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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B |
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管理番号 | 1355222 |
審判番号 | 不服2018-14934 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-08 |
確定日 | 2019-10-01 |
事件の表示 | 特願2015-135149号「エレベータ監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開、特開2017- 13999号、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成27年7月6日の出願であって、平成30年3月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?10に係る発明(以下、「本願発明1?10」という。)は、平成30年4月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1、4?6、9及び10は次のとおりのものである。 「【請求項1】 監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置であり、前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 地滑り監視装置と、 を備え、 前記地滑り監視装置は、 大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアに大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているか否かを判定する地滑り判定手段と、 大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると前記地滑り判定手段によって判定されると、前記記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに存在するエレベータ装置に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と、 を備えたエレベータ監視システム。 【請求項4】 監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置であり、前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 地滑り監視装置と、 を備え、 前記地滑り監視装置は、 大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアに大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているか否かを判定する地滑り判定手段と、 大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると前記地滑り判定手段によって判定されると、前記記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに存在するエレベータ装置を担当する保守員の携帯端末に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と、 を備えたエレベータ監視システム。 【請求項5】 監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置であり、前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 地滑り監視装置と、 を備え、 前記地滑り監視装置は、 大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアに大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているか否かを判定する地滑り判定手段と、 大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると前記地滑り判定手段によって判定されると、大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに保守員が出動しているか否かを判定する保守員位置判定手段と、 大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると前記地滑り判定手段によって判定されると、大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに出動していると前記保守員位置判定手段によって判定された保守員の携帯端末に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と、 を備えたエレベータ監視システム。 