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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 発明同一 B32B |
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管理番号 | 1354943 |
異議申立番号 | 異議2018-700470 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-08 |
確定日 | 2019-07-24 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6252644号発明「包装材及びその製造方法、包装体並びに包装物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6252644号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5について訂正することを認める。 特許第6252644号の請求項1、3?5に係る特許を取り消す。 特許第6252644号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6252644号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成28年10月4日の出願であって、平成29年12月8日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報発行 平成29年12月27日)、その後、その特許について、平成30年6月8日に特許異議申立人磯崎紀雄(以下「申立人1」という。)により、また、平成30年6月21日に特許異議申立人成田隆臣(以下「申立人2」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされ、当審において平成30年10月1日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成30年11月29日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、平成31年1月9日に申立人1及び申立人2より意見書が提出され、さらに、当審において平成31年1月31日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、その指定期間内である平成31年3月25日に意見書の提出がされたものである。 第2 訂正の請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、特許第6252644号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層とを備え、前記接着性樹脂層は石油由来の低密度ポリエチレンを更に含むことができ、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は、前記植物由来のポリオレフィン樹脂と前記石油由来の低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して5質量部乃至100質量部の範囲内にあり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材。」と記載されているのを、 「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材。」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1又は2に記載の包装材を含んだ包装体。」と記載されているのを、 「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体。」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「請求項3に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。」と記載されているのを、 「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすることを含み、前記接着性樹脂層は石油由来の低密度ポリエチレンを更に含むことができ、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は、前記植物由来のポリオレフィン樹脂と前記石油由来の低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して5質量部乃至100質量部の範囲内にあり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材の製造方法。」と記載されているのを、 「植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで、一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次形成した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすることを含み、前記接着性樹脂層は、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材の製造方法。」と訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について ア.訂正事項1のうち、基材層について、訂正前は「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」とあったものを、「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」とする訂正は、「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」ことを更に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1のうち、接着性樹脂層について、訂正前に「植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層とを備え、前記接着性樹脂層は石油由来の低密度ポリエチレンを更に含むことができ、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は、前記植物由来のポリオレフィン樹脂と前記石油由来の低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して5質量部乃至100質量部の範囲内にあり」とあったものを、「植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる」とする訂正は、植物由来のポリオレフィン樹脂が、樹脂の合計100質量部に対して100質量部のものに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ.訂正事項1は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ.本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0083】?【0087】には、接着性樹脂層を「植物由来のポリオレフィン樹脂のみ」から構成したものが記載され、また、段落【0084】には、「基材層の一方の主面に、印刷層と接着層とを順次形成した。接着層は、アンカーコート剤である三井武田ケミカル株式会社製A3210を用いて形成した。」と記載されており、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、請求項2を引用しないものとした上で、訂正事項1により訂正された請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 また、訂正事項3は、訂正事項1について上記(1)で述べたものと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4が、請求項1又は2の記載を引用する請求項3を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、訂正事項1により訂正された請求項1を引用する請求項3について請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 また、訂正事項4は、訂正事項1について上記(1)で述べたものと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア.訂正事項5のうち、基材層について、訂正前は「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」とあったものを、「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」とする訂正は、「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」ことを更に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項5のうち、接着性樹脂層について、訂正前に「前記接着性樹脂層は石油由来の低密度ポリエチレンを更に含むことができ、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は、前記植物由来のポリオレフィン樹脂と前記石油由来の低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して5質量部乃至100質量部の範囲内にあり」とあったものを、「植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり」とする訂正は、植物由来のポリオレフィン樹脂が、樹脂の合計100質量部に対して100質量部のものに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ.訂正事項5は、上記のように、訂正前の請求項5の発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ.本件特許明細書の段落【0083】?【0087】には、接着性樹脂層を「植物由来のポリオレフィン樹脂のみ」から構成したものが記載され、また、段落【0084】には、「基材層の一方の主面に、印刷層と接着層とを順次形成した。接着層は、アンカーコート剤である三井武田ケミカル株式会社製A3210を用いて形成した。」と記載されており、訂正事項5は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (6)一群の請求項、別の訂正単位とする求めについて 訂正前の請求項3及び4は、訂正前の請求項1を引用するものであるが、訂正事項3及び4の引用関係の解消を目的とする訂正が認められ、当該訂正が認められる場合には、訂正後の請求項3及び4は、請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めるものであるから、訂正事項1?4の請求項1?4に係る訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項ごとにされたものであり、訂正後の請求項3及び4は請求項1とは別の訂正単位とされるものである。 3.訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体。 【請求項4】 一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。 【請求項5】 植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで、一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次形成した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすることを含み、前記接着性樹脂層は、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材の製造方法。」 第4 取消理由の概要 本件発明1、3?5に対して、当審が平成31年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 理由1)本件特許の本件発明1、3?5は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由2)本件特許の本件発明1、3?5は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願1又は特許出願2の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 《刊行物等一覧》 引用文献1:特開2001-179891号公報(申立人1が提出した甲第1号証) 引用文献2:特開2004-160824号公報(同じく甲第2号証) 引用文献3:特開2010-76795号公報(同じく甲第3号証) 引用文献4:特開2015-205719号公報(同じく甲第4号証) 引用文献5:特開2011-148197号公報(申立人2が提出した参考資料1) 引用文献6:特開2016-22668号公報(申立人2が提出した参考資料2) 引用文献7:特開2015-91655号公報(申立人2が提出した参考資料3) 特許出願1:特願2016-131893号(特開2018-1612号、申立人2が提出した甲第1号証) 技術資料:「東洋紡エステル○Rフィルム(PETフィルム)E5100(当審注:「○R」はRを○で囲んだもの)の資料」、[online]、東洋紡株式会社パッケージング事業総括部、2010年3月10日、インターネット<URL:http://www.toyobo.co.jp/seihin/film/package/pdf/ester_espet/E5100.pdf>(同じく甲第2号証) 特許出願2:特願2016-187127号(特開2018-51790号、同じく甲第3号証) 第5 当審の判断 1.特許出願1に基づく理由2(特許法第29条の2)に係る判断 (1)先願発明 ア.特許出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書A」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも、基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、 前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、 前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備えた積層体に関し、より詳細には、少なくとも、基材層と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とを備える積層体に関する。さらには、該積層体を備える包装製品および軟包装に関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明者らは、ポリオレフィン樹脂の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたバイオマスポリオレフィン(以下、単に「バイオマスポリオレフィン」ということがある)を含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン(以下、単に「化石燃料由来のポリオレフィン」ということがある)からなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。 【0008】 したがって、本発明の目的は、従来の化石燃料由来のポリオレフィンからなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と機械的特性等の物性面で遜色ない、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体を提供することである。」 (エ)「【0021】 <積層体> 本発明による積層体は、基材層と、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備えるものである。以下、熱可塑性樹脂層と表現した場合、第1の熱可塑性樹脂層を指すものとする。積層体は、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備えることで、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。 【0022】 本発明による該積層体は、上記の層以外に、印刷層、バリア層、プラスチックフィルム、接着層、第2の熱可塑性樹脂層等の他の層を少なくとも1層さらに有してもよい。その他の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。 【0023】 本発明による積層体について、図面を参照しながら説明する。本発明による積層体の模式断面図の例を図1?3に示す。 ・・・・ 図2に示される積層体20は、基材層11と、基材層11の一方の面上に、ポリオレフィン樹脂層12と、バリア層14と、熱可塑性樹脂層13とをこの順に備える。積層体20を備える軟包装の場合、熱可塑性樹脂層13が軟包装の内側に位置する。 ・・・・」 (オ)「【0024】 (基材層) 本発明において、基材層は、ポリオレフィン樹脂層を保持する基材層としての機能を果たすものであり、積層体に包装製品としての強度を付与できるものが好ましい。基材層としては、樹脂基材、好ましくはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド等の樹脂材料のプラスチックフィルムを用いることができ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。・・・・」 (カ)「【0034】 (ポリオレフィン樹脂層) 本発明において、ポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含むものであり、化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。ポリオレフィン樹脂層は、ポリオレフィン樹脂層全体に対して、5質量%以上100質量%以下のバイオマスポリオレフィンと0質量%以上95質量%以下の化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでもよく、・・・・ポリオレフィン樹脂層全体として、下記のバイオマス度を実現できればよい。本発明においては、ポリオレフィン樹脂層がバイオマスポリオレフィンを含むことで、従来に比べて化石燃料由来のポリオレフィンの量を削減し環境負荷を減らすことができる。 ・・・・ 【0039】 ポリオレフィン樹脂層は、5μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上60μm以下、より好ましくは15μm以上40μm以下の厚さを有するものである。ポリオレフィン樹脂層の厚さが上記範囲程度であれば、2層を接着させる機能を十分に果たすことができる。 ・・・・ 【0047】 本発明において、好適に使用されるバイオマスポリオレフィンとしては、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm^(3)、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)等が挙げられる。」 (キ)「【0075】 (印刷層) 印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、必要に応じて設けることができ、例えば、基材層に設けることができる。印刷層は、基材層の全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。」 (ク)「【0076】 (バリア層) バリア層は、無機物および/または無機酸化物からなるものであり、無機物もしくは無機酸化物の蒸着膜または金属箔からなるものが好ましい。・・・・ 【0081】 また、他の態様によれば、バリア層は、金属を圧延して得られた金属箔であってもよい。金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔が好ましい。」 (ケ)「【0084】 (接着層) ・・・・ 【0085】 また、接着層は、溶融押出しラミネート法によりポリオレフィン樹脂層や熱可塑性樹脂層などを積層する場合に、積層しようとする層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート層であってもよい。・・・・ 【0086】 また、接着層は、サンドラミネート法により2層を接着する場合や溶融押出しラミネート法に使用される接着樹脂層であってもよい。・・・・」 (コ)「【0091】 (用途) 本発明による積層体は、包装製品に使用することができ、包装製品としては、包装袋、ラミネートチューブ、蓋材等の軟包装に使用することが好ましい。包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。その場合の積層体の厚みは、用途に応じて、適宜決定することができ、例えば、30μm以上300μm以下、好ましくは35μm以上180μm以下の厚みのフィルムの形態で用いられる。」 (サ)「【0100】 [実施例3] <積層体4の作製> 基材層として化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)を用意し、そのコロナ処理面に2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングして、アンカーコート層を形成した。続いて、アンカーコート層上に、サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押出しながら、このポリオレフィン樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ15μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合わせた。続いて、該アルミニウム箔上に、2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングして、アンカーコート層を形成した。続いて、アンカーコート層上に化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC600A、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:7.0g/10分、バイオマス度:0%)を320℃の樹脂温度、ライン速度100m/分で溶融押出しラミネートし、熱可塑性樹脂層(バイオマス度:0%、厚さ30μm)を形成して、基材層、アンカーコート層、ポリオレフィン樹脂層、バリア層、アンカーコート層、熱可塑性樹脂層が順に積層された積層体4を得た。」 (シ)「【0109】 [製造例1?11] <包装袋の作製> 下記表1に記載の胴部材用積層体(側面シート)と底部材用積層体(底面シート)を組み合わせて、以下の工程によりスタンディングパウチを形成した。具体的には、2枚の側面シートを、熱可塑性樹脂層が最内層となるように側面シート同士を対向させて重ね合わせると共に、2枚の側面シートの間に底面シートを挿入し、側面シートおよび底面シートをヒートシールして、図4に示す形態のスタンディングパウチ1?11を作製した。 【0110】 (液漏れ試験) 上記で作製したスタンディングパウチ1?11に試験液(エージレスシールチェック(三菱ガス化学社製))を充填し、常温常湿で1時間保存した後、液漏れを下記の評価基準にて目視で評価した。・・・・」 イ.先願明細書Aに記載された「積層体」は、上記記載(コ)より、包装製品に使用されるものであり、上記記載(キ)より、積層体の基材層には印刷層を設けることができるものである。そして、上記記載(サ)より、先願明細書Aには、次の「先願発明A1」が記載されている。 「化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)の基材層に、2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングしてアンカーコート層を形成し、このアンカーコート層上に、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押出し、このポリオレフィン樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ15μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合わせ、基材層には印刷層が設けられた、包装製品に使用される積層体。」 ウ.また、先願明細書Aには、「先願発明A1の積層体を使用した包装製品」の発明(以下「先願発明A3」という。)も記載されている。 エ.また、先願明細書Aの上記記載(サ)によれば、積層体を使用して包装製品であるスタンディングパウチを形成し、その中に内容物である試験液を充填することが記載されていることから、先願明細書Aには、「先願発明A1の積層体を使用した包装製品と、これに収容された内容物とを含んだ物品」の発明(以下「先願発明A4」という。)も記載されている。 オ.また、先願明細書Aには、包装製品に使用される積層体の製造方法について、次の「先願発明A5」も記載されている。 「基材層として化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)を用意し、そのコロナ処理面に2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングしてアンカーコート層を形成し、続いて、アンカーコート層上に、サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押出しながら、このポリオレフィン樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ15μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合わせ、基材層には印刷層が形成された、包装製品に使用される積層体の製造方法。」 (2)本件発明1について ア.本件発明1と先願発明A1を対比する。 先願発明A1の「化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)」は、上記技術資料(申立人2が提出した甲第2号証(「東洋紡エステル○R(当審注:○の中にRの文字)フィルム(PETフィルム)E5100 東洋紡エステル○Rフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主原料とした二軸延伸フィルムです。」))に示すように、特許出願1の出願時において、二軸延伸フィルムであることは周知の事項であることから、先願発明A1の「化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)」に「2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングしてアンカーコート層を形成」し、「印刷層が設けられた」「基材層」と、本件発明1の「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」とは、「印刷層とアンカーコート剤層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」という限りにおいて一致する。 また、先願発明A1の「アルミニウム箔」は、本件発明1の「アルミニウム箔からなるバリア層」に相当し、先願発明A1の「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)」の「ポリオレフィン樹脂層」は、「基材層」と「アルミニウム箔」の間に配置され、2層を接着させる機能を果たすもの(先願明細書Aの段落【0039】)であるから、本件発明1の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」と「アルミニウム箔からなるバリア層」の間に介在して接着する、「植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる」「植物由来の低密度ポリエチレン」の「接着性樹脂層」に相当するものである。 そして、先願発明A1の「積層体」は、「包装袋、ラミネートチューブ、蓋材等」の包装製品(上記記載(コ))に使用される包装材料であり、本件発明1の「包装材」に相当する。 イ.そうすると、本件発明1と先願発明A1とは、 「印刷層とアンカーコート剤層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材。」