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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02H
管理番号 1355358
審判番号 不服2018-5787  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-26 
確定日 2019-09-19 
事件の表示 特願2015-539268「保護デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/046258〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月24日(優先権主張平成25年9月25日)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月7日付けの拒絶理由の通知に対して、平成30年1月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2.平成30年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月26日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
平成30年4月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、

本件補正前に、
「【請求項1】
PTC素子、
抵抗素子、ならびに
第1端子および第2端子
を含んで成る保護デバイスであって、第1端子、PTC素子、抵抗素子および第2端子が、この順番で電気的に直列に接続されていることを特徴とし、
抵抗素子の抵抗値が、室温でのPTC素子の抵抗値の10?50倍であり、かつ
抵抗素子の抵抗値が、2?50Ωである、保護デバイス。
【請求項2】
抵抗素子が巻線抵抗またはセメント抵抗であることを特徴とする、請求項1に記載の保護デバイス。
【請求項3】
PTC素子の保持電流が、0.1?5Aであることを特徴とする、請求項1または2に記載の保護デバイス。
【請求項4】
PTC素子の耐電圧が、100Vac以上であることを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の保護デバイス。
【請求項5】
PTC素子がポリマーPTC素子であることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載の保護デバイス。
【請求項6】
PTC素子が、抵抗素子の熱影響下にあることを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載の保護デバイス。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の保護デバイスを含む、保護回路。
【請求項8】
請求項1?6のいずれかに記載の保護デバイス、または請求項7に記載の保護回路を有して成る電気装置。」
とあったところを、

本件補正により、

「【請求項1】
PTC素子、
抵抗素子、ならびに
第1端子および第2端子
を含んで成る保護デバイスであって、第1端子、PTC素子、抵抗素子および第2端子が、この順番で電気的に直列に接続されていることを特徴とし、
抵抗素子の抵抗値が、室温でのPTC素子の抵抗値の10?50倍であり、かつ
抵抗素子の抵抗値が、2?50Ωであり、
PTC素子が、抵抗素子の熱影響下にあることを特徴とする、保護デバイス。
【請求項2】
抵抗素子が巻線抵抗またはセメント抵抗であることを特徴とする、請求項1に記載の保護デバイス。
【請求項3】
PTC素子の保持電流が、0.1?5Aであることを特徴とする、請求項1または2に記載の保護デバイス。
【請求項4】
PTC素子の耐電圧が、100Vac以上であることを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の保護デバイス。
【請求項5】
PTC素子がポリマーPTC素子であることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載の保護デバイス。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の保護デバイスを含む、保護回路。
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の保護デバイス、または請求項6に記載の保護回路を有して成る電気装置。」

とするものである。(下線部は、補正箇所である。)

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「PTC素子」が「抵抗素子の熱影響下にある」として限定を付加するものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.に本件補正による請求項1として記載したとおりのものである。

(2)引用文献、引用発明
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された、実願平2-87749号(実開平4-46502号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

a.「産業上の利用分野
本考案は、電話局交換機の電話回線を商用線との混線や雷等による過電流から保護するために適用される正特性サーミスタに関する。」 (明細書1頁10-13行)

b.「作用
以上の構成において、正特性サーミスタ素子と固定抵抗体とを組み合わせ、正特性サーミスタ素子の抵抗値と固定抵抗体の抵抗値の比を1:5以上としたため、正特性サーミスタ素子と固定抵抗体とを組み合わせた合成抵抗値の偏差は小さくなる。即ち、抵抗値偏差の小さい固定抵抗体が正特性サーミスタ素子の大きい抵抗値偏差を吸収することとなる。
さらに、正特性サーミスタ素子と固定抵抗体との合成抵抗値は50Ω以上500Ω以下にされる。これは、電話局交換機等とのインピーダンスマッチングをとるためである。」(明細書2頁20行-3頁12行)

