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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1355419 |
審判番号 | 不服2018-16506 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-11 |
確定日 | 2019-10-15 |
事件の表示 | 特願2013-217913「X線CT装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 77371、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月18日の出願であって、平成29年8月2日付けで拒絶理由が通知され、同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年3月7日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年5月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月4日付けで同年5月11日に提出された手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされたところ、同年12月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件手続補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 理由1.(新規事項) 平成29年10月4日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 理由2.(サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由3.(明確性) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由4.(進歩性) この出願の請求項1、4?8に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ●理由1(新規事項)について 請求項1において、「前記補正信号収集部は、前記信号束ね処理の有無及び前記合成単位に応じて前記非透過X線の読み出しタイミング及び読み出し回数を切り替えて、前記補正信号を生成する」との発明特定事項を追加する補正をする点は、補正前の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項ではない。 ●理由2(サポート要件)について ・請求項 1?8 本願の発明が解決しようとする課題は、従来、「X線CT装置では、・・・スライス方向に並ぶ複数のX線検出素子によって検出された信号を束ねる「信号束ね処理」が行われてい」たところ、「チャンネル方向及びスライス方向の両方向の信号束ね処理を可能にするX線CT装置を提供することである」と認められる。 一方、請求項1の、「前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくとも一方向に所定の単位で合成する信号束ね処理」は、「前記スライス方向に所定の単位で合成する信号束ね処理」のみであってもよいものであるといえる。 したがって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?8には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。 ●理由3(明確性)について ・請求項 4?8 (1) 請求項4には、「前記検出素子群」と記載されているところ、「検出素子群」は、請求項2にしか記載されていないため、請求項2を引用しない場合は、不明確である。 よって、請求項4?8に係る発明は明確でない。 ●理由4(進歩性)について ・請求項 1、4?8 ・引用文献等 1?4 引用文献等一覧 1.特開2000-51196号公報 2.特開2009-78143号公報 3.特開2012-200555号公報 4.特開平3-51041号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成30年12月11日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。 「 【請求項1】 被検体の体軸周りを回転し、X線を発生するX線管と、 前記被検体を透過したX線を検出する検出素子が、チャンネル方向及びスライス方向に複数配列されるX線検出器と、 前記検出素子によって検出されたX線の信号を収集する収集部と、 前記被検体を透過しない非透過X線を検出する非透過X線検出器と、 前記非透過X線検出器から前記非透過X線の信号を読み出して、前記X線の信号を補正するための補正信号を生成する補正信号収集部と、 前記収集部によって収集された前記X線の信号と、前記補正信号収集部によって生成された前記補正信号とを用いて画像を生成する画像生成部と を備え、 前記収集部は、 前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際に、前記所定数の検出素子のそれぞれについては互いに異なる読み出しタイミングで前記X線の信号を順次読み出し、 前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定の単位で合成する信号束ね処理の有無と、当該信号束ね処理における合成単位とをそれぞれ変更可能に構成され、 前記補正信号収集部は、前記信号束ね処理の有無及び前記合成単位に応じて加算する前記非透過X線のデータを切り替えて、前記補正信号を生成する、 X線CT装置。」 