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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1354870
審判番号 不服2019-1850  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-08 
確定日 2019-09-05 
事件の表示 特願2014- 18008号「球研磨装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日出願公開、特開2015-144664号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年1月31日の出願であって、平成29年10月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月1日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月16日付け(送達日:同年11月27日)で、同年7月4日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成31年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年2月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
遊技球を搬送する搬送部と、その搬送部により搬送される遊技球と対向し、着脱可能に取り付けられる研磨カセットとを有する遊技球研磨装置において、
前記研磨カセットは、研磨材を収容する収容部と、駆動手段により前記研磨材を長手方向に移動させる研磨材送り手段とを備え、
前記収容部に収容される前記研磨材は、所定長さの帯状の織布の両端部を斜めに形成し、その両端部を接合して無端帯状に形成された研磨布であり、
前記研磨材送り手段は、回転軸により回転自在に支持された一対のギヤローラの間に前記研磨布が通過するように、一方のギヤローラに回転駆動力が与えられるものであり、
前記一対のギヤローラの間に前記研磨布の接合部が斜めに進入するようにした
ことを特徴とする遊技球研磨装置。」
から、

「【請求項1】
A 遊技球を搬送する搬送部と、その搬送部により搬送される遊技球と対向し、着脱可能に取り付けられる研磨カセットとを有する遊技球研磨装置において、
B 前記研磨カセットは、研磨材を収容する収容部と、駆動手段により前記研磨材を長手方向に移動させる研磨材送り手段とを備え、
C 前記収容部に収容される前記研磨材は、所定長さの帯状の織布の両端部を斜めに形成し、その両端部を接合して無端帯状に形成された研磨布であり、
D 前記研磨材送り手段は、回転軸により回転自在に支持された一対のギヤローラの間に前記研磨布が通過するように、一方のギヤローラに回転駆動力が与えられるものであり、
E 前記一対のギヤローラの間に前記研磨布の接合部が斜めに進入するようにし、
F 前記一対のギヤローラは、ギヤ部と、そのギヤ部の軸方向両外側にギヤ無し部とを有し、
G 前記ギヤ部の軸方向の長さは前記研磨布の幅よりも短く、
H 前記ギヤ無し部は長手方向に移動される前記研磨布の幅方向両端部に位置的に対応する、
I ことを特徴とする遊技球研磨装置。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Iに分説した。)。

2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「一対のギヤローラ」に関して、「一対のギヤローラは、ギヤ部と、そのギヤ部の軸方向両外側にギヤ無し部とを有し、前記ギヤ部の軸方向の長さは前記研磨布の幅よりも短く、前記ギヤ無し部は長手方向に移動される前記研磨布の幅方向両端部に位置的に対応する」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における段落【0138】?【0141】、図36等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2013-220161号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の遊技機では、遊技媒体の案内路が、蛇行して形成されることによって、研磨材と遊技媒体の接触面積を大きくし、且つ、帯状の研磨材の全面をむらなく利用している。しかし、複数の遊技媒体が蛇行した案内路に沿って研磨材の巻取方向に対して傾いて移動すると、研磨材が巻取り方向に垂直な方向に力を受けて、配置がずれてしまう虞がある。
【0006】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、帯状の研磨体を有効に利用して遊技媒体を研磨するとともに研磨体の配置がずれるのを抑制できる遊技機を提供することを目的とする。」

