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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1355496
審判番号 不服2018-387  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-12 
確定日 2019-09-18 
事件の表示 特願2016-542101「運動可能な先端部を備えた医療装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月19日国際公開,WO2015/038772,平成28年11月10日国内公表,特表2016-534837〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)9月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)9月12日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 4月22日 :翻訳文の提出
平成29年 1月10日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月14日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 9月 7日付け:拒絶査定
平成30年 1月12日 :審判請求書,手続補正書の提出


第2 平成30年1月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「胆管及び膵管の少なくとも一方に沿って身体管腔にアクセスするための医療用ガイドワイヤにおいて、前記医療用ガイドワイヤは、
遠位端及び近位端を有する伸長部材であって、その中に前記遠位端に近接して形成された凹部を有する伸長部材と、
前記伸長部材の前記遠位端に配置された運動可能な遠位端部であって、前記凹部に係合された近位領域を含む運動可能な遠位端部と、
前記遠位端部を運動させるための電気機械式アクチュエータとを含み、
前記伸長部材は前記遠位端部に連結された本体を有しており、前記本体は第一最大直径を有するとともに、前記遠位端部は前記第一最大直径よりも小さい第二最大直径を有しており、
前記電気機械式アクチュエータの動作により、運動可能な前記遠位端部が運動し、胆管及び膵管の少なくとも一方への挿管が促進される医療用ガイドワイヤ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年4月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「胆管及び膵管の少なくとも一方に沿って身体管腔にアクセスするための医療用ガイドワイヤにおいて、前記医療用ガイドワイヤは、
遠位端及び近位端を有する伸長部材と、
前記伸長部材の前記遠位端に配置された運動可能な遠位端部と、
前記遠位端部を運動させるための電気機械式アクチュエータとを含み、
前記伸長部材は前記遠位端部に連結された本体を有しており、前記本体は第一最大直径を有するとともに、前記遠位端部は前記第一最大直径よりも小さい第二最大直径を有しており、
前記電気機械式アクチュエータの動作により、運動可能な前記遠位端部が運動し、胆管及び膵管の少なくとも一方への挿管が促進される医療用ガイドワイヤ。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「伸長部材」,「遠位端部」について,上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と,補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)補正後の本願発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,国際公開第2011/026187号には,図面とともに,次の記載がある。なお,仮訳は当審による。

「The present invention is generally directed to medical devices, and in particular to a navigable system for use in surgery. The present invention will be described with reference to its application in catheter based endovascular neurosurgery. It is however to be appreciated that other applications of the present invention are also envisaged.」(明細書第1ページ第4?8行)
(仮訳:本発明は,概ね医療デバイスに関し,より詳細には,外科手術で使用するためのナビゲーションシステムに関するものである。本発明は,カテーテルによる血管内神経外科におけるその適用を参照して説明する。しかしながら,本発明の他の用途も想定されることを理解されたい。)

「The guidewire or micro-catheter used for catheter based endovascular neurosurgery may typically have a diameter of 350 microns. The micro-motor may therefore preferably have a maximum diameter equal to or less than the diameter of the guidewire or micro-catheter. 」(明細書第2ページ第26?29行)
(仮訳:カテーテルベースの血管内手術に使用されるガイドワイヤまたはマイクロカテーテルは,典型的には350ミクロンの直径を有していてもよい。マイクロモータは,したがって,ガイドワイヤまたはマイクロカテーテルの直径よりも小さい最大直径を有することが好ましい。)

