• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09B
管理番号 1355529
審判番号 不服2017-14071  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-22 
確定日 2019-09-24 
事件の表示 特願2016- 56636「金属アゾ顔料」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-180100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成28年3月22日(パリ条約による優先権主張2015年3月23日(EP)欧州特許庁)の出願であって、平成29年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年5月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月17日付けで拒絶査定がされ、同年9月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同年11月15日に手続補正書(方式)が提出され、平成30年5月11日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年11月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成30年11月12日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項によって特定された以下のとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
金属アゾ顔料において、
a)少なくとも金属イオンMeにおいて異なるか、またはそれらの互変異性の形態にある、式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
【化1】

[式中、
R^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立して、OHであり、
R^(3)およびR^(4)はそれぞれ独立して、=Oであり、かつ
Meは、Ni^(2+)、Zn^(2+)、Cu^(2+)、Al^(3+)_(2/3)、Fe^(2+)、Fe^(3+)_(2/3)、Co^(2+)、およびCo^(3+)_(2/3)の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において前記式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu^(2+)およびNi^(2+)の群からの金属イオンの量が95?100モル%であり、Zn^(2+)、Al^(3+)_(2/3)、Fe^(2+)、Fe^(3+)_(2/3)、Co^(2+)、およびCo^(3+)_(2/3)の群から選択される金属イオンの量が0?5モル%であり、
かつ、前記式(I)の化合物の総計におけるCu^(2+)対Ni^(2+)の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:19)までである]
および
b)式(II)の少なくとも1種の化合物
【化2】

[式中、
R^(6)は、水素である]
のアダクトを含むことを特徴とし、
50?200m^(2)/gの比表面積を有することを特徴とする、金属アゾ顔料。」

第3 当審が通知した拒絶理由の概要
平成30年5月11日付けで当審が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、以下の理由5を含むものである。
[理由5]この出願の請求項1、2、4?7、9に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない

刊行物1:特開2005-325350号公報(原審における引用文献1)

なお、本願発明は、当審拒絶理由の対象となった平成29年5月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4に係る発明に対応するものである。

第4 [理由5]についての当審の判断
当審は、当審拒絶理由のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 刊行物
刊行物1:特開2005-325350号公報(原審における引用文献1)

2 刊行物の記載事項
(1a)「【請求項1】顔料配合物において、
a)互変異性構造の形で、式(I)

[式中・・・(注:部分構造及び置換基の説明は省略する。)・・・]に相当するアゾ化合物の、少なくとも1種の金属錯体、およびこの金属錯体は少なくとも1種の他の化合物を挿入する、
b)場合により、その鉄含量が成分a)に対して、30ppmより少量・・・である、成分a)とは異なる鉄化合物、
c)金属が成分a)およびb)の金属化合物の金属とは異なり、その金属含量が成分a)に対して少なくとも10ppmであり、この金属が有利にLi、NaおよびKのようなアルカリ金属、Mg、CaおよびBaのようなアルカリ土類金属、La、Ce、PrおよびNdのようなランタノイド、および同様にAl、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Cu、NiおよびZnの群から選択されている、少なくとも1種の金属化合物、
を含有する顔料配合物。
・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項5】式(I)のアゾ化合物がその遊離酸の形で、式(II)または(III)

[式中、R'_(5) は-OHまたは-NH_(2) を表し、
R'_(1)、R''_(1)、R'_(2) およびR''_(2) はそれぞれ水素を表し、
M'_(1) およびM''_(1) は相互に独立して水素、-OH、-NH_(2)、-NHCN、アリールアミノまたはアシルアミノを表す]の式またはその互変異性式の1つに相当する、請求項1から4までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項6】式(I)のアゾ化合物が式(V)

