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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1355177
審判番号 不服2018-14000  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-23 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2014-167763「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開,特開2016- 46321,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年8月20日の出願であって,平成30年3月6日付け拒絶理由通知に応答して同年4月13日に意見書,手続補正書が提出されたが,同年8月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対して,同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出された。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし4に係る発明は,本願出願前に頒布された以下の引用文献1ないし4に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2011/0053376号明細書
2.特開2013-236016号公報
3.特開2010-46792号公報
4.特表2001-510742号公報

第3 本件補正について
本件補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正による請求項1に発明特定事項を追加する補正は,出願当初明細書段落【0031】ないし【0036】,【図2】の記載からみて,新規事項を追加するものではなく,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また,本件補正による請求項2の補正は,新規事項を追加するものではなく,誤記の訂正を目的とするものである。
そして,下記第4ないし第6までに示すように,補正後の請求項1ないし4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
また,本件補正による,明細書段落【0017】についての補正は,上記と同様新規事項を追加するものではない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は,平成30年10月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その本願発明1は,その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は補正事項である。)。
「【請求項1】
デバイスウェハのおもて面に表面構造を形成する工程と,
前記デバイスウェハのおもて面に接着剤を介してガラス支持板を貼り付けたWSS(Wafer Support System)ウェハを形成する工程と,
前記WSSウェハの両面を固定する工程と,
前記デバイスウェハの側面であって,前記デバイスウエハの裏面から所定距離はなしてかつ前記表面構造に達しない位置をワイヤソーで輪切り状に切断して前記デバイスウェハを薄化する工程と,
前記デバイスウェハの切断した裏面に裏面拡散層を形成し,前記裏面拡散層に裏面電極を形成する工程と,
前記裏面電極にダイシングテープを貼り付け,前記WSSウェハの前記ガラス支持板と前記接着剤を除去する工程と,
前記デバイスウェハのおもて面からダイシングして前記デバイスウェハをチップ化する工程と,
を含み,前記デバイスウェハを薄化する工程では,前記ワイヤソーの移動方向と前記WSSウェハの回転方向とが同一であることを特徴とする半導体装置の製造方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2013-236016号公報,平成25年11月21日出願公開)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体装置の製造方法に関し,特には,基板の厚さを薄くするために,半導体基板の表面に支持基板を貼付して裏面を研削した後,支持基板を剥離するプロセスを好適に含む製造方法の改良に関する。」
「【0012】
本発明は,前述のような問題点を考慮してなされたものであり,本発明の目的は,接着層を介して貼付された半導体ウエハと支持基板を,所要のプロセス処理後に,半導体ウエハと支持基板を相互に分離する際に,接着層の適正な接着領域からはみ出した接着層があっても,支障なく適正に剥離処理を行うことができる支持基板の剥離工程を含む半導体装置の製造方法を提供することである。」
「【発明を実施するための形態】
【0016】
<<途中省略>>
<実施例1>
本発明の半導体装置の製造方法について,半導体ウエハ(以降,半導体ウエハを半導体基板とすることもある)厚100μm以下の半導体デバイスの製造方法を以下説明する。ウエハプロセスへの投入当初から100μm厚の薄い半導体基板面に,ただちに層や膜を堆積または付着させる加工を行うと,熱膨張係数の違いに起因して,半導体基板に生じる反りが大きくなり易い。半導体基板に反りが大きいと,その程度によっては半導体基板の割れや半導体基板の吸着装置の異常(エラー等)を起こすおそれがある。
