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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1355301
審判番号 不服2018-10784  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-07 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2014- 17820「EFEMシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日出願公開,特開2015-146348,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年1月31日の出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成29年 9月 8日:拒絶理由通知(起案日)
平成29年11月16日:意見書,手続補正書
平成30年 1月30日:拒絶理由通知(最後)(起案日)
平成30年 3月23日:意見書,手続補正書
平成30年 4月26日:応対記録
平成30年 5月 7日:平成30年3月23日付け手続補正についての補正の却下の決定(起案日),拒絶査定(起案日)(以下「原査定」という。)
平成30年 8月 7日:手続補正書,審判請求
令和 元年 5月10日:拒絶理由通知(最後)(起案日)
令和 元年 6月10日:意見書,手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1 本願請求項1ないし3に係る発明は,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて,また,本願請求項4ないし8に係る発明は,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平11-294817号公報
2.特開2001-93827号公報
3.特開平11-288990号公報
4.特開2005-142185号公報

第3 当審拒絶理由の概要
令和元年5月10日付け拒絶理由通知(最後)(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 この出願は,特許請求の範囲の請求項7の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
1 本願請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は,令和元年6月10日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
内部でウェーハを搬送するための,外部から区画されたウェーハ搬送室をそれぞれ備えた複数のEFEMと,
当該EFEMの外部に設けられ,ガスの清浄化を行うためのダストフィルタを備えるガス清浄装置と,
当該ガス清浄装置によって清浄化されたガスを分配し,各EFEMのガス供給口に接続され前記ガス供給口に前記ガスを供給するガス供給ダクトと,
各ウェーハ搬送室から排出されるガスを前記ガス清浄装置へ帰還させるガス帰還路とを具備し,
前記ウェーハ搬送室と前記ガス清浄装置との間で,前記外部にガスを流出させることなくガスを循環させるものであって,
前記ガスは不活性ガスであることを特徴とするEFEMシステム。」

2 本願発明2ないし7の概要は以下のとおりである。
(1)本願発明2ないし7は,本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
拒絶査定に引用された引用文献1(特開平11-294817号公報,平成11年10月29日出願公開)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下,同じ。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体基板,液晶表示装置用ガラス基板,フォトマスク用ガラス基板,光ディスク用基板等(以下,「基板」と称する)に対して層間絶縁膜の塗布等を行う基板処理装置およびその基板処理装置を配置したクリーンルーム内における基板処理システムに関する。」
