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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F |
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管理番号 | 1354948 |
異議申立番号 | 異議2018-700274 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-04-02 |
確定日 | 2019-07-31 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6205887号発明「樹脂微粒子とその製造方法、および負電荷現像用トナーとその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6205887号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6205887号の請求項1及び4に係る特許を取り消す。 特許第6205887号の請求項2及び5に係る特許を維持する。 特許第6205887号の請求項3についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6205887号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成25年6月19日に特許出願され、平成29年9月15日にその特許権の設定登録がされ、同年10月4日に特許掲載公報が発行され、その後、平成30年4月2日に、特許異議申立人 田中 眞喜子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 特許異議申立て後の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 6月 6日付け:取消理由通知 同年 8月 1日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求 同年 8月 6日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 同年 9月 5日 :申立人による意見書の提出 (参考資料1を添付) 同年11月 2日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年11月28日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求 同年12月 3日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 同年12月28日 :申立人による意見書の提出 (参考資料2及び3を添付) 平成31年 3月14日付け:取消理由通知(決定の予告) 平成31年3月14日付けの取消理由(決定の予告)に対して、特許権者から応答はなかった。 なお、平成30年8月1日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 特許異議申立書に添付された証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:月ヶ瀬あずさ、中村 浩「ソープフリーエマルション重合法による単分散PMMA粒子合成における粒子径の精密制御」、高分子論文集、2006、第63巻、第4号、p.266-272 甲第2号証:特開平10-207114号公報 甲第3号証:「2011年版 15911の化学商品」、化学工業日報社、2011年1月25日、p.723-724 平成30年9月5日に提出された意見書に添付された参考資料1は、以下のとおりである。 参考資料1:特公平2-3172号公報 平成30年12月28日に提出された意見書に添付された参考資料2及び3は、以下のとおりである。 参考資料2:「プラスチック素材辞典」ホームページ(https://www.plastics-material.com/ps/)平成30年12月27日アクセス 参考資料3:特開昭60-186854号公報 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成30年11月28日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなり、該共重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有する樹脂微粒子であって、 前記水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である、樹脂微粒子。」 とあるのを、 「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃であるラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなり、該共重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有する負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子であって、 前記水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法であって、 非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水とからなる水分散体を共重合する、樹脂微粒子の製造方法。」 とあるのを、 「請求項1に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法であって、 非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体のガラス転移温度が60?180℃である前記ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水とからなる水分散体を共重合する、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1に記載の樹脂微粒子を含む、負電荷現像用トナー。」 とあるのを 「請求項1に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を含む、負電荷現像用トナー。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「請求項2または3に記載の樹脂微粒子の製造方法により樹脂微粒子を製造し、その樹脂微粒子を添加する、負電荷現像用トナーの製造方法。」 とあるのを 「請求項2に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法により負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を製造し、その樹脂微粒子を添加する、負電荷現像用トナーの製造方法。」 に訂正する。 