で一致し、次の相違点A1で相違する。 《相違点A1》 本件発明1の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」のに対し、先願発明A1の基材層は、印刷層とアンカーコート層を有するものではあるものの、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次有するものであるか否か不明である点。 ウ.上記相違点A1について検討する。 先願発明A1の積層体は、基材層に印刷層とアンカーコート層を有し、アンカーコート層を介してポリオレフィン樹脂層を積層するものであるが、アンカーコート層が、基材層などの下地に対して接着層などの他の層を積層する際に、下地と他の層との接合強度を増すために下地表面に設けられるものであることからすると、アンカーコート層は接着層にあたるポリオレフィン樹脂層に接して設けられ、印刷層の配置位置については、基材層とアンカーコート層の間か、基材層のアンカーコート層が設けられる面とは逆の面側のいずれかとなることが明らかである。 そして、この配置位置のいずれを選択するかは、積層体の積層強度等の機械的特性や、印刷層の見映え等を考慮して決定される事項であるが、印刷層を基材層とアンカーコート層の間に設け、基材層の一方の面に印刷層とアンカーコート層の順に設けることは、次の引用文献5?7に示すように周知技術である。 ・引用文献5:特開2011-148197号公報 「【0037】 (実施例1)基材11として厚さが12μmの2軸延伸PETフィルムを用い、緑インキ(DICグラフィックス社製、ウレタン系「CLIOS」緑インキ)と、銀インキ(DICグラフィックス社製、ウレタン系「CLIOS」銀インキ)を用いて、グラビア印刷で、2cm×4cmの大きさで、重ね刷りして緑インキ層(着色インキ層13)と銀インキ層(銀色インキ層14)を形成した。 この銀色インキ層14面へポリエチレンイミン系のアンカコート剤を塗布し乾燥させ、第1ポリオレフィン系樹脂層15となるLDPE15μmを溶融押出しし、所謂ポリサンド法で、金属層17となる厚さが9μmのアルミニウム箔と積層した。・・・・」 ・引用文献6:特開2016-22668号公報 「【0032】 次に、図2(b)に示すように、フィルム基材1に印刷法により印刷インキ層2を形成した面上に、アンカーコート剤を塗布、乾燥してアンカーコート層3を形成する。・・・・ 【0033】 次に、図2(c)に示すように、前記アンカーコート層3とアルミニウム基材5との間に、Tダイから熱可塑性樹脂からなる第1接着性樹脂層4を押出して両者を積層する。・・・・」 ・引用文献7:特開2015-91655号公報 「【0028】 〔実施例1〕 透明基材層10として厚さ20μmの片面コロナ処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、蒸着フィルム層12として片面に厚さ40nmのアルミニウム蒸着層を有する厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(VMPET)、熱可塑性樹脂層11としてエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、接着層15として低密度ポリエチレン(LDPE)、熱接着性樹脂層13として厚さ20μmの片面コロナ処理された無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を準備した。 ・・・・ 【0030】 〔実施例2〕 実施例1の積層体のOPPの代わりに厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、VMPETの換わりに厚さ7μのアルミニウム箔(AL)を用い、<PET12μm/印刷層/AC/EMAA20μm/AL7μm/AC/LDPE15μm/CPP20μm>なる構成の図5に示すような積層体1’を得た。」 エ.一方、本件発明1の「基材層」が「印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」ことに関して、本件特許明細書には、「基材層11の主面には、印刷層を更に設けてもよい。印刷層は、基材層11の主面のうち、接着性樹脂層12との接着面に設けてもよく、その裏面に設けてもよい。」(段落【0015】)、「先ず、基材層11とバリア層13を準備し、基材層11の一方の主面にアンカーコート剤を塗布して接着層を形成する。」(段落【0069】)、「この基材層の一方の主面に、印刷層と接着層とを順次形成した。接着層は、アンカーコート剤である三井武田ケミカル株式会社製A3210を用いて形成した。」(段落【0084】)と記載されているが、「基材層」が「印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」ことにより奏される効果について、特に記載されているものではない。 そして、先願発明A1の基材層も、印刷層とアンカーコート層を有することから、それらの層を備えることによる効果を奏するものであり、上記相違点A1に係る相違により、本件発明1が、新たな効果を奏するものとはいえない。 そうすると、上記相違点A1に係る相違は、周知技術の単なる付加に係るものであって、新たな効果を奏するものでもないから、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 オ.この点、特許権者は、平成31年3月25日の意見書(11頁)において、本件発明1は高いラミネート強度を示し、かつ高いラミネート強度を維持するという新たな効果を奏するものであり、先願発明にはない新たな効果を奏するものであるから、本件発明1と先願発明との相違点が課題解決のための具体的手段における微差とはいえない旨主張する。 しかし、上述(1.(2)イ.)のように、本件発明1と先願発明A1との相違点A1は、「基材層」が「印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」ことであり、本件特許明細書においては、この相違点A1の構成を備えるか否かで、ラミネート強度の向上とその強度が経時的に維持されることについて記載されておらず、特許権者の上記主張は、本件特許明細書の記載に基づくものではなく、当を得たものとはいえない。 カ.よって、本件発明1は、先願発明A1と実質的に同一である。 (3)本件発明3について 本件発明3と先願発明A3を対比すると、両者は、 「印刷層とアンカーコート剤層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体。」で一致し、次の相違点A3で相違する。 《相違点A3》 本件発明3の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」のに対し、先願発明A3の基材層は、印刷層とアンカーコート層を有するものではあるものの、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次有するものであるか否か不明である点。 しかし、上記1.(2)で述べた理由と同様に、上記相違点A3に係る相違は、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明3は、先願発明A3と実質的に同一である。 (4)本件発明4について 本件発明4と先願発明A4を対比すると、両者は、 「印刷層とアンカーコート剤層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。」で一致し、次の相違点A4で相違する。 《相違点A4》 本件発明4の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」のに対し、先願発明4の基材層は、印刷層とアンカーコート層を有するものではあるものの、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次有するものであるか否か不明である点。 しかし、上記1.(2)で述べた理由と同様に、上記相違点A4に係る相違は、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明4は、先願発明A4と実質的に同一である。 (5)本件発明5について 本件発明5と先願発明A5を対比する。 先願発明A5の「化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)」は、上記技術資料(申立人2が提出した甲第2号証)に示すように、特許出願1の出願時において、二軸延伸フィルムであることは周知の事項であることから、先願発明A5の「化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:E5100、厚さ12μm)」に「2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングしてアンカーコート層を形成」し、「印刷層が形成された」「基材層」と、本件発明5の「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次形成した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」とは、「印刷層とアンカーコート剤層が形成された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層」という限りにおいて一致し、先願発明A5の「アルミニウム箔」は、本件発明5の「アルミニウム箔からなるバリア層」に相当する。 