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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02P
管理番号 1355641
審判番号 不服2018-8687  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-25 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2016-507528「プラズマヘッダーガスケットおよびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日国際公開、WO2014/168644、平成28年8月4日国内公表、特表2016-522866〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年4月8日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成27年12月4日 :国際出願翻訳文の提出
平成28年7月1日 :手続補正書の提出
平成29年5月15日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年6月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年9月27日(発送日) :拒絶理由通知書(最後)
平成29年12月5日 :意見書の提出
平成30年2月28日(発送日) :拒絶査定
平成30年6月25日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成29年6月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「ディーゼルエンジン用のプラズマヘッダーガスケットであって、該プラズマヘッダーガスケットが、
ディーゼルエンジン用のエンジンブロック中のピストン形シリンダに対応する開口を有する、積層基板;
基板に関連付けられる複数の対の導体;
複数のプラズマイグナイターであって、その各々が、複数の対の導体の1つに電気接続され、開口の縁からピストン形シリンダに伸長する電極間隙を画定する1対の露出電極を含む、複数のプラズマイグナイター、および
複数の対の導体に電気接続されたマイクロプロセッサー制御ユニットであって、ピストン形シリンダ中のピストンに合わせて複数のプラズマイグナイターをスパークするようにプログラムされ、対応するピストン形シリンダにおいて燃焼の渦を作り出すために開口の縁のまわりで連続して複数のプラズマイグナイターをスパークするようにプログラムされた、マイクロプロセッサー制御ユニット、を含む、
プラズマヘッダーガスケット。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし11に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2009-221943号公報
引用文献2.特表平6-503867号公報
引用文献3.米国特許第7299785号明細書
引用文献4.米国特許第5659132号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開2009-221943号)には、「内燃機関のガスケット及び内燃機関」に関して、図面(特に図1ないし図5、図8及び図10を参照。)とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【0001】
本発明は、内燃機関の技術分野に属し、シリンダブロックと、このシリンダブロックの反クランクケース側に組み付けられたシリンダヘッドとの間に装着されるガスケットに関する。」

イ 「【0008】
本発明は、ピストンが往復自在に嵌まるシリンダが貫通して設けられたシリンダブロックと、このシリンダブロックの反クランクケース側に組み付けられてピストン及びシリンダと共に燃焼室を形成するシリンダヘッドとの間に装着され、シリンダに対応した開口が設けられた内燃機関のガスケットである。この内燃機関のガスケットは、
厚さ方向の中間層に設けられ、外端が外周縁から露出して第1接続部となり、内端が開口の内周縁から露出して電極となり、第1接続部同士の間又は第1接続部と接地部材との間に印加された電圧により電極間又は電極と周囲の接地部材との間で放電する放電線路と、
少なくとも一部が開口の内周縁における厚さ方向の中間層に設けられ、燃焼室へ電磁波を放射するアンテナと、
厚さ方向の中間層に設けられ、外端が外周縁から露出して第2接続部となり、内端が上記アンテナに接続され、電磁波をアンテナに導く電磁波伝送路とを備え、
上記放電線路、アンテナ及び電磁波伝送路と、厚さ方向の両端面との間を電気的に絶縁するように構成されている。
【0009】
このガスケットを、その開口がシリンダに対応するようにシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に装着し、シリンダにピストンを往復自在に嵌め、通常に作動するガソリン機関、ディーゼル機関などの内燃機関を組む。放電線路の第1接続部同士の間又は第1接続部と接地部材との間に電圧を印加できるようにしておく。電磁波伝送路の第2接続部と接地部材との間に電磁波を一定時間供給できるようにしておく。そして、内燃機関の作動時における圧縮行程において、放電線路の第1接続部などへの電圧印加と、電磁波伝送路の第2接続部などへの電磁波の供給とを行う。そうすると、電極の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナから一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受け、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から燃焼が促進される。すなわち、電極近傍の電子が加速され、上記プラズマの領域外へ飛び出す。この飛び出した電子は、上記プラズマの周辺領域にある空気、燃料及び空気の混合気などのガスに衝突する。この衝突により周辺領域のガスが電離しプラズマになる。新たにプラズマになった領域内にも電子が存在する。この電子もまた電磁波パルスにより加速され、周辺のガスと衝突する。このようなプラズマ内の電子の加速、電子とガスとの衝突の連鎖により、周辺領域では雪崩式にガスが電離し、浮遊電子が生じる。この現象が放電プラズマの周辺領域に順次波及し、周辺領域がプラズマ化される。以上の動作により、プラズマの体積が増大する。この後、電磁波パルスの放射が終了すると、その時点でプラズマの存在する領域では、電離より再結合が優位になる。その結果、電子密度が低下する。それに伴いプラズマの体積は減少に転じる。そして、電子の再結合が完了すると、プラズマが消滅する。この間に大量に形成されたプラズマにより混合気中の水分などから大量に生成されたOHラジカル、オゾンにより混合気の燃焼が促進される。
【0010】
その場合、既存の内燃機関に較べると主要な構造部材であるシリンダブロック、シリンダヘッドなどをそのまま利用し、これらに放電線路への電圧の印加、電磁波伝送路への電磁波の供給さえ段取りすればよい。そのため、当該内燃機関の設計工数の最小化及び既存の内燃機関との部品の共通化が実現される。
【0011】
本発明の内燃機関のガスケットは、上記中間層が誘電体又は絶縁体により形成され、この中間層に対して厚さ方向の少なくとも一方側にある表面層が電気伝導体で形成されていてもよい。
【0012】
このようにすれば、表面層が放電線路の電極と対になる接地電極として機能し、電極と表面層との間で放電が行われる。また、表面層が電磁波伝送路と対になる接地導体として機能し、電磁波伝送路と表面層との間で電磁波が伝送される。また、表面層を金属などで形成すればガスケットの剛性が向上する。
【0013】
本発明の内燃機関のガスケットは、上記アンテナが棒形に形成され、その基端が厚さ方向の中間層に設けられ、この基端から出て先端に至る部分が開口の内周縁に沿って開口の周方向に延びていてもよい。
【0014】
このようにすれば、アンテナから放射された電磁波の電界強度が燃焼室の外縁付近で他の領域よりも強くなるので、OHラジカル、オゾンが燃焼室の外縁付近で他の領域よりも多く分布する。そのため、燃焼室の外縁付近の燃焼が他の領域の燃焼よりも促進される。また、燃焼室の外縁付近で発生するスキッシュ流、タンブル、又はスワールを利用してOHラジカル又はオゾンと混合気などとの混合が促進される。
【0015】
本発明の内燃機関のガスケットは、上記アンテナに電磁波を供給したときにアンテナに生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に電極が位置づけられていてもよい。
【0016】
このようにすれば、アンテナの上記部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、電極での放電により形成されたプラズマに、近傍の上記部位からの電磁波パルスによりエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極を中心にした領域の燃焼が一層促進される。また、アンテナの複数箇所に電磁波の電界強度が大になる部位ができるときは、各部位に対応して電極を位置づければ、燃焼室の複数の領域で燃焼が一層促進される。
【0017】
本発明の内燃機関のガスケットは、上記中間層にはシールドケーブルが設けられ、このシールドケーブルの内部電線の芯線が放電線路又は電磁波伝送路を構成していてもよい。
【0018】
このようにすれば、シールドケーブルを用いて比較的簡単にガスケットが構成される。
【0019】
本発明の内燃機関のガスケットは、上記放電線路が一対設けられ、これらの放電線路の電極が近接して配置されていてもよい。
【0020】
このようにすれば、放電線路の第1接続部同士の間に電圧を印加すると、電極間で放電が行われる。これらの放電線路の電極を近接して配置したときには、低い印加電圧で放電を行うことができる。そうすれば、OHラジカル及びオゾンの発生が促進され、この発生したOHラジカル及びオゾンの持続時間が長くなり、消費電力が低減され、しかも放電の行われる領域の温度上昇が抑制されることから内燃機関における窒素酸化物(NOx)の発生量が低減する。
【0021】
本発明の内燃機関は、
ピストンが往復可能に嵌まるシリンダが貫通して設けられたシリンダブロックと、
このシリンダブロックの反クランクケース側に組み付けられてピストン及びシリンダと共に燃焼室を形成するシリンダヘッドと、
上記シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に装着された本発明の内燃機関のガスケットとを備えている。」