本件訂正前の請求項2?5は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1?5は一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、「ラジカル重合性単量体」に関し「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である」と限定し、「樹脂微粒子」に関し「負電荷現像用トナーに用いる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書等」という。)には、「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である」ことが記載され(請求項3、【0015】)、また、「樹脂微粒子」を負電荷現像用トナーに用いることが記載されている(請求項4、5及び明細書全体、特に【0006】、【0046】?【0063】)から、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、ラジカル重合性単量体に関し「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である」と限定し、「樹脂微粒子」に関し「負電荷現像用トナーに用いる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等には、「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である」ことが記載され(請求項3、【0015】)、また、「樹脂微粒子」を負電荷現像用トナーに用いることが記載されている(請求項4、5及び明細書全体、特に【0006】、【0046】?【0063】)から、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、「樹脂微粒子」に関し「負電荷現像用トナーに用いる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等には、「樹脂微粒子」を負電荷現像用トナーに用いることが記載されている(請求項4、5及び明細書全体、特に【0006】、【0046】?【0063】)から、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項2または3を引用していたのを、訂正事項3により請求項3が削除されたことに伴い、請求項3を引用しないこととし、また、「樹脂微粒子」に関し「負電荷現像用トナーに用いる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等には、「樹脂微粒子」を負電荷現像用トナーに用いることが記載されている(請求項4、5及び明細書全体、特に【0006】、【0046】?【0063】)から、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 したがって、上記訂正事項1?5は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められたので、特許第6205887号の請求項1?5に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。(以下、「本件発明1」等という。また、総称して「本件発明」ということがある。) 【請求項1】 非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃であるラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなり、該共重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有する負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子であって、 前記水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子。 【請求項2】 請求項1に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法であって、 非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である前記ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水とからなる水分散体を共重合する、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法。 【請求項3】 [削除] 【請求項4】 請求項1に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を含む、負電荷現像用トナー。 【請求項5】 請求項2に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法により負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を製造し、その樹脂微粒子を添加する、負電荷現像用トナーの製造方法。 第4 当審の判断(その1) 1 平成31年3月14日付けの取消理由通知(決定の予告)について (1)平成31年3月14日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりのものである。 「本件発明1及び4は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた先願3の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲若しくは図面(以下、「先願3の明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は、同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 先願3:特願2012-76996号(特開2013-203986号)」 「(1)先願3の明細書等に記載された発明 先願3の明細書等には、【0075】?【0083】、【0095】から、以下の発明が記載されていると認められる。 特に実施例5から 「ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液16質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3200質量部に溶解させ、さらにメタクリル酸イソブチル240質量部及びメタクリル酸t-ブチル560質量部を供給して分散液を調製し、得られた分散液中に、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム4質量部を添加し、乳化重合を行い、その後、スプレードライで乾燥させ、得られた重合塊をジェットミルで解砕して得た、平均粒子径0.11μmの、電子写真トナー用外添剤に好適に用いられる樹脂粒子。」(以下、「先願3-1発明」という。) 特に実施例7から、 「ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液16質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3200質量部に溶解させ、さらにスチレン800質量部を供給して分散液を調製し、得られた分散液中に、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム4質量部を添加し、乳化重合を行い、その後、スプレードライで乾燥させ、得られた重合塊をジェットミルで解砕して得た、平均粒子径0.11μmの、電子写真トナー用外添剤に好適に用いられる樹脂粒子。」