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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03K
管理番号 1355603
審判番号 不服2018-10924  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-08 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2014- 32389「光電センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日出願公開、特開2015-159385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月23日の出願であって、平成29年9月20日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月23日付けで拒絶査定がなされたところ、同年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(なお、下線は、補正箇所を示す。)。
「 【請求項1】
透過型光電センサ、または、回帰反射部材と組み合わせて使用する回帰反射型光電センサであって、
検出領域内に存在する検出対象物を検出するための検出光を発する投光手段と、
前記検出光に対する戻り光を受ける受光手段と、
前記受光手段の出力信号値である受光信号値としきい値とを比較し、前記検出対象物の有無を判定する判定手段と、
目標比率を設定する目標比率設定手段と、
前記検出対象物が前記検出領域にない状態において、前記受光信号値に対する前記しきい値の比率が前記目標比率となるように、感度パラメータを調整する感度パラメータ調整手段と、
を備え、
前記目標比率設定手段は、回転可能な操作部材を有し、
前記操作部材の回転方向における位置は、前記目標比率に対応しており、
前記目標比率は、設定可能な範囲が定められており、
前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する第1位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する第2位置との間において、前記目標比率を設定可能であり、
前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記目標比率の初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能であり、
前記目標比率の初期値に基づいて前記感度パラメータが調整された後に前記目標比率設定手段の前記操作部材が操作された場合、前記感度パラメータ調整手段は、操作された位置に対応する前記目標比率に基づいて、前記感度パラメータを調整する、
光電センサ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年11月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
透過型光電センサ、または、回帰反射部材と組み合わせて使用する回帰反射型光電センサであって、
検出領域内に存在する検出対象物を検出するための検出光を発する投光手段と、
前記検出光に対する戻り光を受ける受光手段と、
前記受光手段の出力信号値である受光信号値としきい値とを比較し、前記検出対象物の有無を判定する判定手段と、
目標比率を設定する目標比率設定手段と、
前記検出対象物が前記検出領域にない状態において、前記受光信号値に対する前記しきい値の比率が前記目標比率となるように、感度パラメータを調整する感度パラメータ調整手段と、
を備え、
前記目標比率設定手段は、回転可能な操作部材を有し、
前記操作部材の回転方向における位置は、前記目標比率に対応しており、
前記目標比率は、設定可能な範囲が定められており、
前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する第1位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する第2位置との間において、前記目標比率を設定可能である、
光電センサ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「感度パラメータ調整手段」について、「前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記目標比率の初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能であり、 前記目標比率の初期値に基づいて前記感度パラメータが調整された後に前記目標比率設定手段の前記操作部材が操作された場合、前記感度パラメータ調整手段は、操作された位置に対応する前記目標比率に基づいて、前記感度パラメータを調整する」との特定事項を追加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりである。
ここで、本件補正発明に係る「光電センサ」は、「透過型光電センサ、または、回帰反射部材と組み合わせて使用する回帰反射型光電センサ」であるところ、「透過型光電センサ」である場合に「受光手段」が受ける「前記検出光に対する戻り光」が何を意味するのかが明確ではないが、発明の詳細な説明の「投光素子11から出射された検出光Aは、回帰反射部材2で反射して戻り光Bとなる」(段落17)、「受光手段22は、戻り光Bを受ける。」(段落18)、「さらに、本発明は、透過型光電センサにも適用可能である。(中略)光電センサ1aでは、受光手段22は、投光手段21が発し、検出領域5を通過した検出光Aを直接受ける。」(段落47)との記載を参酌すると、補正後の請求項1の「前記検出光に対する戻り光」には、「透過型光電センサ」の場合に「受光手段」が受ける「検出領域を通過した検出光」も含まれると解するのが合理的である。

(2)引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-29939号公報(平成23年2月10日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審において付与。)。
(ア)「【0017】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施の形態における光電センサユニットを説明する。図1(a)は本実施の形態におけるセンサユニット30を一方の側面から見た状態の斜視図であり、図1(b)はセンサユニット30を反対側の側面から見た状態の斜視図である。また図2はセンサユニット30を上面から見た図である。
【0018】
センサユニット30は図1(a)、(b)に示すように、幅が狭いケース51に部材を収容したユニットである。ケース51の上面には4桁の7セグメントLEDで形成された表示器や各種のスイッチから成る操作部35が設けられている。表示部34はセンサの受光量と設定閾値や、受光量と余裕度などの値を同時にデジタル表示可能である。
【0019】
操作部35は、スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え、表示部34はケース51の長手方向に横並びに隣接して配置された第1、第2の表示部34a、34bが設けられている。各表示部34a、34bはそれぞれ4桁の7セグメントLEDで構成されている。」

