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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1354867
審判番号 不服2018-13059  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-01 
確定日 2019-09-05 
事件の表示 特願2014-122354「内燃機関の制御装置及び内燃機関の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月12日出願公開、特開2016-3568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月13日の出願であって、平成30年2月8日付け(発送日:平成30年2月13日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成30年4月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年6月26日付け(発送日:平成30年7月3日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成30年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成30年11月13日に上申書が提出されたものである。

第2 平成30年10月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の平成30年4月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
内燃機関の筒内温度を推定して前記内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の表面に設けた非共振型の振動センサで検出した振動を、周期的に予め設定した時間の間で周波数分析して振動レベルが最大の周波数を筒内における共鳴現象の共鳴周波数として検出し、この検出した共鳴周波数により前記筒内温度を推定することを特徴とする内燃機関の制御装置。」

(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。
「【請求項1】
内燃機関の筒内温度を推定して前記内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の燃焼室の外部であって前記内燃機関の表面に設けた非共振型の振動センサで検出した振動を、周期的に予め設定した時間の間で周波数分析して振動レベルが最大の周波数を前記内燃機関の筒内における共鳴現象の共鳴周波数として検出し、この検出した共鳴周波数により前記筒内温度を推定することを特徴とする内燃機関の制御装置。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「内燃機関の表面に設けた非共振型の振動センサ」について「内燃機関の燃焼室の外部であって前記内燃機関の表面に設けた非共振型の振動センサ」と限定し、さらに「筒内」について「内燃機関の筒内」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平5-125991号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ノック検出装置」に関して、図面(特に、図1及び図5を参照。)とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンの振動またはシリンダ内圧振動の少なくとも1つを検出するノックセンサを備え、このノックセンサの出力信号に含まれる所定の周波数成分を抽出する手段と、この周波数抽出手段の出力からノック強度を計算するノック強度計算手段とを設けて、さらに、スロットル開度を検出して、回転数とスロットル開度または燃料噴射幅に対応したノック強度判定値を検索し、ノック発生の判定をするように構成したことを特徴とするノック検出装置。
【請求項2】請求項1において、ノック判定結果を点火時期と燃料噴射幅に反映させて、空燃比を理論空燃比及びリーンの空燃比での運転状態でノック制御を行うようにしたことを特徴とするノック検出装置。
【請求項3】請求項1または2においてノック制御量により、オクタン価を推定することを特徴とするノック検出装置
【請求項4】請求項1または2において気筒別にノック判定値とノック制御量を持つように構成したことを特徴とするノック検出装置。」

イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前述の問題点を解決するために発明されたものであり、アイドル時から高負荷時までの連続した領域にわたりノック制御を行うことにより、エンジンの出力を維持することにある。」

ウ 「【0020】
【実施例】図1に本発明の1実施例の構成図を示す。
【0021】エンジン制御ユニット1,シリンダ2,吸気管3,排気管4,スロットル5,燃料噴射弁6,点火プラグ7,点火コイル8,吸気流量計10,気筒判別用レファレンスセンサ11,クランクの回転角をはかるポジションセンサ12,スロットルの開度を測るスロットルセンサ13,空燃比を測る空燃比センサ14,ノック振動センサ15A,座圧センサ15B,筒内圧センサ15Cから構成されている。」

