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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1354841
審判番号 不服2017-19403  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2019-09-04 
事件の表示 特願2015-107772「複数のセルからの基準信号の送信を調整する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日出願公開、特開2015-188235〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年(平成22年)6月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年6月22日 米国、2010年6月18日 米国)を国際出願日とする特願2012-517660号の一部を、平成25年8月7日に新たな特許出願とした特願2013-164460号の一部を、平成27年5月27日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 6月26日 手続補正書の提出
平成28年 5月10日付け 拒絶理由通知書
平成28年 7月27日 意見書、手続補正書の提出
平成28年12月22日付け 拒絶理由通知書
平成29年 3月28日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 8月17日付け 拒絶査定
平成29年12月27日 拒絶査定不服審判の請求
平成30年11月14日付け 拒絶理由通知書(当該通知書で通知した拒 絶理由を、以下「当審拒絶理由」という。 )
平成31年 1月22日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明及び優先権

1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成31年1月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし42に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項22に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。

「 第2のワイヤレスネットワークノードで第1のワイヤレスネットワークノードによって提供される送信調整情報を受信することと、
前記送信調整情報に従って前記第2のワイヤレスネットワークノードからのワイヤレス送信を制御することと、ここにおいて、前記制御することは、前記送信調整情報によって定義される保護されたインターバル中に前記第2のワイヤレスネットワークノードからデータおよび制御信号を送信するのを控えることを含む、
前記保護されたインターバル中に前記第2のワイヤレスネットワークノードからユーザ機器(UE)に基準信号を送信し、基準信号に対するユーザ機器(UE)による測定を容易にすることと、
を備える方法。」

2.優先権
本願は、米国特許仮出願61/219,354号(出願日 2009年6月22日)、米国特許出願12/818,464号(出願日 2010年6月18日)を優先権の主張の基礎としているが、本願発明を特定する事項である
「 第2のワイヤレスネットワークノードで第1のワイヤレスネットワークノードによって提供される送信調整情報を受信することと、
前記送信調整情報に従って前記第2のワイヤレスネットワークノードからのワイヤレス送信を制御することと、ここにおいて、前記制御することは、前記送信調整情報によって定義される保護されたインターバル中に前記第2のワイヤレスネットワークノードからデータおよび制御信号を送信するのを控えることを含む」
との事項は、米国特許出願12/818,464号の書類に記載されているものの、米国特許仮出願61/219,354号の書類には記載されていない。
また、請求人は、平成31年1月22日に提出された意見書において、「本願の請求項1の発明と他の請求項1-42の全発明は、パリ条約に基づく優先権主張の基礎出願の明細書に記載された発明であり、よって、本願の全発明はパリ条約に基づく適法な優先権主張の効果が認められるべき発明です。」と主張しているものの、上記事項について、米国特許仮出願61/219,354号の書類における具体的な記載等の根拠は何ら示していない。
したがって、米国特許仮出願61/219,354号に基づく本願発明についての優先権の主張の効果は認められず、以下に検討する特許法第29条第2項に規定する進歩性の判断の基準日は、米国特許出願12/818,464号の出願日である2010年(平成22年)6月18日と認める。

第3 拒絶の理由

当審拒絶理由の概要は、
「4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、本件補正前の請求項22に対して、下記の1、4が引用されている。

1.Ericsson、Options for Inter-cell Interference Coordination (ICIC)、3GPP TSG-RAN WG3 Meeting #53 R3-061199、2006年8月23日アップロード、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_53/docs/>
4.NTT DOCOMO、Interference Coordination for Non-CA-based Heterogeneous Networks、3GPP TSG RAN WG1 Meeting #60bis R1-102307、2010年4月7日アップロード、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/>

