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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61H
管理番号 1354803
審判番号 不服2018-5551  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-23 
確定日 2019-08-29 
事件の表示 特願2017-145058「吸引器具」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日出願公開、特開2019- 24675〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年7月27日の出願であって,その手続の概要は以下のとおりである。
平成29年 8月23日付け:拒絶理由通知
平成29年10月30日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年11月 8日付け:拒絶理由通知(最後)
平成30年 1月 9日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年 1月19日付け:平成30年1月9日にされた手続補正につ いての補正の却下の決定,拒絶査定
平成30年 4月23日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 平成30年4月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「内部に負圧を生成する吸気部と、
対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる壁体を有する弾性の吸引部と、
前記吸気部と前記吸引部を内部連通した状態で接続する接続部と、を有し、
前記吸引部は、前記壁体の開放端部の少なくとも一部に、前記壁体に比して柔軟かつ二重成形された軟質部材を有していることを特徴とする吸引器具。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の,平成29年10月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「内部に負圧を生成する吸気部と、
対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる壁体を有する吸引部と、
前記吸気部と前記吸引部を内部連通した状態で接続する接続部と、を有し、
前記吸引部は、前記壁体の開放端部の少なくとも一部に、前記壁体に比して柔軟かつ二重成形された軟質部材を有していることを特徴とする吸引器具。」

2 補正の適否
本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「吸引部」について「弾性の」との限定を付加する補正を含むものであって,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開平5-220198号公報(平成5年8月31日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】最近、吸引ポンプと透明なプラスチック製のカップからなる吸引式健康器具が提案されている。該健康器具は、カップの開口部を人肌に当てて、吸引ポンプのピストンを引いて、カップの中を減圧し、吸引された人肌の血行を良くし、肩凝などを解消するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記健康器具は、吸引しても、カップの開口部周縁と人肌との間から空気が入るため、減圧状態を長く維持することができない。特に、腕等の曲面部では、減圧状態を維持できず、ピストンを何回も引き直さなければならず、面倒である。従って、本発明の目的は、カップの減圧状態を長く維持できる安全かつ確実な吸引式健康器具の使用方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明による吸引式健康器具の使用方法は、吸引ポンプとカップからなる吸引式健康器具の使用に際し、該カップの開口部周縁と人肌との間に発泡体シートを介在させることを特徴とする。発泡体シートは、独立気泡構造を有し、カップの開口部周縁に略沿ったドーナツ状である。発泡体シートとしては、柔軟性を有する発泡体が好ましく、例えば、ポリオレフィン発泡体等のプラスチック発泡体、天然ゴム又は合成ゴムの発泡体が適用でき、架橋ポリエチレン系発泡体が特に好ましい。架橋ポリエチレン系発泡体が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を基材とする場合は、発泡体が柔軟性に優れ、特に効果が顕著である。該発泡体シートの発泡倍率は、10?50倍の範囲が好ましい。該発泡体シートの厚みは、2?20mmが、パッキン効果の面で好ましい。
【0005】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための吸引式健康器具の使用方法を例示するものであって、下記の構造に限定するものではない。第1図の斜視図に示す吸引式健康器具の使用方法において、1はエチレン-酢酸ビニル共重合体を基材とする架橋発泡体で発泡倍率40倍程度で、均一微細な独立気泡構造から成る。2は、カップで透明なプラスチック製である。3は、吸引ポンプで、カップ2と吸引ポンプ3は脱着自在である。4は、人肌であり、発泡体シート1を当てて、吸引ポンプ3で減圧することによって、血行を良くする。発泡体シート1の片面に粘着剤を付けて、カップ2の開口部周縁に発泡体シート1を接着させて、一体とすることによって、作業性を改善することができる。又、粘着面を設けた発泡体シートを人肌に付けた後、カップ2の開口部周縁を発泡体シート1の表面に当てて、吸引することもできる。
【0006】
【発明の効果】以上説明したように本発明の吸引式健康器具の使用方法によれば、カップと人肌との間に介在させる発泡体シートとのパッキン効果によって、減圧状態を長く保持でき、特に腕等の曲面部に適用すると、本発明の効果が顕著である。本発明の方法によれば、一回の吸引で減圧状態を長時間保持できるため、肩凝等の患部を作業性良く、かつ簡単に治療できる。」

