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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1355649
審判番号 不服2018-11078  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-13 
確定日 2019-10-28 
事件の表示 特願2015-556074「コンテンツキュレーションのためのアプリケーションプログラミングインタフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日国際公開、WO2014/120625、平成28年 4月21日国内公表、特表2016-511883、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月28日(パリ条約により優先権主張、2013年1月30日、同年5月13日、米国)の国際出願に係る特許出願であって、平成29年9月5日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日に意見書とともに手続補正書が提出されたものの、平成30年4月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ、その謄本が送達された。
これに対し、同年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月31日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月19日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

1.本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1、引用文献2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許出願公開第2009/0158176号明細書
引用文献2:米国特許出願公開第2007/0156745号明細書

2.本願請求項2、6に係る発明は不明確であり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、査定時の請求項2と請求項6を削除すること等を目的とするものであり、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成30年8月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】第1の文書を取り出すステップであって、前記第1の文書が、少なくとも第1のアドレスを含む少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出されたコンテンツブロックを含むものと、
前記少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出された、前記コンテンツブロックを含む前記第1の文書の第1のビューを表示するステップと、
前記第1の文書の特定されたコンテンツの選択を受け取るステップと、
前記第1の文書の前記特定されたコンテンツのアドレスを作成する要求を受け取るステップと、
該アドレスを作成する前記要求を受け取ることに応答して、前記第1の文書の前記特定されたコンテンツの第2のアドレスを作成し、前記第2のアドレスにおける前記特定されたコンテンツのコピーの格納を開始するアドレスサービスを呼び出すステップと、
前記特定されたコンテンツにおける、コンテンツの部分の修正を受け取るステップと、 前記特定されたコンテンツ及び前記修正のコピーを、前記第2のアドレスに保存するステップと、
を含む方法。」
「【請求項2】前記特定されたコンテンツが、段落識別子、行識別子、文字識別子、範囲、および部分識別子のうち少なくとも1つを含む位置識別子を使用して特定される、請求項1に記載の方法。」
「【請求項3】前記第1の文書の前記特定されたコンテンツへの修正をマスター文書に統合するよう要求するために統合サービスを呼び出すステップをさらに含み、前記マスター文書が前記第2のアドレスに位置する前記特定されたコンテンツの前記コピーである、請求項1に記載の方法。」
「【請求項4】ディスプレイと、
プロセッサと、
1つまたは複数の記憶媒体と、
前記1つまたは複数の記憶媒体上に格納されたアプリケーションであって、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
第1のアドレスを含む少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出されたコンテンツブロックを含む第1の文書を取り出し、
前記ディスプレイにおいて、前記少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出された前記コンテンツブロックを含む第1の文書の第1のビューを表示し、
前記第1の文書の特定されたコンテンツの選択を受け取り、
前記第1の文書の前記特定されたコンテンツのアドレスを作成する要求を受け取り、
該アドレスを作成する前記要求を受け取ることに応答して、前記第1の文書の前記特定されたコンテンツの第2のアドレスを作成し、前記第2のアドレスにおける前記特定されたコンテンツのコピーの格納を開始するアドレスサービスを呼び出し、
前記特定されたコンテンツにおける、コンテンツの部分の修正を受け取り、
前記特定されたコンテンツ及び前記修正のコピーを、前記第2のアドレスに保存する、
ように指示する、アプリケーションとを備えるシステム。」
「【請求項5】前記特定されたコンテンツが、段落識別子、行識別子、文字識別子、範囲、および部分識別子のうち少なくとも1つを含む位置識別子を使用して特定される、請求項4に記載のシステム。」
「【請求項6】前記アプリケーションは、前記プロセッサに、前記第1の文書の前記特定されたコンテンツへの修正をマスター文書に統合するよう要求するために統合サービスを呼び出すようにさらに指示し、前記マスター文書が前記第2のアドレスに位置する前記特定されたコンテンツの前記コピーである、請求項4に記載のシステム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0002]One aspect of our everyday lives that may be affected by online social networking technology is the ease with which news stories and other forms of gossip may be shared over the Internet. However, all too often while some shared news or gossip may be interesting to some people, it may not be interesting to others.
[0003]Current web content sharing tools enable copying and pasting content to an application and sending the content. However, copying and pasting web content is cumbersome and difficult to use. Thus, it is with respect to these considerations and others that the present invention has been made.
(仮訳:オンラインソーシャルネットワーキング技術によって影響を受け得る私たちの日常生活の1つの側面は、ニュース記事と他の形態のゴシップがインターネットを介して共有される際の容易さである。しかしながら、いくつかの共有されるニュース、ゴシップが一部の人にとって興味深いものであるが他の人には興味がないものであるということがあまりに多い。
現在のウェブコンテンツ共有ツールは、コンテンツをコピーしてアプリケーションに貼り付けること、及びコンテンツを送ることを可能にする。しかしながら、ウェブコンテンツのコピーおよび貼り付けは、面倒であり、使用が困難である。本発明は、これらを考慮してなされたものである。)」