【請求項6】 監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置であり、前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 地滑り監視装置と、 を備え、 前記地滑り監視装置は、 降水量情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が降水量情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアの実行雨量を計算する実行雨量計算手段と、 前記実行雨量計算手段によって計算された実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する地滑り判定手段と、 実効雨量が閾値を超えていると前記地滑り判定手段によって判定されると、前記記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち実効雨量が閾値を超えているエリアに存在するエレベータ装置に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と、 を備えたエレベータ監視システム。 (当審注:「実行雨量」は「実効雨量」の意であることが明らかであるので、特許請求の範囲の記載のとおり認定する。) 【請求項9】 監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置であり、前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 地滑り監視装置と、 を備え、 前記地滑り監視装置は、 降水量情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が降水量情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアの実行雨量を計算する実行雨量計算手段と、 前記実行雨量計算手段によって計算された実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する地滑り判定手段と、 実効雨量が閾値を超えていると前記地滑り判定手段によって判定されると、前記記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち実効雨量が閾値を超えているエリアに存在するエレベータ装置を担当する保守員の携帯端末に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と、 を備えたエレベータ監視システム。 【請求項10】 監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置であり、前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 地滑り監視装置と、 を備え、 前記地滑り監視装置は、 降水量情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が降水量情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアの実行雨量を計算する実行雨量計算手段と、 前記実行雨量計算手段によって計算された実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する地滑り判定手段と、 実効雨量が閾値を超えていると前記地滑り判定手段によって判定されると、実効雨量が閾値を超えているエリアに保守員が出動しているか否かを判定する保守員位置判定手段と、 実効雨量が閾値を超えていると前記地滑り判定手段によって判定されると、実効雨量が閾値を超えているエリアに出動していると前記保守員位置判定手段によって判定された保守員の携帯端末に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と、 を備えたエレベータ監視システム。」 なお、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7及び8は、本願発明6を減縮した発明である。 3.原査定の概要 原査定は、本願発明1、2、4、6、7及び9は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 なお、原査定には、平成30年4月24日の手続補正により新たに追加された本願発明3、5、8、10についても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨付記されている。 引用文献1.特開2000-118902号公報 引用文献2.特開2008-198073号公報 引用文献3.特開2009-214994号公報 引用文献4.特開2008-230745号公報 引用文献5.特開2005-164421号公報 4.引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1に記載された事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付したものである。以下同様である。 ア 「【0001】 【発明の属する技術の分野】この発明は、顧客ビルが浸水した場合に、そこに設置されたエレベータのかご及びつり合おもりが冠水しないようにエレベータを遠隔監視して制御する装置に係るものである。」 イ 「【0003】 ・・・しかし、従来のエレベータの冠水待避の運転(以下、冠水運転という。)は、・・・」 ウ 「【0012】 【発明の実施の形態】実施の形態1.図1から図6は、この発明の実施の形態1を示す。図1において、1は顧客ビルに設置されたエレベータを遠隔監視する監視センター、2は監視対象域を複数の地区に分割し、この地区ごとに単位時間当たりの雨量r、河川又は排水溝の水位L等を外部から受信して入力する外部情報入力部、3は入力された単位時間当たりの雨量r及びこの雨量rを積分した総雨量R等の気象情報が地区ごとに記憶された気象情報記憶部、4は監視対象域での河川や排水溝等の水位L及び顧客ビルが冠水するときの河川や排水の水位LW、更にこれら河川等における過去の洪水災害履歴データ等の地区に付随した情報が地区ごとに記憶された地区情報記憶部、5は監視対象域で発生した堤防破壊による洪水等の災害情報が入力される災害情報入力部、6は顧客ビルの所在地、電話番号、エレベータごとに付された管理番号、冠水履歴、周辺建物に関するデータ等、顧客ビルに付随した情報が地区ごとに記憶された顧客ビル情報記憶部、7は処理内容を表示する表示器である。 【0013】8は総雨量R等の情報が地区ごとに記録された気象情報記憶部から防災対象とされた地区PKについてその時点における情報を収集する気象情報収集部、9は河川や排水溝の水位L及び冠水水位LWや洪水災害履歴等の情報を地区情報記憶部4から上記防災対象地区PKについて収集する排水情報収集部である。10は冠水予測演算器で、気象情報収集部8からその時点における水量を知得し、排水情報収集部9から排水に関する情報を知得して、その時の排水溝の水位Lを演算し、更に水位Lの上昇に伴う排水能力の低下と地区の保水量Kの上昇等から、防災対象地区PKの冠水予測をするものである。11は冠水すると予測された防災対象地区PKに所在する顧客ビルとその顧客ビルに設置されているエレベータの管理番号を顧客ビル情報記憶部6から検索する冠水予測ビル検索部である。12は検索された顧客ビルに向けて監視センター1からエレベータの冠水運転を指令する通信回線処理部である。 【0014】a1?aqは電話回線からなる通信回線、b1?bqは電話回線a1?aqによって監視センター1に接続されて監視対象のエレベータが設置されている顧客ビルである。従って、防災対象地区PKのエレベータに限らず、監視される全エレベータである。21は顧客ビルb1に設置された通信回線処理部、22は同じくエレベータの制御装置、23はエレベータの冠水を検出するために顧客ビルa1の例えばピットに設置された冠水検出器である。顧客ビルb2?bqも同様に構成されている。」 エ 「【0018】図4は、顧客ビルb1?bqに冠水運転を指令するための流れ図である。手順S21で変数Pを地区P1に初期設定する。手順S22で変数Pに設定された地区は防災対象地区PKに属するか調べる。防災対象地区PKでない場合は手順S33に移る。防災対象地区PKの場合は手順S23で地区Pの総雨量R(P)を気象情報記憶部3から読み取る。手順S24で地区Pの河川や排水溝の水位L(P)を読み取る。手順S25で総雨量R(P)と水位L(P)とから(1)式によって地区Pにおける保水量K(P)を算出する。手順S26で保水量K(P)が冠水する虞のある保水量(以下、冠水保水量という。)KW(P)に達したかを調べる。即ち、図2の時刻t2における保水量KWに達した場合は、「Y」となって手順S27で地区Pで冠水の発生を予測する。手順S28で地区Pに所在する顧客ビルb1?bqを検索する。手順S29で顧客ビル情報記憶部6に冠水予測を記録する。手順S30で対象顧客ビルb1?bqに冠水運転を指令して手順33に移る。一方、手順S26で保水量K(P)が冠水保水量KW(P)に達していない場合は、「N」となって手順S31で防災対象地区PKに属する顧客ビルb1?bqに設置の冠水検出器23から冠水検出信号が送信されてきたかを調べる。送信された場合は手順S27に移り、以下上記の処理がなされる。送信されていない場合は、手順S32で災害情報入力部5を介して防災対象地区PKにおける災害情報があったか否か調べる。災害情報が有った場合は手順S27に移り、以下上記の処理がなされる。無かった場合は手順S33に移る。ここで、変数Pは最後の地区Pnまで処理したか否か調べる。最後でない場合は手順S34で変数Pを増加させて次ぎの地区P1?Pnについて手順S12から同様の処理を繰り返す。最終的に最後の地区Pnまで処理がなされて終了する。」 以上の記載事項並びに【図1】及び【図4】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明〕 「複数の顧客ビルに設置されたエレベータを遠隔監視する監視センター1であって、 顧客ビルの所在地やエレベータごとに付された管理番号等、顧客ビルに付随した情報が地区ごとに記憶された顧客ビル情報記憶部6と、 監視対象域を複数の地区に分割し、この地区ごとに単位時間当たりの雨量r、河川又は排水溝の水位L等を外部から受信して入力する外部情報入力部2と、 入力された単位時間当たりの雨量r及びこの雨量rを積分した総雨量R等の気象情報が地区ごとに記憶された気象情報記憶部3と、 気象情報収集部8からその時点における水量を知得し、防災対象地区PKの冠水予測をする冠水予測演算器10と、 冠水すると予測された防災対象地区PKに所在する顧客ビルとその顧客ビルに設置されているエレベータの管理番号を顧客ビル情報記憶部6から検索する冠水予測ビル検索部11と、 検索された顧客ビルに向けて監視センター1からエレベータの冠水運転を指令する通信回線処理部索部12と、 を備えたエレベータを遠隔監視する監視センター1。」 (2)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、前兆現象による土砂災害の発生危険度を評価した避難勧告判断支援システムに関し、更に詳しくは、既往の雨量情報による土砂災害発生危険度に加え、前兆現象情報を組み合わせて、地域の土砂災害発生危険度を総合的に評価し、避難勧告の発令範囲等を的確に決定・判断することができる有用な避難勧告判断支援システムに関する。」 イ 「【0013】 避難単位の設定手段と、降雨に応じた危険度レベルの設定手段と、前兆現象に応じた危険度レベルの設定手段と、前兆現象による危険度レベルと降雨による危険度レベルの組み合わせによる総合的な危険度レベルの設定手段と、降雨による危険度レベルの評価と、前兆現象による危険度レベルの評価と、総合的な危険度レベルの評価とを備えて、的確な危険度レベルの表示を行う。 