発明の手術支援装置は、手術時には位置検出装置を用いて検出した術具先端位置とボリュームデータに相当するピクセル位置からデータベースに登録した情報を瞬時に読み取ることができるものであり、その情報は、手術時には、三次元位置検出装置を用いて術具位置を追随することにより、時系列的に変化する術具815を含むVolume Rendering画像814であるから、引用発明の「手術装置」は、本願発明の「術者がリアルタイムに生体の内部状況と術具の位置を画像によって確認し、処置する生体物及び術具の位置を確認しながら手術できる手術システム」に相当する。

8 以上1?7より、本願発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点がある。

(一致点)
「三次元リアルタイムMR画像下での手術システムであって:
MRI装置と;
MRI装置及び撮像面を制御し、MRI装置からのMR画像を連続的に撮像することにより、リアルタイムMR画像を生成するMRワークステーションと;
術具の位置を特定し、該位置情報を伝送する光学式の位置センサー装置と;
術具の制御・操作のための駆動・制御系と;
予め取得した生体内画像、該リアルタイムMR画像、並びに術具の位置情報を統合可能なワークステーションと、を有し、
術者がリアルタイムに生体の内部状況とマイクロ波デバイスの位置を画像によって確認し、処置する生体物及びマイクロ波デバイスの位置を確認しながら手術できる手術システム。」

(相違点1)
ワークステーションが、本願発明は、MRI装置及び撮像面を制御するMRワークステーションと、予め取得した生体内画像、該リアルタイムMR画像、並びにマイクロ波デバイスの位置情報を統合可能なメインワークステーションとからなり、MRワークステーションは、MRI装置からのMR画像を連続的に伝送することにより、リアルタイムMR画像をメインワークステーションに伝送するのに対し、引用発明は、「撮像シーケンスに基づく撮像制御および三次元位置検出装置20からの位置情報を利用したISC制御」と、「患者のボリューム画像」、「ISC」により「撮像」された「術具位置を含む断面」の画像及び「術具先端位置に相当するピクセル位置」を統合する処理とを併せて行う「制御部14」である点。

(相違点2)
術具の制御・操作のための駆動・制御系が、本願発明では、「制御ワークステーション」であるのに対し、引用発明では、「ロボット80に内蔵された駆動・制御系」である点。

(相違点3)
術具が、本願発明は「マイクロ波デバイス」であるのに対し、引用発明は、「術具」としか特定されていない点。

第6 判断
1 相違点1について
複数の制御や処理を1台のワークステーションで行うか複数のワークステーションで行うかは、環境等を考慮して適宜設定されるものであるから、引用発明の「制御部14」を、「撮像シーケンスに基づく撮像制御および三次元位置検出装置20からの位置情報を利用したISC制御」を行うワークステーションと、「患者のボリューム画像」、「ISC」により「撮像」された「術具位置を含む断面」の画像及び「術具先端位置に相当するピクセル位置」の統合する処理を行うワークステーションとの、2台のワークステーションとすることは、当業者が容易に想到できたことであり、その場合、「撮像シーケンスに基づく撮像制御および三次元位置検出装置20からの位置情報を利用したISC制御」を行うワークステーションから、撮像された画像が、「患者のボリューム画像」、「ISC」により「撮像」された「術具位置を含む断面」の画像及び「術具先端位置に相当するピクセル位置」の統合する処理を行うワークステーションに送られることは当然のことにすぎないから、相違点1にかかる構成は、引用発明から当業者が容易に想到できたことである。

2 相違点2について
術具の制御や操作を、ワークステーションで行う事は常套手段にすぎないから、相違点2は実質的な相違点とはならないし、例え相違点となったとしても、当業者が容易に想到できたことである。

3 相違点3について
MR画像下で、マイクロ波デバイスを使用することは周知であって(上記、第4の3参照)、その際に、マイクロ波デバイスの先端位置が重要となることも自明であるから、引用発明の手術時には位置検出装置を用いて検出した術具先端位置とボリュームデータに相当するピクセル位置からデータベースに登録した情報を瞬時に読み取ることができる手術支援装置の術具として、該周知のマイクロ波デバイスを適用することは、当業者が容易に想到できたことである。