また、先願発明A5の「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)」の「ポリオレフィン樹脂層」は、「基材層」と「アルミニウム箔」の間に配置され、「基材層」と「アルミニウム箔」を「貼り合わせ」るものであるから、本件発明5の「植物由来のポリオレフィン樹脂のみ」からなる「植物由来の低密度ポリエチレン」の「接着性樹脂層」に相当し、先願発明A5の基材層に「サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押出しながら、このポリオレフィン樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ15μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合わせ」ることは、本件発明5の「植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで」、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすること」に相当する。 そして、先願発明A5の「積層体」は、「包装袋、ラミネートチューブ、蓋材等」の包装製品(上記記載(コ))に使用される包装材料であり、本件発明1の「包装材」に相当する。 イ.そうすると、本件発明5と先願発明A5とは、 「植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで、印刷層とアンカーコート剤層を形成した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすることを含み、前記接着性樹脂層は、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材の製造方法。」で一致し、次の相違点A5で相違する。 《相違点A5》 本件発明5の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次形成した」ものであるのに対し、先願発明A5の基材層は、印刷層とアンカーコート層が形成されているものの、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次形成したものであるか否か不明である点。 ウ.しかし、上記1.(2)で述べた理由と同様に、上記相違点A5に係る相違は、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明5は、先願発明A5と実質的に同一である。 (6)特許出願1に基づく理由2についてのまとめ 本件発明1、3?5は、それぞれ先願発明A1、A3?A5と実質的に同一であるから、本件発明1、3?5は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 2.特許出願2に基づく理由2(特許法第29条の2)に係る判断 (1)先願発明 ア.特許出願2の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書B」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体であって、 印刷層が、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、かつ、接着層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含む、積層体。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体に関し、より詳細には、基材層およびシーラント層の少なくともいずれか1層がバイオマス由来成分を含み、かつ、印刷層および接着層の少なくともいずれか1層がバイオマス由来成分を含む積層体に関する。さらには、該積層体を備える包装製品に関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 従来、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体において、印刷層は化石燃料由来の材料により形成されており、積層体全体のバイオマス度を低下させる原因であった。そのため、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体において、積層体全体のバイオマス度をより高めることが求められている。 【0009】 本発明者らは、少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体において、印刷層および接着層の両方をバイオマス由来成分を含む材料により形成することで、積層体全体のバイオマス度をより高められるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。 【0010】 したがって、本発明の目的は、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体であって、バイオマス度がより高められた積層体を提供することである。」 (エ)「【0022】 <積層体> 本発明による積層体は、少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層されたものである。・・・・ 【0026】 本発明による積層体について、図面を参照しながら説明する。本発明による積層体の模式断面図の例を図1?2に示す。 ・・・・ 図2に示される積層体20は、基材層11と、印刷層12と、接着層13と、バリア層15、第2の基材層16、接着層13と、シーラント層14とをこの順に備える。」 (オ)「【0027】 [基材層] 基材層はプラスチックフィルムである。・・・・ 【0038】 基材層は2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。・・・・ 【0042】 基材層がバイオマス由来成分を含まない材料により形成する場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム・・・・などのプラスチックフィルムを用いることができる。・・・・」 (カ)「【0044】 [印刷層] 印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。・・・・」 (キ)「【0057】 [接着層] 接着層は、積層体を構成するいずれか2層、例えば、印刷層とシーラント層とを接着する機能を果たす層である。接着層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを用いて形成することができる。 【0058】 バイオマスポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレン等のオレフィンを含むモノマーの重合体である。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のオレフィンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。・・・・ 【0067】 本発明において、好適に使用されるバイオマスポリオレフィンとしては、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm^(3)、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:SLL118、密度:0.916g/cm^(3)、MFR:1.0g/10分、バイオマス度87%)等が挙げられる。 【0068】 接着層は、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上100%以下のバイオマス度を有するものである。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。」 (ク)「【0076】 [バリア層] 本発明による積層体は、バリア層をさらに備えてもよい。バリア層は、無機物および/または無機酸化物からなるものであり、無機物もしくは無機酸化物の蒸着膜または金属箔からなるものが好ましい。・・・・ 【0081】 また、他の態様によれば、バリア層は、金属を圧延して得られた金属箔であってもよい。金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔が好ましい。」 (ケ)「【0090】 <用途> 本発明による積層体は、包装製品に使用することができ、包装製品としては、包装袋、ラミネートチューブ、蓋材、シート成形品、ラベル材料等が挙げられる。」 (コ)「【0092】 [実施例1] <積層体1の作製> 基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールを用いて製膜した二軸延伸されたポリエステルフィルム1(バイオマス度:20%、東洋紡社製、DE035、厚さ12μm)を準備した。・・・・」 (サ)「【0094】 [実施例2] <積層体3の作製> 基材層としてポリエステルフィルム1(バイオマス度:20%、厚さ12μm)上に、主剤としてバイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールと硬化剤として化石燃料由来のポリイソシアネートとを含み、着色剤(酸化チタン)をさらに添加したバイオマス由来のインキを用いて印刷層(バイオマス度25%、乾燥後の重量2g/m^(2))を形成した。続いて、印刷層上に、サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押し出しながら、この接着層(バイオマス度95%、厚さ13μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合せた。