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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1355447
審判番号 不服2018-11401  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-23 
確定日 2019-09-17 
事件の表示 特願2015-533654「鉱物素材加工プラントの制御方法および鉱物素材加工プラント」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日国際公開、WO2014/053702、平成27年12月17日国内公表、特表2015-535737〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年10月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年10月2日(FI)フィンランド)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月7日付けの拒絶理由通知に対し、平成30年1月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成30年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年8月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
待機モードを解除する必要性を自動的に認識し、
待機モードを解除する必要性が認識されると、上記鉱物素材加工プラント(100)の一のモータ(104)または複数のモータの運転速度を待機速度(Rsb)から加工速度(Rf)に増速し、
鉱物素材を上記加工プラント(100)へ送給可能とする、
ことを特徴とする鉱物素材加工プラント(100)の制御方法であって、
ここで前記待機モードでは、鉱物素材が前記鉱物素材加工プラントへ送給されないようにされており、
さらに前記制御方法は、加工のために到着する鉱物素材を認識することにより、上記待機モードを解除する必要性を認識することを含み、前記、加工のために到着する鉱物素材を認識することは、
・ 前記鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識すること、
・ 鉱物素材中に配置されたタグを認識すること、
の少なくともいずれかを含む、方法。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2000-136739号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、岩石・建設廃材等を破砕する破砕機のエンジン制御装置に関し、特に、破砕装置等の各機器が動作停止する待機状態でのエンジン回転数を低下させることにより、エネルギロスの低減、騒音の低減、及び排気ガス量の低減を図れる破砕機のエンジン制御装置に関する。」

「【0047】・・・図2は、本実施の形態によるエンジン制御装置の適用対象である自走式破砕機の全体構造を表す側面図であり、・・・
【0048】図2?図5において、自走式破砕機1は、概略的に言うと、油圧ショベルのバケット等の作業具により被破砕物である岩石・建設廃材等(以下、ガラと称する、図示せず)が投入されるホッパ3、側断面形状が略V字形をなし投入さたガラを所定の大きさに破砕する破砕装置としてのジョークラッシャ4、及びホッパ3から投入されたガラをジョークラッシャ4へと導くフィーダ5を搭載した破砕機本体8と・・・を備えた走行体11とを有する。」

「【0052】図1に示す油圧駆動装置は、上記の自走式破砕機1に設けられるものであり、いわゆる公知の電子ガバナタイプのエンジン15と、このエンジン15によって駆動される可変容量型の第1油圧ポンプ16及び第2油圧ポンプ18と、同様にエンジン15によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ19と、第1及び第2油圧ポンプ16,18から吐出される圧油がそれぞれ供給される6つの油圧モータ」

「【0053】6つの油圧モータ19?23は、フィーダ5動作用の駆動力を発生する上記フィーダ用油圧モータ19、ジョークラッシャ4動作用の駆動力を発生する上記破砕用油圧モータ20、コンベア6動作用の駆動力を発生する上記コンベア用油圧モータ21、磁選機7動作用の駆動力を発生する上記磁選機用油圧モータ22、及び左・右履帯9L,9Rへの駆動力を発生する上記左・右走行油圧モータ23L,23Rとから形成されている。」

「【0071】以上のような油圧駆動装置に、本実施の形態によるエンジン制御装置が設けられている。エンジン制御装置は、エンジン15の回転数をオペレータが手動で設定入力する回転数設定手段、例えば前述の図25と同様のスロットル装置101と、・・・コントローラ45に設けられた上記エンジン制御部45d(図7参照)と、オートアイドル機能(ジョークラッシャ4、フィーダ5、コンベア6、磁選機7、及び走行体11のすべてが停止状態となるか、走行体11が停止状態でかつジョークラッシャ4及びフィーダ5が空運転状態となったときにエンジン回転数を低下させる機能)を実行するかどうかをオペレータが手動で選択する選択スイッチ114とから形成される。」(0071)

「【0087】破砕作業時には、オペレータは、スロットル装置101のダイヤル(図示せず)を操作し、エンジン15の回転数を適宜設定する。例えば、破砕作業中に破砕用油圧モータ20に加わる最大負荷に応じた圧油を第1油圧ポンプ16が吐出できるような比較的高めの回転数とする。そして、オートアイドル機能を実行させる場合、オペレータは選択スイッチ114をオートアイドル機能を行うON位置とする。・・・この一連の作業は、通常、継続的なものではなく、ホッパ3からある量のガラを投入して破砕し搬出した後、次のガラを投入するまでの間は作業が中断し待機状態となる場合がある。この間は、各機器にガラがほとんど存在しない無負荷状態となるが、・・・各機器4,5,6,7はそれまでの破砕時と同じ駆動を維持しつつ空運転状態で待機する。すると、フィーダ5及びジョークラッシャ4が無負荷の空運転であることが圧力センサ201,202,203を介して検出され・・・コントローラ45のエンジン制御部45dでは、・・・燃料噴射量が略矩形波状の応答特性で直ちに第1所定値に制限され、エンジン15の回転数は低速のオートアイドル回転数に制限される。このときの燃料噴射量のタイムチャートを図9に示す。
その後、作業が再開され再びガラがホッパ3に投入されると、フィーダ5及びジョークラッシャ4が実運転状態に復帰するため、エンジン制御部145dのステップ122の判定が満たされ、ステップ140で、燃料噴射量は略矩形波状の応答特性で直ちに復帰し(図9参照)、これによってエンジン15の回転数もスロットル装置101における設定回転数に復帰する。」


「【0116】(C)油圧ショベルのバケット等の位置を検出し、これに応じて復帰動作を行わせる場合
すなわち、図20に示すように、上記(A)(B)と同様の構造で支持した超音波センサ(電磁波センサでもよい)115Bによって、ホッパ3へガラ2を投入する作業具(図の例では油圧ショベルのバケット121やアーム122等)の位置がその下方に来たことを検知することで、当該作業具の動作状況を検出するものである。この場合、上記(A)(B)と異なり、超音波センサ115Bは第1又は第2運転状態検出手段を構成するものではないが、前述の第1検出手段及び第2検出手段の一部を構成する。この超音波センサ115Bの検出信号はコントローラ45のエンジン制御部45dに入力され、オートアイドルから復帰させるかどうかの判定に用いられる。このときのエンジン制御部45dによる制御フローを図21に示す。」(0116
)

「【0119】このような流れとすることにより、・・・逆に、オートアイドルから通常状態へ復帰するときは、「フィーダ5が実運転状態」か、「バケット等がホッパ上にある」か、「ジョークラッシャ4が実運転状態」のいずれか1つの条件が満たされれば復帰することとなる。」

2 引用文献1記載の技術的事項
上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(1)引用文献1に記載された技術は、岩石・建設廃材等を破砕する破砕機のエンジン制御方法に関するものであり、破砕装置等の各機器が動作停止する待機状態でのエンジン回転数を低下させることにより、エネルギロスの低減、騒音の低減、及び排気ガス量の低減を図ることを目的とするものであること(【0001】)。

(2)本エンジン制御装置が適用される自走式破砕機は、油圧ショベルのバケット等の作業具により被破砕物である岩石・建設廃材等(以下、「ガラ」という。)が投入されるホッパ、ガラを破砕する破砕装置としてのジョークラッシャ、ホッパから投入されたガラをジョークラッシャへ導くフィーダ5を搭載した破砕機本体を有していること(【0047】【0048】)。

(3)自走式破砕機に設けられたエンジンは、油圧ポンプ、油圧モータを介して、ホッパ、ジョークラッシャ、フィーダ等の各機器の駆動を制御するものであること(【0052】【0053】)。

(4)破砕作業時には、エンジンの回転数が最大負荷に応じて高めに設定されること(【0087】)。

(5)ホッパ、ジョークラッシャ、フィーダ等の各機器が停止状態であるか、各機器にガラがほとんど存在しない無負荷状態であり、走行体が停止状態でかつジョークラッシャ及びフィーダ等の各機器が空運転状態である状態(以下、「待機状態」という。上記aでいう「待機状態」と同義。)を検知した際に、エンジン回転数を上記(4)でいう「高め」の回転数から低下させるオートアイドル機能を有していること(【0071】【0087】)。

(6)待機状態においては、各機器が停止状態であるか、各機器にガラがほとんど存在しない無負荷状態での空運転状態にあるから、待機状態においては、ガラは破砕機に実質的に送給されない状態にあると認められること(【0071】【0087】)。

(7)待機状態から破砕作業が再開されてガラが投入されると、エンジン制御装置はエンジンの回転数を上記(4)で設定した高めの回転数に復帰させる制御を行うこと(【0088】)。

(8)上記(7)の制御を行うため、破砕機に超音波センサを設け、ホッパへガラを投入する油圧ショベルのバケットやアーム等の作業具の位置が当該センサの下方に来たことを検知すると、エンジン制御装置は、エンジンを低速の回転数から上記(4)で設定した高めの回転数に復帰させること(【0116】【0119】)。

3 引用発明
引用文献1のこれらの記載を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ホッパに投入された岩石・建設廃材等のガラを破砕する破砕機本体に設けられたホッパ、ジョークラッシャ、フィーダなどの各機器を駆動させるための油圧ポンプ、油圧モータを駆動するエンジンを有する自走式破砕機において、
上記エンジンは、破砕作業時にはエンジンの回転数を最大負荷に応じて高めにするよう設定され、ジョークラッシャ、フィーダなどの機器がすべて停止状態であるか、各機器にガラがほとんど存在しない状態であって、ガラが破砕機に実質的に送給されない待機状態であることが検知された場合には、エンジンの回転数を上記高めの回転数から低速の回転数に制御し、
破砕機に設けられた超音波センサは、待機状態において、ホッパへガラを投入する油圧ショベルのバケットやアーム等の作業具の位置が当該センサの下方に来たことを検知すると、破砕作業を再開するために、エンジンの回転数を低速の回転数から上記高めの回転数に復帰させる、エンジン制御方法。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「自走式破砕機」、「油圧モータ」、「ホッパへガラを投入する油圧ショベルのバケットやアーム等の作業具」は、本願発明の「鉱物素材加工プラント」、「モータ」、「鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明のエンジンにおける「低速の回転数」及び「高めの回転数」は、当該エンジンにより各油圧モータが駆動され、回転数が変化することから、本願発明の「待機速度(Rsb)」及び「加工速度(Rf)」にそれぞれ相当する。

(3)引用発明の「ガラが破砕機に実質的に送給されない待機状態」は、本願発明の「待機モードでは、鉱物素材が前記鉱物素材加工プラントへ送給されない」ことに相当する。

(4)引用発明の、超音波センサが「ホッパへガラを投入する油圧ショベルのバケットやアーム等の作業具の位置が当該センサの下方に来たことを検知する」とは、「作業具がセンサの下方に来た」ことが、作業具がセンサの検出可能な範囲まで距離的に接近したことを意味するから、本願発明でいう「鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識」することに相当する。

(5)さらに、引用発明の「待機状態において、ホッパへガラを投入する油圧ショベルのバケットやアーム等の作業具の位置が当該センサその下方に来たことを検知すると、破砕作業を再開するために、エンジンの回転数を低速の回転数から上記高めの回転数に復帰させる」は、本願発明の「待機モードを解除する必要性を自動的に認識し、待機モードを解除する必要性が認識されると、上記鉱物素材加工プラントの一のモータまたは複数のモータの運転速度を待機速度(Rsb)から加工速度(Rf)に増速し、鉱物素材を上記加工プラントへ送給可能とする」ことに相当する。

2 一致点及び相違点について
以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「待機モードを解除する必要性を自動的に認識し、
待機モードを解除する必要性が認識されると、上記鉱物素材加工プラントの一のモータまたは複数のモータの運転速度を待機速度(Rsb)から加工速度(Rf)に増速し、
鉱物素材を上記加工プラントへ送給可能とする、
ことを特徴とする鉱物素材加工プラントの制御方法であって、
ここで前記待機モードでは、鉱物素材が前記鉱物素材加工プラントへ送給されないようにされており、
さらに前記制御方法は、加工のために到着する鉱物素材を認識することにより、上記待機モードを解除する必要性を認識することを含み、前記、加工のために到着する鉱物素材を認識することは、
・ 前記鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識すること、
を含む、方法。」という点で一致し、相違点はない。

3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献1には、本願発明の「前記鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識すること」や、「鉱物素材中に配置されたタグを認識すること」という事項は、何ら記載されていない旨主張しているので、以下、検討する。

まず、「前記鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識すること」という事項が記載されていないとする点については、上記第5の1(4)で検討したとおり、実質的に引用文献1に記載された事項といえる。

つぎに、「鉱物素材中に配置されたタグを認識すること」という事項が記載されていないとする点について検討するに、たしかに、請求人が主張するとおり、引用文献1にはかかる事項は記載されていないが、本願発明は、
「さらに前記制御方法は、加工のために到着する鉱物素材を認識することにより、上記待機モードを解除する必要性を認識することを含み、前記、加工のために到着する鉱物素材を認識することは、
・ 前記鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識すること、
・ 鉱物素材中に配置されたタグを認識すること、
の少なくともいずれかを含む、方法。」というものであって、「鉱物素材中に配置されたタグを認識すること」は、本願発明を構成する発明特定事項である「加工のために到着する鉱物素材を認識すること」の選択肢の一方にすぎないから、引用文献1にかかる事項が記載されていないことのみをもって、本願発明と引用発明とが相違する、ということはできない。
そして、上記のとおり、他方の選択肢である「前記鉱物素材加工プラントのフィーダ装置に対する前記鉱物素材の搬送に用いられる、外部の機械またはその機械の一部の近接度を認識すること」は、引用文献1に記載されている。
よって、請求人の主張を勘案しても、上記の一致点と相違点の認定は覆らない。

第6 判断
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第1第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は原査定の理由により拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-22 
結審通知日 2019-04-23 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2015-533654(P2015-533654)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 典子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 櫛引 明佳
豊永 茂弘
発明の名称 鉱物素材加工プラントの制御方法および鉱物素材加工プラント  
代理人 川守田 光紀  

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