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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1355185
審判番号 不服2018-12882  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-27 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2015- 71331「射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および射出成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-206034、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月31日の出願(優先権主張 平成26年4月9日)であって、平成30年6月7日付けで拒絶理由通知がされ、同年同月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年8月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?7に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011-088955号公報
2.特開2011-098762号公報
3.特開2012-107261号公報(参考文献)

第3 本願発明
本願請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成30年6月29日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明である。

「 【請求項1】
エチレン含量が0.1?3重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が10?300g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(a)と、エチレン含量が5?20重量%、MFRが1?50g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(b)とを含有し、プロピレン-エチレン共重合体(a)とプロピレン-エチレン共重合体(b)の重量比が90:10?60:40であり、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)全体のエチレン含量が2?8重量%であり、かつ、チーグラー・ナッタ触媒によって製造されるプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)1?95重量%、及び下記の(i)?(iv)の特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)5?99重量%からなる射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(i):MFRが0.1?30g/10分である。
特性(ii):GPCによる分子量分布(Mw/Mn)が3.0?10で、且つMz/Mwが2.5?10である。
特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)は、上限値が40であり、かつ、
log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
のいずれかを満たす。
特性(iv):25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満である。
【請求項2】
プロピレン-エチレン共重合体(a)とプロピレン-エチレン共重合体(b)のMFR比(a/b)が1?10で、かつ、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)のMFRが20?100g/10分であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂(X)は、さらに、下記の特性(v)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(v):絶対分子量(Mabs)が100万における分岐指数g’は、0.30以上1.00未満である。
【請求項4】
ポリプロピレン樹脂(X)は、さらに、下記の特性(vi)を有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(vi):^(13)C-NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
【請求項5】
プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)とポリプロピレン樹脂(X)の合計100重量部に対して、さらに、密度が0.875?0.920g/cm^(3)のエチレン系エラストマー(Y)を1.0?30重量部含むことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン系エラストマー(Y)は、メタロセン触媒を用いて重合され、MFRが1?50g/10分であることを特徴とする請求項5に記載の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形してなる射出成形体。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)1?80重量%、成分(B)5?95重量%、成分(C)0?30重量%及び成分(D)0?30重量%の合計量(但し、成分(A)?成分(D)の合計は100重量%)100重量部に対して、成分(E)を0.01?1重量部含有することを特徴とする結晶性ポリプロピレン樹脂組成物。
成分(A):下記の要件(A-i)?(A-ii)を満たす結晶性ポリプロピレン
(A-i)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が10?200g/10分である。
(A-ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が5を超える。
成分(B):下記の要件(B-i)?(B-vi)を満たすプロピレン系重合体
(B-i)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.01?100g/10分である。
(B-ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Q値)が3.5?10.5である。
(B-iii)GPCによって得られる分子量分布曲線において、全量に対して、分子量(M)が200万以上の成分の比率が0.4重量%以上10重量%未満である。
(B-iv)オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下である。
(B-v)^(13)C-NMRで測定するアイソタクチックトライアッド分率(mm)が95%以上である。
(B-vi)伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が6.0以上である。
成分(C):熱可塑性エラストマー
成分(D):無機フィラー
成分(E):結晶核剤
・・・

【請求項4】
成分(A)の結晶性ポリプロピレンは、プロピレンエチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の結晶性ポリプロピレン樹脂組成物。」

(1b)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような従来技術の現状に鑑み、射出成形における成形速度を速めた場合でも、バリ現象が発生し難いポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。」

(1c)「【0018】
〔I〕結晶性ポリプロピレン樹脂組成物の構成成分
〔I-1〕成分(A):結晶性ポリプロピレン
本発明において成分(A)として用いられる結晶性ポリプロピレンは、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体、及びこれらのブレンド物などが挙げられる。好ましくはプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体である。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体又はプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体におけるα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-ペンテン-1等が挙げられる。好ましくはエチレンである。
経済的に入手可能な汎用品である高結晶性ポリプロピレン系樹脂は、本発明に有利に適用される。
【0019】
成分(A)は、メルトフローレート(MFR、JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)が10?200g/10分、好ましくは20?150g/10分、さらに好ましくは50?120g/10分である。MFRが上記範囲を上回ると、製品の衝撃強度が不足し、また、流動性が大きくなり過ぎて射出成形が困難となる。一方、MFRが上記範囲を下回ると、射出成形時に流動不良となる。
・・・


