• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1355370
審判番号 不服2018-9310  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-05 
確定日 2019-09-19 
事件の表示 特願2014-176457「容器用吐出具の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 50015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月29日の出願であって、平成30年4月17日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成30年7月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審より平成31年2月28日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、上記平成31年4月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッドと、該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプとを備える容器用吐出具の製造方法において、
前記ノズルヘッドの射出成形後に前記ノズルの先端に対して後加工を施すことにより、流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成することを特徴とする容器用吐出具の製造方法。」

2 引用文献
(1)引用文献1
当審の拒絶理由に引用された特開2008-184222号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
容器体Aと、該容器体Aに装着した泡噴出ポンプBとを備え、泡噴出ポンプBは、空気用シリンダ20と液用シリンダ21とを同心円状に連設したシリンダ部材B_(2)と、シリンダ部材B_(2)に対して上方付勢状態で上下動自在に装着させるとともに、空気用シリンダ20内に嵌合する空気用ピストン70及び液用シリンダ21内に嵌合する液用ピストン80をステム30と連結させ、且つ、ステム30上端に押し下げヘッド40を装着した上下動部材B_(3)とを備え、上下動部材B_(3)の上下動により、液用シリンダ21からの液と空気用シリンダ20からの空気を合流させ、合流地点下流の噴出口46至る流路内に設けた起泡層47で発泡させて噴出口46より泡として噴出する如く構成してなり、噴出口46に連続する整泡ノズル60を付設し、該整泡ノズル60は、基端部より先端部に行くに従って漸次断面積を減少させる噴出通路63を備えていることを特徴とする泡噴出容器。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は泡噴出容器に関する。」
ウ 「【0006】
整泡ノズルは、基端部より先端部に行くに従って漸次断面積を減少させる噴出通路を備えている。尚、ここでいう断面積はノズルの軸線と直交する縦断面の面積をいう。整泡ノズルの形状は、上記要件を満たせば種々選択でき、例えば、縦断面が多角形のものであっても、或いは円形,楕円形であっても良く、また、その漸次減少する断面積の減少程度も錐形状の如く漸次均一に減少する形態であっても、不均一であっても良い。」
エ 「【0023】
押し下げヘッド40は、ステム30外周上端部に下端部を嵌着した縦筒41を頂板42裏面より垂設し、頂板42周縁部より下方へ短い周壁43を垂設し、周壁43と縦筒41との間の頂板42より被覆筒44を垂設してその下端を案内筒13外周上部に下降可能に垂下させている。また、縦筒41の上端部に基端を開口した噴出ノズル45を被覆筒44及び周壁43を貫通してその前方へ突出し、先端に噴出口46を開口している。縦筒41のステム30外周に嵌合している部分の内周をその他の部分より大径に形成し、大径部分内面に周方向複数のリブ49を縦設して各リブ49内面をステム30外周上端部にそれぞれ嵌合している。そうすることによりステム30との間に通気路を構成する隙間を形成している。また、隙間の下端部は更に大径に形成しており、その部分にはリブ49は設けていない。
【0024】
噴出ノズル45の先端には整泡ノズル60を付設している。整泡ノズル60は、噴出ノズル45の先端外周に螺着した装着筒61の先端縁より内方へ延設したフランジ部62を介して前方へ突設しており、基端部より先端部に行くに従って漸次断面積を減少させる噴出通路63を備えている。」
オ 「