(1-b)「【0053】
図3、図4は、この実施の形態における研磨機構40をパチンコ遊技機1の裏面側、正面側から示す斜視図であり、図5、図6は、研磨機構40を一部分解して示す斜視図である。研磨機構40は、遊技機用枠3に取り付けられて支持されるベース42と、ベース42に支持されて遊技球の移送経路の一部を構成する通路部材50と、遊技球を移送する移送部52と、通路部材50に対向して配設されて研磨布Aが掛け渡される研磨カセット60と、研磨布Aを巻き取る巻取部65と、巻取部65に研磨布Aが巻き付くのを防止するカバー部材70、73と、巻取部65を駆動する巻取駆動部77と、を有する。また、研磨機構40の裏面には、電源基板10や主基板11などとの配線を接続するための複数の端子40aが設けられている。なお、研磨布Aは、この実施の形態では、両端が接続された帯状且つ環状のものが用いられ、巻取部65によって左から右に巻き取られて更新される。以下、研磨布Aが巻き取られる方向(左右方向)を「巻取方向」ともいう。
・・・
【0056】
ベース面42aの正面側には、通路部材50が取り付けられ、ベース面42aと通路部材50とで研磨機構40における遊技球の移送経路が構成される。研磨機構40における遊技球の移送経路は、図7や図8に示すように、正面側から見て、遊技球が上方向から進入して略鉛直方向に進んだ(落下した)後に、研磨布Aと当接する研磨領域を通って左方向に向かうよう構成されており、周囲壁43の上側壁と左側壁とには遊技球が通過する通過孔43bが形成されている。ベース面42aには、研磨領域を通過する移送経路(以下、「研磨通路」という)の部分に、後述する移送部52のスクリュー部材53が配置されるガイド溝42bが形成されている。このガイド溝42bは、右下から左上に向かって、つまり、研磨布Aの巻取方向に対して傾けて形成されている。また、ベース面42aの右側には、移送部52の複数のギヤ55A?55Cが配置される位置に孔42cが形成されるとともに、移送部52の複数のギヤ55A?55Cやスクリュー部材53を軸支する板状の軸支部44が設けられれている。
・・・
【0061】
移送部52は、研磨通路に配設されるスクリュー部材53と、駆動源54と、複数のギヤ55A?55Cとを有する。スクリュー部材53は、ベース42のガイド溝42bに配置されて裏面側から通路部材50に覆われ、研磨通路内で回転可能に軸支される。スクリュー部材53には、図8から図10などに示すように、螺旋状の凹凸53aが形成されている。スクリュー部材53の螺旋状の凹凸53aは、遊技球に当接する部分が上下方向に近づくように、つまり研磨布Aの巻き取り方向に対して垂直な向きに近づくように、螺旋の向きが定められている。また、スクリュー部材53の螺旋状の凹凸53aは、凹凸53aのピッチ(螺旋ピッチ)Psと通路部材50の研磨通路での蛇行のピッチ(蛇行ピッチ)Pgとが異なるように形成されている。一例として、この実施の形態では、スクリュー部材53の螺旋ピッチPsは、凸部同士の間に1つの遊技球が位置するように定められ、通路部材50の蛇行ピッチPgは、スクリュー部材53の螺旋ピッチPsよりもやや大きく定められている(Pg>Ps)。ただし、こうした例に限定されるものではなく、例えば通路部材50の蛇行ピッチPgよりも、スクリュー部材53の螺旋ピッチPsの方が大きくてもよい。
・・・
【0063】
研磨カセット60は、ベース42の通路部材50に対向する位置に着脱可能に取り付けられる。一例として、この実施の形態では、遊技機用枠3から遊技盤2を外すことによって、ベース42に対して研磨カセット60を前方から取り付け及び取り外しできるように構成されている。研磨カセット60は、左右方向に長い直方体箱状に形成されており、裏面(後側)に研磨布Aが掛け渡される。研磨カセット60の裏面の上下方向の両縁には、後方に突出するガイド縁60bが形成されており、研磨布Aは、このガイド縁60bによって、幅方向の両端がガイドされる。研磨カセット60には、裏面右側の角に研磨布Aが巻き取られる巻取口61が形成されているとともに、左側の壁面に研磨布Aが送り出される送出口62が形成されている。研磨カセット60は、巻取部65によって巻取口61から巻き取られた研磨布Aを内部に折り重ねて収容する(図13参照)。
【0064】
図11は、研磨カセット60や巻取部65を分解して示す分解図であり、図12は、研磨カセット60を一部分解して上方から見た図である。研磨カセット60は、図11及び図12に示すように、上側部材(第1部材)60Aと下側部材(第2部材)60Bとが組み合わされて構成されている。なお、図11及び図12では、上側部材60Aと下側部材60Bの裏側に隠れている形状を破線で示している。上側部材60Aと下側部材60Bとは、巻取口61や送出口62の長手方向(研磨布の幅方向)を分割し、それぞれの接合面の四隅に形成された取付孔60cを介してビスなどによって互いに組み付けられる。このように巻取口61や送出口62の長手方向を分割する2部材が組み合わされて研磨カセット60が構成されることによって、巻取口61と送出口62の短手方向の長さには上側部材60Aと下側部材60Bとの接合誤差の影響が無く、巻取口61と送出口62との短手方向の長さにばらつきが生じるのを抑制して研磨カセット60の製造を容易にすることができる。
・・・
【0067】
