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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23Q |
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管理番号 | 1355859 |
審判番号 | 不服2018-16324 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-06 |
確定日 | 2019-11-05 |
事件の表示 | 特願2016-18374「ワーククランプ装置、およびワーククランプ装置を備える加工システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月10日出願公開、特開2017-136659、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年2月2日 本願出願 平成30年1月25日付け 拒絶理由通知 平成30年3月28日 意見書、手続補正書 平成30年6月28日付け 拒絶理由通知 平成30年8月28日 意見書、手続補正書 平成30年9月10日付け 拒絶査定 平成30年12月6日 審判請求 第2 原査定の概要 本願についての拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1及び引用文献2-4に示される「一方の部材から突出するように設けられた連結シャフトと、他方の部材に形成され、前記連結シャフトを摺動可能に受容する穴と、前記連結シャフトから外方に突出して前記穴を画定する壁面と係合する突出位置と、該突出位置から内方へ後退する後退位置との間で移動可能となるように前記連結シャフトに設けられた爪部と、を有する着脱装置」についての周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.実願平5-46988号(実開平7-17441号)のCD-ROM 2.特開昭61-117087号公報 3.特開平3-43174号公報 4.欧州特許出願公開第0471603号明細書 第3 本願発明 本願請求項1-5に係る発明は、平成30年8月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。また、請求項2ないし5に係る発明を、「本願発明2」ないし「本願発明5」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 ブラケットと、 前記ブラケットとの間でクランプ部材を挟み込む第1の位置と、前記ブラケットとの間の前記クランプ部材の挟み込みを解除するように前記第1の位置から退避した第2の位置との間で移動するように前記ブラケットに対して可動に設けられた可動部と、 前記ブラケットおよび前記可動部に着脱され、前記可動部が前記第1の位置に配置されているときにワークをクランプして固定する前記クランプ部材と、 前記ブラケットと前記クランプ部材とを互いに着脱可能に連結する第1の着脱装置と、 前記可動部と前記クランプ部材とを互いに着脱可能に連結する第2の着脱装置と、を備え、 前記第1の着脱装置は、 前記ブラケットと前記クランプ部材とのいずれか一方から突出するように設けられた第1の連結シャフトと、 前記ブラケットと前記クランプ部材との他方に形成され、前記連結シャフトを摺動可能に受容する第1の穴と、 前記第1の連結シャフトから外方へ突出して前記第1の穴を画定する壁面と係合する突出位置と、該突出位置から内方へ後退する後退位置との間で移動可能となるように前記第1の連結シャフトに設けられた第1の爪部と、を有し、 前記第2の着脱装置は、 前記可動部と前記クランプ部材とのいずれか一方から突出するように設けられた第2の連結シャフトと、 前記可動部と前記クランプ部材との他方に形成され、前記第2の連結シャフトを摺動可能に受容する第2の穴と、 前記第2の連結シャフトから外方へ突出して前記第2の穴を画定する壁面と係合する突出位置と、該突出位置から内方へ後退する後退位置との間で移動可能となるように前記第2の連結シャフトに設けられた第2の爪部と、を有する、ワーククランプ装置。」 第4 引用文献1及び引用発明 1.引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「マシニングセンタにおけるワーク固定装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、マシニングセンタでの各種ワークの切削加工に用いるワークの固定装置に関する。」 イ 「 【0007】 【考案が解決しようとする課題】 マシニングセンタによる加工だけでなく、多品種・少量生産の製品の場合には、製品仕様に応じてワーク固定装置によるワークの着脱の段取りがその度に変更される。 