• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02P
管理番号 1355592
審判番号 不服2018-8602  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-22 
確定日 2019-10-02 
事件の表示 特願2016-500582「セルフチューニング電力増幅器を有するコロナ点火」拒絶査定不服審判事件〔平成26年9月25日国際公開、WO2014/149661、平成28年5月19日国内公表、特表2016-514233〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月31日付け(発送日:平成29年11月7日)で拒絶理由が通知され、平成30年1月12日に意見書並びに明細書、図面及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成30年2月23日付け(発送日:平成30年2月27日)で拒絶査定がされ、これに対して、平成30年6月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成30年1月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
コロナ点火システムのための電力増幅器回路であって、
出力巻線および2つの一次巻線を有するRF変圧器を備え、前記出力巻線および前記2つの一次巻線は、磁気コアに巻き付けられ、前記電力増幅器回路はさらに、
前記出力巻線の一端に接続されたインダクタおよびキャパシタと、
前記出力巻線の別の端部に接続された電流センサとを備え、
前記出力巻線を通る電流は、前記コアにおいて対向する方向に磁束を発生させ、
共振周波数、発振器およびローパスフィルタを有するコロナ点火装置を含み、前記ローパスフィルタは、前記発振器を前記コロナ点火装置の前記共振周波数に維持するために、少なくとも120°であって180°未満の電流の位相シフトを提供し、不要な周波数をフィルタリングし、フィルタリングされたフィードバック信号を提供する、電力増幅器回路。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし10に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2010/0282198号明細書(本審決における引用文献1)
引用文献2.国際公開第2012/138676号(本審決における引用文献2)
引用文献3.米国特許出願公開第2012/0055455号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1(米国特許出願公開第2010/0282198号明細書)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した(以下同様。)。また、仮訳は、特表2012-526241号公報を参考にした。

ア 「Fig.2 is ・・・are in phase.」(段落[0007]及び[0008])
(仮訳:「[0007] 図2は、この発明の例示的な実施例に従う制御エレクトロニクスおよび一次コイルユニット60の機能ブロック図である。図2に示されるように、制御エレクトロニクスおよび一次コイルユニット60は、ライン62経由で、例えばDC源から150ボルトの電圧を受取る、センタータップ付きの一次RF変圧器20を含む。高電力スイッチ72が、2つの位相、位相Aと位相Bとの間において、所望の周波数、例えば高電圧回路30の共振振動数で変圧器20にあたえられる電力を切換えるために設けられる(図1を参照)。150ボルトのDC源は、さらに、制御エレクトロニクスおよび一次コイルユニット60における制御回路系のための電源74に接続される。制御回路系電源74は、制御エレクトロニクスのための許容できるレベル(例えば5?12ボルト)まで150ボルトのDC源を低減するために、典型的にはステップダウン変圧器を含む。図1および図2において「A」で表された変圧器20からの出力は、この発明の例示的な実施例によれば、二次コイルユニットに収容される高電圧回路30に電力を供給するために使用される。
[0008] 変圧器20から出力される電流および電圧は点Aで検知され、従来の信号調整は、例えば、信号からノイズを取除くために73および75でそれぞれ実行される。例えば、この信号調整は能動、受動、またはデジタル、ローパスおよびバンドパスフィルタを含んでもよい。電流信号および電圧信号は、次いで、それぞれ77、79で全波整流および平均される。電圧および電流の平均化は、信号ノイズを取除くが、従来のアナログまたはデジタル回路で達成されてもよい。平均され整流された電流信号および電圧信号は、電流で電圧を割ることにより実際のインピーダンスを計算する除算器80に送られる。電流信号および電圧信号は、さらに、高電圧回路30のための共振振動数である周波数を出力する位相検出器および位相ロックループ(PLL)78に送られる。PLLは、電圧および電流が同相であるように、その出力周波数を調整することにより、共振振動数を判断する。直列共振回路に対しては、共振で励振された時、電圧および電流は同相である。」)