「Referring initially to Figure 1, the navigable guidewire system according to the present invention includes a guidewire 2 upon which is mounted a micro- motor 3 having a piezoelectric actuator 5. The piezoelectric actuator 5 includes a piezoelectric element 7 secured to the end of the guidewire 2, and upon which is mounted an elongate transducer 9 in the form of a hollow cylinder. The micromotor further includes ball rotor 13 mounted on the tip of the transducer 9 as shown in Figure 1 (b) to (d). An elongate member 15 extends from the ball rotor 13.」(明細書第4ページ第18?25行)
(仮訳:最初に図1を参照すると,本発明によるナビゲート可能なガイドワイヤシステムは,圧電アクチュエータ5を備えたマイクロモータ3が設けられているガイドワイヤ2を含む。圧電アクチュエータ5は,ガイドワイヤ2の端部に固定された圧電素子7を含み,圧電素子7には中空シリンダの形をした細長いトランスデューサ9が設けられている。マイクロモータはさらに,図1(b)から(d)に示されるように,トランスデューサ9の先端に設けられたボールロータ13を有している。細長い部材15はボールロータ13から延在している。)

「Figures 1 (b) to (c) show the configuration of the micro-motor 3 during use with the ball rotor 13 in contact with the transducer 9. At least the ball rotor 1 3 is formed from magnetic or magnetised material to thereby allow physical contact to be maintained with the transducer 9. 」(明細書第4ページ第31行?明細書第5ページ第1行)
(仮訳:図1(b)から(c)は,トランスデューサ9と接触するボールロータ13使用時のマイクロモータ3の構成を示している。トランスデューサ9との物理的な接触を維持するために,ボールロータ13は磁性材料又は磁化材料から形成される。)

「The micro-motor 3 may drive the end member 15 for rotation as shown in Figure 1 (c) to assist in the propulsion of the guidewire. The micro-motor 3 may also direct the end member 15 at differing angular displacements to allow steering of the guidewire as shown in Figure 1 (d). 」(明細書第5ページ第5?8行)
(仮訳:図1(c)に示すように,マイクロモータ3は,ガイドワイヤの推進を補助するために,端部部材15を回転駆動することができる。図1(d)に示すように,マイクロモータ3はまた,ガイドワイヤの操舵を可能にするために,端部部材15を異なる角度配置に向けることもできる。)

(イ)上記記載及び図面の図示内容から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は,カテーテルによる血管内神経外科におけるその適用を参照して説明されるが,他の用途も想定される(明細書第1ページ第4?8行)。血管は当然に身体管腔であるから,引用文献1に記載された技術は,身体管腔にアクセスするための技術である。
b ガイドワイヤシステムは,ガイドワイヤ2とマイクロモータ3とを含み,マイクロモータ3は,圧電アクチュエータ5(ガイドワイヤ2の端部に固定された圧電素子7及びトランスデューサ9)と ボールロータ13とを含み,端部部材15がボールロータ13から延在していることから,ガイドワイヤシステムは,ガイドワイヤ2と,ガイドワイヤ2の端部に固定された圧電アクチュエータ5(圧電素子7及びトランスデューサ9)と,ボールロータ13と端部部材15とを含む(明細書第4ページ第18?25行)。ボールロータ13は図1?3の記載及びその名称からして,ボール形状であると認められる。
c トランスデューサ9(圧電アクチュエータ5の一部)は,中空シリンダの形をしており(明細書第4ページ第18?25行),トランスデューサ9の遠位端にボールロータ13が配置され,該遠位端においてボールロータ13との接触が維持される(明細書第4ページ第31行?明細書第5ページ第1行)。
d マイクロモータ3は圧電アクチュエータ5とボールロータ13とからなり(明細書第4ページ第18?25行),ボールロータ13と端部部材15とは,圧電アクチュエータ5によって回転運動可能であり,異なる角度配置に向くことも可能である(明細書第5ページ第5?8行)。
e マイクロモータは,ガイドワイヤの直径よりも小さい最大直径を有することが好ましい(明細書第2ページ第26?29行)。
f ボールロータ13と端部部材15との上記回転運動により,ガイドワイヤの推進が補助され,ボールロータ13と端部部材15とが異なる角度配置に向くことにより,ガイドワイヤの操舵が可能となる(明細書第5ページ第5?8行)。ここで,ガイドワイヤの推進が補助され操舵が可能となるということは,ガイドワイヤの挿管が促進されることを意味する。

