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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1355616
審判番号 不服2018-1518  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-05 
確定日 2019-10-04 
事件の表示 特願2015-531141「植物源由来のヒト皮脂模倣物質およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日国際公開、WO2014/039423、平成27年 9月17日国内公表、特表2015-527393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年 9月 3日(パリ条約による優先権主張 2012年11月29日、2012年 9月 5日、いずれも米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりのものである。

平成29年 6月28日付け 拒絶理由通知
平成29年 9月20日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月29日付け 拒絶査定
平成30年 2月 5日 審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月10日付け 拒絶理由通知
平成31年 4月 1日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1?25に係る発明は、平成31年 4月 1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲1?25に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1、23に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明23」といい、まとめて「本願発明」ということがある。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
精製ホホバ油と、
パルミトレイン酸を含む精製植物油と、
のエステル交換により得られるワックスエステルと、
フィトステロールと、
フィトスクワレンと、
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルと、
を含む、ヒト皮脂模倣物質(但し、前記マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルは、マカデミアナッツ油とフィトステロールとのエステル交換により生成したものではない)。」

「 【請求項23】
植物源由来の、炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸を含むワックスエステルと、
フィトステロールと、
フィトスクワレンと、
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルと、
を含む、ヒト皮脂模倣物質。」

第3 拒絶の理由
当審が平成30年10月10日付けで通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。

理由A(3)
この出願の請求項23?25に係る発明は、その出願前日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由B(2)
この出願の請求項1?22に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由B(3)
この出願の請求項1?10、19?25に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物]
1.国際公開第2011/056535号 (2011年(平成23年)5月12日国際公開)
2.フレグランスジャーナル、1999年、Vol.27、No.1、pp.94-100(1999年(平成11年)1月15日発行)

第4 各刊行物の記載事項及び引用発明
1 刊行物1の記載事項
刊行物1は、英語で記載されているため、日本語の訳文にて記載する。

(摘記1-1)
「1.精製ホホバ油と、パルミトレイン酸を含む精製植物油と、のエステル交換により得られるワックスエステル、
フィトステロール、および
フィトスクワレン、
を含む、ヒト皮脂模倣物質。
2.・・・
3.前記精製植物油が、精製マカダミア油である、請求項1に記載のヒト皮脂模倣物質。
・・・」(特許請求の範囲(第10頁))

(摘記1-2)
「従って、ヒト皮脂模倣物質を提供することが望ましい。さらに、植物源から製造されるヒト皮脂模倣物質を提供することが望ましい。」([0006](第2頁第14?15行))

(摘記1-3)
「ヒト皮脂模倣物質およびヒト皮脂模倣物質の製造方法を提供する。1つの例示的実施形態では、ヒト皮脂模倣物質は、パルミトレイン酸を含む精製植物油と精製ホホバ油とのエステル交換により得られるワックスエステル、フィトステロール、およびフィトスクワレンを含む。
別の例示的実施形態では、ヒト皮脂模倣物質の製造方法は、精製マカダミア油と精製ホホバ油とを混合する工程、精製マカダミア油と精製ホホバ油とをエステル交換する工程、エステル交換工程の後にフィトステロールを添加する工程、およびエステル交換工程の後にフィトスクワレンを添加する工程を含む。
更なる例示的実施形態では、ヒト皮脂模倣物質は、植物源由来の二重結合を1個有する炭素数16の脂肪酸を含むワックスエステル、フィトステロール、およびフィトスクワレンを含む。」([0007]、[0008](第2頁第21行?第3頁第3行))

(摘記1-4)
「本明細書で企図するヒト皮脂模倣物質は植物をベースとし、即ち、模倣物質の成分は植物源から物理的にまたは化学的に得られる。この点に関して、模倣物質は、フィトスクワレン、フィトステロール、模倣物質のトリグリセリド源であるマカダミア油などの精製植物油、および模倣物質のワックスエステル源である精製ホホバ油から得られるため、植物由来のヒト皮脂類似体である。」([0009](第3頁第17?22行))