【0017】
このため,仕上がりの半導体基板厚100μm以下の厚さの薄い半導体デバイスを製造するウエハプロセスであっても,プロセスへ投入する当初の半導体基板の厚さは,例えば600μm以上の厚い半導体基板を用いる。そして,半導体基板の厚さを100μmに減厚するプロセスをできるだけ後の工程で行うようにすることが好ましい。プロセスの当初は,厚い半導体基板の状態で,一方の主面(おもて面とする)側に所要の半導体機能領域を形成するプロセスを一通り施す。この半導体基板の他方の主面(裏面とする)側に必要な半導体機能領域を形成するために,半導体基板の裏面側を研削して所定の厚さに減厚する。その際,半導体基板を薄くした後のウエハ強度を補強するために,予めおもて面側に所要の前記プロセスを終えた前述の半導体基板を石英ガラス基板などの熱膨張係数が小さい支持基板におもて面側を接合面として貼付する。
【0018】
その後,接合していない側の半導体基板面(裏面)を研削して半導体基板を薄化することにより,薄化処理工程の際に,ウエハ割れが生じ難い方法が採られる。支持基板としては,前述の石英ガラス(シリカガラス)の他に,紫外線透過性,耐熱性や耐化学薬品性の良好な安定したガラスやガラスセラミックスガラス,セラミックスであれば,使用することができる。例えば,耐熱性の高いテンパックス(登録商標)ガラスなどのホウケイ酸ガラス,サファイアガラス(アルミナ系ガラス),また,強度,耐熱性の良好なガラスセラミックスなども使用することができる。
【0019】
以下,薄型の半導体基板(例えば仕上がり厚さ100μm)を用いたIGBTなどのパワーデバイスを製造する場合について説明する。IGBTの場合,半導体基板の表面側とはエミッタ電極,ゲート電極,MOSゲート構造などのデバイス表面構造(半導体機能領域)が形成される面であり,裏面側とは,コレクタ層およびコレクタ電極が形成される面とする。
【0020】
厚さ650μmのFZ-n型半導体基板のおもて面側に,よく知られた公知のプロセスによりエミッタ電極,ゲート電極,MOSゲート構造などの半導体機能領域(図示せず)の形成工程を一通り終了させる。この半導体基板1の裏面側の形成工程にはいる前に,前述の半導体機能領域を有する半導体基板1の表面側に,紫外線(UV光)に透明な支持基板2を,接着層3を介してズレの無いように圧着する(図1)。支持基板2は,厚さが0.1mm?1mm 程度であればよく,半導体基板1と略同径の石英ガラス基板であればよい。
【0021】
この支持基板2を接着層3を介して圧着することについて,詳細に説明する。支持基板2としては,前述と同様の石英ガラスの他にテンパックス(登録商標)ガラスやサファイアガラスのように照射紫外線波長を効率よく透過するガラス,また,前述のように紫外線透過性,耐熱性や耐化学薬品性の良好な安定したガラスセラミックスガラス,セラミックスを用いることもできる。接着層3はスピンコーターを用いて,スピンナー(図示せず)上に半導体基板1を,前述の半導体機能領域側を上にして吸着させた後,スピンナーを回転させながら接着剤溶液を滴下し接着層塗膜を形成する。
<<途中省略>>
【0024】
その後,電気炉などで所要のポストベーク処理(200?300℃程度,1時間)により接着塗膜中の溶剤を飛ばし,接着層3とする。前述の接着層塗膜の形成の際,半導体基板1の半導体機能領域の最表面の凹凸を吸収して平坦面にする必要があるので,接着層塗膜の厚さを5?40μm程度となるように接着剤溶液の粘度とスピンナー回転数を適宜予め求めておくことが望ましい。圧着については,支持基板2を上にして半導体基板1と支持基板2との中心軸を一致させるような位置合わせを行い,真空中で加熱(200?300℃程度)しながら接着層3を挟んで圧着する。この圧着により接着層3の厚さがさらに薄くなるが,半導体機能領域の最表面の凹凸の段差を無くして平坦にする程度の接着層厚さは維持する。図11に示すように,圧着により圧着面から半導体基板の側面にはみ出た接着層塗膜は支持基板や半導体基板の側面に付着する。このような側面にはみ出た接着層塗膜が発生するため,従来,はみ出した接着層塗膜には紫外波長光レーザが確実に照射されず,後工程での支持基板と半導体基板との剥離が確実に行えないという問題となっていたのである。
【0025】
本発明ではこの問題を紫外線波長のレーザ光ではなく,紫外線波長を効率的に含むUVランプを用いることにより,解消するものである。すなわち,UVランプは,位相が揃い単一波長というコヒーレント性を有するレーザと異なり,照射方向が光源から放射状に広がるので,前述のように半導体基板の側面にはみ出た接着層塗膜部分にも充分照射され,そのはみ出た塗膜部分の接着力も低下させ剥離させることができるからである。
【0026】
以上説明した実施例によれば,前述のように,半導体基板1の側面に圧着による接着層塗膜のはみ出しがあっても,後工程での支持基板2と半導体基板1との剥離が確実に行えないという問題が解消されるので,側面に接着層塗膜のはみ出しがある状態であっても,支障なく次工程に進めることができる。
【0027】
