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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1355953
異議申立番号 異議2018-700518  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-27 
確定日 2019-09-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6253618号発明「EBSPパターンの取得方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6253618号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?13〕について訂正することを認める。 特許第6253618号の請求項1?13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6253618号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成27年8月20日(パリ条約による優先権主張 2014年8月25日 欧州特許庁)に出願され、平成29年12月8日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1?13に係る特許に対し、平成30年6月26日に特許異議申立人 宮口聡(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月29日付けで取消理由が通知され、同年11月28日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成31年2月8日に申立人から意見書が提出され、さらに、同年3月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和元年6月13日に意見書の提出及び訂正請求(以下、当該訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ、同年7月24日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否

1 本件訂正の内容
(1)訂正事項1
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?8も同様に訂正する)ことを請求する。なお、下線は当審が付与したものであり、訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様)。

「微細集束された電子ビームを生成する電子鏡筒、EBSPパターンを検出する位置感受性を有する検出器、並びに、試料の保持及び位置設定を行う試料ホルダを備える荷電粒子装置内において、平坦な表面を有する試料の電子後方散乱パターン(EBSP)像を取得する方法であって、
前記電子ビームに対して前記試料を位置設定する段階、
前記試料上の衝突点に前記電子ビームを案内することで、後方散乱電子を前記検出器に照射する段階、及び、
前記ビームを定常状態に維持しながら前記検出器からの信号を取得する段階、
を有し、
前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に、電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子の信号は、EBSP像を生成するのに用いられ、かつ、
前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記電子ビームの軸に対して垂直である、
ことを特徴とする、方法。」

(2)訂正事項2
特許権者は、特許請求の範囲の請求項3を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4?8も同様に訂正する)ことを請求する。

「前記検出器が、様々なエネルギーバンドの範囲内の電子を検出するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。」

(3)訂正事項3
特許権者は、特許請求の範囲の請求項4を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?8も同様に訂正する)ことを請求する。

「前記検出器が、前記後方散乱電子が衝突する画素を有するセンサチップを供える検出器で、
前記センサチップは、各画素について、増幅器、比較器、及びカウンタを有するチップに結合される、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の方法。」

(4)訂正事項4
特許権者は、特許請求の範囲の請求項9を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10?13も同様に訂正する)ことを請求する。

「電子ビーム鏡筒とEBSPパターンを検出する画素化された検出器を備える荷電粒子装置であって、
前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に、入射電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
当該装置は、ビーム位置と前記検出器を制御するプログラム可能な制御装置を備え、かつ、
前記制御装置は、前記検出器からの信号を処理してEBSP像を生成するようにさらに構成され、
前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記入射電子ビームの軸に対して垂直である、
ことを特徴とする、荷電粒子装置。」

(5)訂正事項5
特許権者は、特許請求の範囲の請求項10を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11?13も同様に訂正する)ことを請求する。

「前記プログラム可能な制御装置が、前記EBSP像を自動的に処理することで、結晶方位を決定し、かつ、前記試料の結晶の結晶方位を示す像を生成するように構成される、請求項9に記載の荷電粒子装置。」

(6)訂正事項6
特許権者は、特許請求の範囲の請求項12を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する)ことを請求する。

「前記EBSPパターンを検出する前に、前記試料を加工するイオンビーム鏡筒をさらに有する、請求項9乃至11のうちいずれか一項に記載の荷電粒子装置。」

(7)訂正の単位について
訂正事項1?3は、訂正前に引用関係を有する請求項1?8に対して、訂正事項4?6は、訂正前に引用関係を有する請求項9?13に対して、請求されたものである。
よって、訂正事項1?6に係る本件訂正は、一群の請求項〔1?8〕、〔9?13〕ごとに請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正事項1は、以下の訂正事項1-1、訂正事項1-2、及び訂正事項1-3からなる。

(訂正事項1-1)「前記検出器は、」の後に「前記試料の前記電子鏡筒側に、電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、」を加える訂正。

(訂正事項1-2)「前記試料の平坦面に対する法線と前記電子ビームとのなす角は45°未満である」を「前記試料の平坦面は前記電子ビームの軸に対して垂直である」とする訂正。

(訂正事項1-3)「EBSPパターン及び/又はコッセル像を検出する(検出器)」を「EBSPパターンを検出する(検出器)」とし、「電子後方散乱パターン(EBSP)像及び/又はコッセル像を取得する方法」を「電子後方散乱パターン(EBSP)像を取得する方法」とし、「(前記検出器は、)所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子及び/又はX線を選択的に検出するように構成され、」を「(前記検出器は、)所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、」とし、及び「前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子及び/又はX線の信号は、EBSP像又はコッセル像を生成するのに用いられ、」を「前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子の信号は、EBSP像を生成するのに用いられ、」とする訂正。

イ 訂正事項1-1では、検出器に関してその構造と配置を特定し、訂正事項1-2では、試料への電子ビームの入射角をさらに限定し、訂正事項1-3では、択一的に記載されていたコッセル像の取得に関する記載をすべて削除するものであるから、訂正事項1-1、訂正事項1-2、及び訂正事項1-3は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。

ウ 訂正事項1-1については、段落【0071】に「電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように4つの正方形(又は長方形)の検出器を配置することによって、大きな許容角を有する複合検出器が生成される。・・・中心の小さな領域405は、電子ビームを通過させるために開いた状態に保たれる。」と記載されるとともに、図2には、試料の電子鏡筒側に配置された検出器が看取できる。また、訂正事項1-2については、段落【0061】に「試料は水平であって良いことに留意して欲しい。つまり表面は光軸に対して垂直である。」と記載されていることから、試料「表面は」電子ビームの軸である「光軸に対して垂直である」と理解することができる。そして、訂正事項1-3については、請求項の記載から、択一的に記載されていたコッセル像の取得に関する記載をすべて削除するものである。よって、訂正事項1-1、訂正事項1-2、及び訂正事項1-3は、いずれも新規事項の追加に該当しない。

