ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03C 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C03C 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C03C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C03C |
---|---|
管理番号 | 1355952 |
異議申立番号 | 異議2018-700148 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-02-22 |
確定日 | 2019-08-27 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6280284号発明「ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6280284号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?28〕について訂正することを認める。 特許第6280284号の請求項1?11、15?28に係る特許を維持する。 特許第6280284号の請求項12?14に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6280284号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?28に係る特許についての出願は、平成26年9月30日に出願された特願2014-202516号の一部を平成29年10月27日に新たな出願としたものであり、平成30年1月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、平成30年2月22日付けで特許異議申立人岡田佐和(以下、「特許異議申立人1」という。)による請求項1?28に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、平成30年3月30日付けで特許異議申立人石田祥子(以下、「特許異議申立人2」という。)による請求項1?28に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、平成30年10月31日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成31年1月31日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)がされ、先の訂正請求に対して、特許異議申立人1及び特許異議申立人2に意見を求めたところ、特許異議申立人1から意見書の提出はなく、特許異議申立人2から平成31年3月4日付けで意見書の提出がされ、令和1年5月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和1年7月19日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 なお、本件訂正請求により、先の訂正請求は取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が20?35%」との記載を、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1における「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が50?70%」との記載を、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1における「Y_(2)O_(3)含有量が3?30%」との記載を、「Y_(2)O_(3)含有量が9?25%」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1における「ZrO_(2)含有量が2?15%」との記載を、「ZrO_(2)含有量が2?10%」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1における「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?6%」との記載を、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1における「ZnO含有量が0?4%」との記載を、「ZnO含有量が0?2%」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項1における「質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が2.1/28.9以上であり」との記載を、「質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が2.1/28.9以上9/26.6以下であり」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項1における「アッベ数νdが45?48」との記載を、「アッベ数νdが45?47.0」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4における「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が20?35%」との記載を、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項4において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量」との記載の前に、「SiO_(2)含有量が2.9?10%、」との記載を追加する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項4における「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が50?70%」との記載を、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項4における「Y_(2)O_(3)含有量が3?30%」との記載を、「Y_(2)O_(3)含有量が9?25%」に訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項4における「ZrO_(2)含有量が2?15%」との記載を、「ZrO_(2)含有量が2?10%」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項4における「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?6%」との記載を、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%」に訂正する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項4における「ZnO含有量が0?4%」との記載を、「ZnO含有量が0?2%」に訂正する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項4において、「アッベ数νdが45?48」との記載を、「アッベ数νdが45?47.0」に訂正する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項15における「請求項1?14のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11のいずれか1項」に訂正する。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項16における「請求項1?15のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15のいずれか1項」に訂正する。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項17における「請求項1?16のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11、15および16のいずれか1項」に訂正する。 (23)訂正事項23 特許請求の範囲の請求項18における「請求項1?17のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?17のいずれか1項」に訂正する。 (24)訂正事項24 特許請求の範囲の請求項19における「請求項1?18のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?18のいずれか1項」に訂正する。 (25)訂正事項25 特許請求の範囲の請求項20における「請求項1?19のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?19のいずれか1項」に訂正する。 (26)訂正事項26 特許請求の範囲の請求項21における「請求項1?20のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?20のいずれか1項」に訂正する。 (27)訂正事項27 特許請求の範囲の請求項22における「請求項1?21のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?21のいずれか1項」に訂正する。 (28)訂正事項28 特許請求の範囲の請求項23における「請求項1?22のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?22のいずれか1項」に訂正する。 (29)訂正事項29 特許請求の範囲の請求項24における「請求項1?23のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?23のいずれか1項」に訂正する。 (30)訂正事項30 特許請求の範囲の請求項25における「請求項1?24のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?24のいずれか1項」に訂正する。 (31)訂正事項31 特許請求の範囲の請求項26における「請求項1?25のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?25のいずれか1項」に訂正する。 (32)訂正事項32 特許請求の範囲の請求項27における「請求項1?25のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?25のいずれか1項」に訂正する。 (33)訂正事項33 特許請求の範囲の請求項28における「請求項1?25のいずれか1項」との記載を、「請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラス」に訂正する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1及び9について 訂正事項1及び9は、訂正前の請求項1及び4における「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量」を「20?35%」から「25?32%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0015】には、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量の好ましい下限は23%、より好ましい下限は25%であり、SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量の好ましい上限は33%、より好ましい上限は32%である。」と記載されているから、訂正事項1及び9は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (2)訂正事項2及び11について 訂正事項2及び11は、訂正前の請求項1及び4における「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量」を「50?70%」から「55?63.1%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0018】には、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量の好ましい下限は53%、より好ましい下限は55%である。」と記載され、また、段落【0063】の【表1】には、ガラスNo.11のLa_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が63.1%であることが記載されているから、訂正事項2及び11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (3)訂正事項3及び12について 訂正事項3及び12は、訂正前の請求項1及び4における「Y_(2)O_(3)含有量」を「3?30%」から「9?25%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0021】には、「Y_(2)O_(3)の含有量の好ましい下限は4%、より好ましい下限は5%、さらに好ましい下限は7%、一層好ましい下限は9%であり、好ましい上限は25%、より好ましい上限は20%、さらに好ましい上限は15%である。」と記載されているから、訂正事項3及び12は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (4)訂正事項4及び13について 訂正事項4及び13は、訂正前の請求項1及び4における「ZrO_(2)含有量」を「2?15%」から「2?10%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0023】には、「ZrO_(2)の含有量の好ましい上限は13%、より好ましい上限は10%である。」と記載されているから、訂正事項4及び13は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (5)訂正事項5及び14について 訂正事項5及び14は、訂正前の請求項1及び4における「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量」を「2.0?6%」から「2.0?5.0%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0024】には、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)、Ta_(2)O_(5)の合計含有量の好ましい下限は1.5%、より好ましい下限は2.0%であり、好ましい上限は5.5%、より好ましい上限は5.0%である。」と記載されているから、訂正事項5及び14は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (6)訂正事項6及び15について 訂正事項6及び15は、訂正前の請求項1及び4における「ZnO含有量」を「0?4%」から「0?2%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0028】には、「ZnOの含有量の好ましい範囲は0?3%、より好ましい範囲は0?2%である。」と記載されているから、訂正事項6及び15は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項1における「質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))」を「2.1/28.9以上」から「2.1/28.9以上9/26.6以下」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0063】の【表1】には、ガラスNo.14のSiO_(2)含有量が9%、SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が26.6%であることが記載されているから、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (8)訂正事項8及び16について 訂正事項8及び16は、訂正前の請求項1及び4における「アッベ数νd」を「45?48」から「45?47.0」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0041】には、「アッベ数νdの上限は、好ましくは47.0、より好ましくは46.8である。」と記載されているから、訂正事項8及び16は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (9)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項4の「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量」における「SiO_(2)含有量」を「2.9?10%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0016】には、「SiO_(2)の含有量の好ましい下限は1%、より好ましい下限は2%である。・・・SiO_(2)の含有量の好ましい上限は15%、より好ましい上限は10%、さらに好ましい上限は5%である。」と記載され、また、段落【0063】の【表1】には、ガラスNo.15?18のSiO_(2)含有量が2.9%であることが記載されているから、訂正事項10は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (10)訂正事項17?19について 訂正事項17?19は、訂正前の請求項12?14を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項20?33について 訂正事項20?33は、訂正事項17?19に係る訂正に伴い、訂正前の請求項15?28における引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)一群の請求項について 訂正前の請求項2、3、5?28は、訂正前の請求項1を引用するものであり、また、訂正前の請求項5?28は、訂正前の請求項4も引用するものであるから、訂正前の請求項1?28は、一群の請求項である。 