(1d)「【0023】
〔I-2〕成分(B):プロピレン系重合体
本発明において成分(B)として用いられるプロピレン系重合体[以下、プロピレン系重合体(B)ともいう]は、上記の要件(B-i)?(B-vi)、またはそれらに加えてさらに、下記の要件(B-vii)及び/又は要件(B-viii)に示される特性・性状を有することを特徴とする。
・・・
【0024】
I.プロピレン系重合体(B)の構造、長鎖分岐構造の規定と同定方法
プロピレン系重合体(B)は、長鎖分岐型のプロピレン系重合体である。
プロピレン系重合体は、上記長鎖分岐が導入されることにより、溶融物性が格段に向上していると、考察される。
・・・
【0039】
II.プロピレン系重合体(B)の物性
プロピレン系重合体(B)により、本発明の樹脂組成物は、溶融流動性や物性のバランスに優れる。プロピレン系重合体(B)の物性について、説明する。
1.メルトフローレート(MFR)
プロピレン系重合体(B)は、前記の要件(B-i)に示すとおり、温度230℃、2.16Kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上、100g/10分以下であることを必要とする。
MFRは、流動性を示す指標であり、重合体の分子量が大きくなると、この値が小さくなり、一方、分子量が小さくなると、この値は大きくなる。この値が小さいと、流動性が悪くなる。したがって、MFRは、0.01g/10分以上が必要であり、好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは、0.3g/10分以上である。
また、この値が大きいと、流動性がよくなるものの、分子量が小さくなりすぎることにより、成形体にした場合に衝撃強度が低下するという機械物性の悪化を引き起こす。したがって、MFRは、100g/10分以下が必要であり、好ましくは80g/10分以下、より好ましくは60g/10分以下である。
【0040】
尚、メルトフローレート(MFR)は、JIS K6921-2の「プラスチック-ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料-第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準拠して、試験条件:230℃、荷重2.16kgfで測定した値である。
プロピレン系重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、プロピレン重合の温度や圧力条件を変えるか、または、最も一般的な手法としては水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法により容易に調整を行うことができる。
【0041】
2.GPCで測定する平均分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
プロピレン系重合体(B)は、前記の要件(B-ii)に示すとおり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mn(Q値)が、3.5以上、10.5以下の範囲であることが必要である。
Q値は、分子量分布の広がりを表す指標であり、この値が大きいほど、分子量分布が広いことを意味する。Q値が小さすぎると、分布が狭い為に、溶融流動性と加工性のバランスが悪くなる。したがって、Q値は3.5以上が必要であり、好ましくは4.0より大きい値である。更に好ましくは4.5より大きい値である。一方、Q値が大きすぎると、必要としない(低)分子量成分の量が増えて、溶融流動性を悪化させるおそれがある。したがって、Q値は、10.5以下が必要であり、好ましくは8.0未満であり、更に好ましくは7.5未満である。
プロピレン系重合体(B)のGPCで測定する平均分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)は、プロピレン重合の温度や圧力条件を変えるか、または、最も一般的な手法としては、水素等の連鎖移動剤をプロピレン重合時に添加する方法により、容易に調整を行なうことができる。さらに、使用するメタロセン錯体の種類、錯体を2種以上使用する場合はその量比を変えることで制御することができる。
【0042】
3.GPCによる分子量分布曲線から得られる分子量分布の広がりの高分子量側への偏り
プロピレン系重合体(B)は、前記の要件(B-viii)に示すとおり、GPCによって得られる分子量分布曲線において、ピーク位置に相当する分子量の常用対数をTp、ピーク高さの50%高さとなる位置の分子量の常用対数をL_(50)及びH_(50)(L_(50)はTpより低分子量側、H_(50)はTpより高分子量側)とし、α及びβをそれぞれα=H_(50)-Tp、β=Tp-L_(50)と定義したとき、α/βが0.9より大きく、2.0未満であることが望ましい。ここで、α/βは、分子量分布の広がりの高分子量側への偏りを表す指標である。
分子量分布の広がり方に関しては、GPCによって得られる分子量分布曲線で示される。すなわち、分子量(MW)の常用対数を横軸として、縦軸に、当該MWに相当する分子の相対微分質量をプロットしたグラフが作成される。
なお、ここにいう分子量(MW)とは、プロピレン系重合体を構成する個々の分子の分子量であって、プロピレン系重合体の重量平均分子量(Mw)とは、異なるものである。図1は、分子量分布曲線の一例を示す図である。作成したグラフからαおよびβが求められる。本発明においては、上記のように、α/βが0.9より大きく、2.0未満であることが望ましい。
【0043】
通常、単一活性点を持つ触媒で均一な重合を行った場合、分子量分布は最も確からしい分布の形状となる。この最も確からしい分布のα/βは、0.9と算出される。
したがって、プロピレン系重合体(B)の分子量分布は、単一活性点で均一な重合をした重合体の分子量分布と比べて、より高分子量側に一層広がっていることを意味している。
α/βが0.9以下であると、相対的に高分子量成分の量が足りないため、スウェル比が小さくなり、成形性が悪化してしまう。
したがって、プロピレン系重合体(B)は、α/βが0.9より大きいことが望ましく、好ましくは1.0以上であり、更に好ましくは1.1以上である。
【0044】
一方、α/βが2.0以上であると、高分子量成分の量が多すぎて、溶融流動性の悪化を引き起こす。
したがって、プロピレン系重合体(B)は、α/βが2.0未満であることが望ましく、好ましくは1.8未満、より好ましくは1.7未満であり、更にさらに好ましくは1.6未満である。
なお、分子量分布曲線において、ピークが2つ以上現れることがある。その場合は、最大ピークを本発明のピークと置き換えることができる。また、H_(50)が2つ以上現れる場合は、一番高分子量側の分子量で置き換えることができる。同様に、L_(50)が2つ以上現れる場合は、一番低分子量側の分子量で置き換えることができる。
プロピレン系重合体(B)のGPCによる分子量分布曲線から得られる分子量分布の広がりの高分子量側への偏りは、2種使用するメタロセン錯体の一方として、高分子量のポリマーが製造可能なものを選択したうえで、重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。また、使用する2種のメタロセン錯体の量比を変えることでも調整することができる。
