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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1355486
審判番号 不服2019-3122  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-06 
確定日 2019-10-08 
事件の表示 特願2013-244241「計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 4日出願公開、特開2015-100572、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月26日の出願であって、平成29年7月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月6日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月12日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、平成31年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年12月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1?7に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2?4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平5-329119号公報(先の拒絶理由通知における引用文献1)
2.孟 岩,福西 祐,日野 幹雄,多チャンネル低温度型熱線流速計の試作,東京工業大学土木工学科研究報告,日本,東京工業大学工学部土木工学科,1991年12月31日,No.44,p.23-39,URL,http://windeng.t.u-tokyo.ac.jp/ishihara/article/1991-1.pdf#search=%27%E6%9D%B1%E5%B7%A5%E5%A4%A7+%E5%9C%9F%E6%9C%A8%E5%B7%A5%E5%AD%A6%E7%A7%91%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A0%B1%E5%91%8A+1991+No.44+%E7%86%B1%E6%88%A6%E6%B5%81%E9%80%9F%E7%B3%BB%27
3.米国特許第5919147号明細書
4.特開平11-244248号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成30年9月14日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。
「 【請求項1】
第1端及び第2端を有しており、当該第1端側が人体の血管に挿入可能な長尺部材と、
上記長尺部材の第1端側に設けられた金属線と、
上記長尺部材の上記第2端から延びる接続線によって上記金属線と電気的に接続された演算装置と、を具備しており、
上記金属線は、電力を供給されることによって発熱する抵抗であって、上記血管内の血液と接触可能に露出されており、
上記演算装置は、
上記金属線を1つの抵抗とするホイートストーンブリッジにおける他の3つの抵抗と、
ホイートストーンブリッジの4つの抵抗の接続点において、第1の接続点と、当該第1の接続点に対向する第2の接続点とが入力端に接続され、出力端が、接地された第4の接続点と対向する第3の接続点と接続された補償増幅器と、
上記補償増幅器の出力電圧を測定する電圧計と、
を有しており、上記電圧計が測定した電圧を用いて、上記血管を流れる血液の流速を算出する計測装置。」