(イ)「【0023】
本実施の形態におけるセンサユニット30はネットワークユニット10を介して、図示しないPLC等の上位制御装置にデータを転送したり、あるいは上位制御装置からの命令を受け付けることができる。図2(当審注:「図3」の誤記と認める。)は複数のセンサユニット30を連結し、ネットワークユニット10を介して上位制御装置に接続される連設型センサシステムの構成を示す図である。上位制御装置からはネットワークユニット10を介して各センサユニットに個別に、あるいは同時に外部入力信号を入力することができる。
【0024】
図4は、センサユニット30の内部構成を示す機能ブロック図である。センサユニット30は、1チップのゲートアレイやマイクロプロセッサを用いて形成した制御部31を有している。制御部31はタイミング制御部31a、判定部31b、シリアル通信部31cを内部に備えている。また制御部31には発光部32、受光部33、表示部34、操作部35、メモリ36、出力トランジスタQ1及びコネクタ37、38が接続されている。
【0025】
制御部31は、シリアル伝送ライン41を介してネットワークユニット10との間でシリアル信号を送受信する機能を有する。また、センサユニット30内のパラメータが更新されたときにメモリ36が保持する更新フラグをオンとし、パラメータの送出を終えるとこのフラグをリセットする機能を有している。
【0026】
判定部31bは受光量を所定の閾値により弁別してオン/オフの二値化された判別信号に変換する判別部である。センサの判別信号は出力用トランジスタQ1を介して外部に直接出力される。
【0027】
シリアル通信部31cはコネクタ37、38のシリアル伝送ライン41に接続され、連設型センサシステム1に接続されるネットワークユニット10との間でシリアル通信を行うもので、シリアル伝送手段を構成している。
【0028】
発光部32はタイミング制御部31aからのタイミング信号に基づいて発光素子を駆動するものである。発光素子からの光は光ファイバ32aを介して伝送されて先端から光を輻射する。光ファイバ32aから輻射される光は物体検知領域を介して光ファイバ33aに入射し、受光部33に導かれる。受光部33は入射光を電気信号に変換し、増幅するものである。
【0029】
メモリ36は、検出された受光量、判別信号を記憶する揮発性メモリと、各センサユニットで個別に設定される設定パラメータや初期化情報等を記憶する不揮発性メモリとからなり、このメモリの詳細については後述する。
【0030】
コネクタ37は、ネットワークユニット10と隣接するセンサユニット30のコネクタ38と互いに接続可能となっている。またコネクタ37はシリアル伝送ライン41の上流側に接続される2個の接続端子37a、37bと、コネクタ38の接続端子38a、38bとの間は各々直接接続されてシリアル伝送ライン41が形成されている。
【0031】
コネクタ38はシリアル伝送ライン41の下流側に接続される2個の接続端子38a、38bを有する。コネクタ37の接続端子37a、37bと、コネクタ38の接続端子38a、38bとの間は各々直接接続されてシリアル伝送ライン41が形成されている。
【0032】
コネクタ37の接続端子37cはタイミング制御部31aを介してコネクタ38の接続端子38cに接続されている。また、コネクタ37の接続端子37d、37eとコネクタ38の接続端子38d、38eとの間は各々直接接続され、センサユニット30の内部に電源を供給すると共に、下流のセンサユニット30に電源を供給する。
【0033】
センサユニット30のメモリ36には複数の設定パラメータが記憶されており、センサユニット30はこの設定パラメータに基づいて様々な検出機能及び表示機能を実行する。設定パラメータの設定は、ユーザが表示部34の設定画面を見ながら、操作部35を操作することにより順次実行される。
【0034】
以下、各設定パラメータの設定の流れについて図5?図9を参照して説明する。図5は基本機能設定に関する設定フロー図である。本実施の形態におけるセンサユニット30は出力を2つ備えており、設定を行う出力をチャンネルセレクタ35dにより選択できる。したがって、ユーザはまずチャンネルセレクタ35dにより出力1を選択し、出力1における設定パラメータを設定する。
【0035】
STEP1-1ではパワーモードを設定する。各種のパワーモードは、互いに相反する受光量と応答性のバランスを定めるものであり、受光量を増加させるのに、例えば受光周期を長く設定したり、受光量を複数回加算する手法を採用することができる。受光量が大きくなるパワーモードを選択すると応答速度が遅くなるため、ユーザは用途やワークの種類に応じたパワーモードを選択して設定する必要がある。
【0036】
設定できるパワーモードとしては、最も応答速度が早いが受光量が少ないハイスピードモード、応答速度と受光量のバランスを重視したファインモード、ファインモードよりも受光量を増大させたターボモード、ターボモードよりも更に受光量を増大させたモードとして順にスーパーモード、ウルトラモード、メガモードがそれぞれ選択できる。一般に光電センサユニットを透過型ではなく反射型で使用する場合には透過型よりも受光量が少なくなるため、上述した大きな受光量が取得できるパワーモードが有効である。
【0037】
次にSTEP1-2でチューニングモード設定が行われる。ここでいうチューニングモード設定とは受光量と比較する閾値をどのように設定するかを意味しており、通常のチューニングモード設定とパーセントチューニング設定のいずれかが選択できる。通常のチューニングモード設定を選択した場合は、上述した2つの表示部34a、34bのいずれかに受光量が表示され、他方に閾値が表示された状態でアップダウンボタン35aを操作することにより、受光量に対する閾値をマニュアルで調整できる。また、閾値設定方法としてワークのある状態と無い状態の受光量の中間値を閾値として設定する2点チューニングや、一定時間内の受光量の最大と最小の中間値を閾値にするフルオートチューニング、現在の受光量をゼロにシフトし、ゼロに対する受光量の増加量にあわせて閾値を設定するゼロシフトチューニングなどがある。
【0038】
パーセントチューニング設定は、閾値設定時の受光量に対する比率で閾値を設定する設定方法である。パーセントチューニング設定を選択した場合は、基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示すパーセント目標値を設定する。例えば、パーセント目標値を-10Pに設定した場合は、基準受光量に対して-10%の大きさの閾値が設定される。基準受光量は、基準としたい受光量の状態でセットボタン35bを押下することにより決定する。
【0039】
続いて、ユーザはSTEP1-3で基本設定の次に設定する設定ステージの選択を行う。他の設定ステージとしては検出設定ステージ、表示設定ステージ、システム設定ステージがある。図5は検出設定ステージに関する設定フローである。検出設定ステージでは、タイマモード設定(STEP2-1)、検出モード設定(STEP2-2)、外部入力設定(STEP2-3)の順に設定を行う。」

(ウ)「【0042】
STEP2-2では検出モードの設定を行う。検出モードとしては通常(光量)検出モード、自動感度追従モード、エリア検出モード、エッジ検出モード等が選択できる。通常検出モードは、受光量を閾値と比較して判別信号を出力する通常の検出モードである。自動感度追従モードはワークが無い状態、すなわち出力がOFFの状態における受光量の変動に追従するように閾値を自動補正する機能であり、ワークが無い状態における受光量が漸減的に低下するような場合にも常に最適な閾値を自動設定することができるモードである。自動感度追従モードを選択した場合は、閾値の自動補正を実行する頻度(補正スピード)を設定する。また、通常検出モード、自動感度追従モードを設定した場合は、受光量が閾値を上回っているときに出力をONにするL-ON(入光時ON)、または受光量が閾値を下回っているときに出力をONにするD-ON(遮光時ON)のいずれかの出力論理の設定を行う。出力論理の設定は受光量と閾値を表示する通常画面からモードボタン35cを押下することにより設定メニューを呼び出していずれかの出力論理を設定する。」

(エ)「【0044】
検出モードの設定が終わったら、出力論理の設定を行う。出力論理の設定はL-ON(受光時出力ON)、D-ON(遮光時出力ON)のいずれかを設定できる。センサユニット30を反射型として用いる場合は出力論理設定をL-ONに設定し、透過型として用いる場合はD-ONに設定する。なお、出力論理の設定は、ケース51上面に設けられた出力切替ボタン35eを操作することにより行うこともできる。
【0045】
STEP2-3では外部入力機能を選択する外部入力設定を行う。外部入力機能は、センサユニット30に接続された外部入力線、あるいはネットワークユニット10を介して上位制御装置から外部入力信号を受け付け、外部入力の信号パターンであると判断したときに実行する外部入力機能を設定する。外部入力機能としては外部チューニング機能、プリセット機能、ゼロシフト機能、出力固定機能、投光停止機能、表示停止機能等の機能が選択できる。
【0046】
外部チューニング機能は外部入力信号を受け付けたときに閾値のチューニングを行う機能であり、例えば感度設定方法としてパーセントチューニング設定が設定されており、パーセントチューニング目標値として-10Pが設定されている場合には、センサユニット30が外部入力信号を受け付けたときの-10%の受光量が閾値として再設定される。したがって、ワークが無い状態のときの受光量が漸減的に低下するような場合でも、定期的に外部入力信号をセンサユニット30に入力することにより、閾値を適切な大きさに維持することができる。」

(オ)「【0071】
上記の操作により実行指示が行われる各初期化処理は、センサユニット30に記憶された初期化情報を読み出して設定することにより最終的に実行される。図13はセンサユニット30のメモリ36の内部データを示す図である。メモリ36は、検出情報メモリ36a、設定情報メモリ36b、初期化情報メモリ36cとからなる。検出情報メモリ36aはセンサユニット30が検出した受光量や、該受光量を閾値と比較した結果得られる判別値を記憶するメモリである。設定情報メモリ36bは上述した各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており、操作部35による操作や、外部に接続された上位制御装置から設定内容の変更が可能である。制御部31は設定情報メモリ36bに記憶された各設定パラメータの設定内容に基づいて各種の表示機能、検出機能を制御する。
【0072】
初期化情報メモリ36cは全ての設定パラメータの初期設定と、特別初期化モード(落下検出モード、パーセントチューニングモード、反射型背景キャンセルモード、光量最大モード)で設定変更が推奨される設定パラメータの組み合わせを各設定パラメータの設定変更内容と紐付けて記憶している。図14は各特別初期化モードにおける設定変更が行われる設定パラメータと、各設定パラメータの設定内容を示す一覧を示す図である。図14に示すように、特別初期化モードによって設定されるパラメータの数及び種別は異なる。特別初期化モードは設定されるパラメータの数、種類、内容の推奨設定をユーザの用途やワークの種類に応じてトータルで提供する。」

