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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
管理番号 1355636
審判番号 不服2017-17074  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-17 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2015-523472「PMI発泡材料のための新規の成形法、またはこの方法により製造された複合構造部材」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日国際公開、WO2014/016068、平成27年 8月13日国内公表、特表2015-523254〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年6月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年7月24日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月21日付けで拒絶理由が通知され、同年5月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月7日付けで拒絶査定がされ、同年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、平成30年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書が提出され、同年同月26日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月4日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年5月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
発泡材料を成形する方法において、前記発泡材料はPMIフォームであり、および前記方法は、次の方法工程:
a)複数の被覆材およびその間に介在するフォームコアーを有する、任意の複合層の構成、
b)0.78?1.40μmの波長を有する近赤外線(NIR線)での照射による発泡材料の加熱、
c)成形用金型での成形、
d)冷却および最終加工物の取り出し
を有することを特徴とする、前記方法。」

第3 当審において通知された拒絶理由の概要
1 平成30年7月30日付けで通知された拒絶理由の概要
平成30年7月30日付けで通知された拒絶理由は、おおむね次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(主引用文献は引用文献4である。)。

引用文献1.特開平8-150629号公報
引用文献3.特開2009-12359号公報
引用文献4.特開平7-276490号公報
引用文献5.特開2006-321169号公報
引用文献6.特開2010-83144号公報
引用文献7.特開2000-6234号公報

2 平成30年11月26日付けで通知された拒絶理由の概要
平成30年11月26日付けで通知された拒絶理由は、おおむね次のとおりである。なお、該拒絶理由は、同年7月30日付けで通知された拒絶理由の判断を留保した上で通知されたものであり、また、実験成績証明書等によって、被覆材として、PEやアクリレート樹脂等のPA6やポリカーボネートと比べて低融点の樹脂を用いた場合でも、「材料の損傷を生じることなく」という効果を奏することを証明した場合には、拒絶理由は解消する旨付記していた。

(サポート要件)請求項1ないし9に係る発明が解決しようとする課題は、「硬質フォームを用いて急速かつ簡単に構造上の損傷なしに変形することができ、および/または被覆層、殊に熱可塑性プラスチックを用いて加工して複合体としうる新規方法を提供する」であると認められるが、請求項1ないし9に係る発明は、「複数の被覆材」として、実施例1で示された2つの被覆材以外の被覆材、例えばPEやアクリレート樹脂等のPA6やポリカーボネートと比べて低融点の樹脂を用いたものを含むものであるから、請求項1ないし9に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、請求項1ないし9の記載はサポート要件に適合しているとはいえない。
したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断
1 平成30年7月30日付けで通知された拒絶理由(進歩性)について
(1)引用文献に記載された事項等
ア 引用文献4に記載された事項及び引用発明
(ア)引用文献4に記載された事項
引用文献4には、「熱可塑性樹脂シートの加熱成形方法及び装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、総称して、「引用文献4に記載された事項」という。)がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献等についても同様。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂シート素材あるいは熱可塑性樹脂を主構成材料とする繊維強化複合シート素材(以下、これらを熱可塑性樹脂シートと総称する)の加熱成形方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在実用化されている熱可塑性樹脂シート成形における加熱成形方法として、真空圧空成形等に用いられる最大エネルギー波長が4μm近傍である遠赤外線ヒータによる方法もしくは、GMT(グラス マット サーモフォーミングシート)成形等に用いられる熱風/遠赤外線ヒータ等を用いた加熱炉による方法があげられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】最大エネルギー波長が4μm近傍にある遠赤外線ヒータによる加熱成形方法は、そのヒータの出力波長と樹脂の吸収波長がほぼ一致するため樹脂の加熱に有効とされているが、厚物素材の場合、ヒータの出力波長は樹脂の表面層で吸収されるため素材内部まで浸透しにくく、素材内部の温度上昇は素材表面からの熱伝導が支配的となる。一般に、樹脂の熱伝導は金属と比較して低く、このため最大エネルギー波長が4μm近傍にある遠赤外線ヒータで素材内部を成形可能温度まで加熱するには時間がかかり、素材によっては表面の温度が上がりすぎて発泡および酸化による変色を生じる場合がある。
【0004】一方、熱風/遠赤外線ヒータ等を用いた加熱炉による加熱成形方法は、素材表面の熱伝達によりエネルギーを受け、素材内部の温度上昇は上記の場合と同様、素材表面からの熱伝導となる。この場合も同様に、素材によって発泡および酸化による変色を生じる場合がある。
【0005】これらの問題を回避するため、吸水性のある素材では加熱前工程で予備乾燥を行う必要があり、予備乾燥無しでは加熱時に素材の発泡が生じ、成形品の性状を著しく損なってしまう。
【0006】例えば、熱可塑性樹脂シートの一例として、ポリカーボネイトの場合には、空気中の水分を吸水するため、加熱前に熱風炉による予備乾燥工程が必要である。
【0007】以上のような問題点に鑑み、本発明の主たる課題は、加熱中の素材の発泡および酸化による変色を回避することのできる熱可塑性樹脂シートの加熱成形方法及び装置を提供することにある。」