続いて、アルミニウム箔上に、サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押し出しながら、この接着層(バイオマス度95%、厚さ13μm)を介して、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(バイオマス度16%、厚さ50μm)を貼り合わせて、基材層、印刷層、接着層、バリア層、第2の接着層、およびシーラント層が順に積層された積層体3を得た。」 イ.先願明細書Bには、上記記載からみて、包装製品に使用される積層体について、次の「先願発明B1」が記載されている。 「化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールを用いて製膜した二軸延伸されたポリエステルフィルム1(バイオマス度:20%、厚さ12μm)の基材層上に、バイオマス由来のインキを用いて印刷層(バイオマス度25%、乾燥後の重量2g/m^(2))を形成し、印刷層上に、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押し出し、この接着層(バイオマス度95%、厚さ13μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合せた、包装製品に使用される積層体。」 ウ.また、先願明細書Bには、「先願発明B1の積層体を使用した包装製品」の発明(以下「先願発明B3」という。)も記載されている。 エ.また、先願明細書B(段落【0090】)には、上記先願発明B3の包装製品を、包装袋やラミネートチューブ等に用いることが記載されており、このような包装袋やラミネートチューブは、内容物を収容した物品として流通されることが一般的であるから、先願明細書Bには、「先願発明B1の積層体を使用した包装製品と、これに収容された内容物とを含んだ物品」の発明(以下「先願発明B4」という。)も記載されているものといえる。 オ.また、先願明細書Bには、包装製品に使用される積層体の製造方法について、次の「先願発明B5」も記載されている。 「化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールを用いて製膜した二軸延伸されたポリエステルフィルム1(バイオマス度:20%、厚さ12μm)の基材層上に、バイオマス由来のインキを用いて印刷層(バイオマス度25%、乾燥後の重量2g/m^(2))を形成し、続いて、印刷層上に、サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押し出しながら、この接着層(バイオマス度95%、厚さ13μm)を介して、アルミニウム箔(東洋アルミ社製、1N30、厚さ7μm)を貼り合せた、包装製品に使用される積層体の製造方法。」 (2)本件発明1について ア.本件発明1と先願発明B1を対比すると、先願発明B1の「化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールを用いて製膜した二軸延伸されたポリエステルフィルム」は、テレフタル酸とエチレングリコールが重合したものがポリエチレンテレフタレートであることは技術常識であることから、本件発明1の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレート」に相当するものである。 また、先願発明B1の「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm^(3)、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)」の「接着層」は、本件発明1の「植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる」「植物由来の低密度ポリエチレン」の「接着性樹脂層」に相当する。 そうすると、本件発明1と先願発明B1とは、 「印刷層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材。」で一致し、次の相違点B1で相違する。 《相違点B1》 本件発明1の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」のに対し、先願発明B1の基材層は、印刷層を有するものの、アンカーコート層は有しておらず、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次有するものではない点。 イ.上記相違点B1について検討する。 先願発明B1の積層体は、包装袋等の包装製品に使用されるものであるところ、液体等の内容物を収容して、商品として流通させることができるように、積層体の積層強度等の機械的特性の向上が求められることは明らかである。この積層体の積層強度を向上させるために、基材層などの下地に、アンカーコート層を介して接着層などの他の層を積層することが広く行われており、上記相違点B1に係る基材層上の印刷層の上からアンカーコート層を設けることも、上記1.(2)ウ.で述べたように、引用文献5?7に記載される周知技術である。 一方、本件発明1の「基材層」が、「アンカーコート剤層」を有し、「印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」ことにより奏される効果について、本件特許明細書には、格別、記載されておらず、上記相違点B1に係る相違により、本件発明1が、新たな効果を奏するものとはいえない。 ウ.そうすると、上記相違点B1に係る相違は、周知技術の単なる付加に係るものであって、新たな効果を奏するものでもないから、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明1は、先願発明B1と実質的に同一である。 (3)本件発明3について 先願明細書Bには、「先願発明B1の積層体を使用した包装製品」の発明(以下「先願発明B3」という。)も記載されている。 本件発明3と先願発明B3を対比すると、両者は、 「印刷層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体。」で一致し、次の相違点B3で相違する。 《相違点B3》 本件発明1の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」のに対し、先願発明B1の基材層は、印刷層を有するものの、アンカーコート層は有しておらず、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次有するものではない点。 しかし、上記2.(2)で述べた理由と同様に、上記相違点B3に係る相違は、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明3は、先願発明B3と実質的に同一である。 (4)本件発明4について 先願明細書B(段落【0090】)には、上記先願発明B3の包装製品を、包装袋やラミネートチューブ等に用いることが記載されており、このような包装袋やラミネートチューブは、内容物を収容した物品として流通されることが一般的であるから、先願明細書Bには、「先願発明B1の積層体を使用した包装製品と、これに収容された内容物とを含んだ物品」の発明(以下「先願発明B4」という。)も記載されているものといえる。 本件発明4と先願発明B4を対比すると、両者は、 「印刷層を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。」で一致し、次の相違点B4で相違する。 《相違点B4》 本件発明1の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する」のに対し、先願発明B1の基材層は、印刷層を有するものの、アンカーコート層は有しておらず、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次有するものではない点。 しかし、上記2.(2)で述べた理由と同様に、上記相違点B4に係る相違は、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明4は、先願発明B4と実質的に同一である。 (5)本件発明5について 本件発明5と先願発明B5を対比すると、両者は、 「植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで、印刷層を形成した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすることを含み、前記接着性樹脂層は、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材の製造方法。」で一致し、次の相違点B5で相違する。 《相違点B5》 本件発明5の「基材層」が「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次形成した」ものであるのに対し、先願発明B5の基材層は、印刷層が形成されているものの、アンカーコート層は形成されておらず、一方の主面に印刷層とアンカーコート層とを順次形成したものではない点。 しかし、上記2.(2)で述べた理由と同様に、上記相違点B5に係る相違は、機械的特性等の要求を満たす積層体を形成するための具体化手段における微差にすぎないものである。 よって、本件発明5は、先願発明B5と実質的に同一である。 (6)特許出願2に基づく理由2についてのまとめ 本件発明1、3?5は、それぞれ先願発明B1、B3?B5と実質的に同一であるから、本件発明1、3?5は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 3.理由1(特許法第29条第2項)に係る判断 (1)引用文献6に記載された事項及び発明 ア.