なお、本願発明2?7は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献の記載事項、引用発明

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。
「【0013】
【実施例】以下、本発明の医療用カテーテル式流量計の第1実施例について、図1から図4を参照しながら説明する。本実施例の流量計は、基本的には、図1(a)に示すように、カテーテルの先端部に設けられた測温部1に、加熱手段2により既知量の熱エネルギーを電気エネルギーから変換して与え、温度計測手段3により前記測温部1の温度変化を電気的に計測して、血流量を求めるものである。そして、図1(b)に示すように、前記温度計測手段3は、熱電対4からなっており、前記加熱手段2は、前記熱電対4および体外電極5と、これら熱電対4および体外電極5に高周波電圧を印加する高周波発生器6とからなる。また、前記温度計測手段3は、高周波発生器6による高周波電圧と熱電対4の熱起電力とを分離する信号分離器7を備えているとともに、前記熱起電力に基づいて測温部1の温度を求める温度計本体8を備えている。さらに、こうして求められた温度変化から流量を演算する演算器9がある。なお、図1(b)において、鎖線で囲んだ部分がカテーテル10に設けられるものである。
【0014】つぎに、このカテーテル10として用いられるPTCA(経皮経管冠動脈形成術)用ガイドワイヤー11の構成を図2から図4に基づいて説明する。このPTCA用ガイドワイヤー11は、前記信号分離器7となる長細い密コイル12の中に芯線13を収めたものであり、可屈性を有し、曲がりくねった細い血管中に挿入できるようになっている。ばね性を有する密コイル12を用いているのは、適当な柔軟性を与えるためであり、コイル12の中に芯線13を通しているのは、操作性を高めるためである。前記密コイル12は、SUS304ステンレススチールコイルであり、長さ1600mm、線径50μm、外巻径500μm、内巻径400μmで、平滑性を高めることと絶縁とを目的としてテフロンコーティングを施してある。前記芯線13は、通常のPTCA用ガイドワイヤー11ではステンレススチールワイヤーを用いているが、本実施例では、十分な硬さと大きな熱起電力を得るために、ベリリウム青銅製のものを用いている。その径は、200μmである。また、ガイドワイヤー11の先端部には、チップ14が設けられている。このチップ14は、ステンレススチール製であるが、外面に金メッキ15を施してある。そして、チップ14は、筒状になっているとともに、頭部16と基部17とが軸方向に並んでいる。頭部16は、外径500μm、長さ1mmであり、基部17は、外径400μm、長さ1mmである。また、チップ14の内径は、200μmである。そして、前記基部17の外周側に前記コイル12の一端部が嵌め込まれて、熔着接合され、このチップ14とコイル12とが電気的に接続されている。これとともに、前記チップ14内に前記芯線13が差し込まれて、熔着接合され、電気的に接続されている。前記チップ14は、前記測温体1となるとともに、前記熱電対4をなすステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点となるものである。一方、ガイドワイヤー11の手元側には、絶縁チューブ21,22を介して一対の端子23,24が設けられている。一方の絶縁チューブ21は、テフロンからなり、長さ30mm、外径300μm、内径200μmで、前記芯線13の他端部外周側に被せてある。また、一方の端子23は、ステンレススチール製で、内径が300μmの筒状になっており、径小部25と径大部26とが軸方向に並んでいる。径小部25は、外径400μm、長さ6mmで、径大部26は、外径500μm、長さ4mmである。そして、径小部25の外周側に前記コイル12の他端部が嵌め込まれて、熔着接合され、このコイル12と端子23とが電気的に接続されている。これとともに、この端子23は、前記絶縁チューブ21の外周一端側に被せてある。他方の絶縁チューブ22は、テフロンからなり、長さ20mm、外径500μm、内径300μmで、前記一方の絶縁チューブ21の外周一端側に被せてあって、前記一方の端子23の径大部26側端面に同軸的に突き当たっている。他方の端子24は、ベリリウム青銅製のチューブであり、長さ4mm、外径500μm、内径200μmである。そして、この他方の端子24は、前記芯線13の外周側に被せられて、熔着接合され、この芯線13に電気的に接続されている。さらに、前記両端子23,24は、コネクター27,28を介して外部の電気回路に接続されるようになっている。なお、前記ベリリウム青銅は、それ以上の硬さが出せるならば、コンスタンタンを使った方がよい。そして、前記両端子23,24は、図1に示すような温度計本体8に電気的に接続され、端子24は、体外電極5とともに高周波発生器6に電気的に接続されるものである。
【0015】つぎに、前記の構成について、その作用を説明する。例えば血液の流量を測定するときには、ガイドワイヤー11を経皮的に血管内に挿入し、ガイドワイヤー11の先端部のチップ14を血管内の測定点に位置させる。そして、高周波発生器6より、図1(c)に示すように、芯線13を介してチップ14と、生体外の例えば背中に位置させた体外電極5との間に13.56MHzの高周波電圧を10μWの電力で印加し続ける。これにより、チップ14付近が誘電加熱され、チップ14の温度が上昇していくが、このチップ14の温度は、最終的には平衡温度に達する。この平衡温度は、血流量に応じて決まるが、図5に示すように、平衡温度の対数と血流量の対数との間には、直線的な関係がある。一方、ステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点すなわちチップ14には、対照接点を基準として、チップ14の温度に応じた熱起電力が生じる。この熱起電力は、前記コイル12および芯線13に接続された温度計本体8において測られるが、その際、13.56MHzの高周波は、信号分離器としてのコイル12によりダンピングされ、前記高周波電圧と分離された熱起電力が温度計本体8において測られることになる。そして、この熱起電力に基づいて求められた前記平衡温度から血流量が求まる。例えば、血栓の治療時には、まずガイドワイヤー11を血管内に挿入し、この血管の狭窄部の手前で血流量を測る。ついで、ガイドワイヤー11を介してPTCA用カテーテルのシャフトを挿入し、このシャフトの先端部に設けられたバルーンを膨らませ、血管を拡張する。その後、ガイドワイヤー11からシャフトを抜いて、拡張し終わった血管内の血流量を測定する。このようにすれば、狭窄部の位置を確実に特定できるとともに、治療がうまくいったかどうかも確認できる。特に、冠動脈分岐の場合、その血流量の治療前の測定は、どちらの分岐が詰まっているかを知るためにたいへん重要である。X線検査のみでは、狭窄部の位置がわかりにくいこともある。また、血管拡張後の血流量の測定も、実際にうまく治療できたことを確認するために、重要である。さらに、冠動脈においては、血液が脈動しているので、この脈動に合わせて温度変化に図6に示すようなリップルが現われるが、このリップルは、生理データとして興味深いものである。なお、図6のグラフにおいて、山は心臓の停止時期に対応し、谷は心臓が動いたときに対応している。温度計測手段が従来のようなサーミスターであったとすると、サーミスターは、熱容量が大きく、応答性が悪いため、前記リップルのような細かい現象は検出できない。これに対して、本実施例のような温度計測手段3によれば、前述のようなリップルも検出できる。」


