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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1355353
審判番号 不服2017-15788  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-25 
確定日 2019-09-19 
事件の表示 特願2015-226713「基板洗浄チャンバ及び構成部品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開,特開2016- 76716〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2008年(平成20年)5月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年5月30日(以下,「本願優先日」という。),米国,2007年9月19日,米国)を国際出願日とする出願(特願2010-510311号)の一部を2012年(平成24年)11月29日に新たな特許出願(特願2012-261367号)とし,さらに,その一部を2015年(平成27年)11月19日に新たな特許出願としたものであって,平成28年10月17日付け拒絶理由通知に対し,平成29年3月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年6月20日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年10月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,その後,平成30年9月13日付け拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)に対し,平成31年3月18日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下,「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりである。

「【請求項1】
エネルギー印加洗浄ガスの使用により基板を洗浄する基板洗浄チャンバのための基板加熱台座部であって,
(a)基板受け面を有する第1ディスクと,加熱素子を受容するように成形されたチャネルを有する第2ディスクと,第1ディスクと第2ディスクとを接合するロウ付け接着部とを備えた環状プレートと,
(b)複数のセラミックボールと,
(c)基板受け面に形成された凹部の配列であって,各凹部は,セラミックボールの1つを受容する直径および深さを有し,各凹部は,2?20°内側に傾斜した側部を備えているため,第1ディスクの表面における凹部の直径は,セラミックボールの直径より若干小さく,挿入されたセラミックボールを,挿入後,環状プレートの表面に閉じ込めることが可能である凹部の配列と,
(d)チャンネルに埋設された加熱素子と,
(e)外方棚部とを備え,基板加熱台座部は,基板周縁部の周囲の垂直面と外方棚部付近で隆起した脚部とを有するフォーカスリングが台座部の周縁部上に載ることができるように構成される台座部。」

第3 拒絶の理由
当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(進歩性)本願発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・引用文献等 1-5
<引用文献等一覧>
1.実願平6-4916号(実開平6-77239号)のCD-ROM
2.特開2000-243542号公報
3.特表2006-523015号公報
4.特開平8-102460号公報
5.特開2002-151468号公報

第4 引用文献及び引用発明等
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献1(実願平6-4916号(実開平6-77239号)のCD-ROM)には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で加筆した。以下,同じ。)。

ア 「 【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は半導体製造工程において用いられる熱処理装置,殊にホットプレートやクールプレートで半導体ウエハやガラス基板等(以下単に基板と称する)を加熱又は冷却するのに用いられる熱処理装置に関するものである。」

イ 「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところで,熱輻射により基板を所要の設定温度に加熱又は冷却する場合に,放熱板と基板との隙間dが1mm程度では,設定温度に至る時間に大きな影響を及ぼす。・・・
【0005】
しかし,上記従来例のものはスペーサが棒状体,網,あるいは支持爪等で構成されるものであるため,微小隙間を形成するには,さらに高い加工精度を必要とする。このため微小隙間の形成が容易でなく,コスト高を招く等の問題がある。
また,基板において,スペーサと接触する部分と接触しない部分とでの温度差を少なくするためには,接触部の面積を少なくするのが望ましいが,棒状や網状のスペーサでは温度不均一性の点で問題がある。
本考案は,放熱板と基板との間に微小間隔dを形成するにあたり,安いコストで高精度に製作可能で,しかも,スペーサと接触することによる基板の温度不均一性を発生しにくくすることを技術課題とする。」

ウ 「【0007】
【作用】
放熱板の上面に設けられた球体受け入れ用凹部内に球体状スペーサを位置せしめることにより,球体状スペーサは,基板と放熱板との間に微小間隔を形成し得る状態で位置決めされる。このとき,スペーサは非伝熱性の球体で構成されていることより,接触面積と熱伝導率とがともに小さく,基板のスペーサと接触する部分と接触しない部分との温度不均一性が発生しにくい。」

エ 「【0008】
【実施例】
以下,本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本考案に係る熱処理装置の平面図,図2は図1のII-II線矢視拡大断面図である。
この熱処理装置は,放熱板2と,放熱板2の下面に密着させて設けられた加熱手段3と,放熱板2の上面の3ケ所に配設された基板支持用スペーサ6と,放熱板2の上方に設けられた一対の基板搬送用ワイヤ8,8と,放熱板1(※審決注;「放熱板2」の誤記と認められる。以下,この段落と次段落について同じ。)を貫通して昇降可能に設けられた3本のピンから成る基板受渡し用ピン10とを具備して成る。
【0009】
上記加熱手段3は,伝熱部材4にヒータ5を埋設したものを放熱板の下面に密着させて設け,放熱板1を所要温度に設定するように構成されている。
上記基板支持用スペーサ6は,例えば,アルミナ,マテアタイト等の非伝熱部材によって球体状に構成されており,放熱板1の上面の3ケ所に球体受け入れ用凹部である球体受穴7を凹設し,この球体受穴7に球体状スペーサ6を着脱可能に入れて,このスペーサ6が支持する基板1と放熱板2の表面との間に微小隙間dを形成するように構成されている。
【0010】
上記球体受穴7は,プライス加工にて,その底面の平坦精度,および深さ精度を確保している。ちなみに,本実施例では球体状スペーサ6をアルミナを材料とするセラミックボールで構成し,直径約2.4mmφの球体受穴7にセラミックボール6を遊嵌状に嵌入したとき,微小隙間dが0.12mmになるように設定されている。なお,この微小隙間dは,基板1に望まれる昇温特性,放熱板2の設定温度等によって適宜設定されるが,本考案では球体状スペーサ6を所要の球径のものに変更するだけで極めて容易,かつ,高精度に微小隙間dを設定することができる。」