・「【0013】
【実施例】本発明により熱可塑性樹脂シートから箱型形状品を加熱成形する成形プロセスの工程の一例を図1?図6に示す。なお、この実施例は下金型及び下フレームが固定されたものの例である。図1において、1は成形に供される熱可塑性の樹脂シート、1′(図6)は成形品、2は箱型形状の下金型(以下、雌金型とする)で固定状態におかれる。3は上金型(以下、雄金型とする)で油圧もしくは空圧で上下に駆動される。雌金型2および雄金型3はヒータ(シーズヒータ、カートリッジヒータ、温調水、水蒸気等)で樹脂シート1の軟化点以下に予熱されている。
【0014】4,5は賦形における樹脂シート1の雌金型2への滑り込み量に応じた温度勾配をヒータ(シーズヒータ、カートリッジヒータ、温調水、水蒸気等)の埋め込み密度もしくは流量径を変えることにより設定し、樹脂シート1の軟化点近傍に予熱されたフレーム(熱板)で、上フレーム4は雄金型3のスライド案内部にガイドおよびロッドを介して取付けられている。下フレーム5は雌金型2に取付けられている。13は樹脂シート1をその両端において挟み込んで保持するクランパ、11,14は樹脂シート1を上下方向から加熱する上下間接加熱用のヒータで、最大波長が4μm近傍である遠赤外線ヒータよりも波長の短い最大波長が1?3μmである短波長もしくは中波長ヒータである。」

・「【0032】次に、本発明による加熱成形装置の動作について説明する。
【0033】1)樹脂シートのセット(図1)
クランプバー42を手動で回してロックを行い、クランプベース38を熱可塑性の樹脂シート1のクランプ位置(シート幅)にあわせる。次に、樹脂シート1をクランプ部に手動でセットし、シリンダ31を作動させることにより、ラック33、ピニオン34および軸35を介してクランププレート36を回転させ、樹脂シート1を対向する2辺でクランプする。クランプの際には、クランプボルト37の先端が樹脂シート1に食らいつき樹脂シート1とクランププレート36との滑りを防止する。樹脂シート1のクランプ後、クランプバー42を元に戻すことで、スプリング41によりクランプベース38には樹脂シート1の引張り方向の力が発生し、樹脂シート1の弛みをなくすと共に、加熱中の樹脂シート1の伸びが発生してもその垂れを防止する。
【0034】2)樹脂シートの加熱(図2)
インバータモータ21の回転により、装置の成形エリア外より間接加熱用の上ヒータ11、下ヒータ14が成形エリア内に入り、樹脂シート1の加熱を行う。ここでは図14で説明したように樹脂シート1の上下から、センタおよび端部の温度をリアルタイムで測定し、各部で生じる温度差をヒータ補正係数e_(1) ?e_(4)として算出し、図15に示すフローチャートの流れに沿ってヒータ出力にフィードバックをかける。加熱は予め入力された加熱完了温度まで各部素材温度が上昇すると終了となる。
【0035】3)下ヒータの退避、上ヒータ、クランパの下降(図3)
樹脂シート1の間接加熱終了後、下ヒータ14はインバータモータ21の回転により成形エリア外に退避する。
【0036】下ヒータ14の退避後、シリンダ45の作動により、上ヒータ11およびクランパ部は下降し、下フレーム5に樹脂シート1を載置する。なお、下フレーム5にはヒータが内蔵されているので、樹脂シート1を下フレーム5に載置しても樹脂シートの温度が低下することはない。
【0037】4)上ヒータの退避(図4)
下フレーム5に樹脂シート1を載置した後、上ヒータ11をインバータモータ21の回転により成形エリア外に退避させる。なお、上ヒータ11を下ヒータ14と同時に退避させ、その後、クランパ部を下降させ、下フレーム5に樹脂シート1を載置するという動作にしても良い。
【0038】5)樹脂シートの挟み込み(図5)
樹脂シート1の間接加熱が終了し、上ヒータ11,下ヒータ14の退避終了と同時に雄金型3を下降作動させることにより、雄金型3と連動した上フレーム4が樹脂シート1を下フレーム5との間に挟み込む。
【0039】6)成形、冷却(図6)
樹脂シート1を上フレーム4,下フレーム5で挟み込むと同時に雄金型3を下降動作させて、樹脂シート1を雌金型2に押しつけ、樹脂シート1を成形品1′の形状に成形する。この際、上フレーム4は雄金型3のガイド部のロッドがスライドすることにより樹脂シート1の挟み込み位置を保持する。
【0040】ここで、上フレーム4,下フレーム5には、賦形における樹脂シート1の雌金型2への滑り込み量に応じた温度勾配をあらかじめ設定しているので、樹脂シート1の滑り込みを容易にすると共に、滑り込み不要部を冷却することで余分な滑り込みを無くし、成形品1´の肉厚を確保すると共にしわの発生を防止する。
【0041】成形と同時に、成形品1´は樹脂の軟化点以下に予熱された雌金型2,雄金型3により軟化点以下(離型可能温度)まで冷却される。冷却後は上フレーム4と雄金型3は上昇作動し、成形品1´を取り出す。
【0042】下記の表1は本発明において使用される短波長及び中波長ヒータと従来の遠赤外線ヒータの特性を示しており、この表1を参照しながら具体的な実施例について説明する。
【0043】
【表1】