第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等

1.引用発明
当審拒絶理由で引用されたEricsson、Options for Inter-cell Interference Coordination (ICIC)(当審仮訳:セル間干渉調整のためのオプション)、3GPP TSG-RAN WG3 Meeting #53 R3-061199、2006年8月23日アップロード、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_53/docs/> (以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「1. Introduction
Section 6.12 of the RAN WG3 Technical Report deals with the radio resource management (RRM) functions for E-UTRA [1]. Subsection 6.12.2.4 provides a high level description of inter-cell RRM (including interference management and load management), while Section 6.12.5 explicitly deals with Inter-cell Interference Coordination (ICIC). The emphasis of ICIC is to coordinate the usage of radio resources over multiple cells recognizing that "the cell border requires special attention".
In this contribution we discuss options for ICIC with the purpose of identifying associated advantages and disadvantages and also the necessary information exchange between eNodeB:s.
(中略)
2.2. Option 2: Explicit Mute Request Between eNodeB:s
In Option 2, eNodeB:s have the possibility to send explicit Mute Request messages to neighbor eNodeB:s. Such a Mute Request can be associated with a certain power level that indicates a maximum power that the sender proposes to its neighbor on a specific resource block (or a subset of the resource blocks).
Assuming a peer-to-peer relationship in a distributed RRM architecture, Option 2 does not provide arbitration mechanisms that would specify the conditions under which the recipient eNodeB has to honor Mute Requests. Likewise, there is no explicit mechanism within Option 2 that describes when a certain eNodeB has the right to generate such a message.
Option 2 requires a mechanism whereby eNodeB:s can determine the dominant interfering eNodeB:s (per resource block) so that Mute Request messages need only be sent to such neighbors. The details and standardization aspects of such a mechanism are for further study, but such mechanisms based on UE measurement reports and the status information according to Option 1 seems feasible.
The advantage of Option 2 is that it allows eNodeB:s to have explicit input on the radio resource usage in neighbor cells. Option 2 thus provides the means by which properly designed distributed algorithms can optimize radio resource usage over multiple cells.
The disadvantage of this Option is the need for the signaling between the eNodeB:s and the additional complexity that is related to the generation and processing of Mute Request messages. 」(1-2葉)

(当審仮訳:
1.はじめに
RAN WG3の技術報告書のセクション6.12は、E-UTRA[1]のための無線リソースマネージメント(RRM)機能を取り扱う。セクション6.12.5はセル間干渉調整(ICIC)を明示的に取り扱う一方、サブセクション6.12.2.4は、セル間のRRM(干渉管理や負荷管理を含む)の高水準の説明を提供する。ICICの重要な点は、“セル境界が特別な注意を要求する”ことを認識して、複数のセルにわたって無線リソースの使用を調整することである。
本寄書では、関連する長所、短所と、eNodeB間で必要な情報交換をも特定する目的で、ICICのためのオプションについて検討する。
(中略)
2.2 オプション2:eNodeB:s間の明示的なミュートリクエスト
オプション2では、eNodeB:sが近隣eNodeB:sへの明示的なミュートリクエストメッセージを送信し得る。そのようなミュートリクエストは、送信側が特定のリソースブロック(又はリソースブロックのサブセット)において、その近隣に提案する最大電力を示す特定の電力と関連し得る。
分散RRMアーキテクチャでのピアツーピアの関係を仮定すると、オプション2は、受信側のeNodeBがミュートリクエストを受け入れなければならない状況を規定する仲裁メカニズムを提供しない。同様に、いつ特定のeNodeBがそのようなメッセージを生成する権利を有するかを記述する、オプション2内の明示的なメカニズムがない。
オプション2は、eNodeB:sが(リソースブロック単位で)支配的な干渉を与えるeNodeB:sを決定し得るメカニズムを必要とし、それは、ミュートリクエストメッセージがそのような近隣のみへ送信される必要があるためである。このようなメカニズムの詳細及び標準化の側面は、今後の課題であるが、UE測定報告とオプション1に従ったステータス情報に基づくこのようなメカニズムは、実現可能と思われる。
オプション2の長所は、eNodeB:sが近隣セルの無線リソース使用について、明示的に入力可能な点である。そのため、オプション2は、適切にデザインされた分散アルゴリズムが複数セル間にわたる無線リソースの使用を最適化可能な手段を提供する。
オプション2の短所は、eNodeB:s間のシグナリングとミュートリクエストメッセージの生成と処理に関する追加の複雑性を必要とすることである。)

(2)「2.4. Summary of Options for Inter-cell Interference Coordination


」(2-3葉)

(当審仮訳:
2.4. セル間干渉調整のためのオプションのサマリ

図1:LTEのためのICICの高水準ビュー。X2インターフェース上で送信される必要のあるメッセージは、どのオプション(オプション1、オプション2、オプション3)が使用されるかに依存する(図2も参照)。

図2:ICICのためのオプションのサマリ
)

上記各記載及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

ア 上記(1)の記載によれば、eNodeB:sは、近隣eNodeB:sに特定のリソースブロックにおけるミュートリクエストを送信するといえる。また、上記(2)の図1によれば、ミュートリクエストは、送信電力をミュート/リデュースする要求であるといえる。したがって、引用例には、「近隣eNodeB:sでeNodeB:sによって送信される特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートする要求であるミュートリクエストを受信すること」が記載されているといえる。