(摘記1-5)
「サピエン酸の類似体であるパルミトレイン酸(16:1Δ9)はサピエン酸の代替品である。パルミトレイン酸は植物界ではかなり稀少であるが、マカダミア油は、現在市販されている油の中でパルミトレイン酸含有量が最も高く、パルミトレイン酸を約16?22%含有する。従って、本発明者らは、ヒト皮脂模倣物質の精製マカダミア油と精製ホホバ油とをエステル交換することにより、パルミトレイン酸を含むワックスエステルが得られることを見出した。」([0011](第4頁第19?24行))

(摘記1-6)
「本明細書で企図するヒト皮脂模倣物質は、追加の機能性添加剤、即ち、特定の機能を果たすように添加される成分を含む。・・・ヒト皮脂模倣物質は、香料、染料、顔料、防腐剤、酸化防止剤、および保湿剤等を含んでもよい。」([0013](第5頁第19?25行))

(摘記1-7)
「ヒト皮脂模倣物質をヘアケアローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、・・・、ハンドローション、顔用ローション、アイクリーム、洗顔石鹸、・・・などの様々なパーソナルケア製品の成分として使用してもよい。それらの組成は、ヒトの皮脂の組成に非常に類似しているため、ヒト皮脂模倣物質はヒトの皮膚の自然治癒および修復機構を促進し、細胞のターンオーバーや局所血液循環を速め、それによって皺、眼の下のくま、および加齢による染みといった外観を減少し得る。ヒト皮脂模倣物質は、また、自然治癒により頭皮の刺激を低減し、皮膚の水和を改善し得る。」([0014](第5頁下から第3行?第6頁第7行))

(摘記1-8)
「1つの例示的実施形態により、ヒト皮脂模倣物質の製造方法は、精製マカダミア油と精製ホホバ油とを混合する工程、精製マカダミア油と精製ホホバ油とをエステル交換して、二重結合を1個有する炭素数16の脂肪酸を含むワックスエステルを生成する工程、フィトステロールを添加する工程、およびフィトスクワレンを添加する工程を含む。エステル交換工程の前および/またはエステル交換工程の後に、精製マカダミア油及び精製ホホバ油にフィトステロールを添加することができる。次いで、得られるヒト皮脂模倣物質を漂白および/または脱臭することができる。」([0016]第6頁第15?21行)

(摘記1-9)
「1つの例示的実施形態では、精製マカダミア油53.2グラム(g)、精製ホホバ油30.8g、およびフィトステロール2.1gの混合物を混合し、減圧下で撹拌しながら90℃に加熱する。約0.5時間後、混合物にナトリウムメトキシド0.84gを添加し、温度を130℃に上昇させ、その温度で約2時間?約2.5時間維持する。その後、混合物を90℃に冷却し、クエン酸0.84gを0.5時間撹拌しながら添加する。その後、混合物を濾過する。濾液にフィトステロール1gおよびフィトスクワレン12.9gを添加し、それを均質になるまで混合し、模倣物質を得る。1重量%の漂白土(bleaching earth)(Clarion 470漂白粘土、American Colloid Company(Arlington Heights,Ill)から入手可能)を模倣物質に添加した後、それを減圧下で撹拌しながら95℃に加熱し、15?30分間維持してもよい。混合物を濾過する。臭気および他の揮発性物質を除去するため、模倣物質に水蒸気を注入しながら、模倣物質を高減圧下で200?220℃に加熱してもよい。その温度を約2時間維持した後、減圧状態のまま冷却する。好ましい実施形態では、模倣物質にトコフェロール(70%)を1430ppm添加し、混合する。この時、他の任意の添加剤を添加してもよい。」([0017](第6頁第22行?第7頁第4行))