(ウ)上記記載事項(ア),認定事項(イ)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「身体管腔にアクセスするためのガイドワイヤシステムにおいて,ガイドワイヤシステムは,
ガイドワイヤ(2)及びガイドワイヤ(2)の端部に固定された圧電アクチュエータ(5)であって,その遠位端付近が中空シリンダの形であるガイドワイヤ(2)及び圧電アクチュエータ(5)と,
前記ガイドワイヤ(2)及び圧電アクチュエータ(5)の遠位端に配置された運動可能なボールロータ(13)及び端部部材(15)であって,中空シリンダの形であるガイドワイヤ(2)及び圧電アクチュエータ(5)の遠位端と接触するボール形状の部分を近位に含む,運動可能なボールロータ(13)及び端部部材(15)と,
前記ボールロータ(13)及び端部部材(15)を運動させるための圧電アクチュエータ(5)とを含み,
前記ガイドワイヤ(2)及び圧電アクチュエータ(5)は前記ボールロータ(13)及び端部部材(15)と接触を維持されており,
前記圧電アクチュエータ(5)の動作により,運動可能な前記ボールロータ(13)及び端部部材(15)が運動し,挿管が促進されるガイドワイヤシステム。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,国際公開第2006/065909号には,次の記載がある。なお,引用文献2の日本語ファミリー文献である特表2008-523908号公報の該当箇所の記載を仮訳として援用した。

「When the indicia pattern of the present invention is used with an exchange wire guide, it permits the measurement of anatomical structures when used with an endoscope having an accessory channel for introducing ancillary devices or instrumentation. This obviates the need for separate measuring devices, and makes it especially useful for Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography (ERCP) procedures, which often requires the step of measuring the length of biliary strictures. Biliary strictures typically occur in the common bile duct. The common bile duct provides a path from the gall bladder to the duodenum. More specifically, the common bile duct proceeds from the junction of the common hepatic duct with cystic duct, which is open to the gall bladder, and merges with the pancreatic duct, forming the ampulla of Vater, which itself opens into the duodenum at the papilla of Vater. The sphincter of Oddi is a muscular ring that controls passage of fluid from the ampulla of Vater into the duodenum.」([0009])
(仮訳:本発明の標識パターンを交換ワイヤーガイドと共に使用すると、補助装置又は器具類を導入するための付属チャネルを有する内視鏡と共に使用すれば、解剖学的構造を測定できるようになる。これは、別の測定装置を不要とし、しばしば胆管狭窄部の長さを測定する段階を必要とする内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)処置に特に役立つ。胆管狭窄は、通常、総胆管に発症する。総胆管は、胆嚢から十二指腸までの経路を提供する。より具体的には、総胆管は、総肝管と、胆嚢に開口している胆嚢管との接合部から出て、膵管と合流し、ファーテル膨大部を形成しており、ファーテル膨大部自体は、ファーテル乳頭で十二指腸に開口している。オッディ括約筋は、環状筋であり、ファーテル膨大部から十二指腸までの流路を制御する。)

「To measure a biliary stricture, a wire guide having a radio- opaque marker on the distal portion is advanced until it has crossed the stricture.」([0011])
(仮訳:胆管狭窄を測定するため、遠位部に放射線不透過性マーカーを有するワイヤーガイドが、狭窄部を横切るまで進められる。)

ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許出願公開第2006/0074442号明細書には,図面とともに,次の記載がある。なお,引用文献3の日本語ファミリー文献である特表2008-521503号公報の該当箇所の記載を仮訳として援用した。