エ 「【0025】まず、ノック振動センサはシリンダブロックの燃焼室の近傍に取り付けられ各気筒毎または複数の気筒のノック振動を検出する。座圧センサは点火プラグの座金部分に取り付けられ、燃焼室内の圧力変化を直接測定し、ノックを捕らえる。筒内圧センサは燃焼室のシリンダヘッドの一部に穴をあけて取り付けられ、やはり燃焼室内の圧力変化を直接測定する。
【0026】燃焼室内での燃料と空気の混合比の不均一やシリンダの温度分布のばらつきにより、局部的な早期着火が起こるとノックが発生し、燃焼室内で共鳴振動成分が強く生じてノック固有の周波数が出る。共鳴振動は燃焼室を円柱と考えた時の振動モードによって異なり、ノック発生時のモードと周波数は図2に示すように半径方向と円周方向との圧力分布に違いがある。こうした振動モードは常時一つとは限らず、燃焼毎に変化し、また同時に複数の振動モードが重なることもある。振動は圧力の変化となって現われ、座圧センサや筒内圧センサで検出できる。
【0027】また振動はシリンダをとうしてシリンダブロック全体の振動となり、ノック振動センサでも検出できる。
【0028】ノック検出手段としてのノック振動センサ,座圧センサ,筒内圧センサの感度は図2に示した周波数帯域にわたって一様な感度を持つことが望ましく圧電素子や水晶を用いたピエゾ形圧電検出方式がとられる。もし感度が一様でない場合は、ノック信号増幅器に周波数特性を補正するように、センサの特性と逆の増幅率を持たせるか、または後述の周波数分析結果に補正を行う。全体の増幅度はノック信号の大きさに応じて変える。すなわちAD変換の分解能以上の信号が常時分析でき、かつ飽和しない信号レベルとする。信号が分解能以下にならなければ回転数に応じて増幅度を変えてもよい。
【0029】従来、ノック検出ではノック発生時の代表的な周波数成分のみを捕らえるようにアナログ回路によるバンドパスフィルタを用いていたが、ノック周波数は単一でないためにすべてのノックを検出できなかった。一方、特徴周波数をすべてバンドパスフィルタで検出しようとすれば周波数の数だけフィルタを必要とし、コスト的に高くなる。
【0030】本発明ではノック検出手段としてのセンサからの信号を周波数分析することでアナログ回路を削減して、ノック検出を行う。
【0031】すなわち、ノック信号をAD変換してデジタルフィルタまたはFFT(FastFourier Transform)による特徴周波数成分の抽出を行う。特徴周波数はエンジンの形式、燃焼室の形状、ボア径等によって変化し、また燃焼温度によっても変化する。このため従来はバンドパスフィルタの周波数調整をエンジン毎に必要としていたが、本発明ではデジタルフィルタまたはFFTの結果の選択のみで周波数の調整が可能である。」

オ 「【0032】ところで、AD変換を行うサンプリング間隔τsは標本化定理により、抽出しようとする最大の周波数の2倍以上の周波数の逆数であり、図2の例では抽出周波数の最大値が18.1kHzであるから、τsは
τs=<(1/(18.1*1000*2))=27.6μs …(1)
となるようにAD変換を行う。
【0033】デジタルフィルタとしては図3に示したような非回帰形や図4の回帰形フィルタがある。図5のFFTを用いた時は同時に複数の周波数成分を抽出できる。
【0034】しかし、FFTはノックの特徴周波数を含まない帯域も計算するため、演算時間がかかるので必要な帯域のみ計算するように変形を行ってもよい。また、抽出周波数はサンプリング数をnとした時
1/(τs*n) …(2)
毎になるため、ノックの特徴周波数を中心周波数に設定できない。
【0035】例えば、τs=25.6μs,n=32のときF=1.22kHzとなり、ノックの特徴周波数と一致できないが、隣合う周波数との間にバンドパスフィルタと同様な感度を持つので、両隣の周波数の相加平均を用いるか、帯域毎の分析結果からノックを検出してもよい。」

カ 「【0037】周波数分析手段はFFTを使い、ノックの特徴周波数を含む帯域にわたって成分を抽出する方法を用いて、P1?P8の成分を計算する。もし、ノックセンサの感度が一様でない場合抽出結果にセンサの周波数特性の逆数を乗じて補正する。
【0038】次にそれまでにノックなしと判定した時のバックグランドレベルBGL1?BGL8との比率をとり、S/N比K1?K8を求める。
【0039】K1?K8について、大きい順にならべた時の上位m個の和をとり、それをノック指数IKとする。mは周波数帯域の分割数と実験により異なる。
【0040】ノック指数IKがしきい値を越えた時にノック有りとする。」

