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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
管理番号 1354942
異議申立番号 異議2018-701022  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-18 
確定日 2019-08-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6345176号発明「肌の官能評価装置および肌の評価方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6345176号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9-16〕、17について訂正することを認める。 特許第6345176号の請求項1ないし3、7ないし11、15ないし17に係る特許を維持する。 特許第6345176号の請求項4ないし6、12ないし14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6345176号の請求項1?17に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)6月20日(優先権主張 平成25年6月28日)を国際出願日とする出願であって、平成30年6月1日にその特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?17に係る特許について、同年12月18日に特許異議申立人村靖史(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年2月12日付けで取消理由を通知した。
特許権者は、その指定期間内である同年5月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行ったので、当審から申立人に、取消理由通知の写し、特許権者が提出した訂正の請求書及びこれに添付された訂正した特許請求の範囲の副本並びに取消理由通知に対応する意見書副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは何らの応答もなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)請求項1?8についての訂正
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1において、「表示する、」とあるのを、「表示し、」と訂正し、「前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、」との特徴を「表示し、」の後に追加する訂正を行う。

イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1において、「前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、」との特徴を上記訂正事項1-1で追加される特徴の後に追加する訂正を行う。

ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1において、「前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、」との特徴を上記訂正事項1-2で追加される特徴の後に追加する訂正を行う。

エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項4?6を削除する。

オ 訂正事項1-5
請求項4?6の削除に伴い、請求項7の従属先を請求項1に訂正し、請求項8の従属先を「請求項1から3および7のいずれかに記載の」と訂正する。

(2)請求項9?16についての訂正
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項9において、「表示する、」とあるのを、「表示し、」と訂正し、「前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、」との特徴を「表示し、」の後に追加する訂正を行う。

イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項9において、「前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、」との特徴を上記訂正事項2-1で追加される特徴の後に追加する訂正を行う。

ウ 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項9において、「前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、」との特徴を上記訂正事項2-2で追加される特徴の後に追加する訂正を行う。

エ 訂正事項2-4
特許請求の範囲の請求項12?14を削除する。

オ 訂正事項2-5
請求項12-14の削除に伴い、請求項15の従属先を請求項9に訂正し、請求項16の従属先を「請求項9から11および15のいずれかに記載の」と訂正する。

(3)請求項17についての訂正
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項17において、「表示させる、」とあるのを、「表示させ、」と訂正し、「前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、」との特徴を「表示させ、」の後に追加する訂正を行う。

イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項17において、「前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、」との特徴を上記訂正事項1で追加される特徴の後に追加する訂正を行う。

ウ 訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項17において、「前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、」との特徴を上記訂正事項2で追加される特徴の後に追加する訂正を行う。

2 一群の請求項について
上記1の(1)請求項1?8についての訂正は、訂正前の請求項1?8に対するもので、上記1の(2)請求項9?16についての訂正は、訂正前の請求項9?16に対するもので、上記1の(3)請求項17についての訂正は、訂正前の請求項17に対するものであり、訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定を満たすものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1-1、2-1、3-1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1-1、2-1及び3-1は、「少なくとも2つの特徴指標」を「シミ量、シワ量および輝度レベルであ」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。なお、下線は当審において付与した。)には、
「【0031】
図1(a)は本発明による肌の官能評価装置の一実施形態の構成を模式的に示している。本実施形態の官能評価装置101は、被検者24の顔の画像を取得し、顔の肌領域において、画像の特徴を示す特徴指標を画像から2つ以上算出する。また、算出した2つ以上の特徴指標から肌の官能評価値を決定する。本願明細書において、画像の特徴を示す特徴指標とは、撮影した画像に含まれる肌領域において、画像に表れている特徴を指標化したものである。具体的には、特徴指標とは画像に表れる肌のシミ、シワ、キメおよび毛穴に関する画像データを指標化した値および画像の画素値に関して指標化した値である。より具体的には、画像に表れる肌のシミ、シワの量を指標化した値、毛穴の数、面積、濃度のうちいずれか一つ以上の組合せで示される毛穴の量を指標化した値、キメ(肌理)の細やかさを指標化した値、ほうれい線の長さ、太さ、深さのうちいずれか一つ以上の組合わせを指標化した値、肌領域の所定の単位ブロックにおける画像の画素値の平均および分散、画素の色相を指標化した値、肌表面の反射率、水分、油分および色ムラを指標化した値をいう。また、肌の官能評価値とは、画像から直接求めることができない主観的な評価値をいう。具体的には、肌の透明感、肌年齢および肌印象をいう。一般的に、肌の官能評価値は、評価者が被検者の肌を見て主観的に決定する。本実施形態の官能評価装置は、あらかじめ評価者が複数の被検者の肌を評価することによって決定した肌の官能評価値と2つ以上の特徴指標との相関関係に基づき、評価中の被検者の2つ以上の特徴指標から官能評価値を決定する。評価者は、肌の透明感、肌年齢、肌印象を評価する美容分野における専門家が好ましいが、これらの評価を専門としていない一般のユーザでもよく、専門家に限らない。」
「【0044】
表1に、特徴指標を算出するための条件の一例を示す。
【0045】
【表1】