(以下、「先願3-2発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と先願3-1発明とを対比する。 先願3-1発明の、「p-スチレンスルホン酸ナトリウム」は、本件発明1の「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム」である、「スルホン酸基を有する反応性乳化剤」に相当する。 先願3-1発明の、「ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩」、「メタクリル酸イソブチル」及び「メタクリル酸t-ブチル」は、いずれも本件発明1の「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)」に相当する。 先願3-1発明の、「ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液16質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3200質量部に溶解させ、さらにメタクリル酸イソブチル240質量部及びメタクリル酸t-ブチル560質量部を供給して」調製した「分散液」は、本件発明1の「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム」である「スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体」に相当し、当該「分散液」は、非反応性乳化剤を含まない。 先願3-1発明の「乳化重合を行い、その後、スプレードライで乾燥させ、得られた重合塊をジェットミルで解砕して得た」「樹脂粒子」は、スプレードライによる乾燥及びジェットミルによる解砕を経ても、重合により得られた共重合体からなるといえるから、本件発明1の「共重合した共重合体からな」る「樹脂」「粒子」に相当する。 してみると本件発明1と先願3-1発明とは、 「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンエトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなる樹脂粒子。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1> 「樹脂粒子」について、本件発明1では、「樹脂微粒子」であるのに対して、先願3-1発明では、平均粒子径0.11μmの「樹脂粒子」である点。 <相違点2> 本件発明1では、共重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有するのに対して、先願3-1発明ではこの点についての特定がない点。 <相違点3> 「水分散体」について、本件発明1では、水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%であるのに対して、先願3-1発明では、「分散液」は、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液16質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム4質量部、メタクリル酸イソブチル240質量部、メタクリル酸t-ブチル560質量部を含む点。 <相違点4> 樹脂粒子の用途について、本件発明1では、「負電荷現像用トナーに用いる」のに対して、先願3-1発明では、「電子写真トナー用外添剤に好適に用いられる」点。 <相違点5> 「ラジカル重合性単量体」について、本件発明1では、「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である」のに対して、先願3-1発明では、ガラス転移温度についての規定がない点。 上記相違点1ないし5について検討する。 <相違点1>について 本件特許明細書の【0024】には、「樹脂微粒子の平均粒子径は、0.01?1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.05?0.7μmである。」と記載されているところ、先願3-1発明の「平均粒子径0.11μm」は、上記の「より好まし」い範囲に包含されるから、先願3-1発明の「樹脂粒子」も、「樹脂微粒子」であるといえる。 してみると、相違点1は、実質的な相違点ではない。 <相違点2>について 本件特許明細書の【0019】?【0023】の記載からみて、重合開始剤として、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなどのペルオキソ二硫酸塩を用いると、樹脂微粒子は、共重合体の少なくとも一方の末端にペルオキソ二硫酸塩に由来する硫酸基を有するものと解される。 これに対して、先願3-1発明では、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いているから、先願3-1発明の樹脂粒子も、重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有するとみるのが自然である。 してみると、相違点2は、実質的な相違点ではない。 <相違点3>について 先願3-1発明の「分散液」における、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルの含有量の合計を100質量%としたときの、p-スチレンスルホン酸ナトリウムの含有量、及び、 ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、メタクリル酸イソブチル、及び、メタクリル酸t-ブチルの含有量は、以下のとおりである。 <<p-スチレンスルホン酸ナトリウム>> [4/(4+16×0.25+240+560)]×100=0.5質量% <<ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル>> [(16×0.25+240+560)/(4+16×0.25+240+560)]×100=99.5質量% これら「0.5質量%」、「99.5質量%」の値はそれぞれ「0.1?10質量%」、「90?99.9質量%」の範囲に包含される。 よって、相違点3は実質的な相違点ではない。 <相違点4>について 本件特許明細書の【0002】?【0006】の記載からみて、本件発明1の「現像用トナー」は、電子写真法において用いられるものを包含すると解される。 また、本件特許明細書の【0038】の記載からみて、本件発明1の「トナーに用いる」とは、トナーの外添剤として用いることを包含すると解される。 一方、先願3-1発明の樹脂粒子は、電子写真トナー用外添剤に好適に用いられるものであり、また、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム由来のアニオン基を含むことから、負帯電性を有するものといえる。 してみると、先願3-1発明の「電子写真トナー用外添剤」に好適に用いられることは、本件発明1の「負電荷現像用トナー」に用いることと、実質的に相違しない。 よって、相違点4は実質的な相違点ではない。 <相違点5>について 先願3-1発明の樹脂粒子を構成する単量体の、共重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下のとおり計算される。 <<ガラス転移温度の計算>> 共重合体におけるポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルの含有量はそれぞれ、4質量部、240質量部、560質量部であり、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の含有量は、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルの含有量に比してごく少量であること、メタクリル酸イソブチルの重合体のガラス転移温度は48℃、メタクリル酸t-ブチルの重合体のガラス転移温度は107℃であること、及びFoxの式(本件特許明細書【0017】、【0018】)から、以下のとおり計算される。 1/(Tg+273.5)=(0.3/(48+273.5)+0.7/(107+273.5) より、Tg≒87℃ してみると、先願3-1発明において、ラジカル重合性単量体の共重合体のガラス転移温度は「60?180℃」の範囲に包含される。 よって、相違点5は実質的な相違点ではない。 以上のとおりであるから、本件発明1と先願3-1発明とは同一である。 (イ)本件発明1と先願3-2発明とを対比する。 先願3-2発明は、メタクリル酸イソブチル240質量部とメタクリル酸t-ブチル560質量部でなく、スチレンを800質量部使用した点でのみで、先願3-1発明と相違する。 そして、スチレンは、本件発明1の「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)」に相当し、その重合体のガラス転移温度100℃は、「60?180℃」の範囲に包含される。 このことと、上記aで述べたものと同様の理由により、本件発明1と先願3-2発明とは同一である。 イ 本件発明4について 本件発明4は、本件発明1の樹脂微粒子を含む、負電荷現像用トナーに係る発明である。 これに対して、先願3-1発明及び先願3-2発明の「樹脂粒子」が、本件発明1の「樹脂微粒子」と同一であることは上記アで述べたとおりである。 また、先願3-1発明及び先願3-2発明の樹脂粒子は、「電子写真トナー用外添剤」に好適に用いられるのであるから、先願3の明細書等には、先願3-1発明及び先願3-2発明の樹脂粒子を含む「電子写真トナー」も実質的に記載されているといえる。 そして、そのような「電子写真トナー」は、上記ア(ア)の<相違点4>についての検討で述べたものと同様の理由により、「負電荷現像用トナー」であるといえる。 してみると、本件発明4は、先願3の明細書等に記載された発明と実質的に同一である。」 (2)当審は、上記平成31年3月14日付けの取消理由通知(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件発明1および4に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。 第5 当審の判断(第4で検討した取消理由以外の取消理由について) 1 平成30年11月2日付けの取消理由通知(決定の予告)について (1)当審において通知した、平成30年11月2日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由のうち、第4で検討したもの以外の取消理由の概要は、以下のとおりである。 ア 本件特許の請求項1及び4に係る発明は、下記の引用文献4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由1’」という)。 イ 本件特許の請求項2及び5に係る発明は、下記の引用文献4に記載された発明と引用文献4の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由2’」という)。 引用文献4:米国特許第6190820号明細書 (2) 当審の判断 ア 取消理由1’について (ア)引用文献4に記載された発明 引用文献4には、請求項1、17欄62行?21欄14行の記載から、以下の発明が記載されていると認められる。 「950gの脱イオン水、7.9gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(開始剤)、3.2gの4-スチレンスルホン酸ナトリウム塩を含む水相に、500gのスチレン、133gのブチルアクリレート、9.5gのアクリル酸、7.9gのドデカンチオール-DDT(連鎖移動剤)を含む油相を添加して乳化相を得、乳化重合して得た、粒径150nmの、トナーに用いる、スチレン-ブチルアクリレート-アクリル酸-スチレンスルホン酸ナトリウム樹脂粒子。」(以下、「引用文献4-1発明」という。) (イ)対比・判断 a 本件発明1について 本件発明1と引用文献4-1発明とを対比する。 引用文献4-1発明の「4-スチレンスルホン酸ナトリウム塩」は、本件発明1の「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム」である「スルホン酸基を有する反応性乳化剤」に相当する。 引用文献4-1発明の「スチレン」、「ブチルアクリレート」及び「アクリル酸」は、本件発明1の「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)」に相当する。 引用文献4-1発明の「乳化相」を乳化重合して得た「スチレン-ブチルアクリレート-アクリル酸-スチレンスルホン酸ナトリウム樹脂」は、「共重合体」である点で、本件発明1の「共重合体」と一致する。 引用文献4-1発明の「樹脂粒子」は、本件発明1の「樹脂微粒子」と、「樹脂粒子」である点で一致する。 引用文献4-1発明の「950gの脱イオン水、7.9gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(開始剤)、3.2gの4-スチレンスルホン酸ナトリウム塩を含む水相に、500gのスチレン、133gのブチルアクリレート、9.5gのアクリル酸、7.9gのドデカンチオール-DDT(連鎖移動剤)を含む油相を添加して」得た乳化相は、水相に油相を添加して形成された乳化相であるから、「水分散体」であると解され、これは、非反応性乳化剤を含まない。そして、当該「乳化相」における「4-スチレンスルホン酸ナトリウム塩」、「スチレン」、「ブチルアクリレート」及び「アクリル酸」の合計を100質量%としたときの、「4-スチレンスルホン酸ナトリウム塩」の含有量と、「スチレン」、「ブチルアクリレート」及び「アクリル酸」 の合計の含有量はそれぞれ、0.5(質量%)と99.5(質量%)であり、いずれも、本件発明1の「反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたとき」の「反応性乳化剤の含有量」である「0.1?10質量%」及び「ラジカル重合性単量体」の含有量である「90?99.9質量%」の範囲にそれぞれ包含される。 してみると、本件発明1と引用文献4-1発明とは、 「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなる樹脂粒子であって、前記水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である樹脂粒子。」 