(カ)「【0082】
続いて図14に示す他の特別初期化モードについて説明する。パーセントチューニングモードは出力1の出力論理をD-ON、チューニングモードをパーセントチューニング、パーセント目標値を-5%、プリセットレベルを101%、外部入力機能を外部チューニングとし、出力2の機能をピークリミット検出、ピークリミット設定値を100とする。
【0083】
パーセントチューニングモードは、センサユニット30を透過型として用いる場合を想定して用意されたモードであり、ワークが無い状態で検出される受光量と、受光量と比較される閾値の相対関係を環境変動や素子劣化等の外部要因の変動を許容しながら維持したいユーザにとって有効なモードである。パーセントチューニングモードを実行すると、現在の受光量を100%としてパーセント目標値である-5%、すなわち現在の受光量の95%が閾値として設定される。出力1は受光量が閾値を下回った場合に出力をONとする。また、プリセット機能が実行され、プリセット目標値として101が設定される。プリセット機能実行時の表示最大値は100であり、僅かな受光量の低下であれば表示には反映されず、表示最大値100の表示を継続する。
【0084】
また、パーセントチューニングモードでは外部入力機能として外部チューニング機能が設定されている。ユーザはセンサユニット30に備えられた外部入力線あるいはネットワークユニット10を介して外部入力信号を入力することにより、定期的に閾値のチューニングを実行し、ワークが無い状態における受光量と閾値の相対関係を維持することができる。
【0085】
また、パーセントチューニングモードでは受光量の絶対値の低下を検出するために出力2にリミット検出機能を設定している。したがって、出力1では検出できない受光量の絶対値が低下してきた場合に予知警報を出力することができる。本実施の形態におけるパーセントチューニングモードではリミット設定値として100が初期設定されるため、受光量が100よりも小さくなったことを検出した場合に予知警報を出力する。上記パーセント目標値、プリセット目標値、リミット設定値はユーザの使用環境に応じて設定変更することが可能である。」

(キ)「【0090】
以上説明した各特別初期化モードは、各々設定変更が推奨される設定パラメータの設定を行うものであるが、ユーザの使用環境によって最適値が異なる閾値や各パラメータの目標値は、特別初期化モードの実行後にユーザによる微調整が必要になることがある。したがって、本実施の形態では、各特別初期化モード実行後にユーザが閾値や各パラメータの目標値を調整した後の設定をユーザ保存データとして初期情報メモリ36cに保存することが可能であり、初期化モードとしてユーザ保存データ読出モードを実行することにより、一切の設定変更を行うことなく所望の設定パラメータの設定を行うことができる。」

(ク)図2、図4及び図14は以下のとおりである。
図2

図4

図14


a 上記(ア)、(イ)の記載、図2及び図4によれば、「光電センサユニット」(【0017】)は、「タイミング制御部31a、判定部31b、シリアル通信部31cを内部に備え」た「制御部31」と、「制御部31」に「接続され」た「発光部32、受光部33、表示部34、操作部35、メモリ36、出力トランジスタQ1及びコネクタ37、38」(【0024】)を含む。そして、「操作部35は、スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え」(【0019】)る。
また、上記(イ)の記載によれば、「発光部32はタイミング制御部31aからのタイミング信号に基づいて発光素子を駆動」し、「発光素子からの光は光ファイバ32aを介して伝送されて先端から光を輻射」し、「光ファイバ32aから輻射される光は物体検知領域を介して光ファイバ33aに入射し、受光部33に導かれ」、「受光部33は入射光を電気信号に変換し、増幅」(【0028】)する。
そうすると、「光電センサユニット」は、「タイミング制御部31a、判定部31b、シリアル通信部31cを内部に備えた制御部31」と、「制御部31に接続された発光部32、受光部33、表示部34、操作部35、メモリ36、出力トランジスタQ1及びコネクタ37、38を含み」、「操作部35は、スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え」、「発光部32は、タイミング制御部31aからのタイミング信号に基づいて発光素子を駆動し、発光素子からの光は光ファイバ32aを介して伝送されて先端から光を輻射し」、「光ファイバ32aから輻射される光は物体検知領域を介して光ファイバ33aに入射し、受光部33に導かれ、受光部33は入射光を電気信号に変換し、増幅」するといえる。

b 上記(イ)の記載によれば、「判定部31bは受光量を所定の閾値により弁別してオン/オフの二値化された判別信号に変換する判別部である」(【0026】)。そして、上記(ウ)、(エ)の記載によれば、「STEP2-2」の「検出モードの設定」において「受光量を閾値と比較して判別信号を出力する通常の検出モード」を「設定した場合は、受光量が閾値を上回っているときに出力をONにするL-ON(入光時ON)、または受光量が閾値を下回っているときに出力をONにするD-ON(遮光時ON)のいずれかの出力論理の設定」(【0042】)が行われ、ここで、「センサユニット30」を「反射型として用いる場合は出力論理設定をL-ONに設定し、透過型として用いる場合はD-ONに設定する」(【0044】)。
そうすると、「判定部31bは、受光量を所定の閾値により弁別してオン/オフの二値化された判別信号に変換する判別部であり、STEP2-2の検出モードの設定において受光量を閾値と比較して判別信号を出力する通常の検出モードを設定した場合は、受光量が閾値を上回っているときに出力をONにするL-ON(入光時ON)、または受光量が閾値を下回っているときに出力をONにするD-ON(遮光時ON)のいずれかの出力論理の設定が行われ、ここで、反射型として用いる場合は出力論理設定をL-ONに設定され、透過型として用いる場合はD-ONに設定され」るといえる。
加えて、上記(イ)には、「STEP1-1」で設定する「パワーモード」に関し、【0036】に「一般に光電センサユニットを透過型ではなく反射型で使用する場合」には「大きな受光量が取得できるパワーモードが有効」であることも記載があるから、「光電センサユニット」は、「透過型、または、反射型として用いる」ことが想定されているといえる。

c 上記(オ)の記載によれば、「メモリ36は、検出情報メモリ36a、設定情報メモリ36b、初期化情報メモリ36cと」(【0071】)からなる。そして、「設定情報メモリ36bは上述した各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており」、「制御部31は設定情報メモリ36bに記憶された各設定パラメータの設定内容に基づいて各種の表示機能、検出機能を制御する」(【0071】)。また、「設定情報メモリ36b」は、「操作部35による操作や、外部に接続された上位制御装置から設定内容の変更が可能である」(【0071】)。
また、「初期化情報メモリ36cは全ての設定パラメータの初期設定」と、「パーセントチューニングモード」で「設定変更が推奨される設定パラメータの組み合わせを各設定パラメータの設定変更内容と紐付けて記憶」(【0072】)しているといえ、上記(カ)の記載及び図14によれば、「パーセントチューニングモード」の設定パラメータとして「パーセント目標値」(「-5P」)が設定されていることが把握できる。
そうすると、「メモリ36は、検出情報メモリ36a、設定情報メモリ36b、初期化情報メモリ36cとからなり」、「設定情報メモリ36bは、各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており」、「制御部31は設定情報メモリ36bに記憶された各設定パラメータの設定内容に基づいて各種の表示機能、検出機能を制御し」、「操作部35による操作や、外部に接続された上位制御装置から設定内容の変更が可能であり」、「初期化情報メモリ36cは、全ての設定パラメータの初期設定と、パーセントチューニングモードで設定変更が推奨される設定パラメータの組み合わせを各設定パラメータの設定変更内容と紐付けて記憶しており、パーセントチューニングモードの設定パラメータとしてパーセント目標値が設定されて」いるといえる。

