• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1354854
審判番号 不服2017-18817  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-19 
確定日 2019-09-05 
事件の表示 特願2016- 96470「印刷材収容容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 8日出願公開、特開2016-164003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月21日に出願した特願2012-115536号(以下「原出願」という。)の一部を平成28年5月12日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月10日付けで手続補正がなされ、平成29年2月20日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月24日付けで手続補正がなされ、同年9月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書がされ、平成30年7月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月23日付けで手続補正がされ、平成31年1月28日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、同年3月15日付けで手続補正がされたものである。


第2 平成31年3月15日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の【請求項1】を、下記(2)に示す本件補正後の【請求項1】へと補正することを含むものである。

(1)本件補正前の【請求項1】
「装置側前壁部に固定され、所定方向に延びる中心軸を有する印刷材供給管と、印刷材収容容器を装着位置に案内する第1レールと、前記印刷材収容容器を装着位置に案内する第2レールと、を備えた印刷装置における印刷材収容容器装着部に対して、着脱可能に装着される印刷材収容容器であって、
互いに直交する3つの空間軸をX軸、Y軸、Z軸とし、前記X軸、前記Y軸、前記Z軸に沿った方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に挿入される方向を-Y軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部から取り外される方向を+Y軸方向とするとき、
前記Y軸方向において対向する2つの面であって、前記-Y軸方向側に位置し、前記Z軸方向の寸法が前記X軸方向の寸法よりも大きい略長方形の前面と、前記+Y軸方向側に位置する後面と、
前記前面及び前記後面と交わり、前記Z軸方向において対向する2つの面であって、+Z軸方向側に位置する第1側面と、-Z軸方向側に位置する第2側面と、
前記前面、前記後面、前記第1側面、及び前記第2側面と交わり、前記X軸方向において対向する2つの面であって、+X軸方向側に位置する第3側面と、-X軸方向側に位置する第4側面と、を備えられたケースと、
前記ケースの内部に備えらえた印刷材収容部と、
前記ケースの外部に備えられた外部印刷材収容部と、
前記前面に設けられ、内部に前記印刷材供給管が挿入される印刷材供給口が配置されると共に、前記印刷材供給管が挿入される挿入孔と、
前記ケースに備えられ、前記ケースの+Y軸方向の後壁に開口し、前記印刷材収容部に連通する印刷材注入口と、
前記ケースの前記第1側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第1レールに挿入される第1の凸部と、
前記ケースの前記第2側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第2レールに挿入される第2の凸部と、を備え、
前記第1の凸部は、Y軸方向に沿って配置された異なる二つの部材から構成され、
前記第1レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制し、
前記第2の凸部は、Y軸方向に沿って配置された異なる二つの部材から構成され、
前記第2レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制しており、
少なくとも前記前面及び前記第1側面のいずれか一方に凹部が形成されており、
前記凹部の底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、装着状態において、前記装置側端子群は挿入され、前記容器側端子群と接触する印刷材収容容器。」

(2)本件補正後の【請求項1】
「装置側前壁部に固定され、所定方向に延びる中心軸を有する印刷材供給管と、印刷材収容容器を装着位置に案内する第1レールと、前記印刷材収容容器を装着位置に案内する第2レールと、を備えた印刷装置における印刷材収容容器装着部に対して、着脱可能に装着される印刷材収容容器であって、
互いに直交する3つの空間軸をX軸、Y軸、Z軸とし、前記X軸、前記Y軸、前記Z軸に沿った方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に挿入される方向を-Y軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部から取り外される方向を+Y軸方向とするとき、
前記Y軸方向において対向する2つの面であって、前記-Y軸方向側に位置し、前記Z軸方向の寸法が前記X軸方向の寸法よりも大きい略長方形の前面と、前記+Y軸方向側に位置する後面と、
前記前面及び前記後面と交わり、前記Z軸方向において対向する2つの面であって、+Z軸方向側に位置する第1側面と、-Z軸方向側に位置する第2側面と、
前記前面、前記後面、前記第1側面、及び前記第2側面と交わり、前記X軸方向において対向する2つの面であって、+X軸方向側に位置する第3側面と、-X軸方向側に位置する第4側面と、を備えられたケースと、
前記ケースの内部に備えらえた印刷材収容部と、
前記ケースの外部に備えられた外部印刷材収容部と、
前記前面に設けられ、内部に前記印刷材供給管が挿入される印刷材供給口が配置されると共に、前記印刷材供給管が挿入される挿入孔と、
前記ケースに備えられ、前記ケースの+Y軸方向の後壁に開口し、前記印刷材収容部に連通する印刷材注入口と、
前記ケースの前記第1側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第1レールに挿入される第1の凸部と、
