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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1355708
審判番号 不服2018-12473  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-18 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2016-110786「残留トナー搬送装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017-215545、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月2日に出願した出願であって、平成29年7月14日に手続補正書が提出され、平成30年3月2日付けで拒絶理由が通知され、同年5月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月12日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、それに対して、同年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において令和1年7月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書及び手続補正書(以下、当該手続補正書によってされた補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、本件補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表面にトナー像を担持可能な像担持体の表面に残留するトナーを搬送する残留トナー搬送装置であって、
前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置され、記録材に転写されずに前記像担持体の表面に残留した残留トナーを回収する回収開口と、
前記回収開口を介して前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置され、前記回収開口から回収された前記残留トナーを搬送する第1螺旋状羽根で構成される第1搬送部であって、前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域において、前記第1螺旋状羽根の外径と、回転軸に沿った離間ピッチとが一定である第1搬送部と、
前記第1搬送部よりも前記残留トナーの搬送方向下流側の、前記像担持体のトナー像形成領域と対向しない領域であって、前記残留トナーを前記残留トナー搬送装置の外部へ排出する排出口側に配置され、前記第1搬送部よりも前記残留トナーの搬送量に関する搬送能力が高い第2螺旋状羽根で構成される第2搬送部と、
を有し、
前記第1搬送部により搬送される前記残留トナーが前記回収開口と前記第1螺旋状羽根の外周端部との間に形成される空間内で対流することにより前記トナー像形成領域を研磨することを特徴とする残留トナー搬送装置。
【請求項2】
前記第2搬送部は、前記残留トナーの搬送方向下流側端部に設けられる、前記残留トナーの排出口と対向する領域に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項3】
前記第1搬送部の前記第1螺旋状羽根の外径を、前記第2搬送部の前記第2螺旋状羽根の外径よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項4】
前記第1搬送部における、前記回収開口と前記第1螺旋状羽根の外周端部との間の距離は、前記第1搬送部における前記第1螺旋状羽根の半径の1.3倍以上、2.5倍未満の範囲に設定され、
前記第2搬送部における、前記排出口と前記第2螺旋状羽根の外周端部との間の距離は、前記第2搬送部における前記第2螺旋状羽根の半径の0.8倍以上、1.3倍未満の範囲に設定されることを特徴とする請求項3に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項5】
前記第1搬送部における前記第1螺旋状羽根の回転軸に沿った離間ピッチを、前記第2搬送部における前記第2螺旋状羽根の回転軸に沿った離間ピッチよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項6】
前記第1搬送部における前記離間ピッチは、前記第2搬送部における前記離間ピッチの0.5倍を超えて0.9倍以下の範囲に設定されることを特徴とする請求項5に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項7】
前記第1搬送部における前記第1螺旋状羽根の回転軸に対して直交する平面に対する傾斜角度を、前記第2搬送部における前記第2螺旋状羽根の回転軸に対して直交する平面に対する傾斜角度よりも小さく設定したことを特徴とする請求項6に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項8】
前記第1搬送部における前記傾斜角度は、前記第2搬送部における前記傾斜角度に対して、2°以上、5°未満の範囲で小さく設定されることを特徴とする請求項7に記載の残留トナー搬送装置。
【請求項9】
像担持体と、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の残留トナー搬送装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献3について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2012-242638号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0007】
近年、現像剤を用いた画像形成装置においては、現像剤の中に研磨剤を含有させ、これによる研磨効果によって感光体ドラム表面上の微細な異物等を除去する方法が用いられるようになっている。特に、感光体ドラムから回収した現像剤を搬送スクリューによって感光体ドラムの長手方向一方側から他方側へ搬送するクリーニング装置を備えた画像形成装置にあっては、回収現像剤を搬送スクリューで搬送する間に感光体ドラムに接触させることで回収現像剤により感光体ドラムの表面を研磨することができる。
【0008】
しかし、長手方向に均一な搬送力をもつ搬送スクリューを回転させて長手方向の一方側から他方側へ現像剤を搬送して排出口から排出する場合、長手方向の下流側では上流側から現像剤が搬送されて滞留するが、上流側では滞留しない。このため、感光体ドラムの長手方向において、前記下流側では研磨剤による研磨効果が得られるが、上流側では研磨剤による研磨効果が低下する。その結果、研磨効果が少ない上流側では画像が白く抜けてしまう画像不良を生ずることがある。
【0009】
そこで、現像剤による研磨効果を得るために、搬送スクリューによる現像剤搬送力を上流側と下流側とで異ならせることが考えられる。しかし、特許文献1、2に示す構成にあっては、下流側の現像剤搬送力のほうが大きいため、下流側で現像剤が詰まることを防止することはできるものの、上流側で回収現像剤を効果的に滞留させることは困難である。
【0010】
また、搬送スクリューの回転速度を制御し、あるいは搬送スクリューの螺旋の向きを一部逆向きにすることで回収した現像剤を感光体ドラムの長手方向に均一にすることも考えられる。しかし、この場合でも感光体ドラムの長手方向の一方側から他方側へ現像剤を搬送するクリーニング装置にあっては長手方向の全域で現像剤量を調整することはできても、上流側のみ調整することは難しい。」

イ 「【0020】
<クリーニング装置>
本実施形態のクリーニング装置は、図1及び図2に示すように、板金で構成した支持部材7aの端部にポリウレタン、クロロプレンゴムのエラストマー等適度の弾性と硬度を有する短冊状のゴム部材7bを取り付けたクリーニングブレード7が現像剤収容部8に取り付けられている。
【0021】
ゴム部材7bは感光体ドラム1の長手方向長さと略同じ長さを有し、感光体ドラム1の周面に圧接している。このゴム部材7bによって感光体ドラム1に残留した現像剤を掻き取り、回収した現像剤を現像剤収容部8に収容する。
【0022】
現像剤収容部8は感光体ドラム1の長手方向に沿って配置されたダクト形状を有し、内部に回収したトナーを搬送する搬送部材である搬送スクリュー9が回転可能に配置されている。この搬送スクリュー9は、感光体ドラム1から回収した現像剤を現像剤収容部8内の長手方向一方側から他方側へ感光体ドラム1の長手方向に沿って搬送するものである。そして、図3に示すように、現像剤収容部8の長手方向の一方側端部には回収した現像剤を回収ボックス10に排出するための排出口8aが設けられている。
【0023】
これにより、感光体ドラム1に残留した現像剤は、クリーニングブレード7によって掻き取られて現像剤収容部8に回収される。現像剤収容部8内に回収された現像剤は、搬送スクリュー9によって感光体ドラム1の長手方向に沿って排出口8aへと搬送され、排出口8aから回収ボックス10へと排出される。
【0024】
なお、本実施形態の現像剤には研磨剤が含有されており、現像剤収容部8に回収した現像剤が回転する感光体ドラム1の表面と摺擦することで感光体ドラム1の表面に付着した微細な異物等を除去するようにしている。そのため、本実施形態では現像剤収容部8を感光体ドラム1の上方に配置し、回収した現像剤が感光体ドラム1に接触し易いように配置している。
【0025】
また、本実施形態にあっては、現像剤収容部8に回収した現像剤により感光体ドラム1の表面の研磨が効果的に行われるように、搬送スクリュー9を構成し、かつその駆動を制御するように構成している。この搬送スクリュー9の構成及び搬送スクリュー9の駆動制御については後述する。

ウ 「【0032】
<搬送スクリュー>
次に本実施形態に係る搬送スクリュー9の構成について説明する。図3は本実施形態に係るクリーニング装置Bの構成を表した斜視図であり、図4はクリーニング装置Bの模式図である。
【0033】
回収した現像剤が現像剤収容部8内にある程度滞留して感光体ドラムを摺擦しないと、回収現像剤に含まれる研磨剤による感光体ドラム1の研磨効果が薄れ、画像不良が発生し易くなる。この回収現像剤の滞留不足は搬送スクリュー9の現像剤搬送方向上流側(以下、「上流側」という)で生じ易い。そこで、本実施形態では搬送スクリュー9を第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bとに分けてそれぞれ独立して回転可能とし、上流側の第二搬送スクリュー9bの駆動制御を行うことで現像剤収容部8内の現像剤の滞留を制御するものである。
【0034】
現像剤収容部8内には感光体ドラム1の長手方向に沿って現像剤を搬送する搬送スクリュー9が設けられている。この搬送スクリュー9は、図4に示すように、現像剤収容部8の長手方向の同一軸上で回転する第一搬送スクリュー9aと、第二搬送スクリュー9bとを有し、前記第一搬送スクリュー9aは現像剤排出口側に配置され、第二搬送スクリュー9bは第一搬送スクリュー9aを挟んで前記現像剤排出口の反対側に配置されている。」

ウ 「【0036】
(連結構成)
本実施形態の搬送スクリュー9は、図5に示すように、第一搬送スクリュー9aの軸端9a1と第二搬送スクリュー9bの軸端9b1が、内部に連結部材11を介して回動自在に連結されており、両スクリュー9a,9bは同一軸上で回転可能に支持されている。
【0037】
連結部材11としては、搬送スクリュー9a,9bと同一の材質を用いてもよく、金属系の材質、たとえば銅、アルミ、スズ、鉄、ニッケルなどでもよい。搬送スクリュー9a,9bの材質より摩擦係数が小さい部材を用いてもよい。連結部材11の形状は、連結される搬送スクリュー9a,9bの摺動性を妨げないように、円筒、あるいは球形のものが好ましい。また、連結部材11は搬送スクリュー9a,9bの互いの回転を妨げないように連結されていればよく、内部に現像剤が固着しにくい構成が好ましい。
【0038】
図5における連結部材11の長さCは5?50mm、好ましくは20?30mmが好ましい。5mmより小さい場合、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bの連結が弱くなり、搬送スクリューの軸が定まらず一定の動作が行われず、連結部が外れてしまうおそれもある。また50mmより大きいと、摺動部の摩擦が大きくなり搬送スクリューの動作を阻害することになる。
【0039】
さらに、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bの連結部の摺動性をあげるために、グリスや二硫化モリブデンといった滑り性をあげる物質を連結部材11の内部や表面に塗布してもよい。
【0040】
図5に示すように、連結部材11を用いて両搬送スクリュー9a,9bを連結することにより、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bとの連結部に凹凸が生じないため、連結部に現像剤の付着等が発生し難くなる。
【0041】
もっとも、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bの連結部は、図5に示すように、凹凸が生じないようにすることが好ましいが、現像剤搬送に支障を生じなければ、図3及び図4に示すように、連結部がスクリュー軸より多少突出した構成であってもよい。
【0042】
また、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bの連結構成は、図6に示すようにしてもよい。すなわち、第一搬送スクリュー9aよりも第二搬送スクリュー9bの軸径を太く構成し、第二搬送スクリュー9bに形成した嵌合穴に第一搬送スクリュー9aの端部を挿入して回動可能に連結したものである。このようにすることで、連結部材を用いることなく両搬送スクリュー9a,9bを連結することができる。
【0043】
上記のようにして同一軸上でそれぞれが回転可能に連結された搬送スクリュー9は、図3に示すように、第一搬送スクリュー9aが第一駆動源12aとギアを介して連結し、第二搬送スクリュー9bもギアを介して第二駆動源12bと連結している。
【0044】
従って、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bとは、回転速度、回転方向が独立して回転可能に構成されている。そして、それぞれの搬送スクリュー9a,9bには回転軸に螺旋状の羽根9a2,9b2が設けられ、この羽根9a2,9b2が回転することで現像剤収容部8内の現像剤が排出口8aに向かって搬送される。
【0045】
また、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bを同一軸上で回転するように構成したために、一本の搬送スクリューと同じスペースで現像剤収容部8内の長手方向の現像剤量を均一に保つことが可能となる。もっとも、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bは現像剤を順次下流側へ搬送できれば必ずしも同一軸上で回転するものでなくてもよい。
【0046】
(第二搬送スクリューの長さ)
前述のように、現像剤収容部8内の現像剤を搬送するにあたり、上流側の第二搬送スクリュー9bの駆動制御を行うことで現像剤収容部8内の現像剤の滞留を制御する。そのために、搬送スクリュー9全体のうち、上流側に位置する第二搬送スクリュー9bの長さは、感光体ドラム1の長手方向長さの1/5以上1/2以下の範囲にあることが望ましい。1/5より短いと、第二搬送スクリュー9bにより搬送される回収現像剤量が少なく現像剤量の調整ができない。一方、1/2より長いと上流側での現像剤量の調整が難しくなるからである。」

エ 「【0049】
(羽根ピッチ)
図8は搬送スクリューの拡大図である。間隔aは搬送スクリュー上の羽根の間隔を示したもので、本実施形態では羽根ピッチ幅と表記する。また、間隔bはスクリュー上の羽根の外径を示したもので本実施形態では羽根外径と表記する。
【0050】
羽根のピッチ幅は5?30mm、好ましくは10?20mmが望ましい。5mmよりピッチ幅が細かくなると、現像剤の搬送力が増して、現像剤の滞留が悪くなる。また羽根が密集しすぎることにより現像剤の凝集、固着も引き起こされる。30mmよりピッチ幅が大きくなると現像剤の搬送性が小さくなり、現像剤の滞留はあがるが、一部に大量に現像剤が送りこまれたときの対応がとれずクリーニング不良を引き起こしてしまう。
【0051】
さらに、搬送スクリュー9の羽根外径は現像剤収容部8の図2に示した断面積S1に対して、羽根外径の占める面積S2が20?80%好ましくは30?50%になることがよい。羽根外径の面積が現像剤収容部8の断面積の80%より多く占めると、回収現像剤の搬送量が多くなり、本実施形態で狙う回収現像剤の十分な滞留が望めない。また20%より小さいと逆に回収現像剤が滞留しすぎて、現像剤収容部内の凝集や固着を引き起こしクリーニング不良につながる。」

オ 「【0058】
(駆動制御)
現像剤に研磨剤を含有させ、画像流れの発生を抑制する場合、感光体ドラム上に回収した現像剤を一定量に保つことが研磨効果を維持するのに必要である。本実施形態では第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bの回転方向、回転速度をそれぞれ独立して駆動制御可能としている。これにより、特に上流側の現像剤量が所定範囲にあるように、上流側に位置する第二搬送スクリュー9bの駆動を現像剤量に応じて制御することで、滞留し難い感光体ドラムの上流側での現像剤量を制御して研磨効果を維持する。
【0059】
本実施形態の搬送スクリュー9の駆動制御を説明するにあたり、第一搬送スクリュー9a及び第二搬送スクリュー9bが正回転したときに現像剤を図3の矢印X1方向に搬送し、逆回転したときに図3の矢印X2方向に搬送することとして説明する。
【0060】
本実施形態では下流側の第一搬送スクリュー9aは常に一定の所定速度で正回転させて現像剤を排出口8aへ搬送する。一方、上流側の第二搬送スクリュー9bは第一搬送スクリュー9aと同じ速度で回転させるが、回転方向は現像剤量に応じて正回転駆動又は逆回転駆動させる。これにより、現像剤収容部8内の現像剤量が所定範囲にあるようにしている。」

カ 「【図4】



キ 図4からは、第一搬送スクリュー9aと、第二搬送スクリュー9bとが連結される部分において、羽根9a2、9b2が設けられていないことが看取できる。

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「感光体ドラム1に残留した現像剤を、クリーニングブレード7によって掻き取って現像剤収容部8に回収し、現像剤収容部8内に回収した現像剤を、搬送スクリュー9によって感光体ドラム1の長手方向に沿って排出口8aへと搬送し、排出口8aから回収ボックス10へと排出し、
現像剤には研磨剤が含有されており、現像剤収容部8に回収した現像剤が回転する感光体ドラム1の表面と摺擦することで感光体ドラム1の表面に付着した微細な異物等を除去するようにしているクリーニング装置であって、
現像剤収容部8は感光体ドラム1の長手方向に沿って配置されたダクト形状を有し、内部に回収したトナーを搬送する搬送部材である搬送スクリュー9が回転可能に配置され、この搬送スクリュー9は、感光体ドラム1から回収した現像剤を現像剤収容部8内の長手方向一方側から他方側へ感光体ドラム1の長手方向に沿って搬送するものであり、
搬送スクリュー9は、第一搬送スクリュー9aの軸端9a1と第二搬送スクリュー9bの軸端9b1が、内部に連結部材11を介して回動自在に連結されており、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bとに分けてそれぞれ独立して回転可能とし、上流側の第二搬送スクリュー9bの駆動制御を行うことで現像剤収容部8内の現像剤の滞留を制御するものであって、下流側の第一搬送スクリュー9aは常に一定の所定速度で正回転させて現像剤を排出口8aへ搬送し、一方、上流側の第二搬送スクリュー9bは第一搬送スクリュー9aと同じ速度で回転させるが、回転方向は現像剤量に応じて正回転駆動又は逆回転駆動させ、
搬送スクリュー9全体のうち、上流側に位置する第二搬送スクリュー9bの長さは、感光体ドラム1の長手方向長さの1/5以上1/2以下の範囲にあり、それぞれの搬送スクリュー9a、9bには回転軸に螺旋状の羽根9a2、9b2が設けられ、この羽根9a2、9b2が回転することで現像剤収容部8内の現像剤を排出口8aに向かって搬送し、第一搬送スクリュー9aと、第二搬送スクリュー9bとが連結される部分において、羽根9a2、9b2が設けられていないクリーニング装置。」

2 引用文献1について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(実願昭63-158095号(実開平2-78971号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「転写終了後の感光体1上には、転写に寄与しなかったトナーが残留している。この残留トナーはクリーニング装置14によって感光体1から除去される。除電ランプ15は、残留トナーの除去を行ない易くするために該残留トナー及び感光体1を除電するためのものである。
第2図は第1図におけるクリーニング装置14を詳細に示す図である。図において、ケーシング15内にクリーニングローラ16が収められている。このクリーニングローラ16は、図示のように磁化されており、正時計方向に回転しており、更にその外周表面に毛17が植えられている。
感光体1上に残留するトナーは、クリーニングローラ16によって感光体1から取り除かれる。取り除かれたトナー(すなわち排トナー)は、クリーニングローラ16の左上方に配設されている磁化されたローラである回収ローラ18によってクリーニングローラ16から取り除かれ、更にスクレーパ19によって該回収ローラ18から掻き取られてケーシング下部へ落ちる。
ケーシング下部には、第3図に示すように複数のらせん羽根20が設けられている。これらのらせん羽根20は回転軸22上に連続して固定されており、感光体1側からトナー排出口21に亘って配置されている。回転軸22の右端にはギア、ベルト等の動力伝達系23が付設されており、この動力伝達系23の働きによって回転軸22が回転する。回転軸22の回転によりらせん羽根20が回転し、これにより、感光体1側にある排トナーが徐々にトナー排出口21へ運搬される。トナー排出口21の下には排トナー回収容器24が配設されており、トナー排出口21から排出される排トナーがこの容器24内に収容される。
らせん羽根20の外径は、トナー排出口21側のものd2が感光体1側のものd1に比べて大きくなっている。仮にらせん羽根20の径を全て均等にしておくと、感光体1側のらせん羽根20によって排トナーがトナー排出口21側へ運ばれた時に、トナー排出口21の付近で排トナーが詰まってしまい、その結果、排トナーがケーシング15、あるいはサイドカバー25からあふれ出てしまうおそれがある。これに対し、本実施例のようにトナー排出口21側のらせん羽根20の径を大きくしておけば、該部における排トナーの運搬能力が大きくなるので、排トナーがあふれ出る心配がない。」(第6頁第12行?第8頁第17行)

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献1には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「転写終了後の感光体1上に残留しているトナーを、感光体1から除去するクリーニング装置14であって、
ケーシング15内にクリーニングローラ16が納められており、感光体1上に残留するトナーは、クリーニングローラ16によって感光体1から取り除かれ、取り除かれた排トナーは、磁化されたローラである回収ローラ18によってクリーニングローラ16から取り除かれ、更にスクレーパ19によって該回収ローラ18から掻き取られてケーシング下部へ落ち、
ケーシング下部には、複数のらせん羽根20が設けられ、これらのらせん羽根20は、回転軸22上に連続して固定されており、感光体1側からトナー排出口21に亘って配置されており、回転軸22の回転によりらせん羽根20が回転し、これにより、感光体1側にある排トナーが徐々にトナー排出口へ運搬され、トナー排出口21の下に配設された排トナー回収容器24に収容され、
らせん羽根20の外径は、トナー排出口21側のものd2が感光体1側のものd1に比べて大きくなっており、トナー排出口21側のらせん羽根20の径を大きくしておくことで、該部における排トナーの運搬能力が大きいクリーニング装置14。」

3 引用文献2について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-186137号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0016】
中間転写ベルト8に、順次、一次転写された4色のトナー像は、転写部T2へ搬送されて、記録材Pに二次転写される。転写部T2を通過して中間転写ベルト8に残留した転写残トナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去される。」

イ 「【0027】
<ベルトクリーニング装置>
次に中間像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング装置13について、図2及び図3を用いて説明する。
【0028】
図2(a)に示すように、クリーニング部材であるクリーニングブレード31は、回動中心34において回動可能に支持されており、押圧バネ35によって中間転写ベルト8に対して押圧されている。なお、図2(a)において、38は中間転写ベルト8から除去したトナーが開口上下縁部から漏れるのを防止するために、中間転写ベルト8の幅方向に当接して設けられたトナー漏れ防止シートである。
【0029】
クリーニング装置13は、図2(b)に示すように、中間転写ユニット50と結合するように取り付けられている。具体的には、図2(b)に示すように、ブレード回動軸36が板金で構成した保持部材37にカシメによって締結されていて、ブレード回動軸36はクリーニングブレード31の回動中心34に嵌合している。さらに、保持部材37は張架ローラの1つであり、中間転写ベルト8にテンションを付与するテンションローラ11を支持する軸受54を支持している。そして、軸受54はバネ55により図2(b)の矢印R1の方向へ押されることによって保持部材37が押され、これによりテンションローラ11が押されて中間転写ベルト8にテンションがかかる構成になっている。
【0030】
ここで、ブレード回動軸36がカシメられる穴と軸受54を支持する穴は、ベルト幅方向の両端共に同一の型で形成されており、クリーニングブレード31とテンションローラ11の相対位置が両端で変わらないように構成されている。なお、前述したクリーニング装置支持構成の説明は、ベルト幅方向の一方端側(本体手前側)についてであるが、ベルト幅方向他方端側(本体奥側)についても同一の構成となっている。
【0031】
二次転写後に中間転写ベルト8に残留したトナーはベルトの回転によって、ベルトクリーニング装置13に運ばれる。そして、ベルトクリーニング装置13内のクリーニングブレード31によって残トナーがかきとられ、図3(a)及び図3(b)に示すように、トナー搬送部材である搬送スクリュー30によってベルトクリーニング装置13の奥へと搬送される。そして、ベルトクリーニング装置13内の開口部41より自由落下にて、トナー回収部であるトナー回収容器40へと落下して回収される。
【0032】
(搬送スクリュー)
ここで、クリーニングブレード31部によって除去されたトナーをトナー回収容器40へ搬送する搬送スクリュー30について説明する。
【0033】
本実施形態の搬送スクリュー30は、線材を螺旋状にした回転可能なスクリューとして構成されている。そして、図4に示すように、クリーニング装置13の手前から奥側(長手方向)までの大半の箇所は搬送スクリューピッチはCで構成されていて、残りがピッチBで構成されている。クリーニングブレード31は、スクリューのピッチC領域にしか存在せず、ピッチBの領域には重ならないよう構成している。また、スクリューの内径をφAとしたとき、C<A<Bという関係になっている。
【0034】
すなわち、本実施形態の搬送スクリュー30は、スクリューの回転軸方向において、画像形成領域ではスクリューの内径Aよりも小さいピッチCに設定され、その下流の画像形成領域外ではスクリューの内径Aよりも大きなピッチBに設定されている。なお、ここでいう画像形成領域とは、搬送スクリュー30によるトナー搬送方向において、中間転写ベルト8上にトナー像が形成される最大範囲をいう。
【0035】
クリーニングブレード31によって中間転写ベルト8から除去したトナーが凝集しやすいトナーである場合、搬送スクリュー30で搬送している間にスクリュー内径Aと同程度のトナーの球ができることがある。このような凝集したトナー球はスクリューピッチが前記Cのままであると、トナー回収容器40への開口部41近傍において、搬送スクリュー30の内部に滞留してしまい、これがきっかけでベルトクリーニング装置13内がトナーで満杯になるおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態では、搬送スクリュー30の回転軸方向において、非画像形成領域にあっては、搬送スクリュー30のスクリューピッチを前記Cからスクリュー内径よりも大きなピッチBに設定している。これにより、開口部41の近傍では内径Aと同程度のトナー球がスクリュー内部にあっても、これがピッチ間から確実に開口部41に落下する。これにより、凝集したトナーがスクリュー内部に滞留することなく、トナー回収容器40へと回収される。」

ウ 「【0041】
上記のように、画像形成領域においてはスクリューピッチをスクリュー内径よりも小さく設定してトナー搬送量を安定させる。また、非画像形成領域においてはスクリューピッチをスクリュー内径よりも大きく設定することで、トナー搬送量の安定よりも凝集したトナー球を確実に落下させるものである。」

エ 「【図2】(a)



オ 図2からは、搬送スクリュー30が、中間転写ベルト8に対向するように配置されることが看取できる。

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「転写部T2を通過して中間転写ベルト8に残留した転写残トナーを除去する、ベルトクリーニング装置13であって、
中間転写ベルト8から除去したトナーが開口上下縁部から漏れるのを防止するために、中間転写ベルト8の幅方向に当接して設けられたトナー漏れ防止シート38を有し、
ベルトクリーニング装置13内のクリーニングブレード31によって残トナーがかきとられ、トナー搬送部材である搬送スクリュー30によってベルトクリーニング装置13の奥へと搬送され、そして、ベルトクリーニング装置13内の開口部41より自由落下にて、トナー回収部であるトナー回収容器40へと落下して回収され、
搬送スクリュー30は、中間転写ベルト8に対向するように配置され、スクリューの回転軸方向において、画像形成領域ではスクリューの内径Aよりも小さいピッチCに設定され、その下流の画像形成領域外ではスクリューの内径Aよりも大きなピッチBに設定されている、ベルトクリーニング装置30。」

4 引用文献4について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2009-134169号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0044】
図8は、搬送方向下流側ほどトナー回収コイル65の搬送能力を上げる構成の一例の説明図である。
図8に示すように、クリーニング装置6では、トナー回収コイル65として平板形状の断面を有するコイルを用い、このコイルピッチをトナー排出口68aに近づくに従い、ピッチを長くしている。具体的には、トナー回収コイル65の搬送方向(図8中の矢印E方向)について、上流側のピッチP1に対して下流側のピッチP2の方が大きくなるようにトナー回収コイル65を形成する。
搬送方向下流側ほどピッチを広くする構成としては、ピッチ幅を徐々に広くする構成でも良いし、ある長さごとにピッチ幅を変えていってもかまわない。また、コイル断面も円断面でも、樹脂成型品であっても同様の効果が得られる。
本実施形態のクリーニング装置6では、トナー回収コイルの搬送方向上流側端部でピッチ幅を6[mm]、下流側端部でピッチ幅を8[mm]としている。この関係は、実際の装置において、トナー回収搬送路68内の廃トナー量を上流側、下流側で比較してバランスをとるのが適当である。
また、図7を用いて説明した蓋部68cを備える構成と、図8を用いて説明したトナー回収コイル65の搬送方向下流側ほどピッチ幅を広げる構成とを組み合わせることにより、不要物が溢れる現象をより確実に防止することができ、転写残トナー等の不要物を効率的に排出することができる。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献4には、トナー回収コイルの搬送方向上流側端部でピッチ幅を6[mm]、下流側端部で8[mm]とすることで、転写残トナー等の不要物を効率的に排出する」という技術的事項が記載されている。

5 引用文献5について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2012-42789号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0039】
図10は、本発明に従う廃トナー回収容器22の第6の実施形態を示している。図示のように、廃トナー回収容器22内に回収容器の一方の側面とこれに対向する他方の側面にわたって延在する廃トナー搬送部材としての容器内搬送部材23を取り付け、その取り付け箇所の近傍であって容器内搬送部材23よりも下側にトナー量検知手段としての満杯検知センサ24を、さらにその下側にトナー量検知手段としてのニア満杯検知センサ25を設置している。検知センサ24,25は廃トナー回収容器22の一方の側面に設けられている。本実施形態では、容器内搬送部材23は、廃トナー回収口27の真下の搬送方向切り替え位置26から検知センサ24,25から離れる側の遠方側搬送部材30と、搬送方向切り替え位置26から検知センサ24,25に近づく側の近傍側搬送部材31で構成されており、遠方側搬送部材30は廃トナー19を検知センサ24,25から離れる側に搬送し、近傍側搬送部材31は廃トナー19を検知センサ24,25に近づく側に搬送する。遠方側搬送部材30と近傍側搬送部材31は、軸と螺旋状体からなるスクリューとして構成され、遠方側搬送部材30は近傍側搬送部材31よりも大きく構成されており、具体的には、遠方側搬送部材30のスクリュー直径が近傍側搬送部材31のスクリュー直径よりも大きく構成されている。このようにして、遠方側搬送部材30の軸方向の廃トナー搬送力が近傍側搬送部材31の軸方向の廃トナー搬送力よりも高く設定されている。すなわち、廃トナー回収口27から検知センサ24,25に近づく側には、廃トナー回収口27から検知センサ24,25から離れる側よりも、軸方向の廃トナー搬送力のより小さい近傍側搬送部材31が配置されている。
【0040】
スクリュー直径を大きくすることに代えてまたは加えて、スクリューピッチを大きくすることで、スクリューが1回転したとき進む距離も大きくなり、廃トナー搬送力を増大させることができる。また、スクリュー条数やスクリュー角度などを変更することも考えられる。前述のように、容器内搬送部材23の回転駆動により、遠方側搬送部材30によって廃トナー19は、中央部から検知センサ24,25から離れる側に向かって軸方向に搬送され、近傍側搬送部材31によって廃トナー19は、中央部から検知センサ24,25に向かって軸方向に搬送される。これにより、図示のように、先ず検知センサ24,25から離れる側に遠方側搬送部材30の高さを超えるほど十分な量の廃トナーを充填し、その後検知センサ24,25の近傍側に廃トナーを充填することになるので、回収容器22の空きスペースを極力低減させ、廃トナー充填率を上昇させることができるとともに、回収容器22の満杯を確実に検知することができる。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献5には、「遠方側搬送部材30のスクリュー直径を、近傍側搬送部材31のスクリュー直径よりも大きく構成し、このようにして、遠方側搬送部材30の軸方向の廃トナー搬送力が近傍側搬送部材31の軸方向の廃トナー搬送力よりも高く設定することができ、スクリュー直径を大きくすることに代えてまたは加えて、スクリューピッチを大きくすることで、スクリューが1回転したとき進む距離も大きくなり、廃トナー搬送力を増大させることができ、また、スクリュー条数やスクリュー角度などを変更することも考えられる」という技術的事項が記載されているものと認められる。

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「感光体ドラム1」は、本願発明1の「表面にトナー像を担持可能な像担持体」に相当する。

イ 引用発明の「感光体ドラム1に残留した現像剤」は、本願発明1の「像担持体の表面に残留するトナー」に相当する。

ウ 引用発明の「クリーニング装置」は、感光体ドラム1に残留した現像剤を回収して、排出口8aへ搬送するので、本願発明1の「残留トナー搬送装置」に相当する。

エ 引用発明においては、感光体ドラム1に残留した現像剤は、クリーニングブレード7によって掻き取られて現像剤収容部8に回収されており、そのためには、現像剤収容部8の内部に、感光体ドラム1に残留した現像剤を回収するための「開口」が必要であることは自明である。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置され、記録材に転写されずに前記像担持体の表面に残留した残留トナーを回収する回収開口」を有する点で共通する。