「【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記のクリーンルーム300においては,基板処理装置310内部に流入した空気を工場の排気ユーティリティーにて処理しているため,当該排気ユーティリティーに負荷を課することとなる。一般に,一つの工場内には,複数のクリーンルームが設けられている場合が多く,また,一つのクリーンルーム内に複数の基板処理装置が設置されていることもある。このような場合には,大容量の排気ユーティリティーが必要となる。
【0011】また,基板処理装置310内部に流入した温調された空気は,クリーンルーム300の外部へ放出されるため,開孔305から新たに取り入れられた空気を温調して利用している。一旦温調された空気を再度温調する場合に比べて,新たに取り入れられた空気を温調する場合は,温調ユニットの負荷が大きくなるため,大型の温調ユニットが必要となり,クリーンルームを維持するコストも上昇することになる。
【0012】さらに,近年においては,基板の層間絶縁膜として低誘電体材料や強誘電体材料が適用されることもある。これらの材料を扱う処理部からは他の基板処理装置に有害なガス成分や環境に有害な重金属を含む雰囲気を発生することもあり,そのような有害物質についてはなるべく基板処理装置の外部に放出しない方が好ましい。
【0013】本発明は,上記課題に鑑み,処理部から発生した有害な物質を装置外部に放出することを防止できる基板処理装置を提供することを目的とする。
【0014】また,本発明は,クリーンルーム外部の排気ユーティリティーの負荷を軽減するとともに,小型の温調ユニットが使用可能な基板処理システムを提供することを目的とする。」
「【0025】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】図1は,本発明に係る基板処理システムを適用したクリーンルーム100内の概略構成を模式的に示す縦断面図である。このクリーンルーム100には,基板処理が行われる作業空間CR1と,グレーチング130の下方の床下空間CR2と,当該作業空間CR1および床下空間CR2と壁102によって隔てられたダウンフロー発生部CR3が設けられている。まず,これらの各空間の構成について簡単に説明する。
【0027】作業空間CR1には,2台の基板処理装置110の本体部が設置されている。本実施形態における基板処理装置110は,基板に低誘電体の層間絶縁膜を形成する装置である。低誘電体の層間絶縁膜とは,多層配線構造を有する素子の層間絶縁膜の一種であって,樹脂や空気やガラス等を含む層間絶縁膜である。基板処理装置110は,基板に低誘電体材料を塗布するコータ(低誘電体対応コータ)SCと,基板に加熱処理を行う加熱部(ホットプレート)および冷却処理を行う冷却部(クーリングプレート)が積層されてなる熱処理部群111と,コータSCと熱処理部群111とに挟まれた基板搬送部R1とをハウジング110H中に備えるとともに,ハウジング110H外部(床下空間CR2)にはフィルタボックス170を備えている。基板搬送部R1には基板搬送装置TRが図中の紙面に対して直交する方向に移動自在に設けられている。
【0028】床下空間CR2には,基板処理装置110の一部を構成するフィルタボックス170およびそれに連通する排気管160が設けられている。フィルタボックス170は,種類の異なる2種類のフィルタ,すなわちウルパフィルタ173とケミカルフィルタ171とを備えているが,これらの役割については後述する。また,作業空間CR1と床下空間CR2との境界には,すのこ状の床であるグレーチング130が設けられており,作業空間CR1内を流れるダウンフローは,そのまま床下空間CR2に流れ込むようにされている。なお,フィルタボックス170を床下空間CR2に設置するのは,クリーンルーム100内のスペース利用上の都合によるものであり,作業空間CR1に設けるようにしてもよい。
【0029】ダウンフロー発生部CR3には,そこを流れる空気の温度調節を行う温調ユニット150が設けられている。また,ダウンフロー発生部CR3と作業空間CR1との境界にはメインフィルタ120が設けられるとともに,ダウンフロー発生部CR3と床下空間CR2との間には送風ファン140が設けられている。
【0030】次に,クリーンルーム100内における空気の流れについて説明する。
【0031】まず,メインフィルタ120からパーティクルの除去された清浄な空気が作業空間CR1内にダウンフローを形成して流入する。なお,メインフィルタ120は,高い粒子捕集能力を有するウルパフィルタであるが,これに限定されるものではなく,所望の粒径のパーティクルを除去できるフィルタ(例えば,ヘパフィルタなど)であればよい。
