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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C11B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C11B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C11B 審判 全部申し立て 2項進歩性 C11B |
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管理番号 | 1355934 |
異議申立番号 | 異議2018-700320 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-04-18 |
確定日 | 2019-08-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6216119号発明「組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6216119号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、〔5?7〕、〔8?10〕、〔11?13〕、14について訂正することを認める。 特許第6216119号の請求項1、2、4?14に係る特許を維持する。 特許第6216119号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6216119号の請求項1?14に係る特許(以下、請求項の番号に合わせて「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、平成25年1月18日(パリ条約による優先権主張平成24年(2012年)1月30日、欧州特許庁(EP))に出願され、平成29年9月29日にその特許権の設定登録がされ、同年10月18日にその特許掲載公報が発行されたものである。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年 4月18日 :特許異議申立人(日本香料工業会)によ る請求項1?14に係る特許に対する特 許異議の申立て 同年 7月 5日付け:取消理由通知書 同年10月 9日 :特許権者(シムライズ アーゲー)によ る意見書及び訂正請求書の提出 同年11月22日 :特許異議申立人による意見書の提出 平成31年 1月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 4月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 なお、平成31年4月16日になされた訂正の請求に対して、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが応答はなかった。また、平成30年10月9日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 平成31年4月16日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?4、請求項5?7、請求項8?10及び請求項11?13、並びに請求項14を訂正の単位としてなされたものであり、当該訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下のとおり、適法になされたものと認められる。 1 訂正の内容(訂正事項) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、コハク酸モノメチル(FEMA GRAS 3810)、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」とあるのを、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項2、4についても同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「成分(a)と(b)の重量比が25:75?75:25である」とあるのを、 「成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項2、4についても同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「請求項2または3に記載の組成物」とあるのを、 「請求項2に記載の組成物」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、コハク酸モノメチル(FEMA GRAS 3810)、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」とあるのを、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項6、7についても同様に訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に、 「成分(a)と(b)の重量比が25:75?75:25である」とあるのを、 「成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項6、7についても同様に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、コハク酸モノメチル(FEMA GRAS 3810)、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」とあるのを、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項9、10についても同様に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に、 「成分(a)と(b)の重量比が25:75?75:25である」とあるのを、 「成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項9、10についても同様に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項11に、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、コハク酸モノメチル(FEMA GRAS 3810)、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」とあるのを、 「(b)・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項12、13についても同様に訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11に、 「成分(a)と(b)の重量比が25:75?75:25である」とあるのを、 「成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項12、13についても同様に訂正する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項14に、 「・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、コハク酸モノメチル(FEMA GRAS 3810)、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」とあるのを、 「・・・メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)」に訂正する。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項14に、 「化粧品、医薬品または食品組成物においてメントフランの味の悪さを低減する方法であって、・・・からなる群から選択される少なくとも1種の作用量のメントール化合物を該組成物に添加して改善する方法。」とあるのを、 「メントフラン(a)を含む化粧品、医薬品または食品組成物においてメントフランの味の悪さを低減する方法であって、・・・からなる群から選択される少なくとも1種のメントール化合物(b)を該組成物に添加して改善することを含み、前記成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である方法。