またはその互変異性形に相応する、請求項1から5までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項7】成分a)の金属錯体が、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ce、Pr、Ndの群から、特にNa、K、Ca、Ba、Al、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ceの群から選択された金属を有する式(I)のアゾ化合物のモノ-、ジ-、トリ-およびテトラアニオンに相当する、請求項1から6までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項8】成分a)の金属錯体の金属がNiである、請求項1から7までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項9】成分a)の金属錯体が環式または非環式有機化合物、特にメラミンを挿入する請求項1から8までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項10】成分c)の金属化合物の金属が、Li、Na、K、Ca、Ba、Al、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ceの群、特にNa、K、Co、Cuの群からの少なくとも1種の金属、有利にCoまたはCuである、請求項1から9までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項11】更に少なくとも1種の分散剤を含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項12】C.I.顔料グリーン36を含有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項13】更に成分d)として、テルペン、テルペノイド、脂肪酸エステルの群および水中に20℃で1g/l未満、特に0.1g/l未満の溶解性を有する、ホモポリマーまたはコポリマー、例えばランダムまたはブロック-コポリマーの群から選択された、少なくとも1種の有機化合物を含有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の顔料配合物。
【請求項14】請求項1から13までのいずれか1項記載の顔料配合物を製造する方法において、式(I)のアゾ化合物を、金属塩a)と、場合によりそのFe-含量が成分a)に対して30ppm未満である鉄塩b)の存在で、かつその金属含量が成分a)に対して少なくとも10ppmであるa)およびb)とは異なる金属塩c)の存在で、錯形成し、かつ挿入されるべき化合物を錯形成の前、間または後で添加することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の顔料配合物の製法。
【請求項15】請求項1から13までのいずれか1項記載の顔料配合物を製造する方法において、その他の化合物を挿入して含有する式(I)のアゾ化合物の金属錯体(成分a))を場合によりそのFe-含量が成分a)に対して30ppm未満であるFe-化合物(成分b))と、およびその金属含量が成分a)に対して10ppm未満であり、その金属が成分a)およびb)の金属錯体の金属とは異なる少なくとも1種の金属化合物と、および場合によりその他の添加物と、混合することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の顔料配合物の製法。
【請求項16】インキジェットインキ、液晶ディスプレイのためのカラーフィルター、合成、半合成または天然高分子物質、特にポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンの原液着色のための、並びに天然、再生または合成繊維、例えばセルロース-、ポリエステル-、ポリカーボネート-、ポリアクリロニトリル-またはポリアミド繊維のスピン染色のための、インキジェット可能でない印刷インキ、ディステンパー着色剤またはバインダー着色剤を製造するための、並びに織物および紙のプリントのための、請求項1から13までのいずれか1項記載の顔料配合物の使用。
【請求項17】請求項1から13までのいずれか1項記載の少なくとも1種の顔料配合物を含有するカラーフィルター。
【請求項18】液晶ディスプレイのためのカラーフィルターを製造するための請求項1から13までのいずれか1項記載のまたは請求項17記載の顔料配合物の使用。
【請求項19】少なくとも1種の光硬化性モノマー、少なくとも1種の光開始剤、および請求項1から13までのいずれか1項記載の少なくとも1種の顔料配合物を含有するフォトレジスト。
【請求項20】液晶ディスプレイのためのカラーフィルターを製造するための方法において、請求項1から13までのいずれか1項記載の少なくとも1種の顔料配合物を、場合によりバインダー樹脂および/または分散剤の添加下に有機溶剤中で粉砕し、引き続き光硬化性モノマー、光反応開始剤、および場合によりその他のバインダーおよび/または溶剤の添加下に処理してフォトレジストを形成し、続いてこのフォトレジストを好適なコーティング法、例えばローラー、スプレー、スピン、浸漬またはエアナイフコーティングにより、好適な基材、一般にガラスプレート上に適用し、フォトマスクを用いて照射し、引き続き硬化し、現像して完成した有色カラーフィルターを形成することを特徴とする、液晶ディスプレイのためのカラーフィルターの製法。
【請求項21】請求項17記載の少なくとも1種のカラーフィルターを含有する、液晶ディスプレイ。
【請求項22】写真平板法、オフセット印刷または機械的、ピエゾ機械的または熱的インキジェット印刷によりカラーフィルターを製造するための印刷インキ中への、請求項1から13までのいずれか1項記載の顔料配合物の使用。
【請求項23】印刷インキが付加的に水性有機賦形媒体を含有する、請求項22記載の使用。」

(1b)「【技術分野】
【0001】本発明は金属錯体を含有する顔料配合物、その製法、その使用、特にカラーフィルターを製造するための使用および同様にカラーフィルター自体に関する。」

(1c)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】帯黄緑色の着色成分がCI顔料グリーン36および黄色金属アゾ顔料からなるのが有利である。他の色相との組合せ可能性を改善するために、できるだけ彩度の高い、透明な帯黄緑色の着色成分が有利である。このためには黄色顔料ができるだけ彩度が高く、透明でなければならない。例えば単独の成分として緑が強すぎる顔料グリーン36とより良好に混合可能であるためには、この黄色顔料は同時に自体緑色を帯びていてはならない。この黄色顔料の色相が“赤色”の方向に僅かにシフトしているか、もしくは彩度が上昇している場合に、この黄色顔料の、例えば顔料グリーン36のための色直し成分としての劇的な改善を意味する。更に、その都度の三元色カラーフィルター(赤、緑、青)を合わせる際に完全な光吸収が生じることが最適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】黄色成分として次の顔料配合物を使用する場合に、前記の緑の色相の特性を明らかに改善することができることが見いだされた。
【0009】従って、本発明は、
a)互変異性構造の形で、式(I)
【0010】
【化1】

[・・・(注:部分構造及び置換基の説明は省略する。)・・・]に相当するアゾ化合物の、少なくとも1種の金属錯体、およびこの金属錯体は少なくとも1種の他の化合物を挿入する、
b)場合により、その鉄含量が成分a)に対して、30ppmより少量・・・である、成分a)とは異なる鉄化合物、
c)金属が成分a)およびb)の金属化合物の金属とは異なり、その金属含量が成分a)に対して少なくとも10ppmであり、この金属が有利にLi、NaおよびKのようなアルカリ金属、Mg、CaおよびBaのようなアルカリ土類金属、La、Ce、PrおよびNdのようなランタノイド、および同様にAl、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Cu、NiおよびZnの群から選択されている、少なくとも1種の金属化合物、
を含有する顔料配合物に関する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0019】遊離の酸の形で式(V)
【0020】

の互変異性構造の1つに相当する式(I)のアゾ化合物の有機金属錯体が特に優れている。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0027】式(I)?(V)の金属塩としても理解することのできる金属錯体は、有利にLi、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ce、Pr、Nd、より有利にNa、K、Ca、Ba、Al、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ce、更に有利にNiの金属を有するモノ-、ジ-、トリ-およびテトラアニオンの塩および錯体を包含する。
【0028】一般式(I)の化合物は、有利に特に1:1のアゾ-金属錯体である。非常に有利であるのは、式(VI)
【0029】

のアゾバルビツール酸-ニッケル1:1錯体またはその錯体の互変異性形の1つであり、これは少なくとも他の化合物1種を包含する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0035】挿入される化合物として特に有利に、メラミンまたはメラミン誘導体、特に式(VII)
【0036】

[式中、R_(6a )は水素またはC_(1)?C_(4)-アルキルを表し、これは場合によりOH-基で置換されている]のような化合物を使用し、特に有利には前記式中のR_(6a) が水素である化合物を使用する。
【0037】金属化合物の結晶格子中に挿入されることのできる物質の量は、ホスト化合物に対して、一般に5?200質量%、特に5?120質量%である。有利には10?100質量%挿入される。ここでは、物質の量は好適な溶剤により洗出不可能であり、元素分析から明らかになる量である。勿論、物質の前記量より多量かまたは少量を使用することもでき、その際場合により過剰を洗出することを回避することができる。10?150質量%の量が有利である。」