「[0022]Briefly, the present invention is directed to sharing information over a network. A drag-and-drop of a selection of a portion of content may be received at a sharing area. A sharing message may be generated based on a type of the portion. If the type of the portion indicates storage, the sharing message may comprise a hyperlink to a storage. The sharing message may be useable for providing the portion on at least one client device associated with at least one of a plurality of members of a social network. Sharing over the network of the portion between an originating sharing member and the plurality of members of the social network may be enabled. The portion may be shared for a customizable project. A hop distance may be provided for the shared portion.
(仮訳:簡単に言えば、本発明は、ネットワークを介した情報共有に向けられる。コンテンツの部分の選択のドラッグ・アンド・ドロップが共有領域において受けとられ得る。共有メッセージは、その部分のタイプに基づいて生成され得る。その部分のそのタイプがストレージを示す場合、共有メッセージは、ストレージへのハイパーリンクを含み得る。共有メッセージは、ソーシャルネットワークの複数のメンバーの少なくとも一人に関連する少なくとも一つのクライアントデバイスにその部分を提供するために使用され得る。最初の共有メンバーと複数のソーシャルネットワークのメンバーとの間でのネットワークを介したその部分の共有が可能とされ得る。その部分は、カスタマイズ可能なプロジェクトのために共有され得る。その共有部分のために、ホップ距離が規定され得る。)」

「[0032]Thus, a user of client devices 101 - 104 may employ any of a variety of client applications to access content, read articles, read messages, compose messages, send messages, or the like. In one embodiment, a user of client devices 101 - 104 may access a news article, or other item of interest from, for example, content server 108 . The user may then select to forward a message to another user of one of client devices 101 - 104 about the accessed content, article, or the like.
(仮訳:従って、クライアント装置101-104のユーザは、様々なクライアントアプリケーションのいずれかを使用して、コンテンツにアクセスする、記事を読む、メッセージを読む、メッセージを合成する、メッセージを送る、等をすることができる。一実施形態において、クライアントデバイス101-104のユーザは、例えば、コンテンツサーバー108からのニュース記事や他の興味深い項目にアクセスできる。次いで、そのユーザは、クライアントデバイス101-104のうちの一つの他のユーザに、アクセスされたコンテンツや記事等についてのメッセージを転送すべく選択し得る。)」

「[0033]In one embodiment, client devices 101 - 104 may enable a sharing area for dragging-and-dropping content from another application and sharing the dragged-and-dropped content with members of a social network. Client devices 101 - 104 may receive a selection of a portion of content. For example, a user may drag a rectangular selection over a portion of an HTML page. The selection may be received using an application programming interface (API) of an operating system, an event trigger, or the like. The selection may be received in the client application (e.g., web browser), in a plug-in to the client application, or the like. The selected portion may then be sent to CSS 106 over networks 105 and/or 110 in preparation for sharing with members of a social network. CSS 106 may provide a hyperlink to at least some types of the selected portion on CSS 106 . In one embodiment, if the selected portion is a multimedia object, CSS 106 provides a hyperlink to a copy of the multimedia object on CSS 106 . In any case, a hyperlink, or the actual selected portion itself may be forwarded to at least one of client devices 101 - 104 .
(仮訳:一実施形態において、クライアントデバイス101-104は、他のアプリケーションからのコンテンツをドラッグ・アンド・ドロップすると、ドラッグ・アンド・ドロップされたコンテンツをソーシャルネットワークの会員と共有するための他のアプリケーションからのコンテンツをドラッグ・アンド・ドロップしてそのドラッグ・アンド・ドロップされたコンテンツをソーシャルネットワークの他のメンバーと共有するための共有領域を可能にし得る。クライアントデバイス101-104は、コンテンツの一部の選択を受け取ることができる。例えば、ユーザは、HTMLページの部分に重なる矩形の選択をドラッグし得る。その選択は、オペレーティングシステムのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)、イベントトリガ等を用いて受け取られ得る。その選択は、クライアントアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)や、クライアントアプリケーションに対するプラグイン等において、受け取られ得る。その選択された部分は、その後、ソーシャルネットワークの会員との共有の準備のために、ネットワーク105および/または110を介してCSS106に送信され得る。CSS106は、少なくともCSS106上の選択された部分のいくつかのタイプへのハイパーリンクを提供し得る。一実施形態では、その選択された部分がマルチメディア・オブジェクトである場合、CSS106は、CSS106上のマルチメディアオブジェクトのコピーへのハイパーリンクを提供する。いずれの場合においても、ハイパーリンク、又は実際に選択された部分自体が、クライアントデバイス101-104の少なくとも1つに転送され得る。)」

「[0047]As noted, CSS 106 may receive a selected portion of content that was dragged-and-dropped or otherwise indicated for sharing. CSS 106 may pre-process the selected portion for sharing. In one embodiment, CSS 106 may receive the selected portion, copy the selected portion in a database, create a hyperlink to the selected portion, or the like. CSS 106 may send the selected portion to at least one of client devices 101 - 104 associated with members of a social network. In another embodiment, CSS 106 may send a hyperlink to the selected portion back to the originating client device requesting CSS 106 to pre-process the selected portion for sharing. In one embodiment, the originating client device may share the hyperlink and/or selected portion using a variety of techniques described above, including a peer-to-peer sharing. CSS 106 may employ a process substantially similar to the process described below in conjunction with FIGS. 4-5 to perform at least some of its actions.
(仮訳:上述したように、CSS106は、ドラッグ・アンド・ドロップされ、あるいは他の方法で共有することが示されたコンテンツの選択された部分を受け取ることができる。CSS106は、その選択された部分を共有のために前処理することができる。一実施形態では、CSS106は、その選択された部分を受け取り、データベースにその選択された部分をコピーし、その選択された部分へのハイパーリンクを生成する、等することができる。CSS106は、選択された部分を、ソーシャルネットワークのメンバーに関連付けられたクライアント・デバイス101-104の少なくとも1つに送信することができる。別の実施形態では、CSS106は、CSS106に共有のためにその選択された部分を前処理するように要求した最初のクライアントデバイス106に、その選択された部分へのハイパーリンクを送り返すことができる。一実施形態では、その最初のクライアントデバイスは、ピアツーピアによる共有を含む上述した様々な技術を使用して、ハイパーリンクおよび/または選択された部分を共有し得る。CSS106は、図4と図5に関連して次に述べられるプロセスと少なくともいくつかのアクションを実行することで本質的に似ているプロセスを用いることができる。)」

「[0075]In one embodiment, message server 358 may receive a selected portion of content (e.g., web content) over network interface unit 310 to be pre-processed for sharing. The selected portion may be indicated to be shared with at least one member of a social network (e.g., from a content list of a user, or the like). The selected portion may be indicated as dragged-and-dropped onto a sharing area and to be shared with the at least one member. In one embodiment, message server 358 may determine a type of the selected portion. Based on a type of the selected portion, a copy of the selected portion may be stored on, for example, data store 352 (e.g., in a sharing database). Message server 358 may provide a hyperlink, such as a URL, or the like, to the stored selected portion. In one embodiment, the hyperlink and/or the selected portion itself may be shared with client devices associated with members of the social network over network interface unit 310 .
(仮訳:一実施形態では、メッセージサーバ358は、ネットワークインタフェース部310を介してコンテンツ(例えばウェブ・コンテンツ)の選択された部分を受信して、共有のために前処理することができる。その選択された部分は、ソーシャルネットワークの少なくとも1つのメンバーと共有されるように(例えば、ユーザのコンテンツリスト等から)示され得る。その選択された部分は、少なくとも一人のメンバーと共有されるべく、共有領域上へのドラッグ・アンド・ドロップとして示されてもよい。一実施形態では、メッセージサーバ358は、選択された部分のタイプを決定し得る。その選択された部分のタイプに基づいて、その選択された部分のコピーが、例えば、データストア352に(例えば、共有データベースに)記憶され得る。メッセージサーバ358は、その記憶された選択された部分への(URL等のような)ハイパーリンクを提供し得る。一実施形態では、そのハイパーリンクおよび/またはその選択された部分自体が、ネットワークインターフェイス部310を介して、ソーシャルネットワークのメンバーに関連付けられたクライアント・デバイスと共有され得る。)」

「[0103]FIGS. 7A-7C show an illustrative process for dragging-and-dropping a portion of content for sharing with members of a social network. FIG. 6A shows a selection 706 of content displayed within a web page. The web page may be displayed in web browser 710 for the URL 704 . Selection 706 is dragged visually across the screen using, for example, a cursor, over path 708 . Selection 706 is dropped in sharing area 702 . As shown, there may be a plurality of sharing areas 702 - 703 associated with a plurality of different types of sharing. For example, each of sharing areas 702 - 703 may be associated with a different type of project.
(仮訳:図7A?図7Cは、ソーシャルネットワークのメンバーと共有するためのコンテンツの部分をドラッグ・アンド・ドロップするための例示的なプロセスを示している。図6Aは、ウェブページ内に表示されるコンテンツの選択706を示す。そのウェブページは、URL704に対してウェブブラウザ710に表示され得る。選択706は、画面上を視覚的に、例えば、カーソルを用いて経路708上を、ドラッグされる。選択706は、共有領域702にドロップされる。図示されるように、異なる種類の複数の共有に関連して複数の共有領域702-703があり得る。例えば、共有領域702-703の各々は、異なる種類のプロジェクトに関連付けられ得る。)」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ネットワークを介した情報共有のため、
クライアントデバイスにおいて、
コンテンツサーバー108からのニュース記事等のコンテンツを取得し、[0032]
ユーザによるコンテンツの部分の選択のドラッグ・アンド・ドロップ([0103])が共有領域において受けとられ、[0022]
選択された部分である、ユーザによりドラッグされたHTMLページの部分に重なる矩形の選択は、オペレーティングシステムのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を用いて受け取られ、ウェブブラウザのようなクライアントアプリケーションやクライアントアプリケーションに対するプラグインにおいて受け取られ、その後、ソーシャルネットワークの会員との共有の準備のために、CSS106に送信され、
CSS106において、
CSS106上の選択された部分のいくつかのタイプへのハイパーリンクを提供し、その選択された部分がマルチメディア・オブジェクトである場合、CSS106上のマルチメディアオブジェクトのコピーへのハイパーリンクを提供するものであり、[0033]、また、その選択された部分を受け取り、データベースにその選択された部分をコピーし、その選択された部分へのハイパーリンクを生成し、選択された部分を、ソーシャルネットワークのメンバーに関連付けられたクライアント・デバイス101-104の少なくとも1つに送信することができ、共有のためにその選択された部分を前処理するように要求した最初のクライアントデバイスにその選択された部分へのハイパーリンクを送り返すことができるものであり、[0047]
メッセージサーバ358において、
選択された部分のタイプに基づいて共有メッセージが生成され、共有メッセージがソーシャルネットワークの複数のメンバーの少なくとも一人に関連する少なくとも一つのクライアントデバイスにその部分を提供するために使用されて、最初の共有メンバーと複数のソーシャルネットワークのメンバーとの間でのネットワークを介したその部分の共有が可能とされるものであり[0022]、共有メッセージは、ストレージへのハイパーリンクである記憶された選択された部分へのハイパーリンクを提供するものであって、そのハイパーリンクおよび/またはその選択された部分自体をソーシャルネットワークのメンバーに関連付けられたクライアント・デバイスと共有するものである、[0022][0075]
方法。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の記載がある。

「[0064]At Step S460 the fragment object updates the portion of the source document to which the fragment object refers according to the edit performed in Step S440.・・・Updating the source document may also include transforming the data back to its native form if the data of the source document was transformed by the fragment object for inclusion in the referencing document.・・・
(仮訳:ステップS440で実行された編集に従って、ステップS460で、断片オブジェクトは、その断片オブジェクトが参照するソースドキュメントの部分を更新する。・・・ソースドキュメントの更新は、断片オブジェクトによりソースドキュメントのデータが変換されていた場合には、そのデータを元に戻すように変換することを含み得る。・・・)」

この記載からみて、当該引用文献2には、断片オブジェクトでソース文書を更新するという技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「コンテンツ」及びコンテンツの「選択された部分」は、本願発明1における「第1の文書」及び第1の文書の「コンテンツブロック(乃至コンテンツ)」に相当する。
引用発明の「コンテンツサーバ-」のアドレスは、第1の文書が取り出されるアドレスであり、本願発明1の「第1のアドレス」に相当し、引用発明は、本願発明の第1の文書を取り出すステップに相当するステップを含むものである。