【0045】
4.GPCによる分子量分布曲線における分子量(M)が200万以上の成分の比率
プロピレン系重合体(B)は、前記の要件(B-iii)に示すとおり、GPCによって得られる分子量分布曲線において、重合体全量に対して、分子量(M)が200万以上の成分の比率(W(200万以上))が0.4重量%以上、10重量%未満である。
上記200万以上の比率(W(200万以上))は、重合体中に含まれる非常に高い分子量成分の比率を示す指標である。
上記非常に高い分子量成分の比率であるW(200万以上)は、GPCによって得られる積分分子量分布曲線(全量を1に規格化)において、分子量(M)が200万(Log(M)=6.3)以下までの積分値を、1から減じた値として定義する。積分分子量分布曲線の一例を同じく図1に示す。
【0046】
前述のように、高分子量成分の量が足りないと、スウェル比が小さくなり、樹脂が金型内を流動する際により高い圧力が必要になりバリが発生しやすくなる。また、同時にタイガーマーク(トラ縞模様)が発生しやすくなる。そこで、分子量の高い成分が必要であり、中でも非常に分子量の高い成分を少量含有することにより、効率的に成形性が改善される。この非常に分子量の高い成分には、前述したような分岐成分を含んでいると考えられる。
したがって、プロピレン系重合体(B)は、望ましくは、W(200万以上)が0.4重量%以上である必要があり、好ましくは1.0重量%以上であり、更に好ましくは2.0重量%以上である。
しかしながら、この成分の比率が高すぎると、流動性を悪化させてしまう。のみならず、非常に分子量の高い成分であるために、ゲルが生成してしまい、成形品の外観を損ねるという問題が生じる。また、この成分の比率が高すぎると、溶融流動性の悪化を引き起こす。
そこで、プロピレン系重合体(B)は、望ましくは、W(200万以上)が10重量%未満である必要があり、好ましくは6.0重量%未満、更に好ましくは5重量%未満である。
プロピレン系重合体(B)のGPCによる分子量分布曲線における分子量(M)が200万以上の成分の比率は、使用するメタロセン錯体として高分子量のポリマーが製造可能なものを選択したうえで、低分子量側を製造するメタロセン錯体に対する量比、プロピレン重合時に添加する水素量や重合温度の制御により、容易に調整を行なうことができる。
これまでにMFR、Q値、α/βおよび分子量(M)が200万以上の成分の比率等のプロピレン系重合体の分子量に関する調整方法について説明してきた。例えば、共通する制御法として、水素量の制御を挙げることができる。水素量を増やすと、プロピレン系重合体のMFRは上がり、Q値、α/β、分子量(M)が200万以上の成分の比率は低下する傾向を示す。一方、重合温度を上げる、モノマー分圧を下げる方法でも、MFRを上げることが可能であり、その場合には、分子量(M)が200万以上の成分の比率は低下するが、Q値とα/βは、あまり影響を受けない。また、MFRに対する分子量(M)が200万以上の成分の比率は、高分子量側を生成するメタロセン錯体の量や種類を変えることで制御することがすることができる。この様に、使用する触媒や重合条件を変化させることで、これら規定の制御が可能である。
【0047】
上記で定義される重量平均分子量(Mw)、Q値、α/β、及びW(200万以上)の値は、いずれも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものであるが、その測定法、測定機器の詳細は、以下の通りである。
【0048】
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
【0049】
試料の調製は、試料をODCB(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて、1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して、溶解させて行う。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図2に示すとおりである。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mlとなるように、ODCB(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10^(-4)、α=0.7
PP:K=1.03×10^(-4)、α=0.78
【0050】
5.オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)
プロピレン系重合体(B)は、前記の要件(B-iv)に示すとおり、例えば、プロピレン単独重合体は、昇温溶出分別(TREF)測定によって得られる溶出曲線において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下である。
40℃以下の温度で溶出する成分は、低結晶性成分であり、この成分の量が多いと、製品全体の結晶性が低下し、製品の剛性といった機械的強度が低下してしまう。
したがって、この量が3.0重量%以下である必要があり、好ましくは2.0重量%以下であり、更に好ましくは1.0重量%以下あり、特に好ましくは0.5重量%以下である。
プロピレン系重合体(B)のオルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)は、メタロセン錯体を用いることにより、一般的に低く抑えることが可能であるが、触媒の純度を一定以上に保つことに加え、触媒の製造方法や、重合時の反応条件を極端に高温にしないことや、メタロセン錯体に対する有機アルミの量比を上げすぎないことが必要である。
・・・
【0076】
9.溶融張力と最高巻取速度
プロピレン系重合体(B)は、制御された分岐構造(分岐量、分岐長、分岐分布)を持つために、溶融物性が顕著に改良される。すなわち、高い溶融張力を持ちながら、優れた溶融延展性をもつ。溶融張力と溶融延展性の指標として、以下の測定方法で測定する溶融張力(MT)と最高巻取速度(MaxDraw)のバランスで表すことができる。
【0077】
溶融張力(MT)および最高巻取速度(MaxDraw)の測定方法について説明する。
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時にプーリーに検出される張力を溶融張力(MT)とする。
キャピラリー:直径2.1mm
シリンダー径:9.6mm
シリンダー押出速度:10mm/分
巻き取り速度:4.0m/分
温度:230℃
【0078】
また、巻き取り速度を4.0m/分から徐々に上げていったとき(加速度:5.4cm/s^(2))、紐状物が切断する直前の巻き取り速度を、最高巻取速度(MaxDraw)とする。
ここで、MTの値が大きい方が、溶融張力が高いことを意味し、MaxDrawが大きい方が、流動性や延展性が良いことを意味する。
プロピレン系重合体(B)は、分子量分布を広げ分岐を導入することにより、溶融張力が改善されており、したがって、MTは、5g以上であり、好ましくは10g以上、更に好ましくは15g以上である。」