引用文献6には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 フィルム基材の一方の面に、アンカーコート層、第1接着性樹脂層、アルミニウム基材、第2接着性樹脂層、ヒートシール樹脂層を順次積層してなるアルミニウム基材積層体であって、前記第2接着性樹脂層が変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物からなることを特徴とするアルミニウム基材積層体。 ・・・・ 【請求項4】 請求項1または2に記載の前記積層体を用いて製造されたことを特徴とする包装体。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、有機酸に対して優れた耐性を有するアルミニウム基材積層体、及び有機酸を含有する内容物を収容したときも、ラミネート強度の経時的劣化が生じない長期保存できる包装体の提供を目的とする。」 (ウ)「【0030】 本発明は、フィルム基材1の一方の面に、アンカーコート層3、第1接着性樹脂層4、アルミニウム基材5、第2接着性樹脂層6、ヒートシール樹脂層7を順次積層してなるアルミニウム基材積層体10であって、前記第2接着性樹脂層6が変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物からなることを特徴とするアルミニウム基材積層体である。なお、本発明に係るアルミニウム基材積層体10は、必要に応じて前記フィルム基材1に印刷インキ層2を形成することで印刷柄による意匠性を付与することが出来る。以下、印刷による意匠性を付与した構成について説明する。 ・・・・ 【0032】 次に、図2(b)に示すように、フィルム基材1に印刷法により印刷インキ層2を形成した面上に、アンカーコート剤を塗布、乾燥してアンカーコート層3を形成する。・・・・ 【0033】 次に、図2(c)に示すように、前記アンカーコート層3とアルミニウム基材5との間に、Tダイから熱可塑性樹脂からなる第1接着性樹脂層4を押出して両者を積層する。なお、上記で説明したアンカーコート層3の形成と第1接着性樹脂層4の形成とをインラインで行うこともできる。」 (エ)「【0037】 <実施例1> 厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製:E5100)の一方の面に、ポリブタジエン系のアンカーコート剤(東洋インキ社製:EL451)をグラビアロールコート法にて、乾燥後の塗布量が0.2g/m^(2)となるように塗布、乾燥してアンカーコート層を形成した。 【0038】 次に、上記アンカーコート層と厚さ7μmのアルミニウム箔(東洋アルミ社製:1N30)とを、押出し法により厚さ15μmで低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)を第1接着性樹脂層として押出して積層した。」 (オ)「【0056】 上記の結果から、本発明により有機酸を含有する内容物を長期保存できるアルミニウム基材積層体及び包装体を提供することができる。 【産業上の利用可能性】 【0057】 本発明のアルミニウム基材積層体は、発酵食品や揮発性成分を有する医薬品、トイレタリー関連商品などの包装に利用でき、特に詰め替え用のスタンディングパウチに好適である。」 (カ)図2(c)からは、フィルム基材1の一方の面に、印刷インキ層2、アンカーコート層3、第1接着性樹脂層4、アルミニウム基材5の順に積層された積層体が看取できる。 イ.上記記載から、引用文献6には、次の「引用発明1」が記載されている。 「フィルム基材1の一方の面に、印刷インキ層2、アンカーコート層3、第1接着性樹脂層4、アルミニウム基材5の順に積層された積層体であって、フィルム基材1は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製:E5100)、第1接着性樹脂層4は低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)、アルミニウム基材5は厚さ7μmのアルミニウム箔(東洋アルミ社製:1N30)からなる、積層体。」 ウ.また、引用文献6の段落【0056】には、引用発明1の積層体を用いて包装体を構成することが記載されており、引用文献6には、「引用発明1の積層体を用いた包装体」の発明(以下「引用発明3」という。)も記載されている。 エ.また、引用文献6の段落【0057】には、引用発明1の積層体を、発酵食品や医薬品等の内容物の包装に利用することが記載されており、引用文献6には、「引用発明1の積層体を用いた包装体と、発酵食品や医薬品等の内容物を収容した包装物品」の発明(以下「引用発明4」という。)も記載されている。 オ.また、引用文献6には、以下の製造方法に係る「引用発明5」も記載されている。 「厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製:E5100)の一方の面に、印刷法により印刷インキ層2を形成し、その面上に、ポリブタジエン系のアンカーコート剤(東洋インキ社製:EL451)をグラビアロールコート法にて、塗布、乾燥してアンカーコート層を形成し、次に、該アンカーコート層と厚さ7μmのアルミニウム箔(東洋アルミ社製:1N30)とを、押出し法により厚さ15μmで低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)を第1接着性樹脂層として押出して積層する、積層体の製造方法。」 (2)本件発明1について ア.本件発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「フィルム基材1」、「印刷インキ層2」、「アンカーコート層3」、「アルミニウム基材5」は、それぞれ、本件発明1の「基材層」、「印刷層」、「アンカーコート剤層」、「バリア層」に相当する。 また、引用発明1の「第1接着性樹脂層4」と、本件発明1の「接着性樹脂層」とは、「接着性の樹脂層」という限りにおいて一致する。 そして、引用発明1の「積層体」は、有機酸を含有する内容物を収容する包装体用いられるものであり(引用文献6の上記記載(イ))、本件発明1の「包装材」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1とは、「一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在する接着性の樹脂層とを備えた、包装材。」で一致し、次の相違点1で相違する。 《相違点1》 アンカーコート剤層とバリア層の間に介在させる接着性の樹脂層の材料について、本件発明1が植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、この植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンであるのに対し、引用発明1は低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)のみであるものの、植物由来のものではない点。 イ.この相違点1について検討する。 包装体に使用する積層体の材料を選定するにあたり、積層体が十分なラミネート強度と経時耐久性を備えるとともに、地球温暖化防止や石油使用量の低減は、当業者が考慮すべき課題であり、当業者は、これらの要件を満たし得る材料を、比較検討して、適宜、選択し得るものである。 この点、引用文献4には、以下のように、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂からなる接着樹脂層3及び接着層5が、バリア層4のアルミニウム箔などの金属箔や内側熱可塑性樹脂層6の樹脂層に対して接着し得ることが記載されている。 「【0020】 ・・・・液体用紙容器101を製函するのに用いる積層体100は、図1の断面図のように、液体用紙容器の外面側から、外側熱可塑性樹脂層1、紙層2、接着樹脂層3、バリア層4、接着層5、内側熱可塑性樹脂層6が、順次積層されている。・・・・ ・・・・ 【0025】 接着樹脂層3にも、外側熱可塑性樹脂層1と同様に、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂が用いられている。・・・・ 【0026】 バリア層4には、基材フィルムにアルミニウム箔などの金属箔が積層された積層フィルム、あるいは、基材フィルムにアルミニウム、スズなどの金属や、シリカ、アルミナなどの金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムが用いられる。 ・・・・ 【0028】 ・・・・アルミニウム箔や、蒸着層は、積層するとき、接着樹脂層3側にしても、反対側にしてもよい。 【0029】 接着層5は、押し出し樹脂層であってもよいし、また、ラミネート用接着剤層であってもよい。押し出し樹脂としては、接着樹脂層3と同様に、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を用いることができる。・・・・ 【0030】 内側熱可塑性樹脂層6は、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂に、低結晶性ゴム成分を、低密度バイオマスポリエチレン樹脂の重量に対する比率で10?60重量%添加した混合樹脂からなっている。」 これらのことからすれば、引用発明1のアンカーコート層とアルミニウム基材との間の接着性樹脂層の材料について、引用文献4に記載された植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を選択することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。 ウ.特許権者は、平成31年3月25日の意見書(8頁下から3行?9頁1行)において、本件発明1で使用する植物由来の低密度ポリエチレンが、従来の石油由来の低密度ポリエチレンでは得られない高いラミネート強度を示し、かつ、高いラミネート強度を維持し得るという当業者が予測できない顕著な効果を奏するものである旨を主張する。 