【実施例】 【0014】 以下、本発明に係る避難勧告判断支援システムの実施の一例を図面を参照しながら説明する。図中Aは、本発明に係る避難勧告判断支援システムであり、この支援システムAの構築手順は、図1のフローチャートに示すとおりである。 【0015】 すなわち、降雨発生前の事前情報として、避難単位の設定手段1と、降雨に応じた危険度レベルの設定手段2と、前兆現象に応じた危険度レベルの設定手段3と、前兆現象による危険度レベルと降雨による危険度レベルの組み合わせによる総合的な危険度レベルの設定手段4とを備え、降雨の発生後に、降雨情報による危険度レベルの評価5と前兆現象による危険度レベルの評価6とを組み合わせた総合的な危険度レベルの評価7をもって、危険度レベル表示8を行うものである。」 (3)引用文献3に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、地震発生等の非常事態が発生した場合の昇降機の復旧のための機能を有する昇降機保守管理装置に関する。」 イ 「【0011】 本発明によれば、災害が発生した場合の保守員による昇降機の適切な復旧作業を支援することができる。」 ウ 「【0051】 次に、図1に示した構成のエレベータ遠隔保守システムの動作について説明する。本実施形態においては災害の一例として地震が発生した場合について説明する。 図11は、本発明の実施形態におけるエレベータ遠隔保守システムのセンタ装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。 まず、地震が発生して、監視センタ1のセンタ装置2の災害情報受信部14が当該地震の発生を示す災害情報を受信すると(ステップS1)、災害情報受信部14は、この災害情報で示される災害種別を分類する(ステップS2)。モード切替部15は、制御モードを地震に関する緊急連絡モードに切り替える(ステップS3)。 【0052】 また、モード切替の別の例として、各地のエレベータ利用者は、図10に示す乗りかご内操作盤41に設けられた緊急連絡ボタン43を操作して監視センタ1を呼び出すことで、監視センタ1側の職員が入力装置22を操作して制御モードを緊急連絡モードへ切り換えてもよい。 【0053】 各保守員の携帯通信端末装置7は、GPS(Global Positioning System)を用いた位置信号を監視センタ1に送信している。センタ装置2の位置情報取得部18は、この位置信号をもとに各保守員の現在位置情報を取得して主記憶装置12に記憶するとともに、表示装置24の画面の地図上に表示させる。この状態で、演算部16は災害により故障が発生したエレベータの遠隔監視装置4から送信される異常通知信号、またはエレベータの設置建物の管理者の電話による異常発報に応答して、表示装置24の地図上に故障発生エレベータの位置情報を表示させる(ステップS4)。 ・・・(中略)・・・ 【0057】 割当処理部19は、各保守員の現在位置情報から物件情報記憶部36に記憶される物件情報第1テーブル上で管理される各建物の住所までの距離、および優先度テーブル上の各物件の優先度の高低を考慮して、各保守員のそれぞれについて、物件情報記憶部36に記憶される物件情報第2テーブルで示される各エレベータの物件名から当該保守員が復旧のための保守作業を行なうべきエレベータの物件名を選択する。 【0058】 割当処理部19は、この選択した物件名および当該物件名に関連付けられる現場位置、経路情報、入館情報、顧客代表者名、顧客連絡先を物件情報第2テーブルから読み出し、これら読み出した情報を前述した対応情報テーブル上の該当保守員の保守員IDに関連付ける(ステップS7)。 ・・・(中略)・・・ 【0060】 指示情報生成部20は、対応情報テーブルおよび計算済みの優先順位をもとに各保守員に対応する指示情報テーブルを生成する。通知処理部21は、対応情報テーブル上の各保守員の保守員IDに対応付けられるメールアドレス宛てに、生成済みの指示情報テーブル上の該当保守員IDおよび当該IDに関連付けられる物件名、現場位置、経路情報、入館情報、顧客代表者名、顧客連絡先を指示情報として送信する(ステップS8)。 【0061】 送信先の携帯通信端末装置7が指示情報である物件名、現場位置、経路情報、入館情報、顧客代表者名、顧客連絡先を受信すると、保守員は携帯通信端末装置7の入力装置の操作により指示情報の確認通知信号をセンタ装置2に送信する、この確認通知信号には指示情報に含まれていた保守員IDおよび各エレベータの物件名が含まれる。」 (4)引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、エレベータの異常発生時に保守員の派遣を行うエレベータの保守管理システムに関する。」 イ 「【0007】 本発明によれば、異常が発生した際に、その現場までの交通状況を考慮して保守員を効率的に派遣して復旧作業を行うことができる。」 ウ 「【0009】 図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの保守管理システムの構成を示す図である。図中の10は物件(建物)であり、監視対象とするエレベータ11が設置されている。 ・・・(中略)・・・ 【0012】 監視センタ18は、この通信ネットワーク17を介してエレベータ11の動作状態を遠隔的に監視している。なお、図1の例では、1台のエレベータ11しか図示されていないが、実際には各建物に設置された様々なエレベータが通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されている。監視センタ18では、これらのエレベータの動作状態を常時監視しており、異常が発生すれば、その現場に保守員19を派遣する。 【0013】 保守員19は、例えば携帯電話機などからなる通信用の端末装置20を所持している。