c.「実施例
以下、本考案に係る正特性サーミスタの実施例を添付図面を参照して説明する。
[第1実施例、第1図?第3図]
第1図及び第2図はそれぞれ正特性サーミスタの正面図、背面図を示す。第1図に示すように、アルミナ等からなる絶縁性基板1の表面中央部には正特性サーミスタ素子取付け用電極2が設けられている。基板1の下部にはリード端子取付け用電極4a,4b、基板1の左側の縁部にはL字形の導体パターン5が設けられている。電極2と電極4aとは接続している。一方、第2図に示すように、基板1の裏面下部にはリード端子取付け用電極6a,6bと導体パターン7とが設けられている。固定抵抗体8は印刷等の手段により基板1の裏面に広範囲に設けられ、電極6bと導体パターン7とを接続している。この固定抵抗体8は、例えば酸化ルチウムとガラス質の材料とでできている。」 (明細書3頁13行-4頁10行)

d.「10は円形板の正特性サーミスタ素子であり、BaTiO_(3)等の材料からなり、その表裏面に電極を設けたものである。この正特性サーミスタ素子10は、その一方の電極を前記基板1の電極2に半田付け等の手段により接合し、基板1に支持している。正特性サーミスタ素子10の他方の電極はワイヤーボンディングの手段により金属線11にて導体パターン5と電気的に接続している。」(明細書4頁11-18行)

e.「以上の構成の正特性サーミスタの等価電気回路を第3図に示す。正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8とが直列接続している。ここに、正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8とは、その抵抗値の比が1:5以上、かつ、正特性サーミスタ素子10と抵抗体8との合成抵抗値が50Ω以上500Ω以下(25℃の常温、以下抵抗値は常温時のものである)になるように形成されている。正特性サーミスタ素子10の抵抗値と抵抗体8の抵抗値の比を1:5以上とすることにより、偏差の小さい固定抵抗体8の抵抗値が合成抵抗値に対して占める割合が大きくなる。従って、正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8とを組み合わせた合成抵抗値の偏差は小さくなる。即ち、固定抵抗体8が正特性サーミスタ素子10の大きい抵抗値偏差を吸収することとなる。例えば、合成抵抗値が100Ωの場合を例にすると、正特性サーミスタ素子10の抵抗値の偏差は中心値の±20%である。固定抵抗体8の抵抗値は殆ど偏差はなく、偏差0%と考えれば、表1に示す計算値が得られる。」(明細書5頁5行-6頁4行)

f.「表1

」(明細書7頁)

g.「表1から、正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8との抵抗値比を1:5以上にすれば、合成抵抗値の偏差は約3%以内になる。固定抵抗体8の抵抗値は修復作業によりその中心値に対して約5%程度上下させることができるので、この修復作業を併用することにより前記合成抵抗値の偏差を例えば2%以内に納めることができる。また、正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8との合成抵抗値を50Ω以上500Ω以下とすることにより、電話局交換機や伝送装置等とのインピーダンスマッチングが図れる。」(明細書8頁1-11行)

h.「図1



i.「図2



j.「図3




・上記aによれば、引用文献1には、電話局交換機の電話回線を商用線との混線や雷等による過電流から保護するために適用される正特性サーミスタが記載されている。

・上記c、図1(上記h)、図2(上記i)には、アルミナ等からなる絶縁性基板1の表面中央部には正特性サーミスタ素子取付け用電極2が設けられること、また、固定抵抗体8は印刷等の手段により基板1の裏面に広範囲に設けられること、さらに、基板1の下部にリード端子が取り付けられることが記載されている。
してみると、引用文献1には、アルミナ等からなり表面中央部には正特性サーミスタ素子取付け用電極2が設けられ、裏面の広範囲に固定抵抗体8が印刷等の手段により設けられ、下部にリード端子が取り付けられる絶縁性基板1が記載されているといえる。