カ 「


キ 図3から、縦断面が横長の長方形である整泡ノズル60が看取できる。

(2) 引用文献1に記載された発明
(1)の上記ア?キの記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「容器体Aと、該容器体Aに装着した泡噴出ポンプBとを備え、泡噴出ポンプBは、空気用シリンダ20と液用シリンダ21とを同心円状に連設したシリンダ部材B_(2)と、シリンダ部材B_(2)に対して上方付勢状態で上下動自在に装着させるとともに、空気用シリンダ20内に嵌合する空気用ピストン70及び液用シリンダ21内に嵌合する液用ピストン80をステム30と連結させ、且つ、ステム30上端に押し下げヘッド40を装着した上下動部材B_(3)とを備え、上下動部材B_(3)の上下動により、液用シリンダ21からの液と空気用シリンダ20からの空気を合流させ、合流地点下流の噴出口46至る流路内に設けた起泡層47で発泡させて噴出口46より泡として噴出する如く構成し、噴出口46に連続する縦断面が横長の長方形である整泡ノズル60を付設し、該整泡ノズル60は、基端部より先端部に行くに従って漸次断面積を減少させる噴出通路63を備え、
押し下げヘッド40は、ステム30外周上端部に下端部を嵌着した縦筒41を頂板42裏面より垂設し、頂板42周縁部より下方へ短い周壁43を垂設し、周壁43と縦筒41との間の頂板42より被覆筒44を垂設してその下端を案内筒13外周上部に下降可能に垂下させ、
縦筒41の上端部に基端を開口した噴出ノズル45を被覆筒44及び周壁43を貫通してその前方へ突出し、先端に噴出口46を開口する、
泡噴出容器の泡噴出ポンプBの製造方法。」

(3)引用文献2
当審の拒絶理由に引用された特開2004-217268号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】
シャンプー,リンス,ハンドソープ,洗顔剤,整髪剤,ひげ剃り剤等の液体を内容物とし、容器内のシリンダとピストン、及び、容器外のノズルとを主な構成部材とするポンプ機構を容器に一体的に設置したポンプ式吐出容器については、従来から様々なものが提案され既に商品化されている。そのようなポンプ式吐出容器では、容器内に収納された内容液を、そのまま或いは泡の状態としてノズルの吐出口から容器外に吐出するように、吐出口を略水平方向に突出させたノズルが、容器の口部に冠着されたキャップから上方に突出するように設けられており、ノズルを押し下げ操作により、上方向に付勢されたピストンをシリンダ内で上下方向に往復動させるポンプ機構の働きによって、容器内に収納されている液体が、そのまま或いは泡の状態で、略水平方向に突出するノズル吐出口から容器外に吐出されるようになっている。」
イ 「【0010】
本実施形態のノズル付き包装容器は、シャンプー,ハンドソープ,洗顔料,整髪料,ひげ剃り剤等、界面活性剤を含有する液体を収容したポンプ式泡吐出容器であって、図1に示すように、ポンプ式泡吐出容器1は、容器本体2の口部に冠着されたキャップ3から上方に、ノズル4を押し下げ可能に突出させたものであり、吐出ポンプの押し下げヘッドとして操作されるノズル4には、その上端部で略水平方向に突出するように吐出口4aが形成されている。」
ウ 「【0012】
そのような本実施形態のポンプ式泡吐出容器1において、吐出口4aを略水平方向に突出させているノズル4では、図2に示すように、(A)上方から見ても、(B)側方から見ても、(C)正面から見ても、何れの方向から見た状態でも、吐出口4aの先端外周縁では、全ての角部4bが、少なくとも半径0.5mm以上のアール状に丸められている。このアールの大きさについては、大きいほどシュリンクフィルムの破れ防止の効果は向上するが、ノズル4の吐出口4aの肉厚よりも大きくすることはできず、成形性や強度面から吐出口4aの肉厚は0.5?1.5mm程度が好ましいことから、アールの大きさも半径0.5?1.5mmに設定されることとなる。なお、図2に示した本実施形態のポンプ式泡吐出容器1のノズル4に対応する従来例においては、図3(A),(B),(C)に示すように、吐出口4aの先端外周縁の各角部4bが全て鋭敏なものとなっている。」
エ 「図1


オ 「図2


カ 図2(C)から、吐出口4aが横長の長方形である点が看取できる。
また、キャップ3、ノズル4及び吐出ポンプは、容器本体2の口部に冠着する一つのユニット(以下「ポンプ式泡吐出容器1用の吐出具」という。)として製造されることは技術常識である。

(4)引用文献2に記載された発明
(3)の上記ア?カの記載を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「容器本体2の口部に冠着されたキャップ3から上方に、ノズル4を押し下げ可能に突出させたものであり、吐出ポンプの押し下げヘッドとして操作されるノズル4には、その上端部で略水平方向に突出するように吐出口4aが形成され、吐出口4aが横長の長方形であるポンプ式泡吐出容器1用の吐出具の製造方法。」