エ 訂正事項1-1、訂正事項1-2、及び訂正事項1-3は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、いずれも、択一的に記載されていたコッセル像の取得に関する記載を削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。また、訂正事項2及び3は、いずれも新規事項の追加に該当せず、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項4について

ア 訂正事項4は、以下の訂正事項4-1、訂正事項4-2、及び訂正事項4-3からなる。

(訂正事項4-1)「前記検出器は、」の後に「試料の前記電子ビーム鏡筒側に、入射電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、」を加える訂正。

(訂正事項4-2)「前記試料の平坦面に対する法線と前記電子ビームとのなす角は45°未満である」を「前記試料の平坦面は前記入射電子ビームの軸に対して垂直である」とする訂正。

(訂正事項4-3) 「EBSPパターン及び/又はコッセルパターンを検出する(検出器)」を「EBSPパターンを検出する(検出器)」とし、「(前記検出器は、)所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子及び/又はX線を選択的に検出するように構成され、」を「(前記検出器は、)所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、」とし、及び「(前記制御装置は、)EBSP像及び/又はコッセル像を生成するようにさらに構成され、」を「(前記制御装置は、)EBSP像を生成するようにさらに構成され、」とする訂正。

イ 訂正事項4-1では、検出器に関してその構造と配置を特定し、訂正事項4-2では、試料への電子ビームの入射角をさらに限定し、訂正事項4-3では、択一的に記載されていたコッセル像の取得に関する記載をすべて削除するものであるから、訂正事項4-1、訂正事項4-2、及び訂正事項4-3は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。

ウ 訂正事項4-1については、段落【0071】に「電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように4つの正方形(又は長方形)の検出器を配置することによって、大きな許容角を有する複合検出器が生成される。・・・中心の小さな領域405は、電子ビームを通過させるために開いた状態に保たれる。」と記載されるとともに、図2には、試料の電子鏡筒側に配置された検出器が看取できる。また、訂正事項4-2については、段落【0061】に「試料は水平であって良いことに留意して欲しい。つまり表面は光軸に対して垂直である。」と記載されていることから、試料「表面は」電子ビームの軸である「光軸に対して垂直である」と理解することができる。そして、訂正事項4-3については、請求項の記載から、択一的に記載されていたコッセル像の取得に関する記載をすべて削除するものである。よって、訂正事項4-1、訂正事項4-2、及び訂正事項4-3は、いずれも新規事項の追加に該当しない。

エ 訂正事項4-1、訂正事項4-2、及び訂正事項4-3は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6は、いずれも、択一的に記載されていたコッセル像の取得に関する記載を削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。また、訂正事項5及び6は、いずれも新規事項の追加に該当せず、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
上記のとおり、訂正事項1?6に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?13〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1?13に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

(本件発明1)
「【請求項1】
微細集束された電子ビームを生成する電子鏡筒、EBSPパターンを検出する位置感受性を有する検出器、並びに、試料の保持及び位置設定を行う試料ホルダを備える荷電粒子装置内において、平坦な表面を有する試料の電子後方散乱パターン(EBSP)像を取得する方法であって、
前記電子ビームに対して前記試料を位置設定する段階、
前記試料上の衝突点に前記電子ビームを案内することで、後方散乱電子を前記検出器に照射する段階、及び、
前記ビームを定常状態に維持しながら前記検出器からの信号を取得する段階、
を有し、
前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に、電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子の信号は、EBSP像を生成するのに用いられ、かつ、
前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記電子ビームの軸に対して垂直である、
ことを特徴とする、方法。」

(本件発明2)
「【請求項2】
前記検出器が画素化された検出器である、請求項1に記載の方法。」

(本件発明3)
「【請求項3】
前記検出器が、様々なエネルギーバンドの範囲内の電子を検出するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。」

(本件発明4)
「【請求項4】
前記検出器が、前記後方散乱電子が衝突する画素を有するセンサチップを供える検出器で、
前記センサチップは、各画素について、増幅器、比較器、及びカウンタを有するチップに結合される、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の方法。」

(本件発明5)
「【請求項5】
前記結合がフリップチップ結合である、請求項4に記載の方法。」

(本件発明6)
「【請求項6】
前記電子ビームが、取得中、5keV以下のエネルギーを有する、請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の方法。」

(本件発明7)
「【請求項7】
前記電子ビームで前記試料を走査することによって前記試料を撮像する段階、及び、SE,BSE,X線、又は可視光の光子からなる群からの信号を検出する段階をさらに有する、請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の方法。」

(本件発明8)
「【請求項8】
前記所定の閾値がプログラム可能な所定の閾値である、請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の方法。」

(本件発明9)
「【請求項9】
電子ビーム鏡筒とEBSPパターンを検出する画素化された検出器を備える荷電粒子装置であって、
前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に、入射電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
当該装置は、ビーム位置と前記検出器を制御するプログラム可能な制御装置を備え、かつ、
前記制御装置は、前記検出器からの信号を処理してEBSP像を生成するようにさらに構成され、
前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記入射電子ビームの軸に対して垂直である、
ことを特徴とする、荷電粒子装置。」

(本件発明10)
「【請求項10】
前記プログラム可能な制御装置が、前記EBSP像を自動的に処理することで、結晶方位を決定し、かつ、前記試料の結晶の結晶方位を示す像を生成するように構成される、請求項9に記載の荷電粒子装置。」