オ 「【0014】
【考案の効果】
本考案ではスペーサを球体で構成しているため,安いコストで高精度に微小間隔を設定することができる。また,本考案ではスペーサを非伝熱性の球体で構成していることにより,接触面積と熱伝導率とがともに小さく,基板のスペーサと接触する部分と接触しない部分との温度不均一性が発生しにくい。」

カ 【図1】は,「熱処理装置の平面図」であって,熱処理装置が備える放熱板2は矩形であることを読み取ることができる。

(2) 引用発明
上記(1)によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「半導体製造工程において,半導体ウエハやガラス基板等(以下単に基板と称する)を加熱するのに用いられる熱処理装置であって,
矩形の放熱板2と,放熱板2の下面に密着させて設けられた加熱手段3と,放熱板2の上面の3ケ所に配設された基板支持用スペーサ6と,放熱板2の上方に設けられた一対の基板搬送用ワイヤ8,8と,放熱板2を貫通して昇降可能に設けられた3本のピンから成る基板受渡し用ピン10とを具備して成り,
加熱手段3は,伝熱部材4にヒータ5を埋設したものを放熱板2の下面に密着させて設け,放熱板2を所要温度に設定するように構成され,
放熱板2の上面の3ケ所には,球体受け入れ用凹部である球体受穴7を凹設し,この球体受穴7に球体状スペーサ6を着脱可能に入れて,このスペーサ6が支持する基板1と放熱板2の表面との間に微小隙間dを形成するように構成され,
球体受穴7は,プライス加工にて,その底面の平坦精度,および深さ精度を確保しており,球体状スペーサ6はアルミナを材料とするセラミックボールで構成し,直径約2.4mmφの球体受穴7にセラミックボール6を遊嵌状に嵌入したとき,微小隙間dが0.12mmになるように設定されている,
熱処理装置。」

2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献2(特開2000-243542号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体処理装置等に使用するべく,金属からなるベースにヒータを内蔵するヒータユニット及びその製造方法に関するものである。」

「【0002】
【従来の技術】従来から,例えば半導体処理装置などのサセプタ,静電チャック等,様々な分野で金属ベースにヒータを内蔵したヒータユニットが使用されている。このようなヒータユニットのヒータとしては,一般にステンレス鋼製のシースヒータが用いられる。・・・」

「【0009】本発明は,上記した従来技術の問題点に鑑みなされたものであり,加熱時に早期に昇温し,かつ全面に亘り熱を均一化でき,加えて金属ベース及びヒータの材料の選択自由度が高く,その材料によっては高温域での使用も可能であり,更に熱伝導性が良く,耐久性の高いヒータユニット及びその製造方法を提供することを目的とする。」

「【0011】
【発明の実施の形態】以下に,添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は,本発明が適用された接合型ヒータユニット1の概略構造を示す。この構造では金属ベースが上下2分割されており,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,ステンレス鋼,ニッケル基合金,チタン及びチタン合金のいずれかからなる下側ベース2に形成された溝2aに後記するシースヒータ4を設置し,下側ベース2と同種又は異種材料からなる上側ベース3との間及びシースヒータ4と各ベース2,3との間がその全面に亘り(太線で示す接合部8)ろう付け,はんだ付けまたは拡散接合により接合され,一体化されている。
・・・
【0014】まず,ろう付け,はんだ付けの場合は,溝2aにシースヒータ4を圧入する前にろう,はんだを塗布し,下側ベース2の溝2aにシースヒータ4を圧入し,真空状態または例えば窒素等の雰囲気下で上側ベース3を矢印に示すように押圧して加圧し,上側ベース3を塑性変形させつつ拡散接合させる(図2)。これにより,下側ベース2と上側ベース3とシースヒータ4とがその全面で互いに密着するので,両ベース2,3間が単に物理的に密着するボルト締結型,外周部のみが溶接される溶接型に比較して熱伝達のロスが発生し難い。従って,少ないヒータ容量で,高温まで加熱することが可能となる。また,ヒータの電力密度を低下させることができ,ヒータの局部的な異常発熱を避けることができ,これによる断線を防止できる。」

(2) 引用技術的事項2
上記(1)によれば,引用文献2には,以下の技術的事項(以下,「引用技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。

「半導体処理装置等に使用するべく,サセプタ,静電チャック等,金属ベースにヒータを内蔵したヒータユニットにおいて,加熱時に早期に昇温し,かつ全面に亘り熱を均一化できることを目的とし,金属ベースが上下2分割された接合型ヒータユニット1の下側ベース2と上側ベース3との間及びシースヒータ4と各ベース2,3との間のその全面に亘り,ろう付けにより接合され一体化されることによって,その全面で互いに密着するように構成すること。」