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1、5、7、9について 訂正事項1、5、7、9に係る訂正は、成分(b)として択一的に記載されていたメントール化合物の選択肢の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 訂正事項2、6、8、10について 訂正事項2、6、8、10に係る訂正は、明細書の【0023】に記載された「本発明の製剤は、成分(a)および(b)を・・・特に好ましくは40:60?60:40の重量比で含んでよい。」との記載に基づいて、成分(a)と(b)の重量比を「25:75?75:25」から「40:60?60:40」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3) 訂正事項3、4について 訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の【請求項3】を削除するものであり、また、訂正事項4は、択一的に記載されていた引用請求項の一つを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4) 訂正事項11について 訂正事項11に係る訂正は、メントール化合物の選択肢の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5) 訂正事項12について 訂正事項12に係る訂正は、化粧品、医薬品または食品組成物がメントフランを含むものであることを明らかにするとともに、明細書の上記【0023】の記載に基づいて、化粧品、医薬品または食品組成物におけるメントフラン(a)とメントール化合物(b)の重量比を40:60?60:40に限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1?12に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、〔5?7〕、〔8?10〕、〔11?13〕、14について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記のとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明(以下、請求項の番号に合わせて「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」という。)は、平成31年4月16日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 (a)メントフランおよび (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である組成物。 【請求項2】 界面活性剤、油体、乳化剤、真珠光沢ワックス、粘稠度因子、増粘剤、過脂肪剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、UV保護因子、保湿剤、生物起源剤、酸化防止剤、防臭剤、発汗防止剤、フケ防止剤、フィルム形成剤、膨潤剤、防虫剤、セルフタンニング剤、チロシン阻害剤(脱色剤)、ヒドロトロープ、可溶化剤、防腐剤、香油および染料ならびにそれらの混合物からなる群から選択される化粧品添加剤(成分c)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 成分(a+b)および(c)を0.01:99.9?2:98の重量比で含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。 【請求項5】 (a)メントフランおよび (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物、および (c)化粧品用途に許可された担体 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である、化粧品組成物。 【請求項6】 担体は、水、2?6個の炭素原子を含有するアルコール、1?10個の炭素原子および2?4個のヒドロキシル基を含有するポリオールおよび油体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の化粧品組成物。 【請求項7】 スキンケア製品、ヘアケア製品、サンスクリーン製品、口腔ケア製品およびデンタルケア製品からなる群から選択される製品であることを特徴とする、請求項5または6に記載の化粧品組成物。 【請求項8】 (a)メントフランおよび (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物、および (c)医薬品用途に許可された担体 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である、風邪の症状を処置するための医薬品組成物。 【請求項9】 担体は、水、2?6個の炭素原子を含有するアルコール、1?10個の炭素原子および2?4個のヒドロキシル基を含有するポリオールおよび油体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の医薬品組成物。 【請求項10】 トローチ剤(lozenge)、風邪ドロップ剤(cold drop)、シロップ、コールドバームおよびコールドスプレーからなる群から選択される製品であることを特徴とする、請求項8または9に記載の医薬品組成物。 【請求項11】 (a)メントフランおよび (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物、および (c)食品用途に許可された担体 を含み、成分(a)と(b)の重量比が25:75?75:25である、食品組成物。 【請求項12】 担体は、水、エタノールおよびグリセロールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の食品組成物。 【請求項13】 製品は、飲料、乳製品、ベーカリー製品、チューインガムおよびボンボンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11または12に記載の食品組成物。 【請求項14】 メントフラン(a)を含む化粧品、医薬品または食品組成物においてメントフランの味の悪さを低減する方法であって、メントールメチルエーテル、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のメントール化合物(b)を該組成物に添加して改善することを含み、前記成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である方法。」 第4 取消理由の概要 平成31年1月9日付けの取消理由通知(決定の予告)において当審が指摘した取消理由は、概して次のとおりである。 (新規性)本件訂正前の請求項14に係る発明は、下記甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、当該請求項14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第5 上記取消理由についての当審の判断 当審は、上記の新規性に関する取消理由は本件訂正発明14に係る特許に対しては当てはまらない、と判断する。 その理由は、次のとおりである。 1 甲1?3 上記取消理由の根拠とした証拠は、以下のものである。 ・甲第1号証:特開2011-256125号公報 ・甲第2号証:特開2011-132139号公報 ・甲第3号証:特開2007-176856号公報 (以下、甲第1号証等を略して、「甲1」などという。) 2 甲1?3の記載事項 (1) 甲1の記載事項 ・「【請求項1】 (A)アニオン性界面活性剤、 (B)湿潤剤、 (C)有機増粘剤、及び (D)イソプロピルメチルフェノール を含有し、かつ(A)/(D)の質量比が10?150であるイソプロピルメチルフェノール含有歯磨剤組成物が、(E)噴射剤と共にエアゾール容器に充填されてなることを特徴とするエアゾール歯磨剤組成物。 ・・・ 【請求項4】 更に、(F)ベタイン型界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のエアゾール歯磨剤組成物。 【請求項5】 更に、(G)3-オクタノール、3-オクチルアセテート、3-オクタノン、フェンコンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のエアゾール歯磨剤組成物。 【請求項6】 更に、(H)アニスアルデヒドを含有することを特徴とする請求項5記載のエアゾール歯磨剤組成物。」 ・「【0023】 (A)アニオン性界面活性剤の配合量は、発泡性、油溶性成分の可溶化能や口腔粘膜刺激の点から、組成物全体の0.8?5%(質量%、以下同様。)、特に1.0?4%が好ましい。」 ・「【0043】 本発明の歯磨剤組成物には、上記成分に加えて任意成分としてその他の公知の添加剤を配合できる。