イ 「A power amplifire ・・・ and vice versa.」(段落[0011]ないし[0037])
(仮訳:「[0011] 電力増幅器回路は、インダクタおよびキャパシタがRF変圧器の出力巻線の一方の端部に接続される。出力巻線の他方の端部は抵抗器に接続され、それは、次いで、接地に接続される。変圧器は2つの一次巻線を有する。両方の一次巻線は、一方の端部が可変DC電圧供給源に接続される。各一次巻線の他方の端部はMOSFETに取付けられる。3本の巻線はすべてフェライトコアに巻きつけられる。DC電圧供給源からMOSFETまで流れる電流が磁束をフェライトコアにおいて反対方向に引起すように、2つの一次巻線は構成される。回路の振動を開始するために、MOSFETの1つはオンにされ、インダクタおよびキャパシタを短く振動(ring)させる。その結果、電圧が二次巻線抵抗器上で生成され、それは、ノイズをすべてフィルタ処理し、インダクタキャパシタの固有周波数で電圧を残す回路に供給される。この電圧はMOSFETにフィードバックされ、オンオフタイミングを制御する。このようにして、固有周波数を測定し記録する必要性がなくされる。
[0012] この発明の一実施例ではコロナ点火システムのための電力増幅器回路があり、それは、出力巻線および2つの一次巻線を伴うRF変圧器を含み、出力巻線および2つの一次巻線はコアに巻きつけられ;電力増幅器回路はさらに、出力巻線の一方の端部に接続されるインダクタおよびキャパシタと;出力巻線の別の端部に接続される抵抗器とを含み、出力巻線に誘導された電流は、磁束をコアにおいて反対方向に生成する。
[0013] この発明の1つの局面では、2つの一次巻線は、各々、一方の端部が可変DC電圧供給源に接続され、2つの一次巻線の各々の他方の端部は第1および第2のスイッチに取付けられ、第1および第2のスイッチのオンおよびオフのタイミングが制御される。
[0014] この発明の別の局面では、増幅器回路は、変動するキャパシタンスに対して補償するためにフィードバック信号をあたえるセンス巻線をさらに含み、出力巻線は、コロナ点火装置に出力信号をあたえる。
[0015] この発明の別の実施例では、RF変圧器の出力巻線の一方の端部に接続されるセンシング変圧器を有する自己同調増幅器回路を有するコロナ点火システムがある。
[0016] この発明の1つの局面では、出力巻線において誘導された電流は、二次巻線を励振するようセンシング変圧器において磁束を生成する。
[0017] この発明の別の局面では、二次巻線の端部は、コロナ点火システムを動作させるために回路を駆動する2つのスイッチにそれぞれ接続され、それによって、コロナ点火装置を点火する。
[0018] この発明のさらに別の実施例では、上側表面から燃焼室に延在する点火装置開口部を有するシリンダヘッドおよびコロナ点火装置を含む内燃機関であって:エンジンコンピュータから信号を受取るよう構成された制御回路と;点火装置アセンブリをその共振周波数で駆動するために交流電流および電圧信号を生成する電力増幅器回路とを含み、点火装置アセンブリは、LCR回路を形成するインダクタ、キャパシタおよび抵抗器を含み、インダクタの一方の端部は、点火端アセンブリを介して、コロナ点火装置を点火する内燃機関の燃焼室における電極クラウンに接続される、内燃機関が設けられる。
[0019] この発明の1つの局面では、電力増幅器回路は、出力巻線および2つの一次巻線を有するRF変圧器を含み、出力巻線および2つの一次巻線はコアに巻きつけられ;インダクタおよびキャパシタは出力巻線の一方の端部で接続され;抵抗器は出力巻線の別の端部に接続され、出力巻線に誘導された電流は、磁束をコアにおいて反対方向に生成する。
[0020] この発明の別の局面では、制御回路は、電力増幅器回路に印加するべき電圧を判断し、電力増幅器回路は巻線を介して電流を駆動し、点火装置アセンブリの共振周波数のフィードバック信号をあたえ、点火装置アセンブリは、キャパシタのキャパシタンス、抵抗器の抵抗およびインダクタのインダクタンスが結合されると、特定された周波数で共振する。
[0021] この発明のさらに別の局面では、2つの一次巻線は、各々、一方の端部が可変DC電圧供給源に接続され、2つの一次巻線の各々の他方の端部は第1および第2のスイッチに取付けられ、第1および第2のスイッチのオンおよびオフのタイミングが制御される。
[0022] この発明のさらに別の局面では、増幅器回路は、変動するキャパシタンスに対して補償するためにフィードバック信号をあたえるセンス巻線をさらに含み、出力巻線は、コロナ点火装置に出力信号をあたえる。
[0023] この発明のこれらならびに他の特徴および利点は、当業者には、好ましい実施例の詳細な記載からより明らかになる。詳細な記載に伴う図面を以下に記載する。
図面の簡単な説明
[0024] 図1は、先行技術における例示的なコロナ放電点火システムを示す。
[0025] 図2は、先行技術のシステムに従う制御エレクトロニクスおよび一次コイルユニットの機能ブロック図を示す。
[0026] 図3は、この発明に従う自己同調回路を示す。
好ましい実施例の詳細な記載
[0027] 電力増幅器回路は、インダクタおよびキャパシタがRF変圧器の出力巻線の一方の端部に接続される。出力巻線の他方の端部は抵抗器に接続され、それは、次いで、接地に接続される。変圧器は2つの一次巻線を有する。両方の一次巻線は、一方の端部が可変DC電圧供給源に接続される。各一次巻線の他方の端部はMOSFETに取付けられる。3本の巻線はすべてフェライトコアに巻きつけられる。DC電圧供給源からMOSFETまで流れる電流が磁束をフェライトコアにおいて反対方向に引起すように、2つの一次巻線は構成される。回路の振動を開始するために、MOSFETの1つはオンにされ、インダクタおよびキャパシタを短く振動(ring)させる。その結果、電圧が二次巻線抵抗器上で生成され、それは、ノイズをすべてフィルタ処理し、インダクタキャパシタの固有周波数で電圧を残す回路に供給される。この電圧はMOSFETにフィードバックされ、オンオフタイミングを制御する。このようにして、固有周波数を測定し記録する必要性がなくされる。
[0028] 図3に図示された回路は、変圧器、変圧器を駆動するMOSFET、および変圧器の動作の周波数を同調させる帰還回路を含む。変圧器は、一例において、4組の巻線をまわりに伴うフェライトコアを有する。インダクタLlおよびL2は一次巻線であり、それらは、DC電圧供給源に接続される点でともに連結される。回路はある範囲の電圧供給源電圧で動作するよう設計することができ、この実施例では、電圧は60VDCに設定される。インダクタLlおよびL2の他方の端部は各々スイッチに接続され、それはMOSFETとして示される。当業者には容易に理解されるように、他の種類のスイッチが使用されてもよい。
[0029] インダクタL3は変圧器の二次的または出力インダクタである。L3の一方の端部は低値抵抗を介して接続される。他方の端部はコロナ点火装置のインダクタに接続される。第4のインダクタ(L6)は、異なる長さの取付ケーブルの変動するキャパシタンスを補償するためにフィードバック信号をあたえるセンスインダクタである。
[0030] 点火システムは3つのサブアセンブリ:制御回路、電力増幅器および点火装置アセンブリから構成される。
[0031] 制御回路:この回路は、シリンダにおいてコロナをいつ開始し終わらせるべきであるかをシステムに伝えるエンジンコンピュータ(ECU)から信号を受取る。この回路は、電力増幅器変圧器にどの電圧を印加するかを判断する。この回路の一部は、電力増幅器変圧器に印加されるDC電圧を生成する。
[0032] 電力増幅器回路:この回路は、点火装置アセンブリをその共振周波数で駆動するために交流電流および電圧信号を生成する。それは制御回路からコマンドを受取って振動を開始し終了する。電力増幅器回路は、変圧器を介して電流を駆動する回路、および点火装置アセンブリの共振周波数をフィードバックする回路を含む。このフィードバック信号は、インダクタ共振と関係のある信号、一次巻線電圧と関係のある信号、および二次巻線電圧と関係のあるフィードバック信号を含む。
[0033] 点火装置アセンブリ:点火装置アセンブリはスパークプラグに類似する態様でシリンダヘッドに取付けられる。アセンブリは、インダクタ、および燃焼室の内側に電極を含む点火端サブアセンブリを含む。点火装置アセンブリは、LCRアセンブリとしてともに配線されるインダクタ、キャパシタおよび抵抗器を有する。電圧がインダクタの一方の端部に印加されると、LCRアセンブリは共振する。インダクタは点火装置の一部である。インダクタの第2の端部は点火端アセンブリを介して燃焼室における電極クラウンに接続される。点火端アセンブリおよび燃焼室は、インダクタンスと結合されると特定の周波数で共振するキャパシタンスおよび抵抗を形成する。
[0034] 動作では、エンジンコンピュータ(ECU)のような装置が制御回路に信号を送る。この信号は、各々の点火装置上でいつコロナを開始および終了すべきであるかを制御回路に伝える。制御回路は、電力増幅器に、コロナ事象を開始するようLレベルになる、通常Hレベルの信号を送る。コロナが所望される間、信号はLレベルにとどまり、コロナ事象を終了するためにHレベルに戻る。この信号は、Q13のエミッタであるノードAにあたえられる。Aの電圧におけるこの変化はノードNをHレベルからLレベルにする。次いで、ノードNは2つの場所に送られる。
[0035] 1つの宛先は、Q12のコレクタ、ならびにQ12およびQ7のベースである。Nのこの降下はQ12およびQ7をオンにして、電流がノードZに流れることを可能にする。第2の宛先はC3であり、それは、ノードR、Q9のベースに、R13およびダイオード1を介して、短い電圧降下を送る。これは、次いで、ノードTで電圧を短く降下させる。ベースにおけるこの下落はQ5をオンにして、ノードZから電流を引出し、ノードBを負から正に上げる。これはQ11をオン、およびQ17をオフにし、それはQ1をオン、およびQ2をオフにする。これは、R16およびダイオード2を介してノードC、M1のゲートに接続されるそれらのエミッタを引上げる。ノードCは負から正になり、M1をオンにする。M1のドレインはL2に接続され、そのソースは接地に接続される。M1をオンにすると、電流がL2を通って流れ、それは、次いで、磁束を、変圧器の内部でフェライトを通って流れるよう誘導する。
[0036] M1がオンに留まるので、電流は、ノードTの電圧がQ5を遮断する値に戻るまで、L2を介して導通させられる。これは、ノードZを通って流れる電流をR11からR18内に移らせ、ノードHを負から正に上げる。これはQ8をオン、およびQ20をオフにし、それはQ4をオン、およびQ3をオフにする。これは、Rl7およびダイオード3を介してノードF、M4のゲートに接続されるそれらのエミッタを引上げる。ノードFは負から正になり、M4をオンにする。M4をオンにすると、電流がL1を通って流れ、それは、次いで、磁束を、変圧器の内部でフェライトを通って、L2によって引起された磁束と正反対方向に流れるよう誘導する。
[0037] 変圧器フェライト磁束は、次いで電圧をその2つの端部にわたって生じさせる変圧器二次巻線L3を介して、電流を生成する。L3の一方の端部は、接地に取付けられるR14に接続される。L3の他方の端部は点火装置アセンブリにおいてインダクタに取付けられる。点火装置LCRアセンブリに印加された、急速に変化する電圧は、それを共振するよう誘導する。電流がR14を通って流れると、ノードLの電圧は上昇する。この電圧はR15を介してノードA2に供給される。ノードA2からの電流は、C5およびR19に接続されるL5を通過する。これらの構成要素はバンドギャップフィルタを形成し、当該範囲外の周波数を取除く。この信号はD7およびD8によってクリップされ、次いで、Q10を駆動するためにC7を通して渡される。Q10がオンにされると、電流はR18を通って流れ、R11を通って流れることをやめる。これは、M1をオフ、およびM4をオンに、ならびにその逆に切換える。」