ウ 「【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明のガスケットが装着された内燃機関Eの実施形態を示す。本発明が対象とする内燃機関は往復動機関であるが、この実施形態の内燃機関Eは、4サイクルのガソリン機関である。100はシリンダブロックであって、このシリンダブロック100には横断面がほぼ円形のシリンダ110が貫通して設けられ、このシリンダ110には、横断面がシリンダ110に対応したほぼ円形の形状をしたピストン200が往復自在に嵌っている。このシリンダブロック100の反クランクケース側には、シリンダヘッド300が組み付けられており、このシリンダヘッド300と、ピストン200と、シリンダ110とにより、燃焼室400を形成している。910は一端がピストン200に連結され、他端が出力軸であるクランクシャフト920に連結されたコネクティングロッドである。シリンダヘッド300には、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して吸気通路の一部を構成する吸気ポート310と、一端が上記燃焼室400に接続し且つ他端がシリンダヘッド300の外壁に開口して排気通路の一部を構成する排気ポート320が設けられている。シリンダヘッド300には、吸気ポート310からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔330が設けられ、このガイド孔330に吸気バルブ510のバルブステム511が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム511の先端に設けられたバルブヘッド512によって吸気ポート310の燃焼室側の開口311を所定タイミングでもって開閉するように構成している。また、シリンダヘッド300には、排気ポート320からシリンダヘッド300の外壁まで貫通するガイド孔340が設けられ、このガイド孔340に排気バルブ520のバルブステム521が往復自在に嵌まっており、カムなどを有する動弁機構(図示省略)によりバルブステム521の先端に設けられたバルブヘッド522によって排気ポート320の燃焼室側の開口321を所定タイミングでもって開閉するように構成している。600は、電極が燃焼室400に露出するようにシリンダヘッド300に設けられた点火プラグであって、ピストン200が上死点付近にあるときに電極で放電するように構成されている。よって、ピストン200が上死点と下死点との間を2往復する間に、燃焼室400において混合気の吸入、圧縮、爆発、及び排気ガスの排気の4つの行程を行うようにしている。しかし、この実施形態によって本発明が対象とする内燃機関が限定解釈されることはない。本発明は2サイクルの内燃機関、ディーゼル機関も対象にしている。対象とするガソリン機関には、燃焼室に吸入した空気に燃焼室で燃料を噴射して混合気を形成する直噴式ガソリン機関も含まれる。また対象とするディーゼル機関には、燃焼室に燃料を噴射する直噴式ディーゼル機関も、副室に燃料を噴射するようにした副室式ディーゼル機関も含まれる。また、この実施形態の内燃機関Eは4気筒であるが、これによって本発明が対象とする内燃機関の気筒数が限定解釈されることはない。また、この実施形態の内燃機関は2本の吸気バルブ510と2本の排気バルブ520を設けているが、これによって本発明が対象とする内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブの本数が限定解釈されることはない。」