オ 引用発明の「搬送スクリュー9」は、感光体ドラム1から回収した現像剤を現像剤収容部8内の長手方向一方側から他方側へ感光体ドラム1の長手方向に沿って搬送するものであり、現像剤収容部8には、感光体ドラム1に残留した現像剤が回収される。
そして、「搬送スクリュー9」が、搬送方向上流側の第一搬送スクリュー9aと下流側の第二搬送スクリュー9bを連結したものであり、搬送スクリュー9全体のうち、上流側に位置する第二搬送スクリュー9bの長さは、感光体ドラム1の長手方向長さの1/5以上1/2以下の範囲にあることを踏まえると、引用発明の「第一搬送スクリュー9a」と「第二搬送スクリュー9b」の少なくとも一部と、両者の連結部分が、「感光体ドラム1」のトナー像が形成される領域と対向する領域に配置されることは明らかである。
そして、上記エで検討した「開口」の存在も踏まえると、本願発明1の「第1搬送部」と、引用発明の「第一搬送スクリュー9a」と「第二搬送スクリュー9b」の「感光体ドラム1」のトナー像が形成される領域と対向する部分及び「第一搬送スクリュー9a」と「第二搬送スクリュー9b」の連結部分を合わせた部分とは、「前記回収開口を介して前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置される」「第1搬送部」である点で共通する。

カ また、引用発明の「搬送スクリュー9」は、回収した現像剤を、排出口8aへ搬送するものであるから、「搬送スクリュー9」の少なくとも一部は、排出口8aと対向する領域に配置されることもまた明らかである。
しかるに、引用発明の「搬送スクリュー9」のうち、排出口8aと対向する部分が、「感光体ドラム1」のトナー像が形成される領域と対向していないことは技術的にみて明らかであるから、引用発明の「搬送スクリュー9」は、「感光体ドラム1」のトナー像が形成される領域と対向する部分と、「感光体ドラム1」のトナー像が形成される領域と対向しない部分とを備えるものである。
したがって、本願発明1の「第2搬送部」と、引用発明の「搬送スクリュー9」の「感光体ドラム1」のトナー像が形成される領域と対向しない部分とは、「前記第1搬送部よりも前記残留トナーの搬送方向下流側の、前記像担持体のトナー像形成領域と対向しない領域であって、前記残留トナーを前記残留トナー搬送装置の外部へ排出する排出口側に配置され」る「第2搬送部」である点で共通する。

キ 引用発明の「搬送スクリュー9」は、螺旋状の羽根9a2、9b2が設けられ、この羽根9a2、9b2が回転することで現像剤収容部8内の現像剤が搬送されることから、本願発明1の「第1搬送部」と、引用発明の「搬送スクリュー9」とは、「前記回収開口から回収された前記残留トナーを搬送する」「螺旋状羽根で構成される」点でも共通する。
また、本願発明1の「第2搬送部」と、引用発明の「搬送スクリュー9」も、「螺旋状羽根で構成される」点で共通する。

ク 引用発明においては、「現像剤には研磨剤が含有されており、現像剤収容部8に回収した現像剤が回転する感光体ドラム1の表面と摺擦することで感光体ドラム1の表面に付着した微細な異物等を除去するようにしている」が、研磨剤を含有した現像剤が、感光ドラム1の表面と摺擦すれば、感光体ドラム1の表面が研磨されるものと解され、また、現像剤収容部8内で現像剤が搬送されれば、搬送スクリュー9と、上記エで検討した「開口」との間で、現像剤が対流することは明らかである。
したがって、引用発明の「現像剤には研磨剤が含有されており、現像剤収容部8に回収した現像剤が回転する感光体ドラム1の表面と摺擦することで感光体ドラム1の表面に付着した微細な異物等を除去するようにしている」ことは、本願発明1の「搬送部により搬送される前記残留トナーが前記回収開口と」「螺旋状羽根の外周端部との間に形成される空間内で対流することにより前記トナー像形成領域を研磨する」ことに相当する。

ケ 上記アないしクから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。

[一致点]
「表面にトナー像を担持可能な像担持体の表面に残留するトナーを搬送する残留トナー搬送装置であって、
前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置され、記録材に転写されずに前記像担持体の表面に残留した残留トナーを回収する回収開口と、
前記回収開口を介して前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置され、前記回収開口から回収された前記残留トナーを搬送する螺旋状羽根で構成される第1搬送部と、
前記第1搬送部よりも前記残留トナーの搬送方向下流側の、前記像担持体のトナー像形成領域と対向しない領域であって、前記残留トナーを前記残留トナー搬送装置の外部へ排出する排出口側に配置され、螺旋状羽根で構成される第2搬送部と、
を有し、
前記搬送部により搬送される前記残留トナーが前記回収開口と前記螺旋状羽根の外周端部との間に形成される空間内で対流することにより前記トナー像形成領域を研磨する残留トナー搬送装置。」

コ そして、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1の「第1螺旋状羽根」は、「外径」が「一定である」のに対して、引用発明の「羽根9a2、9b2」は、外径が一定であるのか否かが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1の「第1螺旋状羽根」は、「回転軸に沿った離間ピッチが一定である」のに対して、引用発明の「羽根9a2、9b2」は、感光体ドラム1に対向する部分において、羽根が設けられていない部分があり、回転軸に沿った離間ピッチが一定であるとはいえない点。

[相違点3]
本願発明1の「第2搬送部」は、「前記第1搬送部よりも前記残留トナーの搬送量に関する搬送能力が高い第2螺旋状羽根」で構成されるのに対して、引用発明においては、残留トナーの搬送量に関する搬送能力の違いが特定されていない点。

(2) 相違点に対する判断
事案に鑑みて、相違点2について判断する。
引用発明は、長手方向に均一な搬送力をもつ搬送スクリューを回転させて長手方向の一方側から他方側へ現像剤を搬送して排出口から排出する場合、長手方向の下流側では上流側から現像剤が搬送されて滞留するが、上流側では滞留せず、このため、感光体ドラムの長手方向において、前記下流側では研磨剤による研磨効果が得られるが、上流側では研磨剤による研磨効果が低下することを課題としている。
そして、当該課題を解決するために、引用発明は、感光体ドラム1に対向する部分において、搬送スクリュー9は、下流側の第一搬送スクリュー9aと上流側の第二搬送スクリュー9bと連結して、それぞれ独立して回転可能とし、上流側の第二搬送スクリュー9bの駆動制御を行うことで現像剤収容部8内の現像剤の滞留を制御するものであって、下流側の第一搬送スクリュー9aは常に一定の所定速度で正回転させて現像剤を排出口8aへ搬送し、一方、上流側の第二搬送スクリュー9bは第一搬送スクリュー9aと同じ速度で回転させるが、回転方向は現像剤量に応じて正回転駆動又は逆回転駆動させるという構成を採用したものである。
そうすると、引用発明において、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bとを独立して回転可能となるように連結するという構成に代えて、引用文献1、2等に記載された単一の搬送スクリューを採用すると、上述の課題を解決することができなくなるから、このような構成の変更には阻害要因が存在するというべきである。
また、技術的にみて、羽根9a2の端部と羽根9b2の端部との間には、隙間を設けざるを得ないから、引用発明において、第一搬送スクリュー9aと第二搬送スクリュー9bとを独立して回転可能となるように連結するという構成を採用する限りは、搬送スクリュー9のうち感光体ドラム1に対向する部分における羽根の離間ピッチを一定にすることはできない。
よって、引用発明に基づいて、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項を導き出すことは、当業者であっても容易になし得たということはできない。

(3) 小括
以上のとおりであるから、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9は、本願発明1を、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
請求項1に対する原査定の拒絶の理由は、引用文献3に記載された発明に対して、引用文献1又は2に記載された技術的事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかし、上記第4で検討したとおり、引用文献3に記載された発明に基づいて、請求項1に係る発明をなすことは、当業者であっても容易でない。
また、請求項2ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接に引用しているから、請求項1に係る発明が、容易に発明をすることができたものでない以上、請求項2ないし9に係る発明も、やはり、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由通知について
1 当審においては、平成30年9月18日にされた手続補正で補正された明細書、特許請求の範囲及び図面に対して、以下の拒絶理由を通知した。

(1) 特許法第36条第6項第1号について
請求項1の「前記残留トナーを搬送することにより、前記残留トナーで前記トナー像形成領域を摺擦する」という記載は、単に、残留トナーが搬送されて、残留トナーがその搬送方向に沿ってトナー形成領域と摺擦するだけの態様を含む記載となっているが、このような態様は、明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。

(2) 特許法第36条第6項第2号について
ア 請求項1の「所定量」なる記載、いかなる量を特定するのか明確でない点。
イ 請求項1の「回収開口」の配置箇所が明確でない点。
ウ 請求項1の「前記像担持体との対向部において」という文言が、何を修飾するのか明確でない点。
エ 請求項1の「搬送能力が高い」とは、どのような状態を特定するのか明確でない点。
オ 請求項9の「像担持体の表面を研磨させるための速度」が、いかなる速度を特定するものであるのか明確でない点。

(3) 特許法第36条第4項第1号について
請求項4の記載と、明細書及び図面の記載が対応しておらず、明細書及び図面において、当業者が、請求項4に係る発明を実施できる程度の開示がされていない点。

2 上記1の拒絶理由に対して、本件補正により、
(1) 請求項1に「前記第1搬送部により搬送される前記残留トナーが前記回収開口と前記第1螺旋状羽根の外周端部との間に形成される空間内で対流することにより前記トナー像形成領域を研磨する」という記載が追加されたことで、上記1(1)の拒絶理由が解消され、
(2) 請求項1の記載から「所定量」の文言が削除されたことで、上記1(2)アの拒絶理由が解消され、
(3) 請求項1の「回収開口」について、「前記像担持体のトナー像形成領域と対向する領域に配置され」という記載が追加されたことで、上記1(2)イの拒絶理由が解消され、
(4) 請求項1の「第1搬送部」について、「前記像担持体との対向部において、」という記載が削除されるとともに、「前記回収開口を介して」という記載が追加されたことで、上記1(2)ウの拒絶理由が解消され、
(5) 請求項1の「搬送能力が高い」が、「搬送量に関する搬送能力が高い」と補正されたことで、上記1(2)エの拒絶理由が解消され、
(6) 請求項9が削除されたことで、上記1(2)オの拒絶理由が解消され、
(7) 請求項4の「第2搬送部」について、「回収開口」が「排出口」と補際されたことで、上記1(3)の拒絶理由が解消され、
上記1の拒絶理由が全て解消された。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願は拒絶することはできない。
また、当審において通知した拒絶理由によっても、本願は拒絶することができない。
そして、ほかに本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-21 
出願番号 特願2016-110786(P2016-110786)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 536- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 輝雄  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 塚本 丈二
清水 康司
発明の名称 残留トナー搬送装置及び画像形成装置  
代理人 特許業務法人中川国際特許事務所  

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