ウ 「1. A power ・・・ a corona igniter.」(特許請求の範囲の請求項1ないし6)
(仮訳:「1.コロナ点火システムのための電力増幅器回路であって:
出力巻線および2つの一次巻線を有するRF変圧器を含み、出力巻線および2つの一次巻線はコアに巻きつけられ;前記電力増幅器回路はさらに、
出力巻線の一方の端部に接続されるインダクタおよびキャパシタと;
出力巻線の別の端部に接続される抵抗器とを含み、
出力巻線に誘導された電流は、磁束をコアにおいて反対方向に生成する、電力増幅器回路。
2.2つの一次巻線は、各々、一方の端部が可変DC電圧供給源に接続され、2つの一次巻線の各々の他方の端部は第1および第2のスイッチに取付けられ、第1および第2のスイッチのオンおよびオフのタイミングが制御される、請求項1に記載の電力増幅器。
3.変動するキャパシタンスに対して補償するためにフィードバック信号をあたえるセンス巻線をさらに含み、出力巻線は、コロナ点火装置に出力信号をあたえる、請求項2に記載の電力増幅器。
4.RF変圧器の出力巻線の一方の端部に接続されるセンシング変圧器を有する自己同調増幅器回路を有するコロナ点火システム。
5.出力巻線において誘導された電流は、二次巻線を励振するようセンシング変圧器において磁束を生成する、請求項4に記載のコロナ点火システム。
6.二次巻線の端部は、コロナ点火システムを動作させるために回路を駆動する2つのスイッチにそれぞれ接続され、それによって、コロナ点火装置を点火する、請求項5に記載のコロナ点火システム。」)