エ 「【0030】
そして、このシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間には、図2に示すような本発明の第1実施形態のガスケット700が装着されている。上記ガスケット700は、ほぼ一定厚さの薄い板形をしている。このガスケット700には、シリンダ110に対応して開口710が設けられている。このガスケット700には、さらにウォータージャケット、ボルト孔などに対応して孔が開いているが、これらによって本発明が対象とするガスケットの形状が限定解釈されることはない。
【0031】
図3及び図4に示すように、上記ガスケット700の厚さ方向の中間層730には放電線路760が設けられている。厚さ方向の中間層730とは、厚さ方向の中間部に形成されている層である。この中間層730はセラミックスで形成されている。中間層は、他にも合成ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、メタ系アラミド繊維シートなどの合成樹脂、耐熱紙などを用いることができる。このように中間層を誘電体により形成してもよいが、絶縁体により形成してもよい。上記放電線路760は銅線により形成されているが、電気伝導体により形成されておればよい。放電線路760は、ガスケット700における外周縁720と開口710との間に埋まっている。そして、放電線路760の外側の端部である外端は、ガスケット700の外周縁720から露出して第1接続部761を形成している。また、放電線路760の内側の端部である内端は、ガスケット700の外周縁から開口710の中心に向かって露出して電極762になっている。上記中間層730に対して厚さ方向の両側にある表面層740が電気伝導体で形成されており、ガスケット700をシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着すると、一方の表面層740がシリンダブロック100の端面に接触し、他方の表面層740がシリンダヘッド300の端面に接触するようにしている。この表面層740は金属により形成されているが他の素材であってもよい。この実施形態では、厚さ方向の両側にある表面層740を電気伝導体で形成したが、本発明は、中間層に対して厚さ方向の少なくとも一方側にある表面層を電気伝導体で形成したガスケットの実施形態を含んでいる。よって、シリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740を接地し、第1接続部761と接地部材であるシリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740との間の電圧を印加すると、第1接続部761と接地部材との間で放電するようになっている。この実施形態では放電線路760の電極以外の部分と電極762とを同じ材料により一体的に設けたが、放電線路の電極以外の部分と電極とを別に形成して接続してもよく、放電線路の電極以外の部分と電極とを別異の材料により形成してもよい。」

オ 「【0034】
そして、このガスケット700は、上記放電線路760、アンテナ770及び電磁波伝送路780と、ガスケット700の厚さ方向の両端面との間を電気的に絶縁するように構成している。シリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740は接地されており、第1接続部761には放電用電圧発生装置950の陽極が接続され、第2接続部781には電磁波発生装置840の陽極が接続されている。これら放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の接地端子は接地されている。そして、放電用電圧発生装置950及び電磁波発生装置840の作動は制御装置880により制御される。制御装置880はCPU、メモリ、記憶装置などを備えており、入力信号を演算処理して制御用信号を出力する。この制御装置880にはクランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890の信号線が接続され、このクランク角検出装置890から制御装置880へクランクシャフト920のクランク角の検出信号が送られてくる。よって、制御装置880はクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する。この実施形態の放電用電圧発生装置950は12Vの直流電源であるが、例えば圧電素子又はその他の装置であってもよい。電磁波発生装置840は電磁波を発生するが、この実施形態の電磁波発生装置840は、2.45GHz帯のマイクロ波を発生するマグネトロンである。しかし、これによって本発明のガスケットの制御装置の制御方法及び信号入出力の構成は限定解釈されない。
【0035】
従って、第1実施形態のガスケット700を、その開口710がシリンダ110に対応するようにシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着し、シリンダ110にピストン200を往復自在に嵌め、通常に作動する内燃機関Eとしての4サイクルのガソリン機関を組む。放電線路760の第1接続部761と接地部材との間に電圧を印加できるようにしておく。電磁波伝送路780の第2接続部781と接地部材との間に電磁波を一定時間供給できるようにしておく。そして、内燃機関Eの作動時における圧縮行程において、放電線路760の第1接続部761と接地部材への電圧印加と、電磁波伝送路の第2接続部781と接地部材への電磁波の供給とを行う。そうすると、電極762の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ770から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受け、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から燃焼が促進される。すなわち、電極762の近傍の電子が加速され、上記プラズマの領域外へ飛び出す。この飛び出した電子は、上記プラズマの周辺領域にある空気、燃料及び空気の混合気などのガスに衝突する。この衝突により周辺領域のガスが電離しプラズマになる。新たにプラズマになった領域内にも電子が存在する。この電子もまた電磁波パルスにより加速され、周辺のガスと衝突する。このようなプラズマ内の電子の加速、電子とガスとの衝突の連鎖により、周辺領域では雪崩式にガスが電離し、浮遊電子が生じる。この現象が放電プラズマの周辺領域に順次波及し、周辺領域がプラズマ化される。以上の動作により、プラズマの体積が増大する。この後、電磁波パルスの放射が終了すると、その時点でプラズマの存在する領域では、電離より再結合が優位になる。その結果、電子密度が低下する。それに伴いプラズマの体積は減少に転じる。そして、電子の再結合が完了すると、プラズマが消滅する。この間に大量に形成されたプラズマにより混合気中の水分などから大量に生成されたOHラジカル、オゾンにより混合気の燃焼が促進される。」

