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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1355497
審判番号 不服2018-690  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-18 
確定日 2019-09-18 
事件の表示 特願2016-512201「利用可能なアクセスネットワークを選択する方法及びユーザ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開、WO2014/180190、平成28年 6月20日国内公表、特表2016-518084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2013年5月9日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年12月10日 手続補正書の提出
平成28年10月20日付け 拒絶理由通知書
平成29年 1月10日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 5月31日付け 拒絶理由通知書
平成29年 8月29日 意見書の提出
平成29年 9月11日付け 拒絶査定
平成30年 1月18日 拒絶査定不服審判の請求
平成30年11月20日付け 拒絶理由通知書(当該通知書で通知した拒 絶理由を、以下「当審拒絶理由」という。 )
平成31年 2月20日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成31年2月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。

「 利用可能なアクセスネットワークを選択する方法であって、
アクセスネットワークノードはユーザ装置に予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信し、前記利用可能なアクセスネットワークを選択する条件は、無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定時間に達する及び/又は予定回数に達すること、或いは予定時間内又は予定回数の前記無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすことを含むことと、
前記ユーザ装置が、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定時間に達する及び/又は予定回数に達するとモニタリングする場合、又は予定時間内又は予定回数の前記無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすとモニタリングする場合、前記無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定することと、を含み、
前記無線LANアクセスネットワークの状態は、
無線LANアクセスネットワークのアクセスネットワーク負荷、
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのアップリンク負荷、及び
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのダウンリンク負荷、
の一種又は複数種を含む利用可能なアクセスネットワークを選択する方法。」

第3 拒絶の理由

当審拒絶理由の概要は、
「3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、請求項1に対して、下記の3、1が引用されている。

1.特表2009-544245号公報
3.Samsung, AT&T、Extended ANDSF for load-aware WLAN selection、3GPP TSG SA WG2 Meeting #96 TD S2-131487、2013年4月12日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_sa/WG2_Arch/TSGS2_96_San_Diego/docs/>

第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等

1.引用発明
当審拒絶理由で引用されたSamsung, AT&T、Extended ANDSF for load-aware WLAN selection(当審仮訳:負荷認識WLAN選択のための拡張ANDSF)、3GPP TSG SA WG2 Meeting #96 TD S2-131487、2013年4月12日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_sa/WG2_Arch/TSGS2_96_San_Diego/docs/> (以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「6.x Solution #X: ANDSF Policies with WLAN load information
6.x.1 Functional Description
This solution addresses the key issue #4, "Use WLAN load information for network selection."
It is proposed to extend the ANDSF policies to support the selection policies based on the WLAN Load information which can be supported by WLAN networks. Currently, there are two metrics related to the load condition in WLAN, BSS load element and WAN metrics. The BSS load element corresponds to the information on the actual access channel between UE and WLAN AP, whereas the WAN metrics are link related information between WLAN AP and WAN. Prior to association, the UE is capable to obtain the BSS load element of a specific WLAN by receiving the beacon frame and the WAN metrics by using the ANQP procedure. 」(2ページ)

(当審仮訳:
6.x 解決策#X: WLAN負荷情報を含むANDSFポリシー
6.x.1 機能説明
この解決策は、重要問題#4“ネットワーク選択のためにWLAN負荷情報を使う”に取り組む。
WLANネットワークがサポート可能なWLAN負荷情報に基づく選択ポリシーをサポートするために、ANDSFポリシーを拡張することが提案されている。現在、WLANには、負荷条件に関連する2つのメトリクス、BSS負荷要素及びWANメトリックがある。BSS負荷要素は、UEとWLAN APとの間の実際のアクセスチャネルに関する情報に関連し、WANメトリックはWLAN APとWANとの間のリンク関連情報である。アソシエーションの前に、UEはビーコンフレームを受信することにより、特定のWLANのBSS負荷要素を取得し、ANQPプロシージャを利用することによりWANメトリックとを取得することができる。)

(2)「The ANDSF may send policies to UE based on WLAN load information. With these policies, the UE uses the WLAN load level to determine whether the discovered WLAN access networks can be used without a severe degradation in user experience or not. 」(2ページ)