d 上記(イ)の記載によれば、「基本機能設定に関する設定フロー」の「STEP1-1ではパワーモードを設定」(【0035】)し、「次にSTEP1-2」の「チューニングモード設定」で「通常のチューニングモード設定とパーセントチューニング設定のいずれかが選択でき」、「通常のチューニングモード設定を選択した場合」は、「表示部34a、34bのいずれかに受光量が表示され、他方に閾値が表示された状態でアップダウンボタン35aを操作することにより、受光量に対する閾値をマニュアルで調整できる」(【0037】)。
また、上記(イ)の記載によれば、「パーセントチューニング設定は、閾値設定時の受光量に対する比率で閾値を設定する設定方法」であり、「パーセントチューニング設定を選択した場合は、基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示すパーセント目標値を設定」(【0038】)する。ここで、上記(イ)の記載によれば、「設定パラメータの設定は、ユーザが表示部34の設定画面を見ながら、操作部35を操作することにより順次実行され」る(【0033】)。
次に、上記(イ)、(ウ)によれば、「STEP1-3で基本設定の次に設定する設定ステージの選択」(【0039】)が行われ、「検出設定ステージ」の「STEP2-2では検出モードの設定」(【0039】)が行われる。
そうすると、「基本機能設定に関する設定フローのSTEP1-1ではパワーモードを設定し、次にSTEP1-2のチューニングモード設定で通常のチューニングモード設定とパーセントチューニング設定のいずれかが選択でき、通常のチューニングモード設定を選択した場合は、受光量に対する閾値をマニュアルで調整でき、パーセントチューニング設定は、閾値設定時の受光量に対する比率で閾値を設定する設定方法であり、パーセントチューニング設定を選択した場合は、基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示すパーセント目標値を設定し」、「ここで、設定パラメータの設定は、ユーザが表示部34の設定画面を見ながら、操作部35を操作することにより順次実行され」、「次にSTEP1-3で基本設定の次に設定する設定ステージの選択が行われ、検出設定ステージのSTEP2-2では検出モードの設定が行われ」るといえる。

e 上記(イ)の記載によれば、「基準受光量は、基準としたい受光量の状態でセットボタン35bを押下することにより決定」され(【0038】)、「例えば、パーセント目標値を-10Pに設定した場合は、基準受光量に対して-10%の大きさの閾値が設定される」(【0038】)。また、上記(カ)の記載によれば、「透過型として用いる場合を想定して用意された」「パーセントチューニングモード」は、「ワークが無い状態で検出される受光量と、受光量と比較される閾値の相対関係を環境変動や素子劣化等の外部要因の変動を許容しながら維持したいユーザに有効なモードであ」り、「パーセントチューニングモードを実行すると、現在の受光量を100%としてパーセント目標値である-5%、すなわち現在の受光量の95%が閾値として設定される」(【0083】)から、ワークが無い状態で検出される基準受光量に対してパーセント目標値の大きさの閾値(例えば、パーセント目標値が-5%の場合は現在の受光量の95%の大きさの閾値)が設定されるといえる。
そうすると、「パーセントチューニングモードでは、ワークが無い状態でセットボタン35bを押下することにより、ワークが無い状態で検出される受光量を基準受光量として決定し、基準受光量に対してパーセント目標値の大きさの閾値(例えば、パーセント目標値が-5%の場合は現在の受光量の95%の大きさの閾値)が設定され」るといえる。

f また、上記(キ)の記載によれば、「ユーザの使用環境によって最適値が異なる閾値や各パラメータの目標値は、特別初期化モードの実行後にユーザによる微調整が必要になることがある」(【0090】)。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 透過型、または、反射型として用いる光電センサユニットであって、
タイミング制御部31a、判定部31b、シリアル通信部31cを内部に備えた制御部31と、
制御部31に接続された発光部32、受光部33、表示部34、操作部35、メモリ36、出力トランジスタQ1及びコネクタ37、38を含み、
操作部35は、スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え、
発光部32は、タイミング制御部31aからのタイミング信号に基づいて発光素子を駆動し、発光素子からの光は光ファイバ32aを介して伝送されて先端から光を輻射し、
光ファイバ32aから輻射される光は物体検知領域を介して光ファイバ33aに入射し、受光部33に導かれ、受光部33は入射光を電気信号に変換し、増幅し、
判定部31bは、受光量を所定の閾値により弁別してオン/オフの二値化された判別信号に変換する判別部であり、STEP2-2の検出モードの設定において受光量を閾値と比較して判別信号を出力する通常の検出モードを設定した場合は、受光量が閾値を上回っているときに出力をONにするL-ON(入光時ON)、または受光量が閾値を下回っているときに出力をONにするD-ON(遮光時ON)のいずれかの出力論理の設定が行われ、ここで、反射型として用いる場合は出力論理設定をL-ONに設定され、透過型として用いる場合はD-ONに設定され、
メモリ36は、検出情報メモリ36a、設定情報メモリ36b、初期化情報メモリ36cとからなり、
設定情報メモリ36bは、各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており、制御部31は設定情報メモリ36bに記憶された各設定パラメータの設定内容に基づいて各種の表示機能、検出機能を制御し、操作部35による操作や、外部に接続された上位制御装置から設定内容の変更が可能であり、
初期化情報メモリ36cは、全ての設定パラメータの初期設定と、パーセントチューニングモードで設定変更が推奨される設定パラメータの組み合わせを各設定パラメータの設定変更内容と紐付けて記憶しており、パーセントチューニングモードの設定パラメータとしてパーセント目標値が設定されており、
基本機能設定に関する設定フローのSTEP1-1ではパワーモードを設定し、次にSTEP1-2のチューニングモード設定で通常のチューニングモード設定とパーセントチューニング設定のいずれかが選択でき、通常のチューニングモード設定を選択した場合は、受光量に対する閾値をマニュアルで調整でき、パーセントチューニング設定は、閾値設定時の受光量に対する比率で閾値を設定する設定方法であり、パーセントチューニング設定を選択した場合は、基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示すパーセント目標値を設定し、ここで、設定パラメータの設定は、ユーザが表示部34の設定画面を見ながら、操作部35を操作することにより順次実行され、
次にSTEP1-3で基本設定の次に設定する設定ステージの選択が行われ、検出設定ステージのSTEP2-2では検出モードの設定が行われ、
パーセントチューニングモードでは、ワークが無い状態でセットボタン35bを押下することにより、ワークが無い状態で検出される受光量を基準受光量として決定し、基準受光量に対してパーセント目標値の大きさの閾値(例えば、パーセント目標値が-5%の場合は現在の受光量の95%の大きさの閾値)が設定され、
ユーザの使用環境によって最適値が異なる閾値や各パラメータの目標値は、特別初期化モードの実行後にユーザによる微調整が必要になることがある、
光電センサユニット。」

イ 周知技術
(ア)本願明細書の段落【0002】及び【0003】に従来の光電センサとして例示される、特開2002-171162号公報(平成14年6月14日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当審において付与。以下、同様。)。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は対象物の有無を高分解能で判定する光電センサおよび光電センサの感度調整方法に関する。」

b 「【0028】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る光電センサの一実施の形態要部ブロック構成図である。図1において、光電センサ1は、受光手段2、投光手段3、判定手段4を備え、投光手段3から対象物20に光信号L_(S)を投光し、対象物20で反射された反射光L_(R)を受光手段2で受光して光-電気変換を施した電気信号に基づいて判定手段4で対象物20の有無を判定する。
(中略)
【0031】利得調整手段7は、増幅器6の利得が変更できる可変抵抗器(ボリューム)等で構成し、外部から可変抵抗器(ボリューム)を操作して増幅器6の利得(ゲイン)を調整する。また、利得調整手段7は、可変抵抗器(ボリューム)の位置(回転角度=抵抗値)に対応した位置信号V_(P)(直流電圧)を判定手段4のA/D変換手段10Aに提供する。なお、利得調整手段7の可変抵抗器(ボリューム)は、増幅器6の利得(ゲイン)が増加するように調整すると、位置信号V_(P)(直流電圧)も増加するように構成する。
(中略)
【0038】位置信号V_(DP)の増加は、増幅器6の利得(ゲイン)の増加に対応するので、つまり光電センサ1の感度を増加することになる。図2から明らかなように、光電センサ1が低感度の場合には、基準値V_(K1)を大きく、ヒステリシス幅ΔV_(1)を狭く設定するため、分解能を高く設定することができる。また、位置信号V_(DP)がV_(PT)以下(V_(DP)≦V_(PT))では感度も次第に低くなるので、基準値V_(K1)をリニア(直線的)に増加させてヒステリシス幅ΔV_(1)をリニア(直線的)に減少させ、ヒステリシス幅ΔV_(1)を次第に狭く設定するため、分解能も位置信号V_(DP)の減少に伴って次第に高くなる。」

