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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1355508 |
審判番号 | 不服2018-5743 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-25 |
確定日 | 2019-09-18 |
事件の表示 | 特願2015-540237「色域を有するLED系デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/068440、平成28年 2月 4日国内公表、特表2016-503579〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、以後の手続は、以下のとおりである。 平成28年 8月23日:出願審査請求書の提出 平成29年 8月 7日:拒絶理由通知(8月15日発送) 同年11月 9日:手続補正書・意見書の提出 平成30年 1月12日:拒絶査定(1月23日送達。以下「原査定」 という。) 同年 4月25日:審判請求書・手続補正書の提出 同年12月18日:拒絶理由通知(12月25日発送) 平成31年 3月 5日:手続補正書・意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成31年3月5日の手続補正(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)により補正された請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 青色光源、緑色光源、広帯域スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成された第1赤色ルミネセント材料を含む赤色第1光源、および1つまたは2つ以上の赤色輝線を含むスペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成された第2赤色ルミネセント材料を含む赤色第2光源を含む、照明ユニットを含むLCDディスプレイデバイスであって、前記照明ユニットがバックライトユニットとして構成され、 前記赤色第1光源は、中心発光波長≧590nmを有し、≧70nmの半値全幅(FWHM)を有する、広帯域スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成され、 前記第1赤色ルミネセント材料は、2価のユーロピウム含有硫化物、2価のユーロピウム含有窒化物、および2価のユーロピウム含有酸窒化物からなる群から選定され、 前記赤色第2光源は、中心発光波長≧610nmを有する1つまたは2つ以上の赤色輝線を含み、≦50nmの半値全幅(FWHM)を有する1つまたは2つ以上の赤色輝線を有する、スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成され、 前記第2赤色ルミネセント材料は、4価のマンガンでドープされたM_(2)AX_(6)からなる群から選定され、ここで、Mは1価のカチオンであり、Li、Na、K、Rb、Cs、NH_(4)からなる群から選定され、AはSi、Ti、Ge、Sn、Zrからなる群から選定された4価のカチオンを有し、Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選定された1価のアニオンを有するが、少なくともFを有する、LCDディスプレイデバイス。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。) 第3 拒絶の理由 平成30年12月18日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)における【理由4】は、次のとおりのものである。 本願発明1ないし本願発明12は、その優先日(2012年11月1日)前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1 特開2012-104814号公報(2012年5月31日公開) 周知技術であることを示すための文献 国際公開第2012/114640号 国際公開第2012/077448号 国際公開第2011/102339号 特開平11-340516号公報 特開2008-35691号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 当審拒絶理由通知で引用した特開2012-104814号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。 (1)「【請求項1】 青色発光するLED素子と、該青色発光するLED素子が発した光を波長変換して黄色光を放射する蛍光体および/または緑色光を放射する蛍光体と、該青色発光するLED素子が発した光を波長変換して赤色光を放射する蛍光体とを含有する樹脂組成物を備える白色発光装置であって、 該赤色光を放射する蛍光体が、少なくともMn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体およびEu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体を含み、 該樹脂組成物中に含まれる該Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体およびEu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体の総量に対する、該Eu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体の含有比率が、0.5重量%以上14.0重量%以下である白色発光装置。 【請求項2】 …… 【請求項21】 青色発光するLED素子と、該青色発光するLED素子が発した光を波長変換して黄色光を放射する蛍光体および/または緑色光を放射する蛍光体と、該青色発光するLED素子が発した光を波長変換して赤色光を放射する蛍光体とを含有する樹脂組成物を備える白色発光装置であって、 該赤色光を放射する蛍光体が、少なくとも、最大発光ピークが600nm以上660nm以下であり、赤色発光ピークの半値全幅が20nm以下である狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体および最大発光ピークが600nm以上660nm以下であり、赤色発光ピークの半値全幅が80nm以上である広帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体を含み、 該樹脂組成物中に含まれる該狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体および該広帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体の総量に対する、該広帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体の含有比率が、0.5重量%以上14.0重量%以下である白色発光装置。」 (2)【技術分野】 【0001】 本発明は、赤色発光するMn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体と、該蛍光体の励起源であるLED(発光ダイオード)素子とを備える白色発光装置に関する。 【背景技術】 【0002】 狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体としてMn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体が知られている(特許文献1)。……実際に、Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体であるK_(2)TiF_(6):Mnを、広帯域黄色蛍光体Tb_(3)Al_(5)O_(12):Ceと共に用いた、温白色光を放出する高効率の白色LEDが報告されている(特許文献2)。」 (3)「【0073】 本願発明の白色発光装置は、電球、ダウンライト、ライン照明などの照明器具に用いることができる。」 (4)「【0016】 図示は省略するが、パッケージ11には周知の配線パターンが付与されている。青色LED素子12は440?470nmに発光ピーク波長を有しており、その材料や構造は特に限定されないが、例えば、InGaNを発光層に用いた窒化ガリウム系のLED素子である。…。」 (5)「【0025】 好ましいMn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体は、…えば、K_(2)SiF_(6):Mn(KSF)、KSFの構成元素の一部(好ましくは10モル%以下)をAlとNaで置換したKSNAF(K_(2)Si_(1-x)Na_(x)Al_(x)F_(6):Mn)、K_(2)TiF_(6):Mn(KTF)などである。」 (6)「【0028】 Eu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体の具体例には、(Ca,Sr,Ba)AlSiN_(3):Eu、……固溶化した結晶を母体とすることから、ここではアルカリ土類ケイ窒化物蛍光体とみなしている。」 (7) 「【0061】 ……表1に、実施例および比較例で使用した各蛍光体の発光特性を示す。図5および図6には、KSNAFおよびSCASNの発光スペクトルをそれぞれ示す。SCASNの発光ピーク波長617nmは、KSNAFの最大発光ピーク波長631nmより14nm短波長側にあり、かつ、KSNAFが最大発光ピークの短波長側に有する比較的ブロードな発光バンドのピーク波長613nmよりも長波長側に位置している。 【0062】 【表1】 」 (8)図5及び図6は、以下のものである。 