「The present invention is generally related to medical devices, kits, and methods. More specifically, the present invention provides a guidewire system for crossing stenosis, partial occlusions, or total occlusions in a patient's body.」([0003])
(仮訳:本発明は一般に、医療装置、キットおよび方法に関する。より詳細には本発明は、患者の体の狭窄、部分閉塞または全閉塞を横切るためのガイドワイヤシステムを提供する。
)
「The systems, devices and methods according to the present invention will generally be adapted for the intraluminal treatment of a target site within a body lumen of a patient, usually in a coronary artery or peripheral blood vessel which is occluded or stenosed with atherosclerotic, stenotic, thrombotic, or other occlusive material. The systems, devices and methods, however, are also suitable for treating stenoses of the body lumens and other hyperplastic and neoplastic conditions in other body lumens, such as the ureter, the biliary duct, respiratory passages, the pancreatic duct, the lymphatic duct, and the like.」([0095])
(仮訳:本発明に基づくシステム、装置および方法は一般に、粥状、狭窄、血栓または他の閉塞物質で閉塞または狭窄した患者の体管腔、通常は冠状動脈または末梢血管内の標的部位の管腔内処置用に適合される。しかし、これらのシステム、装置および方法はさらに、体管腔の狭窄、ならびに尿管、胆管、呼吸道、膵管、リンパ管などの他の体管腔の他の過形成および新生物形成状態を治療するのに適している。)

「An apparatus 10 embodying features of the present invention is illustrated in FIG. 1 .…(中略)…The drive shaft 22 is movably received within the axial lumen 20 of the elongate member 14 and may be rotated and moved axially, as shown by arrows 23 , 25 .」([0096])
(仮訳:本発明の諸特徴を具体化した装置10が図1に示されている。…(中略)…ドライブシャフト22は、細長い部材14の軸方向ルーメン20の中に運動可能に受け取られ、矢印23、25によって示されているように、回転し、かつ軸方向に移動することができる。)

エ 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許第4886067号明細書には,図面とともに,次の記載がある。なお,一部仮訳は当審が作製し,他の仮訳は,引用文献4の日本語ファミリー文献である特開平2-185263号公報の該当箇所の記載を援用した。

「Accordingly, there is a need for a small diameter steerable guidewire in which the curved configuration of the distal end of the guidewire can be adjusted from the proximal end of the guidewire while the guidewire is disposed within a patient's blood vessel yet which permits flexure of the curved distal end of the guidewire to a more straight or altered curved configuration in order to follow the contours of the patient's blood vessel. It is among the general objects of the invention to provide such a guidewire.」(第1欄第43?52行)
(仮訳:したがって、ガイドワイヤが患者の血管の中にある状態においてガイドワイヤをその基部端から調整して患者の血管の形状に応じてより真っすぐにしたりあるいはより曲げたりすることの可能な柔軟性を有する小径の操縦可能なガイドワイヤの提供が必要とされている。本発明の一般的な目的はこのようなガイドワイヤを提供することにある。)

「FIG. 1 illustrates the guidewire 10 of the present invention in combination with a balloon dilatation catheter 12.」(第2欄第61?63行)
(仮訳:第1図はバルーン拡張カテーテル12と共に本発明のガイドワイヤ10を示す。)

「The dilatation catheter 12, particular when intended for use in a small artery such as a coronary artery, is relatively slender and, for example, may have an outer diameter of the order of 0.050". 」(第2欄第64?68行)
(仮訳(当審による):拡張カテーテル12は,特に冠状動脈のような細い動脈に使用するように意図される場合は,比較的細長く,例えば0.050インチ程度の外径を持つ。)

「When the guidewire is used with a coronary angioplasty catheter, the main wire has an outer diameter not greater than about 0.020"」(第3欄第24?27行)
(仮訳(当審による):ガイドワイヤを冠状形成カテーテルに用いる場合には,主ワイヤ20は約0.020インチ未満の外径を有し)

「In the preferred embodiment of the invention, the outer diameter of the spring 24 is not substantially greater than that of the main wire 20 and, preferably, is the same diameter as the main wire 20.」(第3欄第40?44行)
(仮訳:本発明の好ましい実施例では、ばね24の外径は主ワイヤ20の外径より実質上大きくなく、好ましくは主ワイヤ20の外径と同一となっている。)

オ 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許第4719924号明細書には,図面とともに,次の記載がある。なお,一部仮訳は当審が作製し,他の仮訳は,引用文献5の日本語ファミリー文献である特開昭63-71243号公報の該当箇所の記載を援用した。