すなわち,半導体基板1に支持基板2を接着層3を介して貼り付けたものをバックグラインド装置(図示せず)に設置して半導体基板1の裏面を研削して所定の厚さ(100μm)に減厚する(図2)。研削面を,エッチングを含む処理液で清浄化する。清浄化した半導体基板1の裏面に,リンをドーズ量1×10^(11)?1×10^(13)cm^(-2),加速エネルギー5MeVで,イオン注入する(図示せず)。続いて,同じ裏面からボロンをドーズ量1×10^(13)?1×10^(15)cm^(-2),加速エネルギー50KeVでイオン注入する。その後,半導体基板1裏面にレーザを照射してアニールによるイオン注入層の活性化をおこない,バッファ層となるn^(+)層およびコレクタ層となるp^(+)層を形成する(図示せず)。
【0028】
次に,半導体基板1の裏面に,例えばアルミニウム,チタン,ニッケルおよび金などの複数の金属を蒸着し,コレクタ電極となる裏面電極4を形成する(図3)。半導体基板1の裏面に耐熱性,耐薬品性のあるダイシングテープ5を貼り付け,搬送性を確保するためにダイシングテープ5にリング状のダイシングフレーム6を取り付ける(図4)。支持基板2側からUVランプ10によって紫外波長光を接着層に照射し,半導体基板1の表面側と支持基板2との間に介在する接着層3の接着力を弱めて支持基板2を剥離させる(図5)。その際,接着層3に照射される紫外波長光は,半導体基板1との間よりも,光源により近い支持基板2と接着層との間の接着力をより低下させるので,支持基板2を剥離させると,接着層3は半導体基板1の表面に残り易い。この接着層3を溶解させるために,常温?80℃にした剥離液に半導体基板1を浸漬するか半導体基板1の上部から剥離液を吹き付ける。浸漬時間は,接着層の量や剥離液の温度によっても変わってくるが,1?30分程度である(図6)。
<<途中省略>>
【0030】
そして,半導体基板1の表面から接着層の残渣を除去した半導体基板1をダイシング装置に取り付け,ダイシング装置のダイシングブレードソー7の高速回転により,ダイス状にカッティングを行ってチップ化を実施すれば(図7),半導体デバイス(IGBT)チップの完成である。
【0031】
従来のUVレーザの接着層への照射による支持基板の離脱方式では,半導体基板と支持基板から接着層がはみ出ている場合,レーザの焦点距離等の影響により,はみ出し塗膜40に確実に照射できず,半導体基板54から支持基板51の離脱が正常に行えない場合があった(図9)。これらの問題を解決するため,光の焦点距離に関係なく基板全面に比較的均一な照度で照射可能な水銀ランプやエキシマランプ,キセノンランプ等のUVランプの照射方式を用いることによって,半導体基板や支持基板の側壁にはみ出し塗膜40が付着した状態でも,UV光源が接着層全体に照射されるため,半導体基板から支持基板の離脱が簡単に行われるようになる。」

(2)引用発明
したがって,上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体装置の製造方法であって,
厚さ650μmのFZ-n型半導体基板のおもて面側に,エミッタ電極,ゲート電極,MOSゲート構造などの半導体機能領域の形成工程を一通り終了させ,
半導体機能領域を有する半導体基板1の表面側に,紫外線(UV光)に透明な支持基板2を,接着層3を介してズレの無いように圧着する,ここで支持基板2は,半導体基板1と略同径の石英ガラス基板であればよいこと,
次に,半導体基板1に支持基板2を接着層3を介して貼り付けたものをバックグラインド装置に設置して半導体基板1の裏面を研削して所定の厚さに減厚し,
研削面を,エッチングを含む処理液で清浄化し,清浄化した半導体基板1の裏面に,リンをドーズ量1×10^(11)?1×10^(13)cm^(-2),加速エネルギー5MeVで,イオン注入し,続いて,同じ裏面からボロンをドーズ量1×10^(13)?1×10^(15)cm^(-2),加速エネルギー50KeVでイオン注入し,その後,半導体基板1裏面にレーザを照射してアニールによるイオン注入層の活性化をおこない,バッファ層となるn^(+)層およびコレクタ層となるp^(+)層を形成すること,
次に,半導体基板1の裏面に,複数の金属を蒸着し,コレクタ電極となる裏面電極4を形成し,
半導体基板1の裏面に耐熱性,耐薬品性のあるダイシングテープ5を貼り付け,支持基板2側からUVランプ10によって紫外波長光を接着層に照射し,半導体基板1の表面側と支持基板2との間に介在する接着層3の接着力を弱めて支持基板2を剥離させ,接着層3を溶解させるために,常温?80℃にした剥離液に半導体基板1を浸漬するか半導体基板1の上部から剥離液を吹き付け,
そして,半導体基板1の表面から接着層の残渣を除去した半導体基板1をダイシング装置に取り付け,ダイシング装置のダイシングブレードソー7の高速回転により,ダイス状にカッティングを行ってチップ化を実施し,半導体デバイス(IGBT)チップを完成させる半導体装置の製造方法。」

2 引用文献1について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2011/0053376号明細書,2011年3月3日出願公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「BACKGROUND
[0002] Example embodiments relate to dividing a wafer, and more particularly, to a wafer dividing apparatus and method.
<<途中省略>>
[0004] A semiconductor assembly process includes, among other steps, dividing semiconductor integrated circuits formed in a wafer process, electrically connecting the semiconductor integrated circuits so that the semiconductor integrated circuits can be used as electronic components, sealing and packaging the semiconductor integrated circuits to protect them from external impact. A large number of identical semiconductor integrated circuits having identical electric circuits are formed on a single wafer.
[0005] One of the primary processes of the semiconductor assembly process is a back-grinding process. The wafer having a relatively large diameter is manufactured relatively thick to minimize damage thereto during a manufacturing process. In a back-grinding process, the thickness of the wafer may be reduced by grinding a back surface of the wafer.」
(当審仮訳:
背景
[0002]本発明の実施形態は,ウエハを分割することに係り,より詳細には,ウエハの分割装置及び方法に関する。
<<途中省略>>
[0004]半導体組立プロセスは他のステップの間に以下のステップを含む,ウエハプロセスで形成された半導体集積回路を分割するステップ,電気的に前記半導体集積回路を接続するので,前記半導体集積回路は電気コンポーネントとして使用でき,前記半導体集積回路を外部の衝撃から保護するためにシーリングされパッケージングされるステップ。
[0005]前記半導体組立プロセスの主要なプロセスの一つは,裏面研削プロセスである。比較的大きな直径を持つ前記ウエハは製造プロセス中の損傷を最小限に抑えるために比較的厚く製造されている。裏面研削においては,前記ウエハの前記厚さは前記ウエハの裏面を研削することによって低減することができる。)

「DETAILED DESCRIPTION OF EXAMPLE EMBODIMENTS
<<途中省略>>
[0041] Referring to FIGS. 1 to 4 , a chuck unit 110 is on a cutting table 130 . The chuck unit 110 includes a lower chuck 111 and an upper chuck 115 . A cutting wire 170 driven by a first driving unit is provided between the upper and lower chucks 115 and 111 . A wafer 120 is loaded on the lower chuck 111 (D 1 ). The chuck unit 110 may be formed of a porous ceramic. The lower chuck 111 , as shown in FIGS. 3 and 4 , includes a first recess region 112 for loading the wafer 120 . The first recess region 112 may correspond to a lower portion of the wafer 120 . The cutting table 130 is rotatably connected to a second driving unit through a first rotational shaft 140 . A first vacuum pipe 145 extends from the first rotational shaft 140 and into the cutting table 130 and the lower chuck 111 . The first vacuum pipe 145 is connected to a vacuum pump (not shown) to provide adhesive force between the wafer 120 and the first recess region 112 . The lower chuck 111 includes a second vacuum pipe 146 that is connected to the first vacuum pipe 145 to transfer vacuum to the first recess region 112 .
[0042] The upper chuck 115 is provided on the wafer 120 (D 2 ). The upper and lower chucks 115 and 111 are disposed to face each other. As shown in FIGS. 3 and 4 , the upper chuck 115 includes a second recess region 116 for loading the wafer 120 . The second recess region 116 is formed to correspond to an upper portion of the wafer 120 . The second recess region 116 faces the first recess region 112 . The upper chuck 115 is rotatably connected to a third driving unit through a second rotational shaft 150 . The third driving unit is synchronized with the second driving unit to rotate the wafer 120 at a near identical speed. For example, a rotational direction of the wafer 120 may vary during a desired period. A third vacuum pipe 155 extends from the second rotational shaft 150 . The third vacuum pipe 155 is connected to a vacuum pump (not shown) to provide adhesive force between the wafer 120 and the second recess region 116 . The upper chuck 115 includes a fourth vacuum pipe 156 that is connected to the third vacuum pipe 155 to transfer vacuum to the second recess region 116 .
[0043] When the wafer is loaded in the chuck unit 110 , the lower chuck 111 is spaced apart from the upper chuck 115 by a desired distance d 2 . The wafer may be divided by a cutting wire 170 (D 3 ). The distance d 2 may be greater than a diameter d 1 of the cutting wire 170 . For example, the distance d 2 may be greater than the diameter d 1 by about 10-20 μm. Accordingly, the cutting wire 170 can move through a space between the lower and upper chucks 111 and 115 . A gap between the upper and lower chucks 111 and 115 may guide the movement of the cutting wire 170 . Accordingly, the cutting wire 170 may divide the wafer 120 to a uniform thickness along a straight line.
<<途中省略>>
[0047] Referring to FIG. 1 , the dividing of the wafer 120 is finished (D 6 ), after which the process for grinding the divided wafer may be performed. In the conventional back-grinding process, a large part of the wafer is wasted and thus the production cost may increase. In addition, since the back-grinding process is performed for a long time by a chemical material, productivity and environmental issue may be of concern. The wafer dividing method according to example embodiments of the inventive concepts is configured to recycle the divided wafer, thereby reducing the production cost. In addition, by combining the physical and chemical dividing methods, the wafer 120 can be divided in a relative short time.」
(当審仮訳:
実施形態の詳細な説明
<<途中省略>>
[0041]図1ないし4を参照すると,チャックユニット110は切断テーブル130上に設けられている。チャックユニット110は下部チャック111と上部チャック115を含んでいる。第一の駆動ユニットによって駆動される切断ワイヤ170は下部チャック115と上部チャック111の間に提供される。ウエハ120は下部チャック111上にロードされる(ステップD1)。チャックユニット110は多孔質セラミックで形成されていてもよい。下部チャック111,図3,4で示される,はウエハ120をロードするために第一のリセス領域112を備える。第一のリセス領域112はウエハ120の下側部分に対応してもよい。切断テーブル130は第一の回転軸140を介して第二の駆動ユニットに回転可能に接続されている。第一の真空配管145は第一の回転軸140から切断テーブル130と下部チャック111の中へと延びている。第一の真空配管145は真空ポンプ(図示せず)へと接続され,ウエハ120と第一のリセス領域112の間に吸着力を提供する。下部チャック111は第二の真空配管146を備え,第一の真空配管145へと接続し第一のリセス領域112へと真空を伝達する。
[0042]上部チャック115はウエハ120の上に提供される(ステップD2)。上部チャック115と下部チャック111とがお互いに対向するように配置される。図3,4に示すように,上部チャック115はウエハ120をロードするために第二のリセス領域116を備える。第二のリセス領域116はウエハ120の上部位置に対応するように形成されている。第二のリセス領域116は第一のリセス領域112に対向している。上部チャック115は第二の回転軸150を介して第三の駆動ユニットに回転可能に接続されている。第三の駆動ユニットは第二の駆動ユニットに同期し,ほぼ同一の回転数でウエハ120を回転させる。例えば,ウエハ120の回転方向は所望の期間中に変化し得る。第三の真空配管155は第二の回転軸150から延びている。第三の真空配管155は真空ポンプ(図示せず)へと接続され,ウエハ120と第二のリセス領域116との間に吸着力を提供する。上部チャック115は第四の真空配管156を備え,第三の真空配管155へと接続し第二のリセス領域116へと真空を伝達する。
[0043]ウエハがチャックユニット110にロードされると,下部チャック111は所望の距離であるd2だけ上部チャック115から間隔を開けられる。ウエハは切断ワイヤ170により分割される(ステップD3)。前記距離d2は切断ワイヤ170の直径d1よりも大きい。例えば,距離d2は距離d1よりも約10ないし20μmだけ大きい。したがって,切断ワイヤ170は下部チャック111と上部チャック115との間の空間を通して移動することができる。上部チャック111と下部チャック115との間のギャップは切断ワイヤ170の移動をガイドすることができる。したがって,切断ワイヤ170はウエハ120を直線に沿って均一な厚さに分割することができる。
<<途中省略>>
[0047]図1を参照すると,ウエハ120の分割が終了し(ステップD6),その後,分割ウエハの研削プロセスが実行されてもよい。従来の裏面研削プロセスでは,ウエハのほとんどの部分は無駄になるので,製造コストを増加させる。加えて,裏面研削プロセスが化学材料によって長時間実行されるので,生産性と環境問題が憂慮される。本発明の実施形態に係るウエハの分割方法は分割ウエハをリサイクルするように構成されるので,製造コストを削減する。加えて,物理的および化学的な分割方法を組み合わせることによって,ウエハ120を比較的短時間で分割することができる。)

「Fig. 2


「Fig. 3



3 引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2010-46792号公報,平成22年3月4日出願公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0043】
図2に示すように,ワイヤー送りと方向とインゴット接触部でのインゴット接線方向の動きは,同じ方向(順方向)となるように揃えると良い。これは,発生した切子が,絶縁流体について動き,絶縁流体はインゴットとワイヤーの動きに沿って動くことから,接触点でのワイヤーの動き方向とインゴットの動き方向が一致した方が,スムーズな切子排出が行われやすいためである。」

4 引用文献4について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特表2001-510742号公報,平成13年8月7日出願公表)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0015】
装置10は,矢印によって示すような単一の方向にまたはインゴット14に対して往復する態様でワイヤ12を移動させるためのワイヤ駆動機構16を含む。ワイヤ駆動機構16は,図示する実施例では,中心の滑車に対してワイヤ12を巻付けたり解いたりして往復運動をワイヤ12に与えるためのキャプスタン18を含んでもよい。代替的に,単一の線長さのワイヤの代わりに1つ以上の個々の連続したループのワイヤ12が利用されるならば,ワイヤ12は以下により十分に説明するように逆転なしで単一の方向に連続して容易に移動され得る。図示するように,ワイヤ12は1対の滑車20によってインゴット14の近辺に導かれることができ,ワイヤ12の適切な引っ張りが引っ張り滑車22によって保たれる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明における「FZ-n型半導体基板」は本願発明1の「デバイスウェハ」に相当するので,引用発明の「FZ-n型半導体基板のおもて面側に,エミッタ電極,ゲート電極,MOSゲート構造などの半導体機能領域の形成工程」は本願発明1の「デバイスウェハのおもて面に表面構造を形成する工程」に相当する。