(1d)「【0038】本発明による配合物中に含有される成分a)の顔料は有利に70?150m^(2)/g、特に有利に85?140m^(2)/g、殊に有利に100?130m^(2)/gの表面積(m^(2)/g)を有する。この表面積はDIN66131により測定する:ブルナウアー・エメット・テラー(B.E.T)によるガス吸着による固体の比表面積の測定。」

(1e)「【0054】更に、本発明は、式(I)のアゾ化合物を、金属塩a)(成分a)のために)と、場合によりFe-化合物の存在で、かつそれぞれこれとは異なる金属塩c)(成分c)のため)の存在で、錯形成し、かつ生じた金属錯体を挿入されるべき化合物と反応させる本発明による顔料配合物を製造する方法に関し、この製法は金属塩c)の金属の含量が、金属錯体および挿入した化合物の合計に対して少なくとも10ppmであり、かつ鉄含量が成分a)に対して30ppm未満であることを特徴とする。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0064】このようにして得られた成分a)、c)および場合によりb)の金属化合物の混合物、以下に省略して“顔料”という、を次いでその水性懸濁液の濾過により水性プレスケーキとして単離することができる。このプレスケーキを、例えば熱水で洗浄し、通常の乾燥法により乾燥することができる。
【0065】乾燥法としては、適当な水性スラリーの例えばパドル乾燥または噴霧乾燥を挙げることができる。
【0066】引き続き、この顔料を後粉砕する。」

(1f)「【0072】例えば、印刷インキ、ディステンパー着色剤またはバインダー着色剤の製造のための、合成、半合成または天然高分子物質、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンの原液着色のための、全ての種類の塗料の顔料着色のために好適である。これは天然、再生または合成繊維、例えばセルロース-、ポリエステル-、ポリカーボネート-、ポリアクリロニトリル-またはポリアミド繊維のスピン染色のためにも、並びに織物および紙の印刷のためにも使用することができる。この顔料は、紙着色のために、織物の顔料印刷のために、ラミネート印刷のために、またはビスコースのスピン染色のために有用であるエマルジョンおよびペイントカラーの微細で、安定な水性顔料を、非イオン、アニオンまたはカチオン界面活性剤の存在で粉砕または混練することにより提供する。
【0073】この顔料はインキジェット適用のためにも液晶ディスプレイのためのカラーフィルターのためにも好適である。
【0074】成分a)、c)および場合によりb)および
d)テルペン、テルペノイド、脂肪酸、脂肪酸エステルの群および20℃および中性のpHで、水中に1g/l未満、特に0.1g/l未満の溶解性を有するホモポリマーまたはコポリマー、例えばランダムまたはブロック-コポリマーの群から選択された、少なくとも1種の有機化合物
を含有する本発明による顔料配合物が特に好適である。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0082】場合により、本発明による顔料配合物は付加的に界面活性剤(e)を含有する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0094】勿論、本発明による配合物はその他の添加物を含有していてよい。こうして、例えば粘度を低下させるか、または固体含量を増加させる添加物を、水性懸濁液の製造の経過において、配合物に対して10質量%までの量で添加することができる。
【0095】その他の添加物は例えば無機および有機塩基並びに顔料配合物に常用の添加物である。」

(1g)「【0101】前記の顔料の本発明による使用もしくは本発明による顔料配合物の液晶ディスプレイのためのカラーフィルターの製造のための使用を、例として以下にフォトレジスト法による顔料分散法を用いて記載する。
【0102】カラーフィルターを製造するための本発明による顔料配合物の本発明による使用は、例えば“顔料”または顔料配合物、特に固体顔料配合物を、場合によりバインダー樹脂および有機溶剤と、場合により分散剤の添加下に、均質にしかつ引き続き連続的にまたは非連続的に、
99.5%<1000nm、有利に95%<500nmおよび特に90%<200nmの数(電子顕微鏡により測定)の粒度に湿式粉砕することを特徴とする。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0114】その他の顔料:
前記意味における“顔料”の使用は有利に、これを単独でまたは“他の顔料”との混合物で、カラーフィルターもしくはカラーフィルターのための顔料配合物または調合物に使用することを特徴とする。
【0115】“他の顔料”とは式(I)のアゾ化合物の他の金属塩またはこれをベースとする顔料配合物であると理解することも、他の有機顔料であると理解することもできる。
【0116】他の場合により一緒に使用する顔料の選択に関して、本発明により全く制限はない。無機顔料であっても有機顔料であってもよい。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0120】本発明による顔料配合物並びに調合物は前記意味の“顔料”およびC.I.顔料グリーン36を“顔料”20?80%対C.I.顔料グリーン36 80?20%、有利には40?60%対60?40%の割合で含有する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0127】カラーフィルターのための顔料配合物の本発明による使用の際に使用する有機溶剤は、例えば、ケトン、アルキレングリコールエーテル、アルコールおよび芳香族化合物である。」

(1h)「【0136】本発明は、有利に
A)前記の意味において少なくとも1種の“顔料”、特に他の顔料、有利にC.I.グリーン36との混合物で、またはこれをベースとする本発明による顔料配合物、
B1)少なくとも1種の光硬化性モノマー、
B2)少なくとも1種の光開始剤、
C1)場合により有機溶剤、
D)場合により分散剤、
E)場合によりバインダー樹脂
並びに場合によりその他の添加物
を含有するフォトレジストにも関する。」