c 「【0062】図6はこの発明に係る光電センサの別実施の形態要部ブロック構成図である。図6において、光電センサ15は、受光手段16、投光手段17、判定手段18を備える。なお、図6の構成は、図1の受光手段3から利得調整手段7を削除して受光手段16とし、投光手段3に光量調節手段22を設けて投光手段17とした点が基本的に異なる。
(中略)
【0065】光量調節手段22は、駆動手段9の駆動信号P_(D)の振幅が変更できる可変抵抗器(ボリューム)等で構成し、外部から可変抵抗器(ボリューム)を操作して駆動手段9の駆動信号P_(D)の振幅を調節する。また、光量調節手段22は、可変抵抗器(ボリューム)の位置(回転角度=抵抗値)に対応した調節信号V_(T)(直流電圧)を判定手段18のA/D変換手段19Aに提供する。なお、光量調節手段22の可変抵抗器(ボリューム)は、駆動信号P_(D)の振幅が増加(光量が増加)するように調節すると、調節信号VT(直流電圧)も増加するように構成する。
(中略)
【0070】調節信号V_(DT)の増加は、発光素子8の光量の増加に対応するので、つまり光電センサ15の感度を増加することになる。図7から明らかなように、光電センサ15が低感度の場合には、基準値V_(K2)を大きく、ヒステリシス幅ΔV_(2)を狭く設定するため、分解能を高く設定することができる。また、調節信号V_(DT)がV_(TT)以下(V_(DT)≦V_(TT))では感度も次第に低くなるので、基準値V_(K)2をリニア(直線的)に増加させてヒステリシス幅ΔV_(2)をリニア(直線的)に減少させ、ヒステリシス幅ΔV_(2)を次第に狭く設定するため、分解能も調節信号V_(DT)の減少に伴って次第に高くなる。」

上記a?cの記載によれば、「増幅器6の利得(ゲイン)」(【0031】)及び「駆動手段9の駆動信号P_(D)の振幅」(【0065】)は、いずれも「光電センサ」(【0028】)の感度調整のためのパラメータといえる。また、当該パラメータは、「可変抵抗器(ボリューム)を操作」することにより、「可変抵抗器(ボリューム)の位置(回転角度=抵抗値)に対応した位置信号V_(P)(直流電圧)」又は「調節信号V_(DT)」が「判定手段4のA/D変換手段10Aに提供」(【0031】、【0065】)されることにより設定されるといえる。そして、「位置信号V_(DP)の増加は、増幅器6の利得(ゲイン)の増加に対応」し、「調節信号V_(DT)の増加は、発光素子8の光量の増加に対応する」(【0038】、【0070】)。
よって、「可変抵抗器(ボリューム)」は「光電センサの感度調整のためのパラメータである増幅器の利得(ゲイン)又は駆動手段の駆動信号の振幅を設定するためのパラメータ設定手段」といえる。そして、「前記パラメータ設定手段は、回転可能な操作部材を有し」、「前記操作部材の回転方向における位置は、感度調整のためのパラメータに対応し」ているといえる。また、可変抵抗器(ボリューム)は、その構造上、抵抗値の可変範囲が存在することは明らかであり、パラメータの設定範囲に合わせて抵抗器の特性やサイズ等が選択されることも技術常識であるから、「前記パラメータは、設定可能な範囲が定められており」、「前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する位置との間において、前記パラメータが設定可能」であるといえる。

そうすると、引用文献2には、光電センサの感度調整のためのパラメータである増幅器の利得(ゲイン)又は駆動手段の駆動信号の振幅を設定するためのパラメータ設定手段として、次の技術事項が記載されているといえる。
「回転可能な操作部材を有するパラメータ設定手段であって、
前記操作部材の回転方向における位置は、前記パラメータに対応しており、
前記パラメータは、設定可能な範囲が定められており、
前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する位置との間において、前記パラメータを設定可能である、パラメータ設定手段」。

(イ)特開2003-69407号公報(平成15年3月7日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
a 「【0016】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1ないし図7によって説明する。図1は、本発明を適用した光電センサ10のハードウエア上の構成を示した図である。光電センサ10は、同図に示すように、投光素子11と投光回路12とからなる投光部13と、受光素子14と受光回路15とからなる受光部16と、CPU17とを備え、CPU17からの信号に基づいて投光回路12及び受光回路15が駆動される。より詳しくは、投光回路12に対してCPU17から信号が与えられると、その投光回路12の駆動によって投光素子11から光が出射され、それに同期して、受光回路15に対してCPU17から信号が与えられ、受光素子14での受光量に応じて変化する出力信号が受光回路15からCPU17側にA/D変換されて与えられる。投受光部間の光軸中に被検出物Wが存在すると、その光軸が遮られて、受光素子14での受光量レベルが低下する。従って、CPU17において、受光部16からの出力信号レベルと、閾値としての基準レベルとを比較することで、被検出物Wの検出が可能になる。本実施形態では、CPU17は出力信号レベルが前記基準レベルより下回ったことを条件に出力回路19側に信号を与えて、出力回路19から検出信号が外部に出力されることになる(本発明でいう「検出動作」に相当する)。
【0017】また、光電センサ10の操作パネル20上には、モード切替スイッチ21、インジケータ22及び感度調整部23が設けられ、それぞれCPU17に接続されている。このうちモード切替スイッチ21を操作することで光電センサ10を、上述した検出動作を行う「検出モード」や後述する動作説明で示す「感度設定モード」等に切り換えることができる。また、後述する動作説明で明らかにされるが、インジケータ22は、CPU17からの制御信号に基づいて点灯動作を行う。より詳しくは、最小及び最大感度取得ルーチンでは、設定された基準レベルが、受光部からの出力信号レベルを下回ったときに点灯し(以下、「オン状態」という)、上回ったときに消灯する(以下、「オフ状態」という)。即ち、従来説明において図8を用いて説明した動作表示灯と同様の点灯動作を行うのである。また、報知ルーチンではCPUからの制御信号によって異なる周期で点滅する。この構成により本発明でいう「報知手段」に相当する機能を発揮することになる。
【0018】次いで、感度調整部23は、図2に示すように、操作パネル20上に回転可能に設けられた感度ボリウム24と、C字状の環状領域26内に前記インジケータ22を備えた指標部27が回動可能に設けられたボリウム表示部25とを備えている(請求項1の「操作部材」に相当する)。そのうち感度ボリウム24は、その回転操作によって、内蔵された可変抵抗器(図示せず)を操作すると共に、その回転方向と同方向に指標部27を環状領域26に沿って移動させる。指標部27の環状領域26における移動位置は、可変抵抗器に設定される抵抗値の大きさに対応付けられており、この指標部27の位置を見ることで可変抵抗器がどのような抵抗値に設定されているかを知ることができる。そして、可変抵抗器に設定された抵抗値の大きさに応じた電位信号がA/D変換されてCPU17に与えられ、CPU17はその受信信号レベルに応じたレベルに前記基準レベルを変更する。本実施形態では、感度ボリウム24を反時計方向(図2において、マイナス方向)に回すと、指標部27も反時計方向に回動し、それに伴ってCPU17は基準レベルの値を上げていく(感度を下げていく)。そして、指標部27が環状領域26の反時計方向端に突き当たったときに基準レベルが設定可能な最高レベル(感度は最低レベル)になるように調整されている。逆に、感度ボリウム24を時計方向(図2において、プラス方向)に回すと、指標部27も時計方向に回動し、CPU17は基準レベルの値を下げていく(感度を上げていく)。そして、指標部27が環状領域26の時計方向端に突き当たったときに基準レベルが設定可能な最低レベル(感度は最高レベル)になるように調整されている。これにて、感度ボリウム24を操作することで基準レベルを最低レベル及び最高レベル間で設定、即ちCPU17における感度を最低レベル及び最高レベル間で設定することができ、もって光電センサ10に対して感度調整を行うことが可能になる。」