2 引用発明
(1)刊行物1の特許請求の範囲の請求項1には「精製ホホバ油と、パルミトレイン酸を含む精製植物油と、のエステル交換により得られるワックスエステル、フィトステロール、およびフィトスクワレン、を含む、ヒト皮脂模倣物質」が記載され、さらに同請求項3には、上記パルミトレイン酸を含む精製植物油が精製マカダミア油であることが記載され(摘記1-1)、段落[0016]、[0017]には、上記のヒト皮脂模倣物質の例示的実施形態として、その製造について記載されている(摘記1-8、1-9)。ここで、段落[0017]に記載の「精製マカダミア油53.2グラム(g)、精製ホホバ油30.8g、およびフィトステロール2.1gの混合物を混合し、減圧下で撹拌しながら90℃に加熱する。約0.5時間後、混合物にナトリウムメトキシド0.84gを添加し、温度を130℃に上昇させ、その温度で約2時間?約2.5時間維持する」なる工程は、ナトリウムメトキシドの存在下に130℃の加熱が行われていることからみて、「精製ホホバ油と精製マカダミア油とのエステル交換を行い、ワックスエステルを得る工程」(以下、この工程を「刊行物1記載のエステル交換工程」という。)であると認められる。また、刊行物1記載のエステル交換工程では、ナトリウムメトキシドの存在下130℃の加熱の前、すなわちエステル交換反応の前に精製マカデミア油及び精製ホホバ油とともにフィトステロールが混合されていることから、刊行物1記載のエステル交換工程では、精製ホホバ油と精製マカダミア油とのエステル交換によるワックスエステルのほか、精製マカダミア油とフィトステロールとのエステル交換によるマカダミア油脂肪酸フィトステリルも生成されているものと認められる。
以上のことから、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「精製ホホバ油と、精製マカダミア油と、のエステル交換により得られるワックスエステル、
精製マカダミア油とフィトステロールとのエステル交換により生成されるマカダミア油脂肪酸フィトステリル、
フィトステロール、および
フィトスクワレン、
を含む、ヒト皮脂模倣物質」(以下「引用発明1-1」という。)

(2)また、上記請求項1、3の記載に加え、刊行物1の[0016]には、ヒト皮脂模倣物質の製造において、エステル交換工程の前に精製マカダミア油及び精製ホホバ油にフィトステロールを添加することと並んでエステル交換工程の後に精製マカダミア油及び精製ホホバ油にフィトステロールを添加することも記載されており、この場合、ヒト皮脂模倣物質はマカダミア油脂肪酸フィトステリルを含まないものとなるから、刊行物1には、以下の発明も記載されているものと認められる。
「精製ホホバ油と、精製マカダミア油と、のエステル交換により得られるワックスエステル、
フィトステロール、および
フィトスクワレン、
を含み、マカダミア油脂肪酸フィトステリルを含まない、ヒト皮脂模倣物質」(以下「引用発明1-2」という。)

3 刊行物2の記載事項
(摘記2-1)
「以上のように,スキンケアにおけるコレステロールの重要性が再認識されているが,・・・化粧料に使いやすい原料とはいえない。
我々はコレステロールが皮膚にとって重要であるとの観点に立ち,コレステロールの有効な使用法についての研究を行い種々のステロールエステルおよびステロール複合体の開発を行ってきた。」(第95頁右欄第20行?第96頁左欄第2行)

(摘記2-2)
「3-1.コレステロールエステル
我々はステロールやステロールエステルの化粧品原料としての開発に取り組んできており,これまでに表1に示すような各種のステロールエステルを上市してきている。これらコレステロールエステルは抱水性が高くエモリエント剤として各種化粧品に使用されている。

」(第96頁左欄第8?15行、表1)

(摘記2-3)
「3-2.フィトステロール
近年の植物指向に対応し,我々はフィトステロールとマカデミアナッツ油脂肪酸を酵素反応によりエステル化したマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(商品名:YOFCO MAS)を開発した。
・・・
マカデミアナッツ油脂肪酸の最大の特徴はパルミトレイン酸を20%以上含んでいることであり,他の植物油では例が少ない。パルミトレイン酸はヒトの皮脂中のワックスエステルを構成する脂肪酸として多く含まれ,皮膚の老化と非常に関係が深く,乳幼児期および青年期の若い世代の皮脂に多くみられ加齢とともに漸減していくといわれている。
また,表皮脂質中のコレステロールエステルとしても存在している。YOFCO MASはパルミトレイン酸,オレイン酸を多く含むという点で,これに類似したステロールエステルである・・・。」(第97頁左欄第12行?右欄第13行)

(摘記2-4)
「YOFCO MASは,それ自体が40℃において300%という高い抱水率を示す(表2)。これはエモリエント剤として知られるラノリンと同等であり,ラノリンの機能を持った植物由来の原料ともいえる。
YOFCO MASもまた,・・・,軟質ラノリン脂肪酸コレステリルと同様の荒れ肌に対する改善効果が期待される。」(第97頁右欄第14行?最下行)。

(摘記2-5)


」(第98頁左欄表2)

(摘記2-6)
「フィトコンポ-PPは乳化剤として,フィトプレソームはリポソーム基材として化粧品に用いることができる。
フィトコンポ-PPを乳化剤として用いた配合例として,前述のYOFCO MASを油相成分として用いた植物系乳液およびクリームを表5に示した。
・・・

乳液,クリームともさっぱりしながらもしっとりとした使用感であり,それぞれの特徴がよく現れた化粧料となっている。」(第99頁右欄第10行?第100頁左欄第3行、表5)

第5 対比・判断
1 本願発明23について
(1)刊行物1に基づく新規性違反(理由A(3))
ア 本願発明23と引用発明1-1との対比及び判断
本願発明23と引用発明1-1を対比する。
なお、「マカデミアナッツ油」と「マカダミア油」は、呼称が異なるだけで、同じ物質であるのは当業者に明らかである。
精製ホホバ油は植物油であり、また、精製マカダミア油はパルミトレイン酸を含む植物油であって(摘記1-5、2-3)、パルミトレイン酸は炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸であるから(摘記1-5の「パルミトレイン酸(16:1Δ9)」との記載)、精製ホホバ油と精製マカダミア油とのエステル交換により得られるワックスエステルは、炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸を含むワックスエステルである。
したがって、引用発明1-1における「精製ホホバ油と、精製マカダミア油とのエステル交換により得られるワックスエステル」は、本願発明23における「植物源由来の、炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸を含むワックスエステル」に相当する。
また、本願発明23における「マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル」は、その生成方法にかかわらず、あらゆるマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(すなわちマカデミアナッツ油を構成する脂肪酸とフィトステロールとのエステル)を包含するものであるから、引用発明1-1における「精製マカダミア油とフィトステロールとのエステル交換により生成されるマカダミア油脂肪酸フィトステリル」は、本願発明23における「マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル」に相当する。
そうすると、本願発明23と引用発明1-1とは、
「植物源由来の、炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸を含むワックスエステルと、
フィトステロールと、
フィトスクワレンと、
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルと、
を含む、ヒト皮脂模倣物質」
である点において一致し、発明を特定するための事項において相違するところがない。
したがって、本願発明23は、刊行物1に記載された発明である。
この点について、審判請求人は、平成31年4月1日付け意見書において、本願発明のようにマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを別途添加する方法とエステル交換によりマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを生成する方法は全く別のものであり、このように異なる方法を経て得られる最終産物、つまり、ヒト皮脂模倣物質も、反応開始物質が異なるため、本願発明と引用文献1(刊行物1)とで互いに異なる旨を主張する。
しかしながら、本願発明23では、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルが別途添加されるものであることも、マカデミアナッツ油とフィトステロールのエステル交換により生成されたものでないことも、発明を特定するための事項とされていないから、審判請求人の主張は、当を得ない。

イ 小活
よって、本願発明23は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)刊行物1及び2に基づく進歩性違反(理由B(3))
ア 本願発明23と引用発明1-2との対比
本願発明23と引用発明1-2を対比する。
上記と同様に、引用発明1-2における「精製ホホバ油と、精製マカダミア油と、のエステル交換により得られるワックスエステル」は本願発明23における「植物源由来の、炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸を含むワックスエステル」に相当する。
そうすると、本願発明23と引用発明1-2とは、
「植物源由来の、炭素数16で二重結合を1個有する脂肪酸を含むワックスエステルと、
フィトステロールと、
フィトスクワレンと、
を含む、ヒト皮脂模倣物質」である点において一致し、
本願発明23はマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを含むものであるのに対し、後者はマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを含むものではない点において相違する(相違点1)。

イ 相違点1について
刊行物1には、引用発明1-2に規定の成分を含むヒト皮脂模倣物質は植物源から製造されることが望ましい旨記載され(摘記1-2?1-5)、該ヒト皮脂模倣物質には保湿剤などの機能性添加剤を加えることができ(摘記1-6)、ヘアケアローション、ハンドローション、顔用ローションなどの様々なパーソナルケア製品の成分として使用でき、その組成がヒトの皮脂の組成に非常に類似しているため、ヒトの皮膚の自然治癒および修復機構を促進したり、皮膚の水和を改善したりすることができることも記載されている(摘記1-7)。
以上の記載から、引用発明1-2のヒト皮脂模倣物質は、植物源から製造されるのが望ましいものであり、皮膚の水和などの皮膚の状態を改善するために、パーソナルケア製品の成分として皮膚の表面に適用されるものであると当業者は理解できる。
一方、刊行物2には、ステロールやステロールエステルの化粧品原料としての開発が進められ、軟質ラノリン脂肪酸コレステリルやマカデミアナッツ油脂肪酸コレステリルなどの各種のステロールエステルが上市され、それらのコレストロールエステルは抱水性が高くエモリエント剤として各種化粧品に使用されていること(摘記2-1、2-2)、植物指向に対応して、フィトステロールとマカデミアナッツ油脂肪酸を酵素反応によりエステル化したマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(商品名:YOFCO MAS)が開発されたこと、そして、マカデミアナッツ油脂肪酸は、皮膚の老化と関係が深く、加齢とともに漸減するパルミトレイン酸を20%以上含むものであり、上記のYOFCO MASはパルミトレイン酸を多く含む点で表皮脂質中のコレステロールエステルに類似したステロールエステルであることが記載され(摘記2-3)、さらに、YOFCO MASは、40℃で300%という高い抱水率を示し、エモリエント剤として知られるラノリン同等の機能を有し、荒れ肌に対する改善効果が期待でき、YOFCO-MASを油相成分としたO/Wクリーム又はO/W乳液はしっとりとした使用感であること(摘記2-4?2-6)が記載されている。
以上の記載から、各種のステロールエステルが化粧品原料として上市される中、植物由来のステロールエステルであるマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(YOFCO MAS)は、皮膚の老化と非常に関係が深く、加齢とともに漸減していく脂肪酸であるパルミトレイン酸を多く含む点で表皮脂質中に存在するコレステロールエステルと類似したステロールエステルであり、クリームや乳液などの化粧料の成分として皮膚表面に適用され、皮膚の水和や荒れ肌の改善を期待できるものであると当業者は理解できる。
してみると、植物源から製造され、皮膚の水和や皮膚の状態の改善のために皮膚に適用される引用発明1-2のヒト皮脂模倣物質に、加齢とともに漸減するといわれるパルミトレイン酸を多く含む点で表皮脂質中に存在するコレステロールエステルと類似する植物由来のステロールエステルであって、高い抱水率を有し、荒れ肌改善の効果が期待できるマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを更に加え、ヒト皮脂模倣物質とするのは、当業者が容易に想到することといえる。
したがって、相違点1は、刊行物1及び2の記載事項から、当業者が容易に想到し得るものである。

ウ 本願発明23の効果について
本願明細書の【0026】?【0033】には、ヒト皮脂模倣物質を配合したヘアコンディショニングローションが記載され、該ヘアコンディショニングローションが、保湿機能、光沢付与機能、保持機能、および切れ毛防止(anti-breaking)機能を含む複数の機能を提供するものであると記載されてはいる。しかし、上記の保湿等の各機能について、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを含まないヘアコンディショニングローションとの対比結果はおろか、それらの機能が具体的にどの程度のものであるのかすら記載されていないから、本願明細書の記載からは、本願発明23が刊行物1及び2の記載から予測し得ない顕著な効果を奏するものとは認められない。

エ 小活
以上のとおりであるから、本願発明23は、引用発明1-2並びに刊行物1及び2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

2 本願発明1について
(1)刊行物1及び2に基づく進歩性違反(理由B(3))
ア 本願発明1と引用発明1-2との対比
本願発明1と引用発明1-2を対比する。
引用発明1-2における「精製マカダミア油」は、本願発明1における「パルミトレイン酸を含む精製植物油」に相当するから、前者における「精製ホホバ油と、精製マカダミア油と、のエステル交換により得られるワックスエステル」は、後者における「精製ホホバ油と、パルミトレイン酸を含む精製植物油と、のエステル交換により得られるワックスエステル」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1-2とは、
「精製ホホバ油と、
パルミトレイン酸を含む精製植物油と、
のエステル交換により得られるワックスエステルと、
フィトステロールと、
フィトスクワレンと、
を含む、ヒト皮脂模倣物質」である点において一致し、
本願発明1は「マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(但し、前記マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルは、マカデミアナッツ油とフィトステロールとのエステル交換により生成したものではない)」を含むものであるのに対し、引用発明1-2は「マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル」を含むものではない点において相違する(相違点2)。

イ 相違点2について
引用発明1-2のヒト皮脂模倣物質に更にマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを配合するのが当業者に容易であることは、上記1(2)イで述べたとおりである。そして、上記した「YOFCO MAS」のような、フィトステロールとマカデミアナッツ油脂肪酸を酵素反応でエステル化する方法、すなわちマカデミアナッツ油とフィトステロールとのエステル交換以外の方法で生成したマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルも本願優先日前より知られていたのであるから、引用発明1-2のヒト皮脂模倣物質に更に配合するマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルとして、マカデミアナッツ油とフィトステロールとのエステル交換により生成したものではないものを選択するのは、当業者が容易に想到することである。
したがって、相違点2もまた、刊行物1及び2の記載事項から当業者が容易に想到し得るものである。

ウ 本願発明1の効果
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを配合することによる顕著な効果が認められないのは、上記1(2)ウで述べたとおりであり、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルとして、マカデミアナッツ油とフィトステロールとのエステル交換で生成したものではないものを用いることによって刊行物1及び2からは予測し得ない効果が奏されるものでもないから、本願発明23と同様に、本願発明1は、格別顕著な効果を奏するものではない。

エ 小活
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1-2並びに刊行物1及び2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(2)刊行物1及び2に基づく進歩性違反(理由B(2))
ア 本願発明1と引用発明1-1との対比
本願発明1と引用発明1-1を対比する。
引用発明1-2と同様に、引用発明1-1における「精製マカダミア油」は、本願発明1における「パルミトレイン酸を含む精製植物油」に相当するから、前者における「精製ホホバ油と、精製マカダミア油と、のエステル交換により得られるワックスエステル」は、後者における「精製ホホバ油と、パルミトレイン酸を含む精製植物油と、のエステル交換により得られるワックスエステル」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1-1とは、
「精製ホホバ油と、
パルミトレイン酸を含む精製植物油と、
のエステル交換により得られるワックスエステルと、
フィトステロールと、
フィトスクワレンと、
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルと、
を含む、ヒト皮脂模倣物質」である点において一致し、
本願発明1は、マカデミアナッツ油とフィトステロールとのエステル交換により生成したものではないマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを含むものであるのに対し、引用発明1-1は、マカデミアナッツ油(マカダミア油)とフィトステロールとのエステル交換により生成したマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(マカダミア油脂肪酸フィトステリル)を含むが、マカデミアナッツ油(マカダミア油)とフィトステロールとのエステル交換により生成したものではないマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(マカダミア油脂肪酸フィトステリル)は含まないものである点において相違する(相違点3)。

イ 相違点3について
引用発明1-1のヒト皮脂模倣物質は、引用発明1-2のヒト皮脂模倣物質と同様に、植物源から製造されるのが望ましいものであり、皮膚の水和や皮膚の状態を改善するために、パーソナルケア製品の成分として皮膚の表面に適用されるものであるから、引用発明1-1のヒト皮脂模倣物質において、刊行物2に記載の「YOFCO MAS」のようなフィトステロールとマカデミアナッツ油脂肪酸を酵素反応でエステル化する方法で生成したマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルを、上記のエステル交換により生成したマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル(マカダミア油脂肪酸フィトステリル)に追加して配合するのも、当業者が容易に想到することといえる。
したがって、相違点3は、刊行物1及び2の記載事項から当業者が容易に想到し得るものである。

ウ 本願発明1の効果
本願発明1が格別顕著な効果を奏するものでないことは、上記2(1)ウで述べたとおりである。

エ 小活
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1-1並びに刊行物1及び2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上の検討のとおり、本願請求項23に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本願請求項1及び23に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、上記の理由により、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-10 
結審通知日 2019-05-13 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2015-531141(P2015-531141)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
P 1 8・ 537- WZ (A61K)
P 1 8・ 113- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松元 麻紀子  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 岡崎 美穂
田中 耕一郎
発明の名称 植物源由来のヒト皮脂模倣物質およびその製造方法  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  

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