(1i)「【0138】例1:ドーピングなし
ジアゾバルビツール酸1molを90℃の熱水5l中でバルビツール酸1molとKOH-滴定下にpH5で反応させる。メラミン2molを添加する。pHを塩酸で5に調節する。40%濃度の塩化ニッケル溶液1molを滴加する。90℃で1時間の経過後KOHでpH5に調節する。その後塩酸でpH1.5にして、3時間、98℃で熱調節する。その後、KOHでpH5に調節する。引き続き、顔料を吸引濾過で単離し、洗浄し、80℃で真空乾燥箱中で乾燥し、常用の実験室ミルで約2分間粉砕する。
【0139】次の本発明による例において、塩化ニッケル溶液を塩化ニッケルと塩化銅からなる混合物溶液に代える。
例1a:Ni 1molをNi 0.998mol+Cu 0.002molにより置換する
例1b:Ni 1molをNi 0.995mol+Cu 0.005molにより置換する
例1c:Ni 1molをNi 0.99mol+Cu 0.01molにより置換する
例1d:Ni 1molをNi 0.98mol+Cu 0.02molにより置換する
例1e:Ni 1molをNi 0.96mol+Cu 0.04molにより置換する
例1f:Ni 1molをNi 0.92mol+Cu 0.08molにより置換する
例1g:Ni 1molをNi 0.84mol+Cu 0.16molにより置換する。
【0140】その都度、試験すべき顔料4gを市販の白色ペースト396g、例えばNordsjoe(Akzo Nobel)からのReady Nova 70、および直径2mmのガラスビーズ400mlとSuessmeierビーズミル中で冷却下に粉砕する。このペーストをドローダウン紙に線巻きブレード(25μm)で塗布し、Gardnerからの色度計Color Guide 450を用いて比色分析的に測定する。
【0141】色特性の測定のためには、バインダー系が好適である。この結果は色相および輝度に関するLCD-適用のための色特性に非常に良好に転用することができる。
【0142】色測定の原理は、例えばBayer Farben Revue,Sonderheft 3/2D,Farbmessung 1986中に記載されている。
【0143】定義において、ゼロテストは色の濃さ100%を有する。ゼロテストのDCおよびDHは定義において0である。
【0144】【表1】

【0145】DCは輝度に関する尺度であり比色分析により測定される。プラスの値が所望され、比較値より高い輝度を表す。
【0146】DHは色相のシフトの尺度であり、比色分析により測定されている。0より小さい値は黄色成分の所望の赤色方向へのシフトを示す。」

3 刊行物に記載された発明
刊行物1は、成分a)?c)を含有する顔料配合物、顔料配合物の製法、及び顔料配合物の用途に関する特許文献であり(摘示(1a)?(1i))、実施例の例1には、特許請求の範囲に記載された顔料配合物のうち成分a)に対応した具体的製造例の手順として、塩化ニッケル溶液を用いたドーピングなしの顔料の製造方法が記載され(摘示(1i)【0138】)、さらに、別の具体例である「例1f」又は「例1g」として、上記塩化ニッケル溶液を用いるものに代えて塩化ニッケルと塩化銅からなる混合物溶液(ニッケル(Ni)と銅(Cu)を、それぞれ0.92mol+0.08mol、0.84mol+0.16mol含む。)を用いて製造した顔料の具体例が記載されている(摘示(1i)【0139】)。
また、摘示(1i)【0140】?【0146】には、試験すべき顔料4gを白色ペースト396gに混合してペーストの試料を作りドローダウン紙に塗布して色相及び輝度を比色分析的に測定したことが記載され、その結果が表1に「バインダー色の濃さ」、「バインダーDC」(DCは輝度に関する尺度)及び「バインダーDH」(DHは色相のシフトの尺度)の項目で記載されている(摘示(1i)【0144】)。
そして、表1には、「BET^(*)」「^(*)m^(2)/gで記載、ドイツ標準規格DIN66131により測定」の項目の測定結果も記載されている(摘示(1i)【0144】)。

したがって、刊行物1には、具体的な製法を伴った、上記実施例の例1f及び例1gに係る顔料として、
「ジアゾバルビツール酸1molを90℃の熱水5l中でバルビツール酸1molとKOH-滴定下にpH5で反応させ、メラミン2molを添加し、pHを塩酸で5に調節し、40%濃度の塩化ニッケルと塩化銅からなる混合物溶液(Ni 0.92molとCu 0.08molを含む)を滴加し、90℃で1時間の経過後KOHでpH5に調節し、その後塩酸でpH1.5にして、3時間、98℃で熱調節し、その後、KOHでpH5に調節し、引き続き、顔料を吸引濾過で単離し、洗浄し、80℃で真空乾燥箱中で乾燥し、常用の実験室ミルで約2分間粉砕して得られた、BETが113m^(2)/gである顔料」の発明(以下「引用発明1」という。)及び
「ジアゾバルビツール酸1molを90℃の熱水5l中でバルビツール酸1molとKOH-滴定下にpH5で反応させ、メラミン2molを添加し、pHを塩酸で5に調節し、40%濃度の塩化ニッケルと塩化銅からなる混合物溶液(Ni 0.84molとCu 0.16molを含む)を滴加し、90℃で1時間の経過後KOHでpH5に調節し、その後塩酸でpH1.5にして、3時間、98℃で熱調節し、その後、KOHでpH5に調節し、引き続き、顔料を吸引濾過で単離し、洗浄し、80℃で真空乾燥箱中で乾燥し、常用の実験室ミルで約2分間粉砕して得られた、BETが114m^(2)/gである顔料」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているということができる。

4 本願発明と引用発明1及び2との対比・判断
以下では、本願発明の金属アゾ化合物中の金属イオンMeについて、本願発明の式(I)の化合物1モルを基準にCu^(2+)およびNi^(2+)の金属イオンの量が100モル%の場合について検討する。

(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 対比
引用発明1の顔料は、刊行物1の特許請求の範囲の請求項1に記載されたa)成分のアゾ化合物である「互変異性構造の形で、式(I)