(当審仮訳:
ANDSFは、WLAN負荷情報に基づくポリシーをUEへ送信し得る。これらのポリシーにより、UEは、WLAN負荷レベルを使用して、ユーザーエクスペリエンスの深刻な劣化なしに、発見したWLANアクセスネットワークが利用可能であるか否か決定する。)

(3)「Load condition on the WLAN may be specified as access network selection condition. Similar to PerProviderSubscription MO defined by HS 2.0, the extended ANDSF rules may have the WLAN load condition(s) which can be described by BSS load element or WAN metrics. The load value(s) in the rule should be used as threshold value(s) to decide whether the access network can be a candidate for the traffic offloading or not. That is, when the WLAN (or BSS) cannot meet the load condition(s), it should be eliminated from the candidate for access network selection.」(2ページ)

(当審仮訳:
WLANにおける負荷条件は、アクセスネットワーク選択条件として指定される。HS 2.0によって定義されたPerProviderSubscription MOと同様に、拡張ANDSFルールは、BSS負荷要素又はWANメトリックによって表現されるWLAN負荷条件を有することができる。そのルール内の負荷の値は、アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値として用いられるべきである。すなわち、WLAN(又はBSS)が負荷条件を満たすことができない場合、それはアクセスネットワーク選択のための候補から除外されるべきである。)

上記各記載及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

ア 上記(1)の記載によれば、引用例には、ネットワークを選択する方法が記載されているといえ、上記(2)の記載によれば、UEは、WLAN負荷情報に基づくポリシーにより、WLANアクセスネットワークが利用可能であるか否か決定する。したがって、引用例には、「利用可能なWLANアクセスネットワークを選択する方法」が記載されているといえる。

イ 上記(2)の記載によれば、ANDSFは、UEにWLAN負荷情報に基づくポリシーを送信する。ANDSFがEPCに存在することは、技術常識であって、EPCからUEへ送信される情報は、eNBを介してUEへ送信されることも技術常識であるから、eNBはUEにWLAN負荷情報に基づくポリシーを送信するといえる。さらに、上記(2)及び(3)の記載によれば、WLAN負荷情報に基づくポリシーは、拡張ANDSFルールを含むといえるから、eNBはUEに拡張ANDSFルールを送信するといえる。また、上記(3)の記載によれば、拡張ANDSFルール内の負荷の値は、アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値として用いられるから、拡張ANDSFルールは、アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を有するといえる。さらに、上記(3)の記載によれば、拡張ANDSFルールは、WLAN負荷条件を有すること、WLAN負荷条件は、アクセスネットワーク選択条件であることから、拡張ANDSFルールは、アクセスネットワーク選択条件を有するといえる。してみると、eNBはUEにアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値及びアクセスネットワーク選択条件を送信するといえる。
また、上記(3)の記載によれば、アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値は、負荷の値であるから、WLAN負荷情報に係る閾値といえる。そのため、WLAN負荷条件、すなわちアクセスネットワーク選択条件は、WLAN負荷情報がアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすことを含むといえる。
したがって、引用例には、「eNBはUEにアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値及びアクセスネットワーク選択条件を送信し、前記アクセスネットワーク選択条件は、WLAN負荷情報が前記アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすことを含む」ことが記載されているといえる。

ウ 上記(1)の記載によれば、UEはビーコンフレームを受信することにより、特定のWLANのBSS負荷要素を取得し、ANQPプロシージャを利用することによりWANメトリックとを取得する。ビーコンフレームは、WLAN APから受信するものであること、ANQPは、WLAN APからネットワークの情報を取得するプロトコルであることは、いずれも技術常識であるから、UEは、WLANのBSS負荷要素又はWANメトリックをWLAN APから取得するといえる。また、BSS負荷要素、WANメトリックはWLAN負荷情報といえるから、UEは、WLAN負荷情報をWLAN APから取得するといえる。
また、上記(2)の記載によれば、UEがWLAN負荷情報に基づくポリシーにより、WLAN負荷レベルを使用して、発見したWLANアクセスネットワークを利用可能なアクセスネットワークであるか否か決定するといえる。加えて、上記(3)の記載によれば、WLANがWLAN負荷条件、すなわちアクセスネットワーク選択条件を満たすことができない場合、アクセスネットワーク選択のための候補から除外されるから、WLANがアクセスネットワーク選択条件を満たす場合、アクセスネットワーク選択のための候補にされるといえる。ここで、WLANをアクセスネットワーク選択のための候補にすることは、WLANアクセスネットワークを利用可能なアクセスネットワークであると決定することに他ならない。してみると、UEが、WLANがアクセスネットワーク選択条件を満たす場合、当該WLANアクセスネットワークを利用可能なアクセスネットワークであると決定するといえる。さらに、上記イのとおり、アクセスネットワーク選択条件は、WLAN負荷情報がアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすことを含むから、UEが、WLAN負荷情報がアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすと判断する場合、WLANアクセスネットワークを利用可能なアクセスネットワークであると決定するといえる。
したがって、引用例には、「UEが、WLAN負荷情報をWLAN APから取得し、前記WLAN負荷情報がアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすと判断する場合、WLANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると決定すること」が記載されているといえる。