また、研磨カセット60の上側面および下側面のそれぞれには、ベース42との取り付けのための突起60aが形成されている。さらに、下側面の突起60aより後側(ベース42側)には、研磨カセット60がベース42に取り付けられたときに、ベース42のスイッチ42d(図7参照)を押す当接板60dが設けられている。さらに、研磨カセット60の上側面および下側面のそれぞれには、巻取部65を軸支する軸支孔64a、64bや、カバー部材73を軸支する軸支孔64cが形成されており、研磨カセット60の上側面には、カバー部材73の取付け置を調整するための調整孔64dが形成されている。この実施の形態では、巻取部65を取り付けるための軸支孔64a、64bのうち、正面側(巻取口61から遠い側)の軸支孔64bは、巻取部65のローラ66Bが移動可能なように、ローラ66Bの回転軸67Bよりもやや大きい寸法で形成されている。また、研磨カセット60の上側部材60A及び下側部材60Bには、カバー部材70を位置決めするための位置決め凸部60eが裏面内側に形成されており、上側部材60Aには、カバー部材73の回動を規制する規制部60fが前面内側に形成されている。
【0068】
巻取部65は、研磨カセット60の上側部材60A及び下側部材60Bに軸支された2つのローラ66A、66Bを有し、研磨カセット60の裏面に掛け渡された研磨布Aを巻き取って更新する。図13は、2つのローラ66A、66Bとカバー部材70、73とを拡大して示す図であり、図14は、2つのローラ66A、66Bのうち前側のローラ66Bを分解して示す図である。この実施の形態では、2つのローラ66A、66Bのそれぞれは、回転軸67A、67Bに複数(例えば、6つなど)の歯車部材68が取り付けられて構成されている。複数の歯車部材68のそれぞれは、外周面に歯車状の凹凸が形成されており、軸方向に互いに間隔をあけて位置するよう回転軸67A、67Bに取り付けられている。
【0069】
2つのローラ66A、66Bの複数の歯車部材68は、この実施の形態では、それぞれ同一の形状に形成されている。2つのローラ66A、66Bを構成する回転軸67A、67Bには、図14に示すように、均等な間隔で孔67aが形成されており、この孔67aに歯車部材68を止める止軸69が挿通される。歯車部材68の軸方向端面には、止軸69が嵌る溝68aが形成されており、回転軸67A、67Bに挿通された止軸69と歯車部材68の溝68aが係合することによって、複数の歯車部材68が回転軸67A、67Bに取り付けられる。ここで、複数の歯車部材68は、研磨通路が研磨布Aの巻取方向に対して傾いている方向側(上側)に溝68aが形成されている。こうした構成よって、複数の歯車部材68は、外周面の凹凸が同位相になるように回転軸67A、67Bに取り付けられて、回転軸67A、67Bの回転に伴って一体に回転する。なお、ローラ66A、66Bは、回転軸67A、67Bに止軸69が取り付けられて複数の歯車部材68が取り付けられるものに限定されず、回転軸67A、67Bと歯車部材68とが一体に形成されていてもよい。また、2つのローラ66A、66Bのそれぞれは、6つの歯車部材68が間隔をあけて取り付けられるものに限定されず、2つから5つ、又は7つ以上の歯部材が互いに間隔をあけて取り付けられてもよいし、1つの歯車部材が取り付けられて構成されてもよい。また、2つのローラ66A、66Bで異なる数の歯車部材68が取り付けられてもよい。さらに、複数の歯車部材68は、互いに所定位相ずつずらして回転軸67A、67Bに取り付けられてもよい。また、2つのローラ66A、66Bのうち少なくとも一方が、例えば円柱状など歯車状でない形状に形成されていてもよい。
【0070】
巻取部65の2つのローラ66A、66Bは、回転軸67A、67Bのそれぞれが上側部材64A、下側部材64Bの軸支孔64a、64bに挿通して、研磨カセット60に軸支される。このとき、2つのローラ66A、66Bの回転軸67A、67Bは互いに平行に配置される。2つのローラ66A、66Bのうち、後側(巻取口61側)のローラ66Aは、回転軸67Aが研磨カセット60から突出して、研磨カセット60の外部にて回転ギヤ79Cが取り付けられる。また、前側のローラ66Bの回転軸67Bが挿通される軸支孔64bは、回転軸67Bよりもやや大きい寸法に形成されており、ローラ66Bは、軸支孔64b内で若干移動することができる。
・・・
【0075】
巻取駆動部77は、図7などに示すように、駆動源78と、複数のギヤ79A、79Bとを有し、巻取部65を駆動する。この実施の形態では、巻取駆動部77の駆動源78は、ベース42の裏面側に取り付けられており、巻取部65の2つのローラ66A、66Bのうち、裏面側(巻取口61側)のローラ66Aを回転させる動力を出力する。駆動源78は、例えばステッピングモータなどのモータを用いることができ、主基板11によって制御される。巻取駆動部77は、複数のギヤ79A、79Bとして、駆動源78の出力軸に取付けられた出力ギヤ79Aと、ベース42に軸支された伝達ギヤ79Bとを有する。この実施の形態では、巻取駆動部77の駆動源78は、ベース42のベース面42aに対して垂直となるように出力軸が配設されており、出力ギヤ79Aは、ねじ歯車(ウォーム)で構成され、伝達ギヤ79Bは、出力ギヤ79Aと噛み合うはすば歯車(ウォームホイール)と、巻取部65の回転ギヤ79Cと噛み合う平歯車とが一体に回転する2段の歯車で構成されている。巻取駆動部77では、駆動源78から動力が出力されると、出力ギヤ75Aから伝達ギヤ79Bを介して巻取部65の回転ギヤ79Cに動力が伝達され、回転ギヤ79Cの回転に伴って巻取部65のローラ66Aが回転するとともに、ローラ66Aと研磨布Aを介して噛み合うローラ66Bが回転する。なお、巻取駆動部77は、巻取部65が複数のギヤ79A?79Bを介して駆動源78に接続されるものに限定されず、例えば駆動源78と巻取部65が直接に、またはベルトなどを介して接続されるように構成されてもよい。」