エ 上記アの段落[0008]の「変圧器20から出力される電流および電圧は点Aで検知され、従来の信号調整は、例えば、信号からノイズを取除くために73および75でそれぞれ実行される。例えば、この信号調整は能動、受動、またはデジタル、ローパスおよびバンドパスフィルタを含んでもよい。」という記載から、変圧器20から出力される電流および電圧は点Aで検知されること、及び信号調整のためにローパスフィルタを含んでいてもよいことが分かる。

オ 上記アの段落[0012]の「この発明の一実施例ではコロナ点火システムのための電力増幅器回路があり、それは、出力巻線および2つの一次巻線を伴うRF変圧器を含み、出力巻線および2つの一次巻線はコアに巻きつけられ;電力増幅器回路はさらに、出力巻線の一方の端部に接続されるインダクタおよびキャパシタと;出力巻線の別の端部に接続される抵抗器とを含み、出力巻線に誘導された電流は、磁束をコアにおいて反対方向に生成する。」という記載、上記イの段落[0020]の「この発明の別の局面では、制御回路は、電力増幅器回路に印加するべき電圧を判断し、電力増幅器回路は巻線を介して電流を駆動し、点火装置アセンブリの共振周波数のフィードバック信号をあたえ、点火装置アセンブリは、キャパシタのキャパシタンス、抵抗器の抵抗およびインダクタのインダクタンスが結合されると、特定された周波数で共振する。」という記載、及び段落[0033]の「点火装置アセンブリは、LCRアセンブリとしてともに配線されるインダクタ、キャパシタおよび抵抗器を有する。電圧がインダクタの一方の端部に印加されると、LCRアセンブリは共振する。」という記載から、コロナ点火システムのための電力増幅器回路は、巻線を介して電流を駆動し、LCRアセンブリの共振周波数のフィードバック信号をあたえ、点火装置アセンブリはLCRアセンブリの共振周波数で共振することが分かる。

カ 上記イの段落[0027]の「回路の振動を開始するために、MOSFETの1つはオンにされ、インダクタおよびキャパシタを短く振動(ring)させる。その結果、電圧が二次巻線抵抗器上で生成され、それは、ノイズをすべてフィルタ処理し、インダクタキャパシタの固有周波数で電圧を残す回路に供給される。この電圧はMOSFETにフィードバックされ、オンオフタイミングを制御する。このようにして、固有周波数を測定し記録する必要性がなくされる。」、及び段落[0028]の「図3に図示された回路は、変圧器、変圧器を駆動するMOSFET、および変圧器の動作の周波数を同調させる帰還回路を含む。」という記載から、MOSFETが発振器として働いて変圧器を駆動すること、ノイズがフィルタ処理されること、二次巻線抵抗器上の電圧が帰還回路によりMOSFETにフィードバックされ、MOSFETのオンオフタイミングを制御し、MOSFET及び変圧器の動作の周波数を同調させることが分かる。

キ 上記オ及びカから、コロナ点火システムのための電力増幅器回路は、MOSFETをLCRアセンブリの共振周波数で駆動し、その共振周波数に維持するために、ノイズをフィルタ処理し、フィルタ処理されたフィードバック信号を与えるものであることが分かる。

(2)引用発明
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「コロナ点火システムのための電力増幅器回路及び点火装置アセンブリであって、
出力巻線および2つの一次巻線を有するRF変圧器を含み、出力巻線および2つの一次巻線はコアに巻きつけられ、前記電力増幅器回路はさらに、
出力巻線の一方の端部に接続されるインダクタおよびキャパシタと、
出力巻線の別の端部に接続される抵抗器とを備え、
出力巻線に誘導された電流は、磁束をコアにおいて反対方向に発生させ、
共振周波数、MOSFETおよびフィルタを有する点火装置アセンブリを含み、前記フィルタは、前記MOSFETを前記点火装置アセンブリの前記共振周波数で駆動し、前記共振周波数に維持するために、ノイズをフィルタ処理し、フィルタ処理されたフィードバック信号を与える、電力増幅器回路及び点火装置アセンブリ。」

2 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献2(国際公開第2012/138676号)には、図面とともに、次の事項が記載されている。また、仮訳は、特表2014-513760号公報を参考にした

ア 「[0002] This invention ・・・ to Freen.」(段落[0002]及び[0003])
(仮訳:「[0002] 本発明は、概して、コロナ放電点火システムに関し、より特定的には、当該システムにおけるアーク形成を制御することに関する。
2.関連技術
[0003] コロナ放電点火システムは、交流の電圧および電流を与え、高低の電位の電極を迅速に逆転させ、それによって、アーク形成を困難にし、かつ、コロナ放電の形成を高める。当該システムは、高無線周波数電圧に帯電され、かつ、燃焼室で強無線周波数電界を発生する中央電極を有するコロナ点火装置を含む。当該電界により、燃焼室で燃料と空気との混合物の一部が電離し、誘電破壊を始め、混合気の燃焼が容易になる。当該電界は、好ましくは、燃料空気混合物が誘電特性を維持し、非熱的プラズマとも呼ばれるコロナ放電が生じるように制御される。燃料空気混合物の電離した部分は、その後自燃し、かつ、燃料空気混合物の残りの部分を燃焼させる火炎前面を形成する。好ましくは、当該電界は、燃料空気混合物が誘電特性を全て損失しないように制御されるが、もし誘電特性が損失すると、電極と、接地されたシリンダ壁、ピストン、金属シェルまたは他の点火装置の部品との間で熱プラズマおよび電気アークが発生するであろう。電気アークまたはアーク放電は、エネルギ効率を悪化させ、システムの点火事象の堅調性を低下させる。コロナ放電点火システムの一例が、フリーンに対する米国特許第6,883,507号に開示されている。」)