例えば(A)アニオン性界面活性剤及び(F)ベタイン型界面活性剤以外の界面活性剤、無機増粘剤、研磨剤、甘味剤、防腐剤、(D)イソプロピルメチルフェノール以外の各種有効成分、着色剤、(G)及び〈H〉成分以外の香料、溶剤等を本発明の効果を妨げない範囲で配合でき、これら成分と水とを混合し製造できる。」 ・「【実施例】 【0057】 以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%であり、純分換算した量で示した。 【0058】 ・・・ 香料は表6?12に示す組成の香料組成物A?Iを調製して用いた。なお、下記香料組成物A?I中に3-オクタノール、3-オクチルアセテート、3-オクタノン、フェンコン、及びアニスアルデヒドは含まない。 【0059】 [実施例、比較例] 表1?5に示す組成で歯磨剤組成物の原料を脱気混合して原液を調製した後、これをガラス製のエアゾール試験瓶(70mLサイズ)に約50g充填し、更に表に示す原液:噴射剤の割合(質量比)で(E)成分の噴射剤を封入して、エアゾール歯磨剤組成物を調製した。なお、精製水の配合量は、原液全体で100%となるように調整した。エアゾール歯磨剤組成物について、下記方法で評価した。結果を表1?5に示す。 ・・・ 【0067】 【表1-1】 注:原液とは、(E)成分以外の、歯磨剤組成物に配合される全成分を脱気混合したもの(以下、同様。)。 (【表1-2】?【表1-4】、【表3】?【表5-2】の摘記は省略) 【0076】 ・・・ なお、香料組成物Aを香料組成物B?Iのいずれかに置き換えても、同様の結果が得られた。 以下に処方例を示す。なお、配合成分及びエアゾール試験瓶は上記と同様のものを使用した。 【0077】 [処方例1]歯磨剤組成物 (A)ラウリル硫酸ナトリウム 1.5% (B)ポリエチレングリコール#300 2.5 ソルビット 20 グリセリン 22 (C)キサンタンガム 0.25 (D)イソプロピルメチルフェノール 0.05 (F)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.1 (G)3-オクタノール 0.005 (H)アニスアルデヒド 0.005 フッ化ナトリウム 0.3 トリポリリン酸ナトリウム 1 サッカリンナトリウム 0.3 増粘性シリカ 3 シリカ 5 赤色226号 0.001 青色1号 0.001 酸化チタン 0.4 香料組成物A 1 精製水 残 合計 100.00% 上記組成の歯磨剤組成物の原液をエアゾール試験瓶に充填し、下記割合で(E)成分(噴射剤)を加えエアゾール歯磨剤組成物とした。 原液 95% (E)イソペンタン 3 二酸化炭素 2 合計 100% (A)/(D)の質量比 30 原液:噴射剤=95:5 ([処方例2]?[処方例8]の摘記は省略。) 【0085】 【表6】 ・・・ 【0089】 【表10】 」 (2) 甲2の記載事項 ・「【請求項1】 グルカナーゼ酵素配合の歯磨組成物に、(A)カチオン性ポリマーを0.02?0.2質量%、(B)脂肪酸の炭素数が12?14の脂肪酸アミドプロピルベタインを0.4?1.6質量%、(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースから選ばれる少なくとも1種を0.5?3質量%配合し、かつ(C)成分/(A)成分の質量比を10?100としたことを特徴とする歯磨組成物。」 ・「【0023】 ・・・ 通常、デキストラナーゼ、ムタナーゼは10,000?14,000単位/gのものが好ましく、13,000単位/gのものを使用する場合、その配合量は組成物全体の0.0077?1.54%(質量%、以下同様。)が好適である。」 ・「【実施例】 【0057】 以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。 【0058】 〔実験例1〕 表1?3に示す組成の歯磨組成物(練歯磨)を下記方法で調製し、直径26mm、口部内径8mmのラミネートチューブに充填した。得られた歯磨組成物について、歯垢除去力、デキストラナーゼの安定性、歯ブラシ上での成形性、歯磨き時の泡立ち、製剤の液分離安定性について下記の方法で評価した。結果を表1?3に示す。 【0059】 試験歯磨組成物の調製: 歯磨組成物の調製は、精製水にサッカリンナトリウム、フッ化ナトリウム、(D)成分のピロリン酸塩、トリポリリン酸塩等の水溶性物質を溶解させ、ソルビットを加えた後、別途、ポリエチレングリコール#400に(A)成分のカチオン性ポリマー及び(C)成分のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースを分散させた液を加え、攪拌した。その後、香料、研磨性シリカ、(B)成分の脂肪酸アミドプロピルベタインを順次加え、更に減圧下(5.3kPa)で攪拌し、歯磨組成物を得た。製造にはユニミキサー(FM-SR-25,POWEREX CORPORATION社)を用いた。 【0060】 これら歯磨組成物の調製に用いた各成分は、デキストラナーゼ(第一三共プロファーマ(株)製)、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(セルコートL-200、2%水溶液粘度:150mPa・s、アクゾノベル(株)製)、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(レオガードGP、2%水溶液粘度:350mPa・s、ライオン(株)製)、ヒドロキシエチルセルロース(SE900、1%水溶液粘度:5,000mPa・s、ダイセル化学工業(株)製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(METOLOSE 60SH 4000、2%水溶液粘度:4,000mPa・s、信越化学工業(株)製)、メチルセルロース(METOLOSE SM 4000、2%水溶液粘度:4,000mPa・s、信越化学工業(株)製)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(30%水溶液品、TEGO BETAIN CK,Goldschmidt社製)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(30%水溶液品、アンヒトール20AB(花王(株)製)、ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)、トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)である。更に、その他成分である、無水ケイ酸、増粘性無水ケイ酸、ソルビット(70%水溶液品)、キサンタンガム、ポリエチレングリコール#400、サッカリンナトリウム、フッ化ナトリウム、水については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。形態が水溶液の成分については、表中も含めいずれも純分換算の配合量を示した。香料は、表6に示す香料A?香料Iを、表7?12に示すフレーバー組成を用い作製し、配合した。 ・・・ 【0067】 【表1】 *:表中の配合量は、純分換算の配合量を示す(以下、同様)。 ・・・ 【0077】 【表6】 【0081】 【表10】 」 (3) 甲3の記載事項 ・「【請求項1】 下記の成分(1)、成分(2)、成分(3)及び水を含有する口腔用組成物。 成分(1):ヒドロキシカルボン酸又はその塩 成分(2):香料(a)、(b)及び(c)を含有する香料組成物 香料(a):メントール 香料(b):N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、メントングリセロールケタール、乳酸メンチル、メントキシプロパン-1,2-ジオール、イソプレゴール及びp-メンタン-3,8-ジオールから選ばれる1以上 香料(c):炭素数1?5の脂肪酸のエステル 成分(3):ポリリン酸又はその塩」 ・「【実施例】 【0031】 (i)香料組成物の調製 口腔用組成物に配合される香料組成物として、表1に示す香料成分を用いてミントタイプの香料組成物1?12を配合した。 【0032】 【表1】 【0033】 (ii)口腔用組成物の調製 表1に示す香料組成物を用い、常法に従って表2に示す洗口液を調製した。 ・・・ 【0037】 【表2】 」 3 甲1?3に記載された発明 (1) 甲1に記載された発明 ア 甲1には、「歯磨剤組成物」(発明の名称)に関する記載があり、その【請求項1】、【請求項4】、【請求項5】を直列的に引用する【請求項6】の記載は、整理すると次のとおりである。 「(A)アニオン性界面活性剤、 (B)湿潤剤、 (C)有機増粘剤、及び (D)イソプロピルメチルフェノール 更に、(F)ベタイン型界面活性剤 更に、(G)3-オクタノール、3-オクチルアセテート、3-オクタノン、フェンコンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分、 更に、(H)アニスアルデヒド を含有し、かつ(A)/(D)の質量比が10?150であるイソプロピルメチルフェノール含有歯磨剤組成物が、(E)噴射剤と共にエアゾール容器に充填されてなるエアゾール歯磨剤組成物。」 