(2)上記記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「可屈性を有し、曲がりくねった細い血管中に挿入できるようになっているカテーテル10として用いられるPTCA(経皮経管冠動脈形成術)用ガイドワイヤー11であって、
信号分離器7となる長細い密コイル12の中に芯線13を収めたものであり、
手元側には、絶縁チューブ21,22を介して一対の端子23,24が設けられており、
一方の端子23は、コイル12と電気的に接続されており、他方の端子24は、芯線13に電気的に接続されており、両端子23,24は、コネクター27,28を介して外部の電気回路に接続されるようになっているものと、
ガイドワイヤー11の先端部に設けられている、ステンレススチール製であるが外面に金メッキ15を施してあるチップ14であって、
測温体1となるとともに、熱電対4をなすステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点となるチップ14と、
両端子23,24に電気的に接続された温度計本体8と、
端子24及び体外電極5に電気的に接続された高周波発生器6と、
演算器9と、
を備え、
血液の流量を測定するときには、ガイドワイヤー11を経皮的に血管内に挿入し、ガイドワイヤー11の先端部のチップ14を血管内の測定点に位置させ、
高周波発生器6より、芯線13を介してチップ14と、生体外に位置させた体外電極5との間に13.56MHzの高周波電圧を10μWの電力で印加し続け、これにより、チップ14付近が誘電加熱され、チップ14の温度が上昇していくが、このチップ14の温度は、最終的には平衡温度に達する一方、チップ14には、対照接点を基準として、チップ14の温度に応じた熱起電力が生じ、この熱起電力が前記コイル12および芯線13に接続された温度計本体8において測られ、前記熱起電力に基づいて測温部1の温度を求め、
この熱起電力に基づいて求められた前記平衡温度から演算器9が血流量を演算する
医療用カテーテル式流量計。」