イ 「[0011] The invention ・・・ corona igniter 22.」(段落[0011]ないし[0022])
(仮訳:「[0011] 本発明によれば、コロナ放電20を与えるために設計された点火システムにおける意図的でないアーク形成を制御するためのシステムおよび方法が提供される。本システムは、ある電圧でエネルギを受けてコロナ放電20を与えるコロナ点火装置22と、ある電圧のエネルギをコロナ点火装置22に与えるエネルギ供給部24とを含む。本システムは、コロナ放電20が与えられた後に、アーク形成が生じたことに応答して、コロナ点火装置22に与えられるエネルギの電圧の低下を開始するコロナ制御部26もまた含む。本システムに採用される本方法は、ある電圧のエネルギをコロナ点火装置22に与えることと、アーク形成に応答してコロナ点火装置22に与えられるエネルギの電圧を低下させることとを含む。
[0012] 本システムおよび本方法によれば、アーク放電を制御するために用いられる先行技術のシステムに勝るいくつかの利点がもたらされる。第一に、本システムおよび本方法は、複雑なデジタル部品、キャリブレーション、または、モニタリングを必要とせずに、既存のコロナ放電点火システムの部品を使用できるため低コストである。さらに、本システムおよび本方法は、非常に高速であり、ほんの数ナノ秒または数マイクロ秒で、アーク形成の開始後にアーク放電を制御できる。本システムおよび本方法は、コロナ放電を与えるために設計されるが、アーク形成の開始を阻止しようとするものではない。しかしながら、アーク形成は制御され、もしアーク形成が生じた場合は、これは、好ましくは消滅される。アーク形成を制御することで、コロナ放電点火システムの稼働中のエネルギ効率が改善される。
[0013] 本システムは、典型的には、内燃機関(図示せず)において採用される。内燃機関は、燃料および空気の可燃混合物を包含する燃焼室を規定する、シリンダヘッド、シリンダブロック、および、ピストンを含む。コロナ点火装置22はシリンダヘッドで受けられ、点火コイル27と、図1に示され、燃焼室に延在するコロナ先端28を有する中央電極とを含む。エネルギ供給部24は、エネルギを蓄え、駆動回路30、および最終的にはコロナ点火装置22にエネルギを与える。点火コイルは、エネルギ供給部24から高無線周波数電圧のエネルギを受け、エネルギの一部を蓄え、その後、エネルギを中央電極に伝送する。一実施の形態において、点火コイル27は、最大100,000ボルト、5アンペア未満の電流、および、0.5?2.0メガヘルツの周波数までのレベルのエネルギを受ける。中央電極は、その後、無線周波数電界を燃焼室に送出し、燃料空気混合物の一部を電離し、燃焼室にコロナ放電20を与える。コロナ点火装置22は、典型的には、中央電極を囲む絶縁体32を含み、絶縁体32および中央電極は、図1に示されるように、金属シェル34で受けられる。
[0014] 図2は、本発明の一実施の形態に従う、コロナ点火システム、および、駆動回路30の部品を示すブロック図である。駆動回路30は、トリガ回路36と、差動増幅器38と、第1のスイッチ40と、第2のスイッチ42と、変圧器44と、電流センサ46と、ローパスフィルタ48と、クランプ50とを含む。駆動回路30に与えられるエネルギは、コロナ点火システムが稼働中に共振周波数で振動する。図2は、エネルギが部品間を信号52で伝送されることを示す。図2は、各部品間のエネルギの電流のグラフも含む。
[0015] エンジン制御装置(図示せず)の主要制御部51は、典型的には、差動増幅器38を作動させるイネーブル信号54を与える。トリガ回路36は、その後、イネーブル信号54に応答して、本システムを通って、コロナ点火装置22から、およびコロナ点火装置22に流れる、エネルギの周波数と電圧との振動を開始する。トリガ回路36は、トリガ信号52を発生することと、トリガ信号52を差動増幅器38に伝送することとによって振動を開始する。本システムは共振周期を有し、トリガ信号52は、典型的には、共振周期の半分よりも短い。
[0016] 差動増幅器38は、トリガ信号52を受けると起動される。差動増幅器38は、その後、正入力56でエネルギを受け、エネルギを増幅し、第1の出力58および第2の出力59からエネルギを伝送する。
[0017] 駆動回路30の第1のスイッチ40は、差動増幅器38の第1の出力58によって有効になり、エネルギ供給部24からコロナ点火装置22にエネルギを向ける。スイッチ40,42は、BJT、FET、IGBT、または、その他好適な種類であってもよい。
[0018] 駆動回路30の変圧器44は、エネルギを受けるための変圧器入力60と、エネルギ供給部24からコロナ点火装置22および電流センサ46にエネルギを伝送するための変圧器出力62とを含む。変圧器44は、そこを介してエネルギを伝送する一次巻線64および二次巻線66を含む(審決注:図2の符号66は一次巻線に付されており、誤記である。)。エネルギ供給部24からのエネルギは、最初に一次巻線64を流れ、それによりエネルギを二次巻線66に流す。コロナ点火装置22の部品は、共振回路または同調回路とも呼ばれる、本システムのLC回路を共に設ける。センサ46で共振電流を検出することによって、本システムの共振周波数は、LC回路の共振周波数と等しくなる。
[0019] 電流センサ46は、典型的には抵抗器であり、変圧器44およびコロナ点火装置22の出力でエネルギの電流を測定する。変圧器44の出力でのエネルギの電流は、典型的には、コロナ点火装置22でのエネルギの電流に等しい。電流センサ46は、その後、エネルギをローパスフィルタ48に伝送する。ローパスフィルタ48は、不要な周波数を除去し、エネルギの電流の位相シフトをもたらす。位相シフトは、典型的には、180°よりも大きくない。
[0020] クランプ50は、ローパスフィルタ48からエネルギを受け、エネルギの電流の信号調整を実行する。信号の調整は、エネルギの電流を方形波および安全電圧に変換することを含んでもよい。クランプ50は、その後、エネルギを差動増幅器38の負入力68に戻すように伝送する。
[0021] 図2は、クランプ50と差動増幅器38との間のコロナ制御部26を示しているが、コロナ制御部26は、本システムの他の位置に配置されてもよい。さらに、コロナ制御部26は、図1および図2において別個の部品として示されているが、本システムの別の部品と一体に結合または統合されてもよい。アーク形成の開始は、意図的に阻止されないが、本システムは、典型的には、コロナ放電20を与えるように設計され、それゆえに、アーク形成の開始は意図的でない。アーク形成は、様々な異なる方法で検出されてもよい。アーク形成は、コロナ制御部26または別個の部品によって検出されてもよい。もし、アーク形成が別の部品によって検出されると、通知信号69がコロナ制御部26に伝送される。
[0022] いったんアーク形成が検出されると、コロナ制御部26は、コロナ点火装置22に与えられるエネルギの電圧の低下を開始する。一実施の形態において、コロナ制御部26は、差動増幅器38の機能を無効にすること、または、差動増幅器38がエネルギをコロナ点火装置22に与えるのを阻止することによって、電圧の低下を開始する。コロナ制御部26は、図1および図2に示されるように、命令信号70を駆動回路30に送信することによって、差動増幅器38の機能を無効にすることができる。別の実施の形態では、コロナ制御部26は、主要制御部26によって与えられるイネーブル信号54を停止することによって電圧の低下を開始する。この場合、コロナ制御部26は、図1および図2においても示されるように、フィードバック信号72を主要制御部51に送信する。いったん主要制御部26がフィードバック信号72を受け、イネーブル信号54を停止すると、エネルギ供給部24は、コロナ点火装置22に供給されるエネルギの電圧を低下させるか、または、エネルギをコロナ点火装置22に供給することを停止する。」