前記ケースの前記第2側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第2レールに挿入される第2の凸部と、を備え、
前記第1の凸部は、Y軸方向に沿って配置された異なる二つの部材から構成され、
前記第1レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制し、
前記第2の凸部は、Y軸方向に沿って配置された異なる二つの部材から構成され、
前記第2レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制しており、
少なくとも前記前面及び前記第1側面のいずれか一方に凹部が形成されており、
前記凹部は、底壁と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有し、
前記底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、装置側端子部の装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、
前記第1の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第1の溝部が設けられ、
前記第2の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第2の溝部が設けられ、
装着状態において、前記装置側端子群は前記凹部に挿入されることで前記容器側端子群に接触し、前記装置側端子部の第1の位置決め部は前記第1の溝部に挿入されるとともに前記装置側端子部の第2の位置決め部は前記第2の溝部に挿入される印刷材収容容器。」(下線は当審で付した。以下同じ。)

2 補正目的について
本件補正により、本件補正前の請求項1に、「前記凹部は、底壁と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有し、」前記底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、「装置側端子部の」装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、「前記第1の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第1の溝部が設けられ、前記第2の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第2の溝部が設けられ、」装着状態において、前記装置側端子群は「前記凹部に」挿入され「ることで」前記容器側端子群に接触「し、前記装置側端子部の第1の位置決め部は前記第1の溝部に挿入されるとともに前記装置側端子部の第2の位置決め部は前記第2の溝部に挿入される」と補正する事項(以下「補正事項」という。)が追加されたものである。
上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「印刷材収容容器」における「凹部」について、「前記凹部は、底壁と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有し、」前記底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、「装置側端子部の」装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、「前記第1の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第1の溝部が設けられ、前記第2の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第2の溝部が設けられ、」装着状態において、前記装置側端子群は「前記凹部に」挿入され「ることで」前記容器側端子群に接触「し、前記装置側端子部の第1の位置決め部は前記第1の溝部に挿入されるとともに前記装置側端子部の第2の位置決め部は前記第2の溝部に挿入される」、と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成31年3月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の【請求項1】」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用刊行物
ア 刊行物1
本願の原出願の出願前である平成9年7月22日に頒布された刊行物である引用文献1(特開平9-187960号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)
(ア)「【0001】
【発明の分野】本発明は、インクジェット・プリンタ用のインク供給機構に関し、特に容易に補充できるインク供給機構に関する。」
(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施形態によるインク供給機構を図1に参照符号20として示す。インク供給機構20は、インクを含むインク容器24を保持する架台22と、ポンプ26と、流体出口28とを有する。架台22は、下端に取り付けられたキャップ32を有する硬質保護シェル30内に密閉される。キャップ32は、ポンプ26にアクセスできるようにするアパーチャ34と、流体出口28にアクセスできるようにするアパーチャ36とを備える。
【0015】インク供給機構20を使用するには、図7ないし図10に示したように、インク供給機構をインクジェット・プリンタのドッキング・ベイ38に挿入する。インク供給機構20を挿入すると、ドッキング・ベイ38内のアクチュエータ40がアパーチャ34を通じてポンプ26に接触する。また、ドッキング・ベイ38内の流体入口42がアパーチャ36を通じて流体出口28に供給され、インク供給機構からプリンタへの流体経路が形成される。アクチュエータ40の動作によって、ポンプ26が容器24からインクを引き込み、そのインクを流体出口28および流体入口42を通じてプリンタに供給する。」
