• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1355796
審判番号 不服2017-18153  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-07 
確定日 2019-10-09 
事件の表示 特願2015-255737「光制御装置、それを含む透明表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 72816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月28日(パリ条約による優先権主張2015年10月6日(以下「優先日」という。)、韓国)の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成28年 9月23日付け :拒絶理由通知書
平成29年 3月29日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 8月 3日付け :拒絶査定(同年8月8日送達)
平成29年12月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月 31日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 8日 :意見書・手続補正書の提出

第2 本願発明
特許請求の範囲の請求項1?19に係る発明は、平成31年4月8日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載されたとおりのものであって、そのうち、請求項1、13及び19に記載された発明は、以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」及び「本願発明3」という。)。

「【請求項1】
第1の基板;
前記第1の基板と向かい合う第2の基板;
前記第2の基板と向かい合う前記第1の基板の一面上に配置された第1の電極;
前記第1の基板と向かい合う前記第2の基板の一面上に配置された第2の電極;
前記第1の電極と前記第2の電極との間の空間を区画するために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極上に配置されて接着層により前記第2の電極に接着され、透明物質からなる隔壁;
前記第1の電極と前記第2の電極との間の距離を維持するために前記第1の電極と前記第2の電極との間で前記隔壁から区画されて分割される空間に配置され、透明物質からなる複数のカラムスペーサー;
前記第1の電極の一面及び前記隔壁上に配置される第1の配向膜;
前記第1の基板と向かい合う前記第2の電極の一面上に配置される第2の配向膜;及び
前記隔壁及び前記複数のカラムスペーサーによって区画される空間に配置される液晶;
を含み、
前記第1の配向膜と前記第2の配向膜は前記隔壁上で互いに接着し、
前記隔壁が前記第2の配向膜と接する第1の幅は、前記隔壁が前記第1の電極と接する第2の幅より大きい、
光制御装置。」

「【請求項13】
第1の基板の一面上に第1の電極を形成する段階;
第2の基板の一面上に第2の電極を形成する段階;
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、透明物質からなる複数の隔壁を形成し、前記隔壁は、前記第1の電極上に配置されて接着層により前記第2の電極に接着される段階;
前記第1の電極と前記第2の電極との距離を維持するために前記第1の電極と前記第2の電極及び各隔壁の間に、透明物質からなる複数のカラムスペーサーを形成する段階;
前記第1の電極の一面及び前記隔壁上に第1の配向膜を形成し、前記第1の基板と向かい合う前記第2の電極の一面上に第2の配向膜を形成し、前記第2の配向膜は、前記隔壁上で前記第1の配向膜と接着する段階;及び
前記隔壁及び前記複数のカラムスペーサーで区画される空間に液晶を注入する段階;
を含み、
前記隔壁を形成する段階は、前記第2の配向膜と接する該隔壁の第1の幅が前記第1の電極と接する該隔壁の第2の幅より大きくなるように該隔壁を形成する段階を含む、
光制御装置の製造方法。」

「【請求項19】
第1の基板の一面上に第1の電極を形成する段階;
第2の基板の一面上に第2の電極を形成する段階;
前記第1の電極上に前記第1の電極と前記第2の電極との距離を維持するための透明物質からなる複数のカラムスペーサーを形成する段階;
前記第1の基板と前記第2の基板との間に光硬化性モノマーを充填する段階;
複数の隔壁を形成するための所定の領域に光を照射し、光硬化性モノマーを硬化させることによって、透明物質からなる複数の隔壁を、接着層により前記第2の電極に接着するように前記第1の電極上に形成する段階;及び
前記第1の電極の一面及び前記隔壁上に第1の配向膜を形成し、前記第1の基板と向かい合う前記第2の電極の一面上に第2の配向膜を形成し、前記第2の配向膜は、前記隔壁上で前記第1の配向膜と接着する段階;
を含み、
前記隔壁を形成する段階は、前記第2の配向膜と接する該隔壁の第1の幅が前記第1の電極と接する該隔壁の第2の幅より大きくなるように該隔壁を形成する段階を含む、
光制御装置の製造方法。」