b 図2は以下のとおりである。

上記aの記載によれば、「光電センサ10」は、「CPU17において、受光部16からの出力信号レベルと、閾値としての基準レベルとを比較する」ことにより、「投受光部間の光軸中」の「被検出物Wの検出が可能」であるから(【0016】)、当該「基準レベル」は「感度調整のためのパラメータ」といえる。また、当該「基準レベル」は、「光電センサ10」の「操作パネル20上に回転可能に設けられた感度ボリウム24と、C字状の環状領域26内に前記インジケータ22を備えた指標部27が回動可能に設けられたボリウム表示部25とを備え」た「感度調整部23」の操作によって設定されるから(【0018】)、「感度調整部23」は、「光電センサの感度調整のためのパラメータである基準レベルを設定するパラメータ設定手段」といえる。
そして、「感度調整部23」が備える「回転可能に設けられた感度ボリウム24」は、「その回転操作によって、内蔵された可変抵抗器を操作する」ものであり、「可変抵抗器に設定された抵抗値の大きさに応じた電位信号がA/D変換されてCPU17に与えられ、CPU17はその受信信号レベルに応じたレベルに前記基準レベルを変更」するから(【0018】)、「感度調整部23」の「感度ボリウム24」は、「回転可能な操作部材」といえる。
また、「感度ボリウム24を反時計方向」に「回すと、指標部27も反時計方向に回動し、それに伴ってCPU17は基準レベルの値を上げてい」き(感度を下げていき)、「指標部27が環状領域26の反時計方向端に突き当たったときに基準レベルが設定可能な最高レベル(感度は最低レベル)になるように調整され」、「感度ボリウム24を時計方向」に「回すと、指標部27も時計方向に回動し、CPU17は基準レベルの値を下げてい」き(感度を上げていき)、「指標部27が環状領域26の時計方向端に突き当たったときに基準レベルが設定可能な最低レベル(感度は最高レベル)になるように調整され」、「感度ボリウム24を操作することで基準レベルを最低レベル及び最高レベル間で設定」できるから(【0018】)、「前記操作部材の回転方向における位置は、前記パラメータに対応しており」、「前記パラメータは、設定可能な範囲が定められており、「前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する位置と最大値に対応する位置との間において、前記パラメータを設定可能である」といえる。

そうすると、引用文献3には、光電センサの感度調整のためのパラメータである基準レベルを設定するためのパラメータ設定手段として、次の技術事項が記載されているといえる。
「回転可能な操作部材を有するパラメータ設定手段であって、
前記操作部材の回転方向における位置は、前記パラメータに対応しており、
前記パラメータは、設定可能な範囲が定められており、
前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する位置との間において、前記パラメータを設定可能である、パラメータ設定手段」。

(ウ)上記(ア)及び(イ)より、本願出願当時、次の技術(以下、「周知技術」という。)が周知であったことが認められる。
「回転可能な操作部材を有するパラメータ設定手段であって、
前記操作部材の回転方向における位置は、前記パラメータに対応しており、
前記パラメータは、設定可能な範囲が定められており、
前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する位置との間において、前記パラメータを設定可能である、パラメータ設定手段」。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明は、「透過型、または、反射型として用いる光電センサユニット」であって、「透過型光電センサ」として用いる場合を含むから、本件補正発明の「透過型光電センサ、または、回帰反射部材と組み合わせて使用する回帰反射型光電センサ」に含まれるといえる。また、当該技術分野において、「光電センサユニット」を「反射型として用いる」場合には、回帰反射部材と組み合わせて使用されることが一般的であるから(例えば、原査定で引用文献2として引用された特開2009-152813号公報参照。)、引用発明の「透過型、または、反射型として用いる光電センサユニット」は、実質的に「透過型光電センサ、または、回帰反射部材と組み合わせて使用する回帰反射型光電センサ」であると解することもできる。

イ 引用発明は、「発光部32は、タイミング制御部31aからのタイミング信号に基づいて発光素子を駆動し、発光素子からの光は光ファイバ32aを介して伝送されて先端から光を輻射し」、「光ファイバ32aから輻射される光は物体検知領域を介して光ファイバ33aに入射し、受光部33に導かれ、受光部33は入射光を電気信号に変換し、増幅し」、「判定部31b」は、「通常の検出モード」では、「受光量を閾値と比較して判別信号を出力する」ことで、「物体検知領域」に物体が存在するか否かを検知するといえる。
そうすると、引用発明の「発光部32」から輻射される「光」は、「物体検知領域に物体が存在するか否かを検知する」ためのものであるから、本件補正発明にいう「検出領域内に存在する検出対象物を検出するための検出光」に相当し、引用発明の「発光部32」は、発光素子を駆動して当該「光」を発する手段といえるから、本件補正発明の「検出領域内に存在する検出対象物を検出するための検出光を発する投光手段」に相当する。
また、引用発明の「受光部33」に入射する「入射光」は、光電センサユニットを反射型として用いた場合には、本件補正発明の「前記検出光に対する戻り光」に相当し、光電センサユニットを透過型として用いた場合には、「検出領域を通過した検出光」といえるから、上記(1)のとおり、本件補正発明の「前記検出光に対する戻り光」に含まれると解される。よって、引用発明の「受光部33」は、本件補正発明の「前記検出光に対する戻り光を受ける受光手段」に相当する。
そして、引用発明の「判定部31b」において比較される「受光量」及び「閾値」は、それぞれ本件補正発明の「前記受光手段の出力信号値である受光信号値」及び「しきい値」に相当し、引用発明の「判定部31b」は、本件補正発明の「前記受光手段の出力信号値である受光信号値としきい値とを比較し、前記検出対象物の有無を判定する判定手段」に相当するといえる。

ウ 引用発明は、「パーセントチューニング設定」を選択した場合、「基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示すパーセント目標値を設定」する。ここで、「パーセント目標値が-5%の場合は現在の受光量の95%の大きさの閾値」が設定されることから、本件補正発明の「目標比率」と引用発明の「パーセント目標値」とは、[100%+パーセント目標値(-5%)=目標比率(95%)]の関係にあり、いずれも「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」といえる点で共通する。また、引用発明の「パーセント目標値」は「基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示す」値であり、受光量を当該閾値と比較することで検出対象物の有無を検知することからみて、「パーセント目標値」として設定可能な範囲が存在することは明らかである。
そうすると、本件補正発明の「目標比率設定手段」と引用発明の「操作部35」とは、「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータを設定するためのパラメータ設定手段」であって、「前記目標パラメータは、設定可能な範囲が存在」する点で共通するといえる。
また、引用発明の「操作部35」は、「スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え」、引用発明の「パーセント目標値」は、「パーセントチューニングモードで設定変更が推奨される設定パラメータ」の一つであり、その設定は、「ユーザが表示部34の設定画面を見ながら、操作部35を操作することにより実行され」る。
そうすると、本件補正発明の「回転可能な操作部材を有」する「目標比率設定手段」と引用発明の「スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え」た「操作部35」とは、いずれも「操作部を有」する「パラメータ設定手段」である点で共通するといえる。