(本件発明11)
「【請求項11】
前記所定の閾値がプログラム可能な所定の閾値である、請求項9又は10に記載の荷電粒子装置。」

(本件発明12)
「【請求項12】
前記EBSPパターンを検出する前に、前記試料を加工するイオンビーム鏡筒をさらに有する、請求項9乃至11のうちいずれか一項に記載の荷電粒子装置。」

(本件発明13)
「【請求項13】
前記試料の加工又はエッチングを改善する気体注入システムをさらに有する、請求項12に記載の荷電粒子装置。」

第4 各証拠の記載事項
申立人が、特許異議申立書に添付した甲第1号証?甲第8号証(以下、「甲1」?「甲8」という。)、平成31年2月8日提出の意見書に添付した参考資料1?参考資料3(以下、「参考1」?「参考3」という。)、令和元年7月24日提出の意見書に添付した参考資料4(以下、「参考4」という。)は、以下のとおりである。

甲1:国際公開第2013/050788号
甲2:S. Dabritz(aは、aに¨の「アー・ウムラウト」を表す), et al. , " Kossel and pseudo Kossel CCD pattern in comparison with electron backscattering diffraction diagrams " , APPLIED SURFACE SCIENCE , Vol.179 , 2001 , p.38-44
甲3:米国特許出願公開第2011/0186734号明細書
甲4:欧州特許出願公開第2151847号明細書
甲5:Andrew Deal , et al. , " Energy-filtered electron backscatter diffraction " , ULTRAMICROSCOPY , Vol.108 , 2008 , p.116-125
甲6:R. R. Keller & R. H. Geiss , " Transmission EBSD from 10 nm domains in a scanning electron microscope " , Journal of Microscopy , 2011 , p. 1-7
甲7:J. A. Venables & C. J. Harland , " Electron back- scattering patterns - A new technique for obtaining crystallographic information in the scanning electron microscope " , Philosophical Magagine , 1973 , p. 1193-1200
甲8:J. K. Farrer , et al. , " EBSD Pattern Collection and Orientation Mapping at Normal Incidence to the Electron Beam " , Microsc Microanal 9(Suppl 2), 2003 , p. 80-81
参考1:Delphic Chen, et al. , "Effect of microscopic parameters on EBSD spatial resolution" , Ultramicroscopy , Vol. 111 , 2011 , p. 1488-1494
参考2:D.J. Child, et al. , "The use of combined three-dimensional electron backscatter diffraction and energy dispersive X-ray analysis to assess the characteristics of the gamma/gamma-prime microstructure in alloy 720Li^(TM) " , Ultramicroscopy , Vol. 114 , 2012 , p. 1-10
参考3:O.C. Wells, et al. , "Use of Backscattered Electron Detector Arrays for Forming Backscattered Electron Images in the Scanning Electron Microscope" , SCANNING , Vol. 28 , 2006 , p. 27-31
参考4:米国特許第8729471号明細書

1 甲1の記載事項

(1)本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲1には、以下の記載がある。翻訳及び下線は当審による。以下同様である。

(甲1ア)第1頁第18?19行
「These two analysis techniques can be used to measure properties of the sample, for example crystal orientation and strain.」
(これらの2つの解析手法は、例えば結晶方位及び歪みのような試料の特性を測定するのに使用することができる。)

(甲1イ)第3頁第30?32行
「It is therefore desired improve the filters used in both Kossel X-ray and EBSD analysis to increase the signal to background ratio and to facilitate simpler operation of the apparatus.」
(それゆえ、シグナル-バックグラウンド(信号-背景)比を増加させ、装置のより簡易な操作を促進する、コッセルX線及びEBSDの解析の両方において使用されるフィルタを改良することが所望される。)

(甲1ウ)第4頁第22?末行
「In accordance with a first aspect of the present invention there is provided apparatus for detecting one or each of Kikuchi and Kossel diffraction patterns, the apparatus comprising:an electron column adapted in use to provide an electron beam directed towards a sample, the electron beam having an energy in the range 2keV to 50keV, and;a particle detector for receiving and counting particles from the sample due to interaction of the electron beam with the sample, the detector comprising an array of pixels and having a count rate capability to deal with at least 1000 particles per second for each pixel, and wherein; the particle detector is adapted to provide electronic energy filtering of the received particles in order to count the received particles which are representative of the said diffraction pattern.」
(本発明の第1の態様によれば、菊池及びコッセル回折パターンの1つ又はそれぞれを検出するための装置が提供される。その装置は、試料に対して向けられた電子ビームを提供するのに用いられるよう適合した電子カラムであって、電子ビームは2keV?50keVの範囲のエネルギーを有する電子カラムと、試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を受信し、カウントするための粒子検出器であって、画素アレイを有し、各画素は1秒当たり少なくとも1000個の粒子を処理するカウントレートの性能を有する粒子検出器とを備え、粒子検出器は、上記(当審注:菊池及びコッセル)回折パターンを示す受信粒子をカウントすべく、受信粒子の電子エネルギーでのフィルタリングを提供するよう適合される。)

(甲1エ)第5頁第11?13行
「The term "pixel" here refers generally to spatially separate sensitive regions of the detector, such that particles incident on two different pixels will be deemed to have hit two different regions of the detector.」
(「画素」という用語は、ここでは一般に検出器の空間的に離れた感受性領域を意味し、2つの異なる画素に入射する粒子は、検出器の2つの異なる領域を通過したことにあるとみなされる。)

(甲1オ)第6頁第18?20行
「Kikuchi diffraction patterns are detected in EBSD analysis and are detected due to elastically scattered electrons with energy close to the primary beam energy of the electron source.」
(菊池回折パターンは、EBSD解析において検出され、電子源の初期のビームエネルギーに近いエネルギーの弾性散乱された電子により検出される。)