・上記dには、BaTiO_(3)等の材料からなり基板1の電極2に半田付け等の手段により接合した円形板の正特性サーミスタ素子10が記載されている。

・上記e及び図3(上記j)によれば、リード端子13、正特性サーミスタ素子10、固定抵抗体8、リード端子14がこの順番で直列接続されていることが記載されている。

・上記g、表1(上記f)には、固定抵抗体8の抵抗値が固定抵抗体8と正特性サーミスタ素子10の中心抵抗値を合わせた合成抵抗値に対して占める割合が大きくすることで、合成抵抗値の偏差を3%以下としたものが記載されている。
また、上記eには、抵抗値が25℃の常温時のものであることが記載されている。
さらに、上記b及びeには、固定抵抗体8の抵抗値が合成抵抗値に対して占める割合が大きくすることで、固定抵抗体8が正特性サーミスタ素子10の大きい抵抗値偏差を吸収することができること、また、上記b及びgには、正特性サーミスタ素子と固定抵抗体との合成抵抗値は、電話局交換機や伝送装置とのインピーダンスマッチングがとられるように50Ω以上500Ω以下としていることが記載されている。
してみると、引用文献1には、25℃の常温時において固定抵抗体8の抵抗値と正特性サーミスタ素子10の中心抵抗値を合わせた合成抵抗値の偏差を3%以下とし、固定抵抗体8が正特性サーミスタ素子10の大きい抵抗値偏差を吸収し、また、正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8との合成抵抗値は、電話局交換機や伝送装置とインピーダンスマッチングがとられるように50Ω以上500Ω以下としていることが記載されているといえる。

したがって、表1の例1の実施形態に着目し、上記引用文献1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「電話局交換機の電話回線を商用線との混線や雷等による過電流から保護するために適用される正特性サーミスタであって、
アルミナ等からなり表面中央部には正特性サーミスタ素子取付け用電極2が設けられ、裏面の広範囲に固定抵抗体8が印刷等の手段により設けられ、下部にリード端子13、14が取り付けられる絶縁性基板1と、
BaTiO_(3)等の材料からなり絶縁性基板1の電極2に半田付け等の手段により接合した円形板の正特性サーミスタ素子10とからなり、
リード端子13、正特性サーミスタ素子10、固定抵抗体8、リード端子14がこの順番で直列接続されており、
25℃の常温時において固定抵抗体8の抵抗値と正特性サーミスタ素子10の中心抵抗値を合わせた合成抵抗値の偏差を3%以下とし、固定抵抗体8が正特性サーミスタ素子10の大きい抵抗値偏差を吸収し、また、正特性サーミスタ素子10と固定抵抗体8との合成抵抗値は、電話局交換機や伝送装置とインピーダンスマッチングがとられるように50Ω以上500Ω以下としている、
正特性サーミスタ。」

(イ)引用文献2
原査定の拒絶の理由において引用された、特開平3-118433号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「[実施例3]
第5図(a)は本発明に係る感温素子のさらに別の実施例を示した断面図であって、PTCサーミスタ2の下面に、上述と同様、CTR1が熱的に結合されると共に、PTCサーミスタ2の上面には断面略楕円形状の抵抗体15が接着剤を介して密接して配設されている。また、PTCサーミスタ2の上下両面にはそのほぼ全域に亙ってそれぞれ第1及び第2の電極7、17が形成されている。さらに、第2の電極17と抵抗体15との間にはリード線18が連架され、第1の電極7とCTR1との間にはリード線8が連架されている。そして、CTR1及び抵抗体15にはそれぞれリード線9、19が接続されている。また、CTR1、PTCサーミスタ2及び抵抗体15は、エポキシ系樹脂等の耐熱性樹脂10により被覆されている。」(5頁右上欄3行-19行)

b.「[実施例4]
第7図(a)は本発明に係る感温素子のさらに別の実施例を示した断面図であって、PTCサーミスタ2の一方の端面にCTR1が熱的に結合されると共に、接着剤を介してPTCサーミスタ2の他方の端面に抵抗体15が熱的に結合されている。そして、PTCサーミスタ2の上下両面にはその略全域に亙ってAg等の導電材料からなる第1及び第2の電極11、12が形成され、さらに、CTR1はリード線13、14に接続され、PTCサーミスタ2は、第1及び第2の電極11、12を介してリード線13、14に接続されている。さらに、抵抗体15は、リード線20、21を介して第1および第2の電極11、12に接続されている。また、CTR1、PTCサーミスタ2及び抵抗体15は、エポキシ系樹脂等の耐熱性樹脂10により被覆されている。
CTR1とPTCサーミスタ2の構成等は[実施例1]と同様であるので省略する。
このように形成された感温素子は、第7図(b)に示すように、CTR1とPTCサーミスタ2と抵抗体15とが並列的に接続とされることとなる。しかも、CTR1とPTCサーミスタ2と抵抗体15とが密接して熱的に結合されているので、熱の移動を円滑に行なうことができる。したがって、該感温素子は、CTR1の特性とPTCサーミスタ2の特性と抵抗体15の有する平坦化特性とが複合されたものとなり、第8図に示すように、平坦部を具備した凸型の抵抗温度特性を有する感温素子が得られる(図中、破線で示す)。すなわち、抵抗値の高い領域(図中、G、Hで示す)でもって、CTR1と抵抗体15とPTCサーミスタ2とのそれぞれの抵抗温度特性が交わるため、平坦部を具備した凸型の抵抗温度特性を有する感温素子を得ることができる。」(5頁右下欄1行-6頁左上欄15行)