エ 引用発明では、「パーセントチューニングモードでは、ワークが無い状態でセットボタン35bを押下することにより、ワークが無い状態で検出される受光量を基準受光量として決定し、基準受光量に対してパーセント目標値の大きさの閾値(例えば、パーセント目標値が-5%の場合は現在の受光量の95%の大きさの閾値)が設定され」る。そして、上記ウのとおり、本件補正発明の「目標比率」と引用発明の「パーセント目標値」とは、[100%+パーセント目標値(-5%)=目標比率(95%)]の関係にあり、引用発明においても本件補正発明の「目標比率」に相当する受光量の95%の大きさの閾値が設定されるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記検出対象物が前記検出領域にない状態において、前記受光信号値に対する前記しきい値の比率が目標比率となるように」、しきい値を設定する点で一致する。
ここで、本件補正発明の「感度パラメータ」とは、検出対象物を検出する感度に係るパラメータといえ、本件明細書の段落【0021】の「感度パラメータとは、検出光Aの投光強度(投光パワー)、受光手段22における受光量の増幅率(受光ゲイン)、及びしきい値の少なくとも1つである。」の記載も参照すれば、投光手段における投光パワー、受光手段における受光ゲイン、及び判定手段におけるしきい値は、いずれも「感度パラメータ」に含まれるといえる。
そうすると、本件補正発明の「しきい値」に相当する引用発明の「閾値」も、本件補正発明の「感度パラメータ」に含まれるといえ、本件補正発明と引用発明とは、「前記検出対象物が前記検出領域にない状態において、前記受光信号値に対する前記しきい値の比率が目標比率となるように、感度パラメータを調整する感度パラメータ調整手段」を有する点で一致する。

オ 引用発明の「初期化情報メモリ36c」は、「全ての設定パラメータの初期設定と、パーセントチューニングモードで設定変更が推奨される設定パラメータの組み合わせを各設定パラメータの設定変更内容と紐付けて記憶しており、パーセントチューニングモードの設定パラメータとしてパーセント目標値が設定され」ているから、「初期化情報メモリ36c」に最初に設定された「パラメータ目標値」は、「予め設定されている前記設定パラメータの初期値」ということができ、当該初期値が設定され、「ワークが無い状態でセットボタン35bを押下する」ことによって、当該初期値に基づいて「閾値」が設定されるといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記設定パラメータの初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能である」点で共通するといえる。

以上より、本件補正発明と引用発明とは、
「透過型光電センサ、または、回帰反射部材と組み合わせて使用する回帰反射型光電センサであって、
検出領域内に存在する検出対象物を検出するための検出光を発する投光手段と、
前記検出光に対する戻り光を受ける受光手段と、
前記受光手段の出力信号値である受光信号値としきい値とを比較し、前記検出対象物の有無を判定する判定手段と、
しきい値を設定する際に使用される設定パラメータを設定するパラメータ設定手段と、
前記検出対象物が前記検出領域にない状態において、前記受光信号値に対する前記しきい値の比率が目標比率となるように、感度パラメータを調整する感度パラメータ調整手段と、
を備え、
前記パラメータ設定手段は、操作部を有し、
前記設定パラメータは、設定可能な範囲が存在し、
前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記設定パラメータの初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能である、
光電センサ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本件補正発明では、
(i)「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」が「目標比率」であり、これに伴い、「前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記目標比率の初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能であり」、「目標比率を設定する目標比率設定手段」を備え、
(ii)「前記目標比率設定手段は、回転可能な操作部材を有し、
前記操作部材の回転方向における位置は、前記目標比率に対応しており、
前記目標比率は、設定可能な範囲が定められており、
前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する第1位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する第2位置との間において、前記目標比率を設定可能であり、
(iii)「前記目標比率の初期値に基づいて前記感度パラメータが調整された後に前記目標比率設定手段の前記操作部材が操作された場合、前記感度パラメータ調整手段は、操作された位置に対応する前記目標比率に基づいて、前記感度パラメータを調整する」のに対し、
引用発明では、
(i)「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」が[100%+パーセント目標値(-5%)=目標比率(95%)]の関係にある「パラメータ目標値」であり、これに伴い、「初期化情報メモリ36c」に、「パーセントチューニングモードの設定パラメータとしてパーセント目標値が設定されており」、「パーセントチューニングモードでは、ワークが無い状態でセットボタン35bを押下することにより、ワークが無い状態で検出される受光量を基準受光量として決定し、基準受光量に対してパーセント目標値の大きさの閾値(例えば、パーセント目標値が-5%の場合は現在の受光量の95%の大きさの閾値)が設定され」、「パラメータ目標値」を設定可能な「操作部35」を有し、
(ii)「操作部35」は、「スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え」、「パラメータ目標値」の設定可能な範囲が存在し、
(iii)「設定情報メモリ36b」は、「各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており」、「操作部35による操作」により「設定内容の変更が可能」であり、「制御部31は設定情報メモリ36bに記憶された各設定パラメータの設定内容に基づいて各種の表示機能、検出機能を制御」する点。

(4)判断
上記(i)に関し、上記(3)ウのとおり、本件補正発明の「目標比率」と引用発明の「パーセント目標値」とは、[100%+パーセント目標値=目標比率]の関係にあり、いずれを採用した場合であっても、同じ値がしきい値として設定されることになる。よって、上記(i)の点は表記上の差異にすぎず、「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」としていずれの表記を用いるかは当業者が適宜選択し得る設計的事項である。

上記(iii)に関し、引用発明では、「ユーザの使用環境によって最適値が異なる閾値や各パラメータの目標値は、特別初期化モードの実行後にユーザによる微調整が必要になることがある」ところ、「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」についても、「パーセント目標値」を用いるか「目標比率」を用いるかにかかわらず、ユーザの使用環境によって微調整が必要になることがあるといえる。そうすると、「パーセントチューニング設定を選択した場合」に、使用環境に応じて閾値を微調整するべく、当該「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」(「パーセント目標値」又は「目標比率」)の設定を変更することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることにすぎない。
ここで、引用発明の「設定情報メモリ36b」は、「各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており」、「操作部35による操作」により「設定内容の変更が可能」であり、「制御部31は設定情報メモリ36bに記憶された各設定パラメータの設定内容に基づいて各種の表示機能、検出機能を制御」する。よって、引用発明において、特別初期化モードの実行後に「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」の設定が変更される場合には、初期化情報メモリ36cに記憶された設定パラメータ(本件補正発明の「初期値」に対応。)に基づいて閾値(本件補正発明の「感度パラメータ」に含まれる。)が設定された後、変更後の現在の設定内容として設定情報メモリ36bに記憶された設定パラメータに対応する目標比率に基づいて閾値が再設定され、再設定された閾値を用いて検出が行われるといえる。