「【0061】
図5は、肌の評価方法の手順を示すフローチャートである。図4(a)および図5を参照しながら、官能評価装置101を用いた肌の評価方法をより詳細に説明する。
【0062】
図5に示すように、まず、被検者の顔の画像を取得する(ステップS1)。本実施形態では、偏光光を用いて直交偏光条件および平行偏光条件でそれぞれ撮影を行う。
・・・
【0068】
次に、単位ブロックごとに特徴指標を算出する(ステップS5a、S5b、S5c)。本実施形態では、単位ブロックごとに特徴指標としてシミ量およびシワ量を算出する。シミ量およびシワ量は、例えば、シミまたはシワと算出された領域の画素数である。また、得られた画像の明るさが透明感の評価に影響するため、単位ブロックごとの輝度レベルを算出する。表1に示すように、シミ量の算出には直交偏光で撮影された画像が適しているので、第2の画像を用いる。また、シワ量の算出には第1の画像を用いる。シミ量の算出する場合には、単位ブロック310u内の全画素の青の画素値と赤の画素値との差分を求め、閾値処理することによって、シミ量を算出する。シワ量を算出する場合には、単位ブロック310u内の全画素の青の画素値と赤の画素値との差分を求め、線検出フィルタ処理を行いエッジ検出した部分をシワ量として算出する。また、第1の画像または第2の画像あるいは両方を用いて、単位ブロック310uの輝度レベルを算出する。
【0069】
官能評価値決定部42は、算出したシミ量、シワ量及び輝度レベルを用いて、官能評価値である透明感を決定する(ステップS6)。具体的には、あらかじめ、シミ量、シワ量及び輝度レベルと透明感との相関関係が重回帰分析によって求められ、回帰式の係数が官能評価値決定部42に記憶されており、回帰式を用いて透明感を決定する。たとえば、シミ量、シワ量、輝度レベルおよび透明感をx1、x2、x3およびyとした場合、y=a+b1・x1+b2・x2+b3x3で示される回帰式の係数a、b1、b2、b3が記憶されている。
【0070】
表示データ生成部44は、求められた官能評価値である透明感をその透明感が得られた単位ブロック310uの肌領域310における座標に関連づけて表示すべき画像の画像データを生成する。
【0071】
ステップS4からS7までの繰り返すことによって肌領域310内の全単位ブロック310uの透明感を決定する(ステップS8)。」
「【0083】
図11は、主観的に評価した透明感と回帰式を用いて決定された透明感との相関を示している。図11において、教師データとは、回帰式の係数の決定のために用いられたデータ(肌領域の画像)である。また、テストデータとは、決定された係数を用いて官能評価装置101によって透明感を決定したデータである。
【0084】
相関を調べるために、教師データについても、官能評価装置101によって透明感を決定した。また、テストデータについても、評価者が主観的に透明感を評価した。
【0085】
図11に示すように、教師データから得られた主観評価による透明感と官能評価装置101によって決定した透明感との相関係数R^(2)は、約0.89である。これは、教師データとして用いた画像において、主観評価による透明感とシミ量、シワ量および輝度レベルから決定する透明感との間に高い相関があることを意味している。
【0086】
また、テストデータから得られた主観評価による透明感と官能評価装置101によって決定した透明感との相関係数R^(2)は、約0.79である。これは、教師データから得られた回帰式は、教師データ以外の画像においても、シミ量、シワ量および輝度レベルから高い相関で透明感を推定するのに好適に用い得ることを意味している。
【0087】
図12は、評価者が主観的に透明感を評価した画像におけるシミ量と主観評価による透明感との相関を示している。シミ量と主観評価による透明感との相関係数R^(2)は、約0.41であり、あまり高くない。本願発明者が、シワ量、ほうれい線、毛穴量についても同様に1つの特徴指標と主観評価による透明感との相関係数R^(2)を求めたところ、いずれも0.4程度であることが分かった。このことから、肌領域の画像から直接得られるシミ、シワ等の特徴指標を1つ用いただけでは、肌の透明感を高い相関で推定することは困難であることがわかる。」
と記載されており(特に下線部参照)、「特徴指標」として「シミ量、シワ量および輝度レベル」が記載されていることから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-1、2-1及び3-1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1、2-1及び3-1は、いずれも、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項1-2、2-2、3-2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1-2、2-2及び3-2は、「肌の官能評価値」を「肌の透明感の評価値」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
上記(1)のイで摘記した特許明細書等(特に下線部参照)には、「肌の官能評価値」として「肌の透明感の評価値」が記載されていることから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-2、2-2及び3-2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-2、2-2及び3-2は、いずれも、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項1-3、2-3、3-3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1-3、2-3及び3-3は、「肌の官能評価値」の「決定」を「前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する」ことに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
上記(1)のイで摘記した特許明細書等(特に下線部参照)には、「肌の官能評価値」の「決定」を「前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する」ことが記載されていることから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-3、2-3及び3-3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-3、2-3及び3-3は、いずれも、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項1-4、2-4について
訂正事項1-4は請求項4?6を削除するもので、訂正事項2-4は請求項12?14を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(5)訂正事項1-5、2-5について
訂正事項1-5及び2-5は、上記訂正事項1-4及び2-4に合わせて従属先を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