ウ 段落[0014]の「図2は、本発明の一実施の形態に従う、コロナ点火システム、および、駆動回路30の部品を示すブロック図である。駆動回路30は、トリガ回路36と、差動増幅器38と、第1のスイッチ40と、第2のスイッチ42と、変圧器44と、電流センサ46と、ローパスフィルタ48と、クランプ50とを含む。駆動回路30に与えられるエネルギは、コロナ点火システムが稼働中に共振周波数で振動する。」という記載から、引用文献2に記載されたコロナ点火システムは、駆動回路30を備え、駆動回路30は、トリガ回路36と、差動増幅器38と、第1のスイッチ40と、第2のスイッチ42と、変圧器44と、電流センサ46と、ローパスフィルタ48と、クランプ50とを含み、駆動回路30に与えられるエネルギは、コロナ点火システムが稼働中に共振周波数で振動することが分かる。

エ 上記ウ、並びに段落[0015]の「エンジン制御装置(図示せず)の主要制御部51は、典型的には、差動増幅器38を作動させるイネーブル信号54を与える。トリガ回路36は、その後、イネーブル信号54に応答して、本システムを通って、コロナ点火装置22から、およびコロナ点火装置22に流れる、エネルギの周波数と電圧との振動を開始する。トリガ回路36は、トリガ信号52を発生することと、トリガ信号52を差動増幅器38に伝送することとによって振動を開始する。本システムは共振周期を有し、トリガ信号52は、典型的には、共振周期の半分よりも短い。」、段落[0016]の「差動増幅器38は、トリガ信号52を受けると起動される。差動増幅器38は、その後、正入力56でエネルギを受け、エネルギを増幅し、第1の出力58および第2の出力59からエネルギを伝送する。」、及び段落[0017]の「駆動回路30の第1のスイッチ40は、差動増幅器38の第1の出力58によって有効になり、エネルギ供給部24からコロナ点火装置22にエネルギを向ける。スイッチ40,42は、BJT、FET、IGBT、または、その他好適な種類であってもよい。」という記載から、駆動回路30の第1のスイッチ40及び第1のスイッチ42が発振回路を構成する(「発振」の定義については、本願明細書の段落【0022】及び【0035】を参照。)ことが分かる。

オ 段落[0018]の「コロナ点火装置22の部品は、共振回路または同調回路とも呼ばれる、本システムのLC回路を共に設ける。センサ46で共振電流を検出することによって、本システムの共振周波数は、LC回路の共振周波数と等しくなる。」という記載から、コロナ点火システムの共振周波数は、コロナ点火装置22の部品と共に設けるLC回路の共振周波数と等しくなることが分かる。

カ 段落[0014]の「図2は、本発明の一実施の形態に従う、コロナ点火システム、および、駆動回路30の部品を示すブロック図である。駆動回路30は、トリガ回路36と、差動増幅器38と、第1のスイッチ40と、第2のスイッチ42と、変圧器44と、電流センサ46と、ローパスフィルタ48と、クランプ50とを含む。」、段落[0018]の「駆動回路30の変圧器44は、エネルギを受けるための変圧器入力60と、エネルギ供給部24からコロナ点火装置22および電流センサ46にエネルギを伝送するための変圧器出力62とを含む。」、及び段落[0019]の「電流センサ46は、典型的には抵抗器であり、変圧器44およびコロナ点火装置22の出力でのエネルギの電流を測定する。変圧器44の出力でのエネルギの電流は、典型的には、コロナ点火装置22でのエネルギの電流に等しい。」という記載、並びに図2から、電流センサ46は、典型的には抵抗器であり、変圧器44の出力でエネルギの電流を測定すること、及び出力巻線の端部に接続される抵抗器が電流センサ46として働くことが分かる。