イ 上記(2)の図1、2によれば、近隣eNodeB:sは、eNodeB:sにミュートリクエストアクセプトを送信する。ミュートリクエストアクセプトを送信する以上、近隣eNodeB:sがミュートリクエストを受け入れて、ミュートリクエストに従って処理を行うことは、当業者にとって明らかである。したがって、引用例には、「ミュートリクエストに従って近隣eNodeB:sの特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートすること」が記載されているといえる。

ウ 上記(2)の図1によれば、UEは、CQI測定を行う。また、上記イの「ミュートリクエストに従って近隣eNodeB:sの特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートすること」により、当該特定のリソースブロックにおいて、eNodeB:sからの送信信号に対する近隣eNodeB:sによる干渉が減ることは当業者にとって明らかである。さらに、eNodeBからの送信信号の任意のリソースブロックにCRSが含まれること及びUEがCRSに対してCQI測定を行うことは、技術常識である。以上のことから、近隣eNodeB:sがミュートする特定のリソースブロックにおいて、eNodeB:sからのCRSを含む送信信号に対する近隣eNodeB:sによる干渉が減ることにより、当該CRSに対するUEによるCQI測定が容易になるといえる。したがって、引用例には、「特定のリソースブロックにおいて、eNodeB:sからのCRSに対するUEによるCQI測定を容易にすること」が記載されているといえる。

エ 引用例のタイトル等によれば、引用例には、「セル間干渉調整(ICIC)のための方法」が記載されていることは明らかである。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 近隣eNodeB:sでeNodeB:sによって送信される特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートする要求であるミュートリクエストを受信することと、
前記ミュートリクエストに従って近隣eNodeB:sの前記特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートすることと、
前記特定のリソースブロックにおいて、前記eNodeB:sからのCRSに対するUEによるCQI測定を容易にすることと、
を備えるセル間干渉調整(ICIC)のための方法。」

2.公知技術
当審拒絶理由で引用されたNTT DOCOMO、Interference Coordination for Non-CA-based Heterogeneous Networks(当審仮訳:非CAベースのヘテロジーニアスネットワークのための干渉調整)、3GPP TSG RAN WG1 Meeting #60bis R1-102307、2010年4月7日アップロード、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/> (以下、「公知例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「2. Basic Approaches for Data ICIC
As described in several contributions, e.g., [1-4], data resource partitioning is key to improving the data throughput performance in heterogeneous networks. More specifically, in a network where macro- and pico-cells are overlaid, one possible resource allocation between these cells is to have the pico-cells use all the resources, while the macro-cell mutes or power controls a part of the resources. This partial macro-cell muting effectively increases the user throughput especially at the cell edge. The following sections describe FDM and TDM resource partitioning.
(中略)
One important requirement for data ICIC is to minimize the Rel. 8/9 impact especially regarding UE measurement for connectivity. Thus, it is preferred that the CRS be available for all RBs in all subframes. Yet, data muting of the macro-subframes would create significant fluctuations in the interference in the frequency and time domains for the FDM and TDM approaches, respectively. The impact of this situation on the UE measurement should be addressed in further investigation.」(1-2ページ)

(当審仮訳:
2.データICICのための基本アプローチ
いくつかの寄書、例えば[1-4]で説明されるように、データリソース分割は、ヘテロジーニアスネットワークのデータスループット性能を改善するための鍵である。より具体的には、マクロ、ピコセルがオーバーレイされるネットワークにおいて、これらのセル間で可能なリソース割当ては、マクロセルがリソースの一部をミュート又は電力制御する間、ピコセルに全てのリソースを使用させることである。この部分的なマクロセルミューティングは、特にセルエッジにおいて、ユーザースループットを効果的に増加させる。次のセクションでは、FDMとTDMのリソース分割を説明する。
(中略)
データICICにとっての1つの重要な要件は、特にコネクティビティのためのUEの測定に関するRel.8/9への影響を最小にすることです。そのため、CRSは、全てのサブフレームの全てのRBsで利用可能であることが好ましい。それでも、マクロサブフレームのデータミューティングは、FDM及びTDMアプローチのそれぞれにとって、周波数及び時間領域の干渉に重大な変化を生むであろう。この状況がUE測定に与える影響は、今後の調査で対処する必要がある。)


(2)「3. Basic Approaches for Control Channel ICIC
This section discusses three basic ICIC schemes [9] for the control channel, (1) almost blank subframes, (2) subframe shifting, and (3) a new control signal.