エ 上記(1)の記載によれば、WLAN負荷情報は、BSS負荷要素又はWANメトリックであり、BSS負荷要素は、UEとWLAN APとの間の実際のアクセスチャネルに関する情報に関連し、WANメトリックはWLAN APとWANとの間のリンク関連情報であるといえる。したがって、引用例には、「WLAN負荷情報は、UEとWLAN APとの間の実際のアクセスチャネルに関する情報に関連するBSS負荷要素及びWLAN APとWANとの間のリンク関連情報であるWANメトリックの一種を含む」といえる。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 利用可能なWLANアクセスネットワークを選択する方法であって、
eNBはUEにアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値及びアクセスネットワーク選択条件を送信し、前記アクセスネットワーク選択条件は、WLAN負荷情報が前記アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすことを含むことと、
前記UEが、前記WLAN負荷情報をWLAN APから取得し、前記WLAN負荷情報がアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすと判断する場合、前記WLANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると決定することと、を含み、
前記WLAN負荷情報は、
UEとWLAN APとの間の実際のアクセスチャネルに関する情報に関連するBSS負荷要素、及び
WLAN APとWANとの間のリンク関連情報であるWANメトリック、
の一種を含む利用可能なアクセスネットワークを選択する方法。」

2.公知技術
当審拒絶理由で引用された特表2009-544245号公報(以下、「公知例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「【0013】
図1は、WWAN110と3つのWLANシステム120a、120b及び120cの例示の配置を示す。WWANは、例えば、都市、州、又は国全体といった、広い地理的な領域に通信カバレッジを提供する無線ネットワークである。WWAN110は、(a)IS-95、IS-2000、IS-856及び/又は何らかの他のCDMA標準といった符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク、(b)ワイドバンドCDMA(W-CDMA)を導入するユニバーサル移動電話システム(Universal Mobile Telecommunication System)(UMTS)ネットワーク、(c)GSM(Global System for Mobile Communications)ネットワーク、又は(d)何らかの他のセルラーネットワークといった、セルラーネットワークであってよい。WWAN110はまた、ブロードキャストネットワーク又は何らかの他のタイプのセルラーネットワークであってもよい。WWAN110は通常、WWANのカバレッジ領域内の端末の通信をサポートする多数の基地局112を備える。簡単のため、1つの基地局112のみが図1に示されている。基地局は一般に、端末と通信する固定された局であり、ノードB、ベーストランシーバステーション(BTS)等とも称され得る。
【0014】
WLANシステム120は、例えば、ビル、モール、店舗、学校等といった、中位の地理的な領域に通信カバレッジを提供する。各WLANシステム120は、任意の数の端末の無線通信をサポートする任意の数のアクセスポイントを備え得る。図1において、WLANシステム120aは1つのアクセスポイント122aを備え、WLANシステム120bは1つのアクセスポイント122bを備え、WLANシステム120cは2つのアクセスポイント122c及び120dを備える。各WLANシステム120は、SSID(service set identifier)によって識別され得るが、これは32バイト長まであり得る英数字の文字列(string)である。各アクセスポイント122は、BSS(basic service set)に対して調整機能を行い得るが、これは、アクセスポイントに関連付けられた一組の端末である。各BSSは、BSS識別子(BSSID)によって識別され得るが、これは48ビットの媒体アクセス制御(MAC)アドレスである。従って、各アクセスポイントは一意のBSSIDによって識別され得る。端末はアクセスポイントと、アソシエーション要求(Association Request)フレーム及びアソシエーション応答(Association Response)フレームを当該アクセスポイントと交換することでアソシエートし(associate)得る。アソシエーションの成功の後、端末は、アクセスポイントが属するWLANシステムに接続される。