図5(Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体) 図6(Eu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体) 2 引用文献に記載された発明 (1)上記1(1)及び(2)の記載からして、 「狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」は、「Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体」であり、 「広帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」は、「Eu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体」であることが理解できる。 (2)また、上記1(3)の記載からして、「白色発光装置」は、具体的には、「電球、ダウンライト、ライン照明などの照明器具に用いることができる白色発光装置」であることが理解できる。 (3)上記(1)及び(2)からして、引用文献には、 「青色発光するLED素子と、 該青色発光するLED素子が発した光を波長変換して緑色光を放射する蛍光体及び該青色発光するLED素子が発した光を波長変換して赤色光を放射する蛍光体とを含有する樹脂組成物と、を備える白色光源装置を用いた照明器具であって、 該赤色光を放射する蛍光体が、 最大発光ピークが600nm以上660nm以下であり、赤色発光ピークの半値全幅が80nm以上である広帯域の発光スペクトルを有するEu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体と、 最大発光ピークが600nm以上660nm以下であり、赤色発光ピークの半値全幅が20nm以下である狭帯域の発光スペクトルを有するMn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体と、 を含む照明器具。」が記載されているものと認められる。 (4)上記1(4)の記載からして、 上記(1)の「青色発光するLED素子」は、 440?470nmに発光ピーク波長を有する青色LED素子であってもよいものと認められる。 (5)上記1(5)の記載からして、 上記(1)の「(狭帯域の)Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体」は、具体的には、 「K_(2)SiF_(6):Mn(略称:KSF)」(以下、単に、「K_(2)SiF_(6):Mn(KSF)」と表記する。)又は 「K_(2)Si_(1-x)Na_(x)Al_(x)F_(6):Mn(略称:KSNAF)」(以下、単に、「K_(2)Si_(1-x)Na_(x)Al_(x)F_(6):Mn(KSNAF)」と表記する。)であってもよいものと認められる。 (6)上記1(6)の記載からして、 上記(1)の「(広帯域の)Eu^(2+)付活アルカリ土類ケイ窒化物蛍光体」は、具体的には、「Sr_(x)Ca_(1-x)AlSiN_(3):Eu(略称:SCASN)」であってもよいものと認められる(以下、単に、「Sr_(x)Ca_(1-x)AlSiN_(3):Eu(SCASN)」と表記する。)。 (7)上記1(7)の記載、図5及び図6からして、以下のことが理解できる。 ア 「K_(2)SiF_(6):Mn(KSF)」及び「K_(2)Si_(1-x)Na_(x)Al_(x)F_(6):Mn(KSNAF)」の最大発光ピーク波長は「631nm」であること。 イ 「Sr_(x)Ca_(1-x)AlSiN_(3):Eu(SCASN)」の最大発光ピーク波長は「617nm」であること。 (8)上記(1)から(7)までを総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「440?470nmに発光ピーク波長を有する青色LED素子と、 前記青色LED素子が発した光を波長変換して緑色光を放射する蛍光体及び前記青色LED素子が発した光を波長変換して赤色光を放射する蛍光体とを含有する樹脂組成物と、を備える白色発光装置を用いた照明器具であって、 前記赤色光を放射する蛍光体が、 最大発光ピークが617nmであり、赤色発光ピークの半値全幅が80nm以上である広帯域の発光スペクトルを有するSr_(x)Ca_(1-x)AlSiN_(3):Eu(SCASN)と、 最大発光ピークが631nmであり、赤色発光ピークの半値全幅が20nm以下である狭帯域の発光スペクトルを有するK_(2)SiF_(6):Mn(KSF)とを含む、照明器具。」 第5 対比・判断 1 本願発明について (1)対比 ア 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)a 本願発明の「青色光源」及び「緑色光源」について、本願明細書には、以下の記載がある。 「【0018】 …よって、実施形態では、青色光源は、青色発光ダイオード(LED)を含む。…。 【0019】 青色光源として、青色ルミネセント材料を組み合わせて、1つまたは2つ以上の(a)UV LED、および(b)青色LEDを含んでもよく、緑色光源は、1つまたは2つ以上の、(UV(LED)光の少なくとも一部を緑色光に変換するように構成された)緑色ルミネセント材料を組み合わせたUV LED、(青色(LED)光の少なくとも一部を緑色光に変換するように構成された)緑色ルミネセント材料を組み合わせた青色LED、および緑色LEDを含んでもよい。」 