3.1. Almost Blank Subframe
Figures 1(a) and 1(b) show examples of the subframe structures for macro- and pico-cells when control channel ICIC between the macro- and pico-cells is implemented through muting resource elements (REs) for the control signal (PCFICH, PDCCH, and PHICH) in some of the macro-subframes. Interference from the macro-cell control signal to the pico-cell control signal in those subframes is completely eliminated if the pico-UE cancels the CRS from the macro-cell.」(2ページ)

(当審仮訳:
3.制御チャネルICICのための基本アプローチ
このセクションでは、制御チャネルのための3つの基本的なICICスキーム[9]、(1)ほぼ空白のサブフレーム、(2)サブフレームシフト、(3)新しい制御信号について、検討する。

3.1.ほぼ空白のサブフレーム
図1(a)と1(b)は、マクロとピコセル間の制御チャネルICICが、いくつかのマクロサブフレームの制御信号(PCFICH、PDCCH及びPHICH)のためのミューティングリソースエレメント(REs)を通じて実装される際の、マクロとピコセルのためのサブフレーム構造の例を示している。ピコUEがマクロセルからのCRSをキャンセルする場合、それらのサブフレームにおいて、マクロセルの制御信号からのピコセルの制御信号への干渉は完全に除去される。)

(3)

」(3ページ)

(当審仮訳:
(図1(a)略)
(a)データのためのTDMICIC
(図1(b)略)
(b)データのためのFDMICIC
図1-ほぼ空白サブフレームを用いた制御チャネルICICのためのフレーム構造
)

上記各記載及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

上記(1)の記載によれば、データリソースの一部をミュートするとともに、コネクティビティのためのUEの測定に関するRel.8/9への影響を最小にするため、全てのRBsでCRSを送信するといえる。データリソースの一部をミュートすることについて、上記(3)の図1によれば、特定のRBにおいて、データをミュートするといえる。
上記(2)の記載によれば、制御信号(PCFICH、PDCCH及びPHICH)のリソースエレメント(REs)をミュートするといえ、上記(3)の図1によれば、データをミュートするRBと同じRBにおいて、CRS以外の制御信号をミュートするといえる。
さらに、公知例には、ICICのための方法が記載されていることは明らかである。

以上のことを総合すると、公知例には、次の技術(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。
「データ及びCRS以外の制御信号をミュートするRBにおいて、コネクティビティのためのUEの測定に関するRel.8/9への影響を最小にするため、CRSを送信するICICのための方法。」

第5 対比及び判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

1.引用発明の「近隣eNodeB:s」、「eNodeB:s」を「第2のワイヤレスネットワークノード」、「第1のワイヤレスネットワークノード」と称することは任意である。また、引用発明の「ミュートリクエスト」は、送信電力をミュートする要求であるから、「送信調整情報」といえる。
したがって、引用発明の「近隣eNodeB:sでeNodeB:sによって送信される特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートする要求であるミュートリクエストを受信すること」は、「第2のワイヤレスネットワークノードで第1のワイヤレスネットワークノードによって提供される送信調整情報を受信すること」という点で本願発明と一致する。

2.引用発明の「送信電力をミュートすること」は、「ワイヤレス送信を制御すること」といえる。引用発明の「特定のリソースブロック」は、「ミュートリクエスト」に従って特定されるから、ミュートリクエストによって定義されるといえる。また、本願の発明の詳細な説明の「【0096】
もう1つの態様では、複数のeNBは、ある時間持続時間(連続または不連続)または周波数帯(連続または不連続)にわたって、ある送信信号が停止されまたは省略されるように、データ/制御送信を調整することができる(本明細書では保護されたインターバルまたは制限されたインターバルとも表される)。たとえば、いくつかの場合に、データ信号および/または制御信号(基準信号以外)は、基準信号に対するユーザ機器(UE)測定を容易にするために、送信されない。この調整を、ワイヤレス接続を介する複数のeNB/HeNBの間で直接に行うことができ、かつ/または図1および2に示されたコアネットワークへのバックホール接続を介するなど、他の接続を介して管理することができる。」(下線は当審が付与。以下同様。)との記載によれば、本願発明の「保護されたインターバル」は、ある送信信号が停止されまたは省略されるように、データ/制御送信を調整することができるある時間持続時間(連続または不連続)または周波数帯(連続または不連続)を含むといえる。そして、引用発明の「特定のリソースブロック」は、リソースブロックが時間及び周波数リソースの単位であることが技術常識であるため、近隣eNodeB:sの送信電力をミュートする特定の時間及び周波数帯といえるから、本願発明の「保護されたインターバル」に含まれる。さらに、引用発明の「送信電力をミュートすること」は、信号を送信するのを控えることといえ、送信信号がデータと制御信号から構成されることは技術常識であるから、「データおよび制御信号を送信するのを控えること」ともいえる。
したがって、引用発明の「前記ミュートリクエストに従って近隣eNodeB:sの前記特定のリソースブロックにおける送信電力をミュートすること」は、本願発明の「前記送信調整情報に従って前記第2のワイヤレスネットワークノードからのワイヤレス送信を制御することと、ここにおいて、前記制御することは、前記送信調整情報によって定義される保護されたインターバル中に前記第2のワイヤレスネットワークノードからデータおよび制御信号を送信するのを控えることを含む」に含まれる。