【0032】作業空間CR1に流入したダウンフローの一部は,基板処理装置110の上部に設けられたフィルタ113を通過して基板搬送部R1に流入する。この基板処理装置110のコータSCは,前述したように基板にソースとして低誘電体材料を塗布するコータであり,コータSCで塗布を行った後,熱処理部郡111の中の加熱部(ホットプレート)でアンモニア(NH_(3))成分を含むガスを供給しながら加熱処理が行われる。そのため,基板搬送装置TRによる加熱部との間での基板の受け渡しの際に,加熱部から基板搬送部R1内にアンモニア成分を含んだガスが漏れ出すことが考えられる。そこで,基板搬送部R1に流入したダウンフローは,基板搬送装置TRの移動に伴って発生したパーティクルとともに,加熱部から漏れ出たアンモニア成分を含んだガスも回収して基板搬送部R1の下方に流出する。
【0033】アンモニアは,他の基板処理装置(例えば現像処理装置)に悪影響を与えることがある。そこで,基板搬送部R1の下方には,搬送ユニット用ダクト115が設けられており,パーティクルおよびアンモニアを含んだダウンフローは搬送ユニット用ダクト115に回収される。搬送ユニット用ダクト115は排気管160を介してフィルタボックス170に接続されている。排気管160は,2台の基板処理装置110のそれぞれからグレーチング130を貫通して床下空間CR2の底部近傍まで鉛直方向に配設され,さらに,床下空間CR2の底部近傍において水平方向に屈曲され,相互に合流された後,フィルタボックス170に接続されている。
【0034】一方,同じく基板処理装置110の上部に設けられたフィルタ112を通過したダウンフローは,コータSCに流入する。コータSCにおいても,基板搬送装置TRとの間での基板の受け渡しの際に,基板搬送部R1からアンモニア成分を含んだガスがコータSC内に流入する可能性もある。そこで,コータSC内にアンモニアが流入した場合であっても,アンモニアを含むダウンフローは排出管114から排出される。図1に示す如く,排出管114は,搬送ユニット用ダクト115とともに排気管160を介してフィルタボックス170に接続されている。
【0035】搬送ユニット用ダクト115および排出管114から排出された空気は,排気管160に導かれてフィルタボックス170に回収される。フィルタボックス170は,ケミカルフィルタ171と,ブロワファン172と,ウルパフィルタ173とを備えている。
【0036】ウルパフィルタ173は,基板搬送部R1にて発生し,搬送ユニット用ダクト115によって回収されたパーティクルを主として除去するためのフィルタである。一方,ケミカルフィルタ171は,加熱部から漏れ出て,搬送ユニット用ダクト115,排出管114から排出されるアンモニアを主として除去するためのフィルタである。
【0037】また,ケミカルフィルタ171とウルパフィルタ173との間にはブロワファン172が設けられており,当該ブロワファン172を作動させて搬送ユニット用ダクト115および排出管114からフィルタボックス170に向かう気流を強制的に発生させることにより,搬送ユニット用ダクト115および排出管114内が負圧状態となり,パーティクルやアンモニアを含んだ空気がスムーズに回収されフィルタボックス170に送られる。なお,フィルタボックス170を構成するケミカルフィルタ171,ブロワファン172およびウルパフィルタ173の配置は図1に限定されるものではなく,排気管160における任意の位置に任意の順序で設けることが可能である。
【0038】フィルタボックス170に送られた空気は,フィルタボックス170に備えられたウルパフィルタ173およびケミカルフィルタ171を通過して床下空間CR2中に放出される。このときに,空気中に含まれていたパーティクルはウルパフィルタ173によって除去される。また,ガス成分であるアンモニアはウルパフィルタ173によって除去することはできないが,ケミカルフィルタ171によって除去される。このため,床下空間CR2中にはフィルタボックス170から清浄な空気が放出されることになる。
【0039】一方,基板処理装置110の外部を通過したダウンフローは,そのままグレーチング130を通過し,床下空間CR2に流入する。そして,床下空間CR2に流入した空気は,フィルタボックス170から放出された空気と合流し,床下空間CR2の下部に設けられた送風ファン140によって取り込まれ,ダウンフロー発生部CR3に送られる。ダウンフロー発生部CR3に送られた空気は,当該ダウンフロー発生部CR3に設けられた温調ユニット150によって,ダウンフローとして再利用できるように,基板処理装置110の処理に適した温度に温調される。その後,温調された空気は,ダウンフロー発生部CR3中を上方に流れ,やがて,メインフィルタ120の上面に達し,当該メインフィルタ120を通過することによってパーティクルが除去されて,再びダウンフローを形成する。」