カ 「【0037】
本発明の内燃機関のガスケットは、中間層に対して厚さ方向の両側にある表面層の材質を限定しない。したがって、表面層は誘電体又は絶縁体であってもよい。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態のガスケット700は、上記中間層730を誘電体により形成し、上記中間層730に対して厚さ方向の両側にある表面層740を電気伝導体で形成した。このようにすれば、表面層740が放電線路760の電極762と対になる接地電極として機能し、電極762と表面層740との間で放電が行われる。また、表面層740が電磁波伝送路780と対になる接地導体として機能し、電磁波伝送路780と表面層740との間で電磁波が伝送される。中間層を絶縁体により形成し、中間層に対して厚さ方向の両側にある表面層を電気伝導体で形成したときも同様の作用及び固化(審決注:「効果」の誤記と認められる。)が得られる。また、上記中間層を誘電体又は絶縁体により形成し、この中間層に対して厚さ方向の少なくとも一方側にある表面層が電気伝導体で形成されているときも同様の作用及び効果が得られる。また、表面層740を金属で形成したのでガスケット700の剛性が向上する。」

キ 「【0038】
本発明の内燃機関のガスケットは、アンテナの構造、形状を限定しない。そのような種々の実施形態のなかで、第1実施形態のガスケット700は、上記アンテナ770を棒形に形成し、その基端を厚さ方向の中間層730に設け、この基端から出て先端に至る部分を開口710の内周縁に沿って開口710の周方向に延ばした。このようにすれば、アンテナ770から放射された電磁波の電界強度が燃焼室400の外縁付近で他の領域よりも強くなるので、OHラジカル、オゾンが燃焼室400の外縁付近で他の領域よりも多く分布する。そのため、燃焼室400の外縁付近の燃焼が他の領域の燃焼よりも促進される。また、燃焼室400の外縁付近で発生するスキッシュ流、タンブル、又はスワールを利用してOHラジカル又はオゾンと混合気などとの混合が促進される。」

ク 「【0042】
図7は第3実施形態のガスケット700を示す。このガスケット700は、第2実施形態のガスケット700に類似しているが、それよりもアンテナ770の長さが長くなっている。すなわち、アンテナ770の基端から延びる部分は、基端から開口710の中心に向かって延びてからほぼL字方に曲がり、その先はほぼ円弧形に湾曲しており、開口710の内周縁に沿って開口710の周方向に開口710のほぼ1周にわたって延びている。このようにすれば、アンテナ770の長さが稼げるので、アンテナ770から放射される電磁波の電界強度が大になる。その他の作用及び効果は第1実施形態のガスケット700の場合と同様である。このようにアンテナ770が長くなると、アンテナ770に定在波が生じるため、同じ周波数の電磁波であれば、それよりも短いアンテナを備えたガスケットよりもアンテナの複数の箇所で電磁波の電界強度が大になる部位ができる。図8に示した第4実施形態のガスケット700では、第2実施形態のガスケット700では一つしかなかった電極762を開口710の内周縁に沿ってほぼ等間隔でもって複数設けた。各電極762はアンテナ770に生じる電磁波の電界強度が大になる部位の近傍に位置づけている。このようにすれば、アンテナ770の上記各部位から放射される電磁波の電界強度が周囲の電磁波の電界強度よりも強くなるので、各電極762での放電により形成されたプラズマに、対応する近傍の上記部位から電磁波パルスによるエネルギが集中的に供給されてOHラジカル、オゾンが効率よく大量に生成され、電極762を中心にした領域の燃焼が一層促進される。したがって、燃焼室400の複数の領域で燃焼が一層促進される。」

ケ 「【0044】
図10は第6実施形態のガスケット700を示す。第1実施形態のガスケット700ではガスケット700の厚さ方向の中間層730に放電線路760を設け、この放電線路760の第1接続部761に放電用電圧発生装置950の陽極を接続し、接地部材であるシリンダブロック100、シリンダヘッド300又は表面層740を接地し、第1接続部761と上記接地部材との間の電圧して、第1接続部761と接地部材との間で放電するようにした。これに対し、第6実施形態のガスケット700では、ガスケット700の厚さ方向の中間層730に、放電線路760を一対設けている。各放電線路760の外側の端部である外端は、ガスケット700の外周縁720から露出してそれぞれ第1接続部761を形成している。また、各放電線路760の内側の端部である内端は、ガスケット700の外周縁から開口710の中心に向かって露出してそれぞれ電極762になっている。これらの放電線路760の電極は近接して配置されている。このようにすれば、放電線路760の第1接続部同士の間に電圧を印加すると、電極間で放電が行われる。これらの放電線路760の電極762を近接して配置したときには、低い印加電圧で放電を行うことができる。そうすれば、OHラジカル及びオゾンの発生が促進され、この発生したOHラジカル及びオゾンの持続時間が長くなり、消費電力が低減され、しかも放電の行われる領域の温度上昇が抑制されることから内燃機関における窒素酸化物の発生量が低減する。その他の作用及び効果は第1実施形態のガスケット700の場合と同様である。」