(5)引用文献3
当審の拒絶の理由に引用された特開2012-45525号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
複数剤混合式の毛髪化粧料である酸化染毛剤、毛髪脱色剤又は毛髪脱染剤を収容するための収容容器の上部に装着可能に構成され、前記収容容器に装着された状態で行われる吐出操作に伴い、前記収容容器に収容された毛髪化粧料をポンプで吸引するとともに空気を混入させて泡状にし、横向きに延びるノズルの先端面に形成された吐出口から吐出するポンプフォーマーであって、
泡状にした毛髪化粧料を前記吐出口へ導く内部流路として、前記ポンプの上方へ延びる中継流路と、前記ノズルの内部において前記中継流路と前記吐出口とを連通するノズル流路とが形成されており、
前記ノズル流路の断面積が、前記中継流路の断面積よりも大きく形成されていること
を特徴とするポンプフォーマー。」
イ 「【請求項7】
前記ノズル流路は、当該流路の底面が平らに形成されていること
を特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のポンプフォーマー。」
ウ 「【背景技術】
【0002】
従来、収容容器の上部に装着され、収容容器に収容された内容液をポンプで吸引するとともに泡状にして外部へ吐出するポンプフォーマーが知られている(特許文献1参照)。この種のポンプフォーマーでは、ヘッド部を下方へ押し込む吐出操作に伴い、収容容器に収容された内容液がポンプで吸引され、空気が混入されて泡状にされる。そして、泡状にされた内容液は、ポンプの上方へ延びるように形成された中継流路から、横向きに延びるノズルの内部に形成されたノズル流路へ導かれ、ノズルの先端面に形成された吐出口から吐出される。」
エ 「【0013】
また、例えば請求項7に記載のポンプフォーマーでは、ノズル流路は、当該流路の底面が平らに形成されている。このようなポンプフォーマーによれば、ノズル流路内に残留した毛髪化粧料が吐出口から垂れ落ちにくくすることができる。すなわち、例えばノズル流路が円形流路の場合、ノズル流路内に残留した毛髪化粧料が底面中央部に集中するが、本発明のように流路の底面が平らに形成されていれば底面中央部に集中することなく分散されるため、毛髪化粧料の許容量を高くすることができる。なお、ここでいう「平ら」とは、上記効果が得られる範囲であればよく、厳密な意味での平面に限定されるものではない。すなわち、円形の流路は除外される一方、概略長方形の流路であって、その底面が曲率半径の大きい曲面であるような形状は含まれる。
【0014】
また、例えば請求項8に記載のポンプフォーマーでは、ノズルの先端面は、鉛直面に対して10?40°の角度の範囲内で下方を向いており、ノズル流路の断面積が60?100mm^(2)の範囲内に形成されている。このようなポンプフォーマーによれば、ノズルの先端面が過剰に下方を向いていないため、毛髪化粧料が自重で垂れ落ちにくく、しかもノズル流路の断面積が大きく形成されているため、毛髪化粧料が安定して保持されやすい。したがって、吐出した毛髪化粧料の泡をノズルの先端から切り離したときなどに、毛髪化粧料が吐出口から垂れ落ちにくくすることができる。」
オ 「【0036】
さらに、ノズル32の先端面が過剰に下方を向いていないため、毛髪化粧料が自重で垂れ落ちにくく、しかもノズル流路37の断面積が大きく形成されているため、毛髪化粧料が安定して保持されやすい。加えて、ノズル流路37の底面が平らに形成されているため、毛髪化粧料が底面中央部に集中することなく分散される。したがって、吐出した毛髪化粧料の泡をノズル32の先端から切り離したときなどに、ノズル流路37内に残留した毛髪化粧料を吐出口33から垂れ落ちにくくすることができる。」
カ 「



(6)引用文献4
当審の拒絶の理由に引用された特開2009-131817号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「図1