2 引用文献2について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。
「1.序論
流れの速度の計測は河川工学,海岸工学,環境工学の研究にとって欠かせない最も重要なものの一つであり,ときには流速測定の可否が現象の解明を大きく左右することもある。・・・そこで,本研究では,比較的製作しやすい定温度型熱線流速計を開発し,少ない予算で24チャンネルの熱線流速計を造った(文献1)。その内容をこの報文にまとめた。
・・・。
2.定温度型熱線流速計の原理
金属は、一般に温度が高くなると抵抗が大きくなる性質がある。この性質を使って流れの速度を測る装置が熱線流速計であり,図1はその概念図を示している。細いタングステン線が電流(I)により加熱され,また,流れ(U)により冷却される。その結果,タングステン線の温度つまり、タングステン線の抵抗が流速Uの変化に伴い変化する。この変化を変出すれば,流速を測ることができる。
定温度型とは熱線の温度を一定にする,つまり,熱線の抵抗を一定にする方式である。熱線の温度は,一般に電流による発熱量と流れによる放熱量とがつり合う様な温度となる。今,流れの中に置いた熱線がある流速で平衡状態にあったとする。この状態から流速が少し増加すると,熱線から失われる熱量は多くなり,熱線の温度が低下し熱線の抵抗は小さくなる。この抵抗の変化を直ちに検出して、電流を適当に増やせば発熱量が多くなり,温度が上がって抵抗を元と同じ値に保つことが出来る。逆に流速が減少する場合は,温度が上がって抵抗は大きくなるから,電流を適当に減らせば抵抗を一定に保つことができる。この際,抵抗のわずかな変化を検出して,それに応じて電流を加減する動作は,流速の変化以上に素早く行われなければならない。さもないと、熱線の抵抗が実際に変化していまい,定温度法は実現できなくなってしまう。このような装置を実現するには,熱線を一辺に持つホイートストーン・ブリッジと差動増幅器を組み合わせることによって可能である。・・・ここでBとCは熱線と流れの性質等によって決まる定数である。・・・熱線の両端間の電圧をE_(2)とすると,・・・
E_(2)^(2)=B√U +C (5)
となる。この式は定温度流速計の基礎式で大変重要なものである。」(第23頁下から25行?26頁3行)


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「PTCA(経皮経管冠動脈形成術)用ガイドワイヤー11」は、「可屈性を有し、曲がりくねった細い血管中に挿入できるようになっているカテーテル10として用いられる」ものであるから、本願発明1の「人体の血管に挿入可能な長尺部材」に相当する。

イ 引用発明は、「血液の流量を測定するときには、ガイドワイヤー11を経皮的に血管内に挿入し、ガイドワイヤー11の先端部のチップ14を血管内の測定点に位置させ」るものであるから、引用発明の「ガイドワイヤー11の先端部」は、本願発明1の「長尺部材」の「第1端側」に相当する。
また、引用発明の「ガイドワイヤー11」は、「手元側には、絶縁チューブ21,22を介して一対の端子23,24が設けられて」おり、「手元側」は、先端部と反対側であるから、引用発明の「ガイドワイヤー11」は、「手元側」に、本願発明1の「第2端」に相当する構成を有している。

ウ 上記ア?イに鑑みれば、引用発明の「可屈性を有し、曲がりくねった細い血管中に挿入できるようになっているカテーテル10として用いられるPTCA(経皮経管冠動脈形成術)用ガイドワイヤー11」は、本願発明1の「第1端及び第2端を有しており、当該第1端側が人体の血管に挿入可能な長尺部材」に相当する。

エ さらに、引用発明の「ステンレススチール製であるが外面に金メッキ15を施してあるチップ14」は、「ガイドワイヤー11の先端部に設けられている」導体である金属チップといえる。
そうすると、引用発明の「ガイドワイヤー11の先端部に設けられている、ステンレススチール製であるが外面に金メッキ15を施してあるチップ14」と、
本願発明1の「上記長尺部材の第1端側に設けられた金属線」とは、
「上記長尺部材の第1端側に設けられた金属部材」で共通する。

オ 引用発明の「手元側に」「設けられてお」る「一対の端子23,24」の「一方の端子23は、コイル12と電気的に接続されており、他方の端子24は、芯線13に電気的に接続されて」おり、「両端子23,24」は「温度計本体8」「に電気的に接続され」ているから、引用発明の「手元側に」「設けられてお」る「両端子23,24」を「温度計本体8」「に電気的に接続」しているものと、
本願発明1の「上記長尺部材の上記第2端から延びる接続線」は、
「上記長尺部材の第2端側から延びる接続線」で共通する。