コ 上記段落【0001】の「本発明は、内燃機関の技術分野に属し、シリンダブロックと、このシリンダブロックの反クランクケース側に組み付けられたシリンダヘッドとの間に装着されるガスケットに関する。」という記載、段落【0009】の「このガスケットを、その開口がシリンダに対応するようにシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に装着し、シリンダにピストンを往復自在に嵌め、通常に作動するガソリン機関、ディーゼル機関などの内燃機関を組む。」という記載、段落【0029】の「本発明は2サイクルの内燃機関、ディーゼル機関も対象にしている。(中略)また対象とするディーゼル機関には、燃焼室に燃料を噴射する直噴式ディーゼル機関も、副室に燃料を噴射するようにした副室式ディーゼル機関も含まれる。」、及び段落【0030】の「このシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間には、図2に示すような本発明の第1実施形態のガスケット700が装着されている。上記ガスケット700は、ほぼ一定厚さの薄い板形をしている。このガスケット700には、シリンダ110に対応して開口710が設けられている。」という記載から、引用文献1には、ディーゼル機関を含む内燃機関において、シリンダブロック100とシリンダヘッド300との間にガスケット700が装着され、シリンダ110に対応してガスケット700の開口710が設けられていることが記載されている。

サ 上記段落【0009】の「電極の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナから一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受け、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から燃焼が促進される。」という記載、及び段落【0035】の「内燃機関Eの作動時における圧縮行程において、放電線路760の第1接続部761と接地部材への電圧印加と、電磁波伝送路の第2接続部781と接地部材への電磁波の供給とを行う。そうすると、電極762の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ770から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受け、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から燃焼が促進される。」という記載から、引用文献1に記載されたガスケット700は、電極762の近傍にプラズマを形成して燃焼を促進するプラズマ形成用ガスケット700であることが分かる。

シ 上記段落【0031】の「図3及び図4に示すように、上記ガスケット700の厚さ方向の中間層730には放電線路760が設けられている。厚さ方向の中間層730とは、厚さ方向の中間部に形成されている層である。この中間層730はセラミックスで形成されている。(中略)上記中間層730に対して厚さ方向の両側にある表面層740が電気伝導体で形成されており、ガスケット700をシリンダブロック100とシリンダヘッド300との間に装着すると、一方の表面層740がシリンダブロック100の端面に接触し、他方の表面層740がシリンダヘッド300の端面に接触するようにしている。」という記載、及び段落【0037】の「第1実施形態のガスケット700は、上記中間層730を誘電体により形成し、上記中間層730に対して厚さ方向の両側にある表面層740を電気伝導体で形成した。」という記載から、引用文献1に記載されたガスケット700は、一方の表面層740と中間層730と他方の表面層740の三層から形成される三層構造体であることが分かる。

ス 上記段落【0042】の「図8に示した第4実施形態のガスケット700では、第2実施形態のガスケット700では一つしかなかった電極762を開口710の内周縁に沿ってほぼ等間隔でもって複数設けた。」という記載及び図8から、引用文献1に記載されたガスケット700は、開口710の内周縁に沿ってほぼ等間隔に設けた複数の(放電線路760の)電極762を有するものであってもよいことが分かる。

セ 上記段落【0044】の「第6実施形態のガスケット700では、ガスケット700の厚さ方向の中間層730に、放電線路760を一対設けている。(中略)また、各放電線路760の内側の端部である内端は、ガスケット700の外周縁から開口710の中心に向かって露出してそれぞれ電極762になっている。これらの放電線路760の電極は近接して配置されている。このようにすれば、放電線路760の第1接続部同士の間に電圧を印加すると、電極間で放電が行われる。これらの放電線路760の電極762を近接して配置したときには、低い印加電圧で放電を行うことができる。」という記載及び図10から、引用文献1に記載されたガスケット700は、対となる放電線路760、760の電極762、762を有するものであってもよいことが分かる。そして、上記事項スを考慮すると、引用文献1に記載されたガスケット700は、複数の対となる放電線路760、760の電極762、762を有するものであってもよいことが分かる。

ソ 上記段落【0034】の「制御装置880はCPU、メモリ、記憶装置などを備えており、入力信号を演算処理して制御用信号を出力する。この制御装置880にはクランクシャフト920のクランク角を検出するクランク角検出装置890の信号線が接続され、このクランク角検出装置890から制御装置880へクランクシャフト920のクランク角の検出信号が送られてくる。よって、制御装置880はクランク角検出装置890からの信号を受け、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御する。」という記載、及び段落【0035】の「内燃機関Eの作動時における圧縮行程において、放電線路760の第1接続部761と接地部材への電圧印加と、電磁波伝送路の第2接続部781と接地部材への電磁波の供給とを行う。そうすると、電極762の近傍に放電によりプラズマが形成され、このプラズマはアンテナ770から一定時間供給された電磁波、つまり電磁波パルスからエネルギの供給を受け、プラズマによるOHラジカル及びオゾンの大量生成から燃焼が促進される。」という記載から、引用文献1に記載されたガスケット700において、制御装置880は、クランクシャフト920のクランク角を検出して、放電装置810及び電磁波発生装置840の作動を制御し、電極762の近傍に放電によりプラズマが形成されることが分かる。

タ 上記段落【0014】の「燃焼室の外縁付近の燃焼が他の領域の燃焼よりも促進される。また、燃焼室の外縁付近で発生するスキッシュ流、タンブル、又はスワールを利用してOHラジカル又はオゾンと混合気などとの混合が促進される。」という記載、及び段落【0038】の「燃焼室400の外縁付近の燃焼が他の領域の燃焼よりも促進される。また、燃焼室400の外縁付近で発生するスキッシュ流、タンブル、又はスワールを利用してOHラジカル又はオゾンと混合気などとの混合が促進される。」から、燃焼室400の外縁付近では、タンブル、スワール等の渦流が発生して混合が促進され、燃焼が促進されることが分かる。このことから、燃焼室400の外縁付近では、燃焼の渦が作り出されているといえる。

以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ディーゼル機関用のプラズマ形成用ガスケット700であって、該プラズマ形成用ガスケット700が、
ディーゼル機関用のシリンダブロック100及びシリンダヘッド300中のシリンダ110に対応する開口710を有する、三層構造体740、730、740;
三層構造体740、730、740に取り付けられる複数の対の放電線路760、760;
複数のプラズマ形成回路であって、その各々が、複数の対の放電線路760、760の1つに電気接続され、開口710の内周縁からシリンダ110の中心に向かって露出し近接して配置した電極762、762を含む、複数のプラズマ形成回路、および
複数の対の放電線路760、760に電気接続されたCPU、メモリ、記憶装置などを備える制御装置880であって、クランクシャフト920のクランク角を検出して複数のプラズマ形成回路を放電するように記憶され、燃焼室400において燃焼する渦流を促進するために開口710の内周縁で複数のプラズマ形成回路を放電するように記憶された、CPU、メモリ、記憶装置などを備える制御装置880、を含む、
プラズマ形成用ガスケット700。」

2 引用文献2
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特表平6-503867号公報)には、「スパーク-イグニッションエンジン」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「本発明は一般的なスパーク・プラグの使用を避けたスパーク-イグニッション内燃エンジンを示している。図1ないし4を参照すると、エンジン10は一つ又は複数のピストン14をそれぞれの対応するシリンダ16内で移動できるように備えたブロック、すなわちシリンダ組立体12を有している。ピストン14は通常のクランク・シャフト(図示せず)に連結している。クランク・シャフトはイグニッション配電器22の配電シャフト20に直接又は間接にかみ合わされている。シリンダ・ヘッド24はシリンダ組立体12でカバーされている。ヘッド24は内部に形成された複数の燃焼室26を備えている。各燃焼室26はそれぞれ対応する吸気ポート28、燃料供給手段30、吸気バルブ32、排気バルブ34及び排気ポート36を有している。
本発明によれば、回路モジュール38がヘッド24とシリンダ組立体12との間に挟まれて周知のヘッド・ボルト又はその他のもので取り付けられている。その回路モジュール38には複数の電極部材42が組み込まれている。電極部材42はモジュール38の一つ又は複数の開口44内に突出している。各開口44はそれぞれ一つのシリンダ16に対応している。図示の実施例のモジュール38の構造では電極部材42は対として配置されている。その対は一方が接地電極16で他方が印加電極48である。図2に示すように、モジュール38には配電器22へワイヤー・ハーネス52を通して印加電極48を電気的に接続するための複数のフォイール導電トレース50が組み込まれている。そのため、モジュール38はハーネス52の端部ソケット組立体56と組み合わせられる端部プラグ部分54が形成され、その端部プラプ部分はシリンダ組立体12とヘッド24の間から突出している。図2に示すモジュール38の多シリンダ構造は、分離され、絶縁されたエンジン10の各シリンダ16の印加電極48への複数の導電路を有している。トレース50はシリンダ16のそれぞれに対応するものに対してそれぞれ50A、50B、50C、50Dと指示されている。さらに電極対42の複数がそれぞれの開口42の周囲に配置され、複数スパーク源を備えることによってエンジン効率を高め、好ましくない汚染された排気物を減少させるようにしている。その上、燃焼室26の外側の縁に沿って電極42を配置したので、事前点火や暴発の影響をもっとも受けやすい領域にもっとも近くスパーク源を配置してもそれらを避けることができる。
図3、4に良く示すように、モジュール38は基板58と図4で60A、60B、60C、60Dとして示されている一つ又は複数の回路層60を有している。回路層60はフォイール導電トレース50を含む印刷回路を形成し、シリンダ組立体12とヘッド24との間で広がっている。ここで用いられている用語「印刷回路」とは絶縁基板の上に導電物質の選択的な塗布、又はエッチングのような図形手段によって形成させたフォイール導電パターンを意味する。そしてそれは一層又は多層のいずれをも含むものである。また「フォイール」とは約0.010インチより薄い厚さの物質を意味する。図3に示すように、回路層60Aは基板58の第1基板層62の上に形成され、第2基板層64は、多層印刷基板の技術分野の当業者には良く知られている方法で基板58内の回路層60Aと電気的に絶縁されて第1基板層62の上に形成されている。」(第4ページ右上欄第9行ないし同ページ左下欄第20行)