(1-c)「



(1-d)段落【0053】には「研磨布Aは、この実施の形態では、両端が接続された帯状且つ環状のものが用いられ、巻取部65によって左から右に巻き取られて更新される。以下、研磨布Aが巻き取られる方向(左右方向)を「巻取方向」ともいう。」と記載されており、また、図12に開示される研磨カセット60内における研磨布Aおよび巻取部65の配置状態と左右方向の定義を参酌すれば、引用例1には、研磨布Aを「長手方向」に移動させる点が記載されているといえる。

(1-e)段落【0075】には、「回転ギヤ79Cの回転に伴って巻取部65のローラ66Aが回転するとともに、ローラ66Aと研磨布Aを介して噛み合うローラ66Bが回転する。」と記載されており、また、図12に開示されるローラ66A、ローラ66B、研磨布Aの配置状態を参酌すれば、引用例1には、2つのローラ66A、66Bの間に研磨布Aが通過するように、ローラ66Aが回転する点が記載されているといえる。

(1-f)段落【0070】には、「巻取部65の2つのローラ66A、66Bは、回転軸67A、67Bのそれぞれが上側部材64A、下側部材64Bの軸支孔64a、64bに挿通して、研磨カセット60に軸支される。」と記載され、また、図13に開示されているとおり、研磨布Aを移動させるギヤ部68の軸方向両外側から回転軸67A、67Bの端部が突出しているといえる。

上記(1-a)?(1-c)の記載事項及び(1-d)?(1-f)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 遊技球の移送経路が構成されるベース面42a及び通路部材50と、遊技球の移送経路に配設されるスクリュー部材53、駆動源54及び複数のギヤ55A?55Cとを有する移送部52と、遊技球の移送経路の一部を構成する通路部材50に対向して配設され、着脱可能に取り付けられる研磨カセット60とを有する研磨機構40において、(段落【0053】、【0056】、【0061】、【0063】)、

b 上側部材60Aと下側部材60Bとが組み合わされて構成される研磨カセット60の内部に研磨布Aが収容され、巻取駆動部77により駆動する巻取部65によって、研磨布Aは長手方向に移動され、(段落【0053】、【0064】、図12、認定事項(1-d))

c 上側部材60Aと下側部材60Bとが組み合わされて構成される研磨カセット60の内部に収容される研磨布Aは、両端が接続された帯状且つ環状のものが用いられ(段落【0053】、【0064】)、

d 巻取部65を駆動する巻取駆動部77は、回転軸67A、67Bによって軸支される2つのローラ66A、66Bの間に研磨布Aが通過するように、ローラ66Aを回転させ(段落【0068】、【0069】、【0075】、図12、認定事項(1-e))、

f 2つのローラ66A、66Bのそれぞれは、回転軸67A、67Bに複数の歯車部材68が取り付けられて構成され、歯車部材68の軸方向両外側から回転軸67A、67Bの端部が突出する(段落【0068】、【0070】、図11、13、認定事項(1-f))、

i 研磨機構40(段落【0053】)。」


(2)引用例2
同じく本願の出願前に頒布された実願昭54-91468号(実開昭56-11067号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(2-a)「(考案の目的)
本考案は研摩布紙ベルトに関するもので、その目的とするところは裏打ち材を改良して接合部の強度の向上と寿命の向上を図り、更に接合部の厚さを薄くすることにより高精度の加工を可能にした研摩付紙ベルトを提供することにある。(第1頁第13行-第2頁第2行)」

