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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1354840
審判番号 不服2017-19393  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2019-09-04 
事件の表示 特願2015-520407「充電動作モードの持続時間の監視を用いた電気車両ワイヤレス充電」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 3日国際公開、WO2014/004551、平成27年 9月24日国内公表、特表2015-528272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2013年6月25日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2012年6月27日 米国(US) 2013年6月24日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成27年1月5日付けで翻訳文提出書が提出され、平成29年5月17日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月9日付けで手続補正がなされたが、同年8月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月27日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、当審の平成30年12月19日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成31年1月30日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成31年1月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項17に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項17】
少なくとも1つの電気車両誘導コイルを有する車両パッドを含む電気車両を充電するためのワイヤレス電力装置であって、前記装置は、
前記装置から前記車両パッドに電力をワイヤレス伝達するための手段と、
前記装置の充電サイクルを制御するための手段であって、前記充電サイクルが、前記ワイヤレス電力装置と前記電気車両との間に、充電に十分なワイヤレス電力リンクが確立される、少なくとも1つの初期化状態と、前記ワイヤレス電力装置から前記電気車両へのワイヤレス電力伝達が実行される、少なくとも1つの充電状態とを含み、前記少なくとも1つの初期化状態が、電力をワイヤレス伝達するための前記手段との前記車両パッドの整合が実行される、少なくとも1つの整合状態を含み、前記少なくとも1つの整合状態中に、電力をワイヤレス伝達するための前記手段が、電力をワイヤレス伝達するための前記手段を前記車両パッドと整合させるのに十分な電力レベルで前記車両パッドに電力を送信する、制御するための手段と、
前記1つの整合状態の後に前記少なくとも1つの充電状態に入ったことに応答して、前記ワイヤレス電力伝達の開始時間を示す第1のタイムスタンプを生成するための手段と、
前記ワイヤレス電力伝達の終了時間を示す第2のタイムスタンプを生成するための手段と、
前記充電サイクルの前記動作状態のうちの前記少なくとも1つの充電状態の各々に対応する前記第1のタイムスタンプと前記第2のタイムスタンプとの間の時間の長さに少なくとも部分的に基づいてコストを生成するための手段と
を含む、ワイヤレス電力装置。」

3.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開2010-93957号公報(以下、「引用例」という。)には、「車両の充電システム」について、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【0001】
この発明は、電気自動車等の車両の充電システムに関するものである。」