・「【0044】
実施例1(ポリカーボネイトの加熱および成形)
厚さ3mmの予備乾燥していないポリカーボネイトシートを本加熱成形装置を用いて加熱および成形する場合、まず樹脂シート1をクランプし、成形エリア外から上下間接加熱用の上ヒータ11、下ヒータ14を成形エリア内に入れ、樹脂シート1を上下面から加熱する。上下間接加熱用の上ヒータ11、下ヒータ14は中波長ヒータでヒータ温度が約1000℃に設定されており、75秒の加熱で、樹脂シート1を170℃まで昇温させる。加熱終了後はただちに上ヒータ11、下ヒータ14は成形エリア外に退避させると共に、樹脂シート1を挟み込んだクランパ13を下降させて樹脂シート1を下フレーム5に載置する。その後、雄金型3を下降させて成形を行う。形状を付加させた樹脂シート1は雌金型2、雄金型3により離型可能温度まで急冷される。
【0045】実施例2(厚物素材の加熱)
厚さ13mmの樹脂シート1による素材を本加熱成形装置を用いて加熱する場合、短波長ヒータを用いて初期出力100%とし、加熱100秒後に出力を75%に落とすことで厚さ方向でより均一な加熱が可能となる。
【0046】出力100%のものと途中で出力を変えたものとの比較を図16に示す。図16から明らかなように、ヒータ出力100%で加熱すると成形時の素材表面と素材中間との温度差は50℃となる。一方、ヒータ出力を途中で落とすように変化させると温度差は25℃に低減され、より均一な加熱が可能となる。
【0047】
実施例3(発泡材をサンドイッチした素材の加熱)
厚さ5mmの発泡材を厚さ1mmの上下表面材でサンドイッチした樹脂シートによる素材を本加熱成形装置を用いて加熱する場合、短波長ヒータを用いて初期出力75%とし、加熱30秒後に出力を100%に上げることで発泡材の2次発泡を防止し、かつ表面材は成形可能温度に昇温可能となる。この場合の素材温度を図17に示す。」

・「【0051】
【発明の効果】以上、本発明をいくつかの実施例を例示して説明したが、本発明による加熱成形方法では、最大エネルギー波長が4μm近傍である遠赤外線ヒータよりも波長の短い最大エネルギー波長が1?3μmである短波長もしくは中波長ヒータを使用しているため下記の様な利点がある。
・・・(略)・・・
【0057】放射体から出る最大エネルギー波長は短く、熱可塑性樹脂の吸収波長における透過率の高い領域であるため、被放射体の内部まで放射エネルギーが到達する。これにより、特に厚手の樹脂シートでも樹脂シート表面と内部との温度差を少なくできる。
【0058】従来の遠赤外線ヒータでは、ヒータから出る最大エネルギー波長が熱可塑性樹脂の吸収波長と一致するため、素材表面のみでヒータのエネルギーが吸収され、樹脂シート内部は樹脂シート表面からの熱伝導による温度上昇が支配的であった。このため、熱伝導の悪い熱可塑性樹脂では表面と内部との温度差が大きくなり、内部温度も成形可能温度にするためには樹脂シート表面では温度が高くなりすぎ、樹脂シート表面での発泡および酸化による変色を招く恐れがあった。
【0059】これに対し、本加熱成形方法では、樹脂シート表面と内部との温度差が少なく出来、かつ加熱から成形までの時間を短縮し、また温調されたフレーム(熱板)により温度保持を行い樹脂シートの温度降下量を最小限に抑えることで、樹脂シートの発泡および酸化による変色を回避するとともに、樹脂シート内部まで成形可能温度にすることが可能である。」

・「



(イ)引用発明
引用文献4に記載された事項、特に実施例3に関する記載事項を整理すると、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

<引用発明>
「厚さ5mmの発泡材を厚さ1mmの上下表面材でサンドイッチした樹脂シートによる素材を最大エネルギー波長が1.2μmの短波長ヒータを用いて加熱し、加熱終了後、樹脂シートを雄金型3に取付けられている下フレーム5に載置し、その後、雄金型3を下降させて成形を行い、形状を付加させた樹脂シートは雌金型2、雄金型3により離型可能温度まで急冷され、冷却後は雄金型3は上昇作動し、成形品1´を取り出す、厚さ5mmの発泡材を成形する方法。」

イ 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「発泡体コアを有するFRP成形品の成形方法」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)がある。

・「【0019】
本発明において、発泡体コアとは、例えば、加熱によって発泡する樹脂からなるものである。発泡体コアの材質は、後の工程での成形条件によって適宜選択することができ、特に制限されないが、取り扱いの点で好ましいのは、硬質の発泡体コアである。発泡体としては、例えば、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノール樹脂フォーム、硬質PVCフォーム、ポリメタクリルイミド硬質発泡体が挙げられる。
【0020】
発泡体コアの作成法は、特に制限はない。例えば、前記の様な発泡体(既に発泡しているもの)のシートあるいはブロックで、発泡体コア用の成形型よりも若干大きめのものを準備し、これを成形型の上型と下型の間で加圧・圧縮する。その後、型からはみ出した部分を切除あるいはトリミングすることによって発泡体コアを作成する。加圧・圧縮の条件は、特に限定されるものではなく、発泡体コアが十分に安定した形状を保つ程度の加圧・圧縮条件であれば良い。例えば、ポリメタクリルイミド硬質発泡体の場合には、10?15kgf/cm^(2)、1?2分程度で十分である。また、必要に応じて加熱しても良い。以上のようにして製作された発泡体コアは、通常、表面にうねりを有する場合が多いが、本発明においてはそのまま用いる。」

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「厚さ5mmの発泡材」は、本願発明における「発泡材料」及び「フォームコアー」に相当し、同様に、「上下表面材」は「複数の被覆材」に相当するから、引用発明における「厚さ5mmの発泡材を厚さ1mmの上下表面材でサンドイッチした樹脂シートによる素材」を準備する工程は、本願発明における「a)複数の被覆材およびその間に介在するフォームコアーを有する、任意の複合層の構成」という「方法工程」に相当する。
また、引用発明における(末尾の)「厚さ5mmの発泡材を成形する方法」は、本願発明における「発泡材料を成形する方法」及び(末尾の)「前記方法」に相当する。
さらに、引用発明における「最大エネルギー波長が1.2μmの短波長ヒータを用いて加熱し」という工程は、本願発明における「b)0.78?1.40μmの波長を有する近赤外線(NIR線)での照射による発泡材料の加熱」という「方法工程」に相当し、以下、同様に、「加熱終了後、樹脂シートを雄金型3に取付けられている下フレーム5に載置し、その後、雄金型3を下降させて成形を行い」という工程は「c)成形用金型での成形」という「方法工程」に、「形状を付加させた樹脂シートは雌金型2、雄金型3により離型可能温度まで急冷され、冷却後は雄金型3は上昇作動し、成形品1´を取り出す」という工程は「d)冷却および最終加工物の取り出し」という「方法工程」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。
「発泡材料を成形する方法において、前記方法は、次の方法工程:
a)複数の被覆材およびその間に介在するフォームコアーを有する、任意の複合層の構成、
b)0.78?1.40μmの波長を有する近赤外線(NIR線)での照射による発泡材料の加熱、
c)成形用金型での成形、
d)冷却および最終加工物の取り出し
を有する、前記方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点>
「発泡材料」に関して、本願発明においては、「前記発泡材料はPMIフォームであり」と特定されているのに対し、引用発明においては、不明な点。

(3)判断
ア そこで、相違点について検討する。
「発泡材料」として、ポリメタクリルイミド、すなわちPMIの発泡体(フォーム)は周知のものである(必要であれば、引用文献3に記載された事項及び特開2003-11136号公報に記載された下記の事項を参照。以下、「周知技術」という。)。
他方、引用文献4に記載された事項(【0003】ないし【0009】)によると、引用発明の課題は、最大エネルギー波長が4μm近傍にある遠赤外線ヒータによる加熱成形方法や熱風/遠赤外線ヒータ等を用いた加熱炉による加熱成形方法では、素材によっては表面の温度が上がりすぎて発泡および酸化による変色を生じる場合があるという問題点があり、その問題点を回避することであるが、引用発明において、「発泡材」(本願発明における「発泡材料」及び「フォームコアー」に相当する。)として、PMIフォームを採用した場合にも、上記問題点が生じることが想定されるから、引用発明において、「発泡材」として、PMIフォームが排除されているとはいえず、PMIフォームを採用することに阻害要因はない。
したがって、引用発明において、「発泡材」として、周知技術として知られるPMIフォームを採用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用文献4の記載事項(特に、【0003】、【0047】及び【0059】)からみて、引用発明における発泡材として、PMIフォームを採用した場合においても、樹脂シート表面と内部との温度差が少なくでき、樹脂シートの発泡及び酸化による変色を回避するとともに、樹脂シート内部まで成形可能温度にすることが可能となるから、本願発明の「加工中に損傷をこうむることなく、前記複合材料を成形して製造し、かつ、同時に表面材料の選択を比較的自由に選択しうる」(本願明細書の【0012】参照。)という効果と同様の効果を奏することが予想されるので、本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術からみて、格別顕著なものとはいえない。
よって、本願は、引用発明、すなわち引用文献4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<特開2003-11136号公報に記載された事項>
・「【0026】○3(当審注;○3は○付き数字の3である。)コア材加工・準備工程
サンドイッチ構造体を成形する場合には、所定の溝加工を行ったコア材を準備する。・・・(略)・・・具体的な材料としては、塩化ビニル製(たとえば、”クレゲセル”(商品名))やポリメタクリルイミド製(たとえば、”ロハセル”(商品名))のフォームコアや、それらのフォームコアが詰められたアルミ製ハニカムコアなどが掲げられる。また、木製コアやバルサコア等も適用可能である。」

・「【0038】(5)コア材 ;ポリメタクリルイミド製フォームコア(”ロハセル”)=15倍発泡×厚さ25mm幅方向に樹脂流路用に矩形状溝(3mm×3mm;25mmピッチ)をコアの上下面に千鳥状に形成」

イ なお、請求人は、平成30年11月2日提出の意見書において、「引用文献3に記載の発明は、これらの発泡体コアを加熱成形する際に、その表面に生じるうねりを防止すべく、チタン紙を用いるというものであり、最大エネルギー波長が4μm近傍にある遠赤外線ヒータを用いることによる熱可塑性樹脂表面の発泡および酸化による変色の問題や、加熱に用いるエネルギーの波長については示唆すらありません。
そのため、たとえ当業者であっても、最大エネルギー波長が4μm近傍にある遠赤外線ヒータを用いた場合の熱可塑性樹脂表面における発泡および酸化による変色を防止するという課題に基づいて、熱可塑性樹脂の加熱成形の際に、最大エネルギー波長が1?3μmである短波長あるいは中波長のヒータを用いるという引用発明において、発泡体コアを加熱成形する際に、その表面に生じるうねりを防止するために、チタン紙を用いることを教示している引用文献3を組み合わせることはありえません。」旨主張するが、引用文献3に記載された発明がチタン紙を用いることに特徴があるものであるとしても、引用文献3に記載された事項から、発泡材料の材質として、ポリメタクリルイミド、すなわちPMIが周知のものであることが示されることには変わりはないから、上記主張は採用できない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 平成30年11月26日付けで通知された拒絶理由(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件の存在は、特許出願人が証明責任を負うと解するのが相当である。

(2)サポート要件の判断
そこで、検討する。
ア 特許請求の範囲の記載
本願発明に関して、特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。