[式中・・・(注:部分構造及び置換基の説明は省略する。)・・・]に相当するアゾ化合物の、金属錯体及び挿入された他の化合物の具体例であると考えられ、その金属錯体の方は、製造方法により特定されているだけであり化学構造式により特定されていないものの、式(I)のアゾ化合物の金属錯体化合物であるのだから、本願発明のa)成分である式(I)で表される金属アゾ化合物との対比において、金属アゾ化合物との限りにおいて一致している。
引用発明1の「メラミン」は、本願発明のb)成分に相当する。
引用発明1のアゾ化合物は、上で述べたとおり式(I)のアゾ化合物の金属錯体化合物であり、このアゾ化合物を成分として含む顔料は、本願明細書の段落【0001】の「本発明は、・・・金属アゾ化合物のアダクトをベースとする・・・金属アゾ顔料」との記載からみて、本願発明の「金属アゾ顔料」に相当する。
また、引用発明1の「BETが113m^(2)/gである」は、刊行物1の段落【0038】を参酌して明らかなように、BETは比表面積を表すものであるから、引用発明1のBETの値は、本願発明の比表面積の値に少なくとも該当する限りで両者は一致する。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「金属アゾ顔料において、金属アゾ化合物及びb)式(II)の少なくとも1種の化合物

[式中、R^(6)は、水素である]を含む、測定された比表面積が50?200m^(2)/gの比表面積を有する金属アゾ顔料」である限りで一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点1)
金属アゾ化合物が、本願発明では、a)金属アゾ化合物として式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物

[式中、
R^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立して、OHであり、
R^(3)およびR^(4)はそれぞれ独立して、=Oであり、かつ
Meは、Ni^(2+)、Zn^(2+)、Cu^(2+)、Al^(3+)_(2/3)、Fe^(2+)、Fe^(3+)_(2/3)、Co^(2+)、およびCo^(3+)_(2/3)の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において前記式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu^(2+)およびNi^(2+)の群からの金属イオンの量が95?100モル%であり、Zn^(2+)、Al^(3+)_(2/3)、Fe^(2+)、Fe^(3+)_(2/3)、Co^(2+)、およびCo^(3+)_(2/3)の群から選択される金属イオンの量が0?5モル%であり、
かつ、前記式(I)の化合物の総計におけるCu^(2+)対Ni^(2+)の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:19)までである]であると特定されているのに対して、引用発明1では、「ジアゾバルビツール酸1molを90℃の熱水5l中でバルビツール酸1molとKOH-滴定下にpH5で反応させ、メラミン2molを添加し、pHを塩酸で5に調節し、40%濃度の塩化ニッケルと塩化銅からなる混合溶液(Ni 0.92molとCu 0.08molを含む)を滴加し、90℃で1時間の経過後KOHでpH5に調節し、その後塩酸でpH1.5にして、3時間、98℃で熱調節し、その後、KOHでpH5に調節し、引き続き、顔料を吸引濾過で単離し、洗浄し、80℃で真空乾燥箱中で乾燥し、常用の実験室ミルで約2分間粉砕して得られた顔料」と製造方法によって特定されているだけであって、化学構造式が明示されていない点

(相違点2)
本願発明では、50?200m^(2)/gの比表面積を有する金属アゾ顔料と特定しているのに対して、引用発明1では、得られた金属アゾ顔料の比表面積の測定値が113m^(2)/gである点

(相違点3)
金属アゾ顔料が、本願発明では、成分a)の式(I)の金属アゾ化合物と成分b)の式(II)の化合物のアダクトを含むと特定しているのに対して、引用発明1では、ジアゾバルビツール酸、バルビツール酸及びメラミンから製造されることは特定されているものの、最終的にアダクトの成分として特定がされていない点

イ 判断
(ア)相違点1について
刊行物1の特許請求の範囲の請求項1には、成分a)として、互変異性構造の式(I)

のアゾ化合物の少なくとも1種の金属錯体、およびこの金属錯体は少なくとも1種の他の化合物を挿入するものが記載され、その請求項6には、成分a)のアゾ化合物が以下の式(V)

またはその互変異性形に相応することが記載されており、また、請求項7には、成分a)の金属錯体が、Ni、Cuが例示される金属を有する式(I)のアゾ化合物であることが記載されている。
また、刊行物1の段落【0027】?【0028】には、「式(I)?(V)の金属塩としても理解することのできる金属錯体は、有利にLi、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ce、Pr、Nd、より有利にNa、K、Ca、Ba、Al、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、La、Ce、更に有利にNiの金属を有するモノ-、ジ-、トリ-およびテトラアニオンの塩および錯体を包含する」こと、「一般式(I)の化合物は、有利に特に1:1のアゾ-金属錯体である」ことが記載されている。そして段落【0028】?【0029】には、「非常に有利であるのは、式(VI)

のアゾバルビツール酸-ニッケル1:1錯体またはその錯体の互変異性形」であることが記載されている。

そして、本願の優先日前に公知である特公昭52-25408号公報には、その特許請求の範囲に
「1 アゾ-バルビツール酸を多価金属誘導体で処理することを特徴とするアゾ染料の製造方法。」が記載され、発明の詳細な説明に、
「本発明は、式

のバルビツール酸と多価金属誘導体との反応生成物及びそれら化合物の製造方法に関する。
また本発明は該反応生成物の顔料染料としての使用に関する。
更に本発明は式(I)のアゾ染料の顔料染料としての使用に関する。
金属の種類に応じて、上記反応生成物は金属塩または金属錯化合物の形で存在することができる。
アゾ-バルビツール酸〔式(I)〕の好適な金属塩または金属錯体は、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及びカドミウム化合物並びにその混合物である。」(第1欄第23行?第2欄第6行)が記載され、製造方法の具体的な記載として、
「上記の反応生成物は、アゾ-バルビツール酸を多価金属の塩で処理して製造される;好適な方法は多価金属塩の存在下においてアゾ-バルビツール酸を合成することである。」(第2欄第16?19行)、また、「式(I)の出発染料は、例えばバルビツール酸及びスルホニルアジドからアゾ基の移動によって、或いはアルカリ性媒質中で5-ジアゾ-バルビツール酸とバルビツール酸とのカップリングによって得ることができる〔W.Ried及びB.Peters、Liebigs Ann.Chem.729、119(1969);M.Regitz.Angew.Chem.79、786(1967)参照〕。」(第3欄第12?19行)であることが記載されている。
上記記載からすると、多価金属塩の存在下、5-ジアゾ-バルビツール酸とバルビツール酸とを反応させることにより、アゾバルビツール酸の金属錯化合物が製造されることは技術常識であるといえる。