第3 拒絶の理由
平成30年10月31日に当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。

この出願の請求項1?22に係る発明は、この出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2002-14633号公報
2.国際公開第2008/023416号
3.特開2007-179051号公報(周知技術を示す文献)
4.特開昭59-69737号公報(周知技術を示す文献)
5.特開昭54-84999号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【0017】第2の液晶パネル4は、第1の液晶パネル2の各色表示層6と同様に、透明材料からなる上側基板20と下側基板22と、これら上側基板20と下側基板22とを接着支持するための樹脂構造物24と、基板20、22及び樹脂構造物24の間に充填された液晶26を有する。また、上側基板20の下面全体及び下側基板22の上面全体には、上側電極28及び下側電極30がそれぞれ形成されている。さらに、上側基板20の上面及び下側基板22の下面には、上側偏光板32及び下側偏光板34がそれぞれ取付けられている。これら偏光板32、34の偏向方向は直交している。
【0018】・・・略・・・
【0019】各色表示層6は、その表示層6の液晶14を挟持する信号電極16、走査電極18間に印加される電圧に応答して、可視光を透過する光透過状態から特定の波長の可視光を選択的に反射する選択反射状態へ、あるいは逆に、選択反射状態から光透過状態へと切り替わる。したがって、特定の色表示層6を選択反射状態とし、図2の上方から第1の液晶パネル2に向けて自然光等の白色光を照射すると、選択反射状態の色表示層6が特定波長の可視光を反射し、これが各色の表示として観察される。色表示層6が光透過状態にあるときは、入射光が該色表示層6を透過する。このため、表示しようとする色に相当する色表示層6を選択反射状態とし、少なくともこの色表示層6よりも観察者側にある色表示層6を光透過状態とすることにより、所望の色の表示を行うことができる。また、全ての色表示層6を光透過状態とすれば、後述するように、第2の液晶パネル4が光吸収状態のとき黒表示となり、第2の液晶パネル4が光透過状態のとき入射光は液晶パネル2、4を透過し、必要に応じて、液晶表示装置1の背面にある背景を観察することができる。
【0020】及び【0021】・・・略・・・
【0022】第2の液晶パネル4の液晶26には、ツイステッドネマチック(TN)液晶が使用されている。このため、従来からよく知られているように、第2の液晶パネル4は、液晶26を挟持する電極28、30間に電圧が印加されない状態では、可視光(波長約400?700nmの範囲)を透過する光透過状態となり、上記電極28、30間に所定の電圧が印加されると、可視光を遮断する光吸収状態になる。
【0023】・・・略・・・
【0024】・・・略・・・一方、駆動IC46は、第2の液晶パネル4の上側及び下側基板28、30に所定の電圧を印加し、これにより、第2の液晶パネル4を光遮断状態にする。この結果、液晶表示装置1は表示を行う。
【0025】・・・略・・・一方、駆動IC46は第2の液晶パネル4の上側及び下側基板28、30に電圧を印加せず、これにより、第2の液晶パネル4を光透過状態にする。この結果、液晶表示装置1の前面(観察側)から液晶表示装置1の背面にある背景を観察することが可能となる。
【0026】上記実施形態では、第2の液晶パネル4にはTN液晶が用いられたが、ゲスト・ホスト(GH)液晶を利用して液晶パネルの光透過状態及び光吸収状態を切替えることもできる。
【0027】図4は、第2の液晶パネル4’の液晶26’にGH液晶が使用された液晶表示装置1’の断面図を示す。本実施形態では、GH液晶のホストとしてネマチック液晶50を用いる。また、ゲストとして用いられる黒色の二色性色素52は、該色素に入射する可視光に関して、色素分子の長軸方向と平行な振動方向を有する成分を吸収する。さらに、観察側に上側偏光板32のみが設けられ、この偏光板32を通過した直線偏光の振動方向が図面左右方向になるようにする。
【0028】電極28、30間に電圧を印加しない場合、図4(a)に示すように、ネマチック液晶50及び二色性色素52が偏光板32に垂直な方向に配列させるように第2の液晶パネル4’を構成する。このとき、第2の液晶パネル4’は光を透過する。一方、電極28、30間に所定の電圧を印加すると、図4(b)に示すように、ネマチック液晶50及びこれに従って二色性色素52が上側偏光板28に平行な方向(図面左右方向)に配列する。この結果、二色性色素52は光を吸収するので、第2の液晶パネル4’は光吸収層として機能する。
【0029】図5(a)に示すように、電極28、30間に電圧を印加しない場合、ネマチック液晶50が不規則に配列するように第2の液晶パネル4’を構成してもよい。この状態では、二色性色素52も不規則に配列しているので、二色性色素52は光を吸収し、したがって第2の液晶パネル4’は光吸収層として機能する。一方、電極28、30間に所定の電圧を印加すると、図5(b)に示すように、ネマチック液晶50及びこれに従って二色性色素52が偏光板32に垂直な方向に配列し、第2の液晶パネル4’は光を透過する。