3.本願の発明の詳細な説明の段落【0054】の記載によれば、本願発明の「基準信号」は、「セル固有基準信号」を含むといえる。そして、引用発明の「CRS」は、「セル固有基準信号」に他ならないから、本願発明の「基準信号」に含まれる。さらに、引用発明の「UE」は、本願発明の「ユーザ機器(UE)」に相当する。
また、本願の発明の詳細な説明の「【0110】
測定された情報を、さらに、デバイス動作を制御するためにUEによって使用することができる。たとえば、UEは、ステージ580で保護されたインターバル期間中に第1のワイヤレスネットワークノード(および/または第2のワイヤレスネットワークノード以外の他のワイヤレスネットワークノード)から受信された信号の測定および/または他の信号処理を実行することができる。これらは、RSRP、RSRQ、CQI情報、radio link monitoring(RLM)、radio link failure monitoring(RLFM)、および/または他の信号電力メトリックなどのさまざまなメトリックを含むことができる。」との記載によれば、本願発明の「基準信号に対するユーザ機器(UE)による測定」は、第1のワイヤレスネットワークノードから受信された基準信号に対するユーザ機器(UE)によるCQI情報の測定を含むといえる。そのため、引用発明の「前記eNodeB:sからのCRSに対するUEによるCQI測定」は、本願発明の「基準信号に対するユーザ機器(UE)による測定」に含まれる。
したがって、本願発明の「前記保護されたインターバル中に前記第2のワイヤレスネットワークノードからユーザ機器(UE)に基準信号を送信し、基準信号に対するユーザ機器(UE)による測定を容易にすること」と、引用発明の「前記特定のリソースブロックにおいて、前記eNodeB:sからのCRSに対するUEによるCQI測定を容易にすること」とは、「前記保護されたインターバル中に、基準信号に対するユーザ機器(UE)による測定を容易にすること」という点で共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 第2のワイヤレスネットワークノードで第1のワイヤレスネットワークノードによって提供される送信調整情報を受信することと、
前記送信調整情報に従って前記第2のワイヤレスネットワークノードからのワイヤレス送信を制御することと、ここにおいて、前記制御することは、前記送信調整情報によって定義される保護されたインターバル中に前記第2のワイヤレスネットワークノードからデータおよび制御信号を送信するのを控えることを含む、
前記保護されたインターバル中に、基準信号に対するユーザ機器(UE)による測定を容易にすることと、
を備える方法。」

(相違点)
本願発明は、保護されたインターバル中に、「前記第2のワイヤレスネットワークノードからユーザ機器(UE)に基準信号を送信」するのに対し、引用発明は、近隣eNodeB:sがミュートする特定のリソースブロックにおいて、CRSを送信するか否か特定されていない点。

以下、相違点について検討する。
上記「第4」の「2.公知技術」で認定したとおり、「データ及びCRS以外の制御信号をミュートするRBにおいて、コネクティビティのためのUEの測定に関するRel.8/9への影響を最小にするため、CRSを送信するICICのための方法。」は、公知技術であって、ここでいう「Rel.8/9」がLTEを表すことは技術常識である。そして、引用発明がLTEであることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明において、CRSを送信しないと、コネクティビティのためのUEの測定に関する影響が出るといえる。そうすると、引用発明と公知技術は、いずれもICICの技術であるから、コネクティビティのためのUEの測定に関する影響が出ないようにするため、引用発明に公知技術を適用することに格別の困難性はない。
したがって、引用発明に、公知技術を適用し、特定のリソースブロックにおいて、近隣eNodeB:sからUEにCRSを送信して、本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。
よって、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-28 
結審通知日 2019-04-02 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2015-107772(P2015-107772)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
長谷川 篤男
発明の名称 複数のセルからの基準信号の送信を調整する方法および装置  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  

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