(2)「【0008】
次に、この発明の実施の形態における車両の充電システムについて図面を参照しながら説明する。
図1は、この実施の形態における充電システム1の概略構成を示すものであり、主に車外に設けられる駐車設備側充電装置2と、車両3に搭載される車両側充電装置4と、非接触で電力の授受を行うコイル5(二次側コイル)およびループコイル6(一次側コイル)を備えて構成されている。車両3には、コイル5と車両側充電装置4とが搭載されており、電磁結合によりコイル5に電流が流れることによって車両3に搭載された二次電池である車載バッテリ25(図2参照)が充電可能になっている。
【0009】
駐車設備側充電装置2は、コインパーキングなどの駐車設備に設けられるものであり、ループコイル6が接続されている。このループコイル6は、駐車設備に画成された駐車スペース内に各々設置又は埋設され、所定の通電によって磁界を発生するように構成されている。このループコイル6は、駐車スペースへの車両の進入を検知するともに、車両側に設けられたコイル5との間で非接触による電力の受け渡しやデータの送受信を行う。
【0010】
また、駐車設備側充電装置2は、充電用および車両検知用の回路構成として、図2に示すように、電源装置10、設備側充電制御装置11、同調回路12、送信回路13、および、受信回路14を備えて構成されている。
【0011】
電源装置10は、外部の商用電源などに接続されて、駐車設備側充電装置2で使用する電力を供給する装置であり、設備側充電制御装置11へ駆動電力を供給している。また、電源装置10は、発振回路15を備えており設備側充電制御装置11の制御指令に基づいて所定周波数の電流をループコイル6へ通電する。さらに電源装置10は、上記所定周波数の電流として、車両検知用の周波数(例えば150?160kHz程度)に設定された比較的小さい電流と、充電用の周波数(例えば、130kHz程度)に設定された比較的大きな電流とをそれぞれ出力可能になっている。なお、電流の大きさはパルス幅などにより調整可能とされている。
【0012】
同調回路12は、ループコイル6の入出力に利用する周波数帯(例えば、130?160kHz程度)の設定を後述する車両側の同調回路20およびコイル5などの回路構成に応じて変更して最適化するものであり、設備側充電制御装置11の制御指令に基づいて調整される。
送信回路13は、設備側充電制御装置11の制御指令に基づきループコイル6を介して車両側充電装置4に同期信号などの信号を送信するものである。なお、同期信号には、駐車スペースにおいて充電が可能であることを示す充電用コードが含まれる。
受信回路14は、電源装置10によって車両検知用の電流が出力されている場合には、ループコイル6の磁界変化による電圧変化を車両検知信号として受信し、車両3の進入が検知されて送信回路13により同期信号が送信された場合には、車両側から送信された同期/起動コード信号(応答信号)を受信して、それぞれ受信した信号を設備側充電制御装置11へ出力する。
【0013】
設備側充電制御装置11は、電源装置10からループコイル6に対して車両検知用の電流を通電している際に、受信回路14の受信結果に基づいて駐車スペースへの車両3の進入を検知する。また、車両3の進入を検知すると、送信回路13を介して進入した車両3に対して同期信号を出力する。
【0014】
さらに設備側充電制御装置11は、電源装置10の出力を切替制御してループコイル6へ出力される電流を適宜変更する切替制御部16を備え、受信回路14の受信結果に基づき駐車スペースへ車両3の進入を検知し、所定の充電条件を満たすと、この切替制御部16によって、電源装置10から出力される電流を、車両検知用の電流から充電用の電流へ切替える制御を行う。また、設備側充電制御装置11は、切替制御部16により充電用の電流に切り替えている時間やその際の通電量に基づいて車両3の車載バッテリ25への充電量を算出して、この充電量の情報をコインパーキングの料金精算を行う精算装置17へ出力可能に構成されている。」

・上記引用例に記載の「車両の充電システム」は、上記(1)の記載事項によれば、電気自動車等の車両の充電システムに関するものである。
・上記(2)の【0008】の記載事項、及び図1によれば、充電システム1は、車外に設けられる駐車設備側充電装置2と、車両3に搭載される車両側充電装置4と、非接触で電力の授受を行うコイル5(二次側コイル)およびループコイル6(一次側コイル)を備えて構成され、電磁結合によりコイル5に電流が流れることによって車両3に搭載された二次電池(車載バッテリ25)が充電されてなるものである。
・上記(2)の【0009】の記載事項、及び図1によれば、駐車設備側充電装置2に接続されているループコイル6(一次側コイル)は、車両側に設けられている二次側コイルとの間で非接触による電力の受け渡しを行うものである。
・上記(2)の段落【0010】?【0014】の記載事項、及び図2によれば、駐車設備側充電装置2は、設備側充電制御装置11を備える。
そして、その設備側充電制御装置11は、車両検知用の周波数に設定された比較的小さい電流をループコイル6(一次側コイル)へ通電し、前記一次側コイルの磁界変化による電圧変化を車両検知信号として受信し、当該車両検知信号の受信により駐車スペースへの車両の進入を検知し、所定の充電条件を満たすと、充電用の周波数に設定された比較的大きな電流に切り替え、当該充電用の電流をループコイル6(一次側コイル)へ通電してなるものである。
・上記(2)の段落【0014】の記載事項、及び図2によれば、設備側充電制御装置11は、充電用の電流に切り替えている時間に基づいて二次電池(車載バッテリ25)への充電量を算出して、その情報を料金精算を行う精算装置17へ出力可能に構成されてなるものである。