(中略)
【0027】
図5は、一つの設計に従った種々のリスト及びセットを示す。端末は、サービスプロバイダ、ユーザ等によって好適なリスト510で設定され(configure)得る。好適なリスト510は、サービスプロバイダによって所有され、作動させられるWLANシステム、サービスプロバイダがローミング契約を有するWLANシステム、サービス申し込みによってカバーされるWLANシステム、ユーザによってプログラム又は選択されるWLANシステム等を含み得る。好適なリスト510はまた、ネットリスト、ローミングリスト等とも称され得る。一つの設計において、好適なリスト510は、自動スキャンの期間に捕捉され得る全てのWLANシステムを含む。好適なリスト510は、リスト中のWLANシステム毎に1つのレコードを備え得る。各レコードは、SSID、認証情報(例、鍵、パスワード等)、優先度、周波数チャネル情報等、そのWLANシステムについての関連情報(pertinent information)を含み得る。スキャンリスト520は、所与のスキャンイベントで検出すべき1つ又は複数のWLANシステムを含む。スキャンリスト520は、以下に記載するように、好適なリスト510に基づいて形成され得る。
【0028】
検出されたセット530は端末によって検出されたアクセスポイントを含む。自動スキャンの場合、検出されたセット530中のアクセスポイントは、好適なリスト510のWLANシステムからに制限されてもよい。候補セット540は、1つ又は複数の基準を満たす検出されたセット530中のアクセスポイントを含み、端末によるアソシエーションの候補である。アクティブセット550は、端末がアソシエートした1つ又は複数のアクセスポイント(通常は1つのアクセスポイント)を含む。
(中略)
【0031】
ある面において、端末は複数回のスキャンの反復を行って、WLANシステムを検出する。端末はビーコンフレーム及び/又は他のフレームをアクセスポイントから受信し、受信したフレームについて受信信号強度インジケータ(received signal strength indicator)(RSSI)測定を行ってもよい。RSSI測定は、信号強度測定、信号測定、パイロット測定、受信電力測定等とも称され得る。所与のアクセスポイントについての測定は、例えば無線環境における変化に起因して、大きく変動し得る。複数回のスキャン反復(multiple scan iterations)を用いて、アクセスポイントについて、より正確な測定値を取得し得る。複数回のスキャン反復はまた、様々なタイプのスキャン(例えば、一部の反復はパッシブスキャン、他の反復はアクティブスキャン)、様々な周波数チャネルのスキャニング、様々なWLANシステムのスキャニング等をサポートするために用いられてもよい。
(中略)
【0051】
検出されたセットは、スキャンイベントについての複数回のスキャン反復において端末によって検出されたアクセスポイントを含む。検出されたセットは、RSSI測定値、以下に記載されるようにRSSI測定値をフィルタリングすることによって取得されたフィルタリングされた測定値、及び/又は他の情報に基づいて更新され得る。検出されたセットは、図6のブロック620の各スキャン反復後に種々の方法で更新され得る。
【0052】
一つの設計において、検出されたセットは、各スキャン反復の後に当該スキャン反復で取得されるRSSI測定値に基づいて更新される。レコードは、スキャン反復毎に作成されてもよく、当該スキャン反復の検知閾値を越えるRSSI測定値を有する全てのアクセスポイントを含んでもよい。検出されたセットは、Nscan回のスキャン反復についてNscan個のレコードを含み得る。これらのレコードを用いて、どのアクセスポイントが各スキャン反復で検出されたか、及び所与のアクセスポイントがNscan回のスキャン反復においてどのくらいの頻度で検出されたかを判定し得る。
【0053】
別の設計においては、検知閾値を越えるフィルタリングされた測定値を有する全てのアクセスポイントが、検出されたセットに含まれる。各アクセスポイントのフィルタリングされた測定値は、各スキャン反復後に更新されてもよく、また、当該アクセスポイントを当該スキャン反復の検出されたセット中に含むか否かを判定するのに用いられてもよい。
【0054】
検知閾値は一定の値であり得る。検知閾値がゼロに設定される場合、全ての受信されたアクセスポイントが、それらのRSSI測定値に関わらず、検出されたセットに含まれる。検知閾値は、以下の様に、スキャン反復に依存する可変の値であってもよい:
【数1】