カ 引用発明の「チップ14」が「熱電対4をなすステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点とな」り、「前記コイル12および芯線13に接続された温度計本体8」及び「演算器9」と、
本願発明1の「接続線によって上記金属線と電気的に接続された演算装置」は、
「接続線によって上記金属部材と電気的に接続された演算装置」で共通する。

キ 引用発明の「高周波発生器6より、芯線13を介してチップ14と、生体外に位置させた体外電極5との間に13.56MHzの高周波電圧を10μWの電力で印加し続け、これにより、チップ14付近が誘電加熱され、チップ14の温度が上昇していくが、このチップ14の温度は、最終的には平衡温度に達する」ものである「チップ14」は、「ステンレススチール製であるが外面に金メッキ15を施してある」から、導体である金属チップといえ、「測温体1」であって「血管内の測定点に位置させ」るものであるから、血管内の血液と接触可能に露出されているものといえる。
そうすると、引用発明の「高周波発生器6より、芯線13を介してチップ14と、生体外に位置させた体外電極5との間に13.56MHzの高周波電圧を10μWの電力で印加し続け、これにより、チップ14付近が誘電加熱され、チップ14の温度が上昇していくが、このチップ14の温度は、最終的には平衡温度に達する」「チップ14」と、
本願発明1の「電力を供給されることによって発熱する抵抗であって、上記血管内の血液と接触可能に露出されてお」る「金属線」とは
「電力を供給されることによって発熱する部材であって、上記血管内の血液と接触可能に露出されてお」る「金属部材」で共通する。

ク 引用発明の「測温体1となるとともに、熱電対4をなすステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点となるチップ14と、」「高周波発生器6より、芯線13を介してチップ14と、生体外に位置させた体外電極5との間に13.56MHzの高周波電圧を10μWの電力で印加し続け、これにより、チップ14付近が誘電加熱され、チップ14の温度が上昇していくが、このチップ14の温度は、最終的には平衡温度に達する一方、チップ14には、対照接点を基準として、チップ14の温度に応じた熱起電力が生じ、この熱起電力が前記コイル12および芯線13に接続された温度計本体8において測られ、前記熱起電力に基づいて測温部1の温度を求め、
この熱起電力に基づいて求められた前記平衡温度から演算器9が血流量を演算する
医療用カテーテル式流量計」は、「チップ14」を「10μWの電力で印加し続け」て発熱させ続ける一方、チップからは、血流量に応じた熱量が奪われ続けることから、血流量に応じた平衡温度に達するものであり、その温度から血流量を求めるものである。
一方、本願発明1の、「金属線を1つの抵抗とするホイートストーンブリッジにおける他の3つの抵抗と、
ホイートストーンブリッジの4つの抵抗の接続点において、第1の接続点と、当該第1の接続点に対向する第2の接続点とが入力端に接続され、出力端が、接地された第4の接続点と対向する第3の接続点と接続された補償増幅器と、
上記補償増幅器の出力電圧を測定する電圧計と、
を有しており、上記電圧計が測定した電圧を用いて、上記血管を流れる血液の流速を算出する計測装置」は、「金属線」の温度(抵抗)を一定にするために第3の接続点と接続された補償増幅器の出力電圧を変更するものであり、その補償増幅器の出力電圧を用いて、上記血管を流れる血液の流速を算出するものである。
そして、「血流量」と、「血液の流速」とは、「血液の流れに関する量」で共通する。
そうすると、引用発明と本願発明1とは、「血管を流れる血液の流れに関する量を算出する計測装置」という点で共通する。

(2)よって、本願発明1と引用発明とは、
「第1端及び第2端を有しており、当該第1端側が人体の血管に挿入可能な長尺部材と、
上記長尺部材の第1端側に設けられた金属部材と、
上記長尺部材の第2端側から延びる接続線によって上記金属部材と電気的に接続された演算装置と、を具備しており、
上記金属部材は、電力を供給されることによって発熱する部材であって、上記血管内の血液と接触可能に露出されており、
上記演算装置は、上記血管を流れる血液の流れに関する量を算出する計測装置。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
長尺部材の第1端側に設けられた金属部材について、本願発明1では、「金属線」であり、「抵抗」であるのに対して、引用発明では、「ステンレススチール製であるが外面に金メッキ15を施してあるチップ14」であり、「導体」である点。

(相違点2)
長尺部材の接続線がそこから延びる第2端側について、本願発明1では、「第2端」であるのに対して、引用発明では、「手元側に」「絶縁チューブ21,22を介して」「設けられ」た「一対の端子23,24」である点。

(相違点3)
演算装置が「血管を流れる血液の流れに関する量を算出する」構成について、
本願発明1では、「上記金属線を1つの抵抗とするホイートストーンブリッジにおける他の3つの抵抗と、
ホイートストーンブリッジの4つの抵抗の接続点において、第1の接続点と、当該第1の接続点に対向する第2の接続点とが入力端に接続され、出力端が、接地された第4の接続点と対向する第3の接続点と接続された補償増幅器と、
上記補償増幅器の出力電圧を測定する電圧計と、
を有しており、上記電圧計が測定した電圧を用い」るのに対して、
引用発明では、「測温体1となるとともに、熱電対4をなすステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点となるチップ14と、」「高周波発生器6より、芯線13を介してチップ14と、生体外に位置させた体外電極5との間に13.56MHzの高周波電圧を10μWの電力で印加し続け、これにより、チップ14付近が誘電加熱され、チップ14の温度が上昇していくが、このチップ14の温度は、最終的には平衡温度に達する一方、チップ14には、対照接点を基準として、チップ14の温度に応じた熱起電力が生じ、この熱起電力が前記コイル12および芯線13に接続された温度計本体8において測られ、前記熱起電力に基づいて測温部1の温度を求め、
この熱起電力に基づいて求められた前記平衡温度から演算器9が血流量を演算する」点。

(3)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
引用文献2には、熱線を一辺に持つホイートストーン・ブリッジと差動増幅器を組み合わせることによって熱線の温度(抵抗)を一定の平衡温度に保ち、熱線の両端間の電圧から流速を求める定温度型熱線流速計が記載されている。
引用発明は、熱電対4をなすステンレススチール製のコイル12とベリリウム青銅製の芯線13との間の測定接点となるチップ14の誘電加熱の量と血管を流れる血液による放熱量との平衡温度を測定するもの、すなわち流速によって変化する平衡温度を測定するものであり、引用文献2に記載の流速に関係なく一定の温度である平衡温度に保つ技術とは技術思想が異なるものである。
よって、引用発明の温度計本体8、演算器9に代えて、引用文献2に記載のホイートストーン・ブリッジ及び差動増幅器を採用することはできない。
また、熱線を含めて流量計測に係る構成全体を置換するとしても、引用文献2は、河川工学,海岸工学,環境工学に関する技術であり、人体の血流に関する引用発明とは、異なる技術分野に関するものである。
そうすると、引用文献2に記載の技術事項を引用発明に適用しようとする動機付けがあるとは認められない。

イ 引用文献3は、「血管の血管径を測定するための装置」に関する文献であり、カテーテルを血管内に挿入することは記載されているが、血液の流速の測定に関しては記載されていない。

ウ 引用文献4は、「ガイドワイヤー型血流計」に関する文献であり、カテーテルを血管内に挿入することは記載されているが、低温の食塩水を注入させ大量の熱量変化を必要とする方法に関するものであり、電熱によって加熱させる方式での血流量の測定に関して開示するものではない。

エ そうすると、引用発明及び引用文献2?4の記載事項から、当業者であっても上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえない。

オ したがって、本願発明1は、相違点1及び2を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、引用発明及び引用文献2?4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-24 
出願番号 特願2013-244241(P2013-244241)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 裕之福田 千尋門田 宏  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 信田 昌男
渡戸 正義
発明の名称 計測装置  
代理人 松田 朋浩  
代理人 西木 信夫  
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