(ウ)「【0018】図1ないし図4に示したように、架台22は、本体44を有する。インク容器24を画定し支持するのを助けるフレーム46が架台本体44の頂部から上向きに延びる。図の実施形態では、フレーム46は、その厚さによって決定される厚さを有し、開放された側面を有するほぼ正方形の容器24を画定する。フレーム46の各側面は、容器24の側面を密閉するためにプラスチック・シート50が取り付けられる面48を備える。図のプラスチック・シートは可とう性であり、そのため、容器のインクがなくなるにつれて容器の体積を変化させることができる。これにより、容器のインクがなくなるにつれて形成される背圧の量が低減されることによって、容器内のすべてのインクを引き込み使用することができる。図のインク供給機構20は、満杯のときには約30cm3のインクを含むものである。したがって、フレームによって画定されるインク容器の一般的な寸法は、高さが約57mm、幅が約60mm、厚さが約5.25mmである。これらの寸法は、インク供給機構の所望の寸法と、インク供給機構を使用するプリンタの寸法に応じて変更することができる。
【0019】フレーム46の頂部に補充ポート51が形成される。補充ポートは流体経路を備え、この流体経路を通じて、インクを導入し容器を充填または補充することができる。取り外し可能なキャップ53によって補充ポートが閉鎖される。図の実施形態では、キャップはネジ付きであり、漏れ防止シールを確保するためにOリング55を備える。しかし、インク容器の補充を可能にし空気の進入および容器からのインクの流出を制限するものであるかぎり、他のタイプのキャップを使用することができる。」
(エ)「【0035】インク容器24は、インクを保持する理想的な方法を提供するが、容易に穴を開け、あるいは破壊することができ、かつインク容器24では、インクからある量の水損失が発生する可能性がある。したがって、容器24を保護し水損失をさらに制限するために、容器24を保護シェル30内に密閉する。図の実施形態では、シェル30は清澄ポリプロピレンからなる。容器をしっかり保護しインクからの受け入れられない水損失を防止する厚さは約1mmであることが判明している。しかし、他の実施形態では、シェルの材料および厚さを変更することができる。
【0036】図1に示したように、シェル30の頂部は、ユーザがインク供給機構20を容易に把持し操作できるようにするように形状付けられ加工された輪郭把持表面114を有する。アパーチャ115によって、補充ポート51にアクセスすることができる。補充ポート用のキャップ53は、アパーチャ115を通じて延び、ユーザはこのキャップを握り取り外して補充ポートを開放することができる。シェル30の各側から、垂直リブ自体の下端の近くに形成された移動止め118を有する垂直リブ116が横向きに突き出る。シェル30のベースは、架台22を挿入できるように開放される。チャンバ56を画定する壁58の各側からストップ120が横方向外側へ延びる。このストップ120は、架台22が挿入されたときにシェル30の下縁に当接する。」
(オ)「【0044】各ドッキング・ベイ38は、内側を向く垂直チャネル138および140を画定する対向する壁134および136を含む。各チャネル138および140の下部内に、係合プロング144を有する板バネ142が位置決めされる。各板バネ142の係合プロング144は、チャネル内でドッキング・ベイ38の方へ延び、板バネによって内側へバイアスされる。チャネル138および140は、それに形成された対合キー139を備える。図の実施形態では、一方の壁上のチャネル内の対合キーは、各ドッキング・ベイごとに異なり、ドッキング・ベイで使用すべきインクの色を識別する。ベース・プレート146は各ドッキング・ベイ38の底部を画定する。ベース・プレート146は、アクチュエータ40を受容し流体入口42用のハウジング150を保持するアパーチャ148を含む。
【0045】図7に示したように、アクチュエータの上端は、上向きにベース・プレート146のアパーチャ148内を延び、ドッキング・ベイ38に進入する。アクチュエータ40の下部は、ベース・プレートの下方に位置決めされ、旋回点154上に支持されたレバー152の一端に旋回可能に結合される。レバー154の他端は、圧縮バネ156によって下向きにバイアスされる。このように、圧縮バネ156の力によってアクチュエータ40は上向きに付勢される。回転可能なシャフト160上に取り付けられたカム158は、係合位置に対するシャフトの回転によって、カムが圧縮バネ156の力に打ち勝ち、アクチュエータ40を下向きに移動するように位置決めされる。下記で詳しく説明するように、アクチュエータを移動することによって、ポンプ26が容器24からインクをくみ出し、流体出口28および流体入口42を通じてプリンタに供給する。」
(カ)「【0050】インク供給機構20をドッキング・ベイ38内に設置するには、ユーザが、図7に示したように、一方の縁が一方の垂直チャネル138に入り、他方の縁が他方の垂直チャネル140に入るように、対向する壁134の間にインク供給機構の下端を配置するだけでよい。次いで、図9に示したように、インク供給機構を下向きに設置位置に押し込む。この位置では、キャップ32の底部がベース・プレート146に当接する。下記で詳しく説明するように、インク供給機構を下向きに押すと、流体出口28と流体入口42が自動的に係合して開放し、インク供給機構からプリンタへの流体流の経路を形成する。また、下記で詳しく説明するように、アクチュエータがキャップ32のアパーチャ34に進入しポンプを加圧する。
【0051】ドッキング・ステーションの各面上の係合プロング144は、所定の位置に配置されると、シェル30に形成された移動止め118に係合しインク供給機構を所定の位置にかたく保持する。板バネ142は、インク供給機構の挿入時には係合プロングが外側に移動できるようにするが、この場合は係合プロングを内側へバイアスさせ、インク供給機構を設置位置にかたく保持する。設置プロセス全体にわたって、設置位置では、インク供給機構20の縁部が垂直チャネル138および140内に捕捉され、チャネル138および140はインク供給機構を横方向から支持し安定させる。ある種の実施形態では、シェルに形成された垂直リブ116を受容しインク供給機構をさらに安定させる一方または両方のチャネル138および140に溝を形成することが望ましい。
【0052】インク供給機構20を取り外すには、ユーザは単に、輪郭把持表面114を使用してインク供給機構を把持し、板バネ142の力に打ち勝つように上向きに引っ張る。取り外し後、流体出口28と流体入口42が切り離され再密封され、残留インクは、あるとしてもほとんど残らず、ポンプ26が減圧されインク供給機構からの漏れの可能性が低減される。」
(キ)「【0071】図15に示した本発明によるインク供給機構の他の実施形態では、アダプタ部は図13および図14の実施形態に類似している。しかし、フィットメント218は、取り外し可能なインク容器216からの流体通路を備えるチューブ228を受容するように設計される。図15の実施形態では、フィットメント218はポンプ入口60の真上に設けられる。チューブ228の端部は、フィットメントに係合するバーブ230、環状係合リング、ネジ山などを備える。