4 小括
以上のとおりであるから、訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正の請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9-16〕、17について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
訂正の請求により訂正された請求項1?17に係る発明(以下順に「本件訂正発明1」?「本件訂正発明17」という。ただし、削除された請求項4?6及び12?14に対応する本件訂正発明はない。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3、7?11、15?17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
画像から肌の官能評価値を決定する評価方法であって、
(a)被検者の肌を含む画像を取得し、
(b)前記画像から、肌領域を抽出し、
(c)前記肌領域において、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出し、
(d)前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定し、
前記ステップ(b)において、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
前記ステップ(c)および(d)において、前記単位ブロックごとに、前記少なくとも2つの特徴指標を算出し、前記肌の官能評価値を決定し、
(e)前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて表示装置に表示し、
前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、
前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、
前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、
評価方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、前記画像において、前記被検者の顔を検出し、
前記検出した顔の位置に基づき、前記画像上において、顔部品の領域を除外することによって前記肌領域を抽出する、
請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記ステップ(e)は、前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値に応じた色調または階調で前記単位ブロックの位置に関連づけて前記表示装置に表示する、
請求項2に記載の評価方法。
【請求項7】
前記相関関係は、重回帰分析により求められる請求項1に記載の評価方法。
【請求項8】
前記算出された特徴指標または前記決定された官能評価値に関連する美容機器または化粧品に関する情報を前記表示装置にさらに表示する、請求項1から3および7のいずれかに記載の評価方法。
【請求項9】
被検者の肌を含む画像を取得する撮像部と、
前記画像から、肌領域を抽出する肌領域抽出部と、
前記肌領域において、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出する特徴指標算出部と、
前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定する官能評価値決定部と、
表示部と
を備え、
前記肌領域抽出部は、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
前記特徴指標算出部は、前記単位ブロックごとに前記少なくとも2つの特徴指標を算出し、
前記官能評価値決定部は、前記単位ブロックごとに前記肌の官能評価値を決定し、
前記表示部は、前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて表示し、
前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、
前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、
前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、
官能評価装置。
【請求項10】
肌領域抽出部は、前記画像において、前記被検者の顔を検出し、
前記検出した顔の位置に基づき、前記画像上において、顔部品の領域を除外することによって前記肌領域を抽出する、
請求項9に記載の官能評価装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記官能評価値に応じた色調または階調で前記単位ブロックの位置に関連づけて表示する、
請求項10に記載の官能評価装置。
【請求項15】
前記相関関係は、重回帰分析により求められる請求項9に記載の官能評価装置。
【請求項16】
前記表示部は、前記算出された特徴指標または前記決定された官能評価値に関連する美容機器または化粧品に関する情報をさらに表示する、請求項9から11および15のいずれかに記載の官能評価装置。
【請求項17】
撮像装置と、
記憶素子および演算素子を含む制御装置と
表示装置と
前記記憶素子に記録され、前記演算素子によって実行可能なように構成されたプログラムと
を備え、
前記プログラムは、
(a)被検者の肌を含む画像を取得させ、
(b)前記画像から、肌領域を抽出し、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
(c)前記肌領域の前記単位ブロックごとに、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出し、
(d)前記肌領域の前記単位ブロックごとに、前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定し、
(e)前記単位ブロックごとに決定した肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて前記表示装置に表示させ、
前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、
前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、
前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、
肌の官能評価装置。