3 引用文献3について
(1) 引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献3(特表2006-523015号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【説明】
【0014】
洗浄プロセスは,基板10上の金属含有導体16の表面14を洗浄するために行われる。例えば,洗浄プロセスは,酸素含有環境に表面を晒すことから形成された未変性酸化物膜12のような表面14上に形成された堆積物12を除去するのに有効である。堆積物12は,例えば,炭素,窒素,フッ素,シリコンを含有する残留物のような前のプロセスステップにおいて形成されたプロセス残留物,更に,高分子残留物さえも含み得る。洗浄プロセスは,例えば,銅,アルミニウム,チタン,タングステン,又はその合金又は化合物を含む金属含有導体16の表面14を洗浄することができる。・・・
【0015】
改善された洗浄プロセスが,水素含有ラジカルを含む励起された洗浄ガスに基板10を晒すことを含むことが見出された。・・・
【0019】
洗浄ガスは,例えば,図2Aに示されるように,遠隔ゾーン30においてガスにエネルギーを結合することによって励起させることができ,それにより,励起されたイオン種とラジカル種を含む遠隔励起ガスが形成される。遠隔ゾーン30は洗浄チャンバ106aのプロセスゾーン108から離れた適切な距離に位置し,遠隔ゾーン30で形成された励起イオン種の多くがプロセス領域108に到達する前に再結合する。・・・
【0028】
基板10の洗浄が,熱処理又はアニールステップを行って基板10から堆積物12を除去することにより改善し得ることが更に見出された。熱処理ステップにおいて,基板10は,例えば,堆積物12を揮発させることにより,基板10から物質を脱ガスするのに十分に高い温度に加熱する。・・・
【0030】
一変形例においては,熱処理ステップは水素ラジカル洗浄ステップと同じチャンバ106aで行われる。例えば,チャンバ106aは,温度制御システム140とチャンバ106a内で基板10を加熱するように適合されたヒータ142を含むことができる。図2Aに示された実施形態においては,ヒータ142は基板支持体110の基板10の下に抵抗加熱素子111を含んでいる。ヒータ142は,例えば,頭上式加熱ランプ143の,他の加熱デバイスを含むこともできる。・・・
【0034】
水素含有ラジカル洗浄プロセスに適した洗浄チャンバ106aを含む装置102の実施形態は,図2Aに示されてる。本明細書に示される装置102の具体的な実施形態は,半導体ウェハのような基板10を洗浄するのに適し,フラットパネルディスプレイ,ポリマーパネル,又は他の電気回路受容基板10のような他の基板10を洗浄するために当業者によって適合させることができる。・・・
【0035】
洗浄ガスを遠隔励起するのに適したリモートソース35は,遠隔ゾーン30,洗浄ガスソース39,リモートガスエナジャイザー37を有するリモートチャンバ40を含んでいる。動作中,洗浄ガスはリモートチャンバ40における洗浄ガスソース39から受容する。リモートチャンバ40への洗浄ガスの流量を制御するためにフローバルブ41を設けることができる。リモートガスエナジャイザー37は,遠隔ゾーン30で洗浄ガスにエネルギーを結合して洗浄ガスを励起し,それにより励起イオン種とラジカル種を含む励起洗浄ガスが形成される。リモートガスエナジャイザー37は,例えば,洗浄ガスにRFとマイクロ波エネルギーの少なくとも1種を結合することができる。一変形例においては,リモートガスエナジャイザー37は,遠隔領域30における洗浄ガスにRFエネルギーを誘導結合させる誘導アンテナを含んでいる。・・・
【0036】
基板10は,基板受容表面180を有する支持110上のプロセスゾーン108に保持される。支持体110は,電圧源91から電力レベルを印加することによって電気的にバイアスをかけ得る電極90を任意に含むことができる。電極90は,支持体110上の基板10を静電的に保持するためにバイアスをかけることができる。電極90と基板10は,プロセスの特性,例えば,基板10へのイオン衝撃の程度に影響するようにバイアスをかけることも可できる。しかしながら,支持体110はいかなる帯電可能電極を存在しないこともあり得る。温度制御システム140は,基板10の温度を維持するために設けられ,例えば,基板10の下の支持体110に抵抗加熱素子111を含むことができる。温度制御システム140は,1種以上の他の熱交換デバイス,例えば,熱交換流体が供給される熱交換コンジットや加熱ランプを含むこともできる。温度制御システム140は,基板10の温度をモニタするとともにチャンバコントローラ300に温度に関して信号を送る熱電対のような温度モニタを含むこともできる。」

(2) 引用技術的事項3
上記(1)によれば,引用文献3には,以下の技術的事項(以下,「引用技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。

「洗浄チャンバ106aにおいて,抵抗加熱素子111を含む支持体110に基板10を載置し,ガスにエネルギーを結合することによって励起させた洗浄ガスに基板10を晒すことで洗浄を行う洗浄プロセス。」

4 引用文献4について
(1) 引用文献4の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献4(特開平8-102460号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,プラズマ反応炉内の半導体ウエハの周辺部を囲むフォーカスリングにおける改良に関する。このフォーカス・リングは,さもなければウエハ周辺付近で速い流速を有するガスやプラズマからウエハ周辺部を保護する。」