【0008】 このような段取り作業では、加工しようとするワークに対応した受けブロック52及び押圧ブロック53の交換が行われる。ところが、・・・一つには安全性の面からこれらのブロック52,53の間の距離が大きくとれず、このためボルト52にL形の工具を掛けることができない場合がある。したがって、交換作業にはシリンダ51bによって押圧ブロック53を後退させることが必要である。 【0009】 また、受けブロック52及び押圧ブロック53は、この押圧ブロック53の進退方向の長さがワークの大きさに従って様々であり、これらのブロック52,53の離れた側の端面の距離も変化する。そして、押圧ブロック53は連結棒53bによってシリンダ51bに連接されているので、ブロック52,53どうしの端面の間の距離を適正に保つためには、この連結棒53bの長さもそれぞれのブロック52,53の長さに対応したものに変更しなければならない。 【0010】 この連結棒53bの交換は、・・・ボルト51aを抜いてマウント51をマシニングセンタから取り外し、その後連結棒53bをシリンダ51bから切り離す。そして、連結棒53bを押圧ブロック53から取り外して交換する作業となり、交換作業はかなり長くなる。 【0011】 このように、従来のワーク固定装置では、受けブロック52と押圧ブロック53の交換に手間と時間がかかり、稼働率の低下の要因となる。特に、多品種・少量生産の場合には生産性に大きな影響を与えやすく、また手作業による工程も多いので作業の安全性の面での問題も残る。 【0012】 本考案において解決すべき課題は、ワークの仕様変更に際しての交換作業が速やかに安全に行えるワーク固定装置を提供することにある。」 ウ 「【0013】 【課題を解決するための手段】 本考案は、マシニングセンタの定盤の上に設置されワークを同軸配置の一対のクランパによって2方向から締め付けて保持するワーク固定装置であって、一方のクランパを他方のクランパに対して進退動作させる駆動機構に連結軸を介して連接すると共に、前記連結軸を分離可能な複数の部材によって構成し、他方のクランパは相手のクランパから離れる方向に付勢する付勢手段にピン接合を介して連接され、前記付勢手段による付勢力解除のとき前記ピン接合を解離可能としてなることを特徴とする。」 エ 「【0014】 【作用】 駆動機構側に連接したクランパは連結軸を分離することによって駆動機構から取り外すことができ、装着も同様に連結軸の組立てを介して行われる。 【0015】 付勢手段側にピン接合したクランパは、付勢力が解除されたときにピンを抜くことで取り外すことができ、工具を用いてクランパを取り外す必要がなくなる。また、相手のクランパとの間を大きくとらなくても取り外せるので、クランパを保持している部材を移動させたりする作業も不要となる。」 オ 「【0018】 一方のベースブロック1にはクランパ3との間に中間フランジ1aを備えると共に、クランパ3の移動方向に軸線を持つロッド1bを組み込む。このロッド1bは空気圧式のシリンダ1cに連接されて進退動作可能であり、その操作は上面に設けたハンドル1dによって行なう。 【0019】 ロッド1bの先端はクランパ3の中まで入り込み、このクランパ3に上から差し込んだピン3aが貫通してロッド1bに係合する。このため、シリンダ1cの作動によってロッド1bを図において左側へ動かすと、クランパ3はピン3aを介して中間フランジ1aに強く押し付けられて固定される。また、ロッド1bを右側に移動させると、中間フランジ1aへの押圧力がなくなってピン3aを上に抜くことができ、これによってクランパ3をベースブロック1から取り外すことができる。 【0020】 また、他方のベースブロック2にはクランパ3を左右に移動させるための空気圧式のシフトシリンダ5を設け、これによって軸線方向にストローク動作する連結軸6をクランパ4との間に連接する。 【0021】 図3は連結軸6を分解して示す概略図であり、第1軸6a,第2軸6b及びコネクタ6cの3部材によって構成されている。 【0022】 第1軸6aはシフトシリンダ5の作動部に直結され、第2軸6bとの対向面側に係合スリット6a-1を形成したものである。また、第2軸6bは図1に示すようにクランパ4の中に入り込み係合スクリュー4aによって一体に拘束されるもので、第1軸6aとの対向面に同様に係合スリット6b-1を備えている。更に、コネクタ6cはその軸線方向の両端に第1,第2軸6a,6bの係合スリット6a-1,6b-1にきっちりと嵌まり込む接合座6c-1,6c-2を形成したものである。 【0023】 このような3部材の連結軸6とすることで、コネクタ6cの接合座6c-1,6c-2の間の距離が異なるものを多数用意しておけば、連結軸6の軸線長さを変えることができる。したがって、ベースブロック1,2を固定配置していても、寸法形状の異なるワークに対してクランパ3,4の間の距離を変更して対応させることができる。」 カ 「【0028】 以上の構成において、ワークに対応するようにクランパ3,4を交換するときには、図1のようにこれらのクランパ3,4の間を開けておき、シリンダ1cによってロッド1bを右側へ少し移動させる。これにより、クランパ3の中間フランジ1aへの押圧がなくなって、ピン3aを抜けるようになり、クランパ3をベースブロック1から取り外すことができる。 【0029】 また、連結軸6において、コネクタ6cを第1軸6aから又は第2軸6bをコネクタ6cから外すことによって、クランパ4をベースブロック2から抜き取ることができる。 【0030】 このようにクランパ3はシリンダ1cの作動によって取り外しできるので、クランパ4との間が狭くて工具が掛けられなかった従来構造に比べると、シフトシリンダ5を備えたベースブロック2を図1において右側へ移動させる等の手間が不要となる。 【0031】 クランパ3,4を組み込むときには、ワークの仕様変更に対応したクランパ3,4を選択すると共に、必要であれば軸線の長さが異なるコネクタ6cを準備する。そして、取り外しのときと逆の要領でベースブロック2側のクランパ4を連結軸6によってシフトシリンダ5に接続し、その後クランパ3をピン3aによっ てロッド1bに接続する。更に、シリンダ1cによってロッド1bを図1において左側に動かしてクランパ3を中間フランジ1aに突き当てて固定する。 【0032】 以上のように、クランパ3,4の交換作業ではシリンダ1cの操作と連結軸6部分の分解と組立てだけで済み、従来例に比べると作業が簡単になると共に交換時間も大幅に短縮される。」 キ 「【0033】 【考案の効果】 本考案では、クランパの交換作業はクランパを連結している部材のみからの着脱によって行なえるので、ベースブロックを動かす等の手間がなくなり、交換作業を簡単に短時間で済ますことができる。このため、作業負担の軽減とマシニングセンタの稼働率の向上が可能となり、生産性の向上が可能となる。」 2.引用発明 上記1.ア?キ及び図1?3から、クランパ3は、ベースブロック1にロッド1bを介して係合されるものであり、このクランパ3に対し、ベースブロック2に設けられたシフトシリンダ5に連接する連結軸6が軸線方向にストロークすることで、連結軸6に連接されるクランパ4が、クランパ3との間で挟み込みをする第1の位置又は退避した第2の位置を採り得るものであることが理解できる。 ベースブロック1とクランパ3との着脱に関し、シリンダ1cによって作動するロッド1bの先端がクランパ3の中まで入り込み、このクランパ3に上から差し込んだピン3aが貫通してロッド1bに係合するようになっており、シリンダ1cの作動によってロッド1bを図1において左側(相手方のクランパ(クランパ4)から離れる方向)へ動かすと、クランパ3はピン3aを介して中間フランジ1aに強く押し付けられて固定され、ロッド1bを右側(相手方のクランパに近接する方向)に移動させると、中間フランジ1aへの押圧力がなくなってピン3aを上に抜くことができるようにされて、ベースブロック1と前記クランパ3とを互いに着脱可能に連結する第1の着脱する構成をなしていることが理解できる。また、ベースブロック2とクランパ4との着脱に関し、シフトシリンダ5の作動部に直結された第1軸6aと、クランパ4に係合スクリュー4aによって一体に拘束される第2軸6bと、第1軸6aと第2軸6bとの間に、係合スリット6a-1,6b-1に嵌り込む複合座6c-1、6c-2を有するコネクタ6cとで連結軸6を構成し、コネクタ6cを第1軸6aから外す、又は第2軸6bをコネクタ6cから外すことで、クランパ4をベースブロック2から抜き取ることができるようにして、ベースブロック2と前記クランパ4とを互いに着脱可能に連結する第2の着脱する構成をなしていることが理解できる。 したがって、本願発明1に倣って整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ベースブロック1と、 前記ベースブロック1との間でクランパ3、4を挟み込む第1の位置と、前記ベースブロック2との間の前記クランパ3、4の挟み込みを解除するように前記第1の位置から退避した第2の位置との間で移動するように前記ベースブロック1に対して可動に設けられた、ベースブロック2に設けられたシフトシリンダ5に連接する連結軸6と、 前記ベースブロック1および前記連結軸6に着脱され、前記連結軸6が前記第1の位置に配置されているときにワークをクランプして固定する前記クランパ3、4と、 前記ベースブロック1と前記クランパ3とを互いに着脱可能に連結する第1の着脱する構成と、 前記連結軸6と前記クランパ4とを互いに着脱可能に連結する第2の着脱する構成と、を備え、 前記第1の着脱する構成は、 シリンダ1cによって作動するロッド1bの先端がクランパ3の中まで入り込み、このクランパ3に上から差し込んだピン3aが貫通してロッド1bに係合するようになっており、シリンダ1cの作動によってロッド1bを図1において左側(相手方のクランパ(クランパ4)から離れる方向)へ動かすと、クランパ3はピン3aを介して中間フランジ1aに強く押し付けられて固定され、ロッド1bを右側(相手方のクランパに近接する方向)に移動させると、中間フランジ1aへの押圧力がなくなってピン3aを上に抜くことができるようにされて、ベースブロック1と前記クランパ3とを互いに着脱可能に連結するものであり、 前記第2の着脱する構成は、 シフトシリンダ5の作動部に直結された第1軸6aと、クランパ4に係合スクリュー4aによって一体に拘束される第2軸6bと、第1軸6aと第2軸6bとの間に、係合スリット6a-1,6b-1に嵌り込む複合座6c-1、6c-2を有するコネクタ6cとで連結軸6を構成し、コネクタ6cを第1軸6aから外す、又は第2軸6bをコネクタ6cから外すことで、クランパ4をベースブロック2から抜き取ることができるようにするものである、 マシニングセンタにおけるワーク固定装置。」 第5 対比・判断 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「ベースブロック1」は、本願発明1における「ブラケット」に、同じく「クランパ3」、「クランパ4」は、「クランプ部材」に相当する。また、引用発明における「マシニングセンタにおけるワーク固定装置」は、本願発明1における「ワーククランプ装置」に相当する。 イ 引用発明における「ベースブロック2に設けられたシフトシリンダ5に連接す連結軸6」は、ベースブロック1(ブラケット)に対し、第1の位置と第2の位置との間で移動するように前記ベースブロック1(ブラケット)に対して可動に設けられたものであるから、本願発明1の「可動部」に相当する。 ウ 引用発明の「第1の着脱する構成」と、本願発明1の「第1の着脱装置」とは、ベースブロック1(ブラケット)と前記クランパ3(クランプ部材)とを互いに着脱可能に連結するものである限りにおいて一致し、同じく引用発明の「第2の着脱する構成」と、本願発明1の「第2の着脱装置」とは、連結軸6(可動部)と前記クランパ4(クランプ部材)とを互いに着脱可能に連結するものである限りにおいて一致する。 以上を踏まえると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点が認められる。 (一致点) 「ブラケットと、 前記ブラケットとの間でクランプ部材を挟み込む第1の位置と、前記ブラケットとの間の前記クランプ部材の挟み込みを解除するように前記第1の位置から退避した第2の位置との間で移動するように前記ブラケットに対して可動に設けられた可動部と、 前記ブラケットおよび前記可動部に着脱され、前記可動部が前記第1の位置に配置されているときにワークをクランプして固定する前記クランプ部材と、 前記ブラケットと前記クランプ部材とを互いに着脱可能に連結する第1の着脱装置と、 前記可動部と前記クランプ部材とを互いに着脱可能に連結する第2の着脱装置と、 を備える、ワーククランプ装置。」 (相違点) 相違点1:第1の着脱装置に関し、本願発明1は、「前記ブラケットと前記クランプ部材とのいずれか一方から突出するように設けられた第1の連結シャフトと、前記ブラケットと前記クランプ部材との他方に形成され、前記連結シャフトを摺動可能に受容する第1の穴と、前記第1の連結シャフトから外方へ突出して前記第1の穴を画定する壁面と係合する突出位置と、該突出位置から内方へ後退する後退位置との間で移動可能となるように前記第1の連結シャフトに設けられた第1の爪部と、を有」するものであるのに対し、引用発明は、「シリンダ1cによって作動するロッド1bの先端がクランパ3の中まで入り込み、このクランパ3に上から差し込んだピン3aが貫通してロッド1bに係合するようになっており、シリンダ1cの作動によってロッド1bを図1において左側(相手方のクランパ(クランパ4)から離れる方向)へ動かすと、クランパ3はピン3aを介して中間フランジ1aに強く押し付けられて固定され、ロッド1bを右側(相手方のクランパに近接する方向)に移動させると、中間フランジ1aへの押圧力がなくなってピン3aを上に抜くことができるようにされて、ベースブロック1と前記クランパ3とを互いに着脱可能に連結するもの」である点。 相違点2:第2の着脱装置に関し、本願発明1は、「前記可動部と前記クランプ部材とのいずれか一方から突出するように設けられた第2の連結シャフトと、前記可動部と前記クランプ部材との他方に形成され、前記第2の連結シャフトを摺動可能に受容する第2の穴と、前記第2の連結シャフトから外方へ突出して前記第2の穴を画定する壁面と係合する突出位置と、該突出位置から内方へ後退する後退位置との間で移動可能となるように前記第2の連結シャフトに設けられた第2の爪部と、を有」するものであるのに対し、引用発明は、「シフトシリンダ5の作動部に直結された第1軸6aと、クランパ4に係合スクリュー4aによって一体に拘束される第2軸6bと、第1軸6aと第2軸6bとの間に、係合スリット6a-1,6b-1に嵌り込む複合座6c-1、6c-2を有するコネクタ6cとで連結軸6を構成し、コネクタ6cを第1軸6aから外す、又は第2軸6bをコネクタ6cから外すことで、クランパ4をベースブロック2から抜き取ることができるようにするもの」である点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点2から検討する。 相違点2について、引用発明は、ベースブロック2とクランパ4とは、連結軸6を介して連結されるものであるところ、当該連結軸6が、第1軸6a、第2軸6b及びコネクタ6cとの3部材で構成することで、コネクタ6cの接合座6c-1、6c-2間の距離が異なるものを用意することで、寸法形状の異なるワークに対してクランパ3,4の距離を変更して対応することができるようにしたもの(第4の1.オ)である。 一方、原査定において周知技術の例として示された引用文献2ないし4は、いずれも、「一方の部材から突出するように設けられた連結シャフトと、他方の部材に形成され、前記連結シャフトを摺動可能に受容する穴と、前記連結シャフトから外方に突出して前記穴を画定する壁面と係合する突出位置と、該突出位置から内方へ後退する後退位置との間で移動可能となるように前記連結シャフトに設けられた爪部と、を有する着脱装置」が示されているといえるが、同時に、当該爪部は、連結シャフト内において、当該シャフトの軸方向に移動する部材(引用文献2の可動体7、引用文献3のアクチュエータ5、引用文献4のコントロールロッド32の先端部40)が、爪部の後端縁を押すことによって、爪部を外方に突出させることが示されたものである。 このことから、仮に引用発明の3部材からなる連結軸6の構成について、周知技術のような爪部による着脱装置を用いるような改変をするとすれば、爪部を作動させるために、連結軸6の内部に連結軸の軸方向に貫通して移動する部材を設ける必要があるところ、このような改変は、連結軸のコネクタ6cを、接合座6c-1、6c-2間の距離が異なるものを用意しておき、これを交換することで、寸法形状の異なるワークに対してクランパ3,4の距離を変更して対応することができるという、引用発明の機能を損なうことになるものであるから、阻害要因を有するものといわざるを得ない。 そうすると、上記周知技術の存在にかかわらず、引用発明に、相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者といえども容易に想到し得た程度のものということはできない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし4に示される周知技術に基づいて容易に想到し得るものとはいえない。 そして、本願発明1は、上記相違点1,2に係る構成をともに採用することによって、第1のクランプ部材80および第2のクランプ部材82を交換するだけで、ワーククランプ装置40の段替えを行うことができるので、加工すべきワークの種類に対応して、クランプ部材の段替えを簡単に行うことができる(本願明細書段落【0108】)という効果を得るものである。 また、本願発明2、3は、本願発明1を引用するものであって、本願発明1の全ての特定事項を含むものであり、上記相違点1,2を有するものであるから、本願発明1についてと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし4に示される周知技術に基づいて容易に想到し得るものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2-4に示される周知技術に基づいて容易に想到し得るものとはいえない。また、本願発明4,5は拒絶査定の対象とはなっていない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-10-21 |
出願番号 | 特願2016-18374(P2016-18374) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B23Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山本 忠博 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
見目 省二 小川 悟史 |
発明の名称 | ワーククランプ装置、およびワーククランプ装置を備える加工システム |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 廣瀬 繁樹 |