キ 段落[0019]の「電流センサ46は、その後、エネルギをローパスフィルタ48に伝送する。ローパスフィルタ48は、不要な周波数を除去し、エネルギの電流の位相シフトをもたらす。位相シフトは、典型的には、180°よりも大きくない。」という記載、及び段落[0020]の「クランプ50は、ローパスフィルタ48からエネルギを受け、エネルギの電流の信号調整を実行する。信号の調整は、エネルギの電流を方形波および安全電圧に変換することを含んでもよい。クランプ50は、その後、エネルギを差動増幅器38の負入力68に戻すように伝送する。」という記載から、ローパスフィルタ48の位相シフトは、180°よりも大きくないこと、ローパスフィルタ48が不要な周波数を除去すること、ローパスフィルタ48からエネルギを受けたクランプ50は、エネルギの電流の信号調整を実行し、その後、エネルギを差動増幅器38の負入力68に戻すように伝送する(すなわち、フィードバックする)ことが分かる。

(2)引用発明2、引用文献2技術1、及び引用文献2技術2
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

〔引用発明2〕
「コロナ点火システムのための駆動回路30及びコロナ点火装置22であって、
二次巻線66および2つの一次巻線64を有する変圧器44を備え、前記二次巻線66および前記2つの一次巻線64は、磁気コアに巻き付けられ、前記駆動回路30はさらに、
前記二次巻線66(審決注:図2の符号66は指示する場所が誤記されている。)の一端に接続されたコイル27と、
前記二次巻線66の別の端部に接続された電流センサ46とを備え、
前記二次巻線66にエネルギを流し、
共振周波数、スイッチ40、42及びローパスフィルタ48を有する駆動回路30を含み、前記ローパスフィルタ48は、前記スイッチ40、42を前記共振周波数に維持するために、180°よりも大きくない電流の位相シフトを提供し、不要な周波数をフィルタリングし、フィルタリングされたフィードバック信号を提供する、駆動回路30及びコロナ点火装置22。」

そして、上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献2には、ローパスフィルタ48に関して、次の技術(以下、「引用文献2技術1」という。)が記載されている。

〔引用文献2技術1〕
「ローパスフィルタ48は、スイッチ40、42を共振周波数に維持するために、180°よりも大きくない電流の位相シフトを提供し、不要な周波数をフィルタリングし、フィルタリングされたフィードバック信号を提供する技術。」

また、上記(1)(特にカ)の記載及び図面(特に図2)の記載から、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2技術2」という。)が記載されていると認める。

〔引用文献2技術2〕
「二次巻線66の端部に接続される抵抗器が、電流センサ46として働くこと。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「コア」は、本願発明における「磁気コア」に相当し、以下同様に、「一方の端部」は「一端」に、「出力巻線に誘導された電流」は「出力巻線を通る電流」に、「反対方向」は「対向する方向」に、「MOSFET」は「発振器」に、「ノイズ」は「不要な周波数」に、「フィルタ処理」は「フィルタリング」に、「与える」は「提供する」に、「電力増幅器回路及び点火装置アセンブリ」は「電力増幅器回路」に、それぞれ相当する。
また、本願発明における「電流センサ」は、「抵抗器、ダイオード、インダクタおよびキャパシタのうちの少なくとも1つ」(請求項4を参照)であるから、引用発明1における「出力巻線の別の端部に接続される抵抗器」は、本願発明における「出力巻線の別の端部に接続される電流センサ」と、「出力巻線の別の端部に接続される抵抗器」という限りにおいて一致する。
また、引用発明1における「点火装置アセンブリ」は、点火端部サブアセンブリを含むものであるから、本願発明における「コロナ点火装置」に相当する。
また、引用発明1における「フィルタ」は、本願発明における「ローパスフィルタ」と、「フィルタ」という限りにおいて一致し、引用発明1における「共振周波数、MOSFETおよびフィルタを有する点火装置アセンブリ」は、本願発明における「共振周波数、発振器およびローパスフィルタを有するコロナ点火装置」に、「共振周波数、発振器およびフィルタを有するコロナ点火装置」という限りにおいて一致する
また、引用発明1における「共振振動数で駆動し、共振振動数に維持する」ことは、本願発明における「共振周波数に維持する」ことに相当する。そして、引用発明1における「点火装置アセンブリの共振振動数」は、本願発明1における「コロナ点火装置の共振周波数」に相当するから、結局、引用発明1における「前記MOSFETを前記点火装置アセンブリの前記共振振動数で駆動し、前記共振振動数に維持する」ことは、本願発明における「前記発振器を前記コロナ点火装置の前記共振周波数に維持する」ことに相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明1とは、
「コロナ点火システムのための電力増幅器回路であって、
出力巻線および2つの一次巻線を有するRF変圧器を備え、前記出力巻線および前記2つの一次巻線は、磁気コアに巻き付けられ、前記電力増幅器回路はさらに、
出力巻線の一端に接続されたインダクタおよびキャパシタと、
出力巻線の別の端部に接続された抵抗器とを備え、
出力巻線を通る電流は、前記コアにおいて対向する方向に磁束を発生させ、
共振周波数、発振器およびフィルタを有するコロナ点火装置を含み、前記フィルタは、前記発振器を前記コロナ点火装置の前記共振周波数に維持するために、不要な周波数をフィルタリングし、フィルタリングされたフィードバック信号を提供する、電力増幅器回路。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点1〕
本願発明は、出力巻線の別の端部に接続される「電流センサ」を備えるのに対し、引用発明1は、出力巻線の別の端部に接続される「抵抗器」を備える点