なお、本願発明2ないし8の概要は以下のとおりである。 本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献の記載事項、引用発明 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。 (引1-ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばX線等の放射線を利用して画像撮影を行うX線CT装置等の放射線撮像装置に関し、特に、放射線を円錐(コーン)状に曝射し三次元的投影データを得るコーンビームCT等の放射線撮像装置に関する。」 (引1-イ)「【0009】 【発明の実施の形態】[第1の実施の形態] (放射線撮像装置の全体構成)以下、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮像装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る放射線撮像装置1の全体構成を模式的に示す斜視図である。 【0010】同図において、放射線撮像装置1は、図中xy平面内において被検体2を中心に回転しながら被検体2にX線ビームを曝射する線源3と、被検体2を挟んで線源3と対向配置されて線源3と共に回転し、線源3からのX線ビームを検出する検出器4とを有するものである。 【0011】なお、本実施形態では、被検体2は、図中z方向に進退可能に設けられた寝台5上に載荷され、また、線源3及び検出器4はガントリー(図示せず)内に収納されている。さらに、本実施形態では、検出器4で得られたデータはデータ収集部6に収集された後、画像再構成装置7により画像再構成処理される。 【0012】(検出器の構成)そして、本実施形態に係る検出器4は、図2に示すように、検出素子S11、S12、S13…が回転方向(ch方向)及び回転軸方向(row方向)の2方向に格子状に配置されて構成されている。 【0013】ここで、検出素子S11、S12、S13…は、線源3からのX線ビームを電荷として蓄積し、データ収集部6等のデータ処理手段に検出器出力を出力するものであり、例えば、アモルファスセレンからなるX線-電荷変換を行う層を有し、その下にTFTマトリックスアレイを有するものである。 【0014】また、これらの検出素子S11、S12、S13…は、読み出しライン9によりch方向に、電気的に接続されている。この読み出しライン9は、各検出素子から出力される電荷を信号として読み出す信号読み出し回路10に接続されている。 【0015】また、検出素子S11、S12、S13…からの出力のON、OFFは、読み出しコントロールライン8を介して読み出しコントロールラインドライバ11によって制御される。この読み出しコントロールラインドライバ11は、読み出しコントロールライン8によってrow方向に配列される複数の検出素子(例えば、S11、S21、S31…)に接続されており、これらの検出素子S11、S21、S31…を一括して制御するものである。 【0016】信号読み出し回路10は、読み出しライン8(当審注:前後の記載及び図2の記載から、「読み出しライン8」は「読み出しライン9」の誤記と認める。)を介して出力された電荷を、例えば電圧信号に変換し、ADC等の通常の過程を経てデータ収集を行うものである。図3(a)?(c)にかかる信号読み出し回路10の具体的構成を示す。 【0017】(信号読み出し回路の具体的構成)かかる具体的構成の1例として同図(a)に示すものがある。すなわち、各読み出しライン9にチャージアンプ12を設ける。このチャージアンプ12は、読み出しライン9を介して出力される電荷を帰還コンデンサに蓄積し、その電荷に比例した信号電圧を出力するものである。このチャージアンプ12から出力される信号電圧はマルチプレクサやADCでデジタル化しデータ収集される。この信号電圧を出力した後には、リセットSWにより帰還コンデンサの電荷をクリアし、次の電荷信号を受け取る。 【0018】さらに、必要に応じ同図(b)に示す構成を採用する。すなわち、各チャージアンプ12a、12bに、それぞれ経路切り替えスイッチ16a、16bを設けるとともに、チャージアンプ12a、12bからの出力を加算する加算回路15を接続する。 【0019】この加算回路15は、隣接する読み出しライン9a、9bからの出力を束ねるものであり、加算した信号電圧をマルチプレクサ17に出力するものである。また、経路切り替えスイッチ16a、16bは、チャージアンプ12を加算回路15又はマルチプレクサ17に選択的に接続するものであり、信号電圧を加算せずにマルチプレクサ17に出力するときはチャージアンプ12とマルチプレクサ17とを直接接続し、加算する場合には加算回路15に接続する。 【0020】なお、図に示した例では、検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を束ねている。