「【0002】
【従来の技術】エッチングまたは化学気相成長法(chemical vapor deposition) のような半導体ウエハ処理ステップは,しばしば,プラズマリアクタとウエハ周囲のフォーカスリングを用いる。ここで,フォーカスリングは,そのウエハにわたり非均一なプラズマ分布によって起こるウエハエッチング速度の非均一性を減少させる。通常,非均一性プラズマ分布は,ウエハにわたる非均一性ガス流分布およびウエハにわたる非均一性陰極温度分布と非均一性電磁場分布などの他のファクターによって生じる。チャンバー底の真空ポンプは,チャンバ内で特定の真空レベルを維持するために,連続してチャンバからガスを引く。半導体ウエハは,チャンバ中央のペデスタル内で支持される。真空ポンプに向かって駆り立てられる(rushingdown)プラズマは,ウエハ周辺部の近くで流速が速い。エッチングリアクタ内で,ウエハ周辺部近くの高いプラズマ密度は,ウエハ中央よりウエハ周辺部でのエッチング速度を著しく高め,これがプロセス均一性を劣化させる。同様のプロセス均一性の劣化は,ウエハ周辺部付近の速いガス流のためにCVD反応炉内でも起こる。
【0003】図1は,ウエハの出入れ用スリットバルブを備えたチャンバ壁を有する真空チャンバ102を含むプラズマ反応炉内でウエハ周辺部付近のプロセスエッチング速度を遅くする為の従来技術を図示する。ウエハ110は,カソードベース113上方のウエハペデスタル112上で支持されている。・・・」

「【0009】
【実施例】図2によると,ウエハ周辺部付近の粒子汚染は,フォーカスリング114の下方に小さな通路118を備えることにより,減じられる。この小さな通路を通って粒子汚染は,図2の矢印で示されるように排出される。この目的のために,図2の実施例のフォーカスリング114は,ポスト122上に支持された環(annulus) から吊り下げられている(is suspended)。ウエハペデスタル112のショルダ上に置かれた基環(base annulus)124が,ポスト122を支えている。開口118を通る流出物は,ポスト122の間を通る。
【0010】図1と図2の実施例の各々に共通な問題は,チャンバ102内の数多くの可動部分がスリットバルブ106を通してのウエハ110の出入れを適応させるために必要である点である。例えば,リフトシリンダ115aは,その中のウエハ移送ウインドウ115dを,チャンバ壁内のウエハ移送スリットバルブ106に一致させる為に,ウエハペデスタル112に対して移動しなければならない。そのような運動は,リアクタチャンバ126の範囲内で粒子汚染を生成し,もって,そのような汚染のためにダイ収率損失の危険性を高める。
【0011】フォーカスリングとウエハを互いに動かす必需品(requirement) は,図3から図19の実施例では排除されている。これらの実施例において,唯一の機械運動は,ブレードをスリットバルブ106を介して挿入させてウエハの下を通過させる為に,リフトピン115cによりウエハを上昇させることである。その利点は,設計の簡単と粒子汚染の減少である。図3から図5の中で,フォーカスリング114は,それを通じて(therethrough)スリットバルブ106に面する前部開口114a,114bを備え(図5参照),支持環124上に置かれている。開口114aの幅は,ウエハ径(e.g.r 200cm)より十分に大きく,そこからウエハの出入れが可能である。開口114bの幅は,ウエハブレードに適応させるのに十分である。環124には,そこからポンプ125により粒子汚染が引き抜かれる(to be drawn away),穴やオリフィスがある。環124は,ウエハペデスタル112近傍の環状リングサポート130上に入れ子状に重ねられた(nestedon) 下方伸張リング基部(foot)128を有する。穴またはオリフィス126は,環124の周りに10度間隔で配置され,直径は少なくとも110.5mmのオーダーであることが好ましい。図5は,スリットバルブ106を介して見えるように,スリットバルブ106に面する開口またはウエハ移送ウインドウ114a,114bを示すフォーカスリング114の側面図である。」

【図3】は,フォーカスリングの一実施例を含むプラズマリアクタの側断面図,【図4】は【図3】の一部断面図であり,これらの図面によれば,ウエハ110を載置するウエハペデスタル112は環状であることを読み取ることができる。

(2) 引用技術的事項4
上記(1)によれば,引用文献4には,以下の技術的事項(以下,それぞれ,「引用技術的事項4ア」及び「引用技術的事項4イ」という。)が記載されていると認められる。

ア 「ウエハ110を載置するウエハペデスタル112は環状であること。」

イ 「プラズマ反応炉内の半導体ウエハの周辺部を囲むフォーカスリングについて,フォーカスリング114は,支持環124上に置かれており,支持環124は,ウエハペデスタル112近傍の環状リングサポート130上に入れ子状に重ねられた下方伸張リング基部128を有すること。」

5 引用文献5について
(1) 引用文献5の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献5(特開2002-151468号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ドライエッチング方法及び装置,並びに,ゲート電極形成方法及び装置に関し,詳しくは,主としてタングステン原子を含むメタル層が形成されて成る基体をエッチングするドライエッチング方法及びその装置,並びに,基体上にゲート電極を形成するゲート電極形成方法及びその装置に関する。」

