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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1355871 |
審判番号 | 不服2018-8786 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-27 |
確定日 | 2019-10-29 |
事件の表示 | 特願2014-513337「情報配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日国際公開、WO2013/164911、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)4月30日(優先権主張 平成24年5月2日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 5月29日付け:拒絶理由通知書 平成29年10月 4日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 3月19日付け:拒絶査定 平成30年 6月27日 :審判請求書の提出 平成31年 3月28日付け:拒絶理由通知書(当審拒絶理由) 令和 1年 6月 3日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年3月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2002-342367号公報 2.宮地悟史,「ネット,携帯電話,放送連携サービス・アプリケーション」,電子情報通信学会誌,社団法人電子情報通信学会,2010年12月1日,第93巻第12号,1034頁?1040頁 3.特開2007-264764号公報 4.特開2009-251743号公報 5.特開2010-128815号公報 第3 本願発明 本願請求項1-5に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成31年6月3日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 端末装置と通信可能な情報配信サーバであって、 前記情報配信サーバは、 前記端末装置から前記情報配信サーバへアクセス要求が送信されたときの前記端末装置の位置と時間の情報を、ユーザ履歴情報として記録する履歴情報記録部と、 所定の分析期間分の前記ユーザ履歴情報を分析して、前記端末装置の位置と時間の組み合わせを当該端末装置のユーザの状態に対応づけた状態データベースを生成する状態データベース生成部と、 当該端末装置のユーザの行動パターンを、前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて、分析する行動パターン分析部と、 を備え、 前記ユーザの行動パターンは、当該ユーザが規則性をもってどのような行動をするかを示すものであり、 前記ユーザの状態には、娯楽より仕事のための情報を優先して選択する傾向にある第1の状態と、仕事より娯楽のための情報を優先して選択する傾向にある第2の状態と、が含まれ、 さらに、前記情報配信サーバは、 前記端末装置の現在の位置の情報を受信する受信部と、 前記端末装置の現在の位置と時間に基づいて現在のユーザの状態を判定し、前記判定により得られた前記現在のユーザの状態と前記分析により得られた前記ユーザの行動パターンに応じた情報を前記端末装置へ配信する情報配信部と、 を備えることを特徴とする情報配信サーバ。」 また、本願発明2-5の概要は以下のとおりである。 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明3は、本願発明1の情報配信サーバと端末装置とから構成される「情報配信システム」の発明である。 本願発明4及び5は、それぞれ、本願発明1に対応する「方法」及び「プログラム」の発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付加したものである。 ア 「【0019】図1において、10は情報提供者、20は利用者(端末)、30は情報配信システムであり、情報配信システム30は地域情報収集モジュール31、配信情報収集モジュール32、個人情報登録モジュール33、行動履歴収集モジュール34、行動パターン解析モジュール35、配信処理モジュール36、情報蓄積部37で構成され、情報蓄積部37は環境情報データベース(以下、DBと省略する)371、地図情報DB372、配信対象条件DB373、配信情報DB374、個人情報DB375、行動履歴DB376、行動パターンDB377を備える。」 イ 「【0041】 【行動履歴収集モジュール】行動履歴収集モジュール34は、利用者端末20から定期的に送られてくる位置情報を含む利用者の行動履歴を収集し、収集した行動履歴に含まれる位置情報と環境情報DB371を元に該利用者の環境情報を取得して行動履歴を生成し、行動履歴DB376に格納する。