(1e)「【実施例】
【0150】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性測定、分析、評価等は、下記の方法に従ったものである。また、樹脂などの使用材料として、下記のものを用いた。
・・・
【0154】
3.使用材料
(I)結晶性ポリプロピレン樹脂(A)
下記の表1に示す物性を有するプロピレンエチレンブロック表重合体(A-1)?(A-2)を用いた。
【0155】
【表1】

【0156】
(II)プロピレン系重合体(B)
下記の重合例1?5で製造したプロピレン系樹脂(B-1)?(B-5)を用いた。
【0157】
(1)プロピレン系重合体(B)の製造
[触媒合成例1]:
(1-1)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理:
セパラブルフラスコ中で蒸留水3456gに96%硫酸(1044g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)600gを加えた。このスラリーを0.5℃/分で1時間かけて90℃まで昇温し、90℃で120分反応させた。この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水2400g加えた後にろ過したところケーキ状固体1230gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム648g、蒸留水1800gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ上固体を全量投入し、更に蒸留水522gを加えた。このスラリーを0.5℃/分で1時間かけて90℃まで昇温し、90℃で120分反応させた。この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水1980g加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH3まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体1150gを得た。
得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に215℃、窒素気流下、滞留時間10分の条件でロータリーキルン乾燥することにより、化学処理スメクタイト340gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:7.81重量%、Si:36.63重量%、Mg:1.27重量%、Fe:1.82重量%、Li:0.20重量%であり、Al/Si=0.222[mol/mol]であった。
【0158】
(1-2)触媒調製及び予備重合:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理スメクタイト10gを入れ、ヘプタン(65ml)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mlのヘプタン溶液を34.6ml)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、全容量を100mlとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム(105μmol)をトルエン(30ml)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウム(45μmol)をトルエン(12ml)に溶解した(溶液2)。
【0159】
上記の化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.6mmol:濃度143mg/mlのヘプタン溶液を0.83ml)を加えた後、上記溶液1を加え、さらに5分後に上記溶液2加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを356ml追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/時の速度でフィードし、2時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、50℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力が0.05MPaになるまで残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mlのヘプタン溶液を8.3ml)を加えて5分攪拌した。
この固体を2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒27.5gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.75であった(予備重合触媒1)。
【0160】
[触媒合成例2]:
上記触媒合成例1の(1-2)触媒調製及び予備重合において、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム(135μmol)をトルエン(38mL)に溶解して、溶液1とし、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウム(15μmol)をトルエン(4mL)に溶解して溶液2として使用する以外は、触媒合成例1と同様の実験をおこなった。
そうしたところ、乾燥予備重合触媒28.4gを得た。予備重合倍率は1.84であった(予備重合触媒2)。
【0161】
[重合例1]:
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(143mg/ml)2.86mlを加えた後、水素を120Nml導入した。次いで液体プロピレン750gを導入した後、75℃まで昇温した。
その後、上記の予備重合触媒1を、予備重合ポリマーを除いた重量で120mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で3時間保持した後、エタノール5mlを圧入して重合を停止し、456gの重合体を得た。
こうして得られた重合体(B-1)の分析結果を表2に示す。
【0162】
[重合例2]:
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(143mg/mL)2.86mLを加えた後、水素を300Nml導入した。次いで液体プロピレン750gを導入した後、75℃まで昇温した。
その後、予備重合触媒1を、予備重合ポリマーを除いた重量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、エタノール5mlを圧入して重合を停止した。そうしたところ405gの重合体が得られた。
得られた重合体(B-2)の評価結果を表2に示す。
【0163】
[重合例3]:
充分に窒素置換した1Lオートクレーブに、ヘプタン500ml、MMAO 2.5ML、予めMMAO 2.5mlとジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニル-インデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(1mg/ml)1mlとを接触させて活性化したものを導入し、50℃に保った。プロピレンをゆっくり導入し、最終的に重合槽内の圧力を0.5MPaを保持して1時間重合した。重合終了後ポリマーをろ過によって回収し、減圧乾燥したところ35gのポリマーが得られた。
得られた重合体(B-3)の評価結果を表2に示す。
【0164】
[重合例4]:
[固体触媒成分(Z)の合成]
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したn-ヘプタン2Lを導入した。更に、MgCl_(2)を250g、Ti(O-n-Bu)_(4)を1.8L添加して、95℃で2hr反応を行った。反応生成物を40℃に冷却し、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を500ml添加した。40℃で5hr反応を行った後、析出した固体生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn-ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が200g/Lとなる様に調整した。ここに、SiCl_(4)を300ml添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100g/Lとなる様に精製したn-ヘプタンを導入した。フタル酸ジクロライド30mlを精製したn-ヘプタン270mlに混合した液を事前に調製しておき、その混合液をオートクレーブへ添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn-ヘプタンを導入した。ここへ、TiCl_(4)を1L添加し、95℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(ZA1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(ZA1)のTi含量は2.5重量%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(ZA1)のスラリーを固体成分(ZA1)として100g導入した。精製したn-ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、成分(ZA2)としてトリメチルビニルシランを25ml、成分(ZA3)としてt-Bu(Me)Si(OMe)_(2)を20ml、成分(ZA4)としてEt_(3)Alのn-ヘプタン希釈液をEt_(3)Alとして40g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分にはTiが1.8重量%、t-Bu(Me)Si(OMe)_(2)が4.5重量%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn-ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、Et_(3)Alのn-ヘプタン希釈液をEt_(3)Alとして10g添加し、240gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(Z)を得た。この固体触媒成分(Z)は、固体成分1gあたり2.1gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.6重量%、t-Bu(Me)Si(OMe)_(2)が4.3重量%含まれていた。
【0165】
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを窒素流通下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、トリエチルアルミニウム400ミリグラム、及び水素を4000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを750グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記の固体触媒成分を10ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量したところ320gのポリマーが得られた。
得られた重合体(B-4)の評価結果を表2に示す。
【0166】
[重合例5]:
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(143mg/mL)2.86mLを加え、水素を450Nml導入した。次いで液体プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。
その後、予備重合触媒2を、予備重合ポリマーを除いた重量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持した後、エタノール5mlを圧入して重合を停止した。そうしたところ315gの重合体が得られた。
得られた重合体(B-5)の評価結果を表2に示す。
【0167】
【表2】

・・・
【0171】
[実施例1?6、比較例1?9]
実施例1?6は表3に、また、比較例1?9は表4に示すとおり、各組成成分を配合し、ミキサーで混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出温度200℃にてストランドを押し出し、冷却カットして造粒し、ペレット状の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の評価結果などを表3、4に示した。
【0172】
【表3】