「【0051】
【発明の効果】以上説明したように,請求項1の発明によれば,所定の処理を行う複数の処理部と,その複数の処理部に対して基板の搬送を行う基板搬送手段と,基板処理装置内部を通過する空気とともに複数の処理部のうちのいずれかから発生した有害物質を回収し,排出する排気経路と,排気経路のいずれかの部位に設けられ,有害物質を除去するフィルタとを備えているため,前記処理部から有害な物質が発生した場合であっても,その有害物質はフィルタによって除去されることとなり,有害物質を基板処理装置の外部に放出することを防止できる。
<<途中省略>>
【0056】また,請求項6の発明によれば,クリーンルーム内に設けられ,所定の処理を行う複数の処理部と,その複数の処理部に基板の搬送を行う基板搬送手段とを備える基板処理装置と,その基板処理装置に設けられ,クリーンルーム内のダウンフローのうち基板処理装置内部を通過する空気を複数の処理部のうちのいずれかから発生した有害物質とともに,基板処理装置外を通過した空気と分離して回収し,クリーンルーム内に再び放出する排気経路と,排気経路のいずれかの部位に設けられ,有害物質を除去する第2のフィルタとを備え,放出された空気をダウンフローのうち基板処理装置外を通過した空気と混合させて送風ファンにより吸引しつつ,循環利用しているため,クリーンルーム外に排気される空気がなくなり,クリーンルーム外部の排気ユーティリティーの負荷を軽減することができる。また,前記放出された空気は,既に温調された空気であるため,温調ユニットの負荷が低減され,当該温調ユニットは小型のものが使用可能であるため,クリーンルームを維持するコストも低減することができる。」
「【図1】



(2)引用発明
上記(1)の記載から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板処理装置を配置したクリーンルーム内における基板処理システムであって,
基板処理システムを適用したクリーンルーム100には,基板処理が行われる作業空間CR1と,グレーチング130の下方の床下空間CR2と,当該作業空間CR1および床下空間CR2と壁102によって隔てられたダウンフロー発生部CR3が設けられ,
作業空間CR1には,2台の基板処理装置110の本体部が設置され,
基板処理装置110は,基板に低誘電体材料を塗布するコータ(低誘電体対応コータ)SCと,基板に加熱処理を行う加熱部(ホットプレート)および冷却処理を行う冷却部(クーリングプレート)が積層されてなる熱処理部群111と,コータSCと熱処理部群111とに挟まれた基板搬送部R1とをハウジング110H中に備えるとともに,ハウジング110H外部(床下空間CR2)にはフィルタボックス170を備え,基板搬送部R1には基板搬送装置TRが設けられており,
床下空間CR2には,基板処理装置110の一部を構成するフィルタボックス170およびそれに連通する排気管160が設けられ,フィルタボックス170は,種類の異なる2種類のフィルタ,すなわちウルパフィルタ173とケミカルフィルタ171とを備えていること,
作業空間CR1と床下空間CR2との境界には,すのこ状の床であるグレーチング130が設けられており,作業空間CR1内を流れるダウンフローは,そのまま床下空間CR2に流れ込むようにされていること,
クリーンルーム100内における空気の流れとしては,
まず,メインフィルタ120からパーティクルの除去された清浄な空気が作業空間CR1内にダウンフローを形成して流入すること,
作業空間CR1に流入したダウンフローの一部は,基板処理装置110の上部に設けられたフィルタ113を通過して基板搬送部R1に流入し,基板搬送部R1に流入したダウンフローは,基板搬送装置TRの移動に伴って発生したパーティクルとともに,加熱部から漏れ出たアンモニア成分を含んだガスも回収して基板搬送部R1の下方に流出すること,
基板搬送部R1の下方には,搬送ユニット用ダクト115が設けられており,パーティクルおよびアンモニアを含んだダウンフローは搬送ユニット用ダクト115に回収され,搬送ユニット用ダクト115は排気管160を介してフィルタボックス170に接続されており,排気管160は,2台の基板処理装置110のそれぞれからグレーチング130を貫通して床下空間CR2の底部近傍まで鉛直方向に配設され,さらに,床下空間CR2の底部近傍において水平方向に屈曲され,相互に合流された後,フィルタボックス170に接続されていること,