したがって、特に車両の充電システムにおける「駐車設備側充電装置」に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「二次側コイルを有する電気自動車等の車両に搭載された二次電池に非接触で充電を行うための駐車設備側充電装置であって、
前記二次側コイルとの間で非接触による電力の受け渡しを行う一次側コイルと、
設備側充電制御装置と、を備え、
前記設備側充電制御装置は、
車両検知用の周波数に設定された比較的小さい電流を前記一次側コイルへ通電し、前記一次側コイルの磁界変化による電圧変化を車両検知信号として受信し、
前記車両検知信号の受信により駐車スペースへの車両の進入を検知し、所定の充電条件を満たすと、充電用の周波数に設定された比較的大きな電流に切り替え、当該充電用の電流を前記一次側コイルへ通電し、
充電用の電流に切り替えている時間に基づいて前記二次電池への充電量を算出して、その情報を料金精算を行う精算装置へ出力可能に構成されている、駐車設備側充電装置。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「二次側コイルを有する電気自動車等の車両に搭載された二次電池に非接触で充電を行うための駐車設備側充電装置であって」によれば、
引用発明における、電気自動車等の車両が有する「二次側コイル」は、本願発明でいう「電気車両誘導コイル」に相当し、
引用発明にあっても、二次側コイルを有する、あるいは二次側コイルが形成された本願発明でいうところの「車両パッド」に相当するものを備えることは自明といえることである。
また、引用発明における「駐車設備側充電装置」は、電気自動車等の車両に搭載された二次電池に対して非接触で充電を行う、つまりワイヤレスで電力を供給するものであるから、本願発明でいう「ワイヤレス電力装置」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「少なくとも1つの電気車両誘導コイルを有する車両パッドを含む電気車両を充電するためのワイヤレス電力装置」である点で一致する。

(2)引用発明における「前記二次側コイルとの間で非接触による電力の受け渡しを行う一次側コイルと」によれば、
引用発明における「一次側コイル」は、本願発明でいう、ワイヤレス電力装置から車両パッドに「電力をワイヤレス伝達するための手段」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記装置から前記車両パッドに電力をワイヤレス伝達するための手段と」を含むものである点で一致する。