(2-b)「(従来技術)
従来研摩布紙を裏打ち材により無端ベルト状に接合した研摩布紙ベルトにおいては、裏打ち材に天然繊維、又は合成繊維を素材とする織布及びこの織布に樹脂加工、熱加工等を施したもの或いは合成樹脂フィルムが用いられていた。しかし、これらの裏打ち材の強度が低く、今日のように研摩布紙ベルトにより重研削を行う場合の研摩布紙ベルトの裏打ち材としては強度が不十分であった。この強度を向上させるために裏打ち材を厚くする等の対策が取られたが、接合部の厚さが極端に増加し、接合部とその他の部分のベルトの厚みの差が大きくなる欠点があった。
接合部とその他の部分の厚さの差が大きくなると研摩布紙ベルトの走行にむらを生じたり、接合部の柔軟性が失われて被加工物に対し均一に接触せず、精度の高い加工ができなくなる欠点があった。又、合成樹脂フィルムからなる裏打ち材では一般に引き裂き強さが小さく、特に引っ掻き疵による強度低下が著るしいため到底重研削に耐えられなかった。(第2頁第3行-第3頁第7行)」

(2-c)「(考案の構成)
本考案は上述の欠点を解消するため、両端を斜めに切断した研摩布紙を無端ベルト状に接合する研摩布紙ベルトにおいて、合成樹脂フィルムの表面に所要の繊維からなる補強糸を一方向に多数貼り付けた裏打ち材を作り、この裏打ち材を研摩布紙両端の接合部裏面に貼り付けて研摩布紙を無端ベルト状に接合したもので、以下実施例について説明する。
第1図において両端1a,1bを接合角度αが5°?85°の所要角度となるように斜めに切断した研摩布紙1をその両端1a,1bで無端ベルト状に接合する(第3頁第8行-第4頁第4行)
・・・
次に両端1a,1bを斜めに所要の接合角度αに切断した研摩布紙1を突き合わせ、又は重ね合わせてこの研摩布紙1の裏面に前記裏打ち材5を接合角度αと一致させて斜めに接着剤で貼り付け、無端ベルト状の研摩布紙ベルト2を得る。(第5頁第10行-第5頁第14行)」

(2-d)「



上記(2-a)?(2-d)の記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。

「研摩布紙の両端1a、1bを斜めに切断し、その両端を突き合わせて接合した無端ベルト状の研摩布紙ベルト2(第3頁第8行-第4頁第4行、第5頁第10行-第5頁第14行、第1図)。」


(3)引用例3
同じく本願の出願前に頒布された特開2013-212367号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(3-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の球研磨装置は、遊技機の遊技盤面に発射された球を回収する球循環経路に、一対の棒状の球通路形成部材を球の径よりも小さい間隔を持って平行に架設し、球通路形成部材により形成された球通路の長手方向と平行な軸を有するスクリューコンベアをその頭部が球通路に臨むように設けるとともに、そのスクリューコンベアを所定方向に回転駆動するモータを設け、球通路の上側の取付板に球通路に対面するように固着された研磨材と、その研磨材を球通路側に付勢する弾性部材とからなる研磨手段を備えて、球通路の一端の球入口から進入した球がスクリューコンベアにより球通路を移送され、球通路の他端の球出口から出るまでの間に球が研磨手段により研磨されるように構成されたものである。
【0006】
したがって、研磨材は取付板に固着され、その取付板は遊技機本体にビスなどの固着手段により固定されている。このような構成であるから、研磨材の有効期間が短く、遊技ホール営業中は研磨材の汚れ具合を確認することができないので研磨手段交換の適時を徒過する虞があるばかりでなく、研磨手段の交換に多くの手間とコストがかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、この点に鑑みてなされたものであり、解決しようとする課題は、研磨材の有効期間の延長が可能であるとともに、研磨手段の交換も容易にできる球研磨装置を提供することにある。」