一方,同じく基板処理装置110の上部に設けられたフィルタ112を通過したダウンフローは,コータSCに流入し,アンモニアを含むダウンフローは排出管114から排出され,排出管114は,搬送ユニット用ダクト115とともに排気管160を介してフィルタボックス170に接続されていること,
搬送ユニット用ダクト115および排出管114から排出された空気は,排気管160に導かれてフィルタボックス170に回収され,ここで,フィルタボックス170は,ケミカルフィルタ171と,ブロワファン172と,ウルパフィルタ173とを備えていること,
ウルパフィルタ173は,基板搬送部R1にて発生し,搬送ユニット用ダクト115によって回収されたパーティクルを主として除去するためのフィルタであり,一方,ケミカルフィルタ171は,加熱部から漏れ出て,搬送ユニット用ダクト115,排出管114から排出されるアンモニアを主として除去するためのフィルタであること,
フィルタボックス170に送られた空気は,フィルタボックス170に備えられたウルパフィルタ173およびケミカルフィルタ171を通過して床下空間CR2中に放出され,このときに,空気中に含まれていたパーティクルはウルパフィルタ173によって除去され,また,ガス成分であるアンモニアはウルパフィルタ173によって除去することはできないが,ケミカルフィルタ171によって除去されるため,床下空間CR2中にはフィルタボックス170から清浄な空気が放出されることになること,
一方,基板処理装置110の外部を通過したダウンフローは,そのままグレーチング130を通過し,床下空間CR2に流入し,そして,床下空間CR2に流入した空気は,フィルタボックス170から放出された空気と合流し,床下空間CR2の下部に設けられた送風ファン140によって取り込まれ,ダウンフロー発生部CR3に送られること,
ダウンフロー発生部CR3に送られた空気は,当該ダウンフロー発生部CR3に設けられた温調ユニット150によって,ダウンフローとして再利用できるように,基板処理装置110の処理に適した温度に温調され,その後,温調された空気は,ダウンフロー発生部CR3中を上方に流れ,やがて,メインフィルタ120の上面に達し,当該メインフィルタ120を通過することによってパーティクルが除去されて,再びダウンフローを形成する,
基板処理システム。」

2 その他の引用文献について
(1)引用文献2について
拒絶査定に引用された引用文献2(特開2001-93827号公報,平成13年4月6日出願公開)には,図面とともに以下の記載がある。
「【0039】図6はこのように構成された塗布現像処理システム1における清浄エアー供給系の構成を示す図である。
【0040】図6に示すように,この塗布現像処理システム1の上部には清浄エアーをシステム内に導入するための供給口121?124が設けられ,塗布現像処理システム1の下部には清浄エアーをシステム外に排気するための排出口125?128が設けられている。例えば供給口121?124や排出口125?128は,それぞれ処理の種類に応じた領域に対応して設けられている。ここでは,供給口121及び排気口125は第1搬送装置50に対応する位置,供給口122及び排気口126は第2の搬送装置60に対応する位置,供給口123及び排気口127はレジスト・反射防止膜塗布ユニット群20に対応する位置,供給口124及び排気口128は現像処理ユニット群30に対応する位置に設けられている。
【0041】供給口121?124と排出口125?128との間は,エアー循環用の配管129を介して接続され,配管129上には温調装置130が配置されている。また,各供給口121?124にはファン・フィルタ・ユニット131?134が配置され,各排出口125?128には排気ファン135?138が配置されている。排気ファン135?138は制御部139によって排気量の制御が行われるようになっている。
【0042】そして,供給口121?124からシステム1内に供給された清浄エアーはシステム1内でダウンフローを形成し,排出口125?128からシステム1外に排出され,配管129を通り温調及び清浄が行われ,再び供給口121?124からシステム1内に供給されるようになっている。