引用発明のコンテンツブロックは、クライアントデバイス上のウェブブラウザに表示されたHTMLページにおける矩形選択に係る選択された部分であり得るところ、このウェブブラウザに表示されたHTMLページは、本願発明の「第1の文書の第1のビュー」に相当する。

引用発明は、HTMLページにおける矩形選択に係る選択された部分が、オペレーティングシステムのAPIを用いて受け取られ、ネットワークを通じてCSSに送信され、CSSにおいて、選択された部分のコピーが格納されてそのコピーを示すハイパーリンクが与えられるところ、この「矩形選択に係る選択された部分」は、本願発明の「特定されたコンテンツ」に相当し、このコピーを示すハイパーリンクは、本願発明の「第2のアドレス」に相当する。
そうすると、引用発明の矩形選択に係る選択された部分のドラッグ・アンド・ドロップの操作に伴うAPIの呼出しは、本願発明の「前記第1の文書の前記特定されたコンテンツのアドレスを作成する要求」に相当するといえ、また、この選択された部分がAPIを用いて受け取られてCSSに送信されてそのコピーを示すハイパーリンクが与えられることは、本願発明の「該アドレスを作成する前記要求を受け取ることに応答して、前記第1の文書の前記特定されたコンテンツの第2のアドレスを作成し、前記第2のアドレスにおける前記特定されたコンテンツのコピーの格納を開始するアドレスサービスを呼び出す」ことに相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「第1の文書を取り出すステップと、
前記少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出された、前記コンテンツブロックを含む前記第1の文書の第1のビューを表示するステップと、
前記第1の文書の特定されたコンテンツの選択を受け取るステップと、
前記第1の文書の前記特定されたコンテンツのアドレスを作成する要求を受け取るステップと、
該アドレスを作成する前記要求を受け取ることに応答して、前記第1の文書の前記特定されたコンテンツの第2のアドレスを作成し、前記第2のアドレスにおける前記特定されたコンテンツのコピーの格納を開始するアドレスサービスを呼び出すステップと、
を含む方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「第1の文書」は、「少なくとも第1のアドレスを含む少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出されたコンテンツブロックを含む」のに対し、引用発明は、「少なくとも第1のアドレスを含む少なくとも2つの異なったアドレスを介して取り出されたコンテンツブロックを含む」と明示されていない点。
(相違点2)本願発明1は、「前記特定されたコンテンツにおける、コンテンツの部分の修正を受け取るステップ」及び「前記特定されたコンテンツ及び前記修正のコピーを、前記第2のアドレスに保存するステップ」を含むのに対し、引用発明は、これらのステップを含んでいない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用文献1は、「ウェブコンテンツ共有ツール」における「コンテンツをコピーしてアプリケーションに貼り付けること」及び「コンテンツを送ること」に伴う「コピーおよび貼り付け」が面倒であり使用が困難であるという課題(引用文献1の段落[0002][0003])の解決のための技術であって、そもそも、コンテンツの修正に係る課題を解決しようとするものでなく、「コンテンツの部分の修正」を「第1の文書」から「選択」された「コンテンツ」について生成した「第2のアドレス」に保存するという、コンテンツの修正に係る技術を組み合わせる動機づけが認められないし、これと単に組み合わせることが可能である技術が周知であるとも認められない。(引用文献2もこのような技術を開示するものではない。)
むしろ、引用文献1において、メンバー間で共有されたニュース記事やゴシップは、修正されることを予定されていないから、このような組み合わせは阻害されるものと認められる。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、本願発明3について
本願発明2及び本願発明3も、本願発明1の相違点2に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4ないし本願発明6について
本願発明4ないし本願発明6は、本願発明1ないし本願発明3に対応するシステムの発明であり、本願発明1の相違点2に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示したように、本願発明1ないし本願発明6は、いずれも、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第6項第2号)について
審判請求時の補正により、査定時の請求項2と請求項6は削除されており、原査定の理由2は解消している。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2015-556074(P2015-556074)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 536- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成瀬 博之  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 相崎 裕恒
田中 秀樹
発明の名称 コンテンツキュレーションのためのアプリケーションプログラミングインタフェース  
代理人 中西 基晴  
代理人 中村 彰吾  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 宮前 徹  

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