第4 取消理由通知に記載した取消理由
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?17に係る発明(以下順に「本件発明1」?「本件発明17」という。)に対して、当審が平成31年2月12日付けで特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。

(1)特許法第36条第6項第1号について
特許明細書等の記載として、上記第3の3(1)イで摘記した具体的な解決手段が記載されている特許明細書の記載の他に、本件発明の課題が記載されている、
「【0002】
美容分野において、肌の状態を測定する装置が求められている。たとえば、肌のシミやしわを測定する装置が実現されている。また、このような肌の物理的な特徴量だけではなく、肌の透明感といった官能評価値を測定する装置が求められている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法によって求められる透明感は、局所的な肌の透明度であり、たとえば、顔の頬全体等広い部分から求められるものではない。このため、例えば、顔全体を見たときに感じる肌の透明感とは一致しない場合がある。」を摘記した上で、本件発明は、対象者の肌の透明感の評価値を得ることを課題とし、シミ量、シワ量及び輝度レベルを測定、算出し、それらを用いて、予め複数の被検者の肌を評価して決定された官能評価値との相関関係に基づき、対象者の肌の官能評価値を決定することにより、上記課題を解決できるものであるといえるところ、本件発明1?17において、「少なくとも2つの特徴指標」が「シミ量、シワ量及び輝度レベル」と特定されておらず、「肌の官能評価値」が「肌の透明感の評価値」と特定されておらず、そして、「肌の透明感の評価値」を「予め複数の被検者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づ」いて決定することが特定されていない発明については、当該技術分野の技術常識を勘案しても、どのようにして対象者の肌の透明感の評価値が得られるのか理解できず、課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであることを指摘したものである。

(2)特許法第29条第1項第3号及び第2項について
甲第1号証:特開2003-187251号公報
甲第2号証:特開2006-142005号公報
甲第3号証:特開2007-252891号公報
証拠として、上記甲第1号証?甲第3号証(以下順に「甲1」?「甲3」という。)を提示した上で、本件発明1及び9は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1及び9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであること、そして、本件発明2?8及び10?17は、甲1に記載された発明、及び、甲1、甲2又は甲3に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2?8及び10?17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであることを指摘したものである。

2 甲号証の記載について
(1)甲1について
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は当審において付与した。
(甲1ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】対象者の身体の少なくとも一領域の美容分析を行う方法であって、
対象者の身体の一領域の少なくとも1つの画像を受信することと、
該少なくとも1つの画像で、少なくとも1つの肌、毛髪、または爪の状態を同定することと、
該少なくとも1つの画像から、少なくとも1つの肌、毛髪、または爪の状態についての少なくとも1つの表示を抽出することと、および
該少なくとも1つの表示を反映する情報を記憶することを含む方法。
・・・
【請求項8】前記対象者の身体の領域は、対象者の肌である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】前記対象者の身体の領域は、顔面の肌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】少なくとも1つの肌状態は、少なくとも1つのしわを含む、請求項8または9に記載の方法。」