b 上記記載からして、本願発明の「青色光源」は、青色発光ダイオード(LED)を含み、同様に、「緑色光源」は、「緑色ルミネセント材料を組み合わせた青色LED」を含むものと解される。 c そうすると、引用発明の「440?470nmに発光ピーク波長を有する青色LED素子」は、本願発明の「青色光源」に相当する。 d また、引用発明の「樹脂組成物」は、「青色LED素子が発した光を波長変換して緑色光を放射する蛍光体」を含むことから、引用発明は、本願発明の「緑色光源」を備えているといえる。 (イ)引用発明の「Sr_(x)Ca_(1-x)AlSiN_(3):Eu(SCASN)」は、本願発明の「『2価のユーロピウム含有硫化物、2価のユーロピウム含有窒化物、および2価のユーロピウム含有酸窒化物からなる群から選定され』る『第1赤色ルミネセント材料』」に相当する。 同様に、引用発明の「K_(2)SiF_(6):Mn(KSF)」は、本願発明の「『4価のマンガンでドープされたM_(2)AX_(6)からなる群から選定され、ここで、Mは1価のカチオンであり、Li、Na、K、Rb、Cs、NH_(4)からなる群から選定され、AはSi、Ti、Ge、Sn、Zrからなる群から選定された4価のカチオンを有し、Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選定された1価のアニオンを有するが、少なくともFを有する』『第2赤色ルミネセント材料』」に相当する。 また、引用発明の「照明器具」は、本願発明の「照明ユニット」に、相当する。 (ウ)a 本願発明の「赤色第1光源」及び「赤色第2光源」について、本願明細書には、図とともに、以下の記載がある。 「【0077】 ここで、この実施形態では、青色光源110は、青色LEDを含む。参照記号111で示す、この青色光源110の上に、例えば、LEDダイ(die)の最上部の樹脂中などに、光コンバータ1300を配置してもよい。」 「【0085】 図1cは、光コンバータ1300が、光源107のLEDダイ111上に配置された態様を図示する。この光源107は、UV LED、または描かれるとおり、青色光源110、すなわち、青色LEDであってもよい。コンバータ1300は、かかる実施形態では、広帯域赤色ルミネセント材料1311を含み;それにより、赤色第1光源1310(この参照記号が、赤色光源である、源を指すことに留意しなければならない)が提供される。さらに、コンバータ1300は、狭帯域赤色ルミネセント材料1321を含む。このようにして、赤色第2光源1320が提供され;(赤色光の)この第2光源1320(すなわち、赤色第2光源1320)は、励起される場合に、狭帯域赤色光32を提供する、狭帯域ルミネセント材料1321を含む。ここで、コンバータ1300はまた、任意に、励起される場合に緑色光21を提供する(およびまた、それにより、緑色光源120である)、緑色ルミネセント材料1200を含む。」 「 」 b 上記記載及び図1(c)からして、 本願発明における「赤色第1光源」及び「赤色第2光源」とは、「『広帯域赤色ルミネセント材料』と『狭帯域赤色ルミネセント材料』を包含する樹脂(コンバータ)」により提供されるものであってもよいものと認められる。 c そうすると、引用発明の「樹脂組成物」には、二種類の特性の異なる赤色蛍光体が含有されているから、「赤色第1光源」及び「赤色第2光源」を提供するものであるといえる。 してみると、本願発明と引用発明とは、 「赤色第1光源は、中心発光波長≧590nmを有し、≧70nmの半値全幅(FWHM)を有する、広帯域スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成され、 赤色第2光源は、中心発光波長≧610nmを有する1つまたは2つ以上の赤色輝線を含み、≦50nmの半値全幅(FWHM)を有する1つまたは2つ以上の赤色輝線を有する、スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成され」ている点で一致する。 イ 以上のことから、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。 <一致点> 「青色光源、緑色光源、広帯域スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成された第1赤色ルミネセント材料を含む赤色第1光源、および1つまたは2つ以上の赤色輝線を含むスペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成された第2赤色ルミネセント材料を含む赤色第2光源を含む、照明ユニットであって、 前記赤色第1光源は、中心発光波長≧590nmを有し、≧70nmの半値全幅(FWHM)を有する、広帯域スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成され、 前記第1赤色ルミネセント材料は、2価のユーロピウム含有硫化物、2価のユーロピウム含有窒化物、および2価のユーロピウム含有酸窒化物からなる群から選定され、 前記赤色第2光源は、中心発光波長≧610nmを有する1つまたは2つ以上の赤色輝線を含み、≦50nmの半値全幅(FWHM)を有する1つまたは2つ以上の赤色輝線を有する、スペクトル光分布を有する赤色光を提供するように構成され、 前記第2赤色ルミネセント材料は、4価のマンガンでドープされたM_(2)AX_(6)からなる群から選定され、ここで、Mは1価のカチオンであり、Li、Na、K、Rb、Cs、NH_(4)からなる群から選定され、AはSi、Ti、Ge、Sn、Zrからなる群から選定された4価のカチオンを有し、Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選定された1価のアニオンを有するが、少なくともFを有する、照明ユニット。」 ウ 一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明は、「照明ユニットを含むLCDディスプレイデバイス」であって、「前記照明ユニットがバックライトユニットとして構成され」ているのに対して、 引用発明は、そのようなものではない点。 (2)相違点についての判断 ア 本願明細書には、本願発明の「照明ユニット」について、以下の記載がある。 (ア)「【課題を解決するための手段】 【0006】 よって、広範な色域を提供し得る代替的蛍光体の組み合わせを使用するように構成された、代替的照明ユニットを提供することが、本発明の側面である。また、バックライトデバイスとして構成された、かかる照明ユニットを含む(および1つまたは2つ以上の色フィルタを含む)、代替的LEDディスプレイデバイスを提供することが、本発明の側面である。さらに、照明ユニットの実施形態では適用され得る蛍光体の組み合わせを提供することが、本発明の側面である。 【0007】 …照明ユニットには、…を含む蛍光体材料混合物が含まれ、これらは両方とも青色LEDにより励起される。緑色LEDとの組み合わせると、NTSC(全国テレビジョン方式委員会)色域の80%またはそれより高いものを、赤色線発光Mn活性化フッ化物を広範発光(Ba,Sr,Ca,Mg)AlSiN_(3):Eu蛍光体に、特に、(Sr,Ca,Mg)AlSiN_(3):Eu蛍光体に添加することにより達成することができる。 【0008】 … 【0011】 本発明の照明ユニットは、一般照明に適用される照明ユニットであり得るが、また、例えば、バックライトなどに適用される照明ユニットであってもよい。非限定的な数の用途を、以下に示す。用語「照明ユニット」はまた、複数の照明ユニットを指す。」 「【0067】 以下に、本発明の多数の用途を示す: - オフィス照明システム - 家庭用アプリケーションシステム - 店舗照明システム、 - 家庭照明システム、 - アクセント照明システム、 - スポット照明システム、 - シアター照明システム、 - 光ファイバー応用システム、 - 投影システム、 【0068】 - 自己点灯(self-lit)ディスプレイシステム、 - ピクセル化ディスプレイシステム、 - セグメント化ディスプレイシステム、 - 警告サインシステム、 - 医療照明アプリケーションシステム、 - インジケータ標示システム、および - 装飾照明システム - ポータブルシステム - 車載アプリケーション - グリーンハウス照明システム、 である。」 (イ)上記記載からして、 本願発明における「照明ユニット」は、広範な色域を提供し得る光源であって、オフィス照明等の一般照明以外に、液晶表示装置のバックライト光源などに適用することができるものと解される。 イ ところで、当審拒絶理由通知において、「周知技術」として以下の点を指摘した。 「LEDと複数色の蛍光体の組み合わせからなる白色発光装置を液晶のバックライトに用いる技術。」 必要ならば、以下の文献を参照。 国際公開第2012/114640号(【0114】) 国際公開第2012/077448号(【0088】) 国際公開第2011/102339号(【0026】) 特開2010-157608号公報(【0008】及び【0009】) 特表2009-528429号公報(【0011】) 特開2009-59896号公報(【0002】及び【0003】) ちなみに、上記「特開2010-157608号公報」の【0008】には「…なお、MXFの発光スペクトルが赤色領域に有するピークは半値幅が極めて小さいので、この三原色光を同時に放射する発光装置は色再現範囲の広いことが要求されるカラー液晶表示装置のバックライト用途に特に適している。」と記載されている。 ウ 引用発明の「照明器具」は、「青色LED素子」と「『緑色光を放射する蛍光体』及び『赤色光を放射する蛍光体』を含有する樹脂組成物」との組合わせを利用したのであって、さらに、該「赤色光を放射する蛍光体」の一つに「狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」を採用したものであるから、「三原色光を同時に放射する発光装置」であることは、当業者にとって明らかである。 