イ 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、おおむね次の記載がある。

・「【0001】
発明の分野
本発明は、例えば、硬質フォームからなるコアーを有する複合材料の製造に適している、新規種類の方法に関する。その際に、発泡材料ならびに被覆層が自由に選択可能であることは、大きな利点である。殊に、本方法を用いると、加工温度がコアー加工物の加工温度と明らかに相違する被覆層も加工可能である。
【0002】
さらに、本発明は、第2の実施態様において、一体フォーム構造体を部分的に圧縮することができる方法に関する。第3の実施態様を用いると、発泡材料の少なくとも2つの加工物から、溶接によって、特に価値の高い接合箇所を有する中空体を製造することが可能である。その際に、このことは、被覆層の有無により行なうことができる。
【0003】
さらに、本方法を用いると、真空成形法を用いて発泡材料を加工することが特に良好に可能である。
【0004】
技術水準
技術水準において、硬質フォームを有する繊維強化されたプラスチックを製造する多種多様な方法または硬質フォームを成形する多種多様な方法が一般的に記載されている。硬質フォームとは、この発明に関連して、例えば市販のPUフォームまたはポリスチレンフォームと同様に、僅かな力では機械的に変形できずにその後に元通りに戻されるフォームであると解釈される。硬質フォームの例は、とりわけ、PPフォーム、PMMAフォームまたは高度に架橋されたPUフォームである。特に強く負荷可能な硬質フォームは、ポリ(メタ)アクリルイミド(PMI)であり、これは、例えばEvonik社によってROHACELL(登録商標)の名称で販売されているものと同じである。
【0005】
記載された複合材料を製造する、一般に公知の方法は、被覆層を成形し、その後にフォーム原料を充填し、このフォーム原料を最終的に発泡させることである。当該方法は、例えば米国特許第4933131号明細書中に記載されている。この方法の欠点は、前記発泡がたいてい極めて不均一に行なわれることである。このことは、殊に、せいぜい顆粒として添加されうる材料、例えばPMIについて言えることである。当該方法のさらなる欠点は、純粋な発泡材料の成形のために、被覆層を元通りに除去しなければならないことである。他方で、複合構造部材の場合には、被覆層とフォームコアーとの間の付着力が、機械的に負荷された構造部材にとって、しばしば不十分であることである。
【0006】
Passaro et al.,Polymer Composites,25(3),2004,第307頁以降には、PPフォームコアーを繊維強化されたプラスチックと圧縮成形用金型内で接合し、およびその際に前記フォームコアーを、前記金型を用いて意図的に表面上でのみ加熱し、被覆材に対する良好な接合を可能にする方法が記載されている。Grefenstein et al.,International SAMPE Symposium and Exhibition,35(1,Adv.Materials:Challenge Next Decade),1990,第234?244頁には、ハネカムコアー材料またはPMIフォームコアーを有するサンドイッチ材料を製造するための類似の方法が記載されている。しかし、成形は、これら2つの方法では不可能であり、サンドイッチ材料を板の形で製造することだけが可能である。
【0007】
WO 02/098637には、熱可塑性被覆材を溶融液としてフォームコアー材料の表面上にもたらし、次にフォームコアーとともに、ツインシート成形法(Twin-Sheet-Verfahren)を用いて成形して複合成形品とし、その後に熱可塑性樹脂を、前記被覆材が金型内で凝固する程度に冷却する方法が記載されている。しかし、この方法を用いると、限られた数の材料だけが組み合わされうる。すなわち、例えば、繊維強化された被覆材は、製造されえない。また、フォーム加工物を純粋に成形する方法は、被覆材なしでは使用不可能である。さらに、また、発泡材料の選択は、低温で弾性変形しうる材料に制限されている。硬質フォームは、当該方法の場合にフォームの均一な加熱なしでは構造的に損なわれすぎるであろう。
【0008】
欧州特許第0272359号明細書中に記載された方法も極めて類似している。ここでは、フォームコアープレフォームを最初に切断して造形品とし、かつ金型内に置く。引続き、熱可塑性材料の溶融液を表面上に射出する。その上に、温度を高めることにより、前記フォームコアープレフォームが発泡され、それによって、被覆材の表面上に圧縮を生じさせる。実際に、この方法で、被覆材に対するより良好な付着力が達成されうる。そのために、第1の成形のさらなる作業工程を有する前記方法は、より費用が掛かり、総じて、実現可能な造形品に関連して、明らかにより著しく制限されている。
【0009】
W.Pip,Kunststoffe,78(3),1988,第201?205頁には、繊維強化された被覆層およびPMIフォームコアーを有する成形された複合体を、圧縮成形用金型内で製造する方法が記載されている。この方法の場合、個々の層は、加熱された圧縮成形用金型内で一緒にされ、その際に、最上層を局所的に加熱された発泡材料中に押しつぶすことにより、軽度の成形が行なわれる。同時に、前記金型内での後発泡により、造形品が形成されうる方法が記載されている。当該方法の欠点は、既に先に討論された。第3の変法として、前記材料の弾性圧縮が予熱されたフォームの圧縮成形中に行なわれる方法が開示されている。予熱は、炉内で行なわれる。しかし、前記方法の欠点は、数多くの発泡材料に、熱弾性変形のための極めて高い温度が必要とされることである。すなわち、例えばPMIフォームには、少なくとも185℃の温度が必要とされる。さらに、コアー加工物は、材料破壊を避けるために、相応して全材料範囲にわたって加熱されなければならない。当該温度の場合、とりわけ、前記材料破壊は、均一な分布において、数分間のより長い加熱の状態でのみ考えられうるが、しかし、数多くの被覆材、例えばPPは、方法が実施不可能である程度に損なわれるであろう。
【0010】
U.Breuer,Polymer Composite,1998,19(3),第275?279には、PMIフォームコアーのためのPipからの先に討論された第3の変法の僅かに変更された方法が開示されている。ここで、PMIフォームコアーおよび繊維強化された被覆材の加熱は、IR加熱ランプを用いて行なわれる。とりわけ、3?50μmの範囲内の波長を有する光(IR-C線またはMIR線)を放射する当該IR熱照射器は、基体の急速加熱に特に良好に適している。しかし、その際に、望ましくは、エネルギー入力が極めて高い場合には、このことは、同時に、数多くの被覆材、例えばPPの損傷をまねく。すなわち、前記Breuer et.al.には、ポリアミド12(PA12)だけが被覆層のために考えられうるマトリックス材料として開示されている。PA12は、プラスチックの損傷をまねくことなく、簡単に200℃を超えて加熱されうる。フォームコアーの同時の成形は、前記の方法形式においては不可能である。それというのも、IR線領域の熱線は、フォームマトリックス中に浸透せず、それゆえに熱可塑的に成形可能な状態が達成されないからである。
【0011】
課題
したがって、本発明の課題は、討論された技術水準の背景から、硬質フォームを用いて急速かつ簡単に構造上の損傷なしに変形することができ、および/または被覆層、殊に熱可塑性プラスチックを用いて加工して複合体としうる新規方法を提供することであった。
【0012】
殊に、本発明の課題は、加工中に損傷をこうむることなく、前記複合材料を成形して製造し、かつ、同時に表面材料の選択を比較的自由に選択しうる方法を提供することであった。」