行動履歴が行動内容を含まない場合は地図情報DB372を元に行動内容を推定して行動履歴を生成し、行動履歴DB376に格納する。」 ウ 「【0048】図10は行動履歴DB376の一例を示しており、 ・行動履歴ID ・日付時刻 ・利用者コード ・位置 ・天候 ・気温 ・行動内容 の情報を登録、管理する。」 エ 「【0051】 【行動パターン解析モジュール】行動パターン解析モジュール35は、行動履歴DB376を元に、利用者毎の行動パターンと、あるカテゴリに属する利用者としての行動パターンと、全利用者に共通する一般的な行動パターンとを解析して行動パターンDB377に格納するモジュールである。」 オ 「【0055】図13において、情報配信システム30は行動履歴DB376を元に利用者コードで分類して各利用者の行動パターンを解析し、行動パターンDB377に格納する。 【0056】情報配信システム30は行動履歴DB376を元に職業、年齢、性別といったカテゴリ別で利用者の行動パターンを解析し、あるカテゴリに属する利用者としての行動パターンとして行動パターンDB377に格納する。 【0057】情報配信システム30は行動履歴DB376を元に分類なしで全利用者の行動履歴から行動パターンを解析し、全利用者に共通する行動パターンとして行動パターンDB377に格納する。 【0058】 【行動パターンDB】行動パターンDB377は行動パターンを管理する。 【0059】図14は行動パターンDB377の一例を示しており、 ・行動パターンID ・利用者コード ・時間帯 ・地域コード ・天候 ・気温 ・行動カテゴリ の情報を登録、管理する。 【0060】例えば、図10において利用者コード0001の行動履歴として行動履歴ID001,002,003を検索し、これらの行動履歴を解析した結果、図14に示す行動パターンID001を得る。 【0061】 【配信処理モジュール】配信処理モジュール36は、利用者端末20から送られる情報配信要求に対して、利用者端末20から送られる位置情報、環境情報DB371から得られる該位置の環境情報、個人情報DB375から得られる該利用者の個人情報、行動パターンDB377から得られる行動パターン、配信対象条件DB373から得られる配信対象条件を元に、該利用者に配信する配信情報を検索し、検索された配信情報を該利用者に配信するモジュールである。 【0062】 【配信処理のフロー】図15のフローチャートに示す順序に従い、図1の構成のもとで配信処理を詳細に説明する。 【0063】図15において、利用者端末20が情報配信要求を情報配信システム30に送信する。これは、利用者のオペレーションや予め設定した時間間隔で利用者端末20が情報配信システム30に対して情報配信の要求を送信する。 【0064】情報配信システム30は利用者端末20から情報配信要求と共に送られた位置情報、環境情報DB371から得られる該位置の環境情報、個人情報DB375から得られる該利用者の職業、年齢、性別、趣味嗜好などの個人情報、行動パターンDB377から得られる行動パターン、配信対象条件DB373から得られる配信対象条件を元に、該利用者に配信する配信情報を検索する。 【0065】もし、配信する情報があれば、検索された配信情報を該利用者端末20に配信する。 【0066】 【配信情報検索の例】図16は配信処理モジュール36において配信情報を検索する例を示す。 【0067】図16において、利用者の現在の位置、時間帯と環境情報DB371から得られる該利用者の周辺の天候、気温を検索キーとして、行動パターンDB377から一致する行動パターンを検索する。 【0068】検索された行動パターンの地域、天候、気温、行動カテゴリを検索キーとして、配信対象条件DB373から一致する配信対象条件を検索し、該当する配信情報IDをキーとして、配信情報DB374から該利用者に配信する配信情報を取得する。」 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「行動履歴収集モジュール34、行動パターン解析モジュール35、配信処理モジュール36、情報蓄積部37等で構成され、前記情報蓄積部37は環境情報DB371、配信対象条件DB373、配信情報DB374、個人情報DB375、行動履歴DB376、行動パターンDB377を備える情報配信システム30であって(【0019】)、 行動履歴収集モジュール34は、利用者端末20から定期的に送られてくる位置情報を含む利用者の行動履歴を収集し、収集した行動履歴に含まれる位置情報と環境情報DB371を元に該利用者の環境情報を取得して行動履歴を生成し、行動履歴DB376に格納し(【0041】)、 行動履歴DB376には、日付時刻、位置、天候、気温、行動内容等の情報が登録、管理され(【0048】)、 行動パターン解析モジュール35は、行動履歴DB376を元に、利用者毎の行動パターンを解析して行動パターンDB377に格納するモジュールであり(【0051】)、 情報配信システム30は、行動履歴DB376を元に利用者コードで分類して各利用者の行動パターンを解析し、行動パターンDB377に格納し(【0055】)、 例えば、行動パターンDB377には、行動パターンID、時間帯、地域コード、天候、気温、行動カテゴリ等の情報が登録、管理され(【0059】)、 配信処理モジュール36は、利用者端末20から送られる情報配信要求に対して、利用者端末20から送られる位置情報、環境情報DB371から得られる該位置の環境情報、個人情報DB375から得られる該利用者の個人情報、行動パターンDB377から得られる行動パターン、配信対象条件DB373から得られる配信対象条件を元に、該利用者に配信する配信情報を検索し、検索された配信情報を該利用者に配信するモジュールであって(【0061】)、 当該配信処理モジュール36は、 利用者の現在の位置、時間帯と該利用者の周辺の天候、気温を検索キーとして、行動パターンDB377から一致する行動パターンを検索し(【0067】)、 検索された行動パターンの地域、天候、気温、行動カテゴリを検索キーとして、配信対象条件DB373から一致する配信対象条件を検索し、該当する配信情報IDをキーとして、配信情報DB374から該利用者に配信する配信情報を取得する(【0068】)、 情報配信システム。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の第1040頁左欄第12行?右欄第13行の記載からみて、当該引用文献2には、「スマートフォンの使用状況から『公私(ビジネスかプライベートか)』を含むユーザの状況を推定し、その状況に適した情報推薦を行う。」という事項が記載されていると認められる。 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の【要約】及び段落【0012】の記載からみて、当該引用文献3には、「ユーザに有益な情報を提供するために、移動端末の移動履歴に基づいてユーザの生活圏を、ユーザの行動情報に基づいてユーザの習慣を、それぞれ特定し、前記生活圏における前記習慣に関する情報を選別する。」という事項が記載されていると認められる。 4.引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0004】?【0009】【0031】の記載からみて、当該引用文献4には、「クライアント装置を有するユーザの状況(仕事中、帰宅中、在宅中等)と心身の状態がクライアント装置内で判定されて、サーバから配信対象のクライアント装置に情報が配信される。」という事項が記載されていると認められる。 5.引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の段落【0009】?【0010】【0052】?【0053】の記載からみて、当該引用文献5には、「複数の携帯端末から取得した移動の統計情報と、特定の携帯端末の移動履歴と、に基づいて、特定の携帯端末の状態(道に迷ってる等)や、次の行動(店舗内に入る等)を予測し、提供すべき機能や情報を決定する。」という事項が記載されていると認められる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明との対比 ア 本願発明1の「情報配信サーバ」に関して 引用発明の『利用者端末20』は、本願発明1の「端末装置」に相当する。そして、引用発明の『情報配信システム』は、前記端末装置と通信可能であることから、本願発明1において端末装置と通信可能である「情報配信サーバ」に相当する。 イ 本願発明1の「履歴情報記録部」に関して 引用発明の情報配信サーバが備える『行動履歴DB376』には、端末装置から定期的に送られてくる位置情報等に基づいて生成された行動履歴である、日付時刻、位置、天候、気温、行動内容等の情報が格納されていることから、引用発明の前記『行動履歴DB376』は、本願発明1の「前記端末装置の位置と時間の情報を、ユーザ履歴情報として記録する履歴情報記録部」に対応する。ただし、引用発明の履歴情報記録部が記録する「位置」と「時間」は、「端末装置から定期的に送られてくる」ものである点で、本願発明1の「端末装置から前記情報配信サーバへアクセス要求が送信されたときの」ものとは相違する。 ウ 本願発明1の「状態データベース生成部」に関して 引用発明では、行動履歴に基づいて利用者毎の『行動パターン』が解析されるものの、前記行動履歴に基づいて、本願発明1に示されるような「ユーザの状態」が解析されるものではないことから、引用発明は、本願発明1の「所定の分析期間分の前記ユーザ履歴情報を分析して、前記端末装置の位置と時間の組み合わせを当該端末装置のユーザの状態に対応づけた状態データベースを生成する状態データベース生成部」に相当する構成を備えていない。 エ 本願発明1の「行動パターン分析部」に関して 引用発明の情報配信サーバが備える『行動パターン解析モジュール35』は、履歴情報記録部に記録されたユーザ履歴情報(日付時刻、位置、天候、気温、行動内容等)を元に『行動パターン』を解析することから、当該『行動パターン解析モジュール35』は、本願発明1の「当該端末装置のユーザの行動パターン」を「分析する」「行動パターン分析部」に対応する。なお、引用発明における前記『行動パターン』とは、本願発明1のように、「当該ユーザが規則性をもってどのような行動をするかを示すもの」であるといえる。 ただし、引用発明の行動パターン分析部は、ユーザの行動パターンを、本願発明1のように、「前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて」分析するもの、ではない。 オ 本願発明1の「受信部」に関して 引用発明の情報配信サーバが備える『配信処理モジュール36』は、端末装置から送られる利用者の現在の位置等に基づいて配信情報を検索して、前記利用者に配信することから、引用発明の情報配信サーバは、本願発明1の「前記端末装置の現在の位置の情報を受信する受信部」に相当する構成を備えているといえる。 カ 本願発明1の「情報配信部」に関して 引用発明の情報配信サーバが備える『配信処理モジュール36』は、端末装置から送られる情報配信要求に対して、検索された配信情報を配信することから、本願発明1の「情報を前記端末装置へ配信する情報配信部」に対応する。ただし、引用発明の情報配信部は、本願発明1のように、「前記端末装置の現在の位置と時間に基づいて現在のユーザの状態を判定」するもの、ではなく、また、引用発明の情報配信部が配信する情報は、本願発明1のように、「前記判定により得られた前記現在のユーザの状態と前記分析により得られた前記ユーザの行動パターンに応じた情報」、ではない。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「端末装置と通信可能な情報配信サーバであって、 前記情報配信サーバは、 前記端末装置の位置と時間の情報を、ユーザ履歴情報として記録する履歴情報記録部と、 当該端末装置のユーザの行動パターンを分析する行動パターン分析部と、 を備え、 前記ユーザの行動パターンは、当該ユーザが規則性をもってどのような行動をするかを示すものであり、 さらに、前記情報配信サーバは、 前記端末装置の現在の位置の情報を受信する受信部と、 情報を前記端末装置へ配信する情報配信部と、 を備えることを特徴とする情報配信サーバ。」 <相違点> <相違点1> 本願発明1の「履歴情報記録部」が記録する、端末装置の位置と時間の情報は、「前記端末装置から前記情報配信サーバへアクセス要求が送信されたときの」情報であるのに対し、引用発明の履歴情報記録部が記録する、端末装置の位置と時間の情報は、情報配信サーバへのアクセス要求とは関係なく、端末装置から定期的に送られてくる情報である点。 <相違点2> 本願発明1の情報配信サーバは、「所定の分析期間分の前記ユーザ履歴情報を分析して、前記端末装置の位置と時間の組み合わせを当該端末装置のユーザの状態に対応づけた状態データベースを生成する状態データベース生成部」を備えているのに対し、引用発明の情報配信サーバは備えていない点。 <相違点3> 本願発明1の行動パターン分析部は、ユーザの行動パターンを、「前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて」分析するのに対し、引用発明の行動パターン分析部は、ユーザ履歴情報(日付時刻、位置、天候、気温、行動内容等)に基づいて分析するものであって、「前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて」分析するものではない点。 <相違点4> 本願発明1の情報配信部は、端末装置の現在の「位置と時間」に基づいて、「現在のユーザの状態」を判定し、当該判定により得られた「現在のユーザの状態」と、「前記分析により得られた前記ユーザの行動パターン」、に応じた情報を端末装置へ配信するのに対し、引用発明の情報配信部は、端末装置の現在の位置と時間と環境情報に基づいて行動パターンを判定し、当該行動パターンが示す地域、天候、気温、行動カテゴリを検索キーとして検索した配信情報を配信するものであって、本願発明1のように、端末装置の現在の「位置と時間」に基づいて「現在のユーザの状態」を判定するもの、ではなく、さらに、端末装置へ配信する情報が、「前記現在のユーザの状態」と、「前記分析により得られた前記ユーザの行動パターン」、に応じた情報ではない点。 (2)相違点についての判断 ア 上記相違点2及び3について検討すると、上記相違点2に係る本願発明1の、情報配信サーバが「所定の分析期間分の前記ユーザ履歴情報を分析して、前記端末装置の位置と時間の組み合わせを当該端末装置のユーザの状態に対応づけた状態データベースを生成する状態データベース生成部」を備えるという構成は、上記「第4」の引用文献2-5にも記載されていない。また、当該構成は公知技術又は周知技術であるともいえない。 さらに、仮に、上記相違点2に係る構成が公知技術や周知技術であったとしても、上記相違点3に係る本願発明1の、行動パターン分析部が、ユーザの行動パターンを「前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて」分析するという構成は、上記「第4」の引用文献2-5にも記載されていない。また、当該構成は公知技術又は周知技術であるともいえない。 イ 上記相違点4について検討すると、上記相違点4に係る本願発明1の情報配信部が、端末装置の現在の「位置と時間」に基づいて、「現在のユーザの状態」を判定し、当該判定により得られた「現在のユーザの状態」と、「前記分析により得られた前記ユーザの行動パターン」、に応じた情報を端末装置へ配信するという構成は、上記「第4」の引用文献2-5にも記載されていない。また、当該構成は公知技術又は周知技術であるともいえない。 ウ 上記ア及びイのとおり、本願発明1は、その他の相違点1について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2及び3について 本願発明2及び3も、情報配信サーバが「所定の分析期間分の前記ユーザ履歴情報を分析して、前記端末装置の位置と時間の組み合わせを当該端末装置のユーザの状態に対応づけた状態データベースを生成する状態データベース生成部」を備えるという構成、行動パターン分析部が、ユーザの行動パターンを「前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて」分析するという構成、及び、情報配信部が、端末装置の現在の「位置と時間」に基づいて、「現在のユーザの状態」を判定し、当該判定により得られた「現在のユーザの状態」と、「前記分析により得られた前記ユーザの行動パターン」、に応じた情報を端末装置へ配信するという構成、と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に示された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明4及び5について 本願発明4及び5は、それぞれ本願発明1に対応する「方法」及び「プログラム」の発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 当審拒絶理由に対する令和1年6月3日の手続補正により、本願発明1-5は、情報配信サーバが「所定の分析期間分の前記ユーザ履歴情報を分析して、前記端末装置の位置と時間の組み合わせを当該端末装置のユーザの状態に対応づけた状態データベースを生成する状態データベース生成部」を備えるという事項、行動パターン分析部が、ユーザの行動パターンを「前記アクセス要求が行われたときの前記ユーザの状態と前記端末装置の位置と時間とに基づいて」分析するという事項、及び、情報配信部が、端末装置の現在の「位置と時間」に基づいて、「現在のユーザの状態」を判定し、当該判定により得られた「現在のユーザの状態」と、「前記分析により得られた前記ユーザの行動パターン」、に応じた情報を端末装置へ配信するという事項を有するものとなっており、上記「第5」で示したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2号について 当審では、請求項1,3-5の「ユーザの行動パターン」という記載の意味が不明確であり、また、前記「ユーザの行動パターン」と「ユーザの状態」との関係及び異同が不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和1年6月3日の手続補正において、請求項1,3-5について「前記ユーザの行動パターンは、当該ユーザが規則性をもってどのような行動をするかを示すものであり、」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第36条第4項第1号について 当審では、請求項1,3-5の「行動パターン」なるものが、上記1のとおり不明確であることに起因して、「行動パターン」がどのようにして「分析」されるのか、発明の詳細な説明には、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとの拒絶の理由を通知しているが、令和1年6月3日の手続補正において、上記1のとおり「行動パターン」が明確化された結果、この拒絶の理由も解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1-5は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-10-15 |
出願番号 | 特願2014-513337(P2014-513337) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q) P 1 8・ 536- WY (G06Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 谷川 智秀 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 田中 秀樹 |
発明の名称 | 情報配信システム |
代理人 | 森田 耕司 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 酒谷 誠一 |
代理人 | 津田 理 |
代理人 | 野本 裕史 |
代理人 | 松野 知紘 |