(3)引用発明における「設備側充電制御装置と、を備え、前記設備側充電制御装置は、車両検知用の周波数に設定された比較的小さい電流を前記一次側コイルへ通電し、前記一次側コイルの磁界変化による電圧変化を車両検知信号として受信し、前記車両検知信号の受信により駐車スペースへの車両の進入を検知し、所定の充電条件を満たすと、充電用の周波数に設定された比較的大きな電流に切り替え、当該充電用の電流を前記一次側コイルへ通電し、充電用の電流に切り替えている時間に基づいて前記二次電池への充電量を算出して、その情報を料金精算を行う精算装置へ出力可能に構成されている・・」によれば、
(3-1)引用発明における「設備側充電制御装置」は、少なくとも充電用の電流を一次側コイルへ通電し、二次電池への充電の制御を行っているといえることから、本願発明でいう、ワイヤレス電力装置の「充電サイクルを制御するための手段」に相当し、
引用発明の「充電用の周波数に設定された比較的大きな充電用の電流に切り替え、当該充電用の電流を前記一次側コイルへ通電」している状態が、本願発明でいう「充電状態」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記装置の充電サイクルを制御するための手段であって、前記充電サイクルが、前記ワイヤレス電力装置から前記電気車両へのワイヤレス電力伝達が実行される、少なくとも1つの充電状態を含む、制御するための手段と」を含むものである点で共通する。
ただし、本願発明では、充電サイクルとして、充電状態の前に「前記ワイヤレス電力装置と前記電気車両との間に、充電に十分なワイヤレス電力リンクが確立される、少なくとも1つの初期化状態」を有し、「前記少なくとも1つの初期化状態が、電力をワイヤレス伝達するための前記手段との前記車両パッドの整合が実行される、少なくとも1つの整合状態を含み、前記少なくとも1つの整合状態中に、電力をワイヤレス伝達するための前記手段が、電力をワイヤレス伝達するための前記手段を前記車両パッドと整合させるのに十分な電力レベルで前記車両パッドに電力を送信する」旨特定するのに対し、引用発明では、充電状態の前に車両の進入を検知しているものの、車両パッドに電力をワイヤレス伝達するための手段と車両パッドとの整合が実行される整合状態を含む初期化状態を有することの特定がない点で相違している。
(3-2)引用発明における「精算装置」は、本願発明でいう「コストを生成するための手段」に相当し、
引用発明にあっても料金(コスト)は、「充電用」の電流に切り替えている時間、すなわち充電状態に対応する時間の長さに基づいて算出されるものである(よって、本願発明と同様、「充電状態中」に使用された電力についてのみに課金される)。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記充電サイクルの前記動作状態のうちの前記少なくとも1つの充電状態の各々に対応する時間の長さに少なくとも部分的に基づいてコストを生成するための手段と」を含むものである点で共通する。
ただし、本願発明では、「前記ワイヤレス電力伝達の開始時間を示す第1のタイムスタンプを生成するための手段と、前記ワイヤレス電力伝達の終了時間を示す第2のタイムスタンプを生成するための手段と、前記充電サイクルの前記動作状態のうちの前記少なくとも1つの充電状態の各々に対応する前記第1のタイムスタンプと前記第2のタイムスタンプとの間の時間の長さに少なくとも部分的に基づいてコストを生成するための手段」とを含む旨特定するのに対し、引用発明では、充電用の電流に切り替えている時間に基づいて料金を算出しているものの、タイムスタンプを生成することの明確な特定を有していない点で相違している。

よって、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも1つの電気車両誘導コイルを有する車両パッドを含む電気車両を充電するためのワイヤレス電力装置であって、前記装置は、
前記装置から前記車両パッドに電力をワイヤレス伝達するための手段と、
前記装置の充電サイクルを制御するための手段であって、前記充電サイクルが、前記ワイヤレス電力装置から前記電気車両へのワイヤレス電力伝達が実行される、少なくとも1つの充電状態を含む、制御するための手段と、
前記充電サイクルの前記動作状態のうちの前記少なくとも1つの充電状態の各々に対応する時間の長さに少なくとも部分的に基づいてコストを生成するための手段と
を含む、ワイヤレス電力装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
充電サイクルを制御するための手段が、本願発明では、充電サイクルとして、充電状態の前に「前記ワイヤレス電力装置と前記電気車両との間に、充電に十分なワイヤレス電力リンクが確立される、少なくとも1つの初期化状態」を有し、「前記少なくとも1つの初期化状態が、電力をワイヤレス伝達するための前記手段との前記車両パッドの整合が実行される、少なくとも1つの整合状態を含み、前記少なくとも1つの整合状態中に、電力をワイヤレス伝達するための前記手段が、電力をワイヤレス伝達するための前記手段を前記車両パッドと整合させるのに十分な電力レベルで前記車両パッドに電力を送信する」旨特定するのに対し、引用発明では、充電状態の前に車両の進入を検知しているものの、車両パッドに電力をワイヤレス伝達するための手段と車両パッドとの整合が実行される整合状態を含む初期化状態を有することの特定がない点。

