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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1355604
審判番号 不服2018-12208  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-11 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2015-243057「シフトレバー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日出願公開、特開2017-109510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成27年12月14日の出願であって、平成29年12月20日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年3月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月4日付けで拒絶査定(発送日:同年6月12日)がされ、これに対して同年9月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

そして、本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年3月2日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
車両の自動変速機のシフトポジションを変更するシフトレバー装置であって、
シフトノブと、
第1カム部を有し、第1方向に移動することによってシフトポジションの変更制限を解除するように構成されるロッド部材と、
前記第1カム部と係合する第2カム部と、前記シフトノブから突出するボタントップと、を有し、第2方向に移動することによって前記ロッド部材を第1方向に移動させるボタン部と、
前記ボタン部を付勢するための付勢部材と、
を備え、
前記付勢部材は前記第2カム部が前記第1カム部に接近するように付勢し、
前記付勢部材は前記ボタントップの前記第2方向に沿った中心線の近傍に配置され、
前記付勢部材は、その中心軸が前記ボタン部の前記第2方向の中心線上に位置することを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記ボタントップの第2方向での投影範囲であって、前記ロッド部材と前記ボタントップの間に配設されることを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記シフトノブには前記付勢部材の一端が当接するバネ押え部が設けられ、
前記ボタン部には、前記付勢部材の他端側を収容する収容部と、前記バネ押え部が進入する溝部と、が設けられることを特徴とする請求項2に記載のシフトレバー装置。
【請求項4】
前記ボタン部は、前記溝部が設けられるボタン本体部と、前記ボタン本体部の少なくとも一部を覆い前記ボタントップが形成されるボタンカバー部と、を含み、
前記溝部の少なくとも一部は、第2方向から視て、前記ボタンカバー部に覆われることを特徴とする請求項3に記載のシフトレバー装置。」

第2 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願昭55-53344号(実開昭56-156113号)のマイクロフィルム(以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
1 「2.実用新案登録請求の範囲
(1) パイプ状の操作レバーの上端にノブを設け、該ノブの一端から突出させたボタンを押圧することにより、前記操作レバーを後進や低速前進等のシフト位置に置けるようにした自動変速機において、前記ノブ内に、前記ボタンが引込む側に作用するスプリングを設け、前記操作レバーの内部に設けられるデテントレリーズロツドを押圧するスプリングの強度を、前記ボタンに設けたスプリングより強く設定したことを特徴とする自動変速機のシフトレバー装置。」(明細書1ページ4行?15行)

2 「第1図および第2図について従来のシフトレバー装置を説明すると、1はパイプ状の操作レバーで、下端が軸2に固定されており、上端に取り付けられたノブ3を操作することにより、軸2に挿通されたボルト4を中心にして回動するものである。操作レバー1を傾斜させることによつて、この操作レバー1から突出したデテントピン5のデテントプレート6の孔7(第2図参照)への係合位置を変えるようになつている。
ノブ3の内部には、ボタン8が、その先端をノブ3の一端から突出させるようにして設けられている。そしてこのボタン8の基端部には、ガイド9上端の斜面部9aが接している。ガイド9はデテントレリーズロツド10の上端に固定されている。デテントレリーズロツド10は操作レバー1の内部を挿通しており、下端に取り付けられたボス11の部分でスプリング12により上方に押されている。
前述したデテントピン5は、このボス11に取り付けられており、操作レバー1に設けられた長孔13から外部に突出している。ノブ3の内部でボタン8と反対の側にはスプリング14が介装されており、ガイド9をボタン8側に押圧する作用をしている。
このような構成の従来のシフトレバー装置は、ボタン8を押さないで操作レバー1を傾斜させられる「N」と「D」の位置で「ニユートラル」と「前進」との操作ができ、ボタン8を押さないと操作レバー1を傾斜できずしたがつて位置させられない「P」と「R」と「L」の位置で、それぞれ「駐車」、「後進」、「低速前進」の操作ができることになる(第2図参照)。
ノブ3のボタン8を押し込むと、斜面部9aのくさび作用でガイド9が押し下げられ、これによつてデテントレリーズロツド10を介してデテントピン5が下降することになる。デテントピン5はデテントプレート6に切られた孔7の段部に係合し、これによつて操作レバー1の操作は、セレクトポジシヨンが「P」→「R」、「D」→「L」、「N」→「R」および「R」→「P」のときに、ボタン8を押さないと操作レバー8の操作ができないことになるので、安全性が得られることになる。」(明細書1ページ20行?4ページ3行)

3 「本考案はこの点を改良したものである。これを第3図について説明すると、この場合には第1図におけるスプリング14を設けずに、ボタン8内に、このボタン8が引込む側に作用するスプリング15が設けられている。そしてこのスプリング15とデテントレリーズロツド10を下方から押しているスプリング12との強弱関係は、デテントレリーズロツド10を押圧するスプリング12の方を強く設定してある。
このように構成されたこのシフトレバー装置は、デテントピン5が「N」と「D」の位置にあるときにはスプリング12はスプリング15に打ち勝つため、ボタン8はノブ3より突出することになるが、デテントピン5がこれより低い位置にある(デテントプレート6の孔7により押下げられている)、「R」、「L」等の位置ではガイド9も下つているので(第3図の破線の位置)、ボタン8はスプリング15によつて引込むことになる。このため、ボタン8を押さないで操作できる「L」→「D」や「R」→「N」または「R」→「P」などはボタン8が引込んだ状態で操作できることになる。」(明細書4ページ19行?5ページ20行)

4 第3図の記載を参照すると、ボタン8が押し込まれることにより、ボタン8のガイド9側の端部が、ガイド9上端の斜面部9aをくさび作用で押し下げるようになっていることがわかる。

5 第3図の記載を上記「3」にて摘記した記載事項(特に、「ボタン8内に、このボタン8が引込む側に作用するスプリング15が設けられている」との記載)と併せて参照すると、ボタン8内にスプリング15を設けるための空間が設けられており、スプリング15は、ボタン8内に、その中心軸がボタン8の移動方向に沿って配置されていることがわかる。

6 上記「3」の「このボタン8が引込む側に作用するスプリング15が設けられている」との記載、及び第3図の記載を参照すると、スプリング15は、ボタン8のガイド9側の端部がガイド9上端の斜面部9aに接近するように付勢されているといえる。

7 引用文献に記載された「自動変速機のシフトレバー装置」が、車両の自動変速機のシフトポジションを変更するものであることは、当業者にとって明らかな事項である。

8 上記の各事項及び図面の記載を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献には、「自動変速機のシフトレバー装置」に関して、実施例として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「車両の自動変速機のシフトポジションを変更するシフトレバー装置であって、
ノブ3と、
ガイド9上端の斜面部9aを有し、押し下げられることによって操作レバー1を駐車、後進、及び低速前進のシフト位置に置けるようにしたデテントレリーズロツド10と、
前記ガイド9上端の斜面部9aをくさび作用で押し下げるボタン8のガイド9側の端部と、前記ノブ3の一端から突出する先端と、を有し、引込む側に移動することによって前記デテントレリーズロツド10を押し下げるボタン8と、
前記ボタン8を引込む側に作用するスプリング15と、
を備え、
前記スプリング15は前記ボタン8のガイド9側の端部が前記ガイド9上端の斜面部9aに接近するように付勢し、
前記スプリング15はボタン8内に、その中心軸がボタン8の移動方向に沿って配置されるシフトレバー装置。」