【0173】
【表4】



上記した引用文献1の特許請求の範囲の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記の成分(A)1?80重量%、成分(B)5?95重量%、成分(C)0?30重量%及び成分(D)0?30重量%の合計量(但し、成分(A)?成分(D)の合計は100重量%)100重量部に対して、成分(E)を0.01?1重量部含有することを特徴とする結晶性ポリプロピレン樹脂組成物。
成分(A):下記の要件(A-i)?(A-ii)を満たす結晶性ポリプロピレン
(A-i)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が10?200g/10分である。
(A-ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が5を超える。
成分(B):下記の要件(B-i)?(B-vi)を満たすプロピレン系重合体
(B-i)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.01?100g/10分である。
(B-ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Q値)が3.5?10.5である。
(B-iii)GPCによって得られる分子量分布曲線において、全量に対して、分子量(M)が200万以上の成分の比率が0.4重量%以上10重量%未満である。
(B-iv)オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下である。
(B-v)^(13)C-NMRで測定するアイソタクチックトライアッド分率(mm)が95%以上である。
(B-vi)伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が6.0以上である。
成分(C):熱可塑性エラストマー
成分(D):無機フィラー
成分(E):結晶核剤」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】
下記条件(ア-i)?(ア-iii)を満たすプロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)50?100重量部、および、下記条件(イ-i)?(イ-iii)を満たす熱可塑性樹脂(イ)0?50重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物(プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)と熱可塑性樹脂(イ)との合計を100重量部とする。)を成形してなることを特徴とする保存用嵌合容器部材。
プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)
(ア-i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独またはエチレン含量7wt%以下のプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A)を30?95wt%、第2工程で成分(A)よりも3?20wt%多くのエチレンを含有するプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(B)を70?5wt%逐次重合することで得られたプロピレン-エチレンブロック共重合体であること。
(ア-ii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110?150℃の範囲にあること。
(ア-iii)固体粘弾性測定により得られる温度-損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有すること。
熱可塑性樹脂(イ)
(イ-i)曲げ弾性率がプロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)よりも低いこと。
(イ-ii)密度が0.860?0.920g/cm^(3)の範囲内にあること。
(イ-iii)メルトフローレート(230℃、21.18N)が1.0?50g/10分の範囲内にあること。」

(2b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋と容器本体とが嵌合して内容物を保存できる上、開封-密封を繰り返して行うことのできる保存用嵌合容器部材に関し、さらに詳しくは、柔軟性、耐熱性、透明性、クリーン性に優れた保存用嵌合容器部材に関する。
・・・
【0004】
このような問題への対応として、透明性を悪化させないために、第2工程で製造されるエチレン-プロピレンランダム共重合体が相分離を起こさない範囲にエチレン含量を抑制するという提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。
上記において、第1工程でプロピレンのホモ重合体またはエチレン含量の少ないプロピレン-エチレン共重合体を、第2工程でエチレン含量が第1工程より多いものの比較的少ないプロピレン-エチレン共重合体エラストマーを、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて連続重合するという手法では、チーグラー・ナッタ系触媒は活性点の種類が複数あるため、プロピレン-エチレン共重合体の結晶性および分子量分布が広くなり、低結晶性かつ低分子量の成分を多く生成してしまう。その結果、成形品を長期間もしくは高温下で保管した際に、これらの低結晶性かつ低分子量の成分が成形品の表面にブリードアウトする現象が発生し、商品価値を大きく損なってしまう。
このブリードアウトの原因となる低結晶性や低分子量成分の生成を抑制するために、エラストマーの固有粘度すなわち平均分子量をある程度以上高くする手法(例えば、特許文献3参照。)もあるが、分子量分布が広いために、平均分子量を増加させても低結晶性かつ低分子量の成分の生成を完全には抑えることができない。そのため、透明性が十分でなく、べたつきやブリードアウトは多少改善されるものの不十分なレベルである。さらに、エラストマーの平均分子量が高いことでフィッシュアイと呼ばれる外観不良を発生しやすくなるうえ、流動性が低下してしまうために成形性が悪化する。その改良のためには造粒工程において有機過酸化物などによる流動性のコントロールが必要となるが、それにより成形品の臭いや内容物の味を悪化させるという問題をも有している。」

(2c)「【0018】
[1]プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)
本発明で用いられるプロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)とは、第1工程で、プロピレン単独またはエチレン含量7wt%以下のプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A)を30?95wt%重合した後、第2工程で、第1工程よりも3?20wt%多いエチレン量を含むプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(B)を70?5wt%逐次重合することで得られる。
なお、ここでいうプロピレン-エチレンブロック共重合体とは、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A)(以下、成分(A)という。)と、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(B)(以下、成分(B)という。)を逐次重合することより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(A)と成分(B)とが完全にブロック状に結合されたものでなくても良い。
上記要件を以下の(1-1)?(1-8)で詳細に説明する。
【0019】
(1-1)成分(A)中のエチレン含量:[E]A
第1工程で製造される成分(A)は、成形品耐熱性を発現するために、融点が比較的高く、結晶性を有するプロピレン単独重合体、もしくはエチレン含量が7wt%以下のプロピレン-エチレンランダム共重合体である必要がある。エチレン含量が7wt%を超えると融点が低くなりすぎ、製品の耐熱性を悪化させる恐れがある。エチレン含量は5wt%以下が好ましく、3wt%以下がさらに好ましい。
【0020】
(1-2)成分(B)中のエチレン含量:[E]B
第2工程で製造される成分(B)は、プロピレン-エチレンブロック共重合体中でゴム弾性成分の役割を有し、柔軟性や耐寒衝撃性を付与するために必要な成分である。
成分(B)のエチレン含量の範囲は、上記効果を十分に発揮するために、成分(A)のエチレン含量との差[E]B-[E]A([E]gap)によって規定される。[E]B-[E]Aは3?20wt%の範囲であることが必要であり、好ましくは6?18wt%、さらに好ましくは8?16wt%である。
[E]gapが、3wt%以下の場合、耐寒衝撃性が十分でなく好ましくない。また、20wt%を超えると第1工程で製造される成分(A)との相溶性が悪くなるため、透明性が著しく悪化するため好ましくない。[E]gapが6?18wt%、さらには8?16wt%においては、長期保管時もしくは加熱時のブリードアウト性もさらに良好となるため、より好ましい。
・・・
【0038】
(1-6)メルトフローレート(MFR)
本発明で使用されるプロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)のメルトフローレート(MFR)は、0.5?100g/10分が好ましく、より好ましくは2?50g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では成形が困難になり、100g/10分を超えると耐衝撃性が期待できなくなる。射出成形においては、5?35g/10分がさらに好ましい。
メルトフローレート(MFR)は、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)の重合条件である温度や圧力を調節したり、重合時において水素等の連鎖移動剤の添加量を制御したりすることにより、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。」

(2d)「【0056】
(3)プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)の構成要素の制御方法
本発明に用いられるプロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)の各要素は、以下のように制御され、本発明の共重合体に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
【0057】
(3-1)成分(A)
成分(A)については、エチレン含量[E]Aを制御する必要がある。
本発明では、[E]Aを所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン-エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。
例えば、[E]Aを7wt%未満に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.3以下の範囲、好ましくは0.2以下の範囲とすればよい。
【0058】
(3-2)成分(B)
成分(B)については、エチレン含量[E]Bを制御する必要がある。
本発明では、[E]Bを所定の範囲に制御するためには、[E]Aと同様に、第2工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]Bを3?27wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.005?6の範囲、好ましくは0.01?3の範囲とすればよい。
【0059】
(3-3)W(A)とW(B)
成分(A)の量W(A)と成分(B)の量W(B)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と成分(B)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(A)を増やしてW(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆もまた同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本発明にて実施するエチレン含有量[E]Aおよび[E]Bの範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第2工程の活性を維持するために第1工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、 第1工程にてエチレン含有量[E]Aを下げ、生産量W(A)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げるおよび/または重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは、第2工程にてエチレン含有量[E]Bを上げ、生産量W(B)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げるおよび/または重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
【0060】
(3-4)MFR(A)とMFR(B)
プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)のメルトフローレートMFR(W)は、成分(A)のメルトフローレートMFR(A)と、成分(B)のメルトフローレートMFR(B)とがそれぞれに寄与することにより定まる値である。すなわち、MFR(W)、MFR(A)、MFR(B)と、各成分の重量比率W(A)、W(B)との間には、次式が成立する。
log{MFR(W)}=W(A)×log{MFR(A)}+W(B)×log{MFR(B)}
【0061】
この式を用いることにより、第1工程後に得られたポリマーのメルトフローレートMFR(A)、第2工程後に得られたポリマーのメルトフローレートMFR(W)、W(A)、W(B)とから、成分(B)のメルトフローレートを算出することができる。
成分(A)のメルトフローレートMFR(A)と成分(B)のメルトフローレートMFR(B)とは、成分(A)を製造する第1工程、および、成分(B)を製造する第2工程のそれぞれにおいて、重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤の添加量を制御したりすることにより、容易に調整を行なうことができる。すなわち、MFR(A)とMFR(B)との調整は、本発明の規定を満たす範囲内であれば、それぞれ独立に行うことができる。中でも、MFR(B)がMFR(A)よりも小さい場合には、成形品を長期保管もしくは加熱しても、ブリードアウトによるべたつきや外観悪化がほぼ完全に防止できることから特に好ましい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。」

(2e)「【0064】
[2]熱可塑性樹脂(イ)
・・・
【0068】
熱可塑性樹脂(イ)としては、本発明に規定された範囲を満たすのであれば、あらゆる公知の樹脂を使用することができるが、例えば、ポリエチレンを使用することができる。その代表例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。高密度ポリエチレン(HDPE)は柔軟性に乏しいため、好ましくない。特に、メタロセン触媒を用いて重合されたPEは、低分子量成分や低結晶性成分を含まないため、べたつき、ブリードアウト等の観点からより好ましい。
【0069】
また、熱可塑性樹脂(イ)として、エチレン系のエラストマーもしくはプラストマーと呼ばれる樹脂を用いることもできる。コモノマーは、炭素数4?10のα-オレフィン、炭素数3?10のアルカジエンからなる群のうち少なくとも一種類であり、コモノマーの含有量は10?50wt%であることが望ましい。一般にコモノマー含有量が大きいほど柔軟性が向上し、成形品の柔軟化効果が大きくなる反面、耐熱性は低下する。このため、コモノマー含有量が10wt%より小さくなると、柔軟性が乏しくなり併用効果が薄れる。一方、コモノマー含有量が50wt%より大きくなると、耐熱性が著しく劣り、加熱時の使用に耐えられなくなるなどの不具合が生じるため、好ましくない。コモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンを用いた際に、より有効に柔軟化させることができる。エチレン系のエラストマーもしくはプラストマーの代表例としては、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0070】
さらに、熱可塑性樹脂(イ)として、プロピレン系のエラストマーもしくはプラストマーを用いることもできる。コモノマーは、エチレン、炭素数4?10のα-オレフィン、炭素数3?10のアルカジエンからなる群のうち少なくとも一種類であり、コモノマーの含有量は7?40wt%であることが望ましい。一般にコモノマー含有量が大きいほど柔軟性が向上し、成形品の柔軟化効果が大きくなるが耐熱性は低下する。このため、コモノマー含有量が7wt%より小さくなると柔軟性が乏しくなり併用効果が薄れる。一方、コモノマー含有量が40wt%より大きくなると、耐熱性が著しく劣り、加熱時の使用に耐えられなくなるなどの不具合が生じるため、好ましくない。コモノマーの例としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。
【0071】
さらにまた、熱可塑性樹脂(イ)として、スチレン系のエラストマーを用いることもできる。コモノマーは、炭素数2?10のα-オレフィン、炭素数3?10のアルカジエンからなる群のうち少なくとも一種類であり、コモノマーの含有量は20?80wt%であることが好ましい。一般にコモノマー含有量が大きいほど柔軟性が向上し、成形品の柔軟化効果が大きくなる反面、耐熱性は低下する。コモノマー含有量が20wt%より小さくなると柔軟性が乏しくなり、併用効果が薄れる。しかし、コモノマー含有量が80wt%より大きくなると、耐熱性が著しく劣り、加熱時の使用に耐えられなくなるなどの不具合が生じるため、好ましくない。スチレン系のエラストマーの代表例としては、スチレン・エチレン・プロピレンジブロック共重合体(SEP)、スチレン・エチレン・ブテンジブロック共重合体(SEB)、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレントリブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。また、これらを水添した重合体を使用してもよい。」