(3-b)「【0073】
また、好ましい実施の形態における研磨材ガイド2010A、2101Bは、基本形状は図20に示されたものと同一であるが、各研磨材ガイド2010A、2101Bのギアローラ208、209の外周面の一部に近接する円弧壁2012a、2012bのギアローラ208、209と対向する面に、ギアローラ208、209の各スリット208b、209bに嵌合して、各ギアローラ208、209と円弧壁2012a、2012bの先端との間の隙間2011a、2011bをギアローラ208、209の軸方向の複数個所において塞ぐ隙間塞ぎ部材2013a、2013b、例えば、ギアローラ208、209の軸208c、209cを嵌合させる円弧状の切欠2014a、1014bを有する邪魔片1015a、1015bを円弧壁2012a、2012bの凹面に突設してある。
・・・
【0076】
(4)研磨材カセットの研磨材入口における研磨材のダメージ軽減
ギアローラ208、209の長さがこれにより挟持されて研磨材カセット201の研磨材収容空間202内に引き込まれる研磨材203の幅(高さ寸法)よりも長い場合は、研磨材送り時にギアローラ208、209に挟み込まれた研磨材203の両端部分のダメージが大きく、ホツレが発生する虞がある。これを防止するため、好ましい実施の形態においては、図21(c)に示すように、ギアローラ208、209の長さを研磨材203の幅よりも若干短くして、研磨材203の両端部分がギアローラ208、209に挟み込まれないようにしてある。したがって、研磨材203の寿命が延びる。」

(3-c)「



上記(3-a)?(3-c)の記載事項を総合すると、引用例3には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例3記載の事項」という。)。

「軸208c、209cを備えるギアローラ208、209の長さを、研磨材203の幅よりも若干短くした、球研磨装置。(段落【0007】、【0073】、【0076】、図21)」


(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の見出しの(a)?(i)は、引用発明の構成に対応している。)。
(a)引用発明の構成aにおける「通路部材50」及び「移送部52」は、本願補正発明の構成Aの「搬送部」に相当する。
また、引用発明の構成aにおいて、「遊技球の移送経路の一部を構成する通路部材50」と「研磨カセット60」が対向するということは、移送される遊技球と研磨カセット60が対向すると認められるから、引用発明の構成aの「通路部材50に対向して配設され」る「研磨カセット60」は、本願補正発明の構成Aの「遊技球と対向」する「研磨カセット」に相当する。
さらに、引用発明の構成aにおける「研磨機構40」は、本願補正発明の構成Aの「遊技球研磨装置」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願補正発明の構成Aに相当する。

(b)引用発明の「研磨カセット60」は、本願補正発明の「研磨カセット」に相当することは、上記(a)で検討したとおりである。
また、引用発明の構成bにおける「上側部材60Aと下側部材60B」、「研磨布A」、「巻取駆動部77」、「巻取部65」は、それぞれ、本願補正発明の構成Bの「収容部」、「研磨材」、「駆動手段」、「研磨材送り手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願補正発明の構成Bに相当する。

(c)引用発明の「上側部材60Aと下側部材60B」、「研磨カセット60」、「研磨布A」は、本願補正発明の「収容部」、「研磨カセット」、「研磨材」に相当することは、上記(a)、(b)で検討したとおりである。
また、引用発明の構成cにおける「研磨布A」は、布を素材とすることは自明であるから、引用発明の構成cにおける「両端が接続された帯状且つ環状のもの」である「研磨布A」は、本願補正発明の構成Cの「所定長さの帯状の」「布の」「両端部を接合して無端帯状に形成された研磨布」に相当する。
してみると、引用発明の構成cは、本願補正発明の構成Cと、「収容部に収容される研磨材は、所定長さの帯状の布の両端部を接合して無端帯状に形成された研磨布であ」る点で共通する。

(d)引用発明の「巻取部65」は、本願補正発明の「研磨材送り手段」に相当することは、上記(b)で検討したとおりである。
また、引用発明の構成dの「回転軸67A、67B」、「2つのローラ66A、66B」、「研磨布A」、「ローラ66A」は、それぞれ、本願補正発明の構成Dの「回転軸」、「一対のギヤローラ」、「研磨布」、「一方のギヤローラ」に相当する。
してみると、引用発明の構成dは、本願補正発明の構成Dに相当する。

(f)引用発明の「2つのローラ66A、66B」は、本願補正発明の「一対のギヤローラ」に相当することは、上記(d)で検討したとおりである。
また、引用発明の構成fの「歯車部材68」、「歯車部材68の軸方向両外側から」「突出する」「回転軸67A、67Bの端部」は、それぞれ、本願補正発明の構成Fの「ギヤ部」、「ギヤ無し部」に相当する。
してみると、引用発明の構成fは、本願補正発明の構成Fに相当する。