【0043】ここで,本実施形態では,第1搬送装置50におけるウェハ搬送手段54と第2搬送装置60におけるウェハ搬送手段64の両方が同時に下方向に移動するとき,制御部139の制御によって排気ファン135,136の排気量が多くなり,これにより清浄エアーのダウンフローが強まるようになっている。
【0044】従って,本実施形態のシステム1では,第1搬送装置50におけるウェハ搬送手段54と第2搬送装置60におけるウェハ搬送手段64の両方が同時に下方向に移動した場合に生じる気流の乱れは,上記のように強められたダウンフローによって吸収される。よって,パーティクルがシステム1内で拡散することなく,排出口125,126から排出される。」

(2)引用文献3について
拒絶査定に引用された引用文献3(特開平11-288990号公報,平成11年10月19日出願公開)には,図面とともに以下の記載がある。
「【0024】図1は,本発明に係る半導体ウェハ製造ラインにおける,半導体ウェハ搬送システムの構成図である。
【0025】半導体ウェハ製造ラインは,ウェハ(被処理基板)(a11,a12等),ウェハ(被処理基板)(a11,a12等)を収納するキャリア(a,b等),ウェハの処理を行う製造装置(EQ1,EQ2),キャリア(a,b等)を収納するストッカ(STK)から構成され,ストッカ(STK)と製造装置(EQ1,EQ2),および製造装置(EQ1,EQ2)間でライン内のキャリアを搬送するキャリア搬送装置(CTR)を持ち,前記キャリア搬送装置(CTR)とのキャリア(a,b等)の受け渡しを行い,更に製造装置(EQ1,EQ2)とキャリア(a,b等)内のウェハの受け渡しを行うウェハ移載装置(EFEM1,EFEM2)を持つ。」

(3)引用文献4について
拒絶査定に引用された引用文献4(特開2005-142185号公報,平成17年6月2日出願公開)には,図面とともに以下の記載がある。
「【0074】
このようにフィルタ類を加熱しながらフィルタボックス5内を不活性ガスで置換することにより,フィルタ類に吸着していた水分のより多くが脱離して不活性ガス中に蒸発し,この水分を含んだ不活性ガスは不活性ガス排気経路S2を経て外部に排気される。フィルタボックス5内の雰囲気の水分濃度は,加熱初期においては殆ど飽和状態となっており,さらに加熱と不活性ガスによる置換を続けることにより急速に水分濃度を低下させることができる。この後に不活性ガスの置換を続けたままで,加熱装置15を停止してフィルタ類やその雰囲気の温度を常温に戻すことにより,フィルタから脱離していた水分の量が減少し,さらに急激に周囲空間の水分濃度が低下する。また凝縮水がドレインタンク25に溜まる場合には,フィルタ類や雰囲気の温度が常温に戻った時点で,ドレインタンク25より上流の開閉バルブV1を閉じ,さらに下流の開閉バルブV2を開けることで外部にこの凝縮水を排出すればよい。これらの作業を行うことにより,フィルタボックス5内の水分濃度を数時間という短期間で数百?数ppmレベルまで低下させることができる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1(上記第4の1)と,引用発明(上記第5の1(2))とを対比すると,以下のとおりとなる。
ア 「区画」とは,通常,「一定の土地・場所をしきること。しきり。境界。しきった土地。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」を意味し,一定の場所をしきる程度の意味合いで用いられるものであるから,引用発明の「コータSCと熱処理部群111とに挟まれた基板搬送部R1」も「コータSCと熱処理部群111とに」よりしきられており,さらに,「基板搬送部R1」に設けられた「基板搬送装置TR」により基板を搬送するものであるので,引用発明の「基板搬送部R1」を備えた「基板処理装置110」と,本願発明1の「EFEM」とを対比すると,「内部でウェーハを搬送するための,外部から区画されたウェーハ搬送室をそれぞれ備え」た複数の「装置」である点で共通する。
イ 引用発明の「フィルタボックス170」は,「基板処理装置110」の外部に設けられており,「空気中に含まれていたパーティクル」を除去する「ウルパフィルタ173」を備えているので,本願発明1の「ガス清浄装置」に相当する。
ウ 本願発明1の「ガス供給ダクト」と,引用発明の「ダウンフロー発生部CR3」とを対比すると「ガス供給ダクト」という点で共通する。