「【0028】
【発明の実施の形態】・・・
【0029】図1は,本発明によるドライエッチング装置の好適な一実施形態を示す概略図である。ドライエッチング装置10は,内部が減圧されるチャンバ12を備えている。チャンバ12は,アルミニウムにアルマイト処理を施した材料等から成る略円筒形の容器本体14と,その上部に取り付けられた放電用部品であるドーム状の蓋体16とから構成されている。
【0030】チャンバ12の内部には,SiウェハWを載置するサセプタ18が配置されている。このサセプタ18の上面には,SiウェハWを固定するための静電チャック20が設けられている。サセプタ18は電極としても機能し,インピーダンス整合器22及び高周波バイアス電源24を介して接地されている。これにより,接地された容器本体14に対して高周波バイアス電圧が印加されると,サセプタ18がカソードとして機能し,容器本体14がアノードとして機能するようになる。
・・・
【0033】また,チャンバ12の一部である蓋体16は,誘電体材料から構成されている。この蓋体16の外周には,コイルアンテナ58が設けられており,コイルアンテナ58により蓋体16を介してチャンバ12の内部に電磁界が誘起されてプラズマが発生し,更にこのプラズマ中の電子にエネルギーが供給されてプラズマが高密度で維持される。なお,コイルアンテナ58には,インピーダンス整合器60を介して高周波電源62が接続されている。このように,コイルアンテナ58,インピーダンス整合器60及び高周波電源62からプラズマ形成部が構成されている。さらに,蓋体16の外側にはシールド64が設けられており,発生する高周波が外部に漏れるのを防止している。」

「【0057】図3は,本発明によるドライエッチング装置の他の実施形態の要部を示す摸式断面図である。この装置は,図1に示すドライエッチング装置10におけるチャンバ12内のサセプタ80の周部に,環状部材8を有すること以外は,ドライエッチング装置10と同様に構成されたものである。環状部材8は,静電チャック20の周端部上に配置された環状のキャプチャーリング81と,このキャプチャーリング81の周端部及び側壁上に当接するように嵌合された環状のフォーカスリング82とで構成されている。
【0058】この環状部材8においては,キャプチャーリング81の上壁におけるフォーカスリング82の内周位置82aと,SiウェハWの終端位置Eとの距離Dが所定の値となるようにされている。ここで,距離Dとしては,下記式(1);
0≦D≦Dc …(1),
で表される関係を満たす範囲の値が好ましい。式中,Dcは,キャプチャーリング81の断面における径方向に沿った幅を示す。また,フォーカスリング82の図示高さHは,特に限定されず,チャンバ12の構造及びエッチング条件により適宜設定される。
【0059】このように構成されたドライエッチング装置によれば,SiウェハWに対するエッチング速度(ER)の面内均一性をより向上できる。これは,フォーカスリング82がない状態では,SiウェハWの中心部Cよりも周端E側に対して,チャンバ12内の内側壁側からエッチャントである活性種が供給され易い傾向にあるのに対し,フォーカスリング82によって,そのような活性種の寄与が抑制されることによると推定される。ただし,作用がこれに必ずしも限定されない。」

(2) 引用技術的事項5
上記(1)によれば,引用文献5には,以下の技術的事項(以下,「引用技術的事項5」という。)が記載されていると認められる。

「ドライエッチング装置10は,チャンバ12を備え,チャンバ12の内部には,SiウェハWを載置するサセプタ18が配置されており,チャンバ12の一部である蓋体16の外周には,コイルアンテナ58が設けられ,蓋体16を介してチャンバ12の内部に電磁界が誘起されてプラズマが発生し,更にこのプラズマ中の電子にエネルギーが供給されてプラズマが高密度で維持されているものであって,チャンバ12内のサセプタ80の周部には環状部材8を有し,環状部材8は,静電チャック20の周端部上に配置された環状のキャプチャーリング81と,このキャプチャーリング81の周端部及び側壁上に当接するように嵌合された環状のフォーカスリング82とで構成されていること。」

6 引用文献6について
(1) 引用文献6の記載
本願優先日前に公開された特開平8-70007号公報(以下,「引用文献6」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は半導体ウエハや液晶用ガラス基板等の製造工程において用いられる熱処理装置,殊にホットプレートやクールプレートで半導体ウエハやガラス基板等(以下単に基板と称する)を加熱又は冷却するのに用いられる熱処理装置に関する。」

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで,基板1は,搬送中の空気摩擦や放熱板2と当該基板1との受け渡し等により静電気を帯び易く,図8(B)に示すように,熱処理後に当該基板1を搬出する際に,基板1に蓄積されている静電気により球体状スペーサ6が基板1に吸着されて,上記凹入部7から抜け出てしまうことがある。これを防止するために,耐熱性のセラミック系接着剤で球体状スペーサ6を凹入部7内に固着することが考えられるが,当該接着剤の使用により新たにパーティクルが発生する可能性がある。
【0006】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり,その目的は,スペーサが凹入部から抜け出てしまわないように接着剤を使用することによるパーティクルの発生を防止することができるとともに,簡単な構成でスペーサが凹入部から抜け出ることを防止することができ,かつ,基板の下面を傷つけることもない基板の熱処理装置を提供することにある。さらに,本発明の別の目的は,スペーサの着脱・交換が容易な上記基板の熱処理装置を提供することにある。さらに,本発明の別の目的は,熱処理されるべき基板とスペーサが支持されたプレートとの間隔を簡単に調整することか可能な上記基板の熱処理装置を提供することにある。さらに,本発明の別の目的は,上記基板の熱処理装置を安価な構成で提供することにある。」