このような刊行物1の段落【0027】?【0029】の記載及び上記技術常識を踏まえて引用発明1をみてみると、引用発明1では、ジアゾバルビツール酸1モルとバルビツール酸1モルを反応させ、40%濃度の塩化ニッケルと塩化銅からなる混合溶液(Ni 0.92molとCu 0.08molを含む)を滴加して顔料を製造しているから、刊行物1の【0029】に記載されたアゾバルビツール酸とニッケルが1:1で形成している化合物(VI)の錯体において、Niのうち8モル%がCuに置換し、92モル%がNiである2種の金属アゾ化合物が製造されたといえる。そして、この金属アゾ化合物は、刊行物1の特許請求の範囲の請求項1に記載された成分a)のアゾ化合物の金属錯体の具体例であるといえる。

そうすると、引用発明1の製造方法で製造された金属アゾ化合物は、本願発明の式(I)で示される化合物のうち、R^(1)及びR^(2)は「=O」であり、R^(3)及びR^(4)は「=O」であり、「Me」は、Ni^(2+)が92モル%及びCu^(2+)が8モル%有し、1,3ジアジン環中の二重結合の数が1つである金属アゾ化合物であるということができる。そして、「Me」がNi^(2+)が92モル%及びCu^(2+)が8モル%であるから、Cu^(2+)及びNi^(2+)の群からの金属イオンの量が100%であり、Cu^(2+)対Ni^(2+)の金属イオンのモル比は、(8:92)であり、(19:1)?(1:19)に含まれる。
ここで、引用発明1の製造方法で製造された化合物は、R^(1)及びR^(2)は「=O」であり、1,3ジアジン環中の二重結合の数が1つであるが、これは、互変異性により、R^(1)及びR^(2)に隣接する1,3ジアジン環中の窒素原子と結合する「水素原子」がR^(1)及びR^(2)の「=O」に転移する結果、R^(1)及びR^(2)が「OH」となり、そして、1,3ジアジン環中の二重結合数が2つになったものであることは明らかである。

そうすると、相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

(イ)相違点2について
刊行物1の段落【0038】(摘示(1d))には、「本発明による配合物中に含有される成分a)の顔料は有利に70?150m^(2)/gの表面積(・・・)を有すること、この表面積はDIN66131により測定する」ことが記載され、DIN66131により測定される比表面積の対象は配合物中の成分a)であることが記載されている。
また、本願優先日前に公知であった参考資料1(伊藤征司郎総編集、「顔料の事典」、株式会社朝倉書店、2000年9月25日発行、第43頁)には、「3.3.6 比表面積の測定」の項目において、「顔料のいろいろな機能を正確に見積もるには、顔料表面の比表面積の値が必要である。・・・特に、顔料のような微粒子は比表面積(・・・)が大きいので、表面の構造と性質の評価が重要になり、比表面積の測定が必須となる。」(第43頁左欄第11?25行)と記載され、その中の一つの測定方法として「a. BET法」が「非多孔性粉体かメソ孔より大きな細孔をもつ多孔体の比表面積は、等温線にBET式(・・・)を適用して求めることができる。」(第43頁左欄26?29行)と記載されており、顔料の比表面積は、顔料表面の構造と性質の評価のために測定されることは明らかである。
さらに、平成29年11月15日付の手続補正書(方式)に添付された参考資料5(DIN66131)の第3頁の「4.手順」の項目において、「吸着測定の前に、試料は内部に吸着した物質を除くべきである。」(第3頁第10?13行)と記載されており、顔料の比表面積の吸着測定前に、資料内部の吸着物質を除いて測定することが技術常識であり、実際に刊行物1でもDIN66131に従って行われるといえる。

刊行物1には、前述のとおり、段落【0138】及び【0139】(摘示(1i))にて、ドーピングなしの成分a)に相当する顔料が作成され、同【0144】の表1にDIN66131に従って成分a)の比表面積をBETにより測定することが記載されている(摘示(1i))。
また、顔料の比表面積は、顔料表面の構造と性質の評価のために測定することが技術常識であることからすると、刊行物1の表1に記載されたBETの値は、同【0139】の例1fとして製造された試験すべき顔料表面の構造と性質をそのまま評価した値であることは明らかである。
そうすると、引用発明1における比表面積の値は、例1fで製造された顔料そのものを測定した値であり、本願発明の金属アゾ顔料の比表面積の数値範囲に引用発明1の比表面積の値が該当している以上、相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。

(ウ)相違点3について
本願明細書の段落【0025】?【0027】及び【0030】には、
「【0025】
本発明の金属アゾ顔料は、a)式(I)の金属アゾ化合物とb)式(II)の化合物とのアダクトである。「アダクト」とは、一般的には、分子集合体を意味していると理解されたい。この場合における分子間の結合は、たとえば分子間相互作用、またはルイス酸-塩基相互作用、または配位結合の結果であってよい。
【0026】
本発明の文脈においては、「アダクト」という用語には一般的に、すべてのタイプの層間化合物および付加化合物が包含されているものとする。
【0027】
本発明の文脈における「層間化合物」または「付加化合物」という用語は、たとえば、分子間相互作用たとえばファンデルワールス相互作用、またはルイス酸-塩基相互作用に基づいて形成されている化合物を意味しているものと理解されたい。ここでその挿入の進行は、挿入される成分の化学的性質と、ホストの格子の化学的性質の両方に依存する。このタイプの化合物は多くの場合、層間化合物とも呼ばれる。化学的な感覚においては、このことは、化合物の中への、分子およびイオン(同様に、滅多にないが原子)の挿入を意味していると理解されたい。
・・・
【0030】
さらに、本発明の文脈における「層間化合物」または「付加化合物」という用語は、配位結合または錯結合に基づいて形成された化合物を意味しているとも理解されるべきである。このタイプの化合物は、たとえば混合置換結晶とも呼ばれ、その中では少なくとも2種の物質が協同して結晶を形成し、その第二の成分の原子が、第一の成分の本来の格子座に位置している。」
と記載されていることからすると、本願発明におけるアダクトとは、層間化合物および付加化合物を包含する分子集合体を形成するための全てのタイプの分子集合体を意味すると解することができる。