また、段落【0088】以降の実施例においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体の具体例である製造例1?製造例3が記載され、それぞれの製造例で製造された樹脂の物性が段落【0110】の表3として以下のとおり記載されている。


そして、段落【0114】以降では、実施例1?11、比較例1?5として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)と熱可塑性樹脂(イ)を含む樹脂組成物を製造し、その物性が段落【0115】及び【0116】の表4及び5として以下のとおり記載されている。


3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(3a)「【請求項1】
下記の成分(a)及び(b)を含有し、
成分(a)及び(b)の合計質量に対する、成分(a)の質量比率が10%以上、90%以下であり、成分(b)の質量比率が90%以下、10%以上であり、
架橋されている
ことを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物。
(a)エチレンと、炭素数が3以上、12以下の1種以上のα-オレフィンとからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という。)法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0未満である、2種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体から構成され、
密度が0.850g/cm^(3)以上、0.900g/cm^(3)以下であり、
GPC法による分子量分布{質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が3.0以上である、オレフィン系共重合体群。
(b)密度が0.900g/cm^(3)より大きいオレフィン系重合体。」

また、段落【0070】以降の実施例においては、成分(a)のエチレン・α-オレフィン共重合体として、エチレンとブテン-1との共重合体(三井化学(株)社製タフマーA1050S)を用いること、この共重合体の重合触媒はメタロセン系、密度は0.860g/cm^(3)、Mw/Mn=2.2、MFR(190℃、21N荷重)=1.5g/10分であることが記載されいている。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
本願発明1のプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)は、エチレン含量が2?8重量%であり、プロピレンが主成分である樹脂組成物であるから、引用発明の成分(A)である結晶性ポリプロピレンは、本願発明1のプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)と、プロピレンが主成分である樹脂を含む組成物という限りにおいて一致する。
本願発明1のポリプロピレン樹脂(X)の特性(i)であるMFRの測定方法は、発明の詳細な説明の段落【0015】をみると、230℃、2.16kg荷重であるといえるから、引用発明の成分(B)であるプロピレン系重合体であって、要件(B-i)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.01?100g/10分であること、及び、要件(B-ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Q値)が3.5?10.5であることは、本願発明1のポリプロピレン樹脂(X)であって、特性(i):MFRが0.1?30g/10分であること、及び、特性(ii):GPCによる分子量分布(Mw/Mn)が3.0?10であることと一致する。
また、引用発明の結晶性ポリプロピレン樹脂組成物は、本願発明1の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物と、ポリプロピレン系樹脂組成物という限りにおいて一致する。
さらに、ポリプロピレン系樹脂組成物に含まれる成分の配合割合について、引用発明の成分(A)を1?80重量%、成分(B)を5?95重量%含むことは、本願発明1の、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)を1?95重量%、ポリプロピレン樹脂(X)を5?99重量%からなることと一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明とでは、
「プロピレンが主成分である樹脂を含む組成物(A)1?95重量%、及び下記の(i)?(ii)の特性を有するポリプロピレン樹脂(X)5?99重量%からなるポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(i):MFRが0.1?30g/10分である。
特性(ii):GPCによる分子量分布(Mw/Mn)が3.0?10」である点で一致し、次の点で相違する。

上記一致点であるポリプロピレン系樹脂組成物の成分であるプロピレンが主成分である樹脂を含む組成物(A)に関して、
(相違点1)本願発明1では、エチレン含量が0.1?3重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が10?300g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(a)と、エチレン含量が5?20重量%、MFRが1?50g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(b)とを含有し、プロピレン-エチレン共重合体(a)とプロピレン-エチレン共重合体(b)の重量比が90:10?60:40であることが特定されているのに対し、引用発明では、このような特定がされていない点

(相違点2)本願発明1では、エチレン含量が2?8重量%であり、かつ、チーグラー・ナッタ触媒によって製造されると特定されているのに対し、引用発明では、このような特定がされていない点

上記一致点であるポリプロピレン系樹脂組成物の成分であるポリプロピレン樹脂(X)に関して、
(相違点3)本願発明1では、長鎖分岐構造を有すると特定しているのに対して、引用発明では、このような特定がされていない点

(相違点4)本願発明1では、特性(ii)として、GPCによる分子量分布について、Mz/Mwが2.5?10であると特定しているのに対して、引用発明では、このような特定がされていない点

(相違点5)本願発明1では、特性(iii)として、溶融張力(MT)(単位:g)は、上限値が40であり、かつ、log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15のいずれかを満たすことが特定されているのに対して、引用発明では、このような特定がされていない点