(甲1カ)第6頁第24?26行
「On the other hand, the received particles representative of Kossel diffraction patterns are X-rays produced due to interaction of the electron beam with the sample which are then diffracted by the lattice planes.」
(他方、コッセル回折パターンを示す受信粒子は、試料との電子ビームの相互作用により生成され、それから格子平面で回折するX線である。)

(甲1キ)第8頁第24?28行
「Of course, there may be some "background" particles with an energy satisfying this threshold that will be counted, but this feature of the present invention provides a convenient way of increasing the signal to background ratio of the detected diffaction patterns without the requirement for bulky high voltage electrostatic filters.」
(勿論、カウントされるであろう粒子として、この閾値を満たすエネルギーを有する「背景」粒子が存在し得る。しかし、本発明のこの特徴は、バルクの高電圧静電フィルタの要求なしに、検出される回折パターンのシグナル-バックグラウンド比を増大させる、便利な方法を提供する。)

(甲1ク)第10頁末行?第11頁第7行
「However, the diffraction patterns can also be detected in transmission, where the detector is positioned on the opposite side of the sample to the electron beam. In this architecture the received particles do not have a component of their trajectory back along the electron beam axis, with respect to the sample. In transmission EBSD, thereceived "signal" consists of elastically scattered electrons that have travelled through the sample rather than having been reflected from it. Likewise, in transmission Kossel the received "signal" consists of X-rays that have travelled through the sample.」
(しかし、回折パターンは、検出器が電子ビームに対して試料の反対側に配置されている、透過においても検出することができる。このアーキテクチャでは、受信される粒子は、試料に対して、電子ビーム軸に沿った軌道の成分を有してない。透過EBSDにおいて、受信される「信号」は、試料から反射されたものではなく、むしろ試料を通過して弾性散乱された電子からなる。同様に、透過コッセルにおいて、受信される「信号」は、サンプルを通過したX線からなる。)

(甲1ケ)第11頁第11?13行
「Such a detector will not be limited to the detection of electrons, and will also be capable of detecting other particles such as X-rays and photons with energy satisfying the threshold(s) of the detector.」
(そのような検出器は、電子の検出に限定されず、検出器の閾値を満たすエネルギーを有するX線、フォトン等の他の粒子を検出する性能をも有するであろう。)

(甲1コ)第11頁第20?30行
「In accordance with a second aspect of the present invention there is provided a method for detecting one or each of Kossel and Kikuchi diffraction patterns, the method comprising: operating an electron column such that an electron beam having an energy in the range 2keV to 50keV impinges upon a sample; receiving, at a particle detector, particles from the sample due to interaction of the electron beam with the sample, the particle detector comprising an array of pixels, each pixel having a count rate capability to deal with at least 1000 particles per second; electronically filtering, at the particle detector, the energy of each received particle; and counting, at the particle detector and based on the electronic filtering, the received particles representative of the said diffraction pattern.」
(本発明の第2の態様によれば、菊池及びコッセル回折パターンの1つ又はそれぞれを検出するための方法が提供され、この方法は、2keV?50keVの範囲のエネルギーを有する電子ビームが試料上に衝突するように電子カラムを操作する段階と、試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を粒子検出器で受信する段階であって、粒子検出器は画素アレイを有し、各画素は1秒当たり少なくとも1000個の粒子を処理するカウントレートの性能を有する段階と、粒子検出器において、各受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする段階と、粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき上記(当審注:菊池及びコッセル)回折パターンを表す受信粒子をカウントする段階とを備える。)

(甲1サ)第11頁第32行?第12頁第3行
「Preferably, the step of electronically filtering the energy of each received particle includes providing at least one adjustable energy threshold. This advantageously allows filtering of background beams in Kossel and EBSD analysis to be carried out electronically,removing the requirement for physical absorption or electrostatic filters, as described above.」
(好ましくは、各受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする段階は、少なくとも1つの調整可能なエネルギー閾値を提供することを含む。上述されたように、これは、有利に電子的にコッセル及びEBSD解析でのバックグラウンドビームのフィルタリングを可能とし、物理的な吸収または静電的なフィルタの要求を取り除く。)

(甲1シ)第12頁第9?18行
「Preferably, the method may further comprise the step of adjusting the adjustable energy threshold between a first setting and a second setting. This advantageously allows Kossel X-ray analysis and EBSD analysis to be performed on a sample, wherein when performing Kossel analysis the adjustable energy threshold is set to a first setting and when performing EBSD analysis the adjustable energy threshold is set to a second setting. Here, at the first setting the particle counters are adapted toprovide electronic energy filtering acting as a band-pass filter and at the second setting the particle counters are adapted to provide electronic energy filtering acting as a high-pass filter. A particle counter according to the second aspect of the invention can also act as a low-pass filter.」
(好ましくは、方法は、第1の設定及び第2の設定の間で調整可能なエネルギー閾値を調整する段階を備え得る。これは、有利に、コッセルX線解析およびEBSD解析が、試料に実行されることを可能とする。コッセル解析を実行する場合、調整可能なエネルギーは第1の設定に設定され、EBSD解析を実行する場合、調整可能なエネルギーは第2の設定に設定される。ここで、第1の設定では、粒子カウンタは、バンドパスフィルタとして電子エネルギーフィルタリングを提供するよう適合され、第2の設定では、粒子カウンタはハイパスフィルタリングを提供するよう適合される。本発明の第2の態様に係る粒子カウンタは、ローパスフィルタとしても動作し得る。)

(甲1ス)第12頁第30?末行
「However, using the present method, the selected area of the sample can be analysed by both Kossel and EBSD simply by switching the electronic thresholding between first and second settings.」
(しかしながら、本方法を使用すると、単に第1の設定と第2の設定との間の電気的な閾値を切り替えることにより、試料の選択された領域がコッセル及びEBSDの両方により解析できる。)

(甲1セ)第14頁第2?3行
「Figure 1 shows a conventional apparatus used for performing Kossel X-ray analysis. A focussed electron beam 1 is directed towards a sample 2.」
(図1は、コッセル回折X線分析のために使用される従来の装置を示す。集束された電子ビーム1が試料2に向けられる。)

(甲1ソ)第15頁第18?末行
「Referring now to Figure 2, this shows a schematic arrangement of an apparatus for performing microdiffraction analysis on a sample according to an embodiment of the invention.

