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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05D
管理番号 1354832
審判番号 不服2018-9836  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-18 
確定日 2019-09-25 
事件の表示 特願2014-86811「自律走行体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-207120、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月18日の出願であって、平成29年8月31日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年11月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月16日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年7月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和元年5月23日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和元年7月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献A、B、FないしHに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.本願請求項2ないし7に係る発明は、以下の引用文献AないしHに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2006-139525号公報
B.特開2008-90575号公報
C.特開2006-201991号公報
D.特開2004-133846号公報
E.特開2005-205529号公報
F.特開2003-268377号公報(周知技術を示す文献)
G.特開平5-108148号公報(周知技術を示す文献)
H.特開2005-38035号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.本願請求項4及び5に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-139525号公報(原査定の引用文献A)
2.特開2014-62932号公報(当審において新たに引用した文献、周知技術を示す文献)
3.特開2013-235351号公報(当審において新たに引用した文献)
4.特開2005-205529号公報(原査定の引用文献E)


第4 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和元年7月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「【請求項1】
本体ケースと、
この本体ケースに設けられ、所定の画角で撮像可能な撮像手段と、
前記本体ケースを走行可能とする駆動輪と、
前記本体ケースに設けられ、障害物との距離を検出することで障害物の有無を検出する障害物検出手段と、
前記駆動輪の駆動を制御することで前記本体ケースを自律走行させる走行モードと、所定の撮像位置に前記本体ケースを自律走行させて前記画角以下の角度で順次隣り合う複数の方向の静止画を、隣り合う静止画どうしが互いに重複する箇所をそれぞれ有するように前記撮像手段により撮像させる撮像モードとを少なくとも有する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記撮像モードにおいて、前記障害物検出手段による障害物の検出に基づいて前記撮像手段による撮像位置を設定するものであって、前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とすることを特徴とした自律走行体。
【請求項2】
制御手段は、駆動輪の駆動を制御することで本体ケースを旋回可能である
ことを特徴とした請求項1記載の自律走行体。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
当審拒絶理由通知で引用された引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は理解の便のため、当審で付した。)。

「【0006】
本発明の目的は、前記ロボットおよびカメラの姿勢をユーザが意識することなく、前記カメラ映像の中から監視対象物を選択することで、自動的に該ロボットと該カメラの動作操作を可能にする遠隔監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で開示する代表的な発明は以下の通りである。画像を撮像する撮像装置と、撮像された画像を上記入力端末に送出する送信部と、撮影時の上記自律移動型ロボットの進行方向と内蔵カメラの方向および画角を記憶する制御部と、入力端末から前記撮影された画像中の対象物位置指定情報を受信する受信部とを備えている自立移動型ロボットであって、制御部は前記自律移動型ロボットおよびカメラの移動制御を行ない、前記カメラの画面中央に前記監視対象物が映るように制御を行う。」

「【0012】
本発明の自律移動型ロボットの構造を図2に示す。図2は、本発明の自律移動型ロボットの構造の一実施例を示す、上面図および側面図である。
自律移動型ロボット1は、本体2と、本体2を床面の上で移動させる移動手段である右および左の車輪3a、3bおよびそれらを駆動するモータ4a、4bと、本体2の移動を制御する制御手段である制御装置5と、システムに電力を供給する電力供給部6と、本体2の前方周囲を撮影するカメラ7を備えている。左右のモータ4a、4bには、車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダ13a、13bが取付けられている。また、本体2の下面には、本体2を支持する補助輪11が設けられている。本体全体は、側面カバー12と上面カバー14とで覆われている。モータ4a、4bは独立に制御することができ、それぞれの回転速度と回転方向を制御することにより、本体2を床面の上で、前進、後退、および旋回させることができる。
【0013】
また、本体2には、方位角検出手段であるジャイロ8が搭載されている。ジャイロ8は、圧電振動ジャイロ等の角速度センサであり、本体2の床面上における旋回の速度を検出する。検出された角速度を制御装置5の内部で積分することにより、方位角が得られる。また、本体2には、前方の障害物を検出する前方近接センサ9と、側方の障害物を検出する側方近接センサ10が設けられている。前方近接センサ9および側方近接センサ10は、対向する物体までの距離を検出する近接距離センサであり、赤外線ビームを発光し、対象物からの反射光の方向を検出することにより、距離を検出する。」