一方、刊行物1の特許請求の範囲の請求項1には、成分a)として、「式(I)

(式(I)中の記号の説明は省略する)・・・のアゾ化合物の少なくとも1種の金属錯体、およびこの金属錯体は、少なくとも1種の他の化合物を挿入する」と記載され、その請求項9には、「成分a)の金属錯体が・・・特にメラミンを挿入する請求項1から8までのいずれか1項記載の顔料配合物。」と記載され、発明の詳細な説明の段落【0035】には、「挿入される化合物として特に有利に、メラミンまたはメラミン誘導体、特に式(VII)

(式(VII)中の記号の説明は省略する)のような化合物を使用し」と記載されていることからすると、成分a)の金属錯体にメラミンが挿入され本願発明に該当する何らかの分子集合体を形成しているといえる。

そうすると、引用発明1も、本願発明のアダクトに該当するといえ、相違点3は、実質的な相違点であるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、相違点1?3は、いずれも実質的な相違点であるとはいえないから、本願発明は引用発明1と同一であり、本願発明は刊行物1に記載された発明である。

(2)本願発明と引用発明2との対比
ア 対比
引用発明2は、塩化ニッケルと塩化銅からなる混合溶液のモル比が、塩化ニッケルが0.84molで塩化銅が0.16molであり、BET114m^(2)/gである点で引用発明1と異なる発明である。

この上で、上記(1)における検討を加味すると、本願発明と引用発明2とは、
「金属アゾ顔料において、金属アゾ化合物及びb)式(II)の少なくとも1種の化合物

[式中、R^(6)は、水素である]を含む、測定された比表面積が50?200m^(2)/gの比表面積を有する金属アゾ顔料」である限りで一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点4)
金属アゾ化合物が、本願発明では、a)金属アゾ化合物として式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物

[式中、
R^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立して、OHであり、
R^(3)およびR^(4)はそれぞれ独立して、=Oであり、かつ
Meは、Ni^(2+)、Zn^(2+)、Cu^(2+)、Al^(3+)_(2/3)、Fe^(2+)、Fe^(3+)_(2/3)、Co^(2+)、およびCo^(3+)_(2/3)の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において前記式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu^(2+)およびNi^(2+)の群からの金属イオンの量が95?100モル%であり、Zn^(2+)、Al^(3+)_(2/3)、Fe^(2+)、Fe^(3+)_(2/3)、Co^(2+)、およびCo^(3+)_(2/3)の群から選択される金属イオンの量が0?5モル%であり、
かつ、前記式(I)の化合物の総計におけるCu^(2+)対Ni^(2+)の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:19)までである]であると特定されているのに対して、引用発明2では、「ジアゾバルビツール酸1molを90℃の熱水5l中でバルビツール酸1molとKOH-滴定下にpH5で反応させ、メラミン2molを添加し、pHを塩酸で5に調節し、40%濃度の塩化ニッケルと塩化銅からなる混合溶液(Ni 0.84molとCu 0.16molを含む)を滴加し、90℃で1時間の経過後KOHでpH5に調節し、その後塩酸でpH1.5にして、3時間、98℃で熱調節し、その後、KOHでpH5に調節し、引き続き、顔料を吸引濾過で単離し、洗浄し、80℃で真空乾燥箱中で乾燥し、常用の実験室ミルで約2分間粉砕して得られた顔料」と製造方法によって特定されているだけであって、化学構造式が明示されていない点

(相違点5)
本願発明では、50?200m^(2)/gの比表面積を有する金属アゾ顔料と特定しているのに対して、引用発明2では、得られた金属アゾ顔料の比表面積の測定値が114m^(2)/gである点

(相違点6)
金属アゾ顔料が、本願発明では、成分a)の式(I)の金属アゾ化合物と成分b)の式(II)の化合物のアダクトを含むと特定しているのに対して、引用発明2では、ジアゾバルビツール酸、バルビツール酸及びメラミンから製造されることは特定されているものの、最終的にアダクトの成分として特定がされていない点

イ 判断
(ア)相違点4について
上記(1)イ(ア)で検討したとおり、引用発明2では、ジアゾバルビツール酸1モルとバルビツール酸1モルを反応させ、40%濃度の塩化ニッケルと塩化銅からなる混合溶液(Ni 0.84molとCu 0.16molを含む)を滴加して顔料を製造しているから、刊行物1に記載されたアゾバルビツール酸とニッケルが1:1で形成している化合物(VI)の錯体において、Niのうち16モル%がCuに置換し、84モル%がNiである2種の金属アゾ化合物が製造されたといえる。そして、この金属アゾ化合物は、刊行物1の特許請求の範囲の請求項1に記載された成分a)のアゾ化合物の金属錯体の具体例であるといえる。

そうすると、引用発明2の製造方法で製造された金属アゾ化合物は、本願発明の式(I)で示される化合物のうち、R^(1)及びR^(2)は「=O」であり、R^(3)及びR^(4)は「=O」であり、「Me」は、Ni^(2+)が84モル%及びCu^(2+)が16モル%有する金属アゾ化合物であるということができる。そして、「Me」がNi^(2+)が84モル%及びCu^(2+)が16モル%であるから、Cu^(2+)及びNi^(2+)の群からの金属イオンの量が100%であり、Cu^(2+)対Ni^(2+)の金属イオンのモル比は、(16:84)であり、(19:1)?(1:19)に含まれる。
ここで、引用発明2の製造方法で製造された化合物は、R^(1)及びR^(2)は「=O」であり、1,3ジアジン環中の二重結合の数が1つであるが、これは、互変異性により、R^(1)及びR^(2)に隣接する1,3ジアジン環中の窒素原子と結合する「水素原子」がR^(1)及びR^(2)の「=O」に転移する結果、R^(1)及びR^(2)が「OH」となり、そして、1,3ジアジン環中の二重結合数が2つになったものであることは明らかである。

