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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1355610 |
審判番号 | 不服2018-15629 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-26 |
確定日 | 2019-10-03 |
事件の表示 | 特願2017-524219「太陽電池モジュールおよび太陽電池モジュールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日国際公開、WO2016/203591〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)6月17日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 7月 3日 :手続補正書の提出 平成30年 5月14日付け:拒絶理由通知書 平成30年 7月18日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 9月28日付け:拒絶査定(原査定) 平成30年11月26日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成30年11月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年11月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1、6の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「 【請求項1】 受光面側に配置されて光透過性を有する受光面側保護部材と、 受光面と対向する裏側に配置された裏面側保護部材と、 光透過性を有する樹脂からなり前記受光面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に狭持された封止層と、 電気的に接続されて前記封止層の中に封止された複数の太陽電池セルと、 前記受光面側保護部材の面方向における前記太陽電池セルと異なる領域において前記封止層の中に封止され、識別用管理情報が記載された樹脂からなる識別用ラベルシートと、 前記識別用ラベルシートの前記受光面側保護部材側に積層されて前記封止層の中に封止され、光透過性を有する樹脂からなり紫外線吸収剤を含有する保護シートと、 を備え、 前記封止層は、前記封止層の厚み方向において前記太陽電池セルの受光面よりも前記受光面側保護部材側に配置され、紫外線吸収剤を含有しない受光面側封止層を有し、 前記保護シートは、前記紫外線吸収剤の含有量が前記受光面側封止層よりも多く、前記受光面側封止層よりも同一厚み当たりの紫外線吸収特性が大きいこと、 を特徴とする太陽電池モジュール。」 「 【請求項6】 光透過性を有する受光面側保護部材上に、紫外線吸収剤を含有せず光透過性を有する樹脂からなり封止層となる受光面側封止層シートと、電気的に接続された複数の太陽電池セルと、封止層となる裏面側封止層シートと、裏面側保護部材と、を順次積層して第1積層体を形成する第1工程と、 前記受光面側封止層シートと前記裏面側封止層シートとの間における前記受光面側封止層シート上における前記太陽電池セルと異なる領域に、光透過性を有する樹脂からなり紫外線吸収剤を前記受光面側封止層シートよりも多く含有して前記受光面側封止層シートよりも同一厚み当たりの紫外線吸収特性が大きい保護シートと、識別用管理情報が記載された樹脂からなる識別用ラベルシートと、を順次積層して第2積層体を形成する第2工程と、 前記第2積層体を加熱および加圧して太陽電池モジュールを形成する第3工程と、 を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成30年7月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、6の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 受光面側に配置されて光透過性を有する受光面側保護部材と、 受光面と対向する裏側に配置された裏面側保護部材と、 光透過性を有する樹脂からなり前記受光面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に狭持された封止層と、 電気的に接続されて前記封止層の中に封止された複数の太陽電池セルと、 前記受光面側保護部材の面方向における前記太陽電池セルと異なる領域において前記封止層の中に封止され、識別用管理情報が記載された樹脂からなる識別用ラベルシートと、 前記識別用ラベルシートの前記受光面側保護部材側に積層されて前記封止層の中に封止され、光透過性を有する樹脂からなり紫外線吸収剤を含有する保護シートと、 を備え、 前記封止層は、前記封止層の厚み方向において前記太陽電池セルの受光面よりも前記受光面側保護部材側に配置された受光面側封止層を有し、 前記保護シートは、前記紫外線吸収剤の含有量が前記受光面側封止層よりも多く、前記受光面側封止層よりも同一厚み当たりの紫外線吸収特性が大きいこと、 を特徴とする太陽電池モジュール。」 「 【請求項6】 光透過性を有する受光面側保護部材上に、光透過性を有する樹脂からなり封止層となる受光面側封止層シートと、電気的に接続された複数の太陽電池セルと、封止層となる裏面側封止層シートと、裏面側保護部材と、を順次積層して第1積層体を形成する第1工程と、 前記受光面側封止層シートと前記裏面側封止層シートとの間における前記受光面側封止層シート上における前記太陽電池セルと異なる領域に、光透過性を有する樹脂からなり紫外線吸収剤を前記受光面側封止層シートよりも多く含有して前記受光面側封止層シートよりも同一厚み当たりの紫外線吸収特性が大きい保護シートと、識別用管理情報が記載された樹脂からなる識別用ラベルシートと、を順次積層して第2積層体を形成する第2工程と、 前記第2積層体を加熱および加圧して太陽電池モジュールを形成する第3工程と、 を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1、6に記載された発明を特定するために必要な事項である「受光面側封止層」、「受光面側封止層シート」について、「紫外線吸収剤を含有しない」、「紫外線吸収剤を含有せず」と限定するものであって、本件補正前の請求項1、6に記載された発明と本件補正後の請求項1、6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、請求項1に記載された事項により特定される、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特許第4890752号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 「【請求項1】 太陽電池素子の受光面側が有機高分子樹脂とその外側の透光性部材とで封止されている太陽電池モジュールにおいて、前記有機高分子樹脂に、ヒンダードアミン系光安定化剤と、有機過酸化物からなる架橋剤とが含有されており、前記有機高分子樹脂に含まれる有機化合物からなる紫外線吸収剤の濃度が0.001重量%以下であり、前記太陽電池素子の非受光面側が有機高分子樹脂とその外側の裏面保護部材とで封止されており、前記非受光面側の有機高分子樹脂に、前記受光面側の有機高分子樹脂よりも高濃度で紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする太陽電池モジュール。」 「【0004】 従来の太陽電池封止用有機高分子樹脂としては、ポリビニルブチラール、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が主に用いられてきた。中でもEVAの架橋性組成物は耐熱性、耐候性、透明性、コストなどの面で優れた特性を有しており、現在では太陽電池封止用有機高分子樹脂の主流となっている。」 「【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、長期間屋外で使用しても、受光面側の封止用有機高分子樹脂が黄変し難く、その結果、黄変を原因とした太陽電池素子への入射光減少による性能低下を抑制した信頼性の高い太陽電池モジュールを提供することが可能となる。 また、前記紫外線吸収剤の濃度が0.001重量%以下であることによって、長期間屋外で使用しても、受光面側の封止用有機高分子樹脂が黄変することなく、その結果、黄変を原因とする性能低下のない極めて信頼性の高い太陽電池モジュールを提供することが可能となる。 また、前記ヒンダードアミン系光安定化剤の濃度が0.5?1.0重量%であることによって、有機高分子樹脂の黄変を効果的に抑制できる。 さらに、前記太陽電池素子の非受光面側が有機高分子樹脂とその外側の裏面保護部材とで封止されており、前記非受光面側の有機高分子樹脂に、前記受光面側の有機高分子樹脂よりも高濃度で紫外線吸収剤が含有されていることによって、紫外線による裏面保護部材の劣化を防ぎ、さらに信頼性の高い太陽電池モジュールを提供することが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 図1に本発明の太陽電池モジュールの概略構成図の一例を示す。図1に於いて、1は太陽電池素子、4は表面封止用有機高分子樹脂、2は透光性部材、5は裏面封止用有機高分子樹脂、3は裏面保護部材、6はバスバー電極、7は集電電極である。」 「【0018】 表面封止用有機高分子樹脂4は太陽電池素子受光面の凹凸を樹脂で被覆し、外部環境から素子を保護するために必要である。また、透光性部材2を太陽電池素子1に接着する役割も果たす。したがって、高透明性の他に、耐候性、接着性、耐熱性が要求される。このような要求を満たす材料としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。中でもEVA樹脂は耐候性、接着性、充填性、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性など太陽電池用途としてバランスのとれた物性を有しているので好適に用いられる。 【0019】 本発明における表面封止用有機高分子樹脂には、耐光性を高めるために有機化合物からなる紫外線吸収剤が含まれていてよいが、その濃度は0.01重量%以下であり、より望ましくは0.001重量%である。濃度が0.01重量%を超えると、紫外線吸収剤の変質により長期間の屋外曝露に於いて有機高分子樹脂の黄変が顕在化し、太陽電池モジュールの性能が低下する。一方、0.01重量%以下であれば、黄変による性能低下はほとんど無視できる程度に抑えることができ、さらに0.001重量%以下であれば黄変による性能低下は認められなくなる。無論、濃度が0重量%、すなわち有機化合物からなる紫外線吸収剤が含まれない構成も本発明では採ることができる。」 「【0049】 裏面封止用有機高分子樹脂5は太陽電池素子裏面の凹凸を樹脂で被覆し、外部環境から素子を保護するために必要である。また、裏面保護部材3を太陽電池素子1に接着する役割も果たす。したがって、表面封止用有機高分子樹脂と同様に耐候性、接着性、耐熱性が要求されるため、表面封止用有機高分子樹脂として好適な材料を裏面封止用有機高分子樹脂としても用いることが好ましい。通常は、表面封止用有機高分子樹脂と同じ材料を裏面封止用有機高分子樹脂にも用いる。また、表面封止用有機高分子樹脂同様に、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤等の添加剤も通常配合され、その添加量も表面封止用有機高分子樹脂に準ずる。ただし、裏面封止用有機高分子樹脂は黄変しても太陽電池モジュール性能に影響がないことと、後述する裏面保護部材が紫外線によって光劣化するのを防止することを理由として、表面封止用有機高分子樹脂よりも高濃度で紫外線吸収剤を配合することが望ましく、その添加量は0.1?1.0重量%であることが好ましい。これによって、裏面保護部材としてフッ素樹脂フィルムのような耐光性に優れる材料を用いる必要が無くなり、耐光性はやや劣るものの、安価な材料を裏面保護部材として用いることができるようになる。一方、透明性に関しては必須ではないので、無機酸化物等のフィラーを加えて耐候性や機械的強度を向上させることが可能であり、また、顔料等によって着色してもよい。」 「【0051】 太陽電池素子1としては、1)結晶シリコン太陽電池、2)多結晶シリコン太陽電池、3)微結晶シリコン太陽電池、4)アモルファスシリコン太陽電池、5)銅インジウムセレナイド太陽電池、6)化合物半導体太陽電池など、従来公知な素子を目的に応じて種々選択して用いて良い。これら太陽電池素子は、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続する。また、これとは別に絶縁化した基板上に太陽電池素子を集積化して所望の電圧あるいは電流を得ることもできる。さらに、素子への逆バイアス印加を防止するためにバイパスダイオードを素子に接続することも必要に応じて行われる。」 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「太陽電池素子の受光面側が有機高分子樹脂とその外側の透光性部材とで封止されている太陽電池モジュールにおいて、 前記太陽電池素子の非受光面側が有機高分子樹脂とその外側の裏面保護部材とで封止されており、 太陽電池封止用有機高分子樹脂としては、EVAが主に用いられ、EVAの架橋性組成物は透明性の面で優れた特性を有しており、 表面封止用有機高分子樹脂には、濃度が0重量%、すなわち紫外線吸収剤が含まれない構成を採り、 太陽電池素子は、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続する、 太陽電池モジュール。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「『受光面側』『の透光性部材』」は、本件補正発明の「受光面側に配置されて光透過性を有する受光面側保護部材」に、 引用発明の「『太陽電池素子の非受光面側』『の裏面保護部材』」は、本件補正発明の「受光面と対向する裏側に配置された裏面側保護部材」に、 引用発明の「『太陽電池封止用有機高分子樹脂としては、EVAが主に用いられ、EVAの架橋性組成物は透明性の面で優れた特性を有し』、『太陽電池素子の受光面側が有機高分子樹脂とその外側の透光性部材とで封止され』、『前記太陽電池素子の非受光面側が有機高分子樹脂とその外側の裏面保護部材とで封止され』る『有機高分子樹脂』」は、本件補正発明の「光透過性を有する樹脂からなり前記受光面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に狭持された封止層」に、 引用発明の「『有機高分子樹脂で封止され』、『所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続する』『太陽電池素子』」は、本件補正発明の「電気的に接続されて前記封止層の中に封止された複数の太陽電池セル」に、 引用発明の「『濃度が0重量%、すなわち紫外線吸収剤が含まれない構成を採』る『表面封止用有機高分子樹脂』」は、本件補正発明の「前記封止層は、前記封止層の厚み方向において前記太陽電池セルの受光面よりも前記受光面側保護部材側に配置され、紫外線吸収剤を含有しない受光面側封止層」に、 引用発明の「太陽電池モジュール」は、本件補正発明の「太陽電池モジュール」に、それぞれ相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「受光面側に配置されて光透過性を有する受光面側保護部材と、 受光面と対向する裏側に配置された裏面側保護部材と、 光透過性を有する樹脂からなり前記受光面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に狭持された封止層と、 電気的に接続されて前記封止層の中に封止された複数の太陽電池セルと、 を備え、 前記封止層は、前記封止層の厚み方向において前記太陽電池セルの受光面よりも前記受光面側保護部材側に配置され、紫外線吸収剤を含有しない受光面側封止層を有する太陽電池モジュール。」 【相違点】 本件補正発明では「『前記受光面側保護部材の面方向における前記太陽電池セルと異なる領域において前記封止層の中に封止され、識別用管理情報が記載された樹脂からなる識別用ラベルシートと、前記識別用ラベルシートの前記受光面側保護部材側に積層されて前記封止層の中に封止され、光透過性を有する樹脂からなり紫外線吸収剤を含有する保護シートと、を備え、』『前記保護シートは、前記紫外線吸収剤の含有量が前記受光面側封止層よりも多く、前記受光面側封止層よりも同一厚み当たりの紫外線吸収特性が大きい』」のに対し、引用発明では当該構成について特定されていない点。 (4)判断 以下、上記相違点について検討する。 ア 太陽電池に関する技術において、受光面側保護材の面方向における太陽電池素子と異なる領域において封止層の中に封止され、識別用管理情報が記載された識別用ラベルを用いることは、周知技術(必要ならば、特開平11-261095号公報(特に、請求項14、請求項15、【0040】、【0053】、【0056】、【0058】参照。識別表示は封止材料により封止されていること(請求項14)、電気配線部上には電気配線被覆材が配されており、該電気配線被覆材が前記識別表示を兼ねること(請求項15)、被覆材中の紫外線吸収剤により識別表示部の光劣化が抑制されること(【0040】)、電気配線被覆材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの両側にEVAを一体積層したEVA/PET/EVAのフィルムが好ましいこと(【0053】)、及び、識別表示部材を配置する方法としては、何れの被覆材に挟み込んでラミネーションしても良いこと(【0058】)が記載されている。)、特開2010-80489号公報(特に、図1-7参照。)、特開2015-65304号公報(特に、図1-7参照。)、特開2009-272654号公報(特に、図1参照。)を参照されたい。)であるし、識別用ラベルを樹脂とすることも、特開平11-261095号公報(請求項15、【0053】参照。)の電気配線被覆材が識別表示を兼ね、電気配線被覆材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの両側にEVAを一体積層したEVA/PET/EVAのフィルムが好ましいこと、特開2010-80489号公報(【0032】参照。)の標識ラベル20は透明部材から構成されていること、特開2015-65304号公報(【0030】参照。)のラベル32の基材の色は透明であること、特開2009-272654号公報(【0034】参照。)の情報保持媒体として、情報が印刷されたシート状のものや光学式情報識別パターン(バーコード、2次元コード等)を用いることからみて周知技術である。 イ さらに、一般に、識別用ラベルシートの技術分野において、屋外用途等、紫外線による劣化が問題になる場合には、これを防止するべく紫外線防護フィルム(紫外線吸収剤を含有するシート)を積層することは慣用手段(必要ならば、特表2001-505835号公報(特に、第14頁第4-6頁、図1参照。)、特開2003-293957号公報(特に、【0030】-【0035】参照。)、特開平11-70734号公報(特に、【0034】、【0035】参照。)である。 ウ そうすると、引用発明において識別用ラベルを設けることは容易に想到し得た事項というべきであるし、その際、太陽電池素子への入射光を減少させないために、識別用ラベルは、太陽電池素子とは異なる領域に配置することが自然である。また、引用発明は、長期間屋外で使用しても紫外線による劣化を抑制しようとするもの(引用文献1の【0015】)なのであるから、上記周知技術を引用発明へ適用するにあたって、上記慣用手段を採用することは、当業者が容易に想到し得たというべきである。 エ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術及び慣用手段の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)請求人の主張について ア 本件請求人は、平成30年11月26日付けで提出された審判請求書において、 「『受光面側封止層への添加量では識別用ラベルの劣化が十分に抑止し得ないとの前提の構成』を限定することにより、請求項1および請求項6に規定される構成を、『受光面側封止層への添加量では識別用ラベルの劣化が十分に抑止し得ないとの前提の上での態様』とし、前提の構成によって定まる関係であることを明確にする補正を行いました。 請求項1および請求項6における『受光面側封止層(受光面側封止層シート)が紫外線吸収剤を含有しない』旨の補正は、本願明細書の段落[0020]における『受光面側封止層2aは、紫外線吸収特性を有していない、すなわち紫外線吸収剤を含有していなくてもよい。』との記載に基づいています。」、 「ここで、本願明細書の段落[0024],[0025]の記載を考慮すれば、請求項1,6における『樹脂からなる識別用ラベルシート自体』が『識別用ラベルシートの劣化が十分に抑止し得る紫外線耐性を有していないこと』は明らかであります。」、 と本件補正発明の進歩性に関し、主張している。 イ 上記主張について以下検討する。 上記引用発明においても、表面封止用有機高分子樹脂は、濃度が0重量%、すなわち紫外線吸収剤が含まれない構成であることから、「受光面側封止層(受光面側封止層シート)が紫外線吸収剤を含有しない」旨の特定がなされている。 そして、表面封止用有機高分子樹脂は、紫外線吸収剤が含まれておらず、引用発明が長期間の屋外での使用とそれに伴う紫外線の照射を想定していることを考慮すれば、識別用ラベルシートの劣化が十分に抑止し得る紫外線耐性を有していないと考えるのが自然である。 そうすると、上記(4)に記載したように、識別ラベルが識別できるように、紫外線対策をすることは当業者が通常行う事項にすぎない。 してみれば、請求人の上記主張は、採用することができない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年11月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年7月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献等一覧> 1.特許第4890752号公報 2.特開2010-80489号公報(周知技術文献) 3.特開2015-65304号公報(周知技術文献) 4.特開2009-272654号公報(周知技術文献) 5.特開2003-293957号公報(周知技術文献) 6.特開平11-70734号公報(周知技術文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「受光面側封止層」について、「紫外線吸収剤を含有しない」の限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、周知技術及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術及び慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-07-30 |
結審通知日 | 2019-08-06 |
審決日 | 2019-08-19 |
出願番号 | 特願2017-524219(P2017-524219) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
野村 伸雄 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 太陽電池モジュールおよび太陽電池モジュールの製造方法 |
代理人 | 高村 順 |