「【0012】
【作用】請求項1に記載の発明では,プレートに形成されたスペーサ収納用凹部に球体状のスペーサが挿入されると,スペーサの頂部はプレート上面からわずかに上方に突出するので,この球体状のスペーサの頂部によって基板を支持することによりプレートと基板との間に微小間隔を形成することができ,この間隔を介して基板が熱処理される。さらに,プレートに形成されたスペーサの収納用凹部の上面に形成された開口はスペーサの直径よりも小さいので,熱処理後に基板を搬出する際に基板に静電気が蓄積されていて球体状のスペーサが基板に引きつけられても,スペーサがプレートに形成されたスペーサ収納用凹部から抜け出ることはない。さらに,球体状のスペーサは,スペーサ収納用凹部に挿入されているだけで固定されておらず回転可能であるので,基板搬出時に基板が直上に搬出されずに斜め上方へ持ち上げられても,その基板の水平方向移動に追随して球体状のスペーサが回転させられるので,搬出される基板の下面(裏面)をスペーサが擦って傷をつけることもない。」

「【0017】
【実施例】以下,本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図5は本発明に係る熱処理装置の平面図,図1は図5中のN-N線矢視拡大断面図であり,図6は図5中のM-M線矢視断面図である。この熱処理装置は,図5及び図6に示すように,本発明のプレートを構成する放熱板2と,放熱板2の下面に密着された加熱手段Hとから成り,放熱板2はメインプレート2Aと,メインプレート2Aの上面に着脱自在に載置されたサブプレート2Bとから構成されており,上記サブプレート2Bは,基板のサイズに応じて交換可能にメインプレート2Aに固定される。
【0018】上記サブプレート2Bの上面には,後述するように,本発明のスペーサ収納用凹部を構成する多数の凹入部17が形成されており,各凹入部17には球体状スペーサ6がそれぞれ挿入されている。・・・
【0019】上記球体状スペーサ6は,例えば,鋼球,アルミナ,セラミック,サファイア,ルビー,ガラス等の非伝熱部材によって球体状に構成される。そして図5及び図6に示すように,サブプレート2Bの上面の39ケ所にそれぞれ球体状スペーサ6を受け入れる凹入部17が形成され,各凹入部17にはそれぞれ球体状スペーサ6が一つずつ挿入されている。そして,この39個の球体状スペーサ6によって基板1した場合,支持された基板1の下面と放熱板2を構成するサププレート2Bの上面との間には,所定の微小間隔dが形成される。ちなみに,本実施例では球体状スペーサ6をサファイアボールで構成し,直径約2.4mmφの凹入部17にサファイアボール6を遊嵌状に嵌入したとき,微小間隔dが0.12mmになるように設定されている。なお,この微小間隔dは基板1に望まれる昇温特性,放熱板2の設定温度等によって適宜設定される。
【0020】上記凹入部17は,図1に示すように,サブプレート2Bの裏面よりスペーサ挿入孔17aと支持部材13の支持部材挿入孔17bと固定部材14のねじ孔17cとを一連に穴加工して穿設することにより形成されている。そして凹入部17の上面開口の寸法Sは,球体状スペーサ6の直径Dより小さく形成されている。熱処理後に基板1を搬出する際に,基板1に蓄積されている静電気により球体状スペーサ6が基板1に吸引されて凹入部17から抜け出るのを防止するためである。」

「【0028】
【発明の効果】請求項1に記載の発明は,加熱手段もしくは冷却手段を有するプレートから所定の間隔をおいた位置に基板をプレートと平行に支持して基板の熱処理を行う基板の熱処理装置において,熱処理されるべき基板をその頂部において下方から支持する球体状のスペーサと,プレートに形成されて上面にスペーサの直径よりも小さい開口を有し,スペーサの頂部が開口を通してプレートの上面から上方に突出するようにスペーサを収納するスペーサ収納用凹部とを有することを特徴とするものであり,プレートに形成されたスペーサ収納用凹部に球体状のスペーサが挿入されるとスペーサの頂部はプレート上面からわずかに上方に突出するので,この球体状のスペーサの頂部によって基板を支持することによりプレートと基板との間に微小間隔を形成することができ,プレートに形成されたスペーサの収納用凹部の上面に形成された開口はスペーサの直径よりも小さいので,熱処理後に基板を搬出する際に基板に静電気が蓄積されていて球体状のスペーサが基板に引きつけられても,スペーサがプレートに形成されたスペーサ収納用凹部から抜け出ることはない。」

(2) 引用技術的事項6
上記(1)によれば,引用文献6には,以下の技術的事項(以下,「引用技術的事項6」という。)が記載されていると認められる。

「基板を加熱するのに用いられる熱処理装置において,プレートに形成されたスペーサの収納用凹部の上面に形成された開口はスペーサの直径よりも小さく,球体状のスペーサは,スペーサ収納用凹部に挿入されているだけで固定されておらず回転可能であり,球体状スペーサは,アルミナによって球体状に構成されており,熱処理後に基板を搬出する際に,基板に蓄積されている静電気により球体状スペーサが基板に吸引されてスペーサ収納用凹部から抜け出るのを防止すること。」

7 引用文献7について
(1) 引用文献7の記載
本願優先日前に公開された特開2000-183146号公報(以下,「引用文献7」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,静電チャックに関するものである。」

「【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために,請求項1に記載の発明では,チャック電極層への通電により絶縁基材のチャック面に被吸着物が静電的に吸着される静電チャックにおいて,前記チャック面において開口する複数の凹部を前記絶縁基材に設けるとともに,前記凹部内に略球状の被吸着物支持体を,その一部が前記チャック面から突出する状態で遊嵌したことを特徴とする静電チャックをその要旨とする。」

「【0011】
【発明の実施の形態】[第1の実施形態]以下,本発明を具体化した第1実施形態の双極タイプの静電チャック1を図1に基づき詳細に説明する。
【0012】本実施形態の静電チャック1を構成している絶縁基材2は,好適な誘電体である窒化アルミニウム焼結体からなる。ここでは絶縁基材2として円盤状かつ厚さが約数mmのものを用いている。なお,本実施形態の絶縁基材2は,被吸着物であるシリコンウェハW1を複数枚同時にチャックとすべく,シリコンウェハW1の数倍の面積となるように形成されている。・・・
【0017】この静電チャック1は,シリコンウェハW1を点接触により支持する構造を備えている。絶縁基材2における複数箇所には,チャック面S1において開口する凹部としての貫通孔6が設けられている。これらの貫通孔6のチャック面S1側における開口部は,やや狭窄した形状をなしている。貫通孔6の内径は数mmであって,絶縁基材2の厚さと比べて若干大きめに設定されている。なお,絶縁基材2を冷却ステージ8上に固定した場合,貫通孔6の非チャック面S2側の開口部は塞がれた状態となる。塞がれた状態の貫通孔6内には,被吸着物支持体としての真球状の導電性ボール7が1つずつ遊嵌された状態で収容されている。本実施形態の導電性ボール7は,その直径が絶縁基材2の厚さよりも僅かに大きくなるように設定されている。なお,導電性ボール7の外周面と貫通孔6の内壁面との間には,導電性ボール7の転動を許容するだけのクリアランスが設けられている必要がある。言い換えると,貫通孔6の最大内径は導電性ボール7の直径よりも大きい必要がある。ただし,貫通孔6内に導電性ボール7を抜け出し不能に収容すべく,貫通孔6のチャック面S1側の開口部は導電性ボール7の直径よりも小さく形成されていることがよい。」

「【0032】・・・
[第2の実施形態]次に,本発明を具体化した実施形態2を図2に基づいて説明する。・・・
【0033】・・・凹部12はチャック面S1側のみにて開口するとともに,開口部が狭窄した形状をなす。本実施形態の凹部12は,実施形態1の貫通孔6に比べてかなり小さい。具体的にいうと,凹部12の深さ及び開口径は数百μm程度に設定されている。そして,各々の凹部12内には,実施形態1のものに比べてかなり小径の導電性ボール13が,転動可能かつチャック面S1側から抜け出し不能に遊嵌されている。・・・」

「【0036】なお,本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。・・・
【0037】・ 被吸着物支持体を接地しない構成を採用することも許容される。この場合には,導電性を有するものばかりでなく,導電性を有しない材料(アルミナ等のような一般的なセラミック材料)を用いて被吸着物支持体を形成してもよい。」

(2) 引用技術的事項7
上記(1)によれば,引用文献7には,以下の技術的事項(以下,それぞれ,「引用技術的事項7ア」及び「引用技術的事項7イ」という。)が記載されていると認められる。

ア 「静電チャック1を構成している絶縁基材2は,好適な誘電体である窒化アルミニウム焼結体からなり,絶縁基材2として円盤状のものを用いていること。」

イ 「チャック電極層への通電により絶縁基材のチャック面に被吸着物が静電的に吸着される静電チャックにおいて,前記チャック面において開口する複数の凹部を前記絶縁基材に設けるとともに,前記凹部内に略球状の被吸着物支持体を,その一部が前記チャック面から突出する状態で遊嵌した,凹部はチャック面側のみにて開口するとともに,開口部が狭窄した形状をなし,被吸着物支持体は,導電性を有しない材料(アルミナ等のような一般的なセラミック材料)を用いて形成してもよいこと。」

第5 対比及び判断
1 対比
(1) 本願発明と引用発明の対比
ア 引用発明の「熱処理装置」は,「放熱板2の上面の3ケ所に配設された基板支持用スペーサ6」を具備し,「基板1」を「このスペーサ6が支持」しているから,「放熱板2」は「基板受け面を有する第1ディスク」ということができる。

イ 引用発明の「加熱手段3」は,「伝熱部材4にヒータ5を埋設したものを放熱板2の下面に密着させて設け」たものであるから,「加熱素子を受容するように成形されたチャネルを有する第2ディスク」ということができる。また,引用発明は,「チャンネルに埋設された加熱素子」を備えているということもできる。

ウ 引用発明において,「放熱板2」(第1ディスク)と「加熱手段3」(第2ディスク)は,「密着させて設け」られているから,引用発明は,「第1ディスクと第2ディスクとを接合する接着部とを備えたプレート」を備えているということができる。

エ 引用発明は,「放熱板2の上面の3ケ所に配設された基板支持用スペーサ6」を具備し,「球体状スペーサ6はアルミナを材料とするセラミックボールで構成」されているから,「複数のセラミックボール」を備えているということができる。

オ 引用発明の「基板支持用スペーサ6」は,「放熱板2の上面の3ケ所に配設され」ているところ,「放熱板2の上面の3ケ所には,球体受け入れ用凹部である球体受穴7を凹設し,この球体受穴7に球体状スペーサ6を着脱可能に入れて」いるから,引用発明は,「基板受け面に形成された凹部の配列であって,各凹部は,セラミックボールの1つを受容する直径および深さを有する凹部の配列」を備えているということができる。

カ 引用発明の「熱処理装置」は,「基板を加熱するのに用いられる」ものであって,上記アによれば,「基板1」を「放熱板2の上面の3ケ所に配設された基板支持用スペーサ6が支持」しているから,「基板加熱台座部」を備えているということができる。

したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致または相違する。

(一致点)
「基板加熱台座部であって,
(a)基板受け面を有する第1ディスクと,加熱素子を受容するように成形されたチャネルを有する第2ディスクと,第1ディスクと第2ディスクとを接合する接着部とを備えたプレートと,
(b)複数のセラミックボールと,
(c)基板受け面に形成された凹部の配列であって,各凹部は,セラミックボールの1つを受容する直径および深さを有する凹部の配列と,
(d)チャンネルに埋設された加熱素子と,を備える,
台座部。」

(相違点)
(相違点1)
「基板加熱台座部」について,本願発明は,「エネルギー印加洗浄ガスの使用により基板を洗浄する基板洗浄チャンバのための」ものであるのに対し,引用発明は,「半導体製造工程」において用いられるものの,本願発明のような特定はされていない点。

(相違点2)
「プレート」について,本願発明は,「第1ディスクと第2ディスクとを接合するロウ付け接着部とを備え」,「環状」であるのに対し,引用発明は,「第1ディスクと第2ディスクとを接合する接着部」を備えるものの「ロウ付け接着部」ではなく,「矩形」である点。

(相違点3)
「基板受け面に形成された凹部の配列」について,本願発明は,「各凹部は,2?20°内側に傾斜した側部を備えているため,第1ディスクの表面における凹部の直径は,セラミックボールの直径より若干小さく,挿入されたセラミックボールを,挿入後,環状プレートの表面に閉じ込めることが可能である」のに対し,引用発明は,そのような構成ではない点。

(相違点4)
本願発明の「台座部」は,「外方棚部とを備え,基板加熱台座部は,基板周縁部の周囲の垂直面と外方棚部付近で隆起した脚部とを有するフォーカスリングが台座部の周縁部上に載ることができるように構成される」のに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

2 判断
(1) 相違点1について
引用発明の基板加熱台座部は,半導体製造工程において,基板を加熱するのに用いられる熱処理装置であって,放熱板の上面に基板を支持するものであるから,同様に,抵抗加熱素子を含む支持体に基板を載置するものであり,エネルギーを結合することによって励起させた洗浄ガスを用いる引用技術的事項3に示されるような洗浄チャンバにおいて,引用発明の基板加熱台座部を用いるように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。

(2) 相違点2について
引用文献1には,基板の温度不均一性を発生しにくくすることを技術課題とすること(上記第4の1(1)イ【0005】)が記載されているから,引用発明において,上記課題を解決するために,引用技術的事項2のろう付けにより接合され一体化される技術を採用し,ロウ付け接着部を備えるように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。
そして,上記第4の4(2)の引用技術的事項4ア及び同7(2)アの引用技術的事項7アによれば,基板を載置するプレートを環状とすることは,本願優先日前において,周知技術であったと認められ,プレートを矩形にするか環状にするか等,その形状は適宜決定し得る設計的な事項であるから,引用発明において,プレートを環状に構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。

(3) 相違点3について
上記第4の6(2)の引用技術的事項6及び同7(2)イの引用技術的事項7イによれば,開口が球体の直径よりも小さい球体受穴にセラミックボールを遊嵌することにより,球体受穴からセラミックボールが抜け出さないようにすることは,本願優先日前において,周知技術であったと認められる。
一方,引用発明も球体受穴7にセラミックボール6を遊嵌状に嵌入するものであるから,引用発明において,上記周知技術に基づき,相違点3に係る構成を採用することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。

(4) 相違点4について
上記第4の4(2)イの引用技術的事項4イ及び同5(2)の引用技術的事項5によれば,プラズマを用いる半導体製造装置において,基板を載置する台座部の周縁部付近に,基板と垂直な面と下方に延びた部分を有するフォーカスリングを配置することは,本願優先日前において,周知技術であったと認められる。
そして,上記(1)のとおり,引用発明の基板加熱台座部を,エネルギーを結合することによって励起させた洗浄ガスを用いる洗浄チャンバで用いるように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものであり,その際に,当該周知技術に基づき,相違点4に係る構成を採用することも,当業者であれば容易に想到し得るものである。

3 まとめ
したがって,本願発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし7に記載された技術的事項に基づいて,当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-17 
結審通知日 2019-04-25 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2015-226713(P2015-226713)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘小川 将之  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 梶尾 誠哉
小田 浩
発明の名称 基板洗浄チャンバ及び構成部品  
代理人 安齋 嘉章  

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