したがって、訂正事項1?33の特許請求の範囲の訂正は、この一群の請求項1?28について請求されたものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?28〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 (1)本件訂正請求により訂正された請求項1?11、15?28に係る発明(以下、「本件発明1?11、15?28」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?11、15?28に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 「【請求項1】 質量%表示で、 SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%、 La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%、 La_(2)O_(3)含有量が37%以上、 Gd_(2)O_(3)含有量が0?3%、 Y_(2)O_(3)含有量が9?25%、 Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満、 ZrO_(2)含有量が2?10%、 TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%、 ZnO含有量が0?2%、 WO_(3)含有量が0?2%、 であり、 質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲であり、ただしNb_(2)O_(5)を必須成分として含み、 質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が2.1/28.9以上9/26.6以下であり、 質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.15以上であり、 質量比La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.55以上であり、 屈折率ndが1.800?1.830の範囲であり、アッベ数νdが45?47.0の範囲であり、かつ下記(2)式: nd>2.585-0.017×νd ・・・(2) を満たすガラス。 【請求項2】 質量比(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)+TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が1.95以上である請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が3.3/30以上である請求項1または2に記載のガラス。 【請求項4】 質量%表示で、 SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%、 SiO_(2)含有量が2.9?10%、 La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%、 La_(2)O_(3)含有量が37%以上、 Gd_(2)O_(3)含有量が0?3%、 Y_(2)O_(3)含有量が9?25%、 Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満、 ZrO_(2)含有量が2?10%、 TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%、 ZnO含有量が0?2%、 WO_(3)含有量が0?2%、 であり、 質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲であり、ただしNb_(2)O_(5)を必須成分として含み、 質量比((La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)+TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)))が1.95以上、 質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.15以上であり、 屈折率ndが1.800?1.830の範囲であり、アッベ数νdが45?47.0の範囲であり、かつ下記(2)式: nd>2.585-0.017×νd ・・・(2) を満たすガラス。 【請求項5】 質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.18以上である請求項1?4のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項6】 質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.21の範囲である請求項1?5のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項7】 SiO_(2)含有量が5質量%以下である請求項1?6のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項8】 質量比(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が1.83以上である請求項1?7のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項9】 Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)OおよびCs_(2)Oの合計含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?8のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項10】 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が0?5質量%の範囲である請求項1?9のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項11】 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?10のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 B_(2)O_(3)含有量が27.1質量%以下である請求項1?11のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項16】 B_(2)O_(3)含有量が17.4質量%以上である請求項1?11および15のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項17】 Gd_(2)O_(3)含有量が0?1質量%の範囲である請求項1?11、15および16のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項18】 Gd_(2)O_(3)含有量が0?0.5質量%の範囲である請求項1?11および15?17のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項19】 Ta_(2)O_(5)含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?11および15?18のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項20】 SiO_(2)およびB_(2)O_(3)の合計含有量が31?44質量%の範囲であるガラスが除かれる、請求項1?11および15?19のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項21】 B_(2)O_(3)含有量が25?35質量%のガラスが除かれる、請求項1?11および15?20のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項22】 F含有量が0.1質量%未満である請求項1?11および15?21のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項23】 Al_(2)O_(3)含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?11および15?22のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項24】 着色度λ5が335nm以下である請求項1?11および15?23のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項25】 比重を屈折率ndで除した値が2.00?2.56の範囲である請求項1?11および15?24のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項26】 請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。 【請求項27】 請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。 【請求項28】 請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。」 2 取消理由の概要 平成30年10月31日付けの取消理由、及び、令和1年5月15日付けの取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 (1)特許法第36条第6項第2号(明確性)に関する取消理由 ア 訂正前の請求項1及び4に係る発明の「Y_(2)O_(3)含有量が3?30%」との特定事項は、その下限値(3%)において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が50?70%」及び「質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.15以上」との特定事項と矛盾するため不明確である。 