キ 「【0053】また、リーン化により燃焼温度が低下する分だけノックの特徴周波数は全体的に低い方へシフトする。そこでノックの特徴周波数のシフト量を計算することで燃焼室内の温度を推定できるので、温度が引火温度以下になる失火限界をあらかじめ予測できる。」

ク 上記エの段落【0026】の「局部的な早期着火が起こるとノックが発生し、燃焼室内で共鳴振動成分が強く生じてノック固有の周波数が出る。」との記載及び段落【0029】の「ノック検出ではノック発生時の代表的な周波数成分のみを捕らえるようにアナログ回路によるバンドパスフィルタを用いていたが、ノック周波数は単一でないためにすべてのノックを検出できなかった。一方、特徴周波数をすべてバンドパスフィルタで検出しようとすれば周波数の数だけフィルタを必要とし、コスト的に高くなる。」との記載からみて、「特徴周波数」と「ノック発生時の代表的な周波数成分」は同じ事項を指し、「ノック発生時の代表的な周波数成分」は「ノック固有の周波数」であるといえる。そして、「ノック固有の周波数」は「燃焼室内の共鳴振動成分」が強く生じることにより出るものである。してみると、「特徴周波数」は「燃焼室内の共鳴振動成分」といえる。

ケ 上記エの段落【0025】の「ノック振動センサはシリンダブロックの燃焼室の近傍に取り付けられ各気筒毎または複数の気筒のノック振動を検出する。」との記載及び図1におけるノック振動センサ15Aの取付に係る図示内容からみて、ノック振動センサ15Aはエンジンの燃焼室の外部であって、エンジンのシリンダブロックの表面に設けたものといえる。

コ 上記エの段落【0028】の記載からみて、ノック振動センサ15Aは圧電素子を用いた非共振型のノック振動センサといえる。

サ 上記オの段落【0032】の記載からみて、特徴周波数成分の抽出は、サンプリング間隔τsで周期的に予め設定された時間でサンプリングされているといえる。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「エンジンのノック強度を計算してノック制御を行うエンジンにおいて、前記エンジンの燃焼室の外部であって前記エンジンのシリンダブロックの表面に設けた非共振型のノック振動センサ15Aで検出した振動を、周期的に予め設定した時間の間で周波数分析してエンジンの燃焼室における共鳴振動成分として検出し、この検出した共鳴振動成分により前記ノック強度を計算するエンジン。」

また、引用文献1には、以下の事項(以下、「引用文献1の記載事項」という。)が記載されている。
「燃焼室内の共鳴振動成分のシフト量を計算することで燃焼室内の温度を推定でき、失火限界をあらかじめ予測できること。」

(3) 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「エンジン」はその機能、構成又は技術的意義からみて前者の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「計算」は「推定」に、「エンジンのシリンダブロックの表面」は「内燃機関の表面」に、「ノック振動センサ15A」は「振動センサ」に、「燃焼室」は「筒内」に、「共鳴振動成分」は「共鳴現象の共鳴周波数」にそれぞれ相当する。
「共鳴振動成分」は、技術常識からみて「振動レベルが最大の周波数」を指すものであるから、後者の「エンジンの燃焼室における共鳴振動成分」は前者の「振動レベルが最大の周波数を内燃機関の筒内における共鳴現象の共鳴周波数」に相当するものといえる。
また、後者の「ノック強度」と前者の「筒内温度」とは「状態」という限りで一致するから、後者の「エンジンのノック強度を計算してノック制御を行う」ことと前者の「内燃機関の筒内温度を推定して前記内燃機関を制御する」こととは、「内燃機関の状態を推定して前記内燃機関を制御する」という限りで一致する。そして、このような「制御」を行う後者の「エンジン」は、前者の「内燃機関の制御装置」に相当する事項を含むものである。

したがって、両者は、
「内燃機関の状態を推定して前記内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の燃焼室の外部であって前記内燃機関の表面に設けた非共振型の振動センサで検出した振動を、周期的に予め設定した時間の間で周波数分析して振動レベルが最大の周波数を前記内燃機関の筒内における共鳴現象の共鳴周波数として検出し、この検出した共鳴周波数により前記状態を推定する内燃機関の制御装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
「内燃機関の状態を推定して前記内燃機関を制御する」こと及び「検出した共鳴周波数により前記状態を推定する」ことの「状態」に関し、前者は「筒内温度」であるのに対し、後者は「ノック強度」であり、さらに、前者は「筒内温度を推定」して「内燃機関を制御」するのに対し、後者は「ノック強度を計算」して「ノック制御」を行うものである点。