第3 対比、判断
1 対比
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「シフトレバー装置」は、本願発明の「シフトレバー装置」に相当する。
以下同様に、「ノブ3」は、「シフトノブ」に、
「ガイド9上端の斜面部9a」は、「第1カム部」に、
デテントレリーズロツド10が「押し下げられること」は、ロッド部材が「第1方向に移動する」ことに、
「押し下げられることによって操作レバー1を駐車、後進、及び低速前進のシフト位置に置けるようにしたデテントレリーズロツド10」は、「第1方向に移動することによってシフトポジションの変更制限を解除するように構成されるロッド部材」に、
「ボタン8」は、「ボタン部」に、
「ボタン8のガイド9側の端部」は、「第2カム部」に、
ボタン8のガイド9側の端部が「ガイド9上端の斜面部9aをくさび作用で押し下げる」ことは、当該端部が斜面部9aに係わり合うことにより押し下げるといえるから、第2カム部が「第1カム部と係合する」ことに、
ボタン8の「ノブ3の一端から突出する先端」は、ボタン部の「シフトノブから突出するボタントップ」に、
ボタン8が「引込む側に移動することによって前記デテントレリーズロツド10を押し下げる」ことは、ボタン部が「第2方向に移動することによって前記ロッド部材を第1方向に移動させる」ことに、
「ボタン8を引込む側に作用するスプリング15」は、「ボタン部を付勢するための付勢部」に、それぞれ相当する。

「近傍」とは、一般に、「(1)近所。近辺。日葡辞書「キンパウ」 (2)〔数〕距離空間で、一点Pからの距離が或る値より小さいすべての点から成る部分集合を、Pの近傍という。一般の位相空間でも、この概念を拡張して、集合に属する各要素に対して近傍を設定する。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版] ものであるところ、本願の明細書には、「近傍」の具体的な範囲について記載されていない。

そして、引用発明においては、スプリング15は「ボタン8内」に、その中心軸がボタン8の移動方向に沿って配置されているから、スプリング15の中心軸は、ボタン8の移動方向の中心線(ボタン8のノブ3の一端から突出する先端の、ボタン8の移動方向の中心軸と、同じといえる。)の近辺、すなわち「近傍」に配置されているということができる。(この点については、ボタン8の移動方向の中心線と、スプリング15の中心軸との間の距離は、例えばボタン8の移動方向の中心線とデテントレリーズロツド10との間の距離に比べれば、「近傍」に相当するものということができる。)
そうすると、引用発明は、本願発明の「付勢部材は前記ボタントップの前記第2方向に沿った中心線の近傍に配置され」ていることに相当する構成を備えているといえる。

以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
「車両の自動変速機のシフトポジションを変更するシフトレバー装置であって、
シフトノブと、
第1カム部を有し、第1方向に移動することによってシフトポジションの変更制限を解除するように構成されるロッド部材と、
前記第1カム部と係合する第2カム部と、前記シフトノブから突出するボタントップと、を有し、第2方向に移動することによって前記ロッド部材を第1方向に移動させるボタン部と、
前記ボタン部を付勢するための付勢部材と、
を備え、
前記付勢部材は前記第2カム部が前記第1カム部に接近するように付勢し、
前記付勢部材は前記ボタントップの前記第2方向に沿った中心線の近傍に配置されるシフトレバー装置。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明においては、「付勢部材は、その中心軸が前記ボタン部の前記第2方向の中心線上に位置する」のに対して、
引用発明においては、スプリング15の中心軸が、ボタン8の移動方向の中心線上に位置するか否かは、明らかでない点。

2 判断
上記相違点について判断する。
一般に、機械装置内部に付勢部材としてのスプリングを設ける場合に、スプリングにより付勢される被付勢部材に対するスプリングの位置を調整すること、特にスプリングを被付勢部材に対してバランスよく配置するようにスプリングの位置を調整する(例えば、被付勢部材の移動方向に垂直な方向で均等な位置をスプリングが付勢するように、スプリングを配置する)ことは、当業者が適宜行う設計的事項にすぎない。
ここで、引用発明では、「スプリング15はボタン8内に」配置されているとともに、上記「1 対比」にて説示のとおり、スプリング15の中心軸は、ボタン8の移動方向の中心線の近傍に配置されているといえる。
してみれば、引用発明において、付勢部材であるスプリング15の、被付勢部材であるボタン8内における位置を、配置上のバランスを考慮して調整することにより、スプリング15の中心軸がボタン8の移動方向の中心線上に位置するようにし、上記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が適宜行い得た設計的事項にすぎないことというべきである。