An electron beam 101 is directed towards and impinges upon a sample 102. The sample 102 is supported on a platen (not shown) in the chamber of a scanning electron microscope (SEM). The sample is tilted to a desired angle such that particles 103 (including elastically and inelastically backscattered electrons and X-rays) resulting from interaction of the electron beam with the sample are received by the detector 111. The particles received by the detector include both "signal" particles representative of a diffraction pattern -elastically scattered electrons in the case of EBSD and diffracted X-rays in the case of Kossel - as well as "background" particles such as low energy inelastically scattered electrons and Bremsstrahlung X-rays generated due to source electrons decelerating in the sample.」
(ここで図2を参照すると、これは、本発明の実施形態によれば、試料のミクロ回折分析を行うための装置の概略構成を示す図である。

電子ビーム101は、試料102に向けられ、試料102に衝突する。試料102は、走査型電子顕微鏡(SEM)のチェンバ内で、平坦面(不図示)上に支持される。試料との電子ビームの相互作用によりもたらされる(弾性的及び非弾性的後方散乱電子及びX線を含む)粒子103が、検出器111により受信されるよう、試料は、所望の角度に傾けられる。検出器により受信される粒子は、EBSDの場合に弾性的に散乱された電子及びコッセルの場合の回折X線を含む、回折パターンを示す「信号」粒子と同様に、低エネルギーの非弾性散乱電子及び試料に減速されたソースである電子により生成される制動放射X線等の「背景」粒子を含む。)

(甲1タ)第16頁第1?9行
「In the arrangement shown in Figure 2, the detector is positioned on the same side of the sample as the incident electron beam;hence the arrangement is such that the particles received from the sample 103 have a component of their trajectory back along the beam direction 101 with respect to the sample 102. However, the arrangement it not limited to this "reflection" method, and it is also possible to position the detector 111 on the opposite side of the sample to the incident electron beam. In such a "transmission" arrangement, the particles received from the sample 103 do not have a component of their trajectory back along the beam direction 101 with respect to the sample 102.」
(図2に示す配置では、検出器は、入射電子ビームと同じ側の試料の上に配置される。したがって、試料103から受信された粒子が、試料102に対してビーム方向101に沿って戻る軌道成分を有するような配置である。しかしながら、この配置はこの「反射」方法に限定されず、また、入射電子ビームに試料の反対側に検出器111を位置付けることが可能である。このような「透過」配置では、試料103から受信された粒子は、試料102に対してビーム方向101に沿って戻る軌道成分を有していない。)

(甲1チ)第16頁第11?14行
「The beam 103 from the sample is divergent, thus it is advantageous to position the detector 111 as close as possible to the sample so as to maximise the solid angle of particles impinging upon it. Typically, the distance "a" in Figure 2 is approximately 15-20mm. 」
(試料からのビーム103は発散光であるので、試料に検出器111にできるだけ近く位置決めすることが有利であり、それに影響を与える粒子の立体角を最大にすることができる。典型的には、図2における「a」の距離は約15mm?20mmである。)

(甲1ツ)第16頁第16?26行
「Figure 3 is a diagram showing a section of detector 111 in one embodiment of the invention. The particle detector 111 is an example of a "direct detector", which does not require the phosphor screen 4 or the optic coupling 5 of the conventional apparatus. The detector comprises an array of pixels 112a. Four such pixels 112a are shown in Figure 3; however a practical detector might typically comprise an array of 256x256 pixels, each of pitch 55μm. The array of pixels (shown generally at 109) is typically a monolithic semiconductor such as silicon, GaAs, or Cd(Zn)Te, arranged into an array. In this embodiment the array of pixels is bump bonded to an array 110 of particle counters 112b, wherein the array of particle counters has the same pitch and arrangement as the pixel array 109. An individual particle counter is shown at 112b. 」
(図3は、本発明の一実施形態で、検出器111の断面を示す図である。粒子検出器111は、「直接検出器」であり、従来の装置の蛍光体スクリーン4又は光学的カップリング5を必要としない例である。検出器は、画素112aのアレイを含む。4個の画素112aが図3に示される;しかしながら、実際的な検出器は、典型的には256×256画素、各ピッチ55μmのアレイを含んでいてもよい。画素(符号109で示す)アレイは、典型的には、シリコン、GaAsまたはCd(Zn)Teなどのモノリシック半導体である。この実施形態において、画素アレイは、粒子カウンタ112bのアレイ110とバンプ接合し、粒子カウンタのアレイは、画素アレイ109と同じピッチ及び同じ配列を有している。個々の粒子カウンタは、112bで示されている。)

(甲1テ)第17頁第6?10行
「Each particle counter 112b has its own electronic processing built in and generates its own output signal. Each particle counter 112b generates its own output signal along coupling 113 to image processing unit 107. In one embodiment the detector may correlate the output signals from each sensor to provide a single signal to the image processing unit 107 (see Figure 2). 」
(各粒子カウンタ112bは、それ自身の電子処理を内蔵しており、それ自身の出力信号を生成する。各粒子カウンタ112bは、それ自身の出力信号を連結部材113に沿って画像処理部107に生成する。一実施形態では、検出器は、各センサから単一の出力信号を画像処理部107への出力信号に相互関連付けてもよい。)