(7)引用文献5
当審の拒絶の理由に引用された特開2012-91846号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
容器の口部にねじ止め固定されるベースキャップと、該ベースキャップにより該口部を通して吊り下げ固定され、該容器内部の内容物を汲み上げるポンプと、該ポンプのステムに連結し、該ステムの押し込みと復帰動作の繰り返しにより該ポンプのピストンを駆動させて容器内の内容物を吸引、加圧、圧送して該内容物を外界へ排出するノズルヘッドとを備えるポンプ式注出器であって、
前記ベースキャップに、該ベースキャップと分離可能に一体に連結するとともに、前記ノズルヘッドと着脱可能に係合して該ノズルヘッドを保持するアダプターを設け、
前記アダプターに、前記ステムの外壁を間隔をおいて取り囲み、前記ノズルヘッドの押し込み可能状態における姿勢にて、その下端を前記ピストンの上部に当接させて内容物の侵入を阻止するとともに該ピストンの上方ストッパーとなる周壁を形成し、
前記ステムの外壁と前記周壁との相互間に、前記ステムを前記ノズルヘッドとともに上方へ向けて付勢する弾性部材を配置したことを特徴とするポンプ式注出器。」
イ 「【0022】
4は、ポンプ3を駆動させるとともに、ステム3fからの内容物を内部空間に導入し、外界に向けて噴出させるノズルヘッドである。ノズルヘッド4は、押圧力を直接付与する操作部4aと、操作部4aと一体連結するとともにステム3fと嵌合する筒体4bと、筒体4bと一体連結しステム3fから送給される内容物を外部に向けて吐出する吐出口4c_(1)を形成したノズル4cとを備えている。また筒体4bの外壁には、アダプター2のねじ部n_(1)に適合するねじ部n_(2)が設けられている。」
ウ 「図1



(8)引用文献5に記載された発明
(7)のア?ウの記載を総合すると、引用文献5には、以下の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されている。
「容器の口部にねじ止め固定されるベースキャップと、該ベースキャップにより該口部を通して吊り下げ固定され、該容器内部の内容物を汲み上げるポンプと、該ポンプのステムに連結し、該ステムの押し込みと復帰動作の繰り返しにより該ポンプのピストンを駆動させて容器内の内容物を吸引、加圧、圧送して該内容物を外界へ排出するノズルヘッドとを備えるポンプ式注出器であって、
前記ベースキャップに、該ベースキャップと分離可能に一体に連結するとともに、前記ノズルヘッドと着脱可能に係合して該ノズルヘッドを保持するアダプターを設け、
前記アダプターに、前記ステムの外壁を間隔をおいて取り囲み、前記ノズルヘッドの押し込み可能状態における姿勢にて、その下端を前記ピストンの上部に当接させて内容物の侵入を阻止するとともに該ピストンの上方ストッパーとなる周壁を形成し、
前記ステムの外壁と前記周壁との相互間に、前記ステムを前記ノズルヘッドとともに上方へ向けて付勢する弾性部材を配置し、
ノズルヘッド4は、押圧力を直接付与する操作部4aと、操作部4aと一体連結するとともにステム3fと嵌合する筒体4bと、筒体4bと一体連結しステム3fから送給される内容物を外部に向けて吐出する吐出口4c_(1)を形成したノズル4cとを備え
たことを特徴とするポンプ式注出器の製造方法。」