である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点6> ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度について、本件発明1では「60?180℃」であるのに対して、引用文献4-1発明では、この点についての規定がない点。 相違点6について検討する。 本件明細書の【0017】には、「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度は、下記式(i)に示されるFoxの式から求められる値である。」と記載されているから、当該式(i)を用いて、引用文献4-1発明のガラス転移温度を計算すると以下のとおりになる。(スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸のホモポリマーのガラス転移温度をそれぞれ、100℃、-54℃、106℃として計算)。 <<ガラス転移温度の計算>> 1/(Tg+273.15) ={0.78/(100+273.15)}+{0.21/(-54+273.15)}+{0.01/(106+273.15)} から、 Tg≒52.7℃ 「52.7℃」のガラス転移温度は「60?190℃」の範囲にはない。 ここで、引用文献4には、引用文献4-1発明の「スチレン-ブチルアクリレート-アクリル酸-スチレンスルホン酸ナトリウム樹脂粒子」のTgが57.5℃であったことが記載されている(第18欄15?21行)。当該Tgの値は、「スチレンスルホン酸ナトリウム」をも含む「樹脂粒子」のTgであるし、Foxの式で求められたものではないから、本件発明1の「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度」に相当すると直ちにいえるものではないが、仮に当該Tgが、本件発明1の「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度」に相当するものであっても、「57.5℃」のガラス転移温度は、「60?190℃」の範囲にない。 よって、相違点6は、実質的な相違点であり、本件発明1は、引用文献4-1発明ではない。 b 本件発明4について 本件発明4は、本件発明1の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を含む負電荷現像用トナーに係るものである。 そして、本件発明1が、引用文献4-1発明でないことは上記aで述べたとおりであり、上記aで述べたものと同様の理由により、本件発明4は、引用文献4に記載された発明ではない。 (ウ)以上のとおりであるから、取消理由1’は、理由がない。 イ 取消理由2’について (ア)引用文献4に記載された発明 引用文献4には、請求項1、17欄62行?21欄14行から、以下の発明が記載されていると認められる。 「引用文献4-1発明の、スチレン-ブチルアクリレート-アクリル酸-スチレンスルホン酸ナトリウム樹脂粒子を製造する方法であって、950gの脱イオン水、7.9gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(開始剤)、3.2gの4-スチレンスルホン酸ナトリウム塩を含む水相に、500gのスチレン、133gのブチルアクリレート、9.5gのアクリル酸、7.9gのドデカンチオール-DDT(連鎖移動剤)を含む油相を添加して乳化相を得、乳化重合する方法。」(以下、「引用文献4-2発明」という。) (イ)対比・判断 a 本件発明2について 本件発明2と引用文献4-2発明とを、上記ア(イ)aで述べたものと同様に対比すると、両者は、 「樹脂粒子の製造方法であって、非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水を含む水分散体を共重合する、樹脂粒子の製造方法。」 である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点7> 本件発明2は、請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法であり、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃であるのに対して、引用文献4-2発明は、引用文献4-1発明の、スチレン-ブチルアクリレート-アクリル酸-スチレンスルホン酸ナトリウム樹脂粒子を製造する方法であり、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸の重合体のガラス転移温度が規定されていない点。 相違点7について検討する。 本件発明2は、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度を60?180℃として、トナー同士がブロッキングするのを抑制し、トナーの保存性を向上させようとするものであると解され(【0015】)、ガラス転移温度が上記範囲内にあるものは、保存性に優れていることが具体的なデータで示されている(【0060】の表1、実施例1、3?5と実施例6との比較)。 これに対して、引用文献4-2発明のスチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸の重合体のガラス転移温度は、上記ア(イ)aで述べたものと同様にして52.7℃と概算されるところ、引用文献4のいずれの箇所をみても、引用文献4-2発明のガラス転移温度を、60?180℃にすることは、記載も示唆もされていない。 そうであれば、引用文献4-2発明において、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸の重合体のガラス転移温度を60?180℃として、トナー同士がブロッキングするのを抑制し、トナーの保存性を向上させることは、何ら動機づけられない。 してみると、相違点7に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明2は、引用文献4-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 b 本件発明5について 本件発明5は、本件発明2の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法により負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を製造し、その樹脂微粒子を添加する、負電荷現像用トナーの製造方法に係るものである。 そして、本件発明2が、引用文献4-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは上記aで述べたとおりであり、上記aで述べたものと同様の理由により、本件発明5は、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)以上のとおりであるから、取消理由2’は理由がない。 ウ ア及びイについての、申立人の主張について 平成30年12月28日に提出された意見書において、申立人は以下の主張をする。 トナーの保存性を向上させるために、外添剤としてトナーの表面に付着させて使用する樹脂微粒子のガラス転移温度を高い温度に設計することは、当業者であれば技術常識であり、その程度のガラス転移温度(60?180℃)を有する樹脂微粒子を外添剤として用いることは周知技術である。 