「It is among the principal objects of the present invention to provide a small diameter steerable guidewire in which the degree of curvature at the distal tip of the guidewire may be adjusted and controlled while the guidewire remains placed in the patient and without requiring removal and manual reshaping of the guidewire.」(第1欄第62?68行)
(仮訳:本発明の主要な目的のひとつは、ガイドワイヤを患者の体内に入れたまましかもガイドワイヤの引き抜きおよび人手による曲げ直しを必要とせずに、ガイドワイヤの先端チップ部の曲げの度合を調整し制御することができる小径で一定の方向に導くことが可能なガイドワイヤを提供することである。)

「FIG. 1 illustrates the guidewire 10 of the present invention in combination with a balloon dilatation catheter 12.」(第2欄第60?62行)
(仮訳:第1図はバルーン拡張カテーテル12と共に本発明のガイドワイヤ10を示す。)

「The dilatation catheter 12, particular when intended for use in a small artery such as a coronary artery, is relatively slender and, for example, may have an outer diameter of the order of 0.050".」(第2欄第63?67行)
(仮訳(当審による):拡張カテーテル12は、特に冠状動脈のような細い動脈に使用するように意図される場合は,比較的細長く,例えば,0.050インチ程度の外径を持つ。)

「The main wire has an outer diameter not greater than about 0.020"」(第3欄第23?24行)
(仮訳(当審による):主ワイヤ20は約0.020インチ未満の外径を有し)

「In the preferred embodiment of the invention, the outer diameter of the spring 24 is not substantially greater than that of the main wire 20 and, preferably, is the same diameter as the main wire 20.」(第3欄第37?41行)
(仮訳:本発明の好ましい実施例では、ばね24の外径は主ワイヤ20の外径より実質上大きくなく、好ましくは主ワイヤ20外径と同一となっている。)

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,挿管を促進することを課題とする医療用のガイドワイヤに係る技術であり,本件補正発明と,技術分野及び課題が共通する。
(イ)引用発明の「ガイドワイヤシステム」は,ガイドワイヤであってその用途は医療用であるから,本件補正発明の「医療用ガイドワイヤ」に相当する。
(ウ)引用発明の「ガイドワイヤ(2)及びガイドワイヤ(2)の端部に固定された圧電アクチュエータ(5)」は,遠位端を有しており,当然に近位端をも有するものであって,また,長く延びている部材であるから,本件補正発明の「遠位端及び近位端を有する伸長部材」に相当する。
(エ)引用発明の「ボールロータ(13)及び端部部材(15)」は,「ガイドワイヤ(2)及びガイドワイヤ(2)の端部に固定された圧電アクチュエータ(5)」(本件補正発明の「伸長部材」に相当。)の遠位端に配置されており運動可能な部分であることから,本件補正発明の「遠位端部」に相当する。また,引用発明の「ボール形状の部分」は,遠位端部の近位に位置することから,本件補正発明の「近位領域」に相当する。
(オ)引用発明の「圧電アクチュエータ(5)」は,電気機械式のアクチュエータであって,「ボールロータ(13)及び端部部材(15)」(本件補正発明の「遠位端部」に相当。)を運動させるものであるから,本件補正発明の「電気機械式アクチュエータ」に相当する。
(カ)引用発明の「接触を維持」は,接触を維持するという状態が連結状態を意味することから,本件補正発明の「連結」に相当する。
(キ)引用発明の「ガイドワイヤ(2)及びガイドワイヤ(2)の端部に固定された圧電アクチュエータ(5)」は,「ボールロータ(13)及び端部部材(15)」(本件補正発明の「遠位端部」に相当。)に接触を維持(本件補正発明の「連結」)に相当)することから,本件補正発明の「本体」にも相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「身体管腔にアクセスするための医療用ガイドワイヤにおいて,前記医療用ガイドワイヤは,
遠位端及び近位端を有する伸長部材と,
前記伸長部材の遠位端に配置された運動可能な遠位端部であって,近位領域を含む運動可能な遠位端部と,
前記遠位端部を運動させるための電気機械式アクチュエータとを含み,
前記伸長部材は前記遠位端部に連結された本体を有しており,
前記電気機械式アクチュエータの動作により,運動可能な前記遠位端部が運動し,挿管が促進される医療用ガイドワイヤ。」