イ 上記アの記載から、引用文献2には、次の事項が記載されている。
「ヘッド24とシリンダ組立体12との間に挟まれ、複数の電極部材42が組み込まれている回路モジュール38が基板58及び複数の回路層60を有していること。」

3 引用文献3
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献3(米国特許第7299785号明細書)には、「EMBEDDED IGNITER SYSTEM FOR INTERNAL COMBUSTION ENGINES」(内燃機関の点火装置)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「This invention incorporates the igniter system into the head gasket, eliminating the spark plug. It will not consume the valuable area in the head, leaving more room for the valves. The embedded igniters around the perimeter of the combustion chamber produce a peripheral flame front that is so efficient that the igniters will be sequenced on as the RPM increase. Present day spark relies on auto advance to complete the combustion burn as RPM increases, because the burn time of combustion is the same with one spark plug. Initial timing for the embedded igniter will be preset to the desired advance. No auto advance timing will be needed for this invention. As the RPM increases the burn time will increase to be able to complete the burn up to 15 degrees after top dead center. By activating the next igniter, the burn time is accelerated by having two flame fronts and when the RPM is further increased, another igniter is activated to add an additional flame front. Four embedded igniters as described within this patent around each cylinder would be adequate, but at this time it must be clearly understood that any number of igniters of this style around one or more cylinders of an internal combustion engine will be covered within the scope of this patent.」(第6欄第7行ないし第28行)
(仮訳:本発明は、点火システムのヘッドガスケットに組み込むことで、点火プラグが排除される。それは、ヘッド内の貴重なスペースを消費せず、弁のためのより多くの余地を残す。燃焼室の周囲を取り囲むように埋め込まれた点火装置は、非常に効率的に火炎前面を生成するので、RPMが増加するにつれて順序づけされるだろう。今日、スパークは、RPMが増大するときに燃焼を完了させるために自動進角に頼る、なぜなら、燃焼の燃焼時間は1つのスパークプラグと同じであるから。埋め込まれた点火装置のための初期タイミングは、所望の進角にプリセットされる。自動進角タイミングは、本発明のために必要とされない。RPMが増大するとき、燃焼時間は上死点後15度までに燃焼を完了することができるようにする。次の点火装置を活性化することによって、燃焼時間は、2つの火炎前面を有することによって加速され、RPMがさらに増大すると、さらなる火炎前面を追加するために、もう一つの点火装置が作動される。この特許に記載されるように、各シリンダーに4個の埋め込まれた点火装置が適当であろうが、このとき内燃機関の1つ以上のシリンダのまわりのこの形式の任意の数の点火装置がこの特許の範囲内に包含されることが明確に理解されなければならない。)

イ 「FIGS. 9 , 10 , 11 and 12 depicts plan views of a single cylinder head gasket with four embedded igniters indicating a single igniter ignition 62 , two igniter ignitions 64 , three igniter ignitions 66 , and four igniter ignitions 68 . The unique controlled firing characteristics of the invention allow that the igniter system 10 can fire the ignitions simultaneously or with a momentary delay between each ignition.」(第8欄第63行ないし第9欄第2行)
(仮訳:図9、図10、図11及び図12は、1つの点火装置の点火62、2つの点火装置の点火64、3つの点火装置の点火66、4つの点火装置の点火68を示す4つの埋め込まれた点火装置を持つ1つのシリンダヘッドガスケットの平面図を描いている。本発明の独特の制御された燃焼特性により、点火システム10は、同時に点火装置に点火すること、または各点火装置の間の瞬間的な遅延をもって点火することを可能にする。)