イ また、甲1の【0043】には、上記した歯磨剤組成物の諸成分に加えて、任意成分としてその他の公知の添加剤を配合できることが記載され、当該その他の公知の添加剤として、上記(G)及び(H)成分以外の香料等が挙げられている。 加えて、【0057】以降に記載された実施例には、具体的な歯磨剤組成物が例示されているところ、「香料」については、【0058】に、「香料は表6?12に示す組成の香料組成物A?Iを調製して用いた。」と記載され、【0085】【表6】には、香料組成物Iとして、メンソフラン:1%(【0023】の記載によれば、質量%、以下同様。)、フレーバー4:5%を含む香料組成物が記載されている。 ここで、当該フレーバー4は、【0089】【表10】によれば、合計13部のうち、メンチルラクテート:1部、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール:1部、メントングリセリンエーテル:1部及びモノメンチルサクシネート:1部を含むものであるから、結局、香料組成物Iには、フレーバー4を構成するメンチルラクテート等が、いずれも0.385%(5%×1部/13部)含まれていることが理解できる。 ウ そうすると、甲1には、香料組成物Iとして、次の香料組成物が記載されているといえる。 「メンソフラン:1%、メンチルラクテート:0.385%、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール:0.385%、メントングリセリンエーテル:0.385%及びモノメンチルサクシネート:0.385%を含む香料組成物」(以下、「甲1発明1」という。) エ また、甲1には、上記【請求項6】に記載されるエアゾール歯磨剤組成物において、上記甲1発明1の香料組成物を含み、さらに、甲1に記載される歯磨剤組成物の全ての実施例、処方例に残部として含まれる水を含む 、次のものが記載されているといえる。 「(A)アニオン性界面活性剤、 (B)湿潤剤、 (C)有機増粘剤、及び (D)イソプロピルメチルフェノール 更に、(F)ベタイン型界面活性剤 更に、(G)3-オクタノール、3-オクチルアセテート、3-オクタノン、フェンコンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分、 更に、(H)アニスアルデヒド 更に、甲1発明1の香料組成物 水 を含有し、かつ(A)/(D)の質量比が10?150であるイソプロピルメチルフェノール含有歯磨剤組成物が、(E)噴射剤と共にエアゾール容器に充填されてなるエアゾール歯磨剤組成物」(以下、「甲1発明2」という。) オ さらに、甲1発明1の香料組成物は、甲1発明2のエアゾール歯磨剤組成物に添加されるものであり、結局、当該甲1発明2のエアゾール歯磨剤組成物には、甲1発明1の香料組成物中の、「メンソフラン」、「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」、「メントングリセリンエーテル」及び「モノメンチルサクシネート」といった成分が添加されることになるから、甲1には、次の方法が記載されているといえる。 「甲1発明2のエアゾール歯磨剤組成物において、メンソフラン、メンチルラクテート、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、メントングリセリンエーテル及びモノメンチルサクシネートを含む甲1発明1の香料組成物を添加する方法」(以下、「甲1発明3」という。) (2) 甲2に記載された発明 ア 甲2には、「歯磨剤組成物」(発明の名称)に関する記載があり、【請求項1】には、次の記載がある。 「グルカナーゼ酵素配合の歯磨組成物に、(A)カチオン性ポリマーを0.02?0.2質量%、(B)脂肪酸の炭素数が12?14の脂肪酸アミドプロピルベタインを0.4?1.6質量%、(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースから選ばれる少なくとも1種を0.5?3質量%配合し、かつ(C)成分/(A)成分の質量比を10?100としたことを特徴とする歯磨組成物。」 イ そして、上記歯磨組成物の具体例として、甲2の【0067】【表1】には、実施例8として、「デキストラナーゼ:0.16%、(A)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド:0.20%、(B)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン:1.00%、(C)ヒドロキシエチルセルロース:2.0%、無水ケイ酸:20%、増粘性無水ケイ酸:5%、ポリエチレングリコール♯400:3%、ソルビット:28%、サッカリンナトリウム:0.2%、フッ化ナトリウム:0.21%、キサンタンガム:0.5%、香料I:1.2%、水:残部、である歯磨組成物」が記載されているところ、当該香料Iは、【0077】【表6】によれば、ペパーミント油:5%(【0023】の記載によれば、質量%、以下同様。)、ペパーミント油前留部20%カット:1%、メンソフラン:1%、フレーバー4:5%を含むものであることが分かる。 ここで、当該フレーバー4は、【0081】【表10】によれば、合計14質量部のうち、メンチルラクテート:1質量部、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド:1質量部、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール:1質量部、メンチルグリセリルエーテル:1質量部、モノメンチルサクシネート:1質量部を含むものであるから、結局、香料Iには、フレーバー4を構成するメンチルラクテート等が、いずれも0.357%(5%×1部/14部)含まれていることが理解できる。 ウ そうすると、甲2には、香料Iとして、次の香料が記載されているといえる。 「ペパーミント油:5%、ペパーミント油前留部20%カット:1%、メンソフラン:1%、メンチルラクテート:0.357%、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド:0.357%、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール:0.357%、メンチルグリセリルエーテル:0.357%及びモノメンチルサクシネート:0.357%を含む香料」(以下、「甲2発明1」という。) エ また、甲2には、上記実施例8として、当該甲2発明1に係る香料を含む、次の歯磨組成物が記載されているといえる。 「デキストラナーゼ:0.16%、(A)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド:0.20%、(B)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン:1.00%、(C)ヒドロキシエチルセルロース:2.0%、無水ケイ酸:20%、増粘性無水ケイ酸:5%、ポリエチレングリコール♯400:3%、ソルビット:28%、サッカリンナトリウム:0.2%、フッ化ナトリウム:0.21%、キサンタンガム:0.5%、甲2発明1の香料:1.2%、水:残部、である歯磨組成物」(以下、「甲2発明2」という。) オ さらに、甲2発明1の香料は、甲2発明2の歯磨剤組成物に添加されるものであり、結局、当該甲2発明2の歯磨剤組成物には、甲2発明1の香料中の、「メンソフラン」、「メンチルラクテート」、「N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」、「メンチルグリセリルエーテル」及び「モノメンチルサクシネート」といった成分が添加されることになるから、甲2には、次の方法が記載されているといえる。 「甲2発明2の歯磨剤組成物において、メンソフラン、メンチルラクテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、メンチルグリセリルエーテル及びモノメンチルサクシネートを含む甲2発明1の香料を添加する方法」(以下、「甲2発明3」という。) (3) 甲3に記載された発明 ア 甲3には、「口腔用組成物」(発明の名称)に関する記載があり、その【請求項1】には、次の記載がある。 「下記の成分(1)、成分(2)、成分(3)及び水を含有する口腔用組成物。 成分(1):ヒドロキシカルボン酸又はその塩 成分(2):香料(a)、(b)及び(c)を含有する香料組成物 香料(a):メントール 香料(b):N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、メントングリセロールケタール、乳酸メンチル、メントキシプロパン-1,2-ジオール、イソプレゴール及びp-メンタン-3,8-ジオールから選ばれる1以上 香料(c):炭素数1?5の脂肪酸のエステル 成分(3):ポリリン酸又はその塩」 イ そして、甲3の【0032】【表1】には、上記成分(2)の香料組成物の具体例が記載されており、同表中の香料組成物6?9は、香料(b)として、それぞれ「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド」、「メントングリセリルケタール」、「乳酸メンチル」、「メントキシプロパン-1,2-ジオール」を1.0質量%含み、それ以外の成分及び含有量は共通するところ、これらの香料組成物をまとめて同表から摘記すると、次のとおりである。 「(a):メントール:18.0質量%、(a):ペパーミントオイル:20.0質量%、スペアミントオイル:4.0質量%、アネトール:3.0質量%、(b):N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド、メントングリセリルケタール、乳酸メンチル、メントキシプロパン-1,2-ジオールから選択される一種:1.0質量%、(c):酪酸プロピル:0.5質量%、エタノール:45.0質量%、上記以外の香料:8.5質量%を含む香料組成物」(以下、「甲3発明1」という。) ウ また、甲3の【0037】【表2】には、上記香料組成物6?9(「甲3発明1」の香料組成物)を、それぞれ同量(0.43質量%)で含む実施例8?11が記載され、当該実施例は、香料組成物以外の成分として同じ成分を同じ含有量で含むところ、これらの実施例を同表からまとめて摘記すると、次のとおりである。 「ソルビトール:14.0質量%、トレハロース:10.0質量%、(1):リンゴ酸:0.5質量%、(3):トリポリリン酸ナトリウム:0.3質量%、サッカリンナトリウム:0.01質量%、ラウリル硫酸ナトリウム:0.1質量%、エタノール:5.0質量%、メチルパラベン:0.5質量%、甲3発明1の香料組成物:0.43質量%、pH調整剤:適量、精製水:残量を含む口腔用組成物」(以下、「甲3発明2」という。) エ さらに、甲3発明1の香料組成物は、甲3発明2の口腔用組成物に添加されるものであり、結局、当該甲3発明2の口腔用組成物には、甲3発明1の香料組成物中の、「メントール」、「ペパーミントオイル」、「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド、メントングリセリルケタール、乳酸メンチル、メントキシプロパン-1,2-ジオールから選択される一種」といった成分が添加されることになるから、甲3には、次の方法が記載されているといえる。 「甲3発明2の口腔用組成物において、メントール、ペパーミントオイル、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド、メントングリセリルケタール、乳酸メンチル、メントキシプロパン-1,2-ジオールから選択される一種を含む甲3発明1の香料組成物を添加する方法」(以下、「甲3発明3」という。) 4 本件訂正発明14についての新規性の検討 (1) 甲1発明3を主引用発明とした場合 ア 対比 本件訂正発明14と、甲1発明3を対比する。 甲1発明3において添加されている「甲1発明1の香料組成物」は、「メンソフラン」(メントフランと同意)を1%含有し、「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」、「モノメンチルサクシネート」の各メントール化合物を0.385%含有するものであって、当該メンソフラン(1%)と、当該メントール化合物の合計量(1.155%)との重量比は、46.4:53.6であり、本件訂正発明14が規定する重量比を満足するものである。しかしながら、当該メントール化合物はいずれも、本件訂正発明14が規定する、特定のメントール化合物(b)には属さないものである。 他方、甲1発明3の「エアゾール歯磨剤組成物」は、本件訂正発明14の「化粧品組成物」に相当するものであるといえる(本件の請求項7では、化粧品組成物の一つとして、デンタルケア製品が列記されていることを参酌した。)。 そうすると、本件訂正発明14と甲1発明3とは、 「メントフランを含む化粧品組成物における方法であって、メントール化合物を該組成物に添加する方法」 である点で一致し、次の点で相違しているといえる。 <相違点1> 本件訂正発明14は、甲1発明3とは異なる特定のメントール化合物(b)を添加するものであって、その添加量は、メントフラン(a)と(b)の重量比が40:60?60:40であるのに対して、甲1発明3には、当該特定のメントール化合物(b)及びその添加量についての特定がない点。 <相違点2> 本件訂正発明14は、「メントフランの味の悪さを低減(改善)する方法」であると特定しているのに対して、甲1発明3には、そのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 (ア) 相違点1について 上記のとおり、甲1発明3の「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」及び「モノメンチルサクシネート」は、いずれも本件訂正発明14が規定する特定のメントール化合物(b)には属さないものであるから、当該相違点1は実質的な相違点であるといえる。 (イ) そうすると、上記相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲1発明3、すなわち、甲1に記載された発明であるとはいえないから、甲1に記載された発明に対して新規性を有するものと認められる。 (2) 甲2発明3を主引用発明とした場合 ア 対比 本件訂正発明14と、甲2発明3を対比する。 甲2発明3において添加されている「甲2発明1の香料」は、「メンソフラン」(メントフランと同意)を含み、さらに「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」及び「モノメンチルサクシネート」を含むところ、これらのメントール化合物は、それぞれ「乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)」、「メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)」及び「コハク酸モノメンチル(FEMA GRAS 3810)」に相当するものであって、本件訂正発明14の特定のメントール化合物(b)に属さないものである。 また、甲2発明3の「歯磨剤組成物」は、本件訂正発明14の「化粧品」に相当するものである。 そうすると、本件訂正発明14と甲2発明3とは、 「メントフランを含む化粧品組成物における方法であって、メントール化合物を該組成物に添加する方法」 である点で一致し、次の点で相違しているといえる。 <相違点3> 本件訂正発明14は、甲2発明3とは異なる特定のメントール化合物(b)を添加するものであって、その添加量は、メントフラン(a)と(b)の重量比が40:60?60:40であるのに対して、甲2発明3には、当該特定のメントール化合物(b)及びその添加量についての特定がない点。 <相違点4> 本件訂正発明14は、「メントフランの味の悪さを低減(改善)する方法」であると特定しているのに対して、甲2発明3には、そのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 上記のとおり、甲2発明3の「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」及び「モノメンチルサクシネート」は、いずれも本件訂正発明14のメントール化合物に属さないものであるから、上記相違点3は実質的な相違点である。 したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲2発明3、すなわち、甲2に記載された発明であるとはいえないから、甲2に記載された発明に対して新規性を有するものと認められる。 (3) 甲3発明3を主引用発明とした場合 ア 対比 本件訂正発明14と、甲3発明3を対比する。 甲3発明3において添加されている「甲3発明1の香料組成物」中の「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド」及び「メントングリセリルケタール」は、それぞれ本件訂正発明14の特定のメントール化合物(b)に属する「WS-3」及び「メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)」に相当するものである。 また、甲3発明3の「口腔用組成物」は、本件訂正発明14の「化粧品」に相当するものである(本件の請求項7では、化粧品組成物の一つとして、口腔ケア製品が列記されていることを参酌した。)。 そうすると、本件訂正発明14と甲3発明3とは、 「化粧品組成物における方法であって、メントール化合物であるWS-3及びメントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)を該組成物に添加する方法」 である点で一致し、次の点で相違しているといえる。 <相違点5> 本件訂正発明14は、メントフラン(a)を含む組成物を対象とし、当該メントフラン(a)と、添加されるメントール化合物(b)の重量比が40:60?60:40であることを特定しているのに対して、甲3発明3には、そのような特定がない点。 <相違点6> 本件訂正発明14は、「メントフランの味の悪さを低減(改善)する方法」であると特定しているのに対して、甲3発明3には、そのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 (ア) 相違点5について 甲3発明3において添加されている「甲3発明1の香料組成物」は、「ペパーミントオイル」を含有するところ、一般に、ペパーミントオイルは、メントフランを含有することが知られている(例えば、特許異議申立人が周知技術を立証するための証拠として提出した甲第4号証(「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料」、日本国特許庁、平成12(2000).1.14発行)の第477頁第10?15行には、ペパーミントオイルについて、現在の主たる生産地は、アメリカの五大湖周辺と太平洋岸北部であり、産地により精油の成分組成が異なり、香味も異なることから、名称に産地名をつけて区別し、五大湖周辺のものを全てミッドウェスト(Midwest)、太平洋岸北部のものをウィラメット(Willamette)、マドラス(Madras)、東部オレゴンからアイダホのものを(EO&I)、ヤキマ(Yakima)と呼んで使い分けていることが記載され、同第477?478頁に記載された「表-1」には、ペパーミントオイル100に対して、「Midwest」で2.917、「Willamette」で2.153、「EO&I」で3.016、「Madras」で2.377、「Yakima」で5.665のメントフランが含まれることが記載されている。)。 しかしながら、当該甲4に記載のとおり、ペパーミントオイルに含まれているメントフランの含有量は、その生産地等により大きく異なるものであり、一義的に定まるものではないから、甲3発明3のペパーミントオイルに含まれているメントフランの含有量は不明であるといわざるを得ない。また、ほかに当該含有量を推認するに足りる証拠も見当たらないから、上記相違点5に係る重量比に関する相違は、実質的な相違点であると認められる。 なお、甲3発明3のペパーミントオイルに含まれているメントフランの含有量を、上記甲4記載の「2.917」、「2.153」、「3.016」、「2.377」としても、甲3発明3におけるメンソフラン(a)とメントール化合物の重量比は、本件訂正発明14が規定する重量比を満足しない。 (イ) したがって、上記相違点6について検討するまでもなく、本件訂正発明14は、甲3発明3、すなわち、甲3に記載された発明であるとはいえないから、甲3に記載された発明に対して新規性を有するものと認められる。 5 小括 以上のとおり、本件訂正発明14は、甲1?3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、当該本件訂正発明14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものであるとはいえない。 第6 上記取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要 上記取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、おおむね次のとおりである。 1 (新規性)本件特許の請求項1、2、5?13に係る発明は、上記甲1ないし甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件特許1、2、5?13は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 (進歩性)本件特許の請求項1?14に係る発明は、上記甲1ないし甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許1?14は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 4 (実施可能要件)本件特許は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第7 上記特許異議申立理由1、2(新規性・進歩性)についての当審の判断 1 甲1?3、甲1?3の記載事項及び甲1?3に記載された発明 甲1?3、甲1?3の記載事項及び甲1?3に記載された発明は、上記第5の1?3に記載したとおりである。 2 本件訂正発明1についての新規性・進歩性の検討 (1) 甲1発明1を主引用発明とした場合 ア 対比 本件訂正発明1と、甲1発明1を対比する。 甲1発明1の香料組成物は、「メンソフラン」(メントフランと同意)を1%含有し、「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」、「モノメンチルサクシネート」の各メントール化合物を0.385%含有するものであって、当該メンソフラン(1%)と、当該メントール化合物の合計量(1.155%)との重量比は、46.4:53.6であり、本件訂正発明1が規定する重量比を満足するものである。しかしながら、当該メントール化合物はいずれも、本件訂正発明1が規定する、特定のメントール化合物(b)には属さないものである。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明1とは、 「メントフラン及びメントール化合物を含む組成物」 である点で一致し、次の点で相違しているといえる。 <相違点7> 本件訂正発明1は、甲1発明1とは異なる特定のメントール化合物(b)を含み、その含有量は、メントフラン(a)と(b)の重量比が40:60?60:40であるのに対して、甲1発明1には、当該特定のメントール化合物(b)及びその含有量についての特定がない点。 イ 相違点7についての検討 上記のとおり、甲1発明1の「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」及び「モノメンチルサクシネート」は、いずれも本件訂正発明1が規定する特定のメントール化合物(b)には属さないものであるから、当該相違点7は実質的な相違点であるといえる。 また、甲1発明1における当該メントール化合物を、本件訂正発明1が規定する特定のメントール化合物(b)に属するものに換え、さらに、その含有量(メントフラン(a)と特定のメントール化合物(b)の重量比)を、本件訂正発明1が規定する数値範囲内に調整することについては、甲1?3のいずれにも記載されていないから、上記相違点7に係る本件訂正発明1の構成を容易想到の事項ということもできない。 そして、本件訂正発明1は、当該構成を具備することにより、本件特許明細書の【0005】などに記載された、「メントフランの所望の香りおよび風味プロフィールのみが知覚されるように、不快な臭気または風味プロフィールをマスクするまたは和らげることができる」という顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明1、すなわち、甲1に記載された発明に対して新規性及び進歩性を有するものと認められる。 (2) 甲2発明1を主引用発明とした場合 ア 対比 本件訂正発明1と、甲2発明1を対比する。 甲2発明1の香料は、「メンソフラン」(メントフランと同意)を含み、さらに「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」及び「モノメンチルサクシネート」を含むところ、これらのメントール化合物は、それぞれ「乳酸メンチル(FEMA GRAS 3748)」、「メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)」及び「コハク酸モノメンチル(FEMA GRAS 3810)」に相当するものであって、本件訂正発明1の特定のメントール化合物(b)に属さないものである。 そうすると、本件訂正発明1と甲2発明1とは、 「メントフラン及びメントール化合物を含む組成物」 である点で一致し、次の点で相違しているといえる。 <相違点8> 本件訂正発明1は、甲2発明1とは異なる特定のメントール化合物(b)を含み、その含有量は、メントフラン(a)と(b)の重量比が40:60?60:40であるのに対して、甲2発明1には、当該特定のメントール化合物(b)及びその含有量についての特定がない点。 イ 相違点8についての検討 上記のとおり、甲2発明1の「メンチルラクテート」、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」及び「モノメンチルサクシネート」は、いずれも本件訂正発明1のメントール化合物に属さないものであるから、上記相違点8は実質的な相違点である。 また、甲2発明1における当該メントール化合物を、本件訂正発明1が規定する特定のメントール化合物(b)に属するものに換え、さらに、その含有量(メントフラン(a)と特定のメントール化合物(b)の重量比)を、本件訂正発明1が規定する数値範囲内に調整することについては、甲1?3のいずれにも記載されていないから、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成を容易想到の事項ということもできない。 そして、本件訂正発明1は、当該構成を具備することにより、本件特許明細書の【0005】などに記載された上記の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明1は、甲2発明1、すなわち、甲2に記載された発明に対して新規性及び進歩性を有するものと認められる。 (3) 甲3発明1を主引用発明とした場合 ア 対比 本件訂正発明1と、甲3発明1を対比する。 甲3発明1の香料組成物の「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド」及び「メントングリセリルケタール」は、それぞれ本件訂正発明1の特定のメントール化合物(b)に属する「WS-3」及び「メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)」に相当するものである。 そうすると、本件訂正発明1と甲3発明1とは、 「メントール化合物であるWS-3及びメントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)含む組成物」 である点で一致し、次の点で相違しているといえる。 <相違点9> 本件訂正発明1は、メントフラン(a)を含み、当該メントフラン(a)と、メントール化合物(b)の重量比が40:60?60:40であることを特定しているのに対して、甲3発明1には、そのような特定がない点。 イ 相違点9についての検討 上記第5の4(3)イ(ア)「相違点5について」に記載したとおり、甲3発明1の香料組成物は、「ペパーミントオイル」を含有するものであるが、それに含まれているメントフランの含有量は不明であるといわざるを得ない。 したがって、当該相違点9に係る重量比に関する相違は、実質的な相違点であると認められる。 また、甲3発明1において、当該重量比を満足するように調整することについては、甲1?3のいずれの記載をみても、これを動機付ける記載は見当たらないから、上記相違点9に係る本件訂正発明1の構成を容易想到の事項ということもできない。 そして、本件訂正発明1は、当該構成を具備することにより、本件特許明細書の【0005】などに記載された上記の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明1は、甲3発明1、すなわち、甲3に記載された発明に対して新規性及び進歩性を有するものと認められる。 (4) 小括 以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1?3に記載された発明に対して、新規性及び進歩性を有するものである。 3 本件訂正発明2?13についての新規性・進歩性の検討 本件訂正発明2?13は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1?3に記載された発明に対して、新規性及び進歩性を有するものである。 4 本件訂正発明14についての進歩性の検討 上記第5の4において検討したとおり、本件訂正発明14と甲1発明3?甲3発明3との間には、実質的な相違点(相違点1、3、5)が存するところ、当該相違点は、上記1?3において検討した、相違点7?9と本質的に同じ事項である。 そして、これらの相違点に係る事項(メントフラン(a)と特定のメントール化合物(b)の重量比に関する事項)は、上記2の(1)イ、(2)イ及び(3)イのとおり、甲1?3の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得るものとは認められないから、本件訂正発明14は、甲1?3に記載された発明に対して進歩性を有するものである。 5 小括 以上のとおりであるから、上記特許異議申立理由1、2(新規性・進歩性)により、本件特許を取り消すことはできない。 第8 上記特許異議申立理由3、4(サポート要件・実施可能要件)についての当審の判断 1 特許異議申立人が主張するサポート要件違反及び実施可能要件違反に関する指摘事項 特許異議申立人が主張するサポート要件違反及び実施可能要件違反に関する指摘事項は、特許異議申立書の第27?29頁の「記載不備(特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号)について」の項目によると、おおよそ次の2点に集約することができる。 (1) 本件特許に係る発明のメントール化合物は、発明の詳細な説明の実施例において官能評価が行われていないものを含むものであり、また、本件特許明細書の【0113】には、当該メントール化合物の類縁化合物であるイソプレゴールやチモールの官能評価について、否定的な見解が示されていることから、当該メントール化合物全般にわたって、本件特許に係る発明の目的(課題)が達成されるとはいえない。 (2) 本件特許に係る発明は、本件特許明細書の【0113】の記載などからみて、ペパーミント油に含まれるメントフランの含有量が2重量%であることを前提とするところ、他方で、上記甲4(記載内容については、上記第5の4(3)イ(ア)参照)には、ペパーミント油中のメントフランの含有量は、その生産地等により大きく異なることが記載されており、両者は整合していないから、メントフランの含有量を2重量%と規定しない本件特許に係る発明は、当該ペパーミント油中のメントフランの含有量がどのように取り扱われているのかが明確でない。 2 上記(1)の指摘について 本件訂正発明の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】(【0005】)の項目に記載された「メントフランの所望の香りおよび風味プロフィールのみが知覚されるように、不快な臭気または風味プロフィールをマスクするまたは和らげることができる第2の物質と共にメントフランを含有する組成物を提供すること」にあるといえる。 また、この課題にある「第2の物質」につき、本件訂正発明は、「(b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物」と特定するものである。 他方、発明の詳細な説明に記載された実施例をみると、メントール化合物として、「乳酸メンチル、メントングリセリルアセタール、メントールエチレングリコールカーボネート、メントールプロピレングリコールカーボネート、コハク酸モノメンチル、グルタミン酸モノメンチル、WS-5」を用いた場合については、これらを含む具体的組成物、すなわち、本件特許明細書の【0112】【表1】に記載された組成物1?7につき、その風味及び臭気プロフィールの官能評価が行われ、上記課題が解決できることが実証されていると認められるものの、本件訂正発明に係るメントール化合物のすべてが、当該実施例に供されているわけではない。また、同【表1】には、当該実施例に対する比較製剤として調製された、「WS-1」、「イソプレゴール」、「チモール」を含有する組成物V2?V4についての評価結果が記載され、同【0113】には、「種々の他のメントール化合物を比較例V2?V4で使用した。これらは官能特性のわずかな改善をもたらしたが、結局、結果はなお不十分であり、例えばチューインガム組成物は、否定的に評価され最終的には市場に投入すべきではないと評価された。」と記載されていることから、これらの比較製剤については、上記課題を解決するには至っていないことが分かる。 そうすると、特許異議申立人が指摘するように、発明の詳細な説明において、実施例をもって上記課題が解決できることが示されているのは、本件訂正発明に係るメントール化合物の一部である上、メントール化合物の中には、「WS-1」のように当該課題が解決できないものも存在するということができる。 しかしながら、本件訂正発明における特定のメントール化合物(b)は、いずれも発明の詳細な説明の【0006】に記載された式(I)?式(III)のいずれかに該当するものであり、その範ちゅうは、当該化学構造式をもって、特定の範囲に画定されていることから、同様の特性を有すると考えるのが本願出願時の技術常識であり、当業者であれば、上記実施例に供された、当該化学構造式を有するメントール化合物を用いた場合の評価結果を斟酌し、本件訂正発明における特定のメントール化合物(b)に属する他の化合物を用いた場合であっても上記課題が解決できると認識できると考えるのが合理的である。そして、上記比較製剤として調製された、「WS-1」、「イソプレゴール」、「チモール」を含有する組成物V2?V4にあっては、「WS-1」などのメントール化合物が、上記の特定の化学構造を有していないことに起因して、上記の評価結果となったものと理解するのが相当である。 そうすると、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者において、上記課題が解決できると認識できる範囲内のものと認められるから、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものといえる。また、請求項に記載された成分は、いずれも入手可能であり、その重量比を当業者が適宜設定できるものであるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、実施可能要件にも適合するものである。 したがって、上記(1)の指摘を採用することはできない。 3 上記(2)の指摘について 特許異議申立人が指摘するとおり、確かに、本件特許明細書の【0113】には、実施例に供したペパーミント油に含まれるメントフランの含有量が2重量%であることが記載されている。しかしながら、これは、あくまで実施例に供された特定のペパーミント油のことであるから、本件訂正発明は、当該実施例に拘束されるものはない。また、本件訂正発明は、上記2のとおり、「メントフランの所望の香りおよび風味プロフィールのみが知覚されるように、不快な臭気または風味プロフィールをマスクするまたは和らげることができる第2の物質と共にメントフランを含有する組成物を提供すること」にあるから、第2の物質(本件訂正発明におけるメントール化合物(b))の含有量とマスキング等の対象物質であるメントフランの含有量との絶対値ではなく、これらの相対値(重量比)が、本件訂正発明の課題を解決するための手段として重要であると考えるのが合理的であるから、本件訂正発明は、実施例などにより裏付けられたものということができる。 したがって、上記(2)の指摘を採用することはできない。 4 小括 以上のとおりであるから、上記特許異議申立理由3、4(サポート要件・実施可能要件)により、本件特許を取り消すことはできない。 第9 むすび 以上の検討のとおり、本件特許1、2、4?14は、特許法第29条第1項第3号又は第2項所定の規定違反であるとも、同法第36条第6項第1号又は第4項第1号所定の規定違反であるともいえず、同法第113条第2号又は第4号のいずれにも該当しないから、上記取消理由及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。ほかに、これらの特許を取り消すべき理由も発見しない。 さらに、本件訂正により請求項3は削除されたため、当該請求項3に係る特許異議の申立ては、対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)メントフランおよび (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である組成物。 【請求項2】 界面活性剤、油体、乳化剤、真珠光沢ワックス、粘稠度因子、増粘剤、過脂肪剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、UV保護因子、保湿剤、生物起源剤、酸化防止剤、防臭剤、発汗防止剤、フケ防止剤、フィルム形成剤、膨潤剤、防虫剤、セルフタンニング剤、チロシン阻害剤(脱色剤)、ヒドロトロープ、可溶化剤、防腐剤、香油および染料ならびにそれらの混合物からなる群から選択される化粧品添加剤(成分c)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 成分(a+b)および(c)を0.01:99.9?2:98の重量比で含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。 【請求項5】 (a)メントフラン、 (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物、および (c)化粧品用途に許可された担体 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である、化粧品組成物。 【請求項6】 担体は、水、2?6個の炭素原子を含有するアルコール、1?10個の炭素原子および2?4個のヒドロキシル基を含有するポリオールおよび油体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の化粧品組成物。 【請求項7】 スキンケア製品、ヘアケア製品、サンスクリーン製品、口腔ケア製品およびデンタルケア製品からなる群から選択される製品であることを特徴とする、請求項5または6に記載の化粧品組成物。 【請求項8】 (a)メントフラン、 (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物、および (c)医薬品用途に許可された担体 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である、風邪の症状を処置するための医薬品組成物。 【請求項9】 担体は、水、2?6個の炭素原子を含有するアルコール、1?10個の炭素原子および2?4個のヒドロキシル基を含有するポリオールおよび油体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の医薬品組成物。 【請求項10】 トローチ剤(lozenge)、風邪ドロップ剤(cold drop)、シロップ、コールドバームおよびコールドスプレーからなる群から選択される製品であることを特徴とする、請求項8または9に記載の医薬品組成物。 【請求項11】 (a)メントフラン、 (b)メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるメントール化合物、および (c)食品用途に許可された担体 を含み、成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である、食品組成物。 【請求項12】 担体は、水、エタノールおよびグリセロールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の食品組成物。 【請求項13】 製品は、飲料、乳製品、ベーカリー製品、チューインガムおよびボンボンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11または12に記載の食品組成物。 【請求項14】 メントフラン(a)を含む化粧品、医薬品または食品組成物においてメントフランの味の悪さを低減する方法であって、メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、グルタミン酸モノメンチル(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)およびメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14およびWS-30ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のメントール化合物(b)を該組成物に添加して改善することを含み、前記成分(a)と(b)の重量比が40:60?60:40である方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-08-01 |
出願番号 | 特願2013-7254(P2013-7254) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C11B)
P 1 651・ 113- YAA (C11B) P 1 651・ 121- YAA (C11B) P 1 651・ 536- YAA (C11B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 吉田 邦久 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 冨士 良宏 |
登録日 | 2017-09-29 |
登録番号 | 特許第6216119号(P6216119) |
権利者 | シムライズ アーゲー |
発明の名称 | 組成物 |
代理人 | 岩木 郁子 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 梶田 真理奈 |
代理人 | 森住 憲一 |
代理人 | 岩木 郁子 |
代理人 | 森住 憲一 |
代理人 | 梶田 真理奈 |
代理人 | 田中 光雄 |