この点について、念のため、作用効果の観点から、さらに検討する。
本願の明細書において、上記相違点に係る本願発明の構成(「付勢部材は、その中心軸が前記ボタン部の前記第2方向の中心線上に位置する」との構成)に関する記載がなされている箇所は、次のとおりである。
「バネ部材50は、その中心軸Qがボタン部40の移動方向の中心線P上に位置するようにして配置されてもよい。」(段落【0062】)
当該記載箇所に関連し、その前段落には、次の記載がなされている。
「また、ボタン本体部43の内側にバネ部材50が収容されることで、バネ部材50はボタントップ40aの移動方向の中心線Pの近傍に配置される。特に、バネ部材50の中心軸Qが中心線Pの近傍に位置する。このため、バネ部材50の中心軸Qがボタン本体部43の外側に位置する場合と比較して、ボタン部40の操作荷重の方向とバネ部材50の中心軸Qとのオフセットが小さくなり、操作時のボタン部40の傾きを抑制できる。」(段落【0061】)
本願の明細書におけるこれらの記載によれば、ボタン部40のボタン本体部43の「内側」に、付勢部材としてのバネ部材50が収容されるようにすることで、「バネ部材50の中心軸Qが中心線Pの近傍に位置する」こととなり、このため、中心軸Qがボタン本体部43の「外側」に位置する場合と比較して、「ボタン部40の操作荷重の方向とバネ部材50の中心軸Qとのオフセットが小さくなり、操作時のボタン部40の傾きを抑制できる」という作用効果が奏されるところ、さらに、付加的な構成として、「バネ部材50は、その中心軸Qがボタン部40の移動方向の中心線P上に位置するようにして配置されてもよい」ということと解される。ここで、上記の「バネ部材50の中心軸Qが中心線Pの近傍に位置する」との構成は、本願発明における「付勢部材は前記ボタントップの前記第2方向に沿った中心線の近傍に配置され」との構成に対応した構成ということができる。他方、上記の付加的な構成である「バネ部材50は、その中心軸Qがボタン部40の移動方向の中心線P上に位置するようにして配置されてもよい」との構成を採ることにより、上記作用効果と比して奏される格別の作用効果が存するかといえば、そのような格別の作用効果についての記載は本願の明細書においてなされていない。
翻って引用発明についてみてみると、引用発明においても、
- 「スプリング15はボタン8内に」配置されており、また、
- 本願発明における上記の、「付勢部材は前記ボタントップの前記第2方向に沿った中心線の近傍に配置され」との構成に相当する構成を備えていることは、上記「1 対比」にて説示のとおりである。
そうすると、引用発明においても、上記の作用効果(「中心軸Qがボタン本体部43の『外側』に位置する場合と比較して、『ボタン部40の操作荷重の方向とバネ部材50の中心軸Qとのオフセットが小さくなり、操作時のボタン部40の傾きを抑制できる』という作用効果」)に相当する作用効果が奏されるものと解されるところ、当該作用効果と比して、上記相違点に係る本願発明の構成が奏する作用効果が格別なものであるとは認められない。
このように、作用効果の観点から検討しても、本願発明が上記相違点に係る構成である「付勢部材は、その中心軸が前記ボタン部の前記第2方向の中心線上に位置する」との構成を有する点は、当業者が適宜実施し得た設計的事項の域を出ないものであるというほかはない。
そして、本願発明が奏する作用効果を全体として検討しても、引用発明から当業者であれば予測し得た程度のものであって、格別なものではない。

以上より、本願発明は、当業者であれば、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書の「3.(3-2)(イ)」において、「本願発明1は、『前記付勢部材は前記第2カム部が前記第1カム部に接近するように付勢し、前記付勢部材は前記ボタントップの前記第2方向に沿った中心線の近傍に配置され、前記付勢部材は、その中心軸が前記ボタン部の前記第2方向の中心線上に位置する』のに対して、引用発明1、2はそうでない点で相違いたします(相違点1)。つまり、本願発明1は、ボタン部(40)を付勢する付勢部材(50)は、ボタン部(40)の第2カム部(41)がロッド部材(30)の第1カム部(31)に接近するように付勢する構成(以下、『構成A』と表記する)と、付勢部材(50)の中心軸は、ボタン部(40)が移動する方向の中心線上に位置する構成(以下、『構成B』と表記する)と、を備えています。しかしながら、引用発明1、2はこれらの構成を備えておりません。」と記載し、
概略、引用発明は上記構成A及びBを備えていない旨主張する。

しかし、上記「第2 6」に記載したように、スプリング15は、ボタン8のガイド9側の端部がガイド9上端の斜面部9aに接近するように付勢されているといえるから、請求人が主張する構成Aは、引用発明も備えている。
また、請求人が主張する構成Bについては、上記「1」において[相違点]として挙げたうえで、上記「2」において検討したとおり、構成Bは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(2)請求人は、審判請求書の「3.(3-2)(ロ)」において、「本願発明1は、構成Aを備えることにより、第1カム部(31)と第2カム部(41)との間に余計な隙間が生じることを防止できるという効果を奏し(段落0044)、構成Bを備えることにより、ボタン部(40)の操作荷重の方向とバネ部材(50)の中心軸Qとのオフセットが小さくなり、よって、操作時のボタン部(40)の傾きを抑制できるという効果を奏します(段落0061)。構成A、構成Bそれぞれの効果により、本願発明1では、操作時においても、第1カム部(31)と第2カム部(41)との間に余計な隙間が生じることを防止できます。」と記載し、
更に、同「3.(3-2)(ニ)」において、「このような引用文献1に基づいて、本願発明1の構成により、『操作時においても、第1カム部(31)と第2カム部(41)との間に余計な隙間が生じることを防止する』という技術的思想に想到することは、当業者の通常の創作力の範囲を越え困難であり、到底容易に発明できたとすることはできません。」と記載し、
概略、構成A及びBによる効果を主張している。

ア 構成Aによる効果について
構成Aは、「ボタン部(40)を付勢する付勢部材(50)は、ボタン部(40)の第2カム部(41)がロッド部材(30)の第1カム部(31)に接近するように付勢する構成」に関して特定しているにすぎず、請求人が主張するような、「第1カム部(31)と第2カム部(41)との間に余計な隙間が生じることを防止する」ことについてまで特定するものではない。
なお、引用発明においても、「スプリング15は前記ボタン8のガイド9側の端部が前記ガイド9上端の斜面部9aに接近するように付勢」しており、上記構成Aに相当する構成を備えているから、引用発明も、構成Aによる本願発明の効果と同様の、ガイド9上端の斜面部9aとボタン8のガイド9側の端部との間に余計な隙間が生じることを防止できるという効果を奏するものと解される。
したがって、上記構成Aによる効果は、引用発明においても同様に奏する効果にすぎない。

イ 構成Bによる効果について
上記「2」にて詳しく検討したとおり、上記構成Bによる効果は、格別なものであるとは認められない。
そして、請求人が主張する、「ボタン部(40)の操作荷重の方向とバネ部材(50)の中心軸Qとのオフセットが小さくなり、よって、操作時のボタン部(40)の傾きを抑制できる」との効果は、引用発明において、スプリング15により付勢される被付勢部材であるボタン8に対して、スプリング15をバランス良く設けることにより、すなわちスプリング15をボタン8の中心を付勢するようにすることにより、達成されるものである。
したがって、上記構成Bによる効果は、引用発明において、バランスを考慮してスプリング15を設けた際に、同様に奏する効果にすぎない。

ウ 小括
以上のことから、請求人の上記主張は採用することができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-31 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-19 
出願番号 特願2015-243057(P2015-243057)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 薫  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 尾崎 和寛
小関 峰夫
発明の名称 シフトレバー装置  
代理人 森下 賢樹  
代理人 三木 友由  
代理人 村田 雄祐  

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