〔相違点2〕
「フィルタ」について、本願発明は「ローパスフィルタ」であり、「少なくとも120°であって180°未満の電流の位相シフトを提供」するのに対し、引用発明1の「フィルタ」は、そのような位相シフトを提供するローパスフィルタであるか否か不明である点。

2 判断
上記相違点について判断する。
(1)相違点1について
引用文献2には、「二次巻線66の端部に接続される抵抗器が、電流センサ46として働くこと。」(上記「引用文献2技術2」)が記載されている。
そうすると、引用文献1に記載された「出力巻線の別の端部に接続される抵抗器」を、引用文献2技術2を踏まえ、当業者の通常の創作能力の範囲で、電流センサとして働くようにすることは、容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用文献1の段落[0008]には、「変圧器20から出力される電流および電圧は点Aで検知され、従来の信号調整は、例えば、信号からノイズを取除くために73および75でそれぞれ実行される。例えば、この信号調整は能動、受動、またはデジタル、ローパスおよびバンドパスフィルタを含んでもよい。」と記載され、信号調整のためのフィルタはローパスフィルタを含んでいてもよいことが示唆されている。
次に、引用文献2には、上記引用発明2、及び「ローパスフィルタ48は、スイッチ40、42を共振周波数に維持するために、180°よりも大きくない電流の位相シフトを提供し、不要な周波数をフィルタリングし、フィルタリングされたフィードバック信号を提供する技術。」(上記「引用文献2技術1」)が記載されている。また、引用文献2の図2には、「ローパスフィルタ」、「180°位相シフト」という事項が記載され、電流の位相シフトとしては「180°位相シフト」が望ましいことが示されている。
そして、引用発明1と、引用発明2とは、コロナ点火システムという共通の技術分野において、コロナ点火システムを共振周波数で駆動するという共通の技術に関するものである。
一方、本願明細書の段落【0045】には、「変圧器Eおよび電流センサFを介して接地に流れる電流により、コロナ点火装置の電流の流れを反映して、信号10において電圧が上昇する。しかし、信号10における電圧は、システム、特に接続ケーブルにおける寄生キャパシタンスの充電および放電のために、高周波数成分を含む。フィルタブロックGは、これらの不要な周波数を除去し、位相シフトを提供する。位相シフトは、少なくとも120°であるが、好ましくは180°未満に近い。したがって、ローパスフィルタGは、コロナ点火装置の電流を反映するがコロナ点火装置の電流とほぼ逆位相であるきれいな正弦波電流信号を11において提供する。比較器ブロックBの反転入力3を用いてさらなる180°位相シフトが提供される。比較器ブロックBならびにスイッチCおよびDにおける不可避の遅延は、360°の合計位相シフトを生じさせる。これは、安定した発振に必要な条件である。」と記載され、不要な周波数(高周波成分)を除去するためにフィルタブロックGが設けられること、位相シフトは少なくとも120°であるが好ましくは180°未満に近いことが分かる。また、「比較器ブロックBの反転入力3を用いてさらなる180°位相シフトが提供され」、「360°の合計位相シフトを生じさせる」ことから、ローパスフィルタにおける位相シフトは、360°-180°=180°(又は、ほぼ180°)でなくてはならないことが分かる。つまり、ローパスフィルタにおける位相シフトが「少なくとも120°であるが、好ましくは180°未満に近い」ことのうち、「少なくとも120°」と、120°を下限とすることに特段の技術的意義あるいは技術的意義はなく、180°未満に近い角度(ほぼ180°)が適していることが分かる。さらに、本願の実施例である図4にも「ローパスフィルタ」「≒180°位相シフト」と記載されており、「≒180°位相シフト」が適していることが裏付けられる。
すなわち、本願発明の「少なくとも120°であって、180°未満の電流の位相シフト」と、引用文献2技術1の「180°よりも大きくない電流の位相シフト」とは、表現こそ異なるものの、最適の電流の位相シフトとして、「ほぼ180°の電流の位相シフト」を提供することを意味している。
そうすると、「少なくとも120°」とすることは当業者が適宜設定する設計事項であって、「180°よりも大きくない電流の位相シフト」を、「少なくとも120°であって、180°未満の電流の位相シフト」とすることには格別困難性がないから、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1において、引用文献2技術1を適用することにより当業者が容易に想到できたことである。

なお、請求人は、審判請求書において、「上記のように、本願請求項1,5,7に係る発明は、いずれも「少なくとも120°であって180°未満の位相シフト」を提供あるいは生じさせるという特徴を有する。このような特徴によって、ローパスフィルタが、コロナ点火装置の電流を反映するが、コロナ点火装置の電流とほぼ逆位相であるきれいな正弦波電流信号を提供することができる(明細書の段落[0045]を参照)。」と主張する。
しかしながら、「ローパスフィルタが、コロナ点火装置の電流を反映するが、コロナ点火装置の電流とほぼ逆位相であるきれいな正弦波電流信号を提供することができる」のは、電流の位相シフトが「≒180°」(ほぼ180°)のとき(本願の図4のGの前後の位相を参照)であって、120°のときの正弦波電流信号がどのようなものか、明細書には明記されていない。そうすると、審判請求書の上記主張は、電流の位相シフトが「≒180°」のときのものであり、下限である120°のときに「コロナ点火装置の電流とほぼ逆位相であるきれいな正弦波電流信号を提供する」ことができるかは明細書の記載からは明らかでない。
したがって、請求人の上記主張は失当である。

3 まとめ
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明1、引用文献2技術1及び引用文献2技術2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-09 
結審通知日 2019-04-16 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2016-500582(P2016-500582)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 水野 治彦
金澤 俊郎
発明の名称 セルフチューニング電力増幅器を有するコロナ点火  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