(相違点6)本願発明1では、特性(iii)として、25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満であることが特定されているのに対して、引用発明では、オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下であることと特定されている点

(相違点7)ポリプロピレン系樹脂組成物が、本願発明1では、射出成形用であると特定されているのに対して、引用発明では、このような特定がされていない点

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
ア 相違点4について
このMz/Mwについて、本願明細書の段落【0037】には、ポリプロピレン樹脂(X)は、分子量分布が比較的広いことが必要であることが記載され、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータであるMz/Mwが2.5以上10以下であることが必要であることが記載されている。引用文献1には、関連する記載として、Mw/Mnは、分子量分布の広がりを表す指標であり、この値が大きいほど、分子量分布が広いことを意味し、この値が小さすぎると、分布が狭い為に、溶融流動性と加工性のバランスが悪くなる一方、この値が大きすぎると、必要としない(低)分子量成分の量が増えて、溶融流動性を悪化させるおそれがあることが記載されている(摘記(1d)の段落【0041】参照。)。また、引用文献1には、GPCによる分子量分布曲線において、分子量分布が高分子量側へ偏って広がること、分子量が200万以上の成分の比率が0.4重量%以上10重量%未満で有ることが、流動性、成形性の観点から好ましいことが記載されている(摘記(1d)の段落【0042】?【0049】参照。)。
しかしながら、引用文献1には、成分(B)であるプロピレン系重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、3.5以上、10.5以下の範囲であることが記載されているにとどまり、Mz/Mwが2.5?10であることについては明示がない。また、引用文献1において合成されたプロピレン系重合体が、Mz/Mwが2.5?10という特定を有するものであることは明かではない。さらに、引用文献1に記載されたMw/Mnが、3.5?10.5であることや、分子量分布が高分子量側へ偏って広がること、分子量が200万以上の成分の比率が0.4重量%以上10重量%未満であることにより、Mz/Mwが2.5?10となる技術常識があるわけでもない。そして、Mz/Mwが2.5?10とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるといえる記載もない。
引用文献2には、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含む保存用嵌合容器部材に関する発明が記載されているだけであり、また、引用文献3には、特定の物性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(a)とオレフィン系重合体(b)を含有する熱可塑性エラストマー組成物が記載されているだけであり、相違点4に関する技術的事項は何も記載がない。

そうすると、相違点4は、実質的な相違点であり、また、当業者といえどもこの相違点を容易に想到できたとはいえない。

イ 相違点5について
引用文献1には、成分(B)であるプロピレン系重合体の溶融張力について、高い溶融張力を持ちながら、優れた溶融延展性をもつことが記載され、溶融張力の具体的な測定方法として、東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時にプーリーに検出される張力を溶融張力(MT)とすること(キャピラリー:直径2.1mm、シリンダー径:9.6mm、シリンダー押出速度:10mm/分、巻き取り速度:4.0m/分、温度:230℃)、溶融張力は、更に好ましくは15g以上であることが記載されている(摘記(1d)の段落【0076】、【0077】参照)。
しかしながら、本願明細書の段落【0042】をみると、本願発明1の溶融張力の測定方法は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:20mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で測定すると記載されており、引用文献1の測定方法と同じであるとはいえず、測定方法が異なれば溶融張力の値も異なるといえるから、引用文献1の上記記載からみて、引用文献1に記載された溶融張力の値が本願発明1と同じ溶融張力の値であるということはできない。また、引用文献1において合成されたプロピレン系重合体の溶融張力の値が、相違点5に係る特定を有するものであることは明かではない。さらに、引用文献1には、引用発明において、相違点5に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる記載もない。
そして、引用文献2及び3に記載されている事項は、上記アで述べたとおりであり、相違点5に関する技術的事項は何も記載がない。

そうすると、相違点5は、実質的な相違点であり、また、当業者といえどもこの相違点を容易に想到できたとはいえない。

ウ 相違点6について
ポリプロピレン樹脂(X)の25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)について、本願明細書の段落【0047】には、ポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高く、成形品のベタツキやブリードアウトの原因となる低結晶性成分が少ないことが好ましく、この低結晶性成分は、25℃キシレン可溶成分量(CXS)によって評価されることが記載されている。
一方、引用文献1には、成分(B)であるプロピレン系重合体は、オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)測定によって得られる溶出曲線において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下であることが記載され、40℃以下の温度で溶出する成分は、低結晶性成分であり、この成分の量が多いと、製品全体の結晶性が低下し、製品の剛性といった機械的強度が低下してしまうことが記載されている(摘記(1d)の段落【0050】)。
このように、相違点6に関する本願発明1と引用発明の特定は、両者ともポリプロピレン樹脂中の低結晶性成分の量を評価しているという点においては、同様な指標であるということができるかもしれないが、引用発明におけるオルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下であれば、本願発明1における25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満であるということができる技術常識はない。また、引用文献1において合成されたプロピレン系重合体が、本願発明1で特定される25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)を満たすことは明かではない。さらに、引用文献1には、引用発明において、相違点6に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる記載もない。
そして、引用文献2及び3に記載されている事項は、上記アで述べたとおりであり、相違点6に関する技術的事項は何も記載がない。

そうすると、相違点6は、実質的な相違点であり、また、当業者といえどもこの相違点を容易に想到できたとはいえない。

エ 小括
そうすると、他の相違点である相違点1?3及び7について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献1?3に記載されて事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、当業者が引用発明1?3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-19 
出願番号 特願2015-71331(P2015-71331)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 督  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 橋本 栄和
佐藤 健史
発明の名称 射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および射出成形体  
代理人 金山 賢教  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 坪倉 道明  
代理人 重森 一輝  
代理人 城山 康文  
代理人 小野 誠  
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