(i)引用発明の「研磨機構40」は、本願補正発明の「遊技球研磨装置」に相当することは、上記(a)で検討したとおりである。
してみると、引用発明の構成iは、本願補正発明の構成Iに相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技球を搬送する搬送部と、その搬送部により搬送される遊技球と対向し、着脱可能に取り付けられる研磨カセットとを有する遊技球研磨装置において、
B 前記研磨カセットは、研磨材を収容する収容部と、駆動手段により前記研磨材を長手方向に移動させる研磨材送り手段とを備え、
C’ 前記収容部に収容される前記研磨材は、所定長さの帯状の布の両端部を接合して無端帯状に形成された研磨布であり、
D 前記研磨材送り手段は、回転軸により回転自在に支持された一対のギヤローラの間に前記研磨布が通過するように、一方のギヤローラに回転駆動力が与えられるものであり、
F 前記一対のギヤローラは、ギヤ部と、そのギヤ部の軸方向両外側にギヤ無し部とを有する、
I ことを特徴とする遊技球研磨装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
研磨布について、本願補正発明は「織布」からなるのに対し、引用発明は、織布からなるか否かが不明な点(構成C)。

[相違点2]
本願補正発明は研磨布の両端部を「斜めに形成し」て接合し、一対のギヤローラの間に研磨布の接合部が「斜めに進入する」のに対し、引用発明は、研磨布の両端部を斜めに形成するか否かが不明であるため、一対のギヤローラの間に研磨布の接合部が斜めに進入するか否かが不明な点(構成C、E)。

[相違点3]
本願補正発明は、ギヤ部の軸方向の長さは「研磨布の幅よりも短」く、ギヤ無し部は「研磨布の幅方向両端部に位置的に対応する」のに対し、引用発明は、ギヤ部の軸方向の長さと研磨布の幅との関係が不明であり、ギヤ無し部が研磨布の幅方向両端部に位置的に対応するか否かが不明な点(構成G、H)。

(5)判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
遊技機の遊技媒体を研磨する研磨布に織布を用いることは、周知の技術である。(例えば、原査定において引用文献2として引用した特開2003-210815号公報の段落【0028】の、研磨布13を帯状織物により構成する点、原査定において引用文献3として引用した特開2001-190822号公報の段落【0060】-【0063】の、研磨布63を超極細繊維糸の織布とする点、原査定において引用文献4として引用した特開2004-143651号公報の段落【0022】、【0024】、【0027】の、研磨布帛が織物などを張り合わせ積層により形成される点を参照のこと。)
そして、引用発明と上記周知の技術とは、遊技媒体を研磨する研磨布を備える点で共通するものである。
してみると、上記周知の技術を勘案すれば、引用発明の研磨布として織布を用いて、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記[相違点2]について検討する。
引用例2記載の事項は、上記「第2 3(2)」に示した次のとおりのものである。
「研摩布紙の両端1a、1bを斜めに切断し、その両端を突き合わせて接合した無端ベルト状の研摩布紙ベルト2。」

上記引用例2記載の事項の「研摩布紙」、「両端1a、1b」、「無端ベルト状の研磨布紙ベルト2」は、それぞれ、本願補正発明の「研磨布」、「両端部」、「無端帯状に形成された研磨布」に対応する。
したがって、引用例2記載の事項は、上記相違点2に係る本願補正発明の構成のうち、研磨布の両端部を「斜めに形成し」て接合する構成を含むものであり、引用発明に当該構成を備えることで、一対のギヤローラの間に研磨布の接合部が斜めに進入することになることは自明である。
そして、引用発明と引用例2記載の事項とは、研磨布の両端部を接合して無端帯状とする点で共通する。
してみると、引用発明において研磨布の両端部を無端帯状に接合するにあたり、引用例2記載の事項を適用して、研磨布の両端部を斜めに形成して接合し、一対のギヤローラの間に研磨布の接合部が斜めに進入するという上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記[相違点3]について検討する。
引用例3記載の事項は、上記「第2 3(3)」に示した次のとおりのものである。
「軸208c、209cを備えるギアローラ208、209の長さを、研磨材203の幅よりも若干短くした、球研磨装置。」