この端末装置20にはGPS受信機能が備えられており、このGPS受信機能にて受信したGPS情報を監視センタ18に送信することで、監視センタ18側では保守員19の現在位置を特定できるようになっている。」 (5)引用文献5に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、地滑り移動方向のような地形変形移動方向を決定する地形変形移動方向決定方法およびその決定システムに関するものである。」 イ 「【0020】 本発明は、上記課題を解決するものであって、地滑りのような地形変形について、その移動方向を地形形状から客観的に判定する地形変形移動方向決定方法およびその決定システムの提供を目的とする。」 5.対比・判断 (1)本願発明1 本願発明1と引用発明とを対比する。 後者の「複数の顧客ビルに設置されたエレベータ」は、前者の「監視対象の複数のエレベータ装置」に相当する。 後者の「顧客ビルに向けて監視センター1からエレベータの冠水運転を指令する通信回線処理部12」は、前者の「監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置」に相当する。 後者の「顧客ビルの所在地やエレベータごとに付された管理番号等、顧客ビルに付随した情報が地区ごとに記憶された顧客ビル情報記憶部6」は、前者の「複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置」に相当する。 後者の「単位時間当たりの雨量r」は、前者の「大雨警報又は土砂災害警戒情報」と、「天候の情報」である限りにおいて一致し、後者の「監視対象域を複数の地区に分割し、この地区ごとに単位時間当たりの雨量r、河川又は排水溝の水位L等を外部から受信して入力する外部情報入力部2」は、前者の「大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信する情報受信手段」と、「天候の情報を受信する受信手段」である限りにおいて一致する。 後者の「エレベータを遠隔監視する監視センター1」は、前者の「エレベータ監視システム」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点1〕 「監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 天候の情報を受信する受信手段と、 を備えたエレベータ監視システム。」 〔相違点1〕 「情報処理装置」に関し、本願発明1は、「複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置」でもあるのに対し、引用発明の「顧客ビル情報記憶部6」は、そのような処理を行うとは特定されていない点。 〔相違点2〕 本願発明1は、「地滑り監視装置」を備え、当該地滑り監視装置は、 「大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信する情報受信手段と、 地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段と、 前記情報受信手段が大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信すると、前記記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアに大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているか否かを判定する地滑り判定手段と、 大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると前記地滑り判定手段によって判定されると、前記記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに存在するエレベータ装置に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と」、 を備えているのに対し、 引用発明は、監視対象域を複数に分割した地区ごとに単位時間当たりの雨量rを受信して、当該雨量rから防災対象地区PKの冠水予測を行い、冠水すると予測された防災対象地区PKに所在する顧客ビルとその顧客ビルに設置されているエレベータの管理番号を顧客ビル情報記憶部6から検索し、検索された顧客ビルに向けて監視センター1からエレベータの冠水運転を指令するものであり、「地滑り」を予測してエレベータに「警報」を発報するものではない点。 事案に鑑み、上記相違点2について、以下検討する。 本願発明1?10は、本願明細書の記載を参照すると、「地滑りが発生する可能性がある旨の情報を監視対象のエレベータ装置或いはそのエレベータ装置の保守員に配信できる」(段落【0005】及び【0010】を参照。)ことを発明の目的及び効果とし、当該目的及び効果は、本願発明1?10の「地滑り監視装置」により達成されるものと認められる。 そして、本願発明1の「地滑り装置」においては、 ア 地滑り地形分布図と情報処理装置に記憶された複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を「記憶手段」に記憶させる「登録手段」と、 イ 情報受信手段が大雨警報又は土砂災害警戒情報を受信すると、記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアに大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているか否かを判定する「地滑り判定手段」と ウ 大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると地滑り判定手段によって判定されると、記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに存在するエレベータ装置に、警報を発報する「発報手段」 を備えるものである。 これに対して、引用文献2には、「既往の雨量情報による土砂災害発生危険度に加え、前兆現象情報を組み合わせて、地域の土砂災害発生危険度を総合的に評価し、避難勧告の発令範囲等を的確に決定・判断することができる有用な避難勧告判断支援システム」(上記4.(2)アを参照。)が記載され、引用文献3及び4には、地震発生等の非常事態が発生した場合またはエレベータに異常が発生した場合に、保守員に連絡をとり派遣するための装置が記載され(上記4.(3)及び(4)を参照。)、引用文献5には、「地滑りのような地形変形について、その移動方向を地形形状から客観的に判定する地形変形移動方向決定方法およびその決定システム」が記載されている(上記4.(5)を参照。)。 しかしながら、引用文献2及び5には、土砂災害や地滑りを予測することは示されているものの、地滑り地形に存在するエレベータを予め記憶し(本願発明1の「記憶手段」及び「登録手段」に相当する構成)、当該エレベータの設置されたエリアに大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているかを判定して(本願発明1の「地滑り判定手段」に相当する構成)警報を発報すること(本願発明1の「発報手段」に相当する構成)は記載も示唆もされていない。 また、引用文献3及び4には、地震等の非常事態が発生した後またはエレベータに異常が発生した後に保守員に連絡をとることは示されているものの、地滑り発生の可能性を判定して警報を発報することは示されていない。 結局、上記相違点2に係る本願発明1の「地滑り監視装置」の構成は、引用文献2?5には何ら記載も示唆もされていないし、各引用文献の記載から導き出せるものともいえない。さらに、当該「地滑り監視装置」の構成が周知であったとする証拠もない。 そうすると、引用発明を相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本願発明2及び3 本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本願発明4 本願発明4は、本願発明1の「発報手段」の警報を発報する対象を、大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに存在するエレベータ装置を「担当する保守員の携帯端末」に変更したものである。 本願発明1と引用発明との相当関係を参照して、本願発明4と引用発明とを対比すると、少なくとも、本願発明4は、上記〔相違点2〕(上記(1)を参照。以下同様。)に係る本願発明1の構成のうちの「発報手段」の警報を発報する対象を「担当する保守員の携帯端末」とした「地滑り監視装置」の構成を備える点で、引用発明と相違する(以下、「相違点2’」という。)。 相違点2’について検討する。 上記(1)で述べたとおり、引用文献2?5は、相違点2に係る本願発明1の「地滑り監視装置」の構成を示唆するものではないので、その一部を変更した相違点2’に係る本願発明4の「地滑り監視装置」の構成についても、引用文献2?5が示唆しているとはいえないし、相違点2’に係る本願発明4の「地滑り監視装置」の構成が、各引用文献の記載から導き出せるものともいえない。また、当該「地滑り監視装置」の構成が周知であったとする証拠もない。 そうすると、引用発明を相違点2’に係る本願発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本願発明4は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本願発明5 本願発明5は、本願発明1に「大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されていると前記地滑り判定手段によって判定されると、大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに保守員が出動しているか否かを判定する保守員位置判定手段」を付加し、「発報手段」の警報を発報する対象を、「大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに出動していると前記保守員位置判定手段によって判定された保守員の携帯端末」に変更したものである。 本願発明1と引用発明との相当関係を参照して、本願発明5と引用発明とを対比すると、本願発明5は、少なくとも、上記〔相違点2〕に係る本願発明1の構成に、上記「保守員位置判定手段」の構成を付加し、「発報手段」の警報を発報する対象を「大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに出動していると前記保守員位置判定手段によって判定された保守員の携帯端末」とした「地滑り監視装置」の構成を備える点で、引用発明と相違する(以下、「相違点2’’」という。)。 相違点2’’について検討する。 本願発明5の「保守員位置判定手段」は、「地滑り判定手段によって判定される」ことが前提となっている。 上記(1)で述べたとおり、引用文献2?5は、相違点2に係る本願発明1の「地滑り監視装置」の構成を示唆するものではないので、その「地滑り監視装置」を構成する「地滑り判定手段」が関与する「保守員位置判定手段」が付加された相違点2’’に係る本願発明5の「地滑り監視装置」の構成についても、引用文献2?5が示唆しているとはいえないし、相違点2’’に係る本願発明5の「地滑り監視装置」の構成が、各引用文献の記載から導き出せるものともいえない。さらに、当該「地滑り監視装置」の構成が周知であったとする証拠もない。 そうすると、引用発明を相違点2’’に係る本願発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本願発明5は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本願発明6 本願発明6と引用発明とを対比する。 後者の「複数の顧客ビルに設置されたエレベータ」は、前者の「監視対象の複数のエレベータ装置」に相当する。 後者の「顧客ビルに向けて監視センター1からエレベータの冠水運転を指令する通信回線処理部12」は、前者の「監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置」に相当する。 後者の「顧客ビルの所在地やエレベータごとに付された管理番号等、顧客ビルに付随した情報が地区ごとに記憶された顧客ビル情報記憶部6」は、前者の「複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置」に相当する。 後者の「単位時間当たりの雨量r」は、前者の「降水量情報」に相当し、後者の「監視対象域を複数の地区に分割し、この地区ごとに単位時間当たりの雨量r、河川又は排水溝の水位L等を外部から受信して入力する外部情報入力部2」は、前者の「降水量情報を受信する情報受信手段」に相当する。 後者の「地区」及び「防災対象とされた地区PK」は、監視対象域を複数に分割したものであるので、前者の「記憶手段に記憶された位置情報を含むエリア」と、「監視対象のエリア」である限りにおいて一致し、後者の「入力された単位時間当たりの雨量r及びこの雨量rを積分した総雨量R等の気象情報が地区ごとに記憶された気象情報記憶部3」は、前者の「情報受信手段が降水量情報を受信すると、記憶手段に記憶された位置情報を含むエリアの実行雨量を計算する実行雨量計算手段」と、「情報受信手段が降水量情報を受信すると、監視対象のエリアの実行雨量を計算する実行雨量計算手段」である点で一致する。 後者の「気象情報収集部8からその時点における水量を知得し、防災対象地区PKの冠水予測をする冠水予測演算器10」は、水量が冠水に達する閾値を超えているかを判定するものといえるので、前者の「実行雨量計算手段によって計算された実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する地滑り判定手段」と、「実行雨量計算手段によって計算された実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する判定手段」である限りにおいて一致する。 後者の「エレベータを遠隔監視する監視センター1」は、前者の「エレベータ監視システム」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点2〕 「監視対象の複数のエレベータ装置と通信する通信装置と、 前記複数のエレベータ装置の位置情報が記憶された情報処理装置と、 降水量情報を受信する情報受信手段と、 前記情報受信手段が降水量情報を受信すると、監視対象のエリアの実行雨量を計算する実行雨量計算手段と、 前記実行雨量計算手段によって計算された実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する判定手段と、 を備えたエレベータ監視システム。」 〔相違点3〕 「情報処理装置」に関し、本願発明6は、「複数のエレベータ装置から取得した診断結果の情報を処理するための装置」でもあるのに対し、引用発明の「顧客ビル情報記憶部6」は、そのような処理を行うとは特定されていない点。 〔相違点4〕 本願発明6は、「地滑り監視装置」を備え、当該地滑り監視装置は、 「地滑り地形に存在するエレベータ装置の位置情報が記憶された記憶手段」と、 「記憶手段に記憶された位置情報を含むエリア」の実行雨量を計算する実行雨量計算手段と、 実効雨量が閾値を超えているか否かを判定する「地滑り」判定手段と、 「実効雨量が閾値を超えていると前記地滑り判定手段によって判定されると、前記記憶手段に位置情報が記憶されたエレベータ装置のうち実効雨量が閾値を超えているエリアに存在するエレベータ装置に、警報を発報する発報手段と、 地滑り地形分布図と前記情報処理装置に記憶された前記複数のエレベータ装置の位置情報とに基づいて地滑り地形に存在するエレベータ装置を特定し、特定したエレベータ装置の位置情報を前記記憶手段に記憶させる登録手段と」、 を備えているのに対し、 引用発明は、監視対象域を複数に分割した地区ごとに単位時間当たりの雨量rを受信して、当該雨量rから防災対象地区PKの冠水予測を行い、冠水すると予測された防災対象地区PKに所在する顧客ビルとその顧客ビルに設置されているエレベータの管理番号を顧客ビル情報記憶部6から検索し、検索された顧客ビルに向けて監視センター1からエレベータの冠水運転を指令するものであり、「地滑り」を予測してエレベータに「警報」を発報するものではない点。 事案に鑑み、上記相違点4について、以下検討する。 引用文献2には、「既往の雨量情報による土砂災害発生危険度に加え、前兆現象情報を組み合わせて、地域の土砂災害発生危険度を総合的に評価し、避難勧告の発令範囲等を的確に決定・判断することができる有用な避難勧告判断支援システム」(上記4.(2)アを参照。)が記載され、引用文献3及び4には、地震発生等の非常事態が発生した場合または異常が発生した場合のエレベータの復旧のために、保守員に連絡をとり派遣するための装置が記載され(上記4.(3)及び(4)を参照。)、引用文献5には、「地滑りのような地形変形について、その移動方向を地形形状から客観的に判定する地形変形移動方向決定方法およびその決定システム」が記載されている(上記4.(5)を参照。)。 