上記(ii)に関し、引用発明では、「設定パラメータの設定は、ユーザが表示部34の設定画面を見ながら、操作部35を操作することにより」行われる。また、引用発明では、「操作部35」の操作によって、「通常のチューニングモード設定を選択した場合」は、「受光量に対する閾値をマニュアルで調整」され、「パーセントチューニング設定を選択した場合」は、「基準となる受光量から何パーセント受光量が低下した状態を閾値として設定するかを示すパーセント目標値」が設定される。そうすると、「パーセント目標値」や「目標比率」のような「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」の微調整も「操作部35」の操作によって行われるといえる。
そして、「パーセント目標値」や「目標比率」のような「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」の設定や微調整に使用する操作部として、引用発明の「スイング式のアップダウンボタン35a、セットボタン35b、モードボタン35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットボタン35eを備え」た「操作部35」に代えて、上記周知技術(上記(2)参照。)を採用して、「回転可能な操作部材を有するパラメータ設定手段」とすることは当業者が容易になし得ることである。
この場合、操作部材によって設定されるパラメータが「パーセント目標値」であるか「目標比率」であるかにかかわらず、「前記操作部材の回転方向における位置」が当該パラメータに対応し、当該パラメータは、「前記操作部材」の「前記設定可能な範囲の最小値に対応する位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する位置との間において」設定され、それに伴い、当該パラメータの「設定可能な範囲が定められ」ることは、操作部材の構造上、当然のことである。また、設定パラメータは、当該「操作部材が操作された場合」に変更され、「操作された位置に対応する目標比率に基づいて」閾値が再設定されることも自明である。

以上のとおりであるから、上記(i)?(iii)について総合的にみても、「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」を「パーセント目標値」とするか「目標比率」とするかは当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、いずれを選択した場合であっても、上記周知の「回転可能な操作部材を有するパラメータ設定手段」を採用することは当業者が容易になし得ることであり、ユーザの使用環境によって微調整が必要になる場合に、当該設定パラメータを変更することも当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、「しきい値を設定する際に使用される設定パラメータ」である「パーセント目標値」に代えて「目標比率」を用いるとともに、当該設定パラメータの設定手段として上記周知技術を採用して「回転可能な操作部材を有し、 前記操作部材の回転方向における位置は、前記目標比率に対応しており、 前記目標比率は、設定可能な範囲が定められており、 前記操作部材は、前記設定可能な範囲の最小値に対応する第1位置と、前記設定可能な範囲の最大値に対応する第2位置との間において、前記目標比率を設定可能」である「目標比率を設定する目標比率設定手段」とし、ユーザの使用環境によって微調整が必要になる場合、「予め設定されている前記目標比率の初期値に基づいて」「感度パラメータが調整された後に前記目標比率設定手段の前記操作部材が操作された場合、前記感度パラメータ調整手段は、操作された位置に対応する前記目標比率に基づいて、前記感度パラメータを調整する」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、その効果は、引用発明及び周知技術から予測できる範囲のものである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、次のように主張している。
「 出願当初明細書の段落(0004)の[発明が解決しようとする課題]に記載の通り、「生産ラインでは同じ検出対象物を検出する場合でも複数の光電センサが配置されること」があり、そのような状況下では、「作業者は、全ての光電センサのそれぞれに対して、個別に調整を行わなければならない」という問題がありました。
そこで、請求項1記載の本願発明は、「前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記目標比率の初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能であり、前記目標比率の初期値に基づいて前記感度パラメータが調整された後に前記目標比率設定手段の前記操作部材が操作された場合、前記感度パラメータ調整手段は、操作された位置に対応する前記目標比率に基づいて、前記感度パラメータを調整する」という構成を備えることにより、『同じ検出対象物を検出するために、受信信号値に対するしきい値の割合を簡単に調整可能な光電センサを提供することができる』という効果を発揮できます。
例えば、段落(0050)および図8に示すように、ステップS1、S12?S15において、目標比率の初期値に基づいて感度パラメータの調整が行われ、その後に、ステップS16において、目標比率設定手段が操作されますと、ステップS2?S5において、操作された目標比率に基づいて感度パラメータの調整が行われます。
すなわち、ステップS1、S12?S15において、初期設定として、所定の初期位置に対して感度パラメータが設定され、ステップS16、S2?S5において、微調整として、目標比率設定手段31の操作による再調整が行われます。
複数の光電センサを調整する際に、例えば1つの光電センサに対して初期設定および微調整を行い、その調整後の操作部材31eの位置を所定の初期位置として、ステップS1、S12?S15を行って他の光電センサについて設定を行うことにより、微調整の完了した目標比率にあわせるように感度パラメータの設定を行うことになるため、他の光電センサについては微調整を行う必要がほぼなく迅速に設定を完了することができます。さらに、必要があれば、操作部材31eを操作することにより、他の光電センサについても再調整を行うことができ、その場合であっても、微調整によって操作部材31eが操作された位置から再調整を行うことになるため、より的確に感度パラメータを設定することができます。
このように、作業者は、容易に効率よく、複数の光電センサの感度パラメータの設定を行うことができます。」

しかしながら、請求項1には、「複数の光電センサを配置」したものであることや、「複数の光電センサを調整する際に」、「1つの光電センサに対して初期設定および微調整を行い、その調整後の操作部材31eの位置を所定の初期位置として、ステップS1、S12?S15を行って他の光電センサについて設定を行うこと」の特定はないから、上記主張は請求項1の記載に基づくものとはいえず、採用できない。

なお、引用文献1には、「複数のセンサユニット30を連結し、ネットワークユニット10を介して上位制御装置に接続される連設型センサシステム」を構成し(【0023】)、「設定情報メモリ36b」は「各設定パラメータの現在の設定内容を記憶しており」、「外部に接続された上位制御装置から設定内容の変更が可能である」こと(【0071】)、「上位制御装置からはネットワークユニット10を介して各センサユニットに個別に、あるいは同時に外部入力信号を入力すること」(【0023】)、「STEP2-3」で「センサユニット30に接続された外部入力線、あるいはネットワークユニット10を介して上位制御装置から外部入力信号を受け付け、外部入力の信号パターンであると判断したときに実行する外部入力機能」が設定でき(【0045】)、「外部入力機能としては外部チューニング機能」が選択でき(【0045】)、「感度設定方法としてパーセントチューニング設定が設定されており、パーセントチューニング目標値として-10Pが設定されている場合には、センサユニット30が外部入力信号を受け付けたときの-10%の受光量が閾値として再設定される」こと(【0046】)、も記載されている。
そうすると、本願発明の光電センサを「複数」配置し、「複数の光電センサを調整する際に」、「1つの光電センサに対して初期設定および微調整を行い、その調整後の操作部材31eの位置を所定の初期位置として、ステップS1、S12?S15を行って他の光電センサについて設定を行うこと」によって得られる効果と同様の効果が、引用発明の「光電センサユニット」を複数連結し、1つの光電センサに対して初期設定および微調整を行い、上位制御装置を通じて他の光電センサの設定情報メモリ36bの設定内容を当該微調整後のパラメータに変更し、他の光電センサに外部入力信号を入力して変更後のパラメータに基づいて閾値を再設定することによっても得られるといえるから、請求人が主張する当該効果は本願発明に特有のものともいえない。

エ 小括
よって、上記相違点を総合的にみても、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定についてのまとめ
したがって、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月8日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
また、上記第2[理由]2(1)と同様に、本願発明の「前記検出光に対する戻り光」には、「透過型光電センサ」の場合に「受光手段」が受ける「検出領域を通過した検出光」も含まれると解するのが合理的である。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特開2011-029939号公報
引用文献2:特開2009-152813号公報

3 引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項、引用発明及び周知技術は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「感度パラメータ調整手段」から、「前記感度パラメータ調整手段は、予め設定されている前記目標比率の初期値に基づいて、前記感度パラメータを調整可能であり、 前記目標比率の初期値に基づいて前記感度パラメータが調整された後に前記目標比率設定手段の前記操作部材が操作された場合、前記感度パラメータ調整手段は、操作された位置に対応する前記目標比率に基づいて、前記感度パラメータを調整する」との特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-02 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-19 
出願番号 特願2014-32389(P2014-32389)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03K)
P 1 8・ 575- Z (H03K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緒方 寿彦  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 衣鳩 文彦
北岡 浩
発明の名称 光電センサ  
代理人 元山 雅史  

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