上記引用文献2の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献2には以下の技術事項(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「PTCサーミスタ2と抵抗体15が密接して熱的に結合されると、熱の移動を円滑に行なうことができること。」

(ウ)引用文献3
原査定の拒絶の理由において引用された、特開昭63-257416号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「次に商用線混触時に於ける防護を説明する。商用線混触はアダプタ6で防護する。アダプタ6は第2-3図で示す特性を持つ(温度が上昇するとキューリ点で急激にそのインピーダンスが増加する)PTCと呼ばれるサーミスタ抵抗素子5と抵抗4とがシリーズに接続される構成である。本構成の特徴であるサーミスタ抵抗素子5の特性を充分に発揮させるために抵抗4とサーミスタ抵抗素子5とを熱的に密接に一体化実装する事が重要である。この構造は第2-1図に示すように抵抗体8とサーミスタ抵抗素子体7を密着はり合わせる事により実現できる。ここで通常の動作時に於てはサーミスタ抵抗素子5は全くの抵抗素子と同様な動作を行い商用線混触が発生した異常時には、商用線混触電流が抵抗4及びサーミスタ抵抗素子5に流れる事により発生する熱でサーミスタ抵抗素子5が働き、商用線混触が通信機器1に浸入するのを防護するものである。」(2頁右下欄20行-3頁左上欄17行)

上記引用文献3の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献3には以下の技術事項(以下、「引用文献3に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「抵抗体8とサーミスタ抵抗素子体7を密着はり合わせ、異常時に電流が抵抗4及びサーミスタ抵抗素子5に流れる事により、発生する熱でサーミスタ抵抗素子5を働かせること。」


(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明「正特性サーミスタ素子10」、「固定抵抗体8」、「リード端子13」、及び「リード端子14」は、各々、本件補正発明の「PTC素子」、「抵抗素子」、「第1端子」、及び「第2端子」に相当する。
そして、引用発明の「リード端子13、正特性サーミスタ素子10、固定抵抗体8、リード端子14がこの順番で直列接続されて」いることは、本件補正発明の「第1端子、PTC素子、抵抗素子および第2端子が、この順番で電気的に直列に接続されていること」に相当する。

b.引用発明の「正特性サーミスタ」は、「正特性サーミスタ素子10」、「固定抵抗体8」、「リード端子13、14」からなり、また、電話局交換機の電話回線を商用線との混線や雷等による過電流から保護するためのものであるから、本件補正発明の「保護デバイス」に相当する。

c.引用発明の「中心抵抗値」とは、引用文献1(明細書6頁1-2行)に「正特性サーミスタ素子10の抵抗値の偏差は中心値の±20%である。」と記載されているように、「正特性サーミスタ素子10」の抵抗値にばらつきがあるために、引用文献1において計算等を行う際にばらつきの中心の抵抗値を「正特性サーミスタ素子10」の抵抗値としたものである。よって、引用発明の「25℃の常温時」の「正特性サーミスタ素子10の中心抵抗値」は、本件補正発明の「室温でのPTC素子の抵抗値」に相当する。
しかしながら、引用発明では、「固定抵抗体8」及び「正特性サーミスタ素子10」の抵抗値は特定されていない。
したがって、本件補正発明は、「抵抗素子の抵抗値が、室温でのPTC素子の抵抗値の10?50倍であり、かつ抵抗素子の抵抗値が、2?50Ωであ」るのに対して、引用発明は、その旨の特定がされていない点で相違する。

さらに、本件補正発明は、「PTC素子が、抵抗素子の熱影響下にある」のに対して、引用発明は、その旨の特定がされていない点で相違する。

したがって、本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「PTC素子、
抵抗素子、ならびに
第1端子および第2端子
を含んで成る保護デバイスであって、第1端子、PTC素子、抵抗素子および第2端子が
、この順番で電気的に直列に接続される、
保護デバイス。」