しかし、上記3.(2)イ.で述べたように、引用文献4には、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂が、金属箔や樹脂層との接着に用いられ得ることが記載されており、このことは、形成された積層体が、容器の包装体として使用し得る強さのラミネート強度と、経時的にその維持が可能であることを示すものである。 そのため、当業者であれば、引用発明1の接着性樹脂層の材料として、引用文献4の植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を選択することにより、形成された積層体が、容器の包装体として使用し得る強さのラミネート強度と、その維持が可能であるとの効果を奏することを、予測し得るものであり、本件発明1が奏する効果を、当業者が予測できない顕著な効果とすることはできない。 エ.よって、本件発明1は、引用発明1及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3について 本件発明3と引用発明3を対比すると、両者は、 《相違点2》 アンカーコート剤層とバリア層の間に介在させる接着性の樹脂層の材料について、本件発明3が植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、この植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンであるのに対し、引用発明3は低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)のみであるものの、植物由来のものではない点。 しかし、上記3.(2)で述べた理由と同様に、引用発明3のアンカーコート層の樹脂とアルミニウム基材のアルミニウム箔との間の接着性樹脂層の材料について、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を選択することは、当業者が容易に想到し得たものといえるから、本件発明3は、引用発明3及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について 本件発明4と引用発明4を対比すると、両者は、 《相違点3》 アンカーコート剤層とバリア層の間に介在させる接着性の樹脂層の材料について、本件発明4が植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、この植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンであるのに対し、引用発明4は低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)のみであるものの、植物由来のものではない点。 しかし、上記3.(2)で述べた理由と同様に、引用発明4のアンカーコート層の樹脂とアルミニウム基材のアルミニウム箔との間の接着性樹脂層の材料について、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を選択することは、当業者が容易に想到し得たものといえるから、本件発明4は、引用発明4及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明5について ア.本件発明5と引用発明5を対比すると、両者は、次の相違点4及び相違点5で相違する。 《相違点4》 アンカーコート剤層とバリア層の間に介在させる接着性の樹脂層の材料について、本件発明5が植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、この植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンであるのに対し、引用発明5は低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製:L417)のみであるものの、植物由来のものではない点。 《相違点5》 本件発明5が、接着性樹脂層を間に挟んで、基材層とバリア層とをサンドイッチラミネーションするのに対し、引用発明5は、サンドイッチラミネーションするか否か特定されていない点。 イ.上記相違点4については、上記3.(2)で述べた理由と同様に、引用発明5のアンカーコート層の樹脂とアルミニウム基材のアルミニウム箔との間の接着性樹脂層の材料について、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を選択することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。 ウ.また、上記相違点5についても、積層体の各層の接合方法は、接合強度等を考慮して、適宜、選択されるものであるところ、基材層とバリア層とを、接着性樹脂層を間に挟んで、サンドイッチラミネーションにより接合することは、引用文献1(段落【0019】)や引用文献7(段落【0029】)に記載されているように周知技術であり、種々の接合方法の中から、サンドイッチラミネーションによる接合方法を選択して、引用発明5の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとアルミニウム箔との接合方法に用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。 エ.よって、本件発明5は、引用発明5、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献1、7に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)理由1についてのまとめ 本件発明1は、引用発明1及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、また、本件発明3は、引用発明3及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、また、本件発明4は、引用発明4及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、また、本件発明5は、引用発明5、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献1、7に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3?5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本件発明1、3?5は、特許法第29条第2項の規定及び特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1、3?5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件訂正請求に係る訂正により、請求項2は削除されたため、請求項2に係る特許に対して申立人1及び2がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体。 【請求項4】 一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層と、アルミニウム箔からなるバリア層と、前記基材層と前記バリア層との間に介在し、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなる接着性樹脂層とを備え、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材を含んだ包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。 【請求項5】 植物由来のポリオレフィン樹脂を含んだ接着性樹脂層を間に挟んで、一方の主面に印刷層とアンカーコート剤層とを順次形成した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材層とアルミニウム箔からなるバリア層とをサンドイッチラミネーションすることを含み、前記接着性樹脂層は、植物由来のポリオレフィン樹脂のみからなり、前記植物由来のポリオレフィン樹脂は植物由来の低密度ポリエチレンである包装材の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-06-14 |
出願番号 | 特願2016-196314(P2016-196314) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZAA
(B32B)
P 1 651・ 161- ZAA (B32B) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 増田 亮子、阿川 寛樹、河島 拓未 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 横溝 顕範 |
登録日 | 2017-12-08 |
登録番号 | 特許第6252644号(P6252644) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 |
発明の名称 | 包装材及びその製造方法、包装体並びに包装物品 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 鵜飼 健 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 鵜飼 健 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |