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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1355706
審判番号 不服2019-1501  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-04 
確定日 2019-10-29 
事件の表示 特願2015-28769「狭額縁設計表示素子用光湿気硬化型樹脂組成物硬化体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月22日出願公開、特開2016-150974、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成27年2月17日の出願であって、平成30年8月9日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年10月18日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成30年10月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年2月4日に拒絶査定不服審判の請求とともに手続補正書が提出されたものである。

2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

「1.この出願の請求項1?3に係る発明は、下記の引用文献3又は4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.この出願の請求項1?3に係る発明は、下記の引用文献3又は4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
3.国際公開第2009/107301号
4.特開2009-197053号公報」

3 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成31年2月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
画像表示部が狭額縁化された表示素子において、液晶や発光層の封止、部材の接着に用いられる狭額縁設計表示素子用光湿気硬化型樹脂組成物硬化体であって、
ラジカル重合性化合物と、湿気硬化型ウレタン樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、充填剤とを含有する光湿気硬化型樹脂組成物を光湿気硬化してなり、
海部分と島部分とからなる海島構造を有する
ことを特徴とする狭額縁設計表示素子用光湿気硬化型樹脂組成物硬化体。」

4 引用文献、引用発明等
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「請求の範囲
[1] ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(a-1)、常温固体のポリエステルポリオール(a-2)、及び1000?25000の数平均分子量を有するポリオキシエチレングリコール(a-3)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の10%?90%と、水酸基含有(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる反応性ウレタンプレポリマー(D)、(メタ)アクリレート(E)、及び光重合開始剤(F)を含有してなる反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を硬化させて得られる透湿フィルム。
[2] 前記ポリオール(A)が、前記ポリオール(A)の全量100質量部に対して、前記ポリエステルポリオール(a-1)を5?30質量部、前記ポリエステルポリオール(a-2)を10?30質量部、及び前記ポリオキシエチレングリコール(a-3)を30?85質量部含むものである、請求項1に記載の透湿フィルム。
[3] 前記ポリエステルポリオール(a-1)が、ビスフェノールAに4?8モルのプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールと、セバシン酸及びイソフタル酸とを縮合反応させて得られるものである、請求項1に記載の透湿フィルム。
[4] 前記ポリエステルポリオール(a-2)が、1,6-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールを含むポリオールと、アジピン酸とを反応させて得られるものである、請求項1に記載の透湿フィルム。
[5] 前記(メタ)アクリレート(E)が、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、これらのエチレンオキサイド付加物、及びプロピレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる1種以上の多官能(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の透湿フィルム。
[6] 厚みが5?50μmの範囲である請求項1に記載の透湿フィルム。
[7] ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(a-1)、常温固体のポリエステルポリオール(a-2)、及び1000?25000の数平均分子量を有するポリオキシエチレングリコール(a-3)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の10%?90%と、水酸基含有(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる反応性ウレタンプレポリマー(D)、(メタ)アクリレート(E)、及び光重合開始剤(F)を含有してなる加熱溶融状態の反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を、厚さ5?50μmのフィルム状に成形し、光硬化反応と湿気硬化反応とを順次または同時に進行させる、透湿フィルムの製造方法。
[8] ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(a-1)、常温固体のポリエステルポリオール(a-2)、及び1000?25000の数平均分子量を有するポリオキシエチレングリコール(a-3)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の10%?90%と、水酸基含有(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる反応性ウレタンプレポリマー(D)、多官能(メタ)アクリレート(E)、及び光重合開始剤(F)を含有してなる反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を硬化させて得られた透湿フィルムの片面又は両面に、加熱溶融状態の反応性ポリウレタンホットメルト接着剤を間欠塗布し、該塗布面上に透湿性基材が接着された積層体。」

イ 「[0001] 本発明は、スポーツウェア等の透湿防水衣服の製造に使用可能なフィルムや、絆創膏用フィルム、紙おむつ用フィルム、壁材や屋根に用いる調湿用建材フィルム等に使用可能な透湿フィルムに関するものである。」

ウ 「[0028] はじめに本発明で使用する反応性ウレタンプレポリマー(D)について説明する。
[0029] 反応性ウレタンプレポリマー(D)は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の10%?90%と、水酸基含有(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られるものであって、例えば(i)分子両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(D1)と分子両末端に重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマー(D2)との混合物、または、(ii)分子末端の一方がイソシアネート基で他方が前記重合性不飽和二重結合であるウレタンプレポリマー(D3)の単独、もしくはそれとウレタンプレポリマー(D1)や(D2)との混合物のいずれかの態様のものであることが好ましい。
[0030] このような反応性ウレタンプレポリマー(D)を使用することで、イソシアネート基に起因した湿気硬化反応と、重合性不飽和二重結合に起因した光ラジカル重合反応とが速やかに進行し、反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化速度を顕著に向上させることができる。これにより、透湿フィルム表面のタック性が低減され、毛羽立ちの発生が抑制された、表面品位に優れる透湿フィルムを得ることが可能となる。
[0031] 前記反応性ウレタンプレポリマー(D)の有するイソシアネート基は、前記反応性ウレタンプレポリマー(D)に「湿気硬化性」を付与する。具体的には、前記イソシアネート基は、主に空気中の湿気(すなわち水)と反応して架橋構造の形成に寄与する。そのため、前記反応性ウレタンプレポリマー(D)は、加熱溶融状態の前記反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が離型フィルム等の表面に塗布された際に、空気中に含まれる湿気と反応することで架橋構造を形成し、耐久性に優れる透湿フィルムを形成する。

[0033] また、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(C)由来の重合性不飽和二重結合は、前記反応性ウレタンプレポリマー(D)に「光硬化性」を付与する。前記光硬化性は、紫外線等の照射によって発生したラジカルが引き起こす、前記重合性不飽和二重結合のラジカル重合反応に起因して硬化する性質である。」

エ 「[0097] 本発明で使用する反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記した各種成分の他に、必要に応じて、例えば、…充填材、…を併用することができる。

[0101] 前記充填材としては、例えばケイ酸誘導体、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、カーボンブラック、アルミナ、酸化マグネシウム、無機或いは有機バルーン、リチアトルマリン、活性炭等、金属粉、クレー等を使用することができる。」

オ 「実施例

[0129] <合成例1>[反応性ウレタンプレポリマー(D’-1)の製造]
[0130] 1リットル4ツ口フラスコに、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドが6モル付加したポリエーテルポリオールとセバシン酸及びイソフタル酸とを反応させて得られた、数平均分子量2000のポリエステルポリオール(a-1-1)の15質量部と、ネオペンチルグリコールと1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られた数平均分子量2000の常温固体のポリエステルポリオール(a-2-1)の20質量部と、数平均分子量が4000のポリオキシエチレングリコール(a-3-1)の65質量部とを120℃にて減圧加熱、混合し、水分率が0.05質量%となるまで脱水した。
[0131] 次いで、70℃に冷却した前記混合物中に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの18質量部を加えた後、90℃でイソシアネート基含有量が一定となるまで3時間反応させることによってイソシアネート基含有の反応性ウレタンプレポリマー(D’-1)を得た。反応性ウレタンプレポリマー(D’-1)のコーンプレート粘度計による125℃における溶融粘度は1100mPa・sであり、イソシアネート基含有量は2.72質量%、ガラス転移温度(Tg)は-19.3℃であった。また、前記4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの有するイソシアネート基と前記ポリオールが有する水酸基との当量比[NCO/OH]は、2.13であった。
[0132] <合成例2>反応性ウレタンプレポリマー(D-1)の製造
110℃に加熱した前記反応性ウレタンプレポリマー(D’-1)100質量部に、2-ヒドロキシエチルアクリレートの1.02質量部とオクチル酸スズの0.01質量部とを加え反応させることによって反応性ウレタンプレポリマー(D-1)を得た。前記反応性ウレタンプレポリマー(D-1)の有するイソシアネート基の数の全量に対して、2-ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基が反応したイソシアネート基の数の割合([HEA/NCO]×100)は、15%であった。

[0134] <合成例3?11>
反応性ウレタンプレポリマーの組成を、それぞれ表1及び2に記載のものに変更する以外は、合成例1及び2に記載の方法と同様の方法で、反応性ウレタンプレポリマー(D-2)?(D-5)及び(D’-2)?(D’-6)をそれぞれ製造した。なお、表2中のポリオキシプロピレングリコール(a-3-2)としては、数平均分子量2000のものを使用した。
[0135][表1]

[0136][表2]

[0137] 実施例1<透湿フィルム>
100℃で加熱溶融した反応性ウレタンプレポリマー(D-1)に、トリメチロールプロパントリアクリレート、「IRGACURE 651」(チバスペシャリティ(株)製の光重合開始剤)を混合することによって、反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を製造した。
[0138] 次いで、120℃で加熱溶融状態の前記反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を、120℃に加熱されたナイフコーターを用いて、離型紙(EK-100、リンテック(株)製)上に30μmの厚みに塗布した。
[0139] 次いで、前記塗布物を、装置内を1回通過させるごとに145mJ/cm^(2)の紫外線照射量となるように設定したコンベアタイプの紫外線照射装置CSOT?40(日本電池(株)製、高圧水銀ランプ使用、強度120W/cm、コンベアスピード10m/min)内を2回通過させることによって、その塗布面に紫外線照射を行い、該塗布物をロールに巻き取った後、温度23℃及び相対湿度65%の環境下で3日間放置し湿気硬化反応を進行させた。放置後、形成されたフィルムを離型紙上から剥離し透湿フィルム(I)を得た。
[0140] なお、上記の紫外線照射量は、UVチェッカーUVR-N1(日本電池(株)製)を用いて300?390nmの波長域において測定した値である。
[0141] 次に、前記で得た透湿フィルム(I)を用い、以下の方法で積層体を製造した。具体的には、120℃で加熱溶融した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤(前記合成例1で製造したウレタンプレポリマー(D’-1)からなる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤)を、120℃に加熱した40線/inchの格子状のグラビアロールを用いて、上記透湿性フィルム(I)上に20g/m^(2)で間欠塗布した後、該塗布面に繊維質基材である40デニールのナイロンタフタを貼り合わせ、温度23℃・相対湿度65%の環境下で3日間放置することにより積層体(I)を作製した。
[0142] 実施例2?10及び比較例1?7
反応性ウレタンプレポリマーの組成を下記表3及び4の記載に変更する以外は、前記実施例1と同様の方法で、透湿フィルム(II)?(XIV)及び積層体(II)?(XIV)を製造した。

[0153][表3]

[0154] 表3中の略号について説明する。
「A-1000」:数平均分子量1000のポリエチレングリコールジアクリレート
[0155][表4]



カ 上記ア?オ、特にア及びオから、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(a-1)、常温固体のポリエステルポリオール(a-2)、及び1000?25000の数平均分子量を有するポリオキシエチレングリコール(a-3)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の10%?90%と、水酸基含有(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる反応性ウレタンプレポリマー(D)、(メタ)アクリレート(E)、及び光重合開始剤(F)を含有してなる反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を硬化させて得られる硬化体」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレートから合成され、分子末端に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、分子末端に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)、光重合開始剤(C)、を必須成分として含有する常温(25℃)で液状で、50?2000mJ/cm^(2)の紫外線照射して使用する1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物。
【請求項2】
分子末端に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)が、数平均分子量が300?7000の非結晶性ポリオールから合成される請求項1に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物。
【請求項3】
分子末端に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)の分子末端(メタ)アクリロイル基が、使用するポリオールの水酸基の20?50%である請求項1または請求項2に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物。
【請求項4】
分子末端に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)の分子末端(メタ)アクリロイル基が、使用するポリオールの水酸基の30?40%である請求項1または請求項2に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物。
【請求項5】
分子末端に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)が、紫外線照射によって重合を開始する官能基を少なくとも1個以上有し、かつ、端官能基にヒドロキシル基を有さない可塑剤である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、一液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物に関する。更に詳しくは、常温(25℃)で液状で、紫外線照射後の貼り合せにおいても優れた初期接着性を示す50?2000mJ/cm^(2)の紫外線照射して使用する1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物に関する。」

ウ 「【0024】
また、ウレタンプレポリマー(A)の分子末端に存在する(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基の比率として(メタ)アクリロイル基/イソシアネート基=20?50%の範囲で、さらに好ましくは30?40%の範囲となるように反応させる。これは、20%未満では、紫外線の照射に伴う(メタ)アクリロイル基のラジカル反応で高分子量化される割合が少なくなり、充分な初期接着強度が得られず、50%を超えると高分子量化される割合が多くなりすぎて、初期に必要な粘着性が損なわれるというおそれがあるためである。
【0025】
本発明で用いる分子末端に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)としては、活性水素を有する場合はウレタンプレポリマー(A)と反応して好ましくないので活性水素を含まない可塑剤を使用することが必須である。例えば、フェノールエトキシ変性アクリレート、ノニルフェノールエトキシ変性アクリレート、イソボニルアクリレート、ラウリルアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、β-メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の公知のものが挙げられ、単独または2種類以上併用しても良い。

【0030】
また、本発明の1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物には、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を添加することもできる。たとえば、…充填剤、…等の公知のものが挙げられ、単独または2種類以上を併用しても良い。」

エ 「【0033】
本発明の1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物の用途は特に制限されないが、例として金属材料、木質材料、プラスチックやゴムなどの高分子材料、繊維製品、天然及び合成皮革類の製品、紙製品等の接着に使用でき、同種類及び異種類の被着体に接着できる。特に常温で液状であるため上述の接着体の表面に凸凹を有する3D形状でも適する。」

オ 「【実施例】
【0034】
以下に、実施例及び比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下「部」、「%」とは、特に断りのない限り「重量部」、「重量%」のことである。
【0035】
(実施例1)
攪拌機、温度制御装置、還流冷却機、窒素導入管、及び減圧装置を備えたセパラブルフラスコにポリオールとして以下のポリエステルポリオールを仕込み、攪拌しながら加熱を開始して80℃で減圧により脱水処理をした。
非結晶性のポリエステルポリオール 100部
[メチルペンタンジオール、アジピン酸を主成分とするポリエステルポリオール(水酸基の官能基数2.0、数平均分子量3000)]
窒素雰囲気中でポリイソシアネート化合物として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート16.7部を添加し、110℃で1時間反応させ、さらに(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート2.6部と重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を添加し、110℃で1時間反応させた。次に光重合開始剤(C)として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.6部添加し、よく脱泡混合しウレタンプレポリマーを得た。次いで、得られたウレタンプレポリマー100部に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)としてフェノールエトキシ変性アクリレート20部(東亞合成株式会社製、商品名:M-102)、可塑剤を30部(新日本石油株式会社製、商品名:SAS296)、エトキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレートを1部(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-TMPT-3EO)添加し、よく混合して1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物(NCO/OH比2.0、アクリロイル基置換量33%)を得た。
【0036】
(実施例2)
以下の組成にて実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得た。
結晶性ポリエステルポリオール 100部
[メチルペンタンジオール、アジピン酸を主成分とするポリエステルポリオール(水酸基の官能基数2.0、数平均分子量3000)]
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート 16.7部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 3.9部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.3部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 2.6部
得られたウレタンプレポリマー100部に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)としてフェノールエトキシ変性アクリレート20部(東亞合成株式会社製、商品名:M-102)、可塑剤を30部(新日本石油株式会社製、商品名:SAS296)、エトキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレートを1部(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-TMPT-3EO)添加し、よく混合して1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物(NCO/OH比2.0、アクリロイル基置換量50%)を得た。
【0037】
(実施例3)
以下の組成にて実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得た。
非結晶性ポリエステルポリオール 100部
[メチルペンタンジオール、アジピン酸を主成分とするポリエステルポリオール(水酸基の官能基数2.0、数平均分子量3000)]
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート 16.7部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 1.5部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.3部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 2.6部
得られたウレタンプレポリマー100部に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)としてフェノールエトキシ変性アクリレート20部(東亞合成株式会社製、商品名:M-102)、可塑剤を30部(新日本石油株式会社製、商品名:SAS296)、エトキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレートを1部(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-TMPT-3EO)添加し、よく混合して1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物(NCO/OH比2.0、アクリロイル基置換量20%)を得た。
【0038】
(実施例4)
攪拌機、温度制御装置、還流冷却機、窒素導入管、及び減圧装置を備えたセパラブルフラスコに以下のポリエステルポリオールを仕込み、攪拌しながら加熱を開始して80℃で減圧により脱水処理をした。
非結晶性のポリエステルポリオール 100部
[メチルペンタンジオール、アジピン酸を主成分とするポリエステルポリオール(水酸基の官能基数2.0、数平均分子量500)]
窒素雰囲気中で4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート100部を添加し、110℃で1時間反応させ、さらに2-ヒドロキシエチルアクリレート15.3部と重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を添加し、110℃で1時間反応させた。次に光重合開始剤(C)として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.6部添加し、よく脱泡混合しウレタンプレポリマーを得た。次いで、得られたウレタンプレポリマー100部に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)としてフェノールエトキシ変性アクリレート10部(東亞合成株式会社製、商品名:M-102)、可塑剤を10部(新日本石油株式会社製、商品名:SAS296)、エトキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレートを1部(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-TMPT-3EO)添加し、よく混合して1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物(NCO/OH比2.0、アクリロイル基置換量33%)を得た。
【0039】
(実施例5)
攪拌機、温度制御装置、還流冷却機、窒素導入管、及び減圧装置を備えたセパラブルフラスコに以下のポリエステルポリオールを仕込み、攪拌しながら加熱を開始して80℃で減圧により脱水処理をした。
非結晶性のポリエステルポリオール 100部
[メチルペンタンジオール、アジピン酸を主成分とするポリエステルポリオール(水酸基の官能基数2.0、数平均分子量2000)]
窒素雰囲気中で4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート25.0部を添加し、110℃で1時間反応させ、さらに2-ヒドロキシエチルアクリレート3.8部と重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を添加し、110℃で1時間反応させた。次に光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.6部添加し、よく脱泡混合しウレタンプレポリマーを得た。次いで、得られたウレタンプレポリマー100部に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)としてフェノールエトキシ変性アクリレート10部(東亞合成株式会社製、商品名:M-102)、可塑剤を20部(新日本石株式会社油製、商品名:SAS296)、エトキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレートを1部(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-TMPT-3EO)添加し、よく混合して1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物(NCO/OH比2.0、アクリロイル基置換量33%)を得た。」

カ 上記ア?オ、特にア及びオから、引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「ポリオール、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレートから合成され、分子末端に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、分子末端に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤(B)、光重合開始剤(C)、を含有する湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物に紫外線を照射して、硬化させて得られる硬化体」

5 対比・判断
(1)引用発明3に基づくもの
ア 引用発明3の「(メタ)アクリレート(E)」及び「光重合開始剤(F)」は、それぞれ本願発明1の「ラジカル重合性化合物」及び「光ラジカル重合開始剤」に相当する。そして、上記4(1)ウの記載から、引用発明3の「反応性ウレタンプレポリマー(D)」及び「反応性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物」が、それぞれ本願発明1の「湿気硬化型ウレタン樹脂」及び「光湿気硬化型樹脂組成物」に相当するとしても、本願発明1と引用発明3とは、少なくとも以下の点で相違する。

相違点1:本願発明1は「画像表示部が狭額縁化された表示素子において、液晶や発光層の封止、部材の接着に用いられる狭額縁設計表示素子用」のものであるのに対し、引用発明3はこのようなものであることが明らかでない点。
相違点2:本願発明1は「海部分と島部分とからなる海島構造を有する」のに対し、引用発明3はこのような構造を採ることが明らかでない点。
相違点3:本願発明1は充填剤を含有するのに対し、引用発明3は充填剤を含有することが明らかでない点。

イ 上記相違点1に関し、引用発明3は、「スポーツウェア等の透湿防水衣服の製造に使用可能なフィルムや、絆創膏用フィルム、紙おむつ用フィルム、壁材や屋根に用いる調湿用建材フィルム等に使用可能な透湿フィルムに関するもの」(上記4(1)イ)であり、「液晶や発光層の封止、部材の接着に用いられる狭額縁設計表示素子用」とすることを想起させる記載ないし示唆は、引用文献3から見いだすことができない。
相違点2に関し、引用発明3により得られた硬化体が、海島構造を採りうると解される記載ないし示唆は、引用文献3から見いだすことができない。
また、引用発明3に対して、これら相違点1及び2を採用することが、当業者において容易に想到し得ると解される根拠を見いだすことができず、またそのような一般的な技術的知識も存在しない。
したがって、本願発明1は引用発明3であるとはいえず、また、本願発明1は、その他の相違点の存否に関わらず、当業者といえども引用発明3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本願発明2ないし3は、本願発明1を引用するものである。したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし3は引用発明3であるとはいえず、また、本願発明2ないし3は、その他の相違点の存否に関わらず、当業者といえども引用発明3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)引用発明4に基づくもの
ア 引用発明4の「分子末端に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有する可塑剤」及び「光重合開始剤」は、それぞれ本願発明1の「ラジカル重合性化合物」及び「光ラジカル重合開始剤」に相当する。そして、上記4(2)ウの記載から、引用発明4の「分子末端に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」及び「湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤組成物」が、それぞれ本願発明1の「湿気硬化型ウレタン樹脂」及び「光湿気硬化型樹脂組成物」に相当するとしても、本願発明1と引用発明4とは、少なくとも以下の点で相違する。

相違点4:本願発明1は「画像表示部が狭額縁化された表示素子において、液晶や発光層の封止、部材の接着に用いられる狭額縁設計表示素子用」のものであるのに対し、引用発明4はこのようなものであることが明らかでない点。
相違点5:本願発明1は「海部分と島部分とからなる海島構造を有する」のに対し、引用発明4はこのような構造を採ることが明らかでない点。
相違点6:本願発明1は充填剤を含有するのに対し、引用発明4は充填剤を含有することが明らかでない点。

イ 上記相違点4に関し、引用発明4は、「用途は特に制限されないが、例として金属材料、木質材料、プラスチックやゴムなどの高分子材料、繊維製品、天然及び合成皮革類の製品、紙製品等の接着に使用でき、同種類及び異種類の被着体に接着できる。」(上記4(2)エ)とするものであり、「液晶や発光層の封止、部材の接着に用いられる狭額縁設計表示素子用」とすることを想起させる記載ないし示唆は、引用文献4から見いだすことができない。
相違点5?6は、それぞれ相違点2?3と同旨である。
そうすると、上記(1)イ及びウで検討したことと同様、本願発明1?3の各々は引用発明4であるとはいえず、また、本願発明1?3の各々は、その他の相違点の存否に関わらず、当業者といえども引用発明4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-07 
出願番号 特願2015-28769(P2015-28769)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C08L)
P 1 8・ 113- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松浦 裕介  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 武貞 亜弓
大熊 幸治
発明の名称 狭額縁設計表示素子用光湿気硬化型樹脂組成物硬化体  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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