エ 引用発明においては,「基板搬送部R1に流入したダウンフローは,基板搬送装置TRの移動に伴って発生したパーティクルとともに」「基板搬送部R1の下方に流出」し,「搬送ユニット用ダクト115に回収され」,「排気管160を介してフィルタボックス170に接続されており,排気管160は,2台の基板処理装置110のそれぞれからグレーチング130を貫通して床下空間CR2の底部近傍まで鉛直方向に配設され」,「相互に合流された後,フィルタボックス170に接続」するものであるので,引用発明の「搬送ユニット用ダクト115」及び「排気管160」は本願発明1の「ガス帰還路」に相当する。
オ 引用発明においては「基板搬送部R1」へ流入したダウンフローは,「フィルタボックス170」を通って,「ダウンフロー発生部CR3」に送られ,ダウンフローとなり「基板搬送部R1」へと流入するものであるので,空気は「循環」しており,したがって,本願発明1と引用発明とは「ガスを循環させるものであ」る点で共通する。
カ 上記アないしオより,本願発明1の「EFEMシステム」と引用発明の「基板処理システム」とは「システム」である点で共通する。
キ したがって,本願発明1と,引用発明とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「内部でウェーハを搬送するための,外部から区画されたウェーハ搬送室をそれぞれ備えた複数の装置と,
当該装置の外部に設けられ,ガスの清浄化を行うためのダストフィルタを備えるガス清浄装置と,
当該ガス清浄装置によって清浄化されたガスを供給するガス供給ダクトと,
各ウェーハ搬送室から排出されるガスを前記ガス清浄装置へ帰還させるガス帰還路とを具備し,
ガスを循環させるものであるシステム。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1においては,「内部でウェーハを搬送するための,外部から区画されたウェーハ搬送室をそれぞれ備えた複数のEFEM」「とを具備した」「EFEMシステム」であるのに対して,引用発明においては,複数の基板処理装置110を備えた基板処理システムであり,EFEMシステムではない点。
(イ)相違点2
本願発明1においては,「ガス供給ダクト」は「当該ガス清浄装置によって清浄化されたガスを分配し,各EFEMのガス供給口に接続され前記ガス供給口に前記ガスを供給する」ものであり,「各ウェーハ搬送室から排出されるガスを前記ガス清浄装置へ帰還させるガス帰還路」とを具備することとあわさって,「前記ウェーハ搬送室と前記ガス清浄装置との間で,前記外部にガスを流出させることなくガスを循環させるもの」であるのに対して,引用発明においては,「ダウンフロー発生部CR3」は,ウェーハ搬送室とガス清浄装置との間で,ガスを循環させる流路の一部を構成するものではあるが,複数の基板処理装置110の上部に設けられたフィルタ113にダウンフロー発生部CR3が「接続」されることで「分配」されるものではなく,そのため,作業空間CR1や,床下空間CR2などの外部に空気を流出させてしまっており,したがって,「基板搬送部R1」と「フィルタボックス170」との間で,ガスを流出させることなく循環させるものではない点。
(ウ)相違点3
本願発明1においては,「ガスは不活性ガスである」のに対して,引用発明においては空気である点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑みて,まず,相違点2(上記(1)ケ(イ))について検討をする。
(ア)引用発明は,「基板処理装置を配置したクリーンルーム内における基板処理システム」であって,基板処理装置外のクリーンルーム内に有害物質の放出を防止することを第一の目的としている(段落【0001】,【0013】,【0051】)。
(イ)さらに,引用発明は,クリーンルーム内に空気を放出するという前提において,クリーンルームを維持するコストを低減することを第二の目的としている(段落【0014】,【0056】)。
すなわち,引用発明は,「基板処理装置110の上部に設けられたフィルタ112を通過したダウンフローは,コータSCに流入し,アンモニアを含むダウンフローは排出管114から排出され,排出管114は,搬送ユニット用ダクト115とともに排気管160を介してフィルタボックス170に接続されていること」および「基板処理装置110の外部を通過したダウンフローは,そのままグレーチング130を通過し,床下空間CR2に流入し,そして,床下空間CR2に流入した空気は,フィルタボックス170から放出された空気と合流し,床下空間CR2の下部に設けられた送風ファン140によって取り込まれ,ダウンフロー発生部CR3に送られること」という構成を備えた発明である。