【図1】


イ 上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア) 引用文献1に記載された技術は,吸引式健康器具に関するものである(【0003】)。
(イ) 吸引ポンプ3は,減圧するためのものである(【0005】)。
(ウ) カップ2は,プラスチック製であり,吸引ポンプ3により内部が減圧されて,人肌4を吸引し(【0002】,【0003】,【0005】,図1),減圧状態を保持できる(【0006】)。また,図1から,カップ2は,壁部を有していることが見てとれる。
(エ) カップ内部が吸引ポンプで減圧されることから,吸引ポンプ3とカップ2とは内部連通した状態で接続されているものであるといえる。
(オ) カップ2の開口部周縁に発泡体シート1が接着により一体とされる(【0005】)。発泡体シートは,柔軟性を有する(【0004】)。

ウ 上記ア,イから,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「吸引ポンプ3と,
人肌4を吸引するために減圧状態を保持できる壁部を有するプラスチック製のカップ2と,
前記ポンプ3と前記カップ2とを内部連通した状態で接続する部分と,を有し,
前記カップ2は,前記壁部の開口部周縁に接着により一体とされた柔軟性を有する発泡体シートを有している吸引式健康器具。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「吸引式健康器具」は,吸引式の器具であることから,本件補正発明の「吸引器具」に相当する。
引用発明の「吸引ポンプ3」は,吸気により減圧を生じさせるものであるので,その構造上内部に負圧を生成するものであることは明らかであることから,本件補正発明の「内部に負圧を生成する吸気部」に相当する。
引用発明の「人肌4」は,吸引の対象となるものであるから,本件補正発明の「対象物」に相当する。
引用発明の「減圧状態を保持できる壁部」は,その機能からみて,本件補正発明の「内部に負圧を維持することができる壁体」に相当する。
引用発明の「カップ2」は,「対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる壁体を有する」限りにおいて,本件補正発明の「吸引部」と共通する。
引用発明の「前記ポンプ3と前記カップ2とを内部連通した状態で接続する部分」は,その機能からみて,本件補正発明の「前記吸気部と前記吸引部を内部連通した状態で接続する接続部」に相当する。
引用発明の「前記壁部の開口部周縁」は,その位置から見て,本件補正発明の「前記壁体の解放端部」に相当する。
引用発明の「柔軟性を有する発泡体シート」は,軟質の部材であるといえ,壁体の解放端部の少なくとも一部に一体とされているという限りにおいて本件補正発明の「軟質部材」に相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明とは以下の【一致点】で一致し,【相違点1】?【相違点3】で一応相違する。
【一致点】
「内部に負圧を生成する吸気部と、
対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる壁体を有する吸引部と、
前記吸気部と前記吸引部を内部連通した状態で接続する接続部と、を有し、
前記吸引部は、前記壁体の開放端部の少なくとも一部に、一体とされた軟質部材を有している吸引器具。」
【相違点1】
吸引部について,本件補正発明では,弾性のものであるのに対し,引用発明では,プラスチック製であるが,そのような構成を有するか明らかでない点。
【相違点2】
軟質部材について,本件補正発明では,前記壁体に比して柔軟であるのに対し,引用発明では,そのような構成を有するか明らかでない点。
【相違点3】
軟質部材を壁体の解放端部の少なくとも一部に一体とする手段について,本件補正発明では,二重成形であるのに対し,引用発明では,接着である点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
「弾性」とは,「外力によって形や体積に変化を生じた物体が、力を取り去ると再び元の状態に回復する性質。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)のことをいい,プラスチック製のカップであれば,程度の大小こそあれ弾性を有することが知られている。
ここで,本件補正発明でいう吸引部の「弾性」とは,請求項1の「対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる壁体を有する弾性の吸引部」との記載から,「対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる」程度の弾性のことを指すと認められる。
そして,引用発明のプラスチック製のカップにおいても,その機能からみて明らかに「対象物を吸引するために内部に負圧を維持することができる」程度の「弾性」を有するといえる。
してみると,相違点1は,実質的な相違点ではないということになる