エ そうすると、引用発明の「照明器具」を、例えば、液晶表示装置のバックライト光源として利用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことであり、その適用を妨げる特段の事情も見あたらない。 オ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。 カ 効果 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。 (3)平成31年3月5日提出の意見書について 請求人は、意見書において、以下のように主張するので、この点について検討する。 「一方、引用文献1では、段落「0035」に記載のように、『波長変換層13のベース材料は…赤色蛍光体と、最大発光ピークが600n…赤色蛍光体とを含有して、樹脂組成物を構成』します。 しかしながら、この構成の目的は、『波長変換層13中に添加する狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体の量を大幅に削減する』ため(段落[0035])です。すなわち、引用文献1には、LCDディスプレイデバイスのバックライトユニットとして、好適な色空間効率を提供するために、『広帯域スペクトル光分布…第1赤色ルミネセント材料を含む赤色第1光源』と、『1つまたは2つ以上の赤色輝線を含むスペクトル光分布…第2赤色ルミネセント材料を含む赤色第2光源』とを、組み合わせて使用するという技術思想は、全く想定されていません。」(第4頁後段ないし第5頁上段) ア 引用文献1に記載された「狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」は、具体的には、KSF又はKSNAF等の「Mn^(4+)付活フッ化物錯体蛍光体」であって、【0006】の記載からして、高価な蛍光体であることが理解できる。 イ そして、【0023】等の記載を見れば、引用文献1に記載された発明は、「広帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」を併用することで、「狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」のみを用いた場合と比べて発光効率を殆ど低下させることなく、「(高価な)狭帯域の発光スペクトルを有する赤色蛍光体」の量を大幅に削減することができるものであることが理解できる。 ウ そうすると、引用文献1には、「広帯域スペクトル光分布…第1赤色ルミネセント材料を含む赤色第1光源」と「1つまたは2つ以上の赤色輝線を含むスペクトル光分布…第2赤色ルミネセント材料を含む赤色第2光源」とを組み合わせて使用することで、製造コストを削減し得る技術思想が開示されているといえる。 エ 一方、引用文献1には、引用発明の「照明器具」を、「LCDディスプレイデバイスのバックライトユニット」として利用することは明記されていないものの、上記で検討したとおり、当業者が周知技術に基いて容易になし得たことである。 オ よって、請求人の上記主張は、上記「(2)」の判断を左右するものではない。 (4)審判請求書について 請求人は、審判請求書において、以下のように主張するので、この点について検討する。 「引用文献1は、…しかしながら、同文献には、NTSC定義との重複が最大であるFOS色域を有する、LCDバックライトユニットを構築することを目的とすること、白色発光装置をLCDディスプレイデバイスのバックライトユニットとして用いること、および白色発光装置をバックライトユニットとして用いたLCDディスプレイデバイスにより、著しく改善された色域を提供することができるという格別の効果についても記載も示唆もされていません。」(第3頁中段) ※当審注:上記「引用文献1」は、審決における引用文献である。 ア しかしながら、引用発明の「照明器具」は、「青色LED素子」と「『緑色光を放射する蛍光体』及び『赤色光を放射する蛍光体』を含有する樹脂組成物」との組合わせを利用したものであって、「三原色光を同時に放射する発光装置」であるといえるから、液晶表示装置のバックライト光源として採用した際に、カラーフィルター(RGB)の透過波長帯域と適合し、色再現性が向上することは、予測し得ることである。 イ よって、請求人の上記主張は、上記「(2)」の判断を左右するものではない。 2 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-04-08 |
結審通知日 | 2019-04-16 |
審決日 | 2019-05-08 |
出願番号 | 特願2015-540237(P2015-540237) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
西村 直史 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 森 竜介 |
発明の名称 | 色域を有するLED系デバイス |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |