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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 特174条1項  H05K
管理番号 1354924
異議申立番号 異議2018-700121  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-15 
確定日 2019-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6180499号発明「シールドフィルム、シールドプリント配線板及びシールドプリント配線板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6180499号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4ないし6〕、〔2、11ないし13〕、〔3、14ないし16〕、〔7ないし9〕、10について訂正することを認める。 特許第6180499号の請求項2、3、7ないし16に係る特許を維持する。 特許第6180499号の請求項1、4ないし6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6180499号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成24年11月28日に出願した特願2012-259458号の一部を平成26年4月25日に新たな特許出願とした特願2014-091008号の一部を平成27年12月24日に新たな特許出願としたものであって、平成29年7月28日にその特許権の設定登録がされ、同年8月16日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成30年2月15日 :特許異議申立人 大木 健一(以下、「申立人」という。)による請求項1?10に係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年6月25日付け :取消理由通知書
平成30年8月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年10月30日 :申立人による意見書の提出
平成30年12月10日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年2月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年3月18日付け :訂正拒絶理由通知書
平成31年4月24日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和1年7月5日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の請求について
1.訂正請求の趣旨
平成31年2月12日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6180499号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?16について訂正することを求める。」ものである。
なお、平成30年8月27日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

2.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、平成31年4月24日付け手続補正書により補正された以下の(1)ないし(8)のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。なお、上記補正は、請求項1、4ないし6についての訂正事項1、4ないし6の内容を、当該請求項1、4ないし6を削除するように変更するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
また、特許権者は別の訂正単位とすることも求めており、その内容は以下(9)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とする請求項1に記載のシールドフィルム。」とあるのを、
「一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とするシールドフィルム。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.00N/50mm?5.11N/50mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールドフィルム。」とあるのを、
「一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.00N/50mm?5.11N/50mmであることを特徴とするシールドフィルム。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記電磁波シールド層は、導電性接着剤層を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のシールドフィルム。」とあるうち、請求項2を引用するものについて新たに請求項11とし、請求項3を引用するものについて新たに請求項14とする訂正をし、請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記電磁波シールド層は、金属層を更に含み、
前記導電性接着剤層は、異方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項4に記載のシールドフィルム。」とあるうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものについて新たに請求項12とし、請求項3を引用する請求項4を引用するものについて新たに請求項15とする訂正をし、請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項4に記載のシールドフィルム。」とあるうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項13とし、請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項16とする訂正をし、請求項6を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に、
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムを設けたシールドプリント配線板であって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、この離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであることを特徴とするシールドプリント配線板。」とあるのを、
「一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に、
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムを設けたシールドプリント配線板であって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とするシールドプリント配線板」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し、この離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、
前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm?0.6μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。」とあるのを、
「マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであり、
前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm?0.6μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。」に訂正する。

(9)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2及び11?13、並びに請求項3及び14?16については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。

3.訂正の適否
(1)請求項1ないし6及び11ないし16からなる一群の請求項に係る訂正
ア.一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6において、請求項2ないし6は、記載を訂正する請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし6に対応する訂正後の請求項1ないし6、11ないし16は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ.訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ.訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正を行うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
これに加えて、訂正事項2は、離型層の厚みに関する規定を凹部におけるものであることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2の「前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり」については、段落【0036】、図3等に記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するもの、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ.訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用する記載であったものを、請求項2を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正を行っているから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもの、及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
これに加えて、訂正事項3は、離型層の厚みに関する規定を凹部におけるものであることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3の「前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり」については、段落【0036】、図3等に記載されている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するもの、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

オ.訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正については、請求項1との引用関係の解消を目的とする訂正事項2に伴って、請求項4についても請求項1との引用関係の実質的な解消を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項4のうち、請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正については、請求項1との引用関係の解消を目的とする訂正事項3に伴って、請求項4についても請求項1との引用関係の実質的な解消を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
さらに、訂正事項4のうち、請求項4を削除する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正、及び請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正については、実質的に引用関係の解消を目的とするから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項4のうち、請求項4を削除する訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正、及び請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正については、実質的に引用関係の解消を目的とするから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項4のうち、請求項4を削除する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

カ.訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5のうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項12とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項5のうち、請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項15とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
さらに、訂正事項5のうち、請求項5を削除する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項5のうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項12とする訂正、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項15とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正、及び請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正に伴って、実質的に引用関係の解消を目的とするから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項5のうち、請求項5を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項5のうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項12とする訂正、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項15とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正、及び請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正に伴って、実質的に引用関係の解消を目的とするから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項5のうち、請求項5を削除する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

キ.訂正事項6について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6のうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項13とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項6のうち、請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項16とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
さらに、訂正事項6のうち、請求項6を削除する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項6のうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項13とする訂正、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項16とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正、及び請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正に伴って、実質的に引用関係の解消を目的とするから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項6のうち、請求項6を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項6のうち、請求項2を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項13とする訂正、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを新たに請求項16とする訂正は、訂正事項4のうち、請求項2を引用するものを新たに請求項11とする訂正、及び請求項3を引用するものを新たに請求項14とする訂正に伴って、実質的に引用関係の解消を目的とするから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項6のうち、請求項6を削除する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ク.訂正単位について
上記「ウ.」ないし「キ.」のとおり、訂正事項2ないし6は訂正要件に適合している。
したがって、上記「第2」「2.」の「(9)」で示した別の訂正単位とする求めのとおり、訂正後の請求項〔2、11ないし13〕、及び訂正後の請求項〔3、14ないし16〕については、訂正後の請求項〔1、4ないし6〕とはそれぞれ別の訂正単位とする。

(2)請求項7ないし9からなる一群の請求項に係る訂正
ア.一群の請求項について
訂正前の請求項7ないし9において、請求項8、9は、記載を訂正する請求項7を直接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項7ないし9に対応する訂正後の請求項7ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ.訂正事項7について
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、離型層の厚みに関する規定を凹部におけるものであることを特定するとともに、セパレートフィルムの保護層に対する剥離強度を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項7の「前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり」については、段落【0036】、図3等に記載されている。
また、訂正事項7の「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmである」については、図6の実施例8、10等に記載されている。
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項7は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)請求項10に係る訂正
ア.訂正事項8について
(ア)訂正の目的について
訂正事項8は、離型層の厚みに関する規定を凹部におけるものであることを特定するとともに、セパレートフィルムの保護層に対する剥離強度を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項8の「前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり」については、段落【0036】、図3等に記載されている。
また、訂正事項8の「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであり」については、図6の実施例8、10等に記載されている。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項8は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正の適否のまとめ
上記(1)ないし(3)のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、平成31年4月24日付け手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4ないし6〕、〔2、11ないし13〕、〔3、14ないし16〕、〔7ないし9〕、10について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2、3、7ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」、「本件発明3」、「本件発明7」ないし「本件発明16」という。)は、平成31年4月24日付け手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2、3、7ないし16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、請求項1、4ないし6に係る発明は、訂正により削除された。

「【請求項2】
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とするシールドフィルム。
【請求項3】
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.00N/50mm?5.11N/50mmであることを特徴とするシールドフィルム。
【請求項7】
一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に、
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムを設けたシールドプリント配線板であって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項8】
前記プリント回路を含む基体がフレキシブルプリント配線板からなることを特徴とする請求項7に記載のシールドプリント配線板。
【請求項9】
前記プリント回路を含む基体がテープキャリアパッケージ用TABテープであることを特徴とする請求項7に記載のシールドプリント配線板。
【請求項10】
マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、 前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであり、
前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm?0.6μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記電磁波シールド層は、導電性接着剤層を含むことを特徴とする請求項2に記載のシールドフィルム。
【請求項12】
前記電磁波シールド層は、金属層を更に含み、
前記導電性接着剤層は、異方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項11に記載のシールドフィルム。
【請求項13】
前記導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項11に記載のシールドフィルム。
【請求項14】
前記電磁波シールド層は、導電性接着剤層を含むことを特徴とする請求項3に記載のシールドフィルム。
【請求項15】
前記電磁波シールド層は、金属層を更に含み、
前記導電性接着剤層は、異方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項14に記載のシールドフィルム。
【請求項16】
前記導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項14に記載のシールドフィルム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし10に係る特許に対して、当審が平成30年12月10日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1、4、6ないし8、10に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項5、9に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1、4ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

記(引用文献一覧)
1.特開2009-277980号公報 (甲第1号証)
2.特開2002-370315号公報 (甲第2号証)
3.国際公開第2006/120983号(甲第3号証)
4.特開2007-294996号公報 (甲第4号証)

2.引用発明
取消理由通知において引用した引用文献1(特開2009-277980号公報)には、「電磁波シールド性接着フィルムおよびその製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
本発明は、繰り返し屈曲を受けるフレキシブルプリント配線板などに貼着して、電気回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する用途に好適に用いられる電磁波シールド性接着性フィルム及びその製造方法に関する。」

(2)「【0014】
まず、本発明の電磁波シールド性接着性フィルムについて説明する。
本発明の電磁波シールド性接着フィルムは、剥離性フィルム1、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)、及び剥離性フィルム2が順次積層されてなるものである。
【0015】
剥離フィルム1は、片面あるいは両面に離型処理をしたフィルムや、片面あるいは両面に粘着剤を塗布したフィルムなどを使用することができる。」

(3)「【0017】
離型処理方法としては、離型剤をフィルムの片面あるいは両面に塗布したり、物理的にマット化処理する方法がある。
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素系樹脂、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸石鹸、ワックス、動植物油脂、マイカ、タルク、シリコーン系界面活性剤、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素系界面活性剤、フッ素樹脂、フッ素含有シリコーン樹脂などが用いられる。
離型剤の塗布方法としては、従来公知の方式、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等により行うことができる。
【0018】
剥離フィルム1の表面粗さRaは、0.05?0.8、好ましくは0.07?0.5の範囲のものが使用できる。表面粗さRaが0.05未満の場合、電磁波シールド性フィルムの絶縁性層の表面平滑性が高くなり、目立ちやすく、製品の外観や見た目が悪くなる。さらには、表面の平滑性が高い為に、滑り性が悪い為に電磁波シールド性フィルム同士がくっつき易くなり、電子機器のヒンジ部分に使用される場合にはスムーズに動かないといった不具合が生じる。
また、表面粗さRaが0.8より大きい場合、絶縁性層の表面平滑性が低くなりすぎて、絶縁性層同士の擦れや、電子機器の筐体と擦れなどに対して弱く、絶縁性層が削れるという不具合が生じる。
【0019】
表面粗さRaが0.05?0.8の範囲の剥離フィルムは、前記フィルムの基材上に、フィラーが入ったマット化剤をコーティングした後、前記剥離剤を塗布したり、物理的にマット化されているフィルム上に剥離剤を塗布したり、前記剥離剤中にマット化剤を入れて前記フィルム上に塗布したり、さらには、基材フィルムにフィラー入りの粘着剤を塗布するなどの方法により作製することができる。」

(4)「【0050】
硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)における導電性フィラーの含有量は、必要とする電磁波シールド効果の度合いによって異なるが、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との合計100重量部に対して、導電性フィラー10?700重量部の割合にすることが好ましい。導電性フィラーの含有量が10重量部を下回ると、導電性フィラー同士が十分に接触せず、高い導電性が得られず、電磁波シールド効果が不十分となりやすい。また、導電性フィラーの含有量が700重量部を超えても、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層の表面抵抗値は下がらなくなり、電導率が飽和状態に達する上に、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層中の導電性フィラーの量が過多となり、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)の基材フィルムへの密着性や接着力が低下する。
【0051】
次に本発明の硬化性電磁波シールド性接着性フィルムの製造方法の具体的態様について説明する。
例えば、上記したように特定の表面粗さを呈する一の剥離性フィルム(以下、剥離性フィルム1という)の一方の面に、ポリウレタンポリウレア樹脂(C)とエポキシ樹脂(D)とを含有する硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、
別途、他の剥離性フィルム(以下、剥離性フィルム2という)の一方の面に、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)と導電性フィラーとを含有する硬化性導電性樹脂組成物を塗工・乾燥し、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成し、
次いで、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)とフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)とを重ね合わせる。
【0052】
あるいは、特定の表面粗さを呈する剥離性フィルム1の一方の面に、前記硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、該フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、前記硬化性導電性樹脂組成物を塗工・乾燥し、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成し、該硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)上に剥離性フィルム2を重ね合わせる。」

(5)「【0054】
例示したような製造方法により、剥離性フィルム2/硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)/フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)/特定の表面粗さを呈する剥離性フィルム1/という積層状態の硬化性電磁波シールド性接着性フィルムを得ることができる。特定の表面粗さを呈する剥離性フィルム1を用いることによって、その表面粗さに対応する表面粗さを有する、絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物の硬化フィルムを得ることができる。
【0055】
最後に本発明の硬化性電磁波シールド性接着性フィルムの使い方の具体的態様を説明する。
前記硬化性電磁波シールド性接着性フィルムから、剥離性フィルム2を剥がし、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を露出させる。その硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を被着体に重ね合わせ、加熱することにより、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)及びフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)中の、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)、ポリウレタンポリウレア樹脂(C)とエポキシ樹脂(D)を反応させ、両層(I)(II)を硬化させる。接触界面近傍において、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(D)、ポリウレタンポリウレア樹脂(C)とエポキシ樹脂(B)の反応も生じる場合もある。そして、両層(I)(II)の硬化後に、剥離性フィルム1を剥がすことによって、被着体を電磁波から遮蔽することが可能となる。
【0056】
本発明の硬化性電磁波シールド性接着性フィルムを貼着することのできる被着体としては、例えば、繰り返し屈曲を受けるフレキシブルプリント配線板を代表例として挙げることができる。もちろん、リジッドプリント配線板にも適用できる。」

そして、
(a)上記(2)によれば、電磁波シールド性接着フィルムは、剥離性フィルム1、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)、及び剥離性フィルム2が順次積層されてなるものである。そして、上記(5)によれば、上記電磁波シールド性接着フィルムを被着体に使う場合は、電磁波シールド性接着フィルムから剥離性フィルム2を剥がすことから、電磁波シールド性接着フィルムは、剥離性フィルム1、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)が順次積層されてなるものである。

(b)上記(3)によれば、剥離性フィルム1は物理的にマット化されているフィルム上に剥離剤を塗布している。また、上記(4)によれば、電磁波シールド性接着性フィルムは、剥離性フィルム1の一方の面に、前記硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、該フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、前記硬化性導電性樹脂組成物を塗工・乾燥し、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成している。これらのことから、電磁波シールド性接着性フィルムは、物理的にマット化されているフィルム上に剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に、硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成している。

(c)上記(4)によれば、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)は、導電性フィラーの含有量で、電磁波シールド効果の度合いが異なるものである。

(d)上記(5)によれば、剥離性フィルム1は、電磁波シールド性接着性フィルムを被着体に重ね合わせ、加熱して、両層(I)(II)の硬化後に剥がすものである。

(e)上記(3)によれば、剥離フィルムの表面粗さRaは、0.05?0.8の範囲の剥離フィルムである。

(f)上記(5)によれば、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さは、剥離性フィルム1の表面粗さに対応している。