【0055】
ここで、THdet,iは、i番目のスキャン反復における検出されたセットのアクセスポイントを含むのに用いられる検知閾値であり、THdet_stepはステップサイズであり、THdet_minは最小の検知閾値である。
【0056】
式(1)で、THdet,iは最初のスキャン反復についてTHdet_initに設定されてもよく、その後に続くスキャン反復毎にTHdet_stepだけ減少されてもよく、また、THdet_min以上に限定されてもよい。THdet閾値はまた、他の方法でも設定され得る。
【0057】
検出されたセットはまた、他の方法でも更新され得る。検出されたセット中のアクセスポイントは、それらのRSSI測定値又はフィルタリングされた測定値に基づいて、各スキャン反復後に順序付けられてもよい。各スキャン反復後に、最も高い測定値を有する最大でNap個までのアクセスポイントが検出されたセットに保持され得るが、ここでNapは任意の値であってよい。
【0058】
候補のセットは、図6のブロック630で、Nscan回のスキャン反復が全て完了した後に判定されてもよい。検出されたセット中のアクセスポイントは、RSSI測定値、アクセスポイントが検出セットに含まれたスキャン反復の回数等といった種々の要因に基づいて、候補セットに含めることを考慮され得る。例えば、少なくともNmin回のスキャン反復、及び/又は少なくともNcon回の連続するスキャン反復で検出セットに含まれなかったアクセスポイントは候補セットについての考慮から省略され得るが、ここでNmin及びNconはそれぞれ1からNscanまでの任意の値、例えば、
【数2】


【0059】
であってよい。省略されないアクセスポイントは、種々の基準に基づいて候補セットへ含めることが考慮され得る。
【0060】
一つの設計において、一定の選択閾値を越えるフィルタリングされた測定値を有する、検出されたセット中のアクセスポイントは候補セットに含められる。この選択閾値は、任意の適当な値、例えば、-70、-75、-80dB又は何らかの他の値であってよい。
(中略)
【0082】
所与のスキャンイベントについて、各スキャン反復は、当該スキャン反復で受信又は検出された一組のアクセスポイントについて、一組のRSSI測定値を供給し得る。スキャン反復はまた、アクセスポイントが受信又は検出されない場合、空のセットをリターンしてもよい。所与のアクセスポイントについてのRSSI測定値は、異なるスキャン反復に渡って広く変動し得る。各アクセスポイントのRSSI測定値はフィルタリングされて、当該アクセスポイントのより信頼できる測定値が取得されてもよい。フィルタリングは種々の方法で達成され得る。
【0083】
一つの設計において、フィルタリングは、以下のように、等平均(equal averaging)に基づく:
【数11】


【0084】
ここで、RSSIi(m)は、スキャン反復iにおけるアクセスポイントmのRSSI測定値であり、Nmは、アクセスポイントmについて利用可能なRSSI測定値の数であり、RSSIfiltered(m)は、アクセスポイントmのフィルタリングされた測定値である。
【0085】
RSSI測定値は、所与のスキャン反復においてアクセスポイントmについて取得されても、取得されなくてもよい。従って、Nscan回のスキャン反復が実行される場合、
【数12】