(甲1ト)第17頁第25?28行
「Each particle counter 112b has pulse processing electronics, wherein each "event" to be counted is a pulse of charge created by an incident particle depositing energy in a pixel 112a. The pulse-processing electronics include an amplifier, a discriminator and a counter.」
(各粒子カウンタ112bは、パルス処理電子機器を有し、ここで、計数される各「事象」は、画素112aの入射粒子エネルギーによって生成された電荷パルスである。パルス処理電子機器は増幅器、弁別器およびカウンタを含む。)

(甲1ナ)第24頁第15?17行
「An example of a direct detector is the Medipix2 detector, which is an array of 256x256 pixels each of area 55μm^(2), which has been demonstrated to have an energy resolution of approximately 2.5keV.」
(直接検出器の一例は、Medipix2検出器(当審注:登録商標 以下同様)であり、Medipix2検出器は、各領域55μm^(2)の256×256の画素アレイで、約2.5keVのエネルギー分解能を有することが実証されている。)

(甲1ニ)FIG.2には、以下の図面が示されている。


(甲1ヌ)FIG.3には、以下の図面が示されている。


(2)甲1発明

ア 上記(甲1セ)の「図1は、コッセル回折X線分析のために使用される従来の装置を示す。集束された電子ビーム1が試料2に向けられる。」との記載によれば、上記(甲1ウ)の「試料に対して向けられた電子ビーム」は、「試料に対して向けられた集束された電子ビーム」であることが理解できる。

イ 上記(甲1ニ)FIG.2において、試料102は、「平板状の試料」であることが看取できる。

ウ 上記ア及びイを含め上記(1)の記載を総合すると、甲1には、次の方法発明(以下、「甲1方法発明」という。)及び装置発明(以下、「甲1装置発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1方法発明)
「走査型電子顕微鏡(SEM)のチェンバ内で、平坦面上に支持される平板状の試料に対して向けられた集束された電子ビームを提供するのに用いられるよう適合した電子カラムと、
試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を受信し、カウントするための粒子検出器であって、画素アレイを有する粒子検出器とを備え、
粒子検出器は、菊池回折パターンを示す受信粒子をカウントすべく、受信粒子の電子エネルギーでのフィルタリングを提供するよう適合され、
画素アレイは、粒子カウンタのアレイとバンプ接合し、各粒子カウンタは、それ自身の出力信号を画像処理部に生成し、
試料との電子ビームの相互作用によりもたらされる(弾性的後方散乱電子を含む)粒子が、粒子検出器により受信されるよう、試料は、所望の角度に傾けられ、
粒子検出器は、入射電子ビームと同じ側の試料の上に配置され、試料から受信された粒子が、試料に対してビーム方向に沿って戻る軌道成分を有するような反射配置である、
菊池回折パターンを検出するための装置を用いて、菊池回折パターンを検出するための方法であって、
電子ビームが試料上に衝突するように電子カラムを操作する段階と、
試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を粒子検出器で受信する段階と、
粒子検出器において、受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする段階と、
粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき菊池回折パターンを表す受信粒子をカウントする段階とを備え、
受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする段階は、エネルギー閾値を調整する段階を備え、EBSD解析を実行する場合、調整可能なエネルギーは第2の設定に設定され、第2の設定では、粒子カウンタはハイパスフィルタリングを提供するよう適合され、
菊池回折パターンは、EBSD解析において検出される、
方法。」

(甲1装置発明)
「走査型電子顕微鏡(SEM)のチェンバ内で、平坦面上に支持される平板状の試料に対して向けられた集束された電子ビームを提供するのに用いられるよう適合した電子カラムと、
試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を受信し、カウントするための粒子検出器であって、画素アレイを有する粒子検出器とを備え、
粒子検出器は、菊池回折パターンを示す受信粒子をカウントすべく、受信粒子の電子エネルギーでのフィルタリングを提供するよう適合され、
画素アレイは、粒子カウンタのアレイとバンプ接合し、各粒子カウンタは、それ自身の出力信号を画像処理部に生成し、
試料との電子ビームの相互作用によりもたらされる(弾性的後方散乱電子を含む)粒子が、粒子検出器により受信されるよう、試料は、所望の角度に傾けられ、
粒子検出器は、入射電子ビームと同じ側の試料の上に配置され、試料から受信された粒子が、試料に対してビーム方向に沿って戻る軌道成分を有するような反射配置である、
菊池回折パターンを検出するための装置であって、菊池回折パターンを検出するための方法として、
電子ビームが試料上に衝突するように電子カラムを操作する段階と、
試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を粒子検出器で受信する段階と、
粒子検出器において、受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする段階と、
粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき菊池回折パターンを表す受信粒子をカウントする段階とを備え、
受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする段階は、エネルギー閾値を調整する段階を備え、EBSD解析を実行する場合、調整可能なエネルギーは第2の設定に設定され、第2の設定では、粒子カウンタはハイパスフィルタリングを提供するよう適合され、
菊池回折パターンは、EBSD解析において検出される、
装置。」

2 甲2の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲2には、以下の記載がある。

(甲2ア)第38頁左?右欄
「(a)Lattice source interferences (LSI), i.e. interferences by the Kossel technique, are obtained when a finely focused beam excites the atoms in a single-crystal volume to emit their characteristic X-rays(λ specimen).」
((a)格子ソース干渉(LSI)、即ち、コッセル法による干渉は、微細収束された電子ビームが単位結晶体積中の原子を励起して、特性X線(λspecimen)を放出するよう、単一の格子体積中の原子を励起する場合に得られる。)