4 効果について
本願発明の効果は、引用文献5ないし7から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

5 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「4.進歩性欠如について」において
「(1-1)理由1-A?1-Cに対する当業者の技術常識
穿刺針で可能な治療は、針による組織凝固、薬液の注入出であり、主に内科や放射線科における治療法といえます。この穿刺針での治療で必要となるのは、部位や方向性、凝固部位を確定する事のみであります。
一方、マイクロ波デバイスでの治療は、MRI画像下で使える周波数であること、切除、止血するいわゆる外科系手術で用いる治療法であります。すなわち、マイクロ波デバイスでの治療は、引用文献5に記載の穿刺針を使用した治療法とは異なり、部位や方向性、凝固範囲を確定することだけでは治療することはできません。さらに、マイクロ波デバイスでの治療は、多くの外科系分野に共通する機器の情報も必要となります。
さらに、外科手術では、時々刻々と変形、移動する臓器とデバイス(マイクロ波デバイス)の空間位置関係を画像で確認できることが必須であり、リアルタイム性が求められます。一方、穿刺針では可能な治療操作が限られ、従って求められる動きも単純であります。
以上により、当業者は、「穿刺針」を「マイクロデバイス」に転用することは容易に想到することはありません。

(1-2)請求項に係る三次元リアルタイムMR画像下での手術システムの顕著な効果
請求項に係る三次元リアルタイムMR画像下での手術システム(本システム)では、単に、穿刺針をマイクロデバイスに転用しただけでは得ることができない顕著かつ異質な効果を有することを確認しております。同日付で提出する物件提出書を基にして下記で説明致します。

A:立体画像の取得(物件提出書によりカラー図面を提出)
本システムでは、水平画像、冠状画像、垂直断面画像を一度に術者に提供し、さらに、これらの画像の統合で立体画像を提供しています。また、本システムでは、同じ画面を内視鏡画像や、温度画像に変えることも提供できます。

B:高精度な空間位置センシング(物件提出書によりカラー図面を提出)
本システムでは、実際の位置との誤差がmm単位であることを示しています。すなわち、本システムでは、高精度な空間位置センシングによる治療環境を術者に提供しています。

C:実際の使用例(物件提出書によりカラー図面を提出)
左図では、内視鏡から出た鉗子類にて組織(肝臓)の仮想標的を凝固しています。右図では、該内視鏡の腹腔内の位置を示しています。すなわち、本システムでは、生体内に入れたマイクロ波デバイス、内視鏡の生体内での位置を術者に正確に提供することができます。

D:総合評価
本システムでは、物件提出書3の画像でも確認できるように、マイクロ波デバイス、内視鏡の動きに沿ってリアルタイムに3次元(深部情報も含め)情報を確認しながら手術できることを提供することを可能にしました。さらに、本システムでは、外部から見えない肝臓内部の血管を切る直前に、該内部構造を認識して、必要な箇所は残して、不必要な箇所を判断して切除することもできます。さらに、本システムでは、MRなので、被曝もありません。

以上より、本願請求項1は、進歩性を有すると思料します。」と主張する。

(1)「(1-1)理由1-A?1-Cに対する当業者の技術常識」について
請求人は、引用文献5は、穿刺針での治療に関し記載されているものであり、穿刺針で可能な治療と、マイクロ波デバイスでの治療とは、その内容が異なるため、「穿刺針」を「マイクロ波デバイス」に転用することは容易に想到できない旨主張しているが、「穿刺針」は、引用文献5の段落【0021】に「術具」の一例として記載されたものであって、引用発明は、術具先端位置の確認が必要な「術具」を使用した「手術支援装置」の発明である。そして、上記3で検討したとおり、「マイクロ波デバイス」が、MR画像下で使用されることは周知であって、その際に、マイクロ波デバイスの先端位置が重要となることも自明であるから、「術具」を「マイクロ波デバイス」に特定することは、当業者が容易に想到できたことであるから、請求人の主張は採用されない。