また、訂正前の請求項1及び4に係る発明の「ZnO含有量が0?4%」との特定事項は、その上限値(4%)において、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?6%」及び「質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲」との特定事項と矛盾するため不明確である。 したがって、訂正前の請求項1及び4に係る発明、並びに、これらを引用する請求項2、3、5?28に係る発明は明確でないから、訂正前の請求項1?28に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 先の訂正請求における請求項1及び4に係る発明の「Y_(2)O_(3)含有量が9?30%」との特定事項は、その上限値(30%)において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%」、「La_(2)O_(3)含有量が37%以上」、「Gd_(2)O_(3)含有量が0?3%」及び「Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満」との特定事項と矛盾するため不明確である。 したがって、先の訂正請求における請求項1及び4に係る発明、並びに、これらを引用する請求項2、3、5?11、15?28に係る発明は明確でないから、当該請求項1?11、15?28に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に関する取消理由 ア 物性要件が不足している点に関して 本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0004】?【0006】の記載からみて、本件発明の課題は、高屈折率・低分散光学ガラスであって、熱的安定性に優れ、かつ、接合ガラスの作製に好適な吸収特性を有するガラスを提供することにより解決されるものといえる。 ここで、本件特許明細書の実施例1(No.10?20、22?25、27、29?31)(以下、「実施例」という。)に記載された各成分の含有量の数値範囲のガラスであれば、当業者が上記課題を解決できると認識できるところ、訂正前の請求項1及び4に係る発明のガラスの各成分の含有量の数値範囲は、上記実施例に記載された数値範囲から大きく外れる数値を含むため、液相温度LTや着色度λ5を特定することなく、訂正前の請求項1及び4に係る発明のガラスの各成分の含有量の数値範囲の特定のみで、熱的安定性に優れ、且つ、接合ガラスの作製に好適な吸収特性を有するガラスが得られるといえない。 したがって、ガラスの液相温度LT及び着色度λ5の物性要件を特定しない訂正前の請求項1及び4に係る発明は、上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるいうことができない。 よって、訂正前の請求項1及び4に係る発明、並びに、これらを引用する請求項2、3、5?28に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえない。 イ 物性要件が広すぎる点に関して 訂正前の請求項1及び4に係る発明の物性要件のうち、「アッベ数」の上限値は、実施例に記載されたアッベ数の数値範囲から大きく外れており、屈折率を大きく(小さく)すると、アッベ数が小さく(大きく)なるという傾向があるとの光学ガラスの技術常識(特開平6-316433号公報の段落【0005】参照)を踏まえると、訂正前の請求項1及び4に係る発明の屈折率の数値範囲(1.800?1.830)を満足したまま、当該上限値にすることは困難であるから、訂正前の請求項1及び4に係る発明のアッベ数の数値範囲のうち、上記実施例に記載されたアッベ数の範囲から大きく外れた数値範囲のガラスは、発明の詳細な説明に記載された発明であると当業者が認識できる範囲のものであるいうことができない。 よって、訂正前の請求項1及び4に係る発明、並びに、これらを引用する請求項2、3、5?28に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえない。 ウ 組成要件が物性要件に対して広すぎる点に関して (ア)訂正前の請求項1に係る発明の各成分の含有量のうち、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO_(2)含有量」の上限値及び下限値、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量」の上限値、「WO_(3)含有量」の上限値、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量」の上限値及び下限値、並びに、「質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))」の上限値は、実施例に記載された各成分の含有量の数値範囲から大きく外れているため、本件特許明細書の記載や技術常識を考慮しても、訂正前の請求項1に係る発明の各成分の数値範囲において、訂正前の請求項1に係る発明の物性要件を満たす配合組成が存在することを当業者が認識できないから、訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 よって、訂正前の請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2、3、5?28に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえない。 (イ)訂正前の請求項4に係る発明の各成分の含有量のうち、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO_(2)含有量」の上限値及び下限値、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量」の上限値、「WO_(3)含有量」の上限値、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量」の上限値及び下限値、並びに、「SiO_(2)含有量」の上限値及び下限値は、実施例に記載された各成分の含有量の数値範囲から大きく外れているため、本件特許明細書の記載や技術常識を考慮しても、訂正前の請求項4に係る発明の各成分の数値範囲において、訂正前の請求項4に係る発明の物性要件を満たす配合組成が存在することを当業者が認識できないから、訂正前の請求項4に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 よって、訂正前の請求項4に係る発明及びこれを引用する請求項5?28に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正前の請求項1?28に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関する取消理由 上記(2)で指摘したとおり、訂正前の請求項1及び4に係る発明の組成要件は、実施例に記載された各成分の含有量の数値範囲から大きく外れており、さらに、物性要件についても、実施例に記載されている物性から大きく外れる範囲を含むため、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、訂正前の請求項1?28に係る発明を実施できるといえない。 したがって、訂正前の請求項1?28に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由の検討 (1)特許法第36条第6項第2号(明確性)に関する取消理由 本件発明1及び4の「Y_(2)O_(3)含有量が9?25%」との特定事項は、その下限値(9%)において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%」との特定事項が最小値(55%)である場合に、質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)は、約0.164(=9%/55%)であるため、「質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.15以上」との特定事項と矛盾しない。 また、本件発明1及び4の「ZnO含有量が0?2%」との特定事項は、その上限値(2%)において、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%」との特定事項におけるNb_(2)O_(5)含有量が5.0%である場合に、質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0.40となるため、「質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲」との特定事項と矛盾しない。 さらに、本件発明1及び4の「Y_(2)O_(3)含有量が9?25%」との特定事項は、その上限値(25%)において、「La_(2)O_(3)含有量が37%以上」との特定事項が最小値(37%)、「Gd_(2)O_(3)含有量が0?3%」との特定事項が最小値(0%)及び「Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満」との特定事が最小値(0%)である場合に、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)の合計含有量が62%(=37%+0%+25%+0%)になるため、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%」との特定事項と矛盾しない。 したがって、本件発明1及び4、並びに、これらを引用する本件発明2、3、5?11、15?28は明確である。 よって、特許法第36条第6項第2号に関する取消理由は理由がない。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に関する取消理由 ア 物性要件が不足している点に関して 本件特許明細書には、ZnOはガラスの熱的安定性を低下させる成分であるため、ZnO含有量を0?2%の範囲とすること、Nb_(2)O_(5)はガラスの熱的安定性を向上させる成分であり、質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)を小さくすることで、ガラスの熱的安定性が向上するため、質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)を0?1.0の範囲とすること、さらに、Y_(2)O_(3)はガラスの熱的安定性を向上させる成分であるが、多量の導入によりガラスの熱的安定性を低下させるため、Y_(2)O_(3)含有量を3?30%の範囲とすることが記載されている(段落【0013】及び【0028】)ことからみて、本件発明1及び4は、「Y_(2)O_(3)含有量が9?25%」、「ZnO含有量が0?2%」及び「質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲であり、ただしNb_(2)O_(5)を必須成分として含み」との特定事項を含むことによって、液相温度TLの物性要件の特定がなくとも、熱的安定性が優れたガラスであることを当業者であれば認識できる。 また、本件特許明細書には、WO_(3)は、分光透過率の短波長側の光吸収端を長波長化する成分であるところ、WO_(3)含有量を0?2%の範囲とすることで、前記光吸収端を短波長化することができ、接合レンズの作製に好適な吸収特性を実現できることが記載されている(段落【0005】及び【0030】)ことからみて、本件発明1及び4は、「WO_(3)含有量が0?2%」との特定事項を含むことによって、着色度λ5の物性要件の特定がなくとも、接合ガラスの作製に好適な吸収特性を有するガラスであることを当業者であれば認識できる。 イ 物性要件が広すぎる点に関して 本件発明1及び4では、「屈折率ndが1.800?1.830の範囲であり、アッベ数νdが45?47.0の範囲であり、かつ下記(2)式: nd>2.585-0.017×νd ・・・(2) を満たす」との物性要件が特定されている。 そして、屈折率ndが1.80445、アッベ数νdが46.42である実施例のガラス(No.23)を基本として、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書にガラスの熱的安定性を改善しつつ屈折率を高める成分と記載されているZrO_(2)(段落【0023】)の一部を、屈折率を高め、熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa_(2)O_(3)(段落【0018】及び【0020】)から置き換え、いずれも屈折率を高める成分と記載されているTiO_(2)とNb_(2)O_(3)(段落【0024】)を置き換えることによって、本件発明1及び4の屈折率ndが1.800?1.830の範囲を満たしつつ、アッベ数を47.0に近い値にまで増やすことを当業者であれば認識できるから、上記物性要件は、発明の詳細な説明の記載から当業者が認識できる範囲のものといえる。 ウ 組成要件が物性要件に対して広すぎる点に関して (ア)La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)の合計含有量の上限値及び下限値について 本件発明1及び4では、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%」と特定されている。 そして、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)の合計含有量の下限値に近い実施例におけるガラス(No.17)の当該合計含有量が57.4%であるところ、その屈折率ndは1.80362、アッベ数νdは46.51であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.17)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高め且つ熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa_(2)O_(3)(段落【0018】及び【0020】)の一部を、ガラスの熱的安定性を改善させつつ屈折率を高める成分と記載されているZrO_(2)(段落【0023】)や高屈折率成分と記載されているTa_(2)O_(5)(段落【0027】)に置き換えたり、ガラスの熱的安定性や熔融性を改善する成分と記載されているB_(2)O_(3)(段落【0017】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)の合計含有量が下限値(55%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.17)と同様に、上記2(2)アで示した本件発明の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 また、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)の合計含有量の上限値(63.1%)のガラスは、実施例のガラス(No.11)であるから、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)の合計含有量が上限値(63.1%)であるガラス組成が得られること、及び、当該ガラス組成のガラスが本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる。 (イ)ZrO_(2)含有量の上限値及び下限値について 本件発明1及び4では、「ZrO_(2)含有量が2?10%」と特定されている。 そして、ZrO_(2)含有量の上限値に最も近い実施例におけるガラスは、当該含有量が8.7%のガラス(No.23)であるところ、その屈折率ndは1.80445、アッベ数νdは46.42であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.23)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書にガラスの熱的安定性を改善しつつ屈折率を高める成分と記載されているZrO_(2)(段落【0023】)を、屈折率を高め且つ熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa_(2)O_(3)(段落【0018】及び【0020】)や、いずれも屈折率を高める成分と記載されているTiO_(2)やNb_(2)O_(3)(段落【0024】)と置き換えることによって増加させることで、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、ZrO_(2)含有量の上限値(10%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.23)と同様に、本件発明の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 また、ZrO_(2)含有量の下限値に最も近い実施例におけるガラスは、当該含有量が6.2%のガラス(No.13)であるところ、その屈折率ndは1.81690、アッベ数νdは45.64であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.13)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書にガラスの熱的安定性を改善しつつ屈折率を高める成分と記載されているZrO_(2)(段落【0023】)の一部を、ガラスの熱的安定性を改善しつつ屈折率を高めアッベ数の調整が可能な成分と記載されているNb_(2)O_(5)(段落【0013】及び【0024】)やガラスの熱的安定性や熔融性を改善する成分と記載されているB_(2)O_(3)(段落【0017】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、ZrO_(2)含有量の上限値(2%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.13)と同様に、本件発明の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 (ウ)TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)及びTa_(2)O_(5)の合計含有量の上限値について 本件発明1及び4では、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%」と特定されている。 そして、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)及びTa_(2)O_(5)の合計含有量の上限値に最も近い実施例におけるガラスは、当該含有量が4%のガラス(No.13)であるところ、その屈折率ndは1.81690、アッベ数νdは45.64であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.13)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書にガラスの熱的安定性を改善しつつ屈折率を高めアッベ数の調整が可能な成分と記載されているNb_(2)O_(5)(段落【0013】及び【0024】)を、ガラスの熱的安定性を改善しつつ屈折率を高める成分と記載されているZrO_(2)(段落【0023】)やガラスの熱的安定性や熔融性を改善する成分と記載されているB_(2)O_(3)(段落【0017】)と置き換えることによって増加させることで、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)及びTa_(2)O_(5)の合計含有量の上限値(5.0%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.13)と同様に、本件発明の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 (エ)WO_(3)含有量の上限値について 本件発明1及び4では、「WO_(3)含有量が0?2%」と特定されている。 そして、WO_(3)含有量が0%の実施例のガラス(No.14)に着目すると、その屈折率ndは1.81608、アッベ数νdは46.21であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.14)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高める成分と記載されているWO_(3)、ZrO_(2)、Ta_(2)O_(5)、La_(2)O_(3)及びNb_(2)O_(3)(段落【0018】、【0023】、【0024】及び【0030】)の間で、これら成分のアッベ数の影響(段落【0018】及び【0024】)や紫外線の透過率の影響(段落【0005】及び【0030】)を考慮して置換することによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、WO_(3)含有量の上限値(2%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例1のガラス(No.14)と同様に、本件発明1及び4の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 (オ)SiO_(2)及びB_(2)O_(3)との合計含有量の上限値及び下限値について 本件発明1及び4では、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%」と特定されている。 そして、B_(2)O_(3)及びSiO_(2)との合計含有量の上限値に最も近い実施例におけるガラスは、当該合計含有量が30.0%のガラス(No.15)であるところ、その屈折率ndは1.80405、アッベ数νdは46.31であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.15)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高める成分と記載されているLa_(2)O_(3)やY_(2)O_(3)(段落【0018】)の一部を、熱的安定性を改善しつつ屈折率を高める成分と記載されているZrO_(2)(段落【0023】)やガラスの熱的安定性や熔融性を改善する成分と記載されているB_(2)O_(3)(段落【0017】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、B_(2)O_(3)及びSiO_(2)との合計含有量が上限値(32%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.15)と同様に、本件発明の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 また、B_(2)O_(3)とSiO_(2)との合計含有量の下限値に最も近い実施例のガラスは、当該合計含有量が26.5%のガラス(No.11)であるところ、その屈折率は1.81791、アッベ数は46.05であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.11)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書にネットワークを形成する成分であり熱的安定性や熔融性を改善する成分と記載されているB_(2)O_(3)(段落【0015】及び【0017】)の一部を、ネットワークを形成する成分であり熱的安定性を改善する成分と記載されているSiO_(2)(段落【0015】及び【0016】)、アッベ数の調整に有効であり熔融性を改善する成分と記載されているZnO(段落【0028】)や屈折率や熱的安定性を高めたりアッベ数の調整に有効な成分と記載されているNb_(2)O_(3)(段落【0013】及び【0024】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、B_(2)O_(3)及びSiO_(2)との合計含有量が下限値(25%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.11)と同様に、本件発明の課題を解決できることも当業者であれば認識できる。 (カ)質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))の上限値について 本件発明1では、「質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が2.1/28.9以上9/26.6以下」と特定されている。 そして、質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))の上限値(9/26.6)のガラスは、実施例のガラス(No.14)であるから、本件発明1の物性要件を満たしつつ、質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が上限値(9/26.6)であるガラス組成が得られること、及び、当該ガラス組成のガラスが本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる。 (キ)SiO_(2)含有量の上限値及び下限値について 本件発明4では、「SiO_(2)含有量が2.9?10%」と特定されている。 そして、SiO_(2)含有量の上限値に最も近い実施例のガラスは、当該含有量が9%のガラス(No.14)であるところ、その屈折率ndは1.81608、アッベ数νdは46.21であり、本件発明4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.14)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に、ガラスのネットワークを形成する成分であって熱的安定性と熔融性を改善する成分として記載されているB_(2)O_(3)(段落【0015】及び【0017】)の一部を、ネットワークを形成する成分であり熱的安定性を改善する成分と記載されているSiO_(2)(段落【0015】及び【0016】)に置き換えることによって、本件発明4の物性要件を満たしつつ、SiO_(2)含有量が上限値(10%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラス(No.14)と同様に、本件発明の課題を解決できることもを当業者であれば認識できる。 また、SiO_(2)含有量の下限値(2.9%)のガラスは、実施例のガラス(No.15?18)であるから、本件発明4の物性要件を満たしつつ、SiO_(2)含有量が下限値(2.9%)であるガラス組成が得られること、及び、当該ガラス組成のガラスが本件発明の課題を解決できることを当業者であれば認識できる。 エ 小括 以上で検討したとおり、本件発明1及び4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 また、本件発明1を引用する本件発明2、3、5?11、15?28、及び、本件発明4を引用する本件発明5?11、15?28についても同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 よって、特許法第36条第6項第1号に関する取消理由は理由がない。 (3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関する取消理由 本件発明1の組成範囲の「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO_(2)含有量」の上限値及び下限値、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量」の上限値、「WO_(3)含有量」の上限値、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量」の上限値及び下限値、並びに、「質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))」の上限値、あるいは、本件発明4の組成範囲の「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO_(2)含有量」の上限値及び下限値、「TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量」の上限値、「WO_(3)含有量」の上限値、「SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量」の上限値及び下限値、並びに、「SiO_(2)含有量」の上限値及び下限値は、上記(2)で検討したとおり、本件特許明細書の記載に基づき、当業者が通常行う試行錯誤の範囲で、本件発明1及び4の物性要件を満たす具体的な各成分のガラス組成を決定できるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1?11、15?28を実施できるといえる。 よって、特許法第36条第4項第1号に関する取消理由は理由がない。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の検討 (1)特許法第29条第2項に関する申立理由 特許異議申立人2は、訂正前の請求項1?28に係る発明は、甲第1号証(特開2002-284542号公報)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?28に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであることを主張している(平成30年3月30日付けの特許異議申立書の第15?23頁の「ウ 引用発明の説明」及び「エ 本件発明と証拠に記載された発明との対比」参照)。 そこで検討するに、甲第1号証の【実施例】(段落【0041】?【0050】)の記載のうち、実施例6に注目すると、甲第1号証には、 「重量%表示で、SiO_(2)が1%、B_(2)O_(3)が25.49%、SiO_(2)+B_(2)O_(3)が26.49%、La_(2)O_(3)が40.85%、Gd_(2)O_(3)が12.85%、Y_(2)O_(3)が2.35%、La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)が56.05%、ZnOが2.25%、ZrO_(2)が6%、Nb_(2)O_(5)が9.25%、Ta_(2)O_(5)が0%、Li_(2)Oが0%、WO_(3)が0%のガラス組成を有し、屈折率[nd]が1.83261、アッベ数[νd]が42.2、液相温度が1131℃である光学ガラス。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 まず、本件発明1と甲1発明を対比すると、本件発明1のアッベ数が「45?47.0の範囲」であるのに対して、甲1発明のアッベ数が「42.2」である点で少なくとも相違している。 そして、上記相違点について検討すると、甲第1号証の段落【0011】には、「本発明の光学ガラスは、屈折率[nd]およびアッベ数[νd]が、下記の関係式 1.795≦nd≦1.850 41.0≦νd≦44.5 nd≧-0.01×νd+2.24 を全て満たすものである。」と記載されていることから、甲1発明のアッベ数を「41.0≦νd≦44.5」の範囲外である「45?47.0」とすることには阻害要因がある。 したがって、その他の点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 また、本件発明4について検討しても、本件発明4のアッベ数が「45?47.0の範囲」であるのに対して、甲1発明のアッベ数が「42.2」である点で少なくとも相違しているから、本件発明1に対する検討と同様に、本件発明4も、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 さらに、本件発明2、3、5?11、15?28は、本件発明1又は本件発明4を更に限定するものであるから、本件発明1及び4に対する検討と同様に、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 よって、特許異議申立人2の主張する申立理由は理由がない。 (2)特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に関する申立理由 ア 特許異議申立人2は、訂正前の請求項1及び4に係る発明において、「Y_(2)O_(3)含有量が3?30%」の特定事項は、実施例におけるY_(2)O_(3)含有量が7.0%?20.9%の範囲から大きく乖離しているし、また、「Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満」の特定事項の上限値は、実施例による実証がないため、「Y_(2)O_(3)含有量」の下限値(3%)又は上限値(30%)あるいは「Yb_(2)O_(3)含有量」の上限値(2%)である請求項1及び4に係る発明の光学ガラスは、課題を解決できると当業者が認識できないから、請求項1及び4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえず、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであることを主張している(平成30年3月30日付けの特許異議申立書の第26?27頁の「オ-1-4 Y_(2)O_(3)成分について」及び「オ-1-5 Yb_(2)O_(3)成分について」参照)。 そこで検討するに、本件発明1及び4における「Y_(2)O_(3)含有量が9?25%」との特定事項の下限値(9%)及び上限値(25%)、あるいは、「Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満」との特定事項の上限値(2%)は、実施例のガラス組成のY_(2)O_(3)含有量やYb_(2)O_(3)含有量と差異はあるものの、本件特許明細書の「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)は、いずれも分散を高めずに(アッベ数を低下させずに)屈折率を高める働きを有する成分である。」(段落【0018】)との記載を踏まえれば、実施例のガラス組成において、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)及びYb_(2)O_(3)を相互に置換することで、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、Y_(2)O_(3)含有量の下限値(9%)又は上限値(25%)、あるいは、Yb_(2)O_(3)含有量の上限値(2%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できるし、また、このように組成調整されたガラスが、実施例のガラスと同様に、本件発明の課題を解決できることを当業者であれば認識できる。 よって、特許異議申立人2の主張する申立理由は理由がない。 イ また、特許異議申立人2は、熱的安定性の指標である液相温度の測定方法は、確定的な技術常識も規格もないため、甲第2号証(特許第5168139号公報)、甲第3号証(特開2016-117598号公報)及び甲第4号証(特許第5979723号公報)に記載されているように各社各様に行われているため、本件特許明細書の段落【0062】に「(3)液相温度LT ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。」と記載されているのみでは、液相温度の具体的な測定方法が明らかでない。そのため、実施例のガラスを根拠として、訂正前の請求項1?28に係る発明が、課題を解決できるものであると当業者が認識できないし、実施例の記載に基づき、訂正前の請求項1?28に係る発明を再現できないから、請求項1?28に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであることを主張している(平成30年3月30日付けの特許異議申立書の第28?31頁の「オ-1-7-2 液相温度について」及び「オ-2 実施可能要件について」参照)。 そこで検討するに、液相温度は、本件発明の課題の1つである熱的安定性の指標にすぎず、液相温度の測定方法が厳密に記載されていなくとも、同一の測定方法で評価すれば、実施例のガラスの熱的安定性が従来技術より向上していることを確認できるから、実施例の記載に基づき、本件発明1?11、15?28が課題を解決できるものであると当業者が認識できるし、当業者が通常行う試行錯誤の範囲で、本件発明1?11、15?28を実施できるといえる。 よって、特許異議申立人2の主張する申立理由は理由がない。 5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件請求項1?11、15?28に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1?11、15?28に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項12?14は、訂正により削除されたため、本件請求項12?14に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 質量%表示で、 SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%、 La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%、 La_(2)O_(3)含有量が37%以上、 Gd_(2)O_(3)含有量が0?3%、 Y_(2)O_(3)含有量が9?25%、 Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満、 ZrO_(2)含有量が2?10%、 TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%、 ZnO含有量が0?2%、 WO_(3)含有量が0?2%、 であり、 質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲であり、ただしNb_(2)O_(5)を必須成分として含み、 質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が2.1/28.9以上9/26.6以下であり、 質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.15以上であり、 質量比La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.55以上であり、 屈折率ndが1.800?1.830の範囲であり、アッベ数νdが45?47.0の範囲であり、かつ下記(2)式: nd>2.585-0.017×νd ・・・(2) を満たすガラス。 【請求項2】 質量比(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)+TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が1.95以上である請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 質量比SiO_(2)/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が3.3/30以上である請求項1または2に記載のガラス。 【請求項4】 質量%表示で、 SiO_(2)とB_(2)O_(3)との合計含有量が25?32%、 SiO_(2)含有量が2.9?10%、 La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量が55?63.1%、 La_(2)O_(3)含有量が37%以上、 Gd_(2)O_(3)含有量が0?3%、 Y_(2)O_(3)含有量が9?25%、 Yb_(2)O_(3)含有量が0%以上2%未満、 ZrO_(2)含有量が2?10%、 TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の合計含有量が2.0?5.0%、 ZnO含有量が0?2%、 WO_(3)含有量が0?2%、 であり、 質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.40の範囲であり、ただしNb_(2)O_(5)を必須成分として含み、 質量比((La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)+TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)))が1.95以上、 質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.15以上であり、 屈折率ndが1.800?1.830の範囲であり、アッベ数νdが45?47.0の範囲であり、かつ下記(2)式: nd>2.585-0.017×νd ・・・(2) を満たすガラス。 【請求項5】 質量比Y_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))が0.18以上である請求項1?4のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項6】 質量比ZnO/Nb_(2)O_(5)が0?0.21の範囲である請求項1?5のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項7】 SiO_(2)含有量が5質量%以下である請求項1?6のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項8】 質量比(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3))が1.83以上である請求項1?7のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項9】 Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)OおよびCs_(2)Oの合計含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?8のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項10】 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が0?5質量%の範囲である請求項1?9のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項11】 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?10のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 B_(2)O_(3)含有量が27.1質量%以下である請求項1?11のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項16】 B_(2)O_(3)含有量が17.4質量%以上である請求項1?11および15のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項17】 Gd_(2)O_(3)含有量が0?1質量%の範囲である請求項1?11、15および16のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項18】 Gd_(2)O_(3)含有量が0?0.5質量%の範囲である請求項1?11および15?17のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項19】 Ta_(2)O_(5)含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?11および15?18のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項20】 SiO_(2)およびB_(2)O_(3)の合計含有量が31?44質量%の範囲であるガラスが除かれる、請求項1?11および15?19のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項21】 B_(2)O_(3)含有量が25?35質量%のガラスが除かれる、請求項1?11および15?20のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項22】 F含有量が0.1質量%未満である請求項1?11および15?21のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項23】 Al_(2)O_(3)含有量が0?2質量%の範囲である請求項1?11および15?22のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項24】 着色度λ5が335nm以下である請求項1?11および15?23のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項25】 比重を屈折率ndで除した値が2.00?2.56の範囲である請求項1?11および15?24のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項26】 請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。 【請求項27】 請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。 【請求項28】 請求項1?11および15?25のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-08-16 |
出願番号 | 特願2017-207906(P2017-207906) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C) P 1 651・ 537- YAA (C03C) P 1 651・ 851- YAA (C03C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 増山 淳子 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
金 公彦 宮澤 尚之 |
登録日 | 2018-01-26 |
登録番号 | 特許第6280284号(P6280284) |
権利者 | HOYA株式会社 |
発明の名称 | ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 |
代理人 | 特許業務法人特許事務所サイクス |
代理人 | 特許業務法人特許事務所サイクス |