(甲2イ)第39頁左?右欄
「(b)Divergent beam X-ray interferences (DBI) i.e. interferences by the pseudo Kossel technique, are generated when an electron beam is focused on the target foil and excites the atoms of a metal foil (in this case Fe)to emit their characteristic X-rays (λ target).」
((b)発散ビームX線干渉(DBI)、即ち、擬コッセル法による干渉は、電子ビームが、標的箔上に集中され、金属箔(この場合Fe)の原子を励起して、それらの特性X線(λtarget)を放出する場合に生成される。)

(甲2ウ)第40頁左欄
「(c)Electron backstattering diffraction (EBSD) originates when a fine-focused electron beam is incident on a single-crystalline specimen area, generating quasi-elastically scattered electrons there.」
((c)微細集中した電子ビームが単一の結晶試料領域に入射し、準弾性散乱された電子をそこで生じる場合、電子後方散乱回折(EBSD)が生じる。)

(甲2エ)第41頁 Fig.2の説明文
「Fig.2 Information by means of electron,ion and light beams in the scanning electron microscope CamScan CS44 and schematic view of the principle of the detection of LSI, DBI and EBSD with the high-resolution CCD camera (EDX: energy dispersive X-ray microanalysis; SED: secondary energy detector; BED: backscattered electron detector; AED: absorbed electron detector; IBSC: ion beam slope cutting method; OM: optical microscope; XSM: X-ray shadow microscopy; IRC: infra red camera; DBI: divergent beam X-ray interferences; LSI: lattice source interferences; EBSD: electron back scattering diffraction; CCDC: charged coupled device camera).」
(図2 走査型電子顕微鏡CamScanCS44での電子、イオン、および光線による情報、ならびに、高解像度CCDカメラによるLSI、DBIおよびEBSDの検出の原理の概略図(EDX:エネルギー分散型X線微細分析、SED:二次エネルギー検出器、BED:後方散乱電子検出器、AED: 吸収電子検出器、IBSC:イオンビームスロープカッティング法、OM:光学顕微鏡、IRC:赤外線カメラ、DBI:発散ビームX線干渉、LSI:格子ソース干渉、EBSD:電子後方散乱回折、CCDC:電荷結合素子カメラ)

3 甲3の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲3には、以下の記載がある。

(甲3ア)
「[0008] The present invention provides an electron microscope, including; an electron beam column for erradiating a specimen with an electron beam; a specimen stage that supports the specimen; a focused ion beam column for irradiating the specimen with a focused ion beam and forming a section; and a scattered electron detector for detecting backscattered electrons produced from the section by irradiation with the electron beam. According to the electron microscope, the section processed by the focused ion beam can be irradiated with the electron beam and the backscattered electrons that are released from the specimen can be detected. Consequently, processing and EBSP measurement can be performed in situ inside the same device, so EBSP measurement can be performed efficently.」
([0008]本発明は、電子顕微鏡を提供する。試料を電子ビームで照射する電子ビームカラムと、前記試料を支持する試料ステージと、前記試料に集束イオンビームを照射して断面を形成する集束イオンビームカラムと、前記電子ビームの照射により前記部分から発生した後方散乱電子を検出する散乱電子検出器とを備える。電子顕微鏡によれば、集束イオンビームで加工された断面に電子ビームを照射することができ、試料から放出された後方散乱電子を検出することができる。その結果、同一デバイス内で処理とEBSP測定をその場で行うことができ、EBSP測定を効率よく行うことができる。)

4 甲4の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲4には、以下の記載がある。

(甲4ア)
「[0004] The known method discloses forming samples from a work piece such as a semiconductor wafer by first inserting the wafer in a Focused Ion Beam apparatus (FIB). A wedge or lamella of material is formed by milling a trench with a focused ion beam and then separating the wedge or lamella from the work piece. This wedge or lamella, with a thickness in excess of the desired thickness of e.g. 50nm, is attached to a manipulator prior to the separation with e.g. ion beam induced deposition (IBID). Apart of the wedge or lamella is then machined to a membrane with the desired thickness by miling with the focused ion beam, thereby forming the sample.」
([0004]既知の方法は、最初にウェハを集束イオンビーム装置(FIB)に挿入することによって、半導体ウェハなどのワークピースからサンプルを形成することを開示する。楔または薄板状の材料は、集束イオンビームでトレンチをミリングし、次に楔または薄板をワークヒースから分離することによって形成される。例えば50nmのような所望の厚さを超える厚さを有する、この楔または薄板は、例えばイオンビーム析出(IBID)による分離の前にマニピュレータに取り付けられる。次に、楔または薄板の一部は、集束イオンビームでミリングすることによって所望の厚さの膜に機械加工され、それによりサンプルを形成する。)

(甲4イ)
「[0014] Inventors found that passivation not only resulted in TEM samples with improved quality, but that also samples used for e.g. Electron Back Scattered Patterning (EBSP) prepared with a FIB showed improved quality, resulting in e.g. better detection of Kikuchi lines. It is noted that EBSP samples are not thinned, but FIB preparation is used to obtain a smoothened and cleaned surface.」
([0014]発明者は、パッシベーションが、改善された品質を有するTEM試料をもたらしたばかりでなく、例えば、FIBを用いて製造された電子後方散乱パターニング(EBSP)は、改善された品質を示し、菊池線のより良い検出をもたらす。EBSP試料は薄膜化されないが、平滑化され清浄化された表面を得るためにFIB調製物が使用されることに留意されたい。)