イ 引用発明における「接着層3」,「『半導体基板1と略同径の石英ガラス基板であればよい』『支持基板2』」はそれぞれ本願発明1の「接着剤」,「ガラス支持板」に相当するので,引用発明の「半導体機能領域を有する半導体基板1の表面側に,紫外線(UV光)に透明な支持基板2を,接着層3を介してズレの無いように圧着する」ことは本願発明1の「前記デバイスウェハのおもて面に接着剤を介してガラス支持板を貼り付けたWSS(Wafer Support System)ウェハを形成する工程」に相当する。
ウ 引用発明における「半導体基板1に支持基板2を接着層3を介して貼り付けたものをバックグラインド装置に設置して半導体基板1の裏面を研削して所定の厚さに減厚」することは,「半導体基板1」を「薄化」する処理であるので,本願発明1と「前記デバイスウェハを薄化する工程」を有する点で共通する。
エ 引用発明の「コレクタ層となるp^(+)層」,「コレクタ電極となる裏面電極4」はそれぞれ本願発明1の「裏面拡散層」,「裏面電極」に相当するので,引用発明の「研削面を,エッチングを含む処理液で清浄化し,清浄化した半導体基板1の裏面に,リンをドーズ量1×10^(11)?1×10^(13)cm^(-2),加速エネルギー5MeVで,イオン注入し,続いて,同じ裏面からボロンをドーズ量1×10^(13)?1×10^(15)cm^(-2),加速エネルギー50KeVでイオン注入し,その後,半導体基板1裏面にレーザを照射してアニールによるイオン注入層の活性化をおこない,バッファ層となるn^(+)層およびコレクタ層となるp^(+)層を形成すること,次に,半導体基板1の裏面に,複数の金属を蒸着し,コレクタ電極となる裏面電極4を形成」することは,本願発明1と「『前記デバイスウェハの』『裏面に裏面拡散層を形成し,前記裏面拡散層に裏面電極を形成する工程』」という点で共通する。
オ 引用発明の「ダイシングテープ5」は本願発明1の「ダイシングテープ」に相当するので,引用発明の「半導体基板1の裏面に耐熱性,耐薬品性のあるダイシングテープ5を貼り付け,支持基板2側からUVランプ10によって紫外波長光を接着層に照射し,半導体基板1の表面側と支持基板2との間に介在する接着層3の接着力を弱めて支持基板2を剥離させ,接着層3を溶解させるために,常温?80℃にした剥離液に半導体基板1を浸漬するか半導体基板1の上部から剥離液を吹き付け」ることは,本願発明1の「前記裏面電極にダイシングテープを貼り付け,前記WSSウェハの前記ガラス支持板と前記接着剤を除去する工程」に相当する。
カ 引用発明においては「半導体基板1の裏面に」「ダイシングテープ5を貼り付け」ているので,「半導体基板1の表面から接着層の残渣を除去した半導体基板1をダイシング装置に取り付け」る際には,ダイシングブレードソーによりカッティングされる面は半導体基板1の表面であることは明らかである。したがって,引用発明の「半導体基板1の表面から接着層の残渣を除去した半導体基板1をダイシング装置に取り付け,ダイシング装置のダイシングブレードソー7の高速回転により,ダイス状にカッティングを行ってチップ化を実施」することは,本願発明1の「前記デバイスウェハのおもて面からダイシングして前記デバイスウェハをチップ化する工程」に相当する。
キ 上記アないしカより,引用発明の「半導体装置の製造方法」は,下記の相違点を除いて本願発明1の「半導体装置の製造方法」に相当する。
ク したがって,本願発明1と引用発明とは,下記ケの点で一致し,下記コの点で相違する。
ケ 一致点
「デバイスウェハのおもて面に表面構造を形成する工程と,
前記デバイスウェハのおもて面に接着剤を介してガラス支持板を貼り付けたWSS(Wafer Support System)ウェハを形成する工程と,
前記デバイスウェハを薄化する工程と,
前記デバイスウェハの裏面に裏面拡散層を形成し,前記裏面拡散層に裏面電極を形成する工程と,
前記裏面電極にダイシングテープを貼り付け,前記WSSウェハの前記ガラス支持板と前記接着剤を除去する工程と,
前記デバイスウェハのおもて面からダイシングして前記デバイスウェハをチップ化する工程と,
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
コ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1においては,「WSSウェハの両面を固定する工程と,前記デバイスウェハの側面であって,前記デバイスウエハの裏面から所定距離はなしてかつ前記表面構造に達しない位置をワイヤソーで輪切り状に切断して前記デバイスウェハを薄化する工程」を含み,さらに,「前記デバイスウェハを薄化する工程では,前記ワイヤソーの移動方向と前記WSSウェハの回転方向とが同一である」のに対して,引用発明においては半導体基板1をバックグラインド装置に設置して裏面を研削して薄化しており,ワイヤソーにより薄化はしてはいない点。
(イ)相違点2
本願発明1においては,「前記デバイスウェハの切断した裏面に裏面拡散層を形成し,前記裏面拡散層に裏面電極を形成する工程」を有しているのに対して,引用発明においては,「研削面」に,「バッファ層となるn^(+)層およびコレクタ層となるp^(+)層を形成」しており,「デバイスウェハの切断した裏面」に「裏面拡散層」を形成してはいない点。

(2)判断
ア 相違点1(上記(1)コ(ア))について検討をする。