・「【0016】
解決法
前記課題は、発泡材料を成形する、新規種類の方法によって解決される。この新規種類の方法は、とりわけ、硬質発泡材料、例えば高度に架橋されたポリウレタン(PU)の成形に適しているか、ポリプロピレン(PP)の成形に適しているか、またはポリ(メタ)アクリルイミド、殊にポリメタクリルイミド(PMI)の成形に適している。その際に、前記方法は、次の方法工程:
a)複数の被覆材およびその間に介在するフォームコアーを有する、任意の複合層の構成、
b)0.78?1.40μmの波長を有する近赤外線(NIR線)での照射による発泡材料の加熱、
c)成形用金型での成形、
d)冷却および最終加工物の取り出し
を有する。」

・「【0020】
意外なことに、処理工程b)(またはb2))において前記材料を注意深く加熱することにより、同時に前記材料の損傷を生じることなく、可塑的変形可能性は、均一な熱入力によって引き起こされうることが見い出された。殊に、例えば、炉内での加熱の際に硬質フォーム表面の観察すべき損傷は、本方法を適切に実施する場合には生じない。使用されるNIRスペクトル領域の熱線は、フォーム気泡の気相を吸収なしに透過し、かつ気泡壁マトリックスの直接の加熱を生じさせる。」

・「【0027】
意外なことに、前記被覆材の選択は、比較的に自由である。前記被覆材は、例えば純粋な熱可塑性樹脂、織布もしくはニットまたはこれらの複合体、例えばいわゆる有機シートまたはプラスチック被覆された織布キャリヤーシート、例えば人工皮革であることができる。好ましくは、前記被覆材は、繊維強化されたプラスチックである。他方で、前記繊維は、例えばアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維または紡織繊維であることができる。他方で、前記プラスチックは、有利にPP、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステルまたはポリアミドであることができる。」

・「【0047】
実施例1:フォームコアーを有する繊維強化されたプラスチックの製造(複合構造部材)
本方法をGeiss AG社の例えば型式T8と同様のツインシート二次成形機(Twin-Sheet-Umformmaschine)上で実施する。その際に、前記機械は、次の構成で装備されていた:
フラッシュ放熱器(NIR;0.78?1.40μm)を有する加熱場、
調節可能な作業空間用窓、
高さ調節可能な上部ヒーター、
成形力30メートルトン(分)、電動機の運転、
加熱/冷却可能な二次成形用金型。
【0048】
前記実施態様を例証するために、図1が指摘される。
【0049】
一般に、選択すべき方法パラメーターは、個々の具体的な事例に使用される装置の設計に従う。前記方法パラメーターは、予備試験によって算出されなければならない。すなわち、基準温度T_(F)は、PMIフォームマトリックスのT_(g)(S)、被覆層の二次成形温度、上部ヒーターの高さ調節T_(g)(S)≦T_(F)(上部ヒーターの温度)に従う。その際に、上部ヒーターとフォームマトリックスとの距離がより大きければ、上部ヒーターの温度をより高く調節すべきであると言える。部分的な構造部材範囲の二次成形度(U_(g))に応じて、放熱器の電界強度(I)も変動されうる。前記クランプに近い縁部で、前記材料の連続的な流れを保証しかつ同時に前記材料の締付状態を維持するために、ほぼ100%の放熱器の電界強度Iが選択される。
【0050】
被覆層の被覆(レイアップ成形法):フォームコアーには、片側または両側に異なる被覆材を備え付けることができる。例えば、立体裁断可能な織布/レイドスクリム(laid scrim)、多種多様な繊維種または繊維混合物から製造された材料複合体を使用することができ(いわゆる、有機シート)、これらの立体裁断可能な織布/レイドスクリム(laid scrim)、多種多様な繊維種または繊維混合物から製造された材料複合体は、熱可塑性相を備えているか、またはフォーム表面と接合されうる、熱可塑性被覆層、例えばPC、PMMA、PVCまたは別の熱可塑的に成形可能なプラスチックを備えている。このことは、任意に、付着助剤としての溶融型接着剤フィルムまたは溶融型接着剤フリースを使用して行なうことができる。具体的な例において、上部および下部で、Bond Laminates社の有機シート(Tepex(登録商標)Dynalite 102-RG600)からなる800μmの厚さの層が使用された。さらなる例において、ポリカーボネートシートLexanが1500μmの厚さで両側に使用された。
【0051】
実施:フォームコアーとして、51kg/m^(3)の密度および15mmの材料厚さを有する、Evonik Industries AG社のタイプROHACELL(登録商標)SのPMIフォームが使用された。前記クランプは、有利にAl接着テープまたは高光沢の特殊鋼薄板を有する内面が鏡面仕上げされているべきであった。前記被覆層の形式寸法は、調節される窓寸法に従っており、かつ被覆層が幅および長さの点で約5cm窓と重なることによりクランプフレームによって掴持しうる程度に定められている。被覆層を有する、二次成形すべきフォームコアーは、作業窓上に位置決めされ、かつ降下されてクランプフレームに固定される。
【0052】
210℃のPMIフォームの二次成形温度への加熱中に、被覆層が波打ち始めることを観察しうる。可塑化の進行の開始とともに、下部ヒーター上への垂れ下がりを避けるために、個々の圧縮空気パルスが機械空間内に発射される。前記被覆層の必要条件に依存して、約3?4分後に、熱放射体の基準温度および強度は、被覆材が立体裁断可能に塑性変形する程度に変化されうる。次に、一時的に基準温度は、さらに約5℃上昇され、前記材料により大きな残留熱を与える。
【0053】
加熱段階の終結後に、下部の加熱場ならびに上部の加熱場は、金型半型の操作範囲から取り外され、120℃?150℃の温度で温度制御された金型の最終的な可動は、可能なかぎり急速に実施される。前記金型の幾何学的形状に沿っての被覆層の成形および立体裁断は、こうして1つの作業工程で行なわれる。前記金型を80℃未満へ冷却した後に、前記構造部材は、最終的に取り出されうる。前記金型の再加熱後に、すぐ次の複合構造部材の製造が開始されうる。
【0054】
実施例2:局所的な圧縮部を有する発泡材料の製造(一体構造体)
本方法を実施例1の記載と同様にGeiss AG社のツインシート二次成形機(Twin-Sheet-Umformmaschine)型式T8の上で実施する。ここでも、一般に、選択すべき方法パラメーターは、個々の具体的な事例に使用される装置の設計に従う。相応することは、実施例1の記載と同様に基準温度T_(F)についても言えることである。前記実施態様を例証するために、図2が指摘される。
【0055】
実施:本例においては、110kg/m^(3)の密度を有する、Evonik Industries AG社のタイプROHACELL(登録商標)IGのPMIフォームが使用された。出発材料の厚さは、60mmであった。部分的な圧縮は、金型内で型押しを実施して、約25mmの直径の材料を部分的に34mmの厚さに圧縮する円錐体によって達成された。また、別の構造部材範囲においては、狭い半径およびかなりの圧縮勾配を有する、金型側の幾何学的形状が約6分間のサイクル時間で形成された。
・・・(略)・・・
【0060】
実施例3:中空体の成形
本方法を例えば実施例1の記載と同様にGeiss AG社のツインシート二次成形機(Twin-Sheet-Umformmaschine)型式T8の上で実施する。ここでも、一般に、選択すべき方法パラメーターは、個々の具体的な事例に使用される装置の設計に従う。相応することは、実施例1の記載と同様に基準温度T_(F)についても言えることである。前記実施態様を例証するために、図3が指摘される。
【0061】
実施:本例においては、110kg/m^(3)の密度を有する、Evonik Industries AG社のタイプROHACELL(登録商標)IGのPMIフォームが使用された。2つの形式のフォームの出発材料の厚さは、それぞれ15mmであった。
・・・(略)・・・
【0066】
実施例4:中空体の真空成形
本方法を例えば実施例1の記載と同様にGeiss AG社のツインシート二次成形機(Twin-Sheet-Umformmaschine)型式T8の上で実施する。ここでも、一般に、選択すべき方法パラメーターは、個々の具体的な事例に使用される装置の設計に従う。相応することは、実施例1の記載と同様に基準温度T_(F)についても言えることである。前記実施態様を例証するために、図4が指摘される。
【0067】
実施:本例においては、71kg/m^(3)の密度を有する、Evonik Industries AG社のタイプROHACELL(登録商標)HFのPMIフォームが使用された。前記形式のフォームの出発材料の厚さは、5.6mmであった。とりわけ、本発明のこの実施態様の場合、10mmまでの厚さの前記形式のフォームが使用される。」

ウ 発明の課題
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0012】によると、本願発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「硬質フォームを用いて急速かつ簡単に構造上の損傷なしに変形することができ、および/または被覆層、殊に熱可塑性プラスチックを用いて加工して複合体としうる新規方法を提供すること」である。

エ 判断
(ア)一般記載である発明の詳細な説明の【0016】及び【0020】によると、「0.78?1.40μmの波長を有する近赤外線(NIR線)」の熱線により、「材料の損傷を生じることなく、可塑的変形可能性」が引き起こされうるとされているが、なぜ、そうなるのか、また、なぜ、発明の課題が解決できるのか、について、当該箇所にも発明の詳細な説明の他の箇所にも記載されていない。

(イ)発明の詳細な説明の【0047】ないし【0053】によると、「発泡材料」である「フォームコアー」を「51kg/m^(3)の密度および15mmの材料厚さを有する、Evonik Industries AG社のタイプROHACELL(登録商標)SのPMIフォーム」とし、「被覆材」を「Bond Laminates社の有機シート(Tepex(登録商標)Dynalite 102-RG600)からなる800μmの厚さの層」(当審注:「Tepex(登録商標)Dynalite 102-RG600)」は、ガラス繊維にポリアミド6を含浸させた熱可塑性材料である。)又は「1500μmの厚さ」の「ポリカーボネートシートLexan」とし、「被覆層」を両側に備える「フォームコアー」を「フラッシュ放熱器(NIR;0.78?1.40μm)」で加熱したものが、実施例1として記載され、発明の詳細な説明の【0054】ないし【0067】によると、実施例1とは、「発泡材料」である「フォームコアー」として、密度及び材料厚さが異なる「Evonik Industries AG社のタイプROHACELL(登録商標)SのPMIフォーム」を使用し、「被覆材」として、その材質は不明なものが、実施例2ないし4として記載されている。
そして、「被覆材」の材質である、ポリアミド6やポリカーボネートは融点が高い(ポリアミド6は228℃程度であり、ポリカーボネートは260℃程度であることは技術常識である。)ことから、「発泡材料」である「フォームコアー」として使用されるPMIフォームが成形可能な温度(発明の詳細な説明の【0009】によると、少なくとも185℃である。)まで加熱されたとしても、溶融されず、「被覆材が立体裁断可能に塑性変形する程度」の変化にとどまっている可能性があるので、上記2つの被覆材については、「材料の損傷を生じることなく、可塑的変形可能性」が引き起こされうるという効果があり、また、発明の課題を解決しているといえるかもしれない。
しかし、「被覆材」としてポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度と比べて相当融点が低い樹脂(低密度ポリエチレンは106?120℃程度、中密度ポリエチレンは120?123℃程度、高密度ポリエチレンは123?135℃程度であることは技術常識である。)を用いた場合については、PMIフォームが成形可能な温度まで加熱された時に、「被覆材が立体裁断可能に塑性変形する程度」の変化にとどまるのかは確認されていないし、「被覆材」としてポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度と比べて相当融点が低い樹脂を用いた場合に、PMIフォームが成形可能な温度まで加熱された時に、「被覆材が立体裁断可能に塑性変形する程度」の変化にとどまることが本願出願時の当業者の技術常識であるともいえない。むしろ、ポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度と比べて相当融点が低い樹脂は、PMIフォームが成形可能な温度まで加熱された時には、溶融してしまうと考えるのが普通である。
そうすると、「被覆材」としてポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度より融点が相当低い樹脂を用いた場合については、PMIフォームが成形可能な温度まで加熱されると、これらの樹脂は溶融してしまい、「被覆材が立体裁断可能に塑性変形する程度」の変化にとどまっているとは当業者は認識できないから、「被覆材」としてポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度より融点が相当低い樹脂を用いた場合に、「材料の損傷を生じることなく、可塑的変形可能性」が引き起こされうるとは、当業者は認識できないし、また、発明の課題を解決できるとも、当業者は認識できない。

(ウ)以上を踏まえ、請求項1の記載を見るに、請求項1の記載は、「複数の被覆材」の材質を限定しておらず、実施例1で示された2つの被覆材以外の被覆材、例えばポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度より融点が相当低い樹脂を用いたものを含むものである。
すると、本願発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるといえる。

(エ)よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないので、本願の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するとはいえない。

(オ)なお、請求人は、平成31年3月4日提出の意見書において、「本願発明による発泡材料の成形法において重要なことは、上記のような被覆材の種類ではなく、発泡材料がPMIフォームであり、その成形の際に、従来は不適切であると考えられていた0.78?1.40μmという極めて狭い範囲の波長のNIR線を用いて加熱するということです。そして、上記のとおり、本願出願時の当業者であれば、PMIフォームの被覆が実施例に記載されている2つの被覆材以外のものであっても、請求項1に記載されているとおりの新規の方法により、PMIの硬質フォームを用いて急速かつ簡単に、構造上の損傷なしに変形することができ、かつ/または被覆層、特に熱可塑性プラスチックを用いて加工して複合体を製造するという課題を解決できることは十分に理解できるものと思料いたします。」旨主張するが、本願発明による発泡材料の成形法において重要なことが、被覆材の種類ではなく、発泡材料がPMIフォームであり、その成形の際に、従来は不適切であると考えられていた0.78?1.40μmという極めて狭い範囲の波長のNIR線を用いて加熱するということであるとしても、上記(イ)のとおり、ポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度より相当融点が低い樹脂を被覆材として用いた場合には、被覆材は溶融してしまい、「被覆材が立体裁断可能に塑性変形する程度」の変化にとどまっているとは当業者は認識できないのであるから、被覆材として、ポリエチレン(PE)等のPMIフォームが成形可能な温度より相当融点が低い樹脂を含む本願発明が、「硬質フォームを用いて急速かつ簡単に、構造上の損傷なしに変形することができ、および/または被覆層、殊に熱可塑性プラスチックを用いて加工して複合体としうる新規方法を提供すること」という課題を解決できるとは当業者は認識できないので、上記主張は採用できない。
また、平成30年11月26日付けの拒絶理由通知において、ポリエチレン(PE)やアクリレート樹脂を用いた場合に、「材料の損傷を生じることなく」という効果を示せるか否かを問うたものの、この点について、具体的な説明はなされなかった。

(3)まとめ
したがって、本願発明に関して、特許請求の範囲に記載された発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
上記第4 1のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
また、上記第4 2のとおり、請求項1に係る発明に関して、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-24 
結審通知日 2019-05-08 
審決日 2019-05-21 
出願番号 特願2015-523472(P2015-523472)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B29C)
P 1 8・ 537- WZ (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
植前 充司
発明の名称 PMI発泡材料のための新規の成形法、またはこの方法により製造された複合構造部材  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

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