なお,出願人は,審判請求書の3.(4)に「弾性を有する吸引部と軟質部材は、吸引面に対して吸引口が広がるように変形して当接します。そして、吸気部が元に戻ろうとする力によって、変形して広がった形をしている吸引部および吸引口も元の形に戻ろうとする力が働きます。しかし、軟質部材が吸引面にしっかり吸着しているため、吸着状態が維持されます。そのため、凹凸を有する吸着面であっても、吸引することができます。(本願明細書段落[0055])。」と記載しており,本件補正発明は弾性を有する吸引部が吸引口が広がるように変形して当接する旨主張しているが,本願の明細書の【0055】には,「吸気部2が元の球の形状に戻ろうとする力によって、吸気部2と吸引部3の内部が負圧になり、吸引口5が対象物の吸引面を吸引する。吸引部3の壁体は内部の負圧を維持できるような弾性体からなり、かつ、軟質部材6の柔軟性によって吸引面の凹凸にぴったりフィットする。これにより、吸引口5と吸引面の間にシールが形成され、吸着状態を長時間維持することができる。」と記載しているのみであり,弾性を有する吸引部が吸引口が広がるように変形して当接するということまでは記載されているとはいえない。また,明細書中の他の箇所をみても,弾性を有する吸引部が吸引口が広がるように変形して当接するということについての記載はない。
よって,上記主張は当初明細書の記載に基づくものでなく,受け入れられない。
なお,人体を吸引する吸引部が弾性を有し,吸引口が広がるように変形して当接することは,例えば特開2008-22914号公報(【0004】?【0006】参照。),特開2001-120615号公報(【0002】,【0003】参照。)にも記載されているように,本願の出願日時点で周知の技術である。

イ 相違点2について
引用発明の発泡体シート(「軟質部材」)は,カップの開口部周縁(「壁体の解放端部」)と人肌との間から空気が入るという課題を解決するために設けられるものであり(上記2の(2)アで摘記した【0003】参照。),発泡体シート(「軟質部材」)のパッキン効果によって減圧状態を長く保持できる(上記2の(2)アで摘記した【0006】参照。)ものである。
このことから,発泡体シート(「軟質部材」)はカップ(「壁体」)よりも人肌に対する追従性を有するものであり,すなわち,カップ(「壁体」)に比して柔軟であるといえる。
よって,相違点2も実質的な相違点ではない。

ウ 相違点3について
例えば,特開2006-206056号公報(【0016】参照。),特開2000-116540号公報(【0047】参照。),及び特開平8-90589号公報(【0004】参照。)に記載されているように,二重成形は,二部材を一体とする手段として本願出願日時点で周知の技術である。
ここで,引用発明において,軟質部材を壁体の解放端部の少なくとも一部に一体とする手段として,「接着」に代えて「二重成形」とすることは,周知の技術に単に置換したにすぎず,当業者にとって何ら困難性はない。

エ そして,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び上記周知の技術の奏する作用効果から予想される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ したがって,本件補正発明は,引用発明及び上記の周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明について
平成30年4月23日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年10月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1 特開平5-220198号公報
引用文献2 特開2006-206056号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「弾性の」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び上記の周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び上記の周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-11 
結審通知日 2019-06-25 
審決日 2019-07-17 
出願番号 特願2017-145058(P2017-145058)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 寺川 ゆりか
莊司 英史
発明の名称 吸引器具  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  
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