(4) 判断
相違点について検討する。
引用文献1の記載事項は以下のとおりである。
「燃焼室内の共鳴振動成分のシフト量を計算することで燃焼室内の温度を推定でき、失火限界をあらかじめ予測できること。」
ここで、「燃焼室内の共鳴振動成分のシフト量を計算することで燃焼室内の温度を推定」することは、本件補正発明の「検出した共鳴周波数により」、内燃機関の「筒内温度を推定」することに相当する。また、「失火限界をあらかじめ予測できる」ことは、予測された失火限界を用いて内燃機関の制御を行うことが技術常識又は例示するまでもない慣用手段であることから、「内燃機関を制御する」ことを開示又は示唆するものといえる。
すなわち、引用文献1の記載事項は、「検出した共鳴周波数により筒内温度を推定」することを開示し、また「内燃機関の筒内温度を推定して前記内燃機関を制御」することを開示又は示唆するものである。
そして、引用発明に対し、引用文献1の記載事項を適用することに、格別の阻害要因を見出すこともできない。

そうすると、引用発明に対しこのような引用文献1の記載事項を適用して、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

なお、仮に「失火限界をあらかじめ予測できる」ことが、「内燃機関を制御する」ことを開示又は示唆するものではないと理解しても、内燃機関の筒内温度を推定して内燃機関を制御すること自体は、例えば特開2007-127004号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2)の段落【0018】、【0125】に記載されるように周知技術であり、引用発明に周知技術を適用することは当業者であれば容易になし得たことである。してみると、当該仮定においては、引用発明に対し、引用文献1の記載事項及び周知技術を適用して、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献1の記載事項、或いは引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、或いは引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成30年10月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成30年4月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(1)に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平5-125991号公報
引用文献2:特開2007-127004号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2005-248719号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平8-2221号公報(周知技術を示す文献)

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は前記第2[理由]2.で検討した本件補正発明から、「内燃機関の燃焼室の外部であって前記内燃機関の表面に設けた非共振型の振動センサ」についての「内燃機関の燃焼室の外部であって」との限定及び「燃焼室の筒内」についての「燃焼室の」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、或いは引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、或いは引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

なお、請求人は、平成30年11月13日の上申書において、願書に最初に添付した明細書の段落【0028】及び【0035】を根拠とした特許請求の範囲の請求項1の補正案を示し、補正の準備がある旨主張している。
しかしながら、第2[理由]2.(2)ウの段落【0031】の「特徴周波数はエンジンの形式、燃焼室の形状、ボア径等によって変化し、また燃焼温度によっても変化する。このため従来はバンドパスフィルタの周波数調整をエンジン毎に必要としていたが、本発明ではデジタルフィルタまたはFFTの結果の選択のみで周波数の調整が可能である。」との記載からみて、引用文献1には、「特徴周波数(補正案における「共鳴周波数」に相当)はボア径によって、変化するため、周波数の調整を行うこと。」との事項が記載または示唆されているといえる。
してみると、補正案における、本件補正発明からの変更箇所である「この推定された前記筒内温度を前記筒内におけるボアの径に基づいて補正する」ことは、引用発明、引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された上記事項に基づき当業者が容易になし得たことである。
そうすると、補正案の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず、補正案に係る補正をするための機会は付与しない。
 
審理終結日 2019-07-04 
結審通知日 2019-07-09 
審決日 2019-07-22 
出願番号 特願2014-122354(P2014-122354)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神山 貴行比嘉 貴大  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 水野 治彦
鈴木 充
発明の名称 内燃機関の制御装置及び内燃機関の制御方法  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 境澤 正夫  
代理人 山田 祐樹  
代理人 昼間 孝良  

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