【0072】印刷ヘッドへインクを移送する代替方法を提供する場合、ポンプ26は不要になる。たとえば、図16に示した実施形態では、チューブ228は流体出口28と直接連通するようにフィットメント218に接続され、アダプタはポンプを含まない。その代わり、容器216を何らかの方法で加圧し、インクを直接流体出口28を通じて印刷ヘッドへ送ることができる。別法として、重力流れが、インクを容器216から印刷ヘッドへ送るのに十分なものになるように、容器を位置決めすることができる。キャップ32は、ポンプ・アクチュエータ40用のアパーチャを有さない。その結果、ポンプ・アクチュエータは、係合位置へ移動する際にキャップに係合する。これによって、アクチュエータが最上位置へ移動するのが防止され、そのため、プリンタはインク切れ検出信号を受け取らず、前述のようなポンプのリフレッシュを試みない。」
(ク)図1及び図8より、インク供給機構20及びシェル30が略直方体であることが看取でき、インク供給機構20の設置方向を-Y軸方向とすると、垂直リブ116が延在する下端の方向は-Y軸方向、垂直リブ116間の方向であって、キャップ32の長手方向はZ軸方向、キャップ32の短手方向はX軸方向といえる。
なお、(硬質)保護シェル30とシェル30とは同一のものであることは明らかであるから、以下、シェル30とする。
(ケ)図7より、流体入口42が円筒形であることが看取できる。
(コ)図15及び図16より、容器216がシェル30の外部に設けられたものであることが看取できる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「インクを含むインク容器24を保持する架台22と、ポンプ26と、流体出口28とを有する略直方体であるインク供給機構20であって、架台22は、下端に取り付けられたキャップ32を有する略直方体であるシェル30内に密閉され、キャップ32は、ポンプ26にアクセスできるようにするアパーチャ34と、流体出口28にアクセスできるようにするアパーチャ36とを備え、
インク供給機構20をインクジェット・プリンタのドッキング・ベイ38に挿入すると、ドッキング・ベイ38内の円形の流体入口42がアパーチャ36を通じて流体出口28に供給され、インク供給機構20からプリンタへの流体経路が形成され、アクチュエータ40の動作によって、ポンプ26が容器24からインクを引き込み、そのインクを流体出口28および流体入口42を通じてプリンタに供給し、
架台22は、本体44を有し、インク容器24を画定し支持するのを助けるフレーム46が架台本体44の頂部から上向きに延び、フレーム46の頂部に補充ポート51が形成され、
インク容器24はシェル30内に密閉され、
シェル30の各側から、垂直リブ自体の下端の近くに形成された移動止め118を有する垂直リブ116が横向きに突き出し、
ドッキング・ベイ38は、内側を向く垂直チャネル138および140を画定する対向する壁134および136を含み、各チャネル138および140の下部内に、係合プロング144を有する板バネ142が位置決めされ、各板バネ142の係合プロング144は、チャネル内でドッキング・ベイ38の方へ延び、ベース・プレート146は各ドッキング・ベイ38の底部を画定し、
インク供給機構20をドッキング・ベイ38内に設置するには、一方の縁が一方の垂直チャネル138に入り、他方の縁が他方の垂直チャネル140に入るように、対向する壁134の間にインク供給機構20の下端を配置し、インク供給機構20を下向きに設置位置に押し込み、
ドッキング・ステーションの各面上の係合プロング144は、所定の位置に配置されると、シェル30に形成された移動止め118に係合しインク供給機構20を所定の位置にかたく保持し、板バネ142は、インク供給機構20の挿入時には係合プロング144が外側に移動できるようにするが、係合プロング144を内側へバイアスさせ、インク供給機構20を設置位置にかたく保持するシェルに形成された垂直リブ116を受容しインク供給機構20をさらに安定させる一方または両方のチャネル138および140に溝を形成し、インク供給機構20を取り外すには、ユーザは単に、輪郭把持表面114を使用してインク供給機構20を把持し、板バネ142の力に打ち勝つように上向きに引っ張り、
チューブ228は流体出口28と直接連通するようにフィットメント218に接続され、アダプタはポンプを含まず、その代わり、シェル30の外部に設けられた容器216を何らかの方法で加圧し、インクを直接流体出口28を通じて印刷ヘッドへ送ることができる、
垂直リブ116が延在する下端の方向を-Y軸方向、垂直リブ116間の方向であって、キャップ32の長手方向をZ軸方向、キャップ32の短手方向をX軸方向とした、インク供給機構20。」

イ 刊行物2
本願の原出願の出願前である平成24年3月15日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2012-51313号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材カートリッジ、及び、印刷材カートリッジと印刷装置を備えた印刷材供給システムに関する。」
(イ)「【0053】
図3は、実施形態に係るカートリッジ10の斜視図である。カートリッジ10をホルダー20に装着する際の装着方向SDは、-Z方向(本実施形態では、鉛直下向き方向)である。ここで、実際にカートリッジ10をホルダー20に挿入する際に、カートリッジ10の姿勢は、Z軸に対して常に平行であるとは限らない。後に説明する図11(A)?図12(B)に示すように、カートリッジ10をホルダー20に装着しようとする途中の段階では、カートリッジ10の姿勢をZ軸に対して傾ける場合もある。しかしながら、装着される直前及び装着された状態では、インク供給口110がZ軸に平行な中心軸Cを持つ印刷材供給管240を受け入れ、カートリッジ10の姿勢は印刷材供給管240によって規制されることになる。よって、カートリッジ10はホルダー20に対して-Z方向に装着されるということができる。このカートリッジ10は、インクを収容するインク収容部100(「インク収容容器」又は「筐体」とも呼ぶ)と、回路基板400(単に「基板」とも呼ぶ)と、を備えている。インク収容部100の内部には、インクを収容するインク室108が形成されている。インク収容部100は、全体として略直方体の形状を有しており、底面101(第1面)と、上面102(第2面)と、正面103(第3面)と、背面104(第4面)と、左側面105(第5面)と、右側面106(第6面)の6つの面を有している。なお、各面の呼び名(「底面」や「上面」等)は、ホルダー20にカートリッジ10が装着された状態でのカートリッジ10の姿勢と同じ正立した姿勢で、印刷装置の正面側からカートリッジ10を観察したときの各面の位置を示している。なお、正面103は、カートリッジ10をホルダー20に装着する際に利用者に向き合う面である。但し、ホルダーの構成によっては、側面103?106の位置関係が変わる可能性がある。例えば、第3?第6面104,105,106のいずれかが正面となる場合も存在する。また、カートリッジを鉛直方向でなく、水平方向に挿入するタイプのプリンターに本発明を適用することも可能である。この場合には、第1面101と第2面102が側面になる。なお、各面101?106は、それぞれ面状の部材から構成されているので、これらの「面部材」又は「壁部材」と呼ぶことも可能である。インク収容部100は、樹脂で形成されており、また、複数の部材の組立体として構成されている。なお、6つの面101?106の一部(例えば左側面105又は右側面106)は、樹脂フィルムで形成されていてもよい。

【0055】
底面101と正面103とが交わる位置(すなわちインク収容部100の正面下端のコーナー部)には、基板設置部180が形成されており、この基板設置部180に基板400が設置されている。本実施形態では、基板設置部180は、底面1010に対して傾いた斜面として構成されている。より詳細に言えば、底面101の正面103側の端部には、基板設置部180と段差部188とを含むオーバーハング部190が設けられている。段差部188は、底面101から上方に向けて立ち上がる部分である。基板設置部180は、段差部188の上方の位置に設けられている。換言すれば、オーバーハング部190は、底面101から上方に立ち上がる段差部188と、段差部188の上に設けられた基板設置部180とで構成されている。なお、基板設置部180は、正面103の下端に設けられていると考えることも可能である。基板設置部180には、回路基板400が、その基板表面を下向きにした状態で設置されている。基板設置部180の斜面は、インク供給口110の先端で規定される仮想的な平面である開口面(XY平面に平行な面)に対して傾斜した面である。」
(ウ)「【0067】
図4(A),(C)及び図5(A)に示すように、背面104の部分のうち、Z方向(本実施形態では鉛直方向)で半分以下の高さを占める部分には係合突起160が設けられている。この係合突起160は、ホルダー20にカートリッジ10が装着された後の、カートリッジ10の動きを規制するために用いられる。係合突起160は、幅Wtを有する。」
(エ)「【0080】
図8A?図8D及び図9は、ホルダー20の詳細構成を示している。図8A,8Bはホルダー20の外観斜視図である。なお、図8Bでは、説明の容易のためにホルダー20を形成する外周壁の図示は一部省略している。図8Cは、対向面壁部25cをX軸正方向側から見た図である。図8Dは、図8Cの部分拡大図である。図9は、図8AのC-C断面図である。

【0087】
ホルダー20は、さらに、係合部側面壁部25bに隣接して配置された装置側係合部260を有する。装置側係合部260は、装置側底面壁部25aから所定の高さ位置にある。装置側係合部260は、カートリッジ10の係合突起124(図4(B))と係合することで、カートリッジ装着時の高さ方向の動きを規制する。
【0088】
図8Cに示すように、対向面壁部25cは、立設壁部216と、ガイド溝200tと、立設壁部216に形成された係合穴202と、を備える。使用姿勢において、立設壁部216は装置側底面壁部25から+Z方向(本実施形態では上方)に延びる。立設壁部216は、下方から順に、対向面216uと、延伸面216tと、上部面216sとを有する。使用姿勢において、対向面216uは、装置側底面壁部25aから+Z方向(本実施形態では鉛直上方向)に延びる。言い換えれば、対向面216uは、カートリッジ10がホルダー20に装着された装着状態において、カートリッジ10の背面104(図4(A))の外面と略平行な面を形成する。理解を容易にするために、対向面216uにはシングルハッチングを付している。」
(オ)「【0096】
図10は、ホルダー20内に設けられている端子台500の斜視図である。端子台500には、斜面502上に複数の電気接触部材510?590が設けられている。この斜面502は、カートリッジ10が正しく装着された状態で、回路基板400とほぼ平行(すなわち、図3の基板設置部180の斜面とほぼ平行)となる。複数の電気接触部材510?590は、基板400の端子410?490(図6)に対応する装置側端子に相当する。装置側端子510?590のそれぞれは、バネ性の部材(弾性部材)で構成されており、それぞれ端子410?490が押し付けられた時に、これらを斜め上方(-X方向と+Z方向の間の方向)に押し返すような弾性力を持つ。装置側端子510?590の弾性力は、実際は斜め方向(-X方向と+Z方向の間の方向)に働くのであるが、+Z方向のベクトル成分を持っていれば+Z方向の弾性力を持つとみなすことができる。また、装置側端子510?590に押し付けられた端子410?490には、実際は斜め方向(-X方向と+Z方向の間の方向)に押し返されるような力が付与されるのであるが、この付勢力が+Z方向のベクトル成分を持っていれば端子410?490は+Z方向に付勢されるとみなすことができる。なお、下端列の中央にある装置側接地端子570は、他の端子よりも斜面502からの+Z方向への突出高さが大きい。従って、カートリッジ10がホルダー20内に装着される際には、この端子570が他の装置側端子よりも先に基板の端子に接触する。換言すれば、基板400の端子410?490(図6)のうちで、接地端子470が他の端子よりも先に装置側端子に接触する。なお、図6で説明したように、接地端子470は、回路基板400の他の端子よりも-Z方向(装着方向SD)に長い。従って、接地端子470が回路基板400の他の端子よりも早く装置側端子と接触しても、接地端子470と装置側端子とを確実に接触させることができる。
【0097】
図11は、カートリッジ10をホルダー20に取り付ける様子を説明するための図である。図11は、図4(B)のカートリッジ10のG-G断面と、G-G断面に対応するホルダー20の断面を示した図である。通常の装着方法では、図11(A)に示すように、背面104の係合突起160が対向面壁部25cに接するようにカートリッジ10を傾けて、ホルダー20への装着が行われる。具体的には、係合突起160をガイド溝200t(図8)に挿入させながら、矢印SDに示す-Z方向(本実施形態では鉛直下方)にカートリッジ10を移動させる。ガイド溝200tの上端の幅Waは、カートリッジ10の係合突起160の幅Wtよりも大きいので、容易に係合突起160をガイド溝200tに挿入することができる。」

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「インクを収容するインク収容部と、回路基板(単に「基板」とも呼ぶ)と、を備えているカートリッジであって、
インク収容部は、全体として略直方体の形状を有しており、底面(第1面)と、上面(第2面)と、正面(第3面)と、背面(第4面)と、左側面(第5面)と、右側面(第6面)の6つの面を有しており、半分以下の高さを占める部分には係合突起が設けられ、
底面と正面とが交わる位置(すなわちインク収容部の正面下端のコーナー部)には、基板設置部が形成されており、この基板設置部に基板が設置され、基板設置部は、底面に対して傾いた斜面として構成され、底面の正面側の端部には、基板設置部と段差部とを含むオーバーハング部が設けられており、
ホルダーは、ガイド溝200tを備える対向面壁部25cを有し、
ホルダー内に設けられている端子台には、斜面上に複数の電気接触部材が設けられ、複数の電気接触部材は、基板の端子に対応する装置側端子に相当し、カートリッジがホルダー内に装着される際には、係合突起をガイド溝に挿入させながら、鉛直下方にカートリッジを移動させ、この装置側端子が基板の端子に接触する、カートリッジ。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
後者の「ベース・プレート146」、「流体入口42」、「インク供給機構20」、「設置位置」、「両方のチャネル138および140の溝」、「インクジェット・プリンタ」、「ドッキング・ベイ38」、「シェル30」、「インク容器24」、「容器216」、「流体出口28」、「アパーチャ36」、「補充ポート51」、「『シェル30の各側から』の『垂直リブ116』」及び「板バネ142」は、それぞれ、前者の「装置側前壁部」、「印刷材供給管」、「印刷材収容容器」、「装着位置」、「『第1レール』及び『第2レール』」、「印刷装置」、「印刷材収容容器装着部」、「ケース」、「印刷材収容部」、「外部印刷材収容部」、「印刷材供給口」、「挿入孔」、「印刷材注入口」、「『第1の凸部』及び『第2の凸部』」及び「板ばね」に相当する。
後者の「シェル30」は、略直方体であって、垂直リブ116が延在する下端の方向を-Y軸方向、垂直リブ116間の方向であって、キャップ32の長手方向をZ軸方向、キャップ32の短手方向をX軸方向とするものであるから、後者の「シェル30」は、前者の「前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に挿入される方向を-Y軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部から取り外される方向を+Y軸方向とするとき、前記Y軸方向において対向する2つの面であって、前記-Y軸方向側に位置し、前記Z軸方向の寸法が前記X軸方向の寸法よりも大きい略長方形の前面と、前記+Y軸方向側に位置する後面と、前記前面及び前記後面と交わり、前記Z軸方向において対向する2つの面であって、+Z軸方向側に位置する第1側面と、-Z軸方向側に位置する第2側面と、前記前面、前記後面、前記第1側面、及び前記第2側面と交わり、前記X軸方向において対向する2つの面であって、+X軸方向側に位置する第3側面と、-X軸方向側に位置する第4側面と、を備えられたケース」に相当する。
後者の「流体入口42」は、円筒形であって、中心軸を有するものであるから、前者の「所定方向に延びる中心軸を有する印刷材供給管」に相当する。
後者のインク供給機構20をドッキング・ベイ38内に設置するには、一方の縁が一方の垂直チャネル138に入り、他方の縁が他方の垂直チャネル140に入るように、対向する壁134の間にインク供給機構の下端を配置し、インク供給機構を下向きに設置位置に押し込む必要があるから、前者の「『第1レール』及び『第2レール』」と後者の「両方のチャネル138および140の溝」とは、「印刷材収容容器を装着位置に案内するもの」との概念で共通する。
後者の「インク供給機構20」は取り外せるものであるから、前者の「印刷材収容容器」と後者の「インク供給機構20」とは、「着脱可能に装着された」ものとの概念で共通する。
後者の「インク容器24」はシェル30内に密閉されるものであるから、前者の「印刷材収容部」と後者の「インク容器24」とは、「ケースの内部に備えられた」ものとの概念で共通する。
後者の「容器216」は、シェル30の外部に設けられたものであるから、前者の「外部印刷材収容部」と後者の「容器216」とは、「ケースの外部に備えられた」ものとの概念で共通する。
後者の「キャップ32」は、シェル30の下端に取り付けられたものであるから、前者の印刷材収容容器の「前面」に相当する。そして、後者の「アパーチャ36」は、キャップ32に備えられ、ドッキング・ベイ38内の流体入口42がアパーチャ36を通じて流体出口28に供給され、インク供給機構からプリンタへの流体経路が形成されるものであるから、後者の「アパーチャ36」は、前者の「前面に設けられ、内部に前記印刷材供給管が挿入される印刷材供給口が配置されると共に、前記印刷材供給管が挿入される挿入孔」に相当する。
後者の「補充ポート51」は、インク容器24を画定し支持するのを助けるフレーム46が架台本体44の頂部から上向きに延び、そのフレーム46の頂部に形成されるものであって、インク容器24のアパーチャ36と対向する位置に形成されるものであるから、前者の「印刷材注入口」と後者の「補充ポート51」とは、「ケースの+Y軸方向の後壁(後面)に開口」するものとの概念で共通する。
一般に「側」には、「物の一つの方向・面。」という意味があるから、後者の「シェル30の各側から」突き出る「垂直リブ116」は、前者の「ケースの両側面に備えられ」る「第1の凸部」及び「第2の凸部」に相当する。そして、後者の「両方のチャネル138および140に溝」は、垂直リブ116を受容するものであるから、前者の「『第1の凸部』及び『第2の凸部』」と後者の「シェル30の各側から」突き出る「垂直リブ116」とは、「印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる第1(2)レールに挿入される」ものとの概念で共通する。
後者の「板バネ142」の係合プロング144は、シェル30に形成された移動止め118に係合しインク供給機構を所定の位置にかたく保持するものであるから、前者の「板ばね」と後者の「各板バネ142」とは、「第1(2)レールに設けられ、空間部に入り込むことでケースにおけるY軸方向の位置を規制」するものとの概念で共通する。

したがって、両者は、
「装置側前壁部に固定され、所定方向に延びる中心軸を有する印刷材供給管と、印刷材収容容器を装着位置に案内する第1レールと、前記印刷材収容容器を装着位置に案内する第2レールと、を備えた印刷装置における印刷材収容容器装着部に対して、着脱可能に装着される印刷材収容容器であって、
互いに直交する3つの空間軸をX軸、Y軸、Z軸とし、前記X軸、前記Y軸、前記Z軸に沿った方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に挿入される方向を-Y軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部から取り外される方向を+Y軸方向とするとき、
前記Y軸方向において対向する2つの面であって、前記-Y軸方向側に位置し、前記Z軸方向の寸法が前記X軸方向の寸法よりも大きい略長方形の前面と、前記+Y軸方向側に位置する後面と、
前記前面及び前記後面と交わり、前記Z軸方向において対向する2つの面であって、+Z軸方向側に位置する第1側面と、-Z軸方向側に位置する第2側面と、
前記前面、前記後面、前記第1側面、及び前記第2側面と交わり、前記X軸方向において対向する2つの面であって、+X軸方向側に位置する第3側面と、-X軸方向側に位置する第4側面と、を備えられたケースと、
前記ケースの内部に備えらえた印刷材収容部と、
前記ケースの外部に備えられた外部印刷材収容部と、
前記前面に設けられ、内部に前記印刷材供給管が挿入される印刷材供給口が配置されると共に、前記印刷材供給管が挿入される挿入孔と、
前記ケースに備えられ、前記ケースの+Y軸方向の後壁に開口し、前記印刷材収容部に連通する印刷材注入口と、
前記ケースの前記第1側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第1レールに挿入される第1の凸部と、
前記ケースの前記第2側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第2レールに挿入される第2の凸部と、を備え、
前記第1の凸部は、Y軸方向に沿って配置されて構成され、
前記第1レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制し、
前記第2の凸部は、Y軸方向に沿って配置されて構成され、
前記第2レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制している、印刷材収容容器。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明の第1の凸部及び第2の凸部は、Y軸方向に沿って配置された「異なる二つの部材」から構成されるものであるのに対し、引用発明1の垂直リブ116は、異なる二つの部材から構成されるのか否か定かでない点。

[相違点2]
本願補正発明が、「少なくとも前記前面及び前記第1側面のいずれか一方に凹部が形成されており、前記凹部は、底壁と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有し、前記底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、装置側端子部の装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、前記第1の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第1の溝部が設けられ、前記第2の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第2の溝部が設けられ、装着状態において、前記装置側端子群は前記凹部に挿入されることで前記容器側端子群に接触し、前記装置側端子部の第1の位置決め部は前記第1の溝部に挿入されるとともに前記装置側端子部の第2の位置決め部は前記第2の溝部に挿入される」ものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(4)相違点についての判断
ア 相違点1について
一般に、二つの部分を有する構造物を、二つの部材で各部分を構成するか、一つの部材に二つの部分を設けるよう構成するかは、当業者が設計に際し、適宜なし得る事項である。
審判請求書において「引用文献1において、凹部は単一の部材から構成されており、係止部材を係止するための凹部を別途加工する必要が生じます。これに対し、本願発明1では、第1の凸部(第2の凸部)を異なる二つの部材(二つの部位)で構成し、二つの部材の間に生じる空間部を板バネの係止部として積極的に利用しております。そのため、本願発明1では、係止部を設けるために凸部を別途加工する必要はありません。」(7頁参照。)と請求人は主張するが、印刷材収容容器の分野においては、印刷材収容容器は射出成形して製造することが一般的であることからすると、一つの部材に二つの部分を設けるにしても、請求人が主張するような別途加工手順を増やす必要はない。
そうすると、引用発明1において、「垂直リブ116」を異なる二つの部材から構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)相違点2について
引用発明2の「基板の端子」、「装置側端子」、「『斜面として構成され』た『基板設置部』」及び「オーバーハング部」は、それぞれ、本願補正発明の「容器側端子群」、「装置側端子群」、「傾斜面」及び「凹部」に相当する。
そして、引用発明2のカートリッジは、全体として略直方体の形状を有しているから、引用発明2の「『斜面として構成され』た『基板設置部』」と本願補正発明の「斜面」とは、「二つの軸方向成分を含む方向に斜めに形成された」との概念で共通する。そして、本願補正発明の印刷材収容容器挿入方向が、-Y軸方向であるから、引用発明2のカートリッジの装着方向を-Y軸方向と対応付ければ、本願補正発明の「傾斜面」と引用発明2の「斜面」とは、「-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され」たものとの概念で共通する。
また、本願出願時において、印刷材収容容器に2つの溝部を設け、装置側の位置決め部を挿入させることは、周知の技術手段である(例えば、特開2008-24007号公報(【0032】参照。)、特開2008-149535号公報(【0033】、【0046】参照。)及び特開2010-149522号公報(【0061】参照。)。以下「周知技術」という。)。
そして、引用発明1において、インク供給機構は、インクジェット・プリンタ(のドッキング・ベイ38)と、前面に設けられたアパーチャ34・36を介して相互アクセスするものであるから、電気的アクセスするためのアパーチャを設けることは設計的事項といえることであって、当然、アパーチャーの内部には、側壁と底壁を有する凹部が設けられることとなる。
そして、本願出願時において、印刷材収容容器に装置側端子群に接触する容器側端子群を設け、装置と容器とで電気的接続行うことは、例を示すまでもなく、周知の事項であるから、引用発明1に、引用発明2を適用すると、電気的アクセスのために設けられるアパーチャの凹部に、引用発明2のオーバーハング部が適用され、凹部の底壁は、「斜面として構成された基板設置部」となる。
また、周知技術は上記のとおりであって、本願補正発明において、溝部を設ける箇所を凹部の側壁とすることの格別な技術的意義は認められないから、上記電気的アクセスのために設けられるアパーチャの凹部を、本願補正発明の「第1の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第1の溝部が設けられ、前記第2の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第2の溝部が設けられ」とすることは設計的事項といえることである。
そうすると、引用発明1に、引用発明2を適用する際に、上記周知技術を参酌することで、上記相違点2に係る本願補正発明とすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明によって奏される効果も、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年8月23日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「装置側前壁部に固定され、所定方向に延びる中心軸を有する印刷材供給管と、印刷材収容容器を装着位置に案内する第1レールと、前記印刷材収容容器を装着位置に案内する第2レールと、を備えた印刷装置における印刷材収容容器装着部に対して、着脱可能に装着される印刷材収容容器であって、
互いに直交する3つの空間軸をX軸、Y軸、Z軸とし、前記X軸、前記Y軸、前記Z軸に沿った方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に挿入される方向を-Y軸方向とし、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部から取り外される方向を+Y軸方向とするとき、
前記Y軸方向において対向する2つの面であって、前記-Y軸方向側に位置し、前記Z軸方向の寸法が前記X軸方向の寸法よりも大きい略長方形の前面と、前記+Y軸方向側に位置する後面と、
前記前面及び前記後面と交わり、前記Z軸方向において対向する2つの面であって、+Z軸方向側に位置する第1側面と、-Z軸方向側に位置する第2側面と、
前記前面、前記後面、前記第1側面、及び前記第2側面と交わり、前記X軸方向において対向する2つの面であって、+X軸方向側に位置する第3側面と、-X軸方向側に位置する第4側面と、を備えられたケースと、
前記ケースの内部に備えらえた印刷材収容部と、
前記ケースの外部に備えられた外部印刷材収容部と、
前記前面に設けられ、内部に前記印刷材供給管が挿入される印刷材供給口が配置されると共に、前記印刷材供給管が挿入される挿入孔と、
前記ケースに備えられ、前記ケースの+Y軸方向の後壁に開口し、前記印刷材収容部に連通する印刷材注入口と、
前記ケースの前記第1側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第1レールに挿入される第1の凸部と、
前記ケースの前記第2側面に備えられ、前記印刷材収容容器が前記印刷材収容容器装着部に装着されるとき、Y軸方向に延びる前記第2レールに挿入される第2の凸部と、を備え、
前記第1の凸部は、Y軸方向に沿って配置された異なる二つの部材から構成され、
前記第1レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制し、
前記第2の凸部は、Y軸方向に沿って配置された異なる二つの部材から構成され、
前記第2レールに設けられた板ばねが前記二つの部材の間の空間部に入り込むことで前記ケースにおけるY軸方向の位置を規制しており、
少なくとも前記前面及び前記第1側面のいずれか一方に凹部が形成されており、
前記凹部の底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、装着状態において、前記装置側端子群は挿入され、前記容器側端子群と接触する印刷材収容容器。」(以下「本願発明」という。)

2 引用刊行物
平成29年9月19日付けの拒絶査定に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した補正事項である「「前記凹部は、底壁と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有し、」前記底壁は-Y軸方向成分及び+Z軸方向成分を含む方向に斜めに形成され、装着状態において、「装置側端子部の」装置側端子群に接触する接触部をもった容器側端子群を備えた傾斜面を有しており、「前記第1の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第1の溝部が設けられ、前記第2の側壁は、-Y軸方向側の端面に開口を有する第2の溝部が設けられ、」装着状態において、前記装置側端子群は「前記凹部に」挿入され「ることで」前記容器側端子群に接触「し、前記装置側端子部の第1の位置決め部は前記第1の溝部に挿入されるとともに前記装置側端子部の第2の位置決め部は前記第2の溝部に挿入される」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点1及び相違点2のうちの上記限定を省いたものとなるから、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-28 
結審通知日 2019-07-02 
審決日 2019-07-19 
出願番号 特願2016-96470(P2016-96470)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
P 1 8・ 113- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有家 秀郎  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 印刷材収容容器  
代理人 佐藤 彰雄  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松本 裕幸  
代理人 大浪 一徳  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