3 本願発明と引用発明1の対比及び当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「容器体A」は、その機能及び構造から、本願発明の「容器」に相当し、同様に、「押し下げヘッド40」は「ノズルヘッド」に、「噴出ノズル45」は「ノズル」に、「噴出通路63」は「流路」に、「泡噴出容器の泡噴出ポンプB」は「容器用吐出具」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明1の「該整泡ノズル60は、縦断面が横長の長方形であって、基端部より先端部に行くに従って漸次断面積を減少させる噴出通路63を備え、」「縦筒41の上端部に基端を開口した噴出ノズル45を被覆筒44及び周壁43を貫通してその前方へ突出し、先端に噴出口46を開口して」いる「押し下げヘッド40」は、容器体Aの上部に配置されていることは明らかであって、「噴出ノズル45を被覆筒44及び周壁43を貫通してその前方へ突出し」ていることが、被覆筒44及び周壁43に、噴出ノズル45が側方に向かって一体に形成されていることであるから、本願発明の「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッド」に相当する。
ウ 引用発明1の「空気用シリンダ20と液用シリンダ21とを同心円状に連設したシリンダ部材B_(2)と、シリンダ部材B_(2)に対して上方付勢状態で上下動自在に装着させるとともに、空気用シリンダ20内に嵌合する空気用ピストン70及び液用シリンダ21内に嵌合する液用ピストン80をステム30と連結させ、且つ、ステム30上端に押し下げヘッド40を装着した上下動部材B_(3)とを備え、上下動部材B_(3)の上下動により、液用シリンダ21からの液と空気用シリンダ20からの空気を合流させ、合流地点下流の噴出口46至る流路内に設けた起泡層47で発泡させて噴出口46より泡として噴出する如く構成してな」る「該容器体Aに装着した泡噴出ポンプB」は、押し下げヘッド40の上下動により、液用シリンダ21が容器体A内の液を吸引、加圧、圧送して、噴出ノズル45を通じて排出する泡噴出ポンプBといえるから、本願発明の「該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプ」に相当する。
エ 引用発明1の「噴出口46に連続する縦断面が横長の長方形である整泡ノズル60を付設し」ている態様と、本願発明の「前記ノズルヘッドの射出成形後に前記ノズルの先端に対して後加工を施すことにより、流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成する」態様とは、「流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に設ける」ことの限りで一致する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッドと、該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプとを備える容器用吐出具の製造方法において、
流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に設ける容器用吐出具の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「前記ノズルヘッドの射出成形後に前記ノズルの先端に対して後加工を施すことにより、流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成する」のに対して、引用発明1は、噴出口46に連続する縦断面が横長の長方形である整泡ノズル60を付設するものである点。

(2) 当審の判断
<相違点1について>
以下、上記相違点1について検討する。
射出成形で作製した管状の部材に後加工を施すことは、周知(例えば、特表2002-535161号の【0018】?【0022】、【図1a】?【図4b】、特表2005-508235号公報の【0078】等参照。)である。
そして、引用発明1のノズルヘッドは、その形状から、樹脂の射出成形により形成されることが通常のことであって、射出成形は通常粗い形状となるから、後加工を施すことで所望の形状とすることも上記のとおり周知(上記周知の事項に加えて、原審で引用された特開平10-61201号公報のプラスチック製のノズル3の先端形状を円形から偏平に圧潰する点(【0014】)も参照。)である。したがって、引用発明1において、押し下げヘッド40を射出成形後に後加工を施すことで、整泡ノズル60を一体として形成する程度のことは、当業者が容易に想到し得ることである。

<本願発明の奏する効果について>
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明1及び周知の事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

4 本願発明と引用発明2の対比及び当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「容器本体2」は、その作用及び構造から本願発明の「容器」に相当し、同様に、「ノズル4」は「ノズルヘッド」に、「吐出ポンプ」は「ポンプ」に、「吐出口4a」は「吐出口」に、「ポンプ式泡吐出容器1用の吐出具」は「容器用吐出具」に相当する。
イ 引用発明2の「容器本体2の口部に冠着されたキャップ3から上方に、ノズル4を押し下げ可能に突出させたものであり、」「その上端部で略水平方向に突出するように吐出口4aが形成され」る「吐出ポンプの押し下げヘッドとして操作されるノズル4」は、容器本体2の上方にノズル4があり、「その上端部で略水平方向に突出するように吐出口4aが形成され」ることが、本体の側壁に、吐出口4aに向けて内部に流路を形成する部分が側方に向かって一体に形成されているといえるから、本願発明の「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッド」に相当する。
ウ 引用発明2の「押し下げヘッドとして操作される」「吐出ポンプ」は、押し下げヘッドを上下動することで、吸引、加圧、圧送し、容器本体2の内容液を吐出口4aから排出する吐出ポンプであるから、本願発明の「該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプ」に相当する。
エ 引用発明2の「吐出口4aが横長の長方形である」ことと、本願発明の「前記ノズルヘッドの射出成形後に前記ノズルの先端に対して後加工を施すことにより、流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成する」こととは、「流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成する」ことの限りで一致する。