イ 上記第5の2より,引用文献1の段落[0043]には「ウエハがチャックユニット110にロードされると,下部チャック111は所望の距離であるd2だけ上部チャック115から間隔を開けられる。ウエハは切断ワイヤ170により分割される(ステップD3)。」,「上部チャック111と下部チャック115との間のギャップは切断ワイヤ170の移動をガイドすることができる。したがって,切断ワイヤ170はウエハ120を直線に沿って均一な厚さに分割することができる。」と記載され,段落[0047]には「従来の裏面研削プロセスでは,ウエハのほとんどの部分は無駄になるので,製造コストを増加させる。加えて,裏面研削プロセスが化学材料によって長時間実行されるので,生産性と環境問題が憂慮される。本発明の実施形態に係るウエハの分割方法は分割ウエハをリサイクルするように構成されるので,製造コストを削減する。加えて,物理的および化学的な分割方法を組み合わせることによって,ウエハ120を比較的短時間で分割することができる。」と記載されている。
ウ すなわち,引用文献1は従来の裏面研削プロセスの問題点である「ウエハのほとんどの部分は無駄になるので,製造コストを増加させる」ということを解決するために,「本発明の実施形態に係るウエハの分割方法」を採用し,「分割ウエハをリサイクルするように構成されるので,製造コストを削減する」こと,さらに,「物理的および化学的な分割方法を組み合わせることによって,ウエハ120を比較的短時間で分割することができる」ことを実現するためのものである。
エ ところで,引用文献1の段落[0041]には「ウエハ120は下部チャック111上にロードされる(ステップD1)。」「下部チャック111」「はウエハ120をロードするために第一のリセス領域112を備える。第一のリセス領域112はウエハ120の下側部分に対応してもよい。」と記載され,段落[0042]には「上部チャック115はウエハ120をロードするために第二のリセス領域116を備える。第二のリセス領域116はウエハ120の上部位置に対応するように形成されている。」と記載されているように,上部チャック115と下部チャック111との間にロードされるウエハ120の上側部分,下側部分に対応するようにそれぞれ第二のリセス領域116,第一のリセス領域112を備えていることが読み取れ,これは,その発明の前提として,ウエハ120の表面にデバイス等が製造されていない,所謂バルクウエハを分割する装置であると解される。
オ すなわち,引用文献1は,ウエハ120にデバイスを製造した後に,裏面研削をするステップにて,引用文献1のウエハ分割装置を利用し,裏面研削を実行するものではなく,ウエハ120の表面にデバイス構造を形成する前段階において,その形成に利用するウエハとして裏面研削時に研削部分が少なく低コストな分割ウエハを準備するために,引用文献1のウエハ分割装置を用いるものである,と解すべきである。
このことは,引用文献1のウエハ分割装置において,ウエハ120の表面にデバイス等を製造し,当該デバイスを製造したウエハを分割する態様を想定した場合に,上記エのごとく,直接,デバイスが製造された表面側をチャックのリセス領域に接触させることになることからも,当業者には明らかである。
カ また,半導体機能領域が形成された半導体基板をワイヤソーで輪切り状に切断することは,引用文献1,3,4には記載も示唆もされていない。
キ そうすると,引用発明において,相違点1に係る構成を採用するために,引用文献1のウエハ分割技術を適用する動機付けがそもそも存在せず,引用発明において,裏面研削時に引用文献1の切断ワイヤによるウエハ分割技術を適用することは,当業者にとって容易であるとは認められない。
ク また,本願発明1は,上記相違点1に係る構成を備えることにより,「表面構造に影響を及ぼさず、単純な工程でウェハを薄化でき、除去された側のウェハを再利用できるため、低い製造コストで高耐圧デバイスを製作できる半導体装置の製造方法および製造装置を提供することができる。」(本願明細書,段落【0025】)という格別な効果を奏するものである。
ケ したがって,引用発明において,相違点1について本願発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得ることとは認められない。

(3)したがって,本願発明1は,相違点2(上記(1)コ(イ))を検討するまでもなく,当業者であっても,引用発明,引用文献1,3,4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,本願発明1を直接的に引用するものであるので本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献1,3,4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により,本願発明1は「前記デバイスウェハの側面であって,前記デバイスウエハの裏面から所定距離はなしてかつ前記表面構造に達しない位置をワイヤソーで輪切り状に切断して前記デバイスウェハを薄化する工程」という事項を有するものとなっており,前記第6の1のとおり,当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献2,および引用文献1,3,4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本願発明2ないし4も同様に,前記第6の2のとおり,当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献2,および引用文献1,3,4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2014-167763(P2014-167763)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 宣博山口 祐一郎  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 鈴木 和樹
小田 浩
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 阪本 朗  

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