そうすると、相違点4は、実質的な相違点であるとはいえない。

(イ)相違点5について
相違点5は、相違点2と比較すると、比表面積の測定値が、113m^(2)/gであったものが、114m^(2)/gであるとしたことだけが異なるから、上記(1)イ(イ)で検討したとおり、相違点5は実質的な相違点であるとはいえない。

(ウ)相違点6について
相違点6は、上記(1)アで示した相違点3と同じであり、これは、上記(2)イ(ウ)述べたとおり、実質的な相違点であるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、相違点4?6は、いずれも実質的な相違点であるとはいえないから、本願発明は引用発明2と同一であり、本願発明は刊行物1に記載された発明である。

(3)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張
審判請求人は、平成30年11月12日付の意見書において、概略、以下のような主張をしている。
(ア)刊行物1に記載された顔料配合物1f及び1gの比表面積は、白いペーストが添加された後、バインダー系によって調製された生成物に関する値であり、顔料そのものの値ではないとし、バインダー分子およびペースト分子が既に顔料結晶に吸着しているのでBET測定の結果は低く見積もられた比表面積となる旨主張している(平成30年11月12日付の意見書第8頁第11?36行参照)。

(イ)参考資料1(参考資料1の和訳は参考資料2として提出。)には、本願明細書の実施例の例1f(参考資料1では、実施例1(顔料A)と記載している。)及び例1g(参考資料1では、実施例2(顔料B)と記載している。)において、バインダー系を使用せずに、すなわちペーストとガラスビーズと共に30分間粉砕することなしに得られた顔料に対してISO9277によって測定された比表面積の値が、顔料Aは217m^(2)/g、顔料Bは209m^(2)/gであり、本願発明での特定(50?200m^(2)/g)と異なる旨主張する。(平成30年11月12日付の意見書第8頁第37行?第9頁第8行参照)。

そして、平成29年11月15日付の手続補正書(方式)において、「古いDIN66131の方法と、ISO9277による方法は、同じ原理に基づくもので、同じ結果が得られます。・・・静的体積測定法を記載し、BETによる多点解析および計算を適用しているDIN66131の4.3.2.およびISOの6.3.1をご参照ください。」と主張し、参考資料1の結果は、引用文献1の例1f、例1gの金属アゾ顔料の比表面積を正しく表したものである旨主張する(平成29年11月15日付の手続補正書(方式)第5頁第19?30行参照)。

イ 検討
(ア)主張(ア)について
刊行物1の段落【0140】には、「試験すべき顔料4gを市販の白色ペースト396g、例えばNordsjoe(Akzo Nobel)からのReady Nova 70、および直径2mmのガラスビーズ400mlとSuessmeierビーズミル中で冷却下に粉砕する。このペーストをドローダウン紙に線巻きブレード(25μm)で塗布し、Gardnerからの色度計Color Guide 450を用いて比色分析的に測定する。(下線は当審で付与した。以下同じ。)」と記載され、同【0141】には、「色特性の測定のためには、バインダー系が好適である。この結果は色相および輝度に関するLCD-適用のための色特性に非常に良好に転用することができる。」と記載されていることからすると、色相と輝度を含む比色分析や色特性の測定には、成分a)の顔料と白色ペーストを配合したものを使用して、表1における「バインダー色の濃さ」、「バインダーDC」及び「バインダーDH」の値を測定したと解することができる。
一方、表1におけるBETは、脚注に、単位は「m^(2)/gで記載」、「ドイツ標準規格DIN66131により測定」と記載されており、BETの測定が、得られた成分a)の顔料4gに白色ペースト396gを配合したものに対して測定した値であることは何ら記載されていない。そして、上記(1)イ(イ)で述べたように、刊行物1に記載されたBET比表面積の値は、前述のとおり、表面の付着物を除去して表面の構造や性質を測定することが前提となっているのであるから、測定対象の表面の構造や性質を変化させてしまうことが自明である顔料4gの100倍近くのペーストを配合したものを対象に測定するはずがなく、DIN66131にもそのような測定法は記載されていない。
したがって、審判請求人の主張は、技術常識や刊行物1の記載に基づかないものであり、刊行物1に記載された顔料配合物例1f及び例1gの比表面積は、白いペーストが添加された後、バインダー系によって調製された生成物に関する値であり、顔料そのものの値ではないなどという主張を採用することはできない。

(イ)主張(イ)について
平成29年11月15日付の手続補正書(方式)に添付された参考資料5(DIN66136)と参考資料6(ISO9277)には、それぞれの規格におけるBETの測定方法は記載はされているものの、DIN66131の測定方法で測定されたBETの値であっても、ISO9277の測定方法で測定されたBETの値であっても、同じ試料であれば同じ値を示す、ということまでは記載されていない。
そうすると、参考資料1における本願明細書の実施例の例1f及び例1gのISO9277によって測定された比表面積の値が、本願発明の上限をわずかに超えた217m^(2)/g及び209m^(2)/gであるからといって、本願発明で定義されるDIN66131で測定した場合であっても完全に同じ値となり本願発明の数値範囲を満たさないということはできず、引用発明1又は2の比表面積が本願発明の範囲を満たしていることは、既に述べたとおりである。
したがって、審判請求人のこの主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおり、上記審判請求人の主張はいずれも採用することはできない。

(4)まとめ
よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、その他の請求項について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-19 
結審通知日 2019-04-22 
審決日 2019-05-09 
出願番号 特願2016-56636(P2016-56636)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 佐藤 健史
齊藤 真由美
発明の名称 金属アゾ顔料  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