「【0018】
前記ロボット制御信号とは、本体2を移動させるのに必要なパラメータである、車輪の回転速度、回転方向、回転角度のことである。制御装置5は、前記ロボット制御信号に基づいてモータ4a、4bの制御を行ない、本体2の移動を実現することができる。また、前記カメラ制御信号とは、カメラ7の向きを移動させるのに必要なパラメータである、モータ20、モータ21の回転速度、回転方向、回転角度のことである。さらに、前記カメラ制御信号は、カメラ7のレンズ倍率を変更するのに必要なパラメータである、レンズ倍率値も含んでいる。制御装置5は、前記カメラ制御信号に基づいてモータ20、モータ21、カメラ7のレンズ倍率を制御し、カメラの向きの移動を実現することができる。また、制御装置5は、外部操作端末100からの監視対象物選択信号302に基づいて、前記ロボット制御信号、および前記カメラ制御信号を自動的に生成し、該監視対象物がカメラ7の画面の中央に映るように、本体2、およびカメラ7を移動させることができる。ここで、カメラ7が水平方向に360度回転可能であり、このカメラ7の360度回転のみで、360度の周辺画像を取得できる場合は、カメラ制御信号のみで、監視対象物をカメラ7の画面の中央に映すことができる。
また、監視対象物選択信号302は、画像300の一部を指定する信号であり、画像の識別番号と、その画像中での指定された対象物位置の画素位置、画素ブロック位置のいずれかを特定できる情報を含む形態となる。
【0019】
以下、本発明の遠隔監視システムの処理について説明する。
図3は、外部操作端末100から自律移動型ロボット1を操作し、監視対象物の映像を取得する処理における、自律移動型ロボット1側のフローチャートである。自律移動型ロボット1は、外部操作端末100から監視開始要求信号を受信すると、ステップ400に示すように、制御装置5によって本体2を360度その場旋回をしながらカメラ7によって複数の画像300を撮影することで、360度周囲画像を取得する。また、前記360度周囲画像は、同一のレンズ倍率で撮影するものとし、その倍率値は制御装置5に記憶しておく。また、前記360度周囲画像を構成する複数の画像300をそれぞれ撮影する瞬間の自律移動型ロボット1の方向307を制御装置5に記憶しておく。したがって、前記360度周囲画像を取得後においても、任意の方向を指定することで、自律移動型ロボット1は指定された方向を向くまで再びその場旋回行ない、その方向で撮像された画像を再撮影することができる。また、前記360度周囲画像を構成する複数の画像300には、それぞれ画像を識別する為のIDが割当てられ、制御装置5に記憶される。そして、ステップ401に示すように、前記360度周囲画像を外部操作端末100へ送信する。ここで、前記画像300を撮影した時の方向307を用い、前記360度周囲画像を構成する複数の画像300に対して射影変換を行ない、画像合成することで、加工画像(パノラマ画像)を生成することができる。この加工画像は、前期画像300と同様に制御装置5へ記憶し、外部操作端末100へ送信することができる。また、前記加工画像は、前記複数の画像300に逆変換することが可能である。」

「【0021】
そして、ステップ402に示すように、自律移動型ロボット1が、外部操作端末100からの監視対象物選択信号302を受信すると、監視対象物選択信号302の示す画素位置がカメラ7の画面中央にくる為の、水平旋回角度A1および垂直移動角度A2を求める(ステップ403)。図4は、画像300における、監視対象物選択信号302、水平旋回角度A1、垂直移動角度A2の関係を示している。水平旋回角度A1は、画像300の中心位置を始点とした監視対象物までの水平方向の角度であり、垂直移動角度A2は、画像300の中心位置を始点とした監視対象物までの垂直方向の角度である。また、図5は画像300におけるカメラ7の倍率値と、画角A1との関係を示しており、図5(a)は倍率値が1倍の時、図5(b)は倍率値がα倍の時を示している。図5(a)の画角A3は実世界の視野角と一致する角度であり、自律移動型ロボット1は、予め画角A3の値を記憶している。」

「【0028】
図4、図5、図6、図7では、画像300についての処理を説明を行なったが、加工画像についても同様の処理が可能である。すなわち、加工画像を複数の画像300に逆変換すれば、上記処理と全く同じ処理を実行することができる。
また、上記のステップ400の説明では、自律移動型ロボット1の現在位置にて、360度周囲画像を撮影するように記したが、自律移動型ロボット1の制御装置5に部屋の地図情報を記憶している場合は、360度周囲画像を取得するのに適した位置を探索し、該位置まで自律移動型ロボット1を移動させた後に、ステップ400を実行することが可能である。前記360度周囲画像を取得するのに適した位置とは、例えば、自律移動型ロボット1と、該周囲に存在する障害物との距離のうち、最近距離が所定値より長い、もしくは最大となる位置であり、部屋全体の概観を撮影しやすい位置のことである。」

「【0030】
また、前記自律移動型ロボットは、その場で360度旋回を行なうことで、全周囲の映像を複数の画像として記録する全周囲画像取得手段を備えている。
また、前記自律移動型ロボットは、該ロボットの現在の位置、および方向を認識する手段と、部屋の地図情報を記憶する手段とを備えており、前記全周囲画像の取得に適した、部屋全体を監視できる位置を探索する手段を備えている。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「側面カバー12及び上面カバー14で覆われている本体2と、
この本体2に備えられ、記憶した画角A3で撮影するカメラ7と、
前記本体2を移動させる右および左の車輪3a、3bと、
前記本体2に設けられ、対向する物体までの距離を検出する前方近接センサ9及び側方近接センサ10と、
前記車輪3a、3bを駆動するモータ4a、4bを制御することで前記本体2を移動させることと、部屋の地図情報から360度周囲画像を取得するのに適した位置を探索して前記本体2を移動させ、本体2を360度その場旋回をしながら複数の画像300を、画像合成することで、加工画像(パノラマ画像)を生成できるようにカメラ7により撮影させる制御装置5とを具備し、制御装置5は、360度周囲画像を取得するのに適した位置として、自律移動型ロボット1と、該周囲に存在する障害物との距離のうち、最近距離が所定値より長い、もしくは最大となる位置であり、部屋全体の概観を撮影しやすい位置を探索する自律移動型ロボット1。」

2.引用文献2
当審拒絶理由通知で引用された引用文献2の段落【0119】ないし【0124】の記載から見て、当該引用文献2には、パノラマ画像撮影時に、姿勢制御装置2が撮影部23の画角55°以下の角度である45°ずつ回転することで水平方向1周を8等分する8枚の画像を、隣り合う画像が重複した領域を有するように撮影するという事項が記載されている。

3.引用文献3
当審拒絶理由通知で引用された引用文献3の段落【0058】、【0065】、【0074】ないし【0076】の記載から見て、当該引用文献3には、距離センサ64により得られた障害物への接近の検知に基づいて、撮影位置を設定するものであって、前記距離センサ64により検出した障害物との距離の情報に基づき、適切な量(所定量)、障害物から離れる方向に移動した位置を撮影位置とする事項が記載されている。
また、引用文献3の段落【0065】、【0079】の記載から見て、当該引用文献3には、走行マップに特定位置を規定して記憶部57に記憶しておき、走行マップの特定位置と取得した現在値の座標情報に基づき、自機を特定位置まで移動して、特定位置にて回転しながら撮影を実行してもよいという事項が記載されている。


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「側面カバー12及び上面カバー14で覆われている本体2」は、本願発明1の「本体ケース」に相当する。
引用発明の「記憶した画角A3で撮影するカメラ7」、「前記本体2を移動させる右および左の車輪3a、3b」はそれぞれ、本願発明1の「所定の画角で撮像可能な撮像手段」、「前記本体ケースを走行可能とする駆動輪」に相当する。
引用発明の「対向する物体までの距離を検出する前方近接センサ9及び側方近接センサ10」は、「対向する物体までの距離を検出」しているから、本願発明1の「障害物との距離を検出することで障害物の有無を検出する障害物検出手段」に相当する。
引用発明の「前記車輪3a、3bを駆動するモータ4a、4bを制御することで前記本体2を移動させること」という事項は、制御装置5による制御内容であるから、本願発明1の「前記駆動輪の駆動を制御することで前記本体ケースを自律走行させる走行モード」に相当する。
引用発明の制御装置5による「部屋の地図情報から360度周囲画像を取得するのに適した位置を探索して、前記本体2を移動させ、本体2を360度その場旋回をしながら複数の画像300を、画像合成することで、加工画像(パノラマ画像)を生成できるようにカメラ7により撮影させる」ことを、本願発明1の制御手段による「所定の撮像位置に前記本体ケースを自律走行させて前記画角以下の角度で順次隣り合う複数の方向の静止画を、隣り合う静止画どうしが互いに重複する箇所をそれぞれ有するように前記撮像手段により撮像させる撮像モード」と対比すると、「所定の撮像位置に前記本体ケースを自律走行させて順次隣り合う複数の方向の静止画を、前記撮像手段により撮像させる撮像モード」を限度として一致する。
引用発明の「制御装置5は、360度周囲画像を取得するのに適した位置として、自律移動型ロボット1と、該周囲に存在する障害物との距離のうち、最近距離が所定値より長い、もしくは最大となる位置であり、部屋全体の概観を撮影しやすい位置を探索する」という事項を、本願発明1の「前記制御手段は、前記撮像モードにおいて、前記障害物検出手段による障害物の検出に基づいて前記撮像手段による撮像位置を設定するものであって、前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」事項と対比すると、「制御手段は」、「前記本体ケースの周囲の障害物との距離」が、「所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」という事項を限度として一致する。
引用発明の「自律移動型ロボット」は、本願発明1の「自律走行体」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「本体ケースと、
この本体ケースに設けられ、所定の画角で撮像可能な撮像手段と、
前記本体ケースを走行可能とする駆動輪と、
前記本体ケースに設けられ、障害物との距離を検出することで障害物の有無を検出する障害物検出手段と、
前記駆動輪の駆動を制御することで前記本体ケースを自律走行させる走行モードと、所定の撮像位置に前記本体ケースを自律走行させて順次隣り合う複数の方向の静止画を、前記撮像手段により撮像させる撮像モードとを少なくとも有する制御手段とを具備し、
制御手段は、前記本体ケースの周囲の障害物との距離が、所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする
自律走行体。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1では、撮像手段により撮像させる撮像モードにおいて順次隣り合う複数の方向の静止画を撮像する際に、「前記画角以下の角度で」「隣り合う静止画どうしが互いに重複する箇所をそれぞれ有するように」撮像させるのに対し、引用発明では、360度周囲画像を取得するための複数の画像300が、画角以下の角度であって隣合う画像どうしが互いに重複する箇所を有しているか不明な点。

(相違点2)撮像モードにおいて撮像位置を設定するにあたり、本願発明1では、「前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」のに対し、引用発明では、障害物との最近距離が所定値より長い位置を撮影位置としている点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。上記第5 3.の引用文献3には、距離センサ64により得られた障害物への接近の検知に基づいて、撮影位置を設定するものであって、前記距離センサ64により検出した障害物との距離の情報に基づき、適切な量(所定量)、障害物から離れる方向に移動した位置を撮影位置とする事項が記載されている。
しかしながら、引用発明及び引用文献3には、本願発明1の「前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」事項までは記載されていない。
そして、撮像する自律走行体の技術分野において、「前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」事項が、本願出願日前において一般的に周知技術であるとまでは言うことができない。
また、本願発明1は、上記事項を備えることにより、障害物がたとえ移動するものであっても、障害物との距離が確実に所定距離以上となる状態で撮影することが可能となり、撮像手段によって広範囲を死角なく確実に撮影できるという効果を奏する。
さらに、本願発明1の「前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」点は、原査定における引用文献AないしH及び当審拒絶理由通知の引用文献1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術的事項及び引用文献AないしHに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の上記相違点2に係る「前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術的事項及び引用文献AないしHに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。


第7 原査定についての判断
令和元年7月26日付けの手続補正により、補正後の請求項1及び2は、「前記障害物検出手段により前記本体ケースの周囲の障害物との距離を検出しつつ、この距離が所定距離以上となるように周囲の障害物から離間する方向に移動した位置を撮像位置とする」という技術的事項を有するものとなった。そして、当該技術的事項は、上記第6の1.(2)で述べたように、原査定における引用文献AないしHには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1及び2は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしHに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由通知の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-11 
出願番号 特願2014-86811(P2014-86811)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 小川 悟史
大山 健
発明の名称 自律走行体  
代理人 樺澤 聡  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  

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