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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23C
管理番号 1354900
審判番号 不服2017-15877  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2019-09-04 
事件の表示 特願2014-520343号「摂食可能品のための方法および組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年1月17日国際公開、WO2013/010037、平成26年8月25日国内公表、特表2014-520553号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年7月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年7月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月10日に国内書面が提出され、平成26年3月10日に国際出願翻訳文提出書により明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成27年7月13日に手続補正書が提出され、平成28年5月17日に手続補正書が提出され、平成28年6月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年6月21日付けで拒絶査定がされ、その後、平成29年10月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成29年12月14日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、平成30年8月31日に拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年3月4日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし34に係る発明は、明細書の翻訳文及び平成31年3月4日の手続補正により補正された特許請求の範囲並びに図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載されたとおりのものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項9】
不溶性固体の少なくとも85%が除去された非酪農ミルクと、架橋酵素とを含む組成物であって、該非酪農ミルクが、アーモンド、カシュー、ブラジルナッツ(brazilnut)、クリ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ペカン、ピスタチオおよびクルミからなる群から選ばれるもののミルクである、前記組成物。」

第3 当審拒絶理由
当審が平成30年8月31日付けで通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。

[理由1]
本件出願の請求項1ないし34に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献一覧>
1.特表2009-516522号公報
2.特表平11-508448号公報
3.特開2004-242614号公報

第4 当審の判断
1 引用文献1
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、「調整物のテクスチュアを変更する方法」に関して以下の記載がある。(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下、同様。)

(1)引用文献1の記載
1a)「【請求項1】
酵素が酸性化中に活性であるような環境下で、トランスグルタミナーゼ酵素、酵素活性化化合物および酸性化剤をタンパク質源に添加すること、酸性化すること、そして得られた調製物を回収することを特徴とする乳酸発酵された生鮮乳製品を製造する方法。」

1b)「【0012】
本発明の詳細な説明
驚くべきことに、トランスグルタミナーゼ酵素、酵素活性化化合物および酸性化剤を、該酵素が酸性化剤の添加の際におよび/または酸性化中に活性であるような環境下においてタンパク質源に添加することにより、前記した原料ミルクの前処理方法を使用するよりも、有意により効率的にサワーミルク調製物、例えば乳酸発酵された生鮮乳製品のテクスチュアを変更できることを本願において発見した。酸性化中に架橋がおこる本発明の方法は、トランスグルタミナーゼ酵素のみを酸性化中に使用した方法と比較して約20%以上も有効である。本発明の方法は、サワーミルク調製物、特に従来法において製造されたサワーミルク調製物と同様のテクスチュアを保持するが有意に低いタンパク質含量を持つ乳酸発酵または発酵した生鮮乳製品の製造を可能にする。これにより、従来のタンパク質レベルのサワーミルク調製物の製造よりも、より低い原料のコストレベルで、サワーミルク調製物、特に乳酸発酵または発酵した生鮮乳製品の製造が可能となる。発酵またはより一般的には乳酸発酵された生鮮乳製品は、ヨーグルト、ビーリ、発酵ミルク、クヴァーク(Quark)(低脂肪カードチーズの一種)、フレッシュチーズ、クリームチーズおよびサワークリーム製品、例えばクリームフレシェ(creme fraieche)およびスメタナ等を包含する。」