(甲1イ)「【発明の実施の形態】以下では、添付図面に例示された本発明の特徴を詳細に説明する。可能な限り全図面にわたって同一または同様の部分には同一の参照番号を付した。本発明は、肌、毛髪、および爪の分析に関して特に有益であるが、前記の記述では、例示を目的として、肌の分析に関するものとした。
【0013】本発明の一実施形態は、肌の分析を実行する方法を含み得る。本発明によると、肌の分析は、肌状態の同定および/または定量化を含み得る。肌状態の例は、肌のきめ、弾力性、乾燥、セルライトの量、発汗、老化、しわ、黒色腫、脱皮、剥離、色の均一性、微小循環、てかり、柔らかさ、滑らかさ、保水性、皮脂生成、清潔さ、刺激性、赤色化、血管運動、血管拡張、血管収縮、色素沈着、そばかす、または肌に影響を及ぼす他のいかなる可視的状態も含み得る。
・・・
【0016】また本発明によれば、方法は、画像内で少なくとも1つの肌状態の同定を含み得る。この段階の実施例を図1のブロック52に図示した。肌状態は前述の1つ以上の状態であり得、画像処理技術で同定することができる。画像処理技術は、画像内で肌状態の1つ以上の発現を同定するように設計されたソフトウェアプログラム、コンピュータ、特定用途向け集積回路、電子装置、および/またはプロセッサを含み得る。画像処理分野の当業者に知られている多様な画像処理アルゴリズムを、顔面画像内で肌状態の1つ以上の発現を同定するために用いることができる。これらの技術は、例えば、図2に例示されているように、顔面の画像を処理し、分割された画像200を生成するソフトウェアを使用し得る。分割された画像200では、顔面の画像をどのように構成要素部分204に分割することができるかを示すために、破線202が用いられている。当業者に知られている画像認識技術は、しわ206および208のような状態を同定するために、構成要素部分204それぞれを分析することができる。
【0017】しわの同定に関して画像処理がどのように機能するかを視覚的に示す例を図3Aおよび図3Bに示す。図3Aは、対象者302の最初の顔面の画像300を示す。図示されているように、画像は、対象者の右頬領域306と左頬領域308、および対象者の右目領域307と左目領域309のしわを表している。図3Bでは、画像300は処理済みで、しわ306-309を線で同定し、この線の形状により同定したしわの輪郭を表すことができ、この線の強さによりしわの深さを表すことができる。図3Bでは同定を図示したが、最も広義には、本発明では図画による表示は必ずしも必要であるというわけではない。どちらかといえば、同定はプロセッサ内で行われる。そのようなプロセッサの例として、コンピュータ、特定用途向け集積回路、電子装置、および前述の方法で同定作業を行う任意の装置が挙げられる。」

(甲1ウ)「【0029】・・・しわの深さは、しわに関する肌状態を表す特徴である。非常なしわの深さは、可視的なしわが過度にあることを示す。上記では、例示した特徴の表示のように、影付き領域1102および線1202を使用したが、任意の印または可視的な手がかり、およびそれらの変形を代わりに使用してもよい。変形は、例えば、印また可視的な指標の色、重度、頻度および形状を含む。」

イ 甲1発明
上記(甲1ア)の特許請求の範囲及び(甲1イ)の特に下線部の記載から、甲1には、以下の発明が記載されている。
「対象者の顔面の肌である身体の少なくとも一領域の美容分析を行う方法であって、
対象者の顔面の肌である身体の一領域の少なくとも1つの画像を受信することと、
該少なくとも1つの画像で、少なくとも1つの肌の状態を同定することと、
該少なくとも1つの画像から、少なくとも1つの肌の状態についての少なくとも1つの表示を抽出することと、および該少なくとも1つの表示を反映する情報を記憶することを含む方法において、
上記少なくとも1つの肌状態は、少なくとも1つのしわを含むものであり、
上記顔面の画像を構成要素部分に分割し、その構成要素部分それぞれを分析することにより、しわ状態を同定するものであって、画像は、対象者の右頬領域と左頬領域、および右目領域と左目領域のしわを表しており、
しわ状態の同定は、線で同定し、この線の形状により同定したしわの輪郭を表すことができ、この線の強さによりしわの深さを表すことができる、
方法。」(以下「甲1発明」という。)