したがって、上記(1)ないし(5)の記載事項及び図面の記載並びに上記(a)ないし(f)の事項を総合勘案し、「電磁波シールド性接着性フィルム」の発明として捉えると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「物理的にマット化されているフィルム上に剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に、硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成した電磁波シールド性接着性フィルムであって、
硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)は、導電性フィラーの含有量で、電磁波シールド効果の度合いが異なるものであり、
剥離性フィルム1は、電磁波シールド性接着性フィルムを被着体に重ね合わせ、両層(I)(II)の硬化後に剥がすものであり、
剥離性フィルム1の表面粗さRaが0.05?0.8であり、
フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さは、剥離性フィルム1の表面粗さに対応している
電磁波シールド性接着性フィルム。」

また、
(g)上記(5)によれば、電磁波シールド性接着性フィルムは、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を被着体に重ね合わせるものであり、電磁波シールド性接着性フィルムを貼着することのできる被着体は、フレキシブルプリント配線板である。これらのことから、フレキシブルプリント配線板は、その片面上に電磁波シールド性接着性フィルムを貼着したフレキシブルプリント配線板といえる。

(h)上記(5)によれば、電磁波シールド性接着性フィルムは、被着体であるフレキシブルプリント配線板を電磁波から遮蔽するものである。

したがって、上記(1)ないし(5)の記載事項及び図面の記載並びに上記(a)ないし(h)の事項を総合勘案し、「電磁波シールド性接着性フィルムを貼着したフレキシブルプリント配線板」の発明として捉えると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「フレキシブルプリント配線板の片面上に、
物理的にマット化されているフィルム上に剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に、硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、該フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成した電磁波シールド性接着性フィルムを貼着したフレキシブルプリント配線板であって、
硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)は、導電性フィラーの含有量で、電磁波シールド効果の度合いが異なるものであり、
電磁波シールド性接着性フィルムが、フレキシブルプリント配線板を電磁波から遮蔽し、
剥離性フィルム1は、両層(I)(II)の硬化後に剥がすものであり、
剥離性フィルム1の表面粗さRaが0.05?0.8であり、
フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さは、剥離性フィルム1の表面粗さに対応している
電磁波シールド性接着性フィルムを貼着したフレキシブルプリント配線板。」

さらに、
(i)上記(5)によれば、電磁波シールド性接着性フィルムの使い方の具体的態様としては、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を被着体であるプリント配線板に重ね合わせて加熱し、両層(I)(II)の硬化後に、剥離性フィルム1を剥がすことによって、被着体を電磁波から遮蔽するものである。

したがって、上記(1)ないし(5)の記載事項及び図面の記載並びに上記(a)ないし(i)の事項を総合勘案し、電磁波シールド性接着性フィルムの使い方としての「方法」の発明として捉えると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「物理的にマット化されているフィルム上に剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に、硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥し、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、該フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成した電磁波シールド性接着性フィルムを、
プリント配線板に重ねあわせ、加熱することにより、両層(I)(II)を硬化し、両層(I)(II)が硬化後に剥離性フィルム1を剥がすという方法であり、
剥離性フィルム1の表面粗さRaが0.05?0.8であり、
フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さは、剥離性フィルム1の表面粗さに対応するものである、方法」

3.当審の判断
(1)請求項1、4ないし6について
訂正前の請求項1、4ないし6に係る発明は、訂正により削除された。したがって、請求項1、4ないし6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、却下すべきものである。

(2)請求項7について
本件発明7と引用発明2とを対比する。

ア.引用発明2の「フレキシブルプリント配線板」は、本件発明7の「1層以上のプリント回路を含む基体」に相当する。

イ.引用発明2の「剥離性フィルム1」は、本件発明7の「セパレートフィルム」に相当する。また、「剥離性フィルム1」は、剥離剤を塗布する面が「物理的にマット化されている」ことからみて、「一方の面全体に凹凸が形成され」たものといえる。

ウ.引用発明2の「剥離剤」は、本件発明7の「離型剤」に相当する。また、「剥離剤」は、剥離性フィルム1の「フィルム上」に「塗布」されていることからみて、セパレートフィルムの「凹凸部が形成された面」側に、離型剤が配置され、「離型層を形成」しているといえる。
ただし、本件発明7では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明2では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点で相違する。

エ.引用発明2の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」は、本件発明7の「保護層」に相当する。また、「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」は、剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に「硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥」して「形成」されていることから、「離型剤を介して樹脂をコーティング」して「形成」されているといえる。

オ.引用発明2の「硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)」は、導電性フィラーの含有量で、電磁波シールド効果の度合いが異なるものからなるから、本件発明7の「電磁波シールド層」に相当する。

カ.引用発明2の「電磁波シールド性接着性フィルム」は、本件発明7の「シールドフィルム」に相当する。

キ.引用発明2の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さ」は、「剥離性フィルム1の表面粗さ」に対応するものであるから、剥離性フィルム1を剥離したときのフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さRaは0.05μm?0.8μmである。そして、その表面粗さRaは、本件発明7の「0.2μm?0.6μm」の範囲を包含する。

ク.引用発明2の「電磁波シールド性接着性フィルムを貼着したフレキシブルプリント配線板」は、電磁波シールド性接着性フィルムによって電磁波から遮蔽されているから、本件発明7の「シールドプリント配線板」に相当する。

してみれば、本件発明7と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に、
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムを設けたシールドプリント配線板であって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸が形成された面に配置されて離型層を形成しており、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであることを特徴とするシールドプリント配線板。」

<相違点1>
本件発明7では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明2では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点。

<相違点2>
本件発明7では、「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度」が、「1.12N/50mm?10.89N/50mm」であるのに対し、引用発明2では、「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度について特定されていない点。

まず、上記相違点2について検討する。
取消理由通知において引用した引用文献2(特開2002-370315号公報)の段落【0016】、【0019】-【0022】、【0025】、【0051】には、基材12と離型剤層15からなる剥離フィルム11の接着剤層に対する剥離力について記載されている。なお、ここでいう「剥離力」とは、剥離強度のことでもある。
しかしながら、引用文献2の「接着剤層」は、本件発明7の「保護層」とは異なるものであるから、引用発明2の「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度に、引用文献2の「剥離フィルム11」と「接着剤層」との間の「剥離力」を適用することはできない。
したがって、相違点2に係る事項は、引用発明2、及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではない。

よって、本件発明7は、相違点1について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)請求項8について
本件発明8は本件発明7の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(2)で述べたのと同様の理由で、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)請求項9について
本件発明9は本件発明7の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(2)で述べたのと同様の理由で、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、取消理由通知において引用した引用文献4(特開2007-294996号公報)の段落【0031】-【0032】には、シールドフィルム1を基体フィルム5に用いたシールドプリント配線板において、基体フィルム5としてテープキャリアパッケージの為のTABテープを採用したことが記載されている。しかしながら、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、4に記載された技術事項から、本件発明9の「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmである」という事項を当業者が容易に想到することはできない。

(5)請求項10について
本件発明10と引用発明3とを対比する。

ア.引用発明3の「剥離性フィルム1」は、本件発明10の「セパレートフィルム」に相当する。また、「剥離性フィルム1」は、剥離剤を塗布する面が「物理的にマット化されている」ことからみて、「マット化処理により一方面全体が凹凸形状にされた」たものといえる。

イ.引用発明3の「剥離剤」は、本件発明10の「離型剤」に相当する。また、「剥離剤」は、剥離性フィルム1のマット化されている「フィルム上」に「塗布」されていることからみて、「剥離性フィルム1」における「凹凸形状側の面」に積層されているといえる。さらに、「剥離剤」は、「剥離性フィルム1」の凹凸部が形成された面に配置されて、「離型層を形成」しているともいえる。
ただし、本件発明10では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明3では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点で相違する。

ウ.引用発明3の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」、「硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)」は、それぞれ、本件発明10の「保護層」、「電磁波シールド層」に相当する。また、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)を形成し、剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に、該フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)上に、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)を形成していることからみて、「剥離剤」と「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」と「硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)」とは少なくとも積層されている。

エ.引用発明3の「電磁波シールド性接着性フィルム」は、本件発明10の「シールドフィルム」に相当する。

オ.引用発明3の「プリント配線板」は、本件発明10の「1層以上のプリント回路を含む基体」に相当する。また、「プリント配線板」に、電磁波シールド性接着性フィルムを重ね合わせていることからみて、「プリント配線板」の少なくとも片面上に、電磁波シールド性接着性フィルムを載置している。

カ.引用発明3は、「電磁波シールド性接着性フィルムを、プリント配線板に重ねあわせ、加熱することにより、両層(I)(II)を硬化し、両層(I)(II)が硬化後に剥離性フィルム1を剥がす」ものであることから、「電磁波シールド性接着性フィルム」及び「プリント配線板」は、積層方向に加熱・加圧されているといえる。また、その後に、「剥離性フィルム1」は、「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」から剥離するものであるから、本件発明10と引用発明3は、「前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離する」点で一致する。

キ.引用発明3の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さ」は、「剥離性フィルム1の表面粗さ」に対応するものであるから、剥離性フィルム1を剥離したときのフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さRaは0.05μm?0.8μmである。そして、その表面粗さRaは、本件発明10の「0.2μm?0.6μm」の範囲を包含する。したがって、引用発明3において、「剥離性フィルム1」を「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」から剥離することによって、表面粗さRaが「0.2μm?0.6μm」の範囲の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」を有するようにしたことは、本件発明10の「前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm?0.6μmの前記保護層を有するようにしたこと」と一致する。

ク.引用発明3の「電磁波シールド性接着性フィルムを、プリント配線板に重ねあわせ、加熱することにより、両層(I)(II)を硬化し、両層(I)(II)が硬化後に剥離性フィルム1を剥がすという方法」により、電磁波をシールドするという性能を有するプリント配線板が製造されることは明らかである。したがって、引用発明3の「電磁波シールド性接着性フィルムを、プリント配線板に重ねあわせ、加熱することにより、両層(I)(II)を硬化し、両層(I)(II)が硬化後に剥離性フィルム1を剥がすという方法」は、本件発明10の「シールドプリント配線板の製造方法」に相当する。

以上のことから、本件発明10と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面に配置されて離型層を形成し、
前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm?0.6μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。」

<相違点3>
本件発明10では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明3では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点。

<相違点4>
本件発明10では、「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度」が、「1.12N/50mm?10.89N/50mm」であるのに対し、引用発明3では、「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度について特定されていない点。

そして、相違点4については、上記(2)の相違点2の検討で説示したとおりであるから、相違点4に係る事項は、引用発明3、及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではない。

よって、本件発明10は、相違点3について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由及び申立人の意見について
1.特許法第29条第2項(進歩性)について
申立人は、平成30年2月15日付け特許異議申立書において、訂正前の請求項2、3に係る発明は、甲第1号証(特開2009-277980号公報、引用文献1)に記載された発明、甲第2号証(特開2002-370315号公報、引用文献2)に記載された技術事項、及び甲第3号証(国際公開第2006/120983号、引用文献3)に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができるものである旨主張している。
ここで、本件発明2、3は、それぞれ訂正前の請求項2、3において、「離型層の厚み」に関する規定が「凹部」におけるものであることを特定したものである。
そこで、本件発明2、3が、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。

(1)本件発明2について
本件発明2と引用発明1とを対比する。
ア.引用発明1の「剥離性フィルム1」は、本件発明2の「セパレートフィルム」に相当する。また、「剥離性フィルム1」は、剥離剤を塗布する面が「物理的にマット化されている」ことからみて、「一方の面全体に凹凸が形成され」たものといえる。

イ.引用発明1の「剥離剤」は、本件発明2の「離型剤」に相当する。また、「剥離剤」は、剥離性フィルム1の「フィルム上」に「塗布」されていることからみて、セパレートフィルムの「凹凸部が形成された面」側に、離型剤が配置され、「離型層を形成」しているといえる。
ただし、本件発明2では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点で相違する。

ウ.引用発明1の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」は、本件発明2の「保護層」に相当する。また、「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」は、剥離剤を塗布した剥離性フィルム1に「硬化性樹脂組成物を塗工・乾燥」して「形成」されていることから、「離型剤を介して樹脂をコーティング」して「形成」されているといえる。

エ.引用発明1の「硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)」は、導電性フィラーの含有量で、電磁波シールド効果の度合いが異なるものからなるから、本件発明2の「電磁波シールド層」に相当する。

オ.引用発明1の「電磁波シールド性接着性フィルム」は、本件発明2の「シールドフィルム」に相当する。

カ.引用発明1の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さ」は、「剥離性フィルム1の表面粗さ」に対応するものであるから、剥離性フィルム1を剥離したときのフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)の表面粗さRaは0.05μm?0.8μmである。そして、その表面粗さRaは、本件発明2の「0.2μm?0.6μm」の範囲を包含する。

以上のことから、本件発明2と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸が形成された面に配置されて離型層を形成しており、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであることを特徴とするシールドフィルム。」

<相違点5>
本件発明2では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明1では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点。

<相違点6>
本件発明2では、「前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度」が、「1.12N/50mm?10.89N/50mm」であるのに対し、引用発明1では、「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度について特定されていない点。

まず、上記相違点6について検討する。
上記「第4」「3.」「(2)」の相違点2の検討で説示したとおり、引用文献2の「接着剤層」は、本件発明1の「保護層」とは異なるものであるから、引用発明1の「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度に、引用文献2の「剥離フィルム11」と「接着剤層」との間の「剥離力」を適用することはできない。
次に、引用文献3の段落【0001】、【0016】、【0031】、【0051】、【0059】、【0063】-【0067】、【0187】-【0188】、表1-1、表1-2には、フレキシブルプリント基板を製造する際に、電気回路面を保護する保護層であるカバーレイフィルムを接着剤によって加熱及び加圧して接着する際に使用される離型フィルム1において、当該離型フィルム1の表面層(A)とクッション層(C)との間の接着強度が、加熱及び加圧処理前は4.1?6.8N/15mmであり、加熱及び加圧処理後は2.1?3.5N/15mmであることが記載されている。なお、ここでいう「接着強度」とは、剥離強度のことでもある。
しかしながら、引用文献3の「離型フィルム1」、「保護層であるカバーレイフィルム」は、本件発明2の「セパレートフィルム」、「保護層」に相当するものであるが、引用文献3には、「離型フィルム1」に対する「保護層であるカバーレイフィルム」の剥離強度については何ら記載されていない。さらに、引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」は、本件発明2の「セパレートフィルム」と「保護層」とは異なるものであるから、引用発明1の「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度に、引用文献3の「表面層(A)」と「クッション層(C)」との間の「接着強度」を適用することはできない。
したがって、相違点6に係る事項は、引用発明1、及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではない。

よって、本件発明2は、相違点5について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明3について
本件発明3と引用発明1とを対比すると、上記(1)で説示した<一致点>において一致し、以下の点で相違する。

<相違点7>
本件発明3では、「離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くして」いるのに対し、引用発明1では、「離型層」をそのように形成することが特定されていない点。

<相違点8>
本件発明3では、「前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度」が「1.00N/50mm?5.11N/50mmである」のに対し、引用発明1では、電磁波シールド性接着性フィルムを被着体に載置し、加熱・加圧した後の「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度については特定されていない点。

まず、上記相違点8について検討する。
上記「第4」「3.」「(2)」の相違点2の検討で説示したとおり、引用文献2の「接着剤層」は、本件発明1の「保護層」とは異なるものであるから、引用発明1の「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度に、引用文献2の「剥離フィルム11」と「接着剤層」との間の「剥離力」を適用することはできない。
次に、引用文献3の段落【0001】、【0016】、【0031】、【0051】、【0059】、【0063】-【0067】、【0187】-【0188】、表1-1、表1-2には、フレキシブルプリント基板を製造する際に、電気回路面を保護する保護層であるカバーレイフィルムを接着剤によって加熱及び加圧して接着する際に使用される離型フィルム1において、当該離型フィルム1の表面層(A)とクッション層(C)との間の接着強度が、加熱及び加圧処理前は4.1?6.8N/15mmであり、加熱及び加圧処理後は2.1?3.5N/15mmであることが記載されている。なお、ここでいう「接着強度」とは、剥離強度のことでもある。
しかしながら、引用文献3の「離型フィルム1」、「保護層であるカバーレイフィルム」は、本件発明3の「セパレートフィルム」、「保護層」に相当するものであるが、引用文献3には、「離型フィルム1」に対する「保護層であるカバーレイフィルム」の剥離強度については何ら記載されていない。さらに、引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」は、本件発明3の「セパレートフィルム」と「保護層」とは異なるものであるから、引用発明1の「剥離性フィルム1」の「フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)」に対する剥離強度に、引用文献3の「表面層(A)」と「クッション層(C)」との間の「接着強度」を適用することはできない。
したがって、相違点8に係る事項は、引用発明1、及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではない。

よって、本件発明3は、相違点7について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立人の意見について
ア.本件発明2、3について
申立人は、令和1年7月5日付け意見書において、上記(1)の相違点6及び(2)の相違点8の検討で引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」は、本件発明2、3の「セパレートフィルム」と「保護層」とは異なるものであるとした点について、当業者が出願時の技術常識を参酌した上で引用文献3を総合的に判断すれば、剥離する層間での剥離強度(接着強度)を測定及び評価すると考えるのが相当であるから、表面層(A)はカバーレイフィルムと共に剥がす対象の構成であり、クッション層(C)は、フレキシブルプリント基板側に残る構成といえ、してみれば、引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」は、本件発明2、3の「セパレートフィルム」と「保護層」に相当するものである旨主張している。

上記主張について検討する。
引用文献3の段落【0048】には、「本発明の積層体は、少なくとも表面層(A)、接着層(B)およびクッション層(C)を含む、表面層(A)とクッション層(C)との間に接着層(B)を有する積層体であり、該積層体の、少なくとも一方の最外層に表面層(A)を有するものであれば良く、表面層(A)、接着層(B)およびクッション層(C)以外の層を有していても良いが、好ましくは(A)/(B)/(C)の3層構造の積層体、(A)/(B)/(C)/(D)の4層構造の積層体、および(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の5層構造の積層体等が挙げられる。これらの中で特に、離型フィルムとして使用する際に表裏の区別が不要な両側の最外層に表面層(A)を有する5層構造の積層体であることが好ましい。」と記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。そして、「表面層(A)/接着層(B)/クッション層(C)/接着層(B)/表面層(A)の5層構造の積層体」を離型フィルムとして使用して基板とカバーレイフィルムとの接着を行う場合、カバーレイフィルムと接触するのは離型フィルムの「表面層(A)」であることは明らかである。
そして、段落【0025】の表面層(A)が他樹脂との接着性が弱いものであるという記載や、段落【0051】の表面層(A)の面粗度が所定の範囲内であると、FPC製造時に加熱および加圧後に離型フィルムを剥離する際の離型性が良好となるという記載を参酌すると、加熱及び加圧処理後に剥離するのは「表面層(A)とカバーレイフィルムとの間」であって、「表面層(A)と接着層(B)との間」ではないことは明らかである。
さらに、段落【0025】に「また、このような特定の接着層(B)を使用することによって、一般に他樹脂との接着性が弱い4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む表面層(A)は、クッション層(C)と十分な接着強度を得ることができる。」と記載されているとおり、接着層(B)は、表面層(A)とクッション層(C)との間に十分な接着強度を得るためのものである。したがって、接着層(B)が、加熱及び加圧処理後に表面層(A)とクッション層(C)との間を剥離するためのものであると解することはできない。
よって、引用文献3の表面層(A)が剥がす対象の構成であり、クッション層(C)がフレキシブルプリント基板側に残る構成であるという主張や、当該構成であることを根拠として、引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」が、本件発明2、3の「セパレートフィルム」と「保護層」に相当するという主張は、妥当であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

イ.本件発明7ないし16について
申立人は、令和1年7月5日付け意見書において、訂正後の請求項7-16についても、取消理由通知で示されているように、引用文献1-4から当業者が容易になし得るものである旨主張している。
しかしながら、上記ア.で検討したとおり、引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」は、本件発明2、3の「セパレートフィルム」と「保護層」に相当するものではないから、引用文献3の「離型フィルム1」の「表面層(A)」と「クッション層(C)」は、本件発明7ないし16の「セパレートフィルム」と「保護層」に相当するものではない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできず、本件発明7ないし16は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.特許法第17条の2第3項(新規事項)について
申立人は、平成30年2月15日付け特許異議申立書において、本件の願書に最初に添付した明細書には、「離型剤が、セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成していること」が記載されていないから、平成29年1月13日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされておらず、特許法第17条の2第3項の要件を満たしていない旨主張している。

上記主張について検討する。
平成29年1月13日付け手続補正書の請求項1、7、10には、「前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し」との記載がある。(なお、下線は補正箇所を示す。)
しかしながら、「前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し」という発明特定事項は、セパレートフィルムの凹部内に離型剤が配置されているということを特定しているものの、凹部以外(例えば、凸部)に離型剤が配置されているか否かまでを特定するものではない。
そして、図3によれば、セパレートフィルム6aの凹部61bとハード層7aの境界の太い線に、「6b」(離型層6b)が付されているから、離型層6bは、少なくともセパレートフィルム6aの凹凸61が形成された面の凹部61bに配置されていることが読み取れる。また、段落【0036】の記載から明らかなように、離型層6bは、離型剤によって形成されるものであるから、「離型剤は、セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し」ていることは、当初明細書等に記載された事項である。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

3.特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
申立人は、平成30年2月15日付け特許異議申立書において、請求項1、7、10の「離型剤が、セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成される」ことについて、具体的構成、実現方法は何ら記載されておらず、かかる構成、方法は周知のものでもないから、請求項1ないし10に係る特許は、その発明の詳細な説明が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。

上記主張について検討する。
まず、請求項1、4ないし6に係る特許は訂正により削除されたため、請求項1、4ないし6に係る特許に対する実施可能要件違反の特許異議申立理由は存在しない。
次に、本件発明2、3、7ないし16は「前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し」という発明特定事項を含むものであるため、これらに係る特許に対する実施可能要件違反の特許異議申立理由について検討する。
上記2.で説示したとおり、本件発明2、3、7ないし16の「前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し」という発明特定事項は、セパレートフィルムの凹部内に離型剤が配置されているということを特定しているものの、凹部以外(例えば、凸部)に離型剤が配置されているか否かまでを特定するものではない。
そして、凹凸部が形成されたセパレートフィルムに離型剤を付着させると、少なくともセパレートフィルムの凹部に離型剤が配置されることは、当然のことである。よって、本件明細書に「離型剤が、セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成される」ことについての具体的構成や実現方法が記載されていないことをもって、当業者が本件発明2、3、11ないし16に係る特許を実施することができないということはできない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明2、3、7ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明2、3、7ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1、4ないし6に係る特許は、上記のとおり訂正により削除されたことから、請求項1、4ないし6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とするシールドフィルム。
【請求項3】
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.00N/50mm?5.11N/50mmであることを特徴とするシールドフィルム。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に、
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムを設けたシールドプリント配線板であって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm?0.6μmであり、
前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであることを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項8】
前記プリント回路を含む基体がフレキシブルプリント配線板からなることを特徴とする請求項7に記載のシールドプリント配線板。
【請求項9】
前記プリント回路を含む基体がテープキャリアパッケージ用TABテープであることを特徴とする請求項7に記載のシールドプリント配線板。
【請求項10】
マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し、前記凹部の離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度は、1.12N/50mm?10.89N/50mmであり、
前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm?0.6μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記電磁波シールド層は、導電性接着剤層を含むことを特徴とする請求項2に記載のシールドフィルム。
【請求項12】
前記電磁波シールド層は、金属層を更に含み、
前記導電性接着剤層は、異方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項11に記載のシールドフィルム。
【請求項13】
前記導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項11に記載のシールドフィルム。
【請求項14】
前記電磁波シールド層は、導電性接着剤層を含むことを特徴とする請求項3に記載のシールドフィルム。
【請求項15】
前記電磁波シールド層は、金属層を更に含み、
前記導電性接着剤層は、異方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項14に記載のシールドフィルム。
【請求項16】
前記導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層により構成されていることを特徴とする請求項14に記載のシールドフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-07-17 
出願番号 特願2015-251571(P2015-251571)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H05K)
P 1 651・ 536- YAA (H05K)
P 1 651・ 55- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石坂 博明  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 酒井 朋広
宮本 秀一
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6180499号(P6180499)
権利者 タツタ電線株式会社
発明の名称 シールドフィルム、シールドプリント配線板及びシールドプリント配線板の製造方法  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
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