(2)「【0030】B.利用形態
(1)利用形態1(ショーケース)
図6は、液晶表示装置1の第1の利用形態を示す図である。この利用形態は、例えばデパートや美術館などで取り扱う商品、美術品(物品60)のショーケース62に液晶表示装置を利用したものである。・・・略・・・したがって、図6(a)に示すような表示及び遮光を兼ねた状態(例えば、前面において物品60の画像64、解説66等を表示し、上面、側面、背面では光を遮断する。)と、図6(b)に示すようにショーケース62全面を透過にし、物品60を全方向から観察できる状態とに切替えることができる。・・・略・・・
【0031】・・・略・・・
【0032】外部光に長時間曝さない方が好ましい物品60を収容する場合など、図6(a)を通常の状態にしておき、操作キーなどで図6(b)の状態に切換えて物品60を観察できるようにしてもよい。・・・略・・・
【0033】逆に、図6(b)を通常の状態にして物品60を常に観察できるようにし、物品60の内容を知りたいときに、操作キーなどで図6(a)の状態に切換えて解説66等を表示させてもよい。
【0034】(2)利用形態2(パーティション)
・・・略・・・この利用形態は、仕切り(パーティション)68の窓部70に、2層の液晶パネル構成を採用したものである。したがって、図7(a)に示すように窓部70を通常の透過状態にして、仕切り68の奥を観察できる状態と、図7(b)に示すように窓部70に何からの表示を行って、仕切り68の奥を観察できない状態とに切替えることができる。
【0035】・・・略・・・
【0036】(3)利用形態3(窓部への表示)
図8は、液晶表示装置1の第3の利用形態を示す図である。この利用形態は、電車など公共交通機関の適当な窓部74に、2層の液晶パネル構成を採用したものである。・・・略・・・
【0037】及び【0038】・・・略・・・
【0039】ドア76の窓枠には、照明(フロントライト)82を設けるとよい。液晶表示装置を照明することで表示を見やすくする。また、通常は、乗客の視界を損なわないように、窓部74は透明状態にしておくが、乗客の所望により表示可能なようにドア76に操作キー又はスイッチ84を設け、これらの操作に基づいて透明状態と表示とを切換えるようにしてもよい。
【0040】・・・略・・・
【0041】(4)利用形態4(装置内部の確認を可能とするディスプレイ)
・・・略・・・図10の利用形態は、冷蔵庫86のドア88に2層の液晶パネル構成を採用したものである。
【0042】図に示す例では、液晶表示装置は、ドア88を構成する硬質の透光性プラスチックパネル上に貼り付けられている。駆動IC等の表示制御部を含む回路基板は、ドア88の内部に実装されている。表示状態の切換えは、操作キー90やタッチパネルをドア88に設け、これらの操作に基づいて行うようにすればよい。したがって、操作キー90の操作で冷蔵庫内の様子を確認することができる。操作キー90の操作に連動して一定時間庫内照明をオンするとよい。庫内の様子を確認するとき以外は、冷蔵庫86の筐体の他の部分と同系色の色の表示を行うか、各種の情報(伝言、レシピ、メモ、カレンダーなど)の表示を行うのがよい。」