ウ 上記ア及びイの記載から、引用文献3には、次の事項が記載されている。
「各シリンダーのヘッドガスケットに燃焼室の周囲を取り囲むように複数の埋め込まれた点火装置を設け、点火システム10は、各点火装置の間に瞬間的な遅延をもって点火するように制御すること。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ディーゼル機関」は、前者の「ディーゼルエンジン」に相当し、以下同様に、「シリンダブロック100及びシリンダヘッド300」は「エンジンブロック」に、「シリンダ110」は「ピストン形シリンダ」に、「開口710」は「開口」に、「取り付けられる」ことは「関連付けられる」ことに、「放電線路760、760」は「導体」に、「内周縁」は「縁」及び「縁のまわり」に、「中心に向かって露出し」は「伸長する」に、「近接して配置した電極762、762」は「電極間隙を画定する1対の露出電極」に、「CPU、メモリ、記憶装置などを備える制御装置880」は「マイクロプロセッサー制御ユニット」に、「促進する」ことは「作り出す」ことに、それぞれ相当する。
また、後者の「プラズマ形成用ガスケット」は、ディーゼル機関の燃焼室内にプラズマを形成する機能を有するガスケットであるから、前者の「プラズマヘッダーガスケット」に相当し、同様に、後者の「プラズマ形成回路」は、ディーゼル機関の燃焼室内にプラズマを形成する機能を有する回路であるから、前者の「プラズマイグナイター」に相当する。
また、後者の「三層構造体740、730、740」は、前者の「積層基板」及び「基板」と、「積層体」という限りにおいて一致する。
また、後者の「クランクシャフト920のクランク角を検出して」は、シリンダ中のピストンの位置を検出することを意味するから、前者の「ピストン形シリンダ中のピストンに合わせて」に相当する。
また、後者の「放電する」は、電極間に火花を発生させることであるから、前者の「スパークする」に相当する。
また、後者の「記憶され」は、CPU、メモリ、記憶装置などを備える制御装置880の記憶装置に記憶されることを意味し、通常はプログラムとして記憶されるものであるから、前者の「プログラムされ」に相当する。
また、後者の「燃焼室400」は、ピストンとシリンダにより形成される空間の内部であるから、「対応するピストン形シリンダ」に相当する。
また、後者の「燃焼する渦流」は、燃料と空気からなる混合気の渦流が燃焼する状態であるから、前者の「燃焼の渦」に相当する。
また、後者の「複数のプラズマ形成回路を放電する」ことは、前者の「連続して複数のプラズマイグナイターをスパークする」ことと、「複数のプラズマイグナイターをスパークする」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「ディーゼルエンジン用のプラズマヘッダーガスケットであって、該プラズマヘッダーガスケットが、
ディーゼルエンジン用のエンジンブロック中のピストン形シリンダに対応する開口を有する、積層体;
積層体に関連付けられる複数の対の導体;
複数のプラズマイグナイターであって、その各々が、複数の対の導体の1つに電気接続され、開口の縁からピストン形シリンダに伸長する電極間隙を画定する1対の露出電極を含む、複数のプラズマイグナイター、および
複数の対の導体に電気接続されたマイクロプロセッサー制御ユニットであって、ピストン形シリンダ中のピストンに合わせて複数のプラズマイグナイターをスパークするようにプログラムされ、対応するピストン形シリンダにおいて燃焼の渦を作り出すために開口の縁のまわりで複数のプラズマイグナイターをスパークするようにプログラムされた、マイクロプロセッサー制御ユニット、を含む、
プラズマヘッダーガスケット。」である点で一致し、以下の相違点で相違する。

〔相違点〕
〔相違点1〕
「積層体」に関して、前者は「積層基板」であるのに対し、後者は三層構造体740、730、740である点。

〔相違点2〕
「複数のプラズマイグナイターをスパークする」ことに関して、前者は「連続して」複数のプラズマイグナイターをスパークするのに対し、後者は、複数のプラズマ形成回路を放電する点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
相違点1について検討する。
引用文献2の記載事項は
「ヘッド24とシリンダ組立体12との間に挟まれ、複数の電極部材42が組み込まれている回路モジュール38が基板58及び複数の回路層60を有していること。」
である。
引用発明と、引用文献2の記載事項は、内燃機関の点火装置という共通の技術分野において、ガスケットに点火のための回路を設けるという共通の課題を解決するものである。
してみれば、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献2の記載事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものである。

相違点2について検討する。
引用文献3の記載事項は、
「各シリンダーのヘッドガスケットに燃焼室の周囲を取り囲むように複数の埋め込まれた点火装置を設け、点火システム10は、各点火装置の間に瞬間的な遅延をもって点火するように制御すること。」
である。
引用発明と、引用文献3の記載事項は、内燃機関の点火装置という共通の技術分野において、ガスケットに点火のための回路を設けるという共通の課題を解決するものである。
そうすると、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献3の記載事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものである。
なお、請求人は、審判請求書において、「複数のイグナイターを時間差をつけ連続的に点火する順番はいろいろあるので、例えば、左方のイグナイターを最初に点火し、続いて上方のイグナイターを点火し、続いて右方のイグナイターを点火し、続いて下方のイグナイターを点火させてシリンダ内で燃焼の渦を発生させることに、当業者は容易に想到できません。」と主張している。
しかしながら、本願発明には、「左方のイグナイターを最初に点火し、続いて上方のイグナイターを点火し、続いて右方のイグナイターを点火し、続いて下方のイグナイターを点火させてシリンダ内で燃焼の渦を発生させる」との特定はなく、本願の明細書を参照しても、「左方のイグナイターを最初に点火し、続いて上方のイグナイターを点火し、続いて右方のイグナイターを点火し、続いて下方のイグナイターを点火させてシリンダ内で燃焼の渦を発生させる」という事項は記載されていないから、請求人の主張は本願発明1及び明細書に基づくものではない。なお、内燃機関に設けられる複数放電のプラズマ装置において、放電装置の複数の電極を所定のスケジュールでもって順に放電させるようにしたことは本願の優先日前における周知の技術(例えば、特開2009-221947号公報の段落【0026】及び図4を参照。)である。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-07 
結審通知日 2019-05-09 
審決日 2019-05-21 
出願番号 特願2016-507528(P2016-507528)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 齊藤 公志郎
金澤 俊郎
発明の名称 プラズマヘッダーガスケットおよびシステム  
代理人 清原 義博  
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