【0086】
である。式(6)は、全てのRSSI測定値に等しい重みを与える。」

(2)「




上記記載及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

上記(1)の段落【0031】の記載によれば、端末は、無線環境における変化に起因して、大きく変動し得るアクセスポイントの測定値を正確に取得するため、複数回のスキャン反復を行うといえる。
上記(1)の段落【0051】-【0052】の記載によれば、端末は、スキャン反復の閾値を満たす測定値を有する全てのアクセスポイントを検出されたセットに含めるといえる。さらに、上記(1)の段落【0058】-【0059】の記載によれば、Ncon回の連続するスキャン反復で検出セットに含まれなかったアクセスポイントは候補セットについての考慮から省略され、省略されないアクセスポイントは、種々の基準に基づいて候補セットへ含めるから、端末は、アクセスポイントの測定値が閾値をNcon回連続して満たすと判断する場合に、前記アクセスポイントを候補セットとするといえる。
また、上記(1)の段落【0060】の記載によれば、一定の閾値を満たすフィルタリングされた測定値を有する、検出されたセット中のアクセスポイントを候補セットとするといえる。ここで、上記(1)の段落【0082】-【0084】の記載によれば、フィルタリングは、測定値の平均を含むから、端末は、アクセスポイントの測定値の平均が閾値を満たす場合に、前記アクセスポイントを候補セットとするといえる。
さらに、上記(1)の段落【0014】の記載によれば、アクセスポイントはWLANのアクセスポイントといえ、上記(1)の段落【0028】の記載及び上記(2)の【図5】によれば、候補セットはアソシエーションの候補であるアクセスポイントといえる。
したがって、公知例には、次の技術(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。
「端末は、無線環境における変化に起因して、大きく変動し得るアクセスポイントの測定値を正確に取得するため、複数回のスキャン反復を行い、WLANのアクセスポイントの測定値が閾値をNcon回連続して満たす場合、又はWLANのアクセスポイントの測定値の平均が閾値を満たす場合に、前記WLANのアクセスポイントをアソシエーションの候補とする。」ことが記載されているといえる。

第5 対比及び判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

1.引用発明の「WLANアクセスネットワーク」は、本願発明の「アクセスネットワーク」に含まれる。
したがって、引用発明の「利用可能なWLANアクセスネットワークを選択する方法」は、「利用可能なアクセスネットワークを選択する方法」という点で本願発明と一致する。

2.本願の発明の詳細な説明の「【0050】
本実施例において、典型的なアクセスネットワークノードはエボリューションした基地局ノード(eNB)、基地局ノード(NB)、無線ネットワークコントローラ(Radio Network Controller、RNCと略称する)、ベーストランシーバ基地局(Base Transceiver Station、BTSと略称する)、基地局制御装置(Base Station Controller、BSCと略称する)である。」(下線は、当審が付与。)との記載によれば、本願発明の「アクセスネットワークノード」は、「eNB」を含むといえるから、引用発明の「eNB」は、本願発明の「アクセスネットワークノード」に含まれる。
また、引用発明の「UE」は、本願発明の「ユーザ装置」に相当する。引用発明の「アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値」を、「予定閾値」と称することは任意である。引用発明の「アクセスネットワーク選択条件」、「WLAN負荷情報」は、それぞれ「利用可能なアクセスネットワークを選択する条件」、「無線LANアクセスネットワークの状態」といえる。
したがって、本願発明の「アクセスネットワークノードはユーザ装置に予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信し、前記利用可能なアクセスネットワークを選択する条件は、無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定時間に達する及び/又は予定回数に達すること、或いは予定時間内又は予定回数の前記無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすことを含むこと」と、引用発明の「eNBはUEにアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値及びアクセスネットワーク選択条件を送信し、前記アクセスネットワーク選択条件は、WLAN負荷情報が前記アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすことを含むこと」とは、「アクセスネットワークノードはユーザ装置に予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信し、前記利用可能なアクセスネットワークを選択する条件は、無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を満たすことを含む」という点で共通する。

3.引用発明の「UEが、WLAN負荷情報をWLAN APから取得し、前記WLAN負荷情報がアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすと判断する」ことは、少なくとも利用可能なWLANアクセスネットワークを選択するまで継続的に行うことは、当業者にとって明らかである。そして、継続的にWLAN負荷情報をWLAN APから取得して、閾値を満たすかどうか判断することは、モニタリングに他ならない。
引用発明の「WLANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると決定すること」は、「無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定すること」といえる。
したがって、本願発明の「前記ユーザ装置が、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定時間に達する及び/又は予定回数に達するとモニタリングする場合、又は予定時間内又は予定回数の前記無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすとモニタリングする場合、前記無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定すること」と、引用発明の「前記UEが、WLAN負荷情報をWLAN APから取得し、WLAN負荷情報が前記アクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値を満たすと判断する場合、WLANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると決定すること」とは、「前記ユーザ装置が、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を満たすとモニタリングする場合、前記無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定すること」という点で共通する。