2 引用発明
上記1から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「透明材料からなる上側基板と下側基板と、
これら上側基板と下側基板とを接着支持するための樹脂構造物と、
上側基板、下側基板及び樹脂構造物の間に充填された液晶と、
上側基板の下面全体及び下側基板の上面全体に形成された、上側電極及び下側電極と、
を有する液晶パネルであって、
液晶パネルは、ネマチック液晶及びこれに従って二色性色素が配列したものであり、所定の電圧の印加によって、光吸収状態と光透過状態とを選択的に切り替えるものである、液晶パネル。」

3 引用文献2の記載
引用文献2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(1)「[0015] 液晶表示素子906は、液晶表示パネルを曲げたり、その表示面を押圧したりすると、それらの動作によって加わる力によって液晶が流動し、表示が変化してしまう。」

(2)「[0032] 液晶表示素子806では、画素領域12の側面が、開口部833を除いて壁面構造体831によって囲まれるため、画素領域12内部の液晶の流動が制限される。このため、液晶表示素子806表示面に押圧力が加わった場合や液晶表示素子806が折り曲げられた場合でも、画素の表示の変化を抑制できる。」

(3)「[0041] 壁面構造体31および第2壁面構造体37は、接着性を有する部材である。壁面構造体31および第2壁面構造体37は、例えばフォトレジストで形成される。

(4)「[0050] 壁面構造体31は、ブラックマトリクス36および下基板9(または走査電極17)の双方に接着されている。」

(5)「[0111] また、画素領域内部に円柱状や角柱状のスぺーサを併設してもよい。このような構成とすれば、液晶の流動を防止できるのに加え、画素の変形を小さくできるという相乗効果も見込まれる。」

(6)図14及び図15からは、他の隔壁から分離されている形態の壁面構造体が把握できる。

第5 対比
本願発明1と引用発明を対比する。
1 引用発明の「下側基板」、「上側基板」、「第1の電極」、「第2の電極」及び「液晶」は、それぞれ本願発明1の「第2の基板」、「第1の基板」、「第2の電極」及び「第1の電極」に相当する。
そして、引用発明の「下側基板」と「上側基板」とは向き合うものであるので、引用発明は、本願発明1の「第1の基板」、「前記第1の基板と向かい合う第2の基板」、「前記第2の基板と向かい合う前記第1の基板の一面上に配置された第1の電極」及び「前記第1の基板と向かい合う前記第2の基板の一面上に配置された第2の電極」を備える。

2 引用発明の「樹脂構造物」と本願発明1の「隔壁」とを対比すると、両者は、「前記第1の電極と前記第2の電極との間の空間を区画するため」のものであって、「第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記第1の電極上に配置されて接着層により前記第2の電極に接着された構造物」である点で共通する。
他方、引用発明の「樹脂構造物」が、構造物が壁のようなものであるのか否かや透明物質からなるのか否かは不明である。

3 引用発明の「液晶」と本願発明1の「液晶」とは、「構造物によって区画される空間に配置される液晶」である点で共通する。

4 引用発明の液晶パネルは、電圧の印加によって、光吸収状態と光透過状態とを選択的に切り替えるものであるので、本願発明1の「光制御装置」に相当する。

5 以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点がある。

・一致点
「第1の基板;
前記第1の基板と向かい合う第2の基板;
前記第2の基板と向かい合う前記第1の基板の一面上に配置された第1の電極;
前記第1の基板と向かい合う前記第2の基板の一面上に配置された第2の電極;
前記第1の電極と前記第2の電極との間の空間を区画するために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極上に配置されて接着層により前記第2の電極に接着された構造物;
前記構造物によって区画される空間に配置される液晶;
を含む、光制御装置。」

・相違点1
本願発明1では、構造物が「透明物質からなる隔壁」であるのに対し、引用発明では、構造物が壁のようなものであるのか否かや透明物質からなるのか否かが不明である点。

・相違点2
本願発明1が、「第1の電極と前記第2の電極との間の距離を維持するために前記第1の電極と前記第2の電極との間で前記隔壁から区画されて分割される空間に透明物質からなる複数のカラムスペーサー」を有するのに対して、引用発明では、そのような構造を有しているか否か不明である点。

・相違点3
本願発明1が、「前記第1の電極の一面及び前記隔壁上に配置される第1の配向膜」及び「前記第1の基板と向かい合う前記第2の電極の一面上に配置される第2の配向膜」を含み、「前記第1の配向膜と前記第2の配向膜は前記隔壁上で互いに接着する」のに対し、引用発明が第1及びの配向膜を備えるか否か不明である点。

・相違点4
本願発明1では、「前記隔壁が前記第2の配向膜と接する第1の幅は、前記隔壁が前記第1の電極と接する第2の幅より大きい」のに対し、引用発明ではそのようなことが不明である点。

第6 判断
(1)上記相違点1及び2について
本願発明1において、隔壁とカラムスペーサは、協働して、第1の電極と第2の電極との間の空間を区画するものであるので、相違点1及び2について合わせて検討する。
上記第4の3によれば、引用文献2には、液晶表示素子において、画素領域内部の液晶の流動を制限するために、画素領域を壁面構造体によって囲み、画素領域内部に円柱状や角柱状のスペーサを併設することにより、液晶の流動を防止する技術が記載されている。
そして、重力に起因した液晶の流動により、その分布が不均一となることは、例えば、引用文献3の段落0007に記載されているように、当業者にとって明らかな事項であることを踏まえれば、引用発明において、液晶の流動を防止することを目的として、引用文献2に記載された技術を採用し、引用発明の構造物を引用文献2に記載された技術のような壁面構造体及びスペーサとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

また、引用文献1の段落0030,0034,0039及び0042等の記載によれば、引用発明を使用した液晶表示装置においては、液晶表示装置を通して内部を観察する際や、液晶表示装置が窓部に採用された際の視界の妨げとならないように、当該液晶表示装置を透明状態とすることが記載されているから、引用発明に上記引用文献2に記載された技術を適用する際に、樹脂構造物が視界の妨げとならないよう、壁面構造体及びスペーサをも透明物質からなるものとすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。

(2)上記相違点3について
液晶パネルにおいて、第1の基板の隔壁上に設けられた第1の配向膜と、第2の基板上に設けられた第2の配向膜とを設けることは、例えば、特開2007-57817号公報(段落0045,図1,図2(a)等を参照。)、特開2010-191256号公報(段落0031、図1等を参照。)及び特開2001-166317号公報(段落0057?0061、図2等を参照。)に見られるように、本願の優先日前に周知である。
そして、引用発明も液晶を制御する制御装置であるのであるから、引用発明において、上記周知技術の第1の配向膜と第2の配向膜を設けるとともに、両者を隔壁上で互いに接着することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

(3)上記相違点4について
本願発明1では、隔壁上には第1の配向膜があり、第2の配向膜と接することはないので、「隔壁が前記第2の配向膜と接する第1の幅」とは、どの部分を意味するのか定かではないが、隔壁の上下端の幅を比較した場合に、いずれか一方の幅が他方の幅よりも大きい隔壁は、例えば、上記(3)で示した特開2010-191256号公報(図1、図6等を参照。)等を参照。)及び特開2006-71750号公報(図6等を参照。)に見られるように、本願の優先日前に広く知られている。
そうすると、引用発明に引用文献2の技術を適用する際に、隔壁を上記広く知られた形状とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明1の作用効果についても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術から、当業者が予測し得るものである。

(5) 審判請求人の主張について
ア 平成30年4月8日の意見書における審判請求人の主張の概要
上記意見書において審判請求人は、本願発明は、従来技術に対して、下記のような有利な作用効果を奏するから、単なる「設計事項」以上の技術的意義を備えている旨を主張している。

(ア)その幅を約10μm程度で形成することで遮光率に優れた光制御装置を得ることができ、
(イ)ハニカム構造のような多角形形状を有する隔壁において、各側面部の接点近傍に生ずる残膜の形成による視認性不良を防止することができ(本願の図9参照)、且つ、
(ウ)接着膜を別途に必要としない。

イ 上記主張について検討する。
(ア)本願発明1について
上記主張は、上記意見書に記載されているとおり、本願の明細書の段落0100?0104の記載によれば、ポリマーウォールの製造方法、すなわち、UV光の照射によって液晶物質の各光硬化性モノマーを硬化させることによって隔壁を形成し、第1の基板と第2の基板とを合着させる製造方法を用いて、光制御装置が製造された場合の作用効果であると認められるが、本願発明1は物の発明であって、光制御装置として、そのような製造方法に対応するような発明特定事項を含んでいない。
また、そもそも、本願発明1においては、上記ア(ア)及び(イ)の主張のような、隔壁の幅、ハニカム構造のような多角形形状については特定されていないし、上記ア(ウ)の主張と異なり、本願発明1の隔壁は、接着層により接着される段階を有していることは、明らかである。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

(イ)本願発明2及び3について
上記主張は、上記(ア)のとおり、ポリマーウォールの製造方法を前提にしたものであるため、念のため、製造方法の発明である本願発明2および3についても検討する。

c 本願発明2について
本願発明2においては、上記ア(ア)及び(イ)の主張のような、隔壁の幅、ハニカム構造については特定されていないし、上記ア(ウ)の主張と異なり、本願発明2の隔壁は、接着層により接着される段階を有していることは、明らかである。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

また、本願発明2は、「前記隔壁を形成する段階は、前記第2の配向膜と接する該隔壁の第1の幅が前記第1の電極と接する該隔壁の第2の幅より大きくなるように該隔壁を形成する段階を含む、」との発明特定事項を含むが、隔壁上には第1の配向膜が形成されるのであるから、第2の配向膜と隔壁が接することはない。
したがって、本願発明2は、どのようにして第2の配向膜と隔壁が接するのか理解できないから、不明確でなものであって、特許請求の範囲の請求項13の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

b 本願発明3について
本願発明3においては、上記ア(ア)及び(イ)で記載されたような、隔壁の幅、ハニカム構造についても特定されていないし、上記ア(ウ)の主張と異なり、本願発明3の隔壁は、接着層により接着される段階を有していることは、明らかである。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

また、本願発明3は、「前記隔壁を形成する段階は、前記第2の配向膜と接する該隔壁の第1の幅が前記第1の電極と接する該隔壁の第2の幅より大きくなるように該隔壁を形成する段階を含む、」との発明特定事項を含むが、隔壁上には第1の配向膜が形成されるのであるから、第2の配向膜と隔壁が接することはない。
また、透明物質からなる複数の隔壁を形成する段階の後に、どのようにすれば、隔壁上に配向膜を形成し得るのか理解できない。
したがって、本願発明3は不明確であるから、特許請求の範囲の請求項19の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

c したがって、上記主張は採用できないし、本願発明2および3は直ちに特許できるものでもない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-10 
結審通知日 2019-05-14 
審決日 2019-05-28 
出願番号 特願2015-255737(P2015-255737)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯崎 忠昭  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
西村 直史
発明の名称 光制御装置、それを含む透明表示装置及びその製造方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