(ウ)ここで仮に,引用発明において,作業空間CR1や,床下空間CR2などの基板処理装置外部に空気を流出させることなく,「ウェーハ搬送室」と「ガス清浄装置」との間で外部にガスを流出させることなく循環させる相違点2に係る構成を採用した場合には,ウェーハ搬送室以外の,作業空間CR1や床下空間CR2およびコータSC等の空気を清浄化することができなくなることから,上記(ア),(イ)で説示したような発明の前提を変更するものとなってしまい,そもそも引用文献1に記載された発明において上記態様だからこそ解決したい課題である,「処理部から発生した有害な物質を装置外部に放出することを防止できる」ことや,「クリーンルーム外部の排気ユーティリティーの負荷を軽減するとともに,小型の温調ユニットが使用可能」であることの技術的な意味がなくなってしまう。
(エ)そうすると,上記(ウ)のように,引用発明において,作業空間CR1や,床下空間CR2などの外部に空気を流出させることなく循環させる構成を採用することは,引用文献1に記載された発明におけるその達成したい目的を無意味にする設計変更であるので,引用文献1において当該構成を採用することに阻害要因があるといえる。
(オ)また,引用文献2ないし4の記載を検討しても,上記技術的事項が周知な設計変更とも認められない。
(カ)してみれば,引用発明において,本願発明1のように「前記ウェーハ搬送室と前記ガス清浄装置との間で,前記外部にガスを流出させることなくガスを循環させる」構成へと設計変更することには阻害要因があるといえ,引用発明において,上記相違点2の構成を備えることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
イ そして,本願発明1は,上記相違点1ないし3に係る構成を備えることによって,本願の発明の詳細な説明に記載された,「本発明によれば,複数のEFEMを運用する場合に,搬送中のウェーハを,表面性状の変化やパーティクルの付着を生じさせる雰囲気に晒すことなく,ウェーハへのパーティクルの付着の抑制やウェーハ表面の性状の管理を適切に行うことを,単純な構造によって実現し,設置面積の削減やコストダウンを図ることができるEFEMシステムを提供することが可能となる。」(本願明細書,段落【0023】)という顕著な効果を奏するものと認められる。
ウ したがって,相違点1,3についての検討をするまでもなく,本願発明1は,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7はEFEMシステムの発明であって,本願発明1の発明特定事項を全て有するものであるので,本願発明2ないし7もまた,本願発明1と同じ理由により,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
当審では,当審拒絶理由においてこの出願は,特許請求の範囲の請求項7の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由を通知しているが,本件補正により,請求項7の誤記が補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第8 原査定についての判断
原査定は,請求項1ないし3について上記引用文献1ないし3に基づいて,請求項4ないし8について上記引用文献1ないし4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,本件補正後の請求項1ないし7はそれぞれ,上記第6の1(2),第6の2にて検討したように,引用文献1に記載された発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえないものであるので,本願発明1ないし7は,上記引用文献1ないし4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであったとは認められない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-18 
出願番号 特願2014-17820(P2014-17820)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 儀同 孝信  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 鈴木 和樹
小田 浩
発明の名称 EFEMシステム  
代理人 大西 雅直  

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