(2)「(1-2)請求項に係る三次元リアルタイムMR画像下での手術システムの顕著な効果」について
ア 「A:立体画像の取得」について
「本システムでは、水平画像、冠状画像、垂直断面画像を一度に術者に提供し、さらに、これらの画像の統合で立体画像を提供しています。」と主張しているが、本願発明は、「三次元リアルタイムMR画像下での手術システム」であるから、「水平画像、冠状画像、垂直断面画像を一度に術者に提供」する点は、本願発明において特定されていないから、この点についての主張は、本願発明に基づかない主張である。また、「本システムでは、同じ画面を内視鏡画像や、温度画像に変えることも提供できます。」とも主張しているが、「内視鏡画像や、温度画像に変える」点に関しても、本願発明において特定されていないから、この点についての主張も本願発明に基づかない主張である。そして、「立体画像」を提供することに関しては、上記第5で検討したとおり、引用発明において特定されているから、立体画像の取得による効果は、引用文献5に記載の事項より、当業者が予測できる程度のものであるといえる。そうすると、この点に関する請求人の主張は採用されない。
なお、水平画像、冠状画像、垂直断面画像を一度に術者に提供する点や、同じ画面を内視鏡画像や、温度画像に変えることも提供できる点が本願発明の特定事項であったとしても、引用文献5の段落【0033】及び図8に「術具815を含む3軸断面(Axia1 811、Sagital 812、Colona1 813)」が(上記(引5g)参照)、段落【0015】には、「内視鏡を用いる場合には内視鏡映像など」を記録する旨の記載があることから、これらの点に関しても引用文献5に記載の事項より、当業者が容易に予測できる程度のものであるといえる。

イ 「B:高精度な空間位置センシング」について
「高精度な空間位置センシング」は、本願発明では「磁気トラッキング装置及び/又は光学式の位置センサー装置」が行うものであり、引用発明には、本願発明の「光学式の位置センサー装置」に相当する「三次元位置検出装置20」が記載されていることから、引用発明においても「高精度な空間位置センシング」が可能であることは明らかである。そうすると、「高精度な空間位置センシング」に関する効果は、引用文献5に記載の事項から当業者が予測できる程度のものであるから、この点に関する請求人の主張は採用されない。

ウ 「C:実際の使用例」について
「本システムでは、生体内に入れたマイクロ波デバイス、内視鏡の生体内での位置を術者に正確に提供」する旨主張しているが、「内視鏡の生体内での位置」は、本願発明で特定されている事項ではないので、本願発明に基づく主張であるとはいえず、また、「マイクロ波デバイス」の生体内での位置を術者に正確に提供する点も、上記3で検討したとおり、「マイクロ波デバイス」をMR画像下で使用することは周知であって、引用発明の「術具」を「マイクロ波デバイス」とすることは当業者が容易に想到できることであるから、「マイクロ波デバイス」の生体内での位置を術者に正確に提供することによる効果も、引用文献5に記載の事項及び周知の技術事項から当業者が容易に予測できる程度のものである。そうすると、この点に関する請求人の主張も採用されない。

エ 「D:総合評価」について
上記ア?ウで検討したとおり、請求人が主張するA?Cに関する効果は、いずれも引用文献5に記載された事項及び周知の技術事項から、当業者が容易に予測できる程度のものであるから、これらを総合した効果も、引用文献5に記載された事項や周知の技術事項から、当業者が容易に予測できる程度のものである。そして、請求人が、さらなる効果としてMRなので被爆がない旨主張しているが、引用発明も本願発明と同じMR画像下であるから、被爆がないことは明らかである。そうすると、この点に関しても、引用文献5に記載の事項及び周知の技術事項から当業者が容易に予測できる程度のものである。そうすると、この点に関する請求人の主張も採用されない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献5に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-12 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-05-28 
出願番号 特願2011-203232(P2011-203232)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昭治  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 福島 浩司
▲高▼見 重雄
発明の名称 三次元リアルタイムMR画像誘導下手術システム  
代理人 庄司 隆  

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