4.本願の発明の詳細な説明の「【0057】
UEは、Beaconフレーム又はプローブ応答フレーム(Probe Response Frame)を監視することによりWLANアクセスネットワークのアクセスネットワーク負荷とWLANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクアップリンク及び/又はダウンリンク負荷を取得することができ、具体的にはBeaconフレーム又はProbe Responseフレームにおける基本サービスセット負荷要素(BSS Load element)を監視することにより取得することができ、具体的にはBeaconフレーム又はProbe Responseフレームにおける広域ネットワークメトリック要素(WAN Metrics element)を監視することにより取得することができる。」との記載によれば、本願発明の「無線LANアクセスネットワークのアクセスネットワーク負荷」は、「Beaconフレームにおける基本サービスセット負荷要素(BSS Load element)を監視することにより取得する」ものを含むといえるから、引用発明の「BSS負荷要素」は、本願発明の「無線LANアクセスネットワークのアクセスネットワーク負荷」に含まれる。
また、引用発明の、「WLAN負荷情報」であって「WLAN APとWANとの間のリンク関連情報であるWANメトリック」は、リンクの負荷にはアップリンクとダウンリンクがあることは技術常識であるから、「無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのアップリンク負荷、及び
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのダウンリンク負荷」の二種を含むといえる。
したがって、引用発明の「前記WLAN負荷情報は、
UEとWLAN APとの間の実際のアクセスチャネルに関する情報に関連するBSS負荷要素、及び
WLAN APとWANとの間のリンク関連情報であるWANメトリック、
の一種を含む」ことは、「前記無線LANアクセスネットワークの状態は、
無線LANアクセスネットワークのアクセスネットワーク負荷、
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのアップリンク負荷、及び
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのダウンリンク負荷、
の一種又は複数種を含む」という点で本願発明と一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 利用可能なアクセスネットワークを選択する方法であって、
アクセスネットワークノードはユーザ装置に予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信し、前記利用可能なアクセスネットワークを選択する条件は、無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を満たすことを含むことと、
前記ユーザ装置が、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を満たすとモニタリングする場合、前記無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定することと、を含み、
前記無線LANアクセスネットワークの状態は、
無線LANアクセスネットワークのアクセスネットワーク負荷、
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのアップリンク負荷、及び
無線LANアクセスネットワークが広域ネットワークに接続されたリンクのダウンリンク負荷、
の一種又は複数種を含む利用可能なアクセスネットワークを選択する方法。」

(相違点)
一致点である「利用可能なアクセスネットワークを選択する条件」について、本願発明は、「無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定時間に達する及び/又は予定回数に達すること、或いは予定時間内又は予定回数の前記無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすことを含む」との発明特定事項を有し、これに伴って、一致点である「前記ユーザ装置が、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を満たすとモニタリングする場合、前記無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定すること」について、本願発明は、「前記ユーザ装置が、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定時間に達する及び/又は予定回数に達するとモニタリングする場合、又は予定時間内又は予定回数の前記無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすとモニタリングする場合、前記無線LANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると認定する」との発明特定事項を有するのに対して、引用発明は、これらの発明特定事項を有しない点。

以下、相違点について検討する。
上記「第4」の「2.公知技術」で認定したとおり、「端末は、無線環境における変化に起因して、大きく変動し得るアクセスポイントの測定値を正確に取得するため、複数回のスキャン反復を行い、WLANのアクセスポイントの測定値が閾値をNcon回連続して満たす場合、又はWLANのアクセスポイントの測定値の平均が閾値を満たす場合に、前記WLANのアクセスポイントをアソシエーションの候補とする。」ことは、公知技術である。
引用発明と公知技術は、いずれもWLANを選択するための技術であって、引用発明において、WLAN負荷情報は、無線環境における変化に起因して大きく変動し得るアクセスポイントの測定値といえるから、WLAN負荷情報を正確に取得するため、引用発明に、公知技術を適用することに格別の困難性はない。
したがって、引用発明に、公知技術を適用し、WLAN負荷情報をWLAN APから反復して取得し、アクセスネットワーク選択条件を、WLAN負荷情報が閾値をNcon回連続して満たすこと、すなわち無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定回数に達すること、又はWLAN負荷情報の平均が閾値を満たすこと、すなわち予定回数の無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすこととし、それに伴い、UEが、前記無線LANアクセスネットワークの状態が予定閾値を持続的に満たして予定回数に達すると判断する場合又は、予定回数の無線LANアクセスネットワークの状態がフィルタリング処理された後予定閾値を満たすと判断する場合、WLANアクセスネットワークが利用可能なアクセスネットワークであると決定することとし、本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