上記引用例3記載の事項の「ギアローラ208、209」、「研磨材203」は、それぞれ、本願補正発明の「ギヤ部」、「研磨布」に対応する。
したがって、引用例3記載の事項は、上記相違点3に係る本願補正発明の構成のうち、「ギヤ部の軸方向の長さは研磨布の幅よりも短」いという構成を含むものであり、引用発明に当該構成を備えることで、ギヤ部の軸方向両外側から突出しているギヤ無し部は、研磨布の幅方向両端部に位置的に対応することは自明である。
そして、引用発明と引用例3記載の事項とは、一対のギヤローラの間に研磨布を通過させることで研磨布を移動させる遊技球研磨装置の点で共通する。
してみると、引用発明のギヤローラに引用例3記載の事項を適用して、ギヤ部の軸方向の長さが研磨布の幅よりも短く、ギヤ無し部が研磨布の幅方向両端部に位置的に対応するという上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2、3記載の事項及び上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 請求人の主張について
請求人は、「本願発明の「一対のギヤローラは、ギヤ部と、そのギヤ部の軸方向両外側にギヤ無し部とを有し、前記ギヤ部の軸方向の長さは前記研磨布の幅よりも短く、前記ギヤ無し部は長手方向に移動される前記研磨布の幅方向両端部に位置的に対応する」技術的特徴は、いずれの引用文献にも記載も示唆もされておらず、
上記構成によれば、本願明細書の段落0143に記載されているように、ギヤ無し部が存在しない状態では、研磨布の両端側の端部側を支持する部材が存在していないので、長期間の間に、研磨布の端部と、それ以外の部分とで伸縮量に差が生じる懸念があり、また、端部がホツレたり変形する懸念があるが、ギヤ部の両端側にギヤ無し部が存在する構成とすることで、研磨布の端部がギヤ無し部に接触することにより、上記のような伸縮量に差が生じるのを低減可能となり、端部がホツレたり変形することを防止することができるという格別の効果が奏されます。」と主張する(審判請求書「3.2 本願発明と引用文献に記載の発明との対比」)。
しかしながら、本件補正後の請求項1において、「ギヤ無し部」に関しては「一対のギヤローラは、ギヤ部と、そのギヤ部の軸方向両外側にギヤ無し部とを有し」と記載されているにとどまるものであるから、ギヤ部の軸方向両外側に位置する回転軸などの構成要素も含み、研磨布の端部がギヤ無し部に接触することを限定するものではないと解釈されるから、研磨布の端部がギヤ無し部に接触することに基づく上記請求人の主張は、採用できない。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明、引用例2、3記載の事項、及び周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-3に係る発明は、平成29年12月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
遊技球を搬送する搬送部と、その搬送部により搬送される遊技球と対向し、着脱可能に取り付けられる研磨カセットとを有する遊技球研磨装置において、
前記研磨カセットは、研磨材を収容する収容部と、駆動手段により前記研磨材を長手方向に移動させる研磨材送り手段とを備え、
前記収容部に収容される前記研磨材は、所定長さの帯状の織布の両端部を斜めに形成し、その両端部を接合して無端帯状に形成された研磨布であり、
前記研磨材送り手段は、回転軸により回転自在に支持された一対のギヤローラの間に前記研磨布が通過するように、一方のギヤローラに回転駆動力が与えられるものであり、
前記一対のギヤローラの間に前記研磨布の接合部が斜めに進入するようにした
ことを特徴とする遊技球研磨装置。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-220161号公報
引用文献2:特開2003-210815号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2001-190822号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2004-143651号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:実願昭54-91468号(実開昭56-11067号)のマイクロフィルム

3 引用例
引用文献1(上記引用例1)及びその記載事項、引用文献5(上記引用例2)及びその記載事項、及び引用発明は、上記「第2 3(1)、(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「一対のギヤローラ」に関して、「一対のギヤローラは、ギヤ部と、そのギヤ部の軸方向両外側にギヤ無し部とを有し、前記ギヤ部の軸方向の長さは前記研磨布の幅よりも短く、前記ギヤ無し部は長手方向に移動される前記研磨布の幅方向両端部に位置的に対応する」との限定事項を削除するものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、相違点は、上記「第2 3(4)」で検討した相違点1、2と同様のものとなるから、上記「第2 3(5)」で検討したとおり、引用発明、引用例2記載の事項、及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-04 
結審通知日 2019-07-09 
審決日 2019-07-24 
出願番号 特願2014-18008(P2014-18008)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 剛史  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 蔵野 いづみ
大谷 純
発明の名称 球研磨装置  
代理人 アイアット国際特許業務法人  

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