すなわち、読み出しコントロールラインドライバ11a、11bをONにするとともに11cをOFFにし、経路切り替えスイッチ16a、16bを加算回路15側に接続することにより、検出素子S11,S12,S21,S22のみからの出力を束ねることができる。 【0021】また、さらに束ねの自在性をもたせるために図3(c)に示す構成を採用することができる。すなわち、読み出しライン9a、9b、9c…とチャージアンプ12との間にスイッチ18a、18b、18c…を設ける。これらのスイッチ18a、18b、18c…のうち、ONとしたものに接続された読み出しライン9からの出力は、その合算値がチャージアンプ12に読み込まれることとなる。これにより、row方向の束ねを自在に行うことができる。 【0022】なお、図に示した例では、検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を束ねている。すなわち、読み出しコントロールラインドライバ11a、11bをONにするとともに11cをOFFにし、スイッチ18a、18bをONにするとともに18cをOFFにすることにより、検出素子S11,S12,S21,S22のみからの出力を束ねることができる。 【0023】(放射線撮像装置の動作及び作用)そして、このような構造の検出器4では、任意の検出素子を複数選択することによって単位検出面を形成し、投影データは単位検出面毎に画像構成処理に供される。すなわち、上述した、読み出しコントロールラインドライバ11や信号読み出し回路10を適宜切り替えることにより、任意の検出素子からの出力を束ねて概念上の単位検出面とし、この単位検出面からの出力を一つの検出器出力として処理する。この単位検出面の形成にあたり、選択する検出素子の組み合わせを変更することによって、単位検出面を検出器上で移動させることができる。」 (引1-ウ)【図1】 「 」 (引1-エ)【図2】 「 」 (引1-オ)【図3】 「 」 (2)上記(引1-ア)ないし(引1-オ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 X線CT装置である放射線撮像装置1であって、 被検体2は、z方向に進退可能に設けられた寝台5上に載荷され、 xy平面内において被検体2を中心に回転しながら被検体2にX線ビームを曝射する線源3と、被検体2を挟んで線源3と対向配置されて線源3と共に回転し、線源3からのX線ビームを検出する検出器4とを有し、線源3及び検出器4はガントリー内に収納されており、 検出器4で得られたデータはデータ収集部6に収集された後、画像再構成装置7により画像再構成処理され、 検出器4は、検出素子S11、S12、S13…が回転方向(ch方向)及び回転軸方向(row方向)の2方向に格子状に配置されて構成されており、検出素子S11、S12、S13…は、線源3からのX線ビームを電荷として蓄積し、データ収集部6であるデータ処理手段に検出器出力を出力するものであり、 これらの検出素子S11、S12、S13…は、読み出しライン9によりch方向に電気的に接続されており、この読み出しライン9は、各検出素子から出力される電荷を信号として読み出す信号読み出し回路10に接続されており、 読み出しコントロールラインドライバ11が、読み出しコントロールライン8によってrow方向に配列される複数の検出素子(例えば、S11、S21、S31…)に接続されており、検出素子S11、S12、S13…からの出力のON、OFFは、読み出しコントロールライン8を介して読み出しコントロールラインドライバ11によって一括して制御され、 信号読み出し回路10は、読み出しライン9を介して出力された電荷を、電圧信号に変換し、ADC等の通常の過程を経てデータ収集を行うものであり、読み出しライン9a、9b、9c…とチャージアンプ12との間にスイッチ18a、18b、18c…を設けてあり、これらのスイッチ18a、18b、18c…のうち、ONとしたものに接続された読み出しライン9からの出力は、その合算値がチャージアンプ12に読み込まれ、これにより、row方向の束ねを自在に行うことができ、 検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を束ねる場合には、読み出しコントロールラインドライバ11a、11bをONにするとともに11cをOFFにし、スイッチ18a、18bをONにするとともに18cをOFFにすることにより、検出素子S11,S12,S21,S22のみからの出力を束ね、 読み出しコントロールラインドライバ11や信号読み出し回路10を適宜切り替えることにより、任意の検出素子からの出力を束ねて概念上の単位検出面とし、この単位検出面からの出力を一つの検出器出力として処理する、 X線CT装置である放射線撮像装置1。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明とを対比する。 ア (ア)引用発明は、「被検体2は、z方向に進退可能に設けられた寝台5上に載荷され」、「xy平面内において被検体2を中心に回転しながら被検体2にX線ビームを曝射する線源3と、被検体2を挟んで線源3と対向配置されて線源3と共に回転し、線源3からのX線ビームを検出する検出器4とを有し、線源3及び検出器4はガントリー内に収納されて」いるものであるところ、「被検体2」の体軸が「z方向」と一致することは明らかである。 (イ)X線CT装置のX線源として、X線管は慣用されている (ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「xy平面内において被検体2を中心に回転しながら被検体2にX線ビームを曝射する線源3」は、本願発明1の「被検体の体軸周りを回転し、X線を発生するX線管」に相当する。 イ 引用発明の「検出素子S11、S12、S13…が回転方向(ch方向)及び回転軸方向(row方向)の2方向に格子状に配置されて構成されており、検出素子S11、S12、S13…は、線源3からのX線ビームを電荷として蓄積」する「検出器4」は、本願発明1の「前記被検体を透過したX線を検出する検出素子が、チャンネル方向及びスライス方向に複数配列されるX線検出器」に相当する。 ウ 引用発明の「検出器4で得られたデータ」を「収集」する「データ収集部6」は、本願発明1の「前記検出素子によって検出されたX線の信号を収集する収集部」に相当する。 エ 引用発明の「検出器4で得られたデータ」を「データ収集部6に収集された後」、「画像再構成処理」する「画像再構成装置7」と、本願発明1の「前記収集部によって収集された前記X線の信号と、前記補正信号収集部によって生成された前記補正信号とを用いて画像を生成する画像生成部」とは、「前記収集部によって収集された前記X線の信号を用いて画像を生成する画像生成部」で共通する。 オ 引用発明の「検出素子S11、S12、S13…からの出力のON、OFFは、読み出しコントロールライン8を介して読み出しコントロールラインドライバ11によって一括して制御され」、「読み出しライン9a、9b、9c…とチャージアンプ12との間に」「設けてあ」る「スイッチ18a、18b、18c…のうち、ONとしたものに接続された読み出しライン9からの出力は、その合算値がチャージアンプ12に読み込まれ」、「検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を束ねる場合には、読み出しコントロールラインドライバ11a、11bをONにするとともに11cをOFFにし、スイッチ18a、18bをONにするとともに18cをOFFにすることにより、検出素子S11,S12,S21,S22のみからの出力を束ね」ることと、本願発明1の「前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際に、前記所定数の検出素子のそれぞれについては互いに異なる読み出しタイミングで前記X線の信号を順次読み出」すこととは、「前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際に、前記所定数の検出素子のそれぞれについては特定の読み出しタイミングで前記X線の信号を読み出」すことで共通する。 カ 引用発明の「読み出しコントロールラインドライバ11や信号読み出し回路10を適宜切り替えることにより、任意の検出素子からの出力を束ねて概念上の単位検出面とし、この単位検出面からの出力を一つの検出器出力として処理する」ものであることは、本願発明1の「前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定の単位で合成する信号束ね処理の有無と、当該信号束ね処理における合成単位とをそれぞれ変更可能に構成され」ていることに相当する。 キ 引用発明の「X線CT装置である放射線撮像装置1」は、本願発明1の「X線CT装置」に相当する。 (2)よって、本願発明1と引用発明とは、 「 被検体の体軸周りを回転し、X線を発生するX線管と、 前記被検体を透過したX線を検出する検出素子が、チャンネル方向及びスライス方向に複数配列されるX線検出器と、 前記検出素子によって検出されたX線の信号を収集する収集部と、 前記収集部によって収集された前記X線の信号を用いて画像を生成する画像生成部と を備え、 前記収集部は、 前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際に、前記所定数の検出素子のそれぞれについては特定の読み出しタイミングで前記X線の信号を読み出し、 前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定の単位で合成する信号束ね処理の有無と、当該信号束ね処理における合成単位とをそれぞれ変更可能に構成された、 X線CT装置。」 の発明である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点1) 前記収集部が前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際の、前記所定数の検出素子のそれぞれについての特定の読み出しタイミングについて、本願発明1は、「互いに異なる読み出しタイミングで前記X線の信号を順次読み出」すのに対し、引用発明は、「検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を束ねる場合には、読み出しコントロールラインドライバ11a、11bをONにするとともに11cをOFFにし、スイッチ18a、18bをONにするとともに18cをOFFにすることにより、検出素子S11,S12,S21,S22のみからの出力を束ね」ることから、「出力を束ね」る「検出素子からの出力」は、同じタイミングで同時に出力されるものである点。 (相違点2) 本願発明1は、「前記被検体を透過しない非透過X線を検出する非透過X線検出器と、前記非透過X線検出器から前記非透過X線の信号を読み出して、前記X線の信号を補正するための補正信号を生成する補正信号収集部と」を備え、「前記補正信号収集部は、前記信号束ね処理の有無及び前記合成単位に応じて加算する前記非透過X線のデータを切り替えて、前記補正信号を生成」し、「画像生成部」が「前記収集部によって収集された前記X線の信号」に加えて「前記補正信号収集部によって生成された前記補正信号」「を用いて画像を生成する」のに対し、引用発明は、「非透過X線検出器」及び「補正信号収集部」を備えることは特定されていない点。 (3)相違点についての判断 ア 上記相違点1について検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2及び3は、X線CTに関する文献であり、複数の検出素子の出力を束ねることを開示しているが、出力を束ねるそれぞれの検出素子からの出力タイミングを異ならせること、すなわち、異なるタイミングで順次読み出すことについては、記載も示唆もない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4は、X線CTに関する文献であるが、複数の検出素子の出力を束ねることを開示するものではない。 そして、X線CTにおいて、複数の検出素子の出力を束ねる際に、出力を束ねるそれぞれの検出素子から、異なるタイミングで信号を順次読み出すことが、本願出願前において周知であったとも認められない。 そうすると、引用発明において、検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を束ねる場合に、読み出しコントロールラインドライバ11a、11b、及び、スイッチ18a、18bをON・OFFするタイミングを制御することにより、検出素子S11,S12,S21,S22からの出力を異なるタイミング順次行うように変更する動機付けがあるとはいえない。 よって、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明及び引用文献2ないし4の記載事項から、当業者が容易に想起し得た事項であるとは認められない。 イ したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし19は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の「前記収集部は、前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際に、前記所定数の検出素子のそれぞれについては互いに異なる読み出しタイミングで前記X線の信号を順次読み出し」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 原査定について 1 理由1(特許法第17条の2第3項)について 本件手続補正により、請求項1の「前記補正信号収集部は、前記信号束ね処理の有無及び前記合成単位に応じて前記非透過X線の読み出しタイミング及び読み出し回数を切り替えて、前記補正信号を生成する」という記載は、「前記補正信号収集部は、前記信号束ね処理の有無及び前記合成単位に応じて加算する前記非透過X線のデータを切り替えて、前記補正信号を生成する」と補正されており、原査定の理由1を維持することはできない。 2 理由2(特許法第36条第6項第1号)について 本件手続補正により、請求項1の「前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくとも一方向に所定の単位で合成する信号束ね処理」という記載は、「前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定の単位で合成する信号束ね処理」と補正されており、原査定の理由2を維持することはできない。 3 理由3(特許法第36条第6項第2号)について 本件手続補正により、補正後の請求項1は、補正前の請求項2に記載されていた「所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群」という特定事項を有するものに補正されており、原査定の理由3を維持することはできない。 4 理由4(特許法第29条第2項)について 本件手続補正により、本願発明1ないし8は、「前記収集部は、前記チャンネル方向及び前記スライス方向のうち少なくともチャンネル方向に所定数の前記検出素子が並んだ検出素子群から前記X線の信号を読み出す際に、前記所定数の検出素子のそれぞれについては互いに異なる読み出しタイミングで前記X線の信号を順次読み出し」という特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定の理由4を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-09-30 |
出願番号 | 特願2013-217913(P2013-217913) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(A61B)
P 1 8・ 55- WY (A61B) P 1 8・ 121- WY (A61B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山口 裕之 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
三木 隆 渡戸 正義 |
発明の名称 | X線CT装置 |
代理人 | 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所 |