【相違点1】
身体管腔へのアクセスの際に沿う対象及び挿管が促進される対象が,本件補正発明は,「胆管及び膵管の少なくとも一方」であるのに対し,引用発明は,具体的にどのような対象が想定されるのか不明である点。
【相違点2】
本件補正発明は,伸長部材が「その中に前記遠位端に近接して形成された凹部を有」し,遠位端部の近位領域が「前記凹部に係合」されるのに対し,引用発明は,伸長部材の遠位端付近が中空シリンダの形であり,遠位端部の近位領域が,伸長部材の遠位端と接するボール形状であるという以上の連結構造の詳細が不明である点。
【相違点3】
本件補正発明は,「前記本体は第一最大直径を有するとともに,前記遠位端部は前記第一最大直径よりも小さい第二最大直径を有して」いるのに対し,引用発明は,本体と遠位端部との最大直径の大小について明らかではない点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
一般に医療用ガイドワイヤの技術分野において,ガイドワイヤを胆管及び膵管の少なくとも一方に沿って挿管することは,引用文献2(特に上記2(2)イ),引用文献3(特に上記2(2)ウ)に示されるように本願の優先日前に周知の技術である。
そして,引用文献1には血管内神経外科以外の用途も想定される旨(明細書第1ページ第4?8行参照。)が記載されていることも考慮すれば,引用発明の医療用ガイドワイヤを,上述のとおり周知の胆管または膵管への挿管に用いるものとすることは,当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
一般に機械要素の技術分野において,ボール形状の部分に接続される面の形状をボール形状に対応した凹形状とすることは,一般的なボールジョイントにみられるように,例示するまでもなく本願の優先日前に周知の技術である。
してみると,引用発明の伸長部材の遠位端面の形状を,ボール形状に対応した形状として凹部とし,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。

ウ 相違点3について
引用文献1には,マイクロモータが,ガイドワイヤの直径よりも小さい最大直径を有することが好ましいことが記載されている(明細書第2ページ第26?29行参照。)。また,引用文献1の図1?3の記載から,端部部材15の直径はボールロータ13の直径よりも小さいことが明らかである。
してみると,引用文献1には,引用発明の本体(ガイドワイヤ2及び圧電アクチュエータ5)の最大直径よりも遠位端部(マイクロモータ3の一部であるボールロータ13,及び端部部材15)の最大直径を小さくすることが示唆されている。
また,一般に身体管腔にアクセスする医療機器の技術分野において,伸長部材の本体の最大直径よりも運動可能な遠位端部の最大直径を小さくすることは,引用文献3(特に上記2(2)ウ),引用文献4(特に上記2(2)エの記載全体),引用文献5(特に2(2)オの記載全体)に示されるように本願の優先日前に周知の技術である。
よって,引用発明において,本体が第一最大直径を有するとともに,遠位端部が前記第一最大直径よりも小さい第二最大直径を有するようにすることは,当業者が容易になし得たことである。

エ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する効果は引用発明及び周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年1月12日にされた手続補正は,上述のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年4月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に例示された周知の技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1 国際公開第2011/026187号
引用文献2 国際公開第2006/065909号
引用文献3 米国特許出願公開第2006/0074442号明細書
引用文献4 米国特許第4886067号明細書
引用文献5 米国特許第4719924号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし5及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「その中に前記遠位端に近接して形成された凹部を有する伸長部材」及び「前記凹部に係合された近位領域を含む運動可能な遠位端部」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-15 
結審通知日 2019-04-16 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2016-542101(P2016-542101)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 昌司落合 弘之家辺 信太郎  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 長屋 陽二郎
寺川 ゆりか
発明の名称 運動可能な先端部を備えた医療装置  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  
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