したがって、本願発明と引用発明2とは、
「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッドと、該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプとを備える容器用吐出具の製造方法において、
流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成する容器用吐出具の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成することについて、本願発明は、「前記ノズルヘッドの射出成形後に前記ノズルの先端に対して後加工を施すことにより」形成するのに対して、引用発明は、どのようにして形成するか不明である点。

(2) 当審の判断
<相違点2について>
以下、上記相違点2について検討する。
射出成形で作製した管状の部材に後加工を施すことは、周知である。
そして、引用発明2のノズル4は、その形状から、樹脂の射出成形により形成されることが通常のことであって、射出成形は通常粗い形状となるから、後加工を施すことで所望の形状とすることも上記のとおり周知である。
したがって、引用発明2において、ノズル4を射出成形後に後加工を施すことで形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

<本願発明の奏する効果について>
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明2及び周知の事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

5 本願発明と引用発明5の対比及び当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明5とを対比する。
ア 引用発明5の「押圧力を直接付与する操作部4aと、操作部4aと一体連結するとともにステム3fと嵌合する筒体4bと、筒体4bと一体連結しステム3fから送給される内容物を外部に向けて吐出する吐出口4c1を形成したノズル4cとを備え」る「ノズルヘッド4」は、図1を参照すると、容器の上部に配置されることは明らかであって、筒体4bの側壁に、筒体4bと一体連結しステム3fから送給される内容物を吐出口4c1より外部に向けて吐出する流路を有するノズル4cが側方に向かって一体に形成されているといえるから、本願発明の「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッド」に相当する。
イ 引用発明5の「容器の口部にねじ止め固定されるベースキャップと、該ベースキャップにより該口部を通して吊り下げ固定され、該容器内部の内容物を汲み上げるポンプと、該ポンプのステムに連結し、該ステムの押し込みと復帰動作の繰り返しにより該ポンプのピストンを駆動させて容器内の内容物を吸引、加圧、圧送して該内容物を外界へ排出するノズルヘッドとを備えるポンプ式注出器」は、ステムの押し込みと復帰動作が、ノズルヘッドの押し込みと復帰動作により行われることは明らかであるから、本願発明の「該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプとを備える容器用吐出具」に相当する。
ウ 引用発明5の「ポンプ式注出器」は、本願発明の「容器用吐出具」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明5とは、
「容器の上部に配置される本体の側壁に、内部に流路を形成するノズルが側方に向かって一体に形成されたノズルヘッドと、該ノズルヘッドの押下げ及び復元により、前記容器の内容液を吸引、加圧、圧送し、前記ノズルを通じて排出させるポンプとを備える容器用吐出具の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
本願発明は、「前記ノズルヘッドの射出成形後に前記ノズルの先端に対して後加工を施すことにより、流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を前記ノズルの先端に形成する」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2) 当審の判断
<相違点3について>
以下、上記相違点3について検討する。
引用文献1?4には、ノズルにおいて、先端に流路に沿って見たときに横長の扁平形状をなす吐出口を形成することが記載されており、当該事項は、周知であるといえ、特に引用文献3(上記2(5)エ、オ参照。)には、吐出口から液だれを防止するために流路の底面を平らにすること、すなわち、吐出口を横長の偏平形状とする点が記載されている。
また、射出成形で作製した管状の部材に後加工を施すことは、周知である。
そして、引用発明5のノズル4cにおいて、その形状から、樹脂の射出成形により形成されることが通常のことであって、射出成形は通常粗い形状となるから、後加工を施すことで所望の形状とすることも上記のとおり周知(上記周知の事項に加えて、原審で引用された特開平10-61201号公報のプラスチック製のノズル3の先端形状を円形から偏平に圧潰する点(【0014】)も参照。)であって、その際に、液だれ防止等のために吐出口を周知である横長の扁平形状とする程度のことは、当業者が容易に想到し得てことである。

<本願発明の奏する効果について>
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明5及び周知の事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、2又は5及び周知の事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2019-07-11 
結審通知日 2019-07-16 
審決日 2019-07-29 
出願番号 特願2014-176457(P2014-176457)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 佑果田口 傑  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 佐々木 正章
横溝 聡範
発明の名称 容器用吐出具の製造方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 片岡 憲一郎  
代理人 杉村 光嗣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