また、引用文献4-1発明では、Tg57.5℃であり、これを60℃に変更したからといって格別な効果が得られているとは到底考えられるものではない。 上記主張について検討する。 引用文献4には、引用文献4-1発明のスチレン-ブチルアクリレート-アクリル酸-スチレンスルホン酸ナトリウム樹脂粒子を、トナーの外添剤に用いることについては記載されていないから、仮に、トナーの保存性を向上させるために、外添剤としてトナーの表面に付着させて使用する樹脂微粒子のガラス転移温度を高い温度に設計することが技術常識であり、60?180℃の程度のガラス転移温度を有する樹脂微粒子を外添剤として用いることは周知技術であったとしても、このことにより、引用文献4-1発明において、共重合体のガラス転移温度を60?180℃として、トナー同士がブロッキングするのを抑制し、トナーの保存性を向上させることは、何ら動機づけらない。 また、引用文献4に記載された「57.5℃」のTgが、本件発明1の「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度」に相当すると直ちにいえるものではないことは上記ア(イ)aで述べたとおりであるが、仮に当該Tgが、本件発明1の「ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度」に相当するものであっても、これを「60?180℃」の範囲内にすることについて、何らの動機づけも見出せない。 よって、上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、取消理由1’及び2’は、いずれも理由がない。 2 平成30年6月6日付けの取消理由通知について (1)当審において通知した、平成30年6月6日付けの取消理由通知の概要は、以下のとおりのものである。 ア 本件請求項2、3及び5についての特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由1”」という)。 イ 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由2”」という。)。 ウ 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(「以下、取消理由3”」という)。 (2)当審の判断 ア 取消理由1”について (ア)取消理由1”は、具体的には、請求項2の、「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と」、「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水とからなる水分散体」が、「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と」、「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水」のみからなることを意味するのか、「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と」、「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水」を含むことを意味するのか不明であるから、請求項2とこれを引用する請求項3及び5は、明確でないというものである。 (イ)これに対して、平成30年8月1日に提出された意見書で、「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水とからなる水分散体」は、不可避的不純物を除けば、これらのみからなるものである旨の主張がされた。 そして、本件特許明細書に記載される実施例1、3?6では、水分散体は、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、ラジカル重合性単量体と、ペルオキソ二硫酸塩と水のみからなる。また、本件発明2の「水分散体」が、特定の反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体と、ペルオキソ二硫酸塩と、水以外のものを含有するとする格別の根拠もない。 してみると、請求項2の上記記載は、水分散体が、特定特定の反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体と、ペルオキソ二流酸塩と、水のみからなるということを意味するとみるのが妥当である。 よって、請求項2は明確であり、同様に、請求項2を引用する請求項5も明確である。 また、本件訂正の訂正事項3により請求項3は削除された。 (ウ)以上のとおりであるから、取消理由1”は理由がない。 イ 取消理由通知2”及び3”について (ア)甲1に記載された発明、及び、甲1及の記載事項 甲1には、267頁左欄4?33行から、以下の発明が記載されていると認められる。 「水/メタノールの混合溶媒であって、メタノール濃度が0wt%である溶媒中で、メタクリル酸メチルモノマー160.19gと、パラスチレンスルホン酸ナトリウム1.65gと、開始剤として過硫酸カリウムを混合し、ソープフリー重合して製造された、PMMA粒子。」(以下、「甲1-1発明」という。) 「甲1-1発明のPMMA粒子の製造方法であって、水/メタノールの混合溶媒であって、メタノール濃度が0wt%である溶媒へ、メタクリル酸メチルモノマー160.19gと、1mol/L KOH水溶液3.19gと、リン酸二水素カリウム0.44gを入れ、反応温度を65℃に上昇させ、N_(2)ガスでパージしながらかくはんし、そこへ20gの水に溶解させた過硫酸カリウム0.65gとパラスチレンスルホン酸ナトリウム1.65gを添加し、引き続き反応させてPMMA粒子を製造する方法。」(以下、「甲1-2発明」という。) さらに、甲1には、以下の記載がある。 a-1 「ポリマー粒子は樹脂改質材料,塗料,インキ,接着剤用の添加剤,フィルム用原料などに用いられているが,最近では医療,情報,エレクトロニクスなどさまざまな分野で使用されている.診断検査用担体,液晶スペーサー,導電性粒子などがその例で,これらへの応用には粒子径が制御され,さらに粒子径のばらつきがないいわゆる単分散なポリマー粒子が要求されている.」(266頁左欄2?8行) (イ)対比・判断 a 本件発明1について 本件発明1と甲1-1発明とを対比する。 甲1-1発明の「メタクリル酸メチルモノマー」及び「パラスチレンスルホン酸ナトリウム」は、それぞれ、本件発明1の、「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)」及び「p-ベンゼンスルホン酸ナトリウム」である「スルホン酸基を有する反応性乳化剤」に相当し、甲1発明の「PMMA粒子」は、「メタクリル酸メチルモノマー」と「パラスチレンスルホン酸ナトリウム」を重合した共重合体からなるから、本件発明1の「共重合体からな」る「樹脂」「粒子」に相当する。 甲1-1発明の「水/メタノールの混合溶媒であって、メタノール濃度が0wt%である溶媒中で、メタクリル酸メチルモノマー160.19gと、パラスチレンスルホン酸ナトリウム1.65gと、開始剤として過硫酸カリウムを混合」したものは、水分散体であり、これは、「ソープフリー重合」されるものであって、非反応性乳化剤を含まない。 甲1-1発明における「パラスチレンスルホン酸ナトリウム」と「メタクリル酸メチルモノマー」の合計を100質量%としたときの「パラスチレンスルホン酸ナトリウム」及び「メタクリル酸メチルモノマー」の含有量は、それぞれ、1.0質量%及び99.0質量%と計算され、それぞれ、本件発明1の、水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときの、反応性乳化剤の含有量「0.1?10質量%」及びラジカル重合性単量体の含有量「90?99.9質量%」の範囲に包含される。 してみると、本件発明1と甲1-1発明とは、 「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、pービニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなり、水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である樹脂粒子。」 である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点8> 本件発明1の「樹脂」「粒子」は、「負電荷現像用トナーに用いる」ものであるのに対して、甲1-1発明においてはこの点についての規定がない点。 相違点8について検討する。 甲1-1発明では、PMMA粒子を負電荷現像用トナーに用いることについては規定されていないのだから、相違点8は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1-1発明ではない。 次に、上記相違点8に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。 本件発明1は、負帯電性に優れるトナーが得られる樹脂微粒子を提供することを課題とし(【0006】)、少なくとも一方の末端に硫酸基を有しかつ少なくとも一方の末端以外の部分に反応性乳化剤由来のスルホン酸基を有するため、樹脂微粒子表面に硫酸基とスルホン酸基とが配向し、その結果、トナーの負帯電性が向上するという知見(【0025】)に基づき、樹脂微粒子を負電荷現像用トナーに用いるものとしたと解される。 これに対して、甲1-1発明は、開始剤として過硫酸カリウムを使用し、メタクリル酸メチルモノマーとともにパラスチレンスルホン酸ナトリウムを重合させるものであるから、甲1-1発明のPMMA粒子は、少なくとも一方の末端に硫酸基を有しかつ少なくとも一方の末端以外の部分に反応性乳化剤由来のスルホン酸基を有するという構造を備えるとも解されるものの、甲1には、当該特定の構造について、何ら着目する記載はないし、当該PMMA粒子を負電荷現像用トナーに用いることについても、何ら記載も示唆もされていない。 そうであれば、甲1-1発明において、PMMA粒子が有する特定の構造に着目して、これを負電荷現像用トナーに用いるようにすることは、何ら動機づけられない。 よって、上記相違点8に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 b 本件発明2について 本件発明2と、甲1-2発明とを対比する。 本件発明2は、本件発明1の樹脂微粒子の製造方法であるのに対して、甲1-2発明は、甲1-1発明のPMMA粒子の製造方法であり、上記aで述べたものと同様の理由により、本件発明2は、甲1-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 c 本件発明3について 本件訂正の訂正事項3により、請求項3は削除された。 (ウ)(ア)及び(イ)についての、申立人の主張について 平成30年9月5日に提出された意見書において、申立人は以下の主張をする。 甲1では、トナー用途そのものである、情報、エレクトロニクスの分野にも使用できることが記載されており、負電荷現像用トナー用途を排除するものではない。そして、本件特許の出願時において、甲1に記載される、MMAとNaPSSのような反応性乳化剤とをソープフリーエマルション重合して得られた粒子が、負電荷現像用トナーに使用できることは、当業者にとっては技術常識である。したがって、出願当時の技術常識を参酌すれば、甲1-1発明の粒子を「負電荷現像用トナー」に用いる動機付けは容易に生じるものである。 上記主張について検討する。 確かに甲1には、情報、エレクトロニクスの分野が記載されている(記載事項a-1)が、これらの記載が、トナーとしての用途について記載または示唆していると解する根拠は何らなく、ましてや、負電荷現像用トナーとしての用途を記載または示唆していると解することはできない。 そして、仮に本件特許の出願時において、MMAとNaPPSのような反応性乳化剤とをソープフリーエマルション重合して得られた粒子が、負電荷現像用トナーに使用できることが技術常識であったとしても、甲1には、診断検査用担体、液晶スペーサー、導電性粒子などの負電荷現像用トナー以外の用途が例示されているにとどまり(記載事項a-1)、上記甲1の記載によって、甲1-1発明のPMMA粒子を負電荷現像用トナーに用いることが何ら動機づけられるものではない。 よって、上記主張は採用できない。 (エ)以上のとおりであるから、取消理由2”及び3”はいずれも理由がない。 第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立書において、申立人は以下の主張をする。 本件発明1?5は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「申立理由1」という)。 2 申立理由1について検討する。 (1)甲2に記載された発明 甲2には、【0006】、【0019】?【0021】、【0024】?【0026】及び【0028】から、以下の発明が記載されていると認められる。 「四ツ口フラスコに、イオン交換水、メチルメタクリレート200g及びスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、0.6g又は1.0gを加え、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を添加して反応を開始して重合した、負電荷に帯電するトナーに用いられる重合体微粒子。」(以下、「甲2発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件発明1について 甲2発明の「メチルメタクリレート」及び「スチレンスルホン酸ナトリウム」は、それぞれ本件発明1の「ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)」及び「p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム」である「スルホン酸基を有する反応性乳化剤」に相当し、甲2発明の「重合体微粒子」は「メチルメタクリレート」及び「スチレンスルホン酸ナトリウム」を重合した共重合体からなるから、本件発明1の「共重合体からな」る「樹脂微粒子」に相当する。 甲2発明の「四ツ口フラスコに、イオン交換水、メチルメタクリレート200g及びスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、0.6g又は1.0gを加え、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を添加し」たものは、水分散体であり、これは非反応性乳化剤を含まない。 甲2発明の「メチルメタクリレート」及び「スチレンスルホン酸ナトリウム」の合計を100質量%としたときの「メチルメタクリレート」及び「スチレンスルホン酸ナトリウム」の含有量は、(99.9質量%、0.1質量%)、(99.7質量%、0.3質量%)、(99.5質量%、0.5質量%)と計算され、いずれも、本件発明1の「90?99.9質量%」、「0.1?10質量%」の範囲に包含される。 甲2発明の「負電荷に帯電するトナー」は、本件発明1の「負電荷現像用トナー」に相当する。 してみると、本件発明1と甲2発明とは、 「非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなる樹脂微粒子であって、前記水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子。」 である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点9> 「樹脂微粒子」につき、本件発明1は、共重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有するのに対して、甲2発明ではこの点についての規定がない点。 相違点9について検討する。 本件特許明細書には、開始剤としてペルオキソ二硫酸塩を使用することにより少なくとも一方の末端に硫酸基を有する構造となることが記載されている(【0023】)。 これに対して、甲2のいずれの箇所をみても、重合体微粒子の重合体が少なくとも一方の末端に硫酸基を有するものであることについて記載も示唆もされておらず、開始剤としてペルオキソ二硫酸塩を使用することについても、記載も示唆もされていない。むしろ、甲2には、「過硫酸塩を重合開始剤として用いる方法」では、-SO_(3)^(-)量の制御が容易でなく、帯電制御が困難であり、また粒径の制御幅が狭い。」と記載されており(【0005】)、甲2発明においてペルオキソ二硫酸塩を使用することは阻害されている。 そうすると、甲2発明において、重合体微粒子の重合体が少なくとも一方の末端に硫酸基を有するものとすることや、開始剤としてペルオキソ二硫酸塩を使用することは、何ら動機づけられるものではない。 また、甲2発明において、重合体微粒子の重合体が少なくとも一方の末端に硫酸基を有するものとすることや、開始剤としてペルオキソ二硫酸塩を使用することを動機づける周知技術も見当たらない。 よって、相違点9に係る事項は当業者が容易に相当し得たものではなく、本件発明1は、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4及び5について 本件発明2、4及び5は、本件発明1を直接的または間接的に引用するものであり、上記アに述べたものと同様の理由により、甲2発明及び周知技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3について 本件訂正の訂正事項3により、請求項3は削除された。 3 小括 よって、申立理由1は、理由がない。 第7 まとめ 以上のとおり、本件発明1及び4は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件発明1及び4の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 本件発明2及び5に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に、本件発明2及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3は削除されたので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、当該請求項にかかる特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃であるラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)とを含む水分散体を共重合した共重合体からなり、該共重合体の少なくとも一方の末端に硫酸基を有する負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子であって、 前記水分散体中の反応性乳化剤とラジカル重合性単量体の含有量の合計を100質量%としたときに、反応性乳化剤の含有量が0.1?10質量%であり、ラジカル重合性単量体の含有量が90?99.9質量%である、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子。 【請求項2】 請求項1に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法であって、 非反応性乳化剤を含まず、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、p-ビニルベンゼンスルホン酸メトキシド、p-ビニルベンゼンスルホン酸エトキシドから選択された、スルホン酸基を有する反応性乳化剤と、ラジカル重合性単量体の重合体のガラス転移温度が60?180℃である前記ラジカル重合性単量体(但し、メタクリル酸シクロヘキシルを除く)と、ペルオキソ二硫酸塩と、水とからなる水分散体を共重合する、負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法。 【請求項3】 [削除] 【請求項4】 請求項1に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を含む、負電荷現像用トナー。 【請求項5】 請求項2に記載の負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子の製造方法により負電荷現像用トナーに用いる樹脂微粒子を製造し、その樹脂微粒子を添加する、負電荷現像用トナーの製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-06-21 |
出願番号 | 特願2013-128363(P2013-128363) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZDA
(C08F)
P 1 651・ 121- ZDA (C08F) P 1 651・ 537- ZDA (C08F) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 藤井 明子 |
特許庁審判長 |
近野 光知 |
特許庁審判官 |
佐藤 健史 海老原 えい子 |
登録日 | 2017-09-15 |
登録番号 | 特許第6205887号(P6205887) |
権利者 | 藤倉化成株式会社 |
発明の名称 | 樹脂微粒子とその製造方法、および負電荷現像用トナーとその製造方法 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 小室 敏雄 |
代理人 | 五十嵐 光永 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 五十嵐 光永 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 清水 雄一郎 |
代理人 | 清水 雄一郎 |
代理人 | 小室 敏雄 |
代理人 | 高橋 詔男 |