(2)甲2について
甲2には、以下の記載がある。
(甲2ア)「【0001】
この発明は、化粧品販売店などの店頭において、被検者である顧客の肌状態を診断するためのシステムに関する。」

(甲2イ)「【0071】
また、商品情報データベース19には、商品情報を記憶しているが、各商品に、その商品を用いるお手入れ方法を対応付けて記憶させるようにする。例えば、保湿用の化粧水や美容液は、「保湿」、美白用の商品は「美白」に分類する。さらに、各お手入れ法に、上記診断項目や中項目を対応付けて、その項目の評価点によって、商品を抽出するようにする。
例えば、上記第2位実施形態で説明した中項目を、図13に示すようにお手入れの観点から設定した場合、それぞれの中項目に商品を対応付けて、その対応テーブルを商品情報データベース19に記憶させておけば、中項目の評価点によって、肌状態の改善に必要な商品を自動的に抽出することができる。ただし、商品のブランドは年代別に用意されている場合が多いので、その場合には、上記対応テーブルを年代別に用意する必要がある。
【0072】
このようにすれば、顧客の肌状態に応じた手入れの方法や、商品情報など、この発明の美容情報を中央処理部13が抽出して、データ収集システム1の表示部3に表示させることもできる。店員が新人でも、ベテランと同じように、顧客にマッチした手入れ方法や、商品を説明することができる。」

(3)甲3について
甲3には、以下の記載がある。
(甲3ア)「【0001】
本発明は、肌の美しさの目視評価値を推定する技術に関し、さらに詳しくは、肌の性状値のフラクタル次元を指標として、肌の美しさの目視評価値を推定する技術に関する。」

(甲3イ)「【0052】
また、本発明の肌の美しさの目視評価値の推定装置は、肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段、該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段、予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段及び算出した目視評価値を表示する手段を含む。」

(甲3ウ)「【0058】
前記の39名の頬部写真について、肌画像より得たRGB値の各成分についてフラクタル次元を算出した。RGBの各成分の3軸より構成される3次元座標空間において各成分のフラクタル次元をプロットしたものを図9に示す。これより、RGBの3成分のフラクタル次元は、正の相関を有していることが分かる。
【0059】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値を目的変数とし、R、G、Bそれぞれを説明変数として回帰分析を行った。その結果、目視評価値とR、G、Bとの偏相関係数は、それぞれ0.835、0.877、0.896であり、高い相関を示した。
【0060】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値(y)を目的変数とし、RGBの3成分(x_(R)、x_(G)、x_(B))を説明変数として重回帰分析を行った。得られた重回帰式は、y=88.8*x_(R)-126.4*x_(G)-224.4*x_(B)-469.7、相関係数は0.907(P<0.01)であった。」

3 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号について
上記第2の1の「訂正の内容」で記載したように、訂正事項1-1、1-2及び1-3、訂正事項1-2、2-2及び3-2、並びに、訂正事項1-3、2-3及び3-3により、本件訂正発明1?17(ただし、削除された請求項4?6及び12?14に対応する本件訂正発明はない。)は、「少なくとも2つの特徴指標」が「シミ量、シワ量及び輝度レベル」と特定され、「肌の官能評価値」が「肌の透明感の評価値」と特定され、そして、「肌の透明感の評価値」を「あらかじめ複数の被検者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する」ことが特定されたことから、対象者の肌の透明感の評価値を得るという課題を解決できると認識できる範囲のものとなり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(2)特許法第29条第1項第3号及び第2項について
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
a 甲1発明の「対象者の顔面の肌である身体の一領域の少なくとも1つの画像を受信する」ことは、本件訂正発明1の「(a)」での「被検者の肌を含む画像を取得」することに相当し、甲1発明の「しわ」がある「対象者の右頬領域と左頬領域、および右目領域と左目領域」は、本件訂正発明1の「(b)」での「画像から」「抽出し」た「肌領域」に相当する。

b 甲1発明の「この線の形状により」「表す」「しわの輪郭」及び「この線の強さにより」「表す」「しわの深さ」は、本件訂正発明1の「(c)」での「算出」された「前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標」に相当する。

c 甲1発明の「しわの輪郭」と「しわの深さ」により「しわ状態」を「同定」することは、本件訂正発明1の「(d)」での「前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定」することに相当する。

d 甲1発明の「上記顔面の画像を構成要素部分に分割」することは、本件訂正発明1の「前記ステップ(b)において、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割」することに相当する。そして、甲1発明の「上記顔面の画像を構成要素部分に分割し、その構成要素部分それぞれを分析することにより、しわ状態を同定する」ことは、本件訂正発明1の「前記ステップ(c)および(d)において、前記単位ブロックごとに、前記少なくとも2つの特徴指標を算出し、前記肌の官能評価値を決定」することに相当する。

e 上記dを踏まえると、甲1発明の「少なくとも1つの画像から、少なくとも1つの肌の状態についての少なくとも1つ」を「抽出」して「表示」することは、本件訂正発明1の「(e)」での「前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて表示装置に表示」することに相当する。

f 以上a?eを踏まえると、甲1発明の「対象者の顔面の肌である身体の一領域の少なくとも1つの画像」から「対象者の顔面の肌である身体の少なくとも一領域の美容分析を行う方法」は、本件訂正発明1の「画像から肌の官能評価値を決定する評価方法」に相当する。

g 一致点・相違点
してみれば、本件訂正発明1と甲1発明とは、
(一致点)
「画像から肌の官能評価値を決定する評価方法であって、
(a)被検者の肌を含む画像を取得し、
(b)前記画像から、肌領域を抽出し、
(c)前記肌領域において、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出し、
(d)前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定し、 前記ステップ(b)において、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
前記ステップ(c)および(d)において、前記単位ブロックごとに、前記少なくとも2つの特徴指標を算出し、前記肌の官能評価値を決定し、
(e)前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて表示装置に表示する、
評価方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本件訂正発明では、少なくとも2つの特徴指標が「シミ量、シワ量及び輝度レベル」であり、肌の官能評価値が「肌の透明感の評価値」であり、そして、その「肌の透明感の評価値」を「あらかじめ複数の被検者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する」のに対し、
甲1発明では、「しわの輪郭」と「しわの深さ」により「しわ状態」を「同定」する点で相違する。

(イ)相違点の判断
上記相違点は実質的な相違点であり、上記2(2)及び(3)で記載したように甲2及び甲3には、「シミ量、シワ量及び輝度レベル」により「あらかじめ複数の被検者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて」「肌の透明感の評価値を」「決定する」ことについて記載も示唆もなく、甲1発明の「しわの輪郭」と「しわの深さ」により「しわ状態」を「同定」することを、「シミ量、シワ量及び輝度レベル」により「あらかじめ複数の被検者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて」「肌の透明感の評価値を」「決定する」ようにすることは当業者において容易になし得たことではない。

(ウ)小括
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明ではなく、かつ、甲1発明及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得た発明でもないことから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものでもない。

イ 本件訂正発明9、17について
上記第3で記載したように、本件訂正発明1は「評価方法」の発明であるのに対し、本件訂正発明9は「評価装置」、本件訂正発明17はさらにプログラム等を備えた「評価装置」であり、それらはいずれも甲1発明とは、少なくとも上記アの(ア)で記載した(相違点)の点で相違するものであり、その相違点に対する判断は、上記アの(イ)で述べたとおりである。
してみれば、本件訂正発明9は、甲1発明ではなく、かつ、甲1発明及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得た発明でもないことから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものでもない。また、本件訂正発明17は、甲1発明及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得た発明でないことから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

ウ 本件訂正発明2、3、7、8、10、11、15、16について
本件訂正発明2、3、7及び8は本件訂正発明1に従属し、本件訂正発明10、11、15及び16は本件訂正発明9に従属するものであるから、これらについても、甲1発明及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得た発明でないことから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を含む)によっては、訂正された請求項1?3、7?11及び15?17に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に訂正された請求項1?3、7?11及び15?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4?6及び12?14に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4?6及び12?14に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像から肌の官能評価値を決定する評価方法であって、
(a)被検者の肌を含む画像を取得し、
(b)前記画像から、肌領域を抽出し、
(c)前記肌領域において、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出し、
(d)前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定し、
前記ステップ(b)において、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
前記ステップ(c)および(d)において、前記単位ブロックごとに、前記少なくとも2つの特徴指標を算出し、前記肌の官能評価値を決定し、
(e)前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて表示装置に表示し、
前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、
前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、
前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、
評価方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、前記画像において、前記被検者の顔を検出し、
前記検出した顔の位置に基づき、前記画像上において、顔部品の領域を除外することによって前記肌領域を抽出する、
請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記ステップ(e)は、前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値に応じた色調または階調で前記単位ブロックの位置に関連づけて前記表示装置に表示する、
請求項2に記載の評価方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記相関関係は、重回帰分析により求められる請求項1に記載の評価方法。
【請求項8】
前記算出された特徴指標または前記決定された官能評価値に関連する美容機器または化粧品に関する情報を前記表示装置にさらに表示する、請求項1から3および7のいずれかに記載の評価方法。
【請求項9】
被検者の肌を含む画像を取得する撮像部と、
前記画像から、肌領域を抽出する肌領域抽出部と、
前記肌領域において、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出する特徴指標算出部と、
前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定する官能評価値決定部と、
表示部と
を備え、
前記肌領域抽出部は、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
前記特徴指標算出部は、前記単位ブロックごとに前記少なくとも2つの特徴指標を算出し、
前記官能評価値決定部は、前記単位ブロックごとに前記肌の官能評価値を決定し、
前記表示部は、前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて表示し、
前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、
前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、
前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、
官能評価装置。
【請求項10】
肌領域抽出部は、前記画像において、前記被検者の顔を検出し、
前記検出した顔の位置に基づき、前記画像上において、顔部品の領域を除外することによって前記肌領域を抽出する、
請求項9に記載の官能評価装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記単位ブロックごとに求めた肌の官能評価値を、前記官能評価値に応じた色調または階調で前記単位ブロックの位置に関連づけて表示する、
請求項10に記載の官能評価装置。
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】(削除)
【請求項15】
前記相関関係は、重回帰分析により求められる請求項9に記載の官能評価装置。
【請求項16】
前記表示部は、前記算出された特徴指標または前記決定された官能評価値に関連する美容機器または化粧品に関する情報をさらに表示する、請求項9から11および15のいずれかに記載の官能評価装置。
【請求項17】
撮像装置と、
記憶素子および演算素子を含む制御装置と
表示装置と
前記記憶素子に記録され、前記演算素子によって実行可能なように構成されたプログラムと
を備え、
前記プログラムは、
(a)被検者の肌を含む画像を取得させ、
(b)前記画像から、肌領域を抽出し、前記肌領域を複数の単位ブロックに分割し、
(c)前記肌領域の前記単位ブロックごとに、前記画像における特徴を示す少なくとも2つの特徴指標を算出し、
(d)前記肌領域の前記単位ブロックごとに、前記算出された少なくとも2つの特徴指標に基づいて、肌の官能評価値を決定し、
(e)前記単位ブロックごとに決定した肌の官能評価値を、前記単位ブロックの位置に関連づけて前記表示装置に表示させ、
前記少なくとも2つの特徴指標がシミ量、シワ量および輝度レベルであり、
前記肌の官能評価値が肌の透明感の評価値であり、
前記肌の透明感の評価値をあらかじめ複数の被験者の肌を評価して決定された肌の透明感の評価値との相関関係に基づいて決定する、
肌の官能評価装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-07-22 
出願番号 特願2015-523859(P2015-523859)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61B)
P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 121- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増渕 俊仁  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三木 隆
三崎 仁
登録日 2018-06-01 
登録番号 特許第6345176号(P6345176)
権利者 パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
発明の名称 肌の官能評価装置および肌の評価方法  
代理人 奥田 誠司  
代理人 奥田 誠司  

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