[相違点2]
充電状態におけるコストの生成に関して、本願発明では、「前記ワイヤレス電力伝達の開始時間を示す第1のタイムスタンプを生成するための手段と、前記ワイヤレス電力伝達の終了時間を示す第2のタイムスタンプを生成するための手段と、前記充電サイクルの前記動作状態のうちの前記少なくとも1つの充電状態の各々に対応する前記第1のタイムスタンプと前記第2のタイムスタンプとの間の時間の長さに少なくとも部分的に基づいてコストを生成するための手段」とを含む旨特定するのに対し、引用発明では、充電用の電流に切り替えている時間に基づいて料金を算出しているものの、タイムスタンプを生成することの明確な特定を有していない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば当審の拒絶の理由に引用された特開2006-345588号公報(特に段落【0024】?【0029】、図4、図5を参照)、特開2011-66985号公報(特に段落【0029】4行目?【0030】を参照)、国際公開第2012/014485号(特に段落[0029]?[0033]を参照)に記載のように、車両への非接触充電において、充電状態の前に、送電側から所定の電力を受電側に供給しながら、送電側と受電側とを位置合わせ(整合)を実行すること、すなわち本願発明でいう、整合状態を含む「初期化状態」を設けることは周知といえる技術事項であり、引用発明においても、車両の進入の検知に代えてあるいは加えてかかる周知の技術事項を採用し、相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点2]について
引用発明にあっても、料金(コスト)の算出のためには、充電用の電流に切り替えている「時間(の長さ)」を把握する必要があるところ、一般に、「時間(の長さ)」を把握する手段として、コンピュータ上において、開始時間を示すタイムスタンプと終了時間を示すタイムスタンプとを生成し、両タイムスタンプの間の長さに基づいて把握するようにすることは周知慣用技術にすぎず、引用発明においてもタイムスタンプを生成するようにし、相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

なお、請求人は平成31年1月30日付けの意見書において、以下のような主張をしている。
(a)タイムスタンプを用いる技術が周知であるとしても、充電動作モードの持続時間の監視ということを考慮していない引用文献1とその周知技術とに基づいて、より正確な電気車両ワイヤレス充電の課金を実現するべく、本願発明の「ワイヤレス電力伝達の終了時間を示す第2のタイムスタンプを生成」に対応する構成を容易に想到することもできない。
(b)引用文献1は、充電中の車両側におけるドア開というエラーを考慮していますが、エラー条件がクリアされたと考えられた後の復帰処理は考慮されておらず、そのため、引用文献1は、少なくとも1つの整合状態を含む少なくとも1つの初期化状態と、少なくとも1つの充電状態とを少なくとも含む、充電サイクルも開示していない。
しかしながら、上記(a)については、引用発明においても、充電用の電流に切り替えている時間に基づいて料金(コスト)を算出している以上、充電動作モード(充電状態)の持続時間の監視を行っているといえ、料金(コスト)は極力正確に算出すべき必要があるのも当然のことである。
また、上記(b)については、結局、本願発明でいう「充電サイクル」は、初期化状態(整合状態)と充電状態からなるサイクルを複数有する旨を主張しているものと解されるが、そもそも本願請求項17には、「・・前記充電サイクルが、・・・少なくとも1つの初期化状態と、・・・少なくとも1つの充電状態とを含み・・・・・前記充電サイクルの前記動作状態のうちの前記少なくとも1つの充電状態の各々に対応する・・・時間の長さに少なくとも部分的に基づいて・・」と記載(下線部に注意)されており、本願発明でいう「充電サイクル」としては、1つの初期化状態(整合状態)と1つの充電状態からなる1サイクルのみの場合も含まれ、必ずしも当該サイクルが複数有るとまでは特定(限定)されていない。そして、上記[相違点1]について検討したように、引用発明において、充電状態の前に初期化状態(整合状態)を設けることは当業者が容易になし得ることである。
以上のことから、請求人の上記主張はいずれも採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項17に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-29 
結審通知日 2019-04-01 
審決日 2019-04-12 
出願番号 特願2015-520407(P2015-520407)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 崇竹下 翔平  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 井上 信一
東 昌秋
発明の名称 充電動作モードの持続時間の監視を用いた電気車両ワイヤレス充電  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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