(相違点1)
本件補正発明は、「抵抗素子の抵抗値が、室温でのPTC素子の抵抗値の10?50倍であり、かつ抵抗素子の抵抗値が、2?50Ωであ」るのに対して、引用発明は、その旨の特定がされていない点。

(相違点2)
本件補正発明は、「PTC素子が、抵抗素子の熱影響下にある」のに対して、引用発明は、その旨の特定がされていない点。


(4)判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1)について
引用発明は、固定抵抗体の抵抗値と正特性サーミスタ素子の中心抵抗値を合わせた合成抵抗値の偏差を3%以下とし、固定抵抗体が正特性サーミスタ素子の大きい抵抗値偏差を吸収するものであるから、合成抵抗値の偏差を1%とするものを含むものである。
ここで、合成抵抗値の偏差を、固定抵抗体の抵抗値R_(K)、正特性サーミスタ素子の中心抵抗値R_(S)として求めると(但し、上記「(3)c.」で記したように正特性サーミスタ素子の抵抗値の偏差は中心値の±20%である。)、
合成抵抗の偏差=(1.2×R_(S)+R_(K))/(R_(S)+R_(K))
となる。
そして、合成抵抗値の偏差を1%とすると、
(1.2×R_(S)+R_(K))/(R_(S)+R_(K))=1.01
であって、これより固定抵抗体の抵抗値と正特性サーミスタ素子の中心抵抗値の比であるR_(K)/R_(S)をもとめると、
R_(K)/R_(S)=19
となり、本件補正発明の範囲(抵抗素子の抵抗値が、室温でのPTC素子の抵抗値の10?50倍)を含むものである。
更に、引用発明は、合成抵抗値を50Ω以上500Ω以下として電話局交換機や伝送装置とのインピーダンスマッチングがとれるようにしたものである。
してみると、合成抵抗値が50Ωであって、上記合成抵抗値の偏差が1%、抵抗値の比が19倍となる際には(固定抵抗体の抵抗値が47.5Ω、正特性サーミスタ素子の中心抵抗値が2.5Ω)、当該固定抵抗体の抵抗値は、本件補正発明の範囲(2?50Ω)を満たすものである。
したがって、引用発明において固定抵抗体の抵抗値を正特性サーミスタ素子の大きい抵抗値偏差を吸収でき、接続される電話局交換機や伝送等値とインピーダンスマッチングがとれるように適宜選択することで、本件補正発明の相違点1の範囲内の値とすることは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2)について
引用発明において「正特性サーミスタ素子10」と「固定抵抗体8」は、アルミナの基板の表裏に設けられるものであり、また、一般にアルミナは熱伝導性に優れるものである。
してみると、引用発明においても「固定抵抗体8」に電流が流れることによって生じた熱の影響が、基板を介して「正特性サーミスタ素子10」側に伝わるものであるから、「正特性サーミスタ素子10」は「固定抵抗体8」の熱影響下にあるものと認められる。
したがって、相違点2は実質的な相違点とは認められない。
なお、「熱影響下にある」ということが、抵抗素子で発生した熱を利用してPTC素子が動作することを規定していたとしても、例えば引用文献2、3にも記載されるように、抵抗素子とPTC素子を隣接して配置して抵抗素子の熱を利用することが周知の技術に過ぎないことから(上記「(2)(イ)及び(ウ)を参照)、引用発明において、該周知の技術を適用して、「正特性サーミスタ素子10」が 「固定抵抗体8」の熱を利用することによって、本件補正発明の上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明、及び周知の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(5)結語
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成30年4月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成30年1月11日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記「第2 1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用文献、引用発明
引用発明等は、上記「第2 2.(2)(ア)引用文献1」の項で記載したとおりである。


3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記本件補正発明から「PTC素子が、抵抗素子の熱影響下にあること」を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記「第2 2.(3)対比」における相違点1で相違する。
しかしながら、上記「第2 2.(4)判断」で検討したように、相違点1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-10 
結審通知日 2019-07-16 
審決日 2019-07-29 
出願番号 特願2015-539268(P2015-539268)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02H)
P 1 8・ 121- Z (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 崇  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
山澤 宏
発明の名称 保護デバイス  
代理人 鮫島 睦  
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