1c)「【0016】
用語「酸性化剤」とは、微生物のスターターまたは培養物、化学酸性化剤またはその混合物を指す。」

1d)「【0019】
発明の方法において、原料ミルクそれ自体または所望の様式において前処理された原料ミルクは、通常タンパク質源の構成要素である。原料ミルクのタンパク質含量を低下させることは、前処理の例として説明され得る。タンパク質レベルは、酸性化剤の添加と同時に低下され得る。ミルク濾液、ホエイ、ラクトース画分、それらの濃縮物、またはミルク濾液、ホエイ、ラクトース画分によって構成される混合物および/またはその濃縮物は、例えばタンパク質レベルを低下するために使用され得る。さらに、食品の使用に適切な、水、コーンスティープ(corn steep)液体、ジュースまたはその他の液体は、タンパク質レベルを低下させるために使用され得る。タンパク質レベルを低下させるために適切な上記液体またはその混合物は、該方法で使用されるタンパク質源に対して20%容量まで添加されても良い。
【0020】
本明細書中では、原料ミルクとは、それ自体または様々な方法で処理された、動物、例えばウシまたはヤギから得られたミルクを指す。ミルクは、例えばミルクから脂肪またはラクトースを除去することにより処理され、脂肪不含、低脂肪、ラクトース不含または低ラクトースミルクとなる。本明細書では、原料ミルクは、ヨーグルト、ビーリおよび発酵ミルクの製造に使用した前処理または未処理ミルクも指し、これは例えば当業者は、ヨーグルト、ビーリおよび発酵ミルクのための原料ミルクを指す。
【0021】
ミルクは、例えばクロマトグラフィー分離および/またはミクロ、ナノまたは限外濾過により、様々な成分の様々な量を含有する画分中に分画され、該分画物は、順にミルク自体またはその様々な混合物のタンパク質含量を調整するために使用され得る。
【0022】
ミルク濾液とは、ミルクの限外濾過において得られ、主にラクトース、灰分およびタンパク質を含有する濾液を指す。ミルク濾液のタンパク質含量は、濾過条件に依存するが、最も一般的には、約0.2?0.4重量%、通常約0.3重量%のタンパク質である。
【0023】
ホエイとは、チーズまたはカードチーズを作る際のカードから分離されるミルクの非沈殿部分の液体を指す。ホエイ中のタンパク質含量は、通常約0.5?0.7重量%、典型的には約0.6重量%である。
【0024】
ラクトース画分とは、クロマトグラフィー分離の結果として得られ、主にラクトースを含有するが、例えばタンパク質も含有する画分を指す。ラクトース画分のタンパク質含量は、分離条件によるが、最も一般的には約0.2?0.4重量%、典型的には約0.3重量%のタンパク質である。
【0025】
さらに、動物のミルクだけでなく、市販購入できる植物、例えばオート麦、ダイズ、コメまたはココナッツミルクを由来とする液体もタンパク質源として使用できる。オート麦、ダイズまたはコメミルクは、穀粒またはマメを破砕して、所望の栄養分を適切な液体、例えば水中などに抽出する処理において工業的に製造され得る、これには油、例えば菜種油等も含まれ得る。
【0026】
発酵された、またはより一般的には乳酸発酵された生鮮乳製品とは、動物および/または植物から生じるミルクを基にした乳酸発酵した生鮮製品を指す。」

1e)上記1a)及び1b)には、タンパク質源に、トランスグルタミナーゼ酵素を、酸性化剤が添加された環境下において添加することにより架橋して、サワーミルク調整物を製造することに関して記載されている。

1f)上記1c)には、酸性化剤とは、微生物のスターターであることが記載されている。

1g)上記1d)の段落【0025】には、タンパク質源としてココナッツミルクが使用できることが記載されている。

(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「タンパク質源としてのココナッツミルクと、トランスグルタミナーゼ酵素とを含むサワーミルク調整物。」

2 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「タンパク質源としてのココナッツミルク」は、その機能、構成及び技術的意義から、本願発明における「非酪農ミルク」に相当し、以下同様に、「トランスグルタミナーゼ酵素」は「架橋酵素」に、「サワーミルク調整物」は「組成物」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「非酪農ミルクと架橋酵素とを含む組成物。」

[相違点]
「非酪農ミルク」に関して、本願発明においては、「アーモンド、カシュー、ブラジルナッツ(brazilnut)、クリ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ペカン、ピスタチオおよびクルミからなる群から選ばれるもののミルク」であって、「不溶性固体の少なくとも85%が除去された」ものであるのに対して、
引用発明においては、「タンパク質源としてのココナッツミルク」であって、不溶性固体の少なくとも85%が除去されたものであるか不明な点。

以下、相違点について検討する。

[相違点について]
引用文献1の段落【0025】には、「さらに、動物のミルクだけでなく、市販購入できる植物、例えばオート麦、ダイズ、コメまたはココナッツミルクを由来とする液体もタンパク質源として使用できる。オート麦、ダイズまたはコメミルクは、穀粒またはマメを破砕して、所望の栄養分を適切な液体、例えば水中などに抽出する処理において工業的に製造され得る、これには油、例えば菜種油等も含まれ得る。」として、タンパク質源である原料ミルクとして動物のミルクの他、植物由来のミルクとして、オート麦、ダイズ、コメのほか、ココナッツミルクが例示されており、植物由来のミルクとしては他にアーモンドミルク等も広く知られている。
そうすると、引用発明における「タンパク質源としてのココナッツミルク」に代えて植物由来のミルクの一つとして広く知られている「アーモンドミルク」を採用することに困難性は認められない。
また、技術常識からすると、植物由来のミルクは、その製造過程で裏ごし、ろ過などにより不溶性固体を除去するものであって、その除去の程度に関して食品の技術分野における、なめらかな食感を得るという一般的な課題のもとで、適正量の不溶性固体を除去する割合を「少なくとも85%」とすることも、生産性や目標とするなめらかさの程度などに応じて当業者が適宜設定し得ることである。
したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明は、引用発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項1ないし8及び10ないし34に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-28 
結審通知日 2019-04-02 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2014-520343(P2014-520343)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 亜希子  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 窪田 治彦
松下 聡
発明の名称 摂食可能品のための方法および組成物  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 小林 浩  
代理人 大森 規雄  
代理人 岩田 耕一  

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