よって、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(請求人の主張について)
請求人は、平成31年2月20日に提出された意見書において、「引用文献3のthreshold valueはANDSFがUEに送信するものであります。当業者にとって、ANDSFはコアネットワークに属し、つまり、引用文献3においてコアネットワークはUEにthreshold valueを送信します。これと違って、補正後の本願請求項1において、予定閾値はアクセスネットワークノードがユーザ装置に送信するものであります。
また、引用文献3は補正後の本願請求項1の「アクセスネットワークノードはユーザ装置に利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信する」という技術的特徴を開示していません。
本願明細書の背景技術の最後の段落に記載のように、「コアネットワーク側のネットワーク構成要素のアクセスネットワーク発見サポート機能(Access Network Discovery Support Function、ANDSFと略称する)が一部の戦略的なルールを与えるが、これらの規則が相対的に静的な状態であり」ます。これに対して、アクセスネットワークノードは無線チャンネルをリアルタイムに監視することができるため、アクセスネットワークの取得したパラメータは「動的」なものであり、アクセスネットワークは予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信することにより、利用可能なアクセスネットワークの選択をより正確的に行います。
上記分析から分かるように、引用文献3は上記技術効果を達成しません。
引用文献1も上記区別の技術的特徴を開示しておらず、上記技術効果を達成しません。
補正後の本願請求項1の上記区別の技術的特徴は本分野の公知常識又は慣用手段ではありません。
よって、補正後の本願請求項1に記載の発明は出願の前に、当業者が引用文献3、1に開示された技術的手段により容易に実現できるものではありません。補正後の本願請求項1は進歩性を有し、特許法第29条第2項に規定する進歩性要件を満たしています。」(下線は、意見書の記載のとおり。)と主張している。

以下、上記主張について検討する。
上記主張において、請求人は、本願発明が「アクセスネットワークノードは無線チャンネルをリアルタイムに監視することができるため、アクセスネットワークの取得したパラメータは「動的」なものであり、アクセスネットワークは予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を送信することにより、利用可能なアクセスネットワークの選択をより正確的に行います。」との引用文献にない技術効果を有する旨を主張の前提としている。しかしながら、本願発明が当該技術効果を有するといえるためには、アクセスネットワークノードが予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を生成することが必要であるところ、本願の請求項1には、アクセスネットワークノードが「予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件」を生成することは記載も示唆もされていない。
したがって、上記主張は、本願の請求項1の記載に基づくものではなく、採用できない。
また仮に、本願発明が、アクセスネットワークノードが予定閾値及び利用可能なアクセスネットワークを選択する条件を生成するものであるとして、本願発明の進歩性について、検討を進める。
セルラーネットワークの技術分野において、ネットワーク側の機能をコアネットワークに配置するか、基地局に配置するかは当業者が適宜決定すべき事項に過ぎず、機能の配置替えは常套手段である。そうすると、引用発明は、上記「第4」の「1.引用発明」の「(2)」の記載によれば、ANDSFがWLAN負荷情報に基づくポリシーをUEへ送信する以上、ANDSFがWLAN負荷情報に基づくポリシーに含まれる拡張ANDSFルールが有するアクセスネットワークがトラフィックオフロードのための候補となり得るか否かを決定するための閾値及びアクセスネットワーク選択条件を生成するといえるが、この処理をANDSFが行うことに代えて、eNBが行うことは、当業者が適宜なし得ることである。したがって、この観点から見ても、上記主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-09 
結審通知日 2019-04-16 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2016-512201(P2016-512201)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 脇岡 剛
長谷川 篤男
発明の名称 利用可能なアクセスネットワークを選択する方法及びユーザ装置  
代理人 今村 健一  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 平木 祐輔  
代理人 松丸 秀和  

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