しかしながら、引用文献2及び5には、土砂災害や地滑りを予測することは示されているものの、地滑り地形に存在するエレベータを予め記憶し(本願発明6の「記憶手段」及び「登録手段」に相当する構成)、当該エレベータの設置されたエリアの実効雨量を計算し(本願発明6の「実行雨量計算手段」に相当)閾値を超えているかを判定して(本願発明6の「地滑り判定手段」に相当)警報を発報すること(本願発明6の「発報手段」に相当)は記載も示唆もされていない。 また、引用文献3及び4には、地震等の非常事態が発生した後またはエレベータに異常が発生した後に保守員に連絡をとることは示されているものの、地滑り発生の可能性を判定して警報を発報することは示されていない。 結局、上記相違点4に係る本願発明6の「地滑り監視装置」の構成は、引用文献2?5には何ら記載も示唆もされていないし、各引用文献の記載から導き出せるものともいえない。さらに、当該「地滑り監視装置」の構成が周知であったとする証拠もない。 そうすると、引用発明を相違点4に係る本願発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって、相違点3について検討するまでもなく、本願発明6は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)本願発明7及び8 本願発明7及び8は、本願発明6を減縮した発明であるから、本願発明6と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)本願発明9 本願発明9は、本願発明6の「発報手段」の警報を発報する対象を、大雨警報又は土砂災害警戒情報が出されているエリアに存在するエレベータ装置を「担当する保守員の携帯端末」に変更したものである。 本願発明6と引用発明との相当関係を参照して、本願発明9と引用発明とを対比すると、少なくとも、本願発明9は、上記〔相違点4〕(上記(5)を参照。以下同様。)に係る本願発明6の構成のうちの「発報手段」の警報を発報する対象を「担当する保守員の携帯端末」とした「地滑り監視装置」の構成を備える点で、引用発明と相違する(以下、「相違点4’」という。)。 相違点4’について検討する。 上記(5)で述べたとおり、引用文献2?5は、相違点4に係る本願発明6の「地滑り監視装置」の構成を示唆するものではないので、その一部を変更した相違点4’に係る本願発明9の「地滑り監視装置」の構成についても、引用文献2?5が示唆しているとはいえないし、相違点4’に係る本願発明9の「地滑り監視装置」の構成が、各引用文献の記載から導き出せるものともいえない。また、当該「地滑り監視装置」の構成が周知であったとする証拠もない。 そうすると、引用発明を相違点4’に係る本願発明9の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本願発明9は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (8)本願発明10 本願発明10は、本願発明6に「実効雨量が閾値を超えていると前記地滑り判定手段によって判定されると、実効雨量が閾値を超えているエリアに保守員が出動しているか否かを判定する保守員位置判定手段」を付加し、「発報手段」の警報を発報する対象を、「実効雨量が閾値を超えているエリアに出動していると前記保守員位置判定手段によって判定された保守員の携帯端末」に変更したものである。 本願発明6と引用発明との相当関係を参照して、本願発明10と引用発明とを対比すると、本願発明10は、少なくとも、上記〔相違点4〕に係る本願発明6の構成に、上記「保守員位置判定手段」の構成を付加し、「発報手段」の警報を発報する対象を「実効雨量が閾値を超えているエリアに出動していると前記保守員位置判定手段によって判定された保守員の携帯端末」に変更した構成を備える点で、引用発明と相違する(以下、「相違点4’’」という。)。 相違点4’’について検討する。 本願発明10の「保守員位置判定手段」は、「地滑り判定手段によって判定される」ことが前提となっている。 上記(5)で述べたとおり、引用文献2?5は、相違点4に係る本願発明6の「地滑り監視装置」の構成を示唆するものではないので、その「地滑り監視装置」を構成する「地滑り判定手段」が関与する「保守員位置判定手段」が付加された相違点4’’に係る本願発明10の「地滑り監視装置」の構成についても、引用文献2?5が示唆しているとはいえないし、相違点4’’に係る本願発明10の「地滑り監視装置」の構成が、各引用文献の記載から導き出せるものともいえない。さらに、当該「地滑り監視装置」の構成が周知であったとする証拠もない。 そうすると、引用発明を相違点4’’に係る本願発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本願発明10は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6.まとめ 以上のとおり、本願発明1?10は、引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-09-17 |
出願番号 | 特願2015-135149(P2015-135149) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B66B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 今野 聖一 |
特許庁審判長 |
大町 真義 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 平田 信勝 |
発明の名称 | エレベータ監視システム |
代理人 | 小澤 次郎 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 高橋 英樹 |