(甲4ウ)
「[0019] As known to the person skilled in the art a Gas Injection System (GIS) is used in many FIB's to admit gasses to the chamber where a sample resides. Typically admission of gas is used for enhanced etching of the sample or depositing material on the sample. By admitting a proper gas to the sample, at the proper moment, a passivation layer is applied to the sample.」
([0019]当業者に知られているように、ガス噴射システム(GIS)は、試料が存在するチャンバにガスを導入するために、多くのFIBにおいて使用されている。典型的には、ガスの導入は、試料のエッチングを増強するため、または試料上に材料を堆積させるために使用される。適当なガスを試料に導入することにより、適切な時期に、パッシベーション層が試料に適用される。)

(甲4エ)
「[0045] In step 208 the sample is finally inspected in the TEM. The inspection may include imaging of the electron beam transmitted through the sample, determining energy losses of the transmitted electrons, detecting diffractograms, detecting secondary electrons, back-scattered electrons, X-rays, and/or e.g. light generated in the sample as a result of the irradiation with the electron beam, etc.」
([0045]ステップ208において、サンプルは、TEMにおいて最終的に検査される。検査には、試料を透過した電子ビームの画像化する段階と、透過電子のエネルギー損失の判定をする段階と、回折図形を検出する段階と、電子ビームに照射される結果物としての、二次電子、後方散乱電子、X線、および/または、例えば試料の中で生成される光の検出などが含まれる。)

(甲4オ)
「[0047] It is noted that although the method is described for and especially suited for forming samples for a TEM, also other inspection techniques using other instruments may benefit from the method according to the invention. Such a technique is the earlier mentioned preparation of EBSP samples. It is noted that inventors observed that EBSP samples prepared with a FIB and analysed in-situ with EBSP (so: without exposing the sample to atmosphere), may deteriorate due to e.g. slow oxidation caused by residual gasses in the apparatus. This occurs e.g. when analysing titanium samples, titanium being a very reactive material. Therefore passivation may be preferred when analysing a EBSP sample in-situ or ex-situ.」
([0047]この方法は、TEMのための試料を形成するために記載され、特に適しているが、他の機器を用いる他の検査技術も本発明による方法の恩恵を受けることができることに留意されたい。そのような技術には、前述のEBSPサンプルの調製がある。本発明者らは、FIBを用いて調製し、その場でEBSPで分析した(すなわち、試料を大気にさらすことなく)。EBSP試料は、例えば、装置内の残留ガスによって引き起こされる遅い酸化により劣化し得る。例えばチタン試料を分析する場合、チタンは非常に反応性の高い材料であるために、このような劣化が発生する。したがって、EBSP試料をその場で、または異なる場所で分析する場合に、パッシベーションが好ましいことがある。)

5 甲5の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲5には、以下の記載がある。

(甲5ア)第117頁左欄
「1.2. EBSD energy filter
STAIB Instruments Inc. developed the energy filter we used in this work [8], and it is schematically shown in Fig.1. Two electrostatic lenses (L1, L2) collimate the backscattered electrons so that they approach a fine, planar, wire grid (G) at normal incidense. The electrons maintain their spatial distribution as they approach the grid, and a voltage applied to the grid induces a filtering action. Electrons with energies below the grid potential energy, the cutoff energy, are repelled; consequently, they are eliminated from the EBSD pattern. Electrons with energies above the cutoff pass through the filtering grid, and they are reaccelerated by a third electrostatic lens (L3) towards a phosphor screen (S). The EBSD pattern on the screen is digitally captured by a cooled, low-noise CCD camera.
The cutoff energy of the filter is tunable from 0 to 20 keV with better than 10 eV resolution, enabling a precise investigation of contributing electron energies. Moreover, the lens settings scale automatically with cutoff energy, so that focusing at a single cutoff energy ensured the EBSD pattern was filtered with a sharp energy cutoff through the entire energy range of the filter.」
(1.2.EBSDエネルギーフィルタ
STAIB Instruments社は、本研究で使用したエネルギーフィルタを開発し[8]、図1に模式的に示した。2つの静電レンズ(L1、L2)は、後方散乱された電子を較正し、通常の衝突時に、細かい、平面状のワイヤグリッド(G)に近づくようにする。電子はグリッドに近づくにつれてその空間分布を維持し、グリッドに印加された電圧はフィルタリング作用を誘発する。グリッドポテンシャルエネルギー、即ちカットオフエネルギー以下のエネルギーを有する電子が反発される。その結果、それらはEBSDパターンから排除される。カットオフ以上のエネルギーを有する電子は、フィルタリンググリッドを通過し、第3の静電レンズ(L3)によって蛍光スクリーン(S)に向かって再加速される。スクリーン上のEBSDパターンは、冷却された低ノイズCCDカメラによってデジタルキャプチャされる。
フィルタのカットオフエネルギーは、10eV分解能よりも良い0?20keVに調可能で、電子エネルギーの寄与を正確に調べることが出来る。さらに、レンズ設定はカットオフエネルギーで自動的に調整されるため、単一のカットオフエネルギーでの収束により、EBSDパターンがフィルタの全エネルギー範囲でシャープなエネルギーカットオフでフィルタリングされることを保証した。)

(甲5イ)第117頁右欄
「Using a 15 keV beam, we digitally recorded a series of EBSD patterns for each crystal, varying the filter cutoff energy from 0 to 15 keV over 48 increments. The values of the cutoff energy used are shown in Table 1.」
(15keVのビームを用いて、各クリスタルに一連のEBSDパターンをデジタル記録し、フィルターのカットオフエネルギーを0?15keVまで48段階で漸増させた。使用したカットオフエネルギーの値を表1に示す。)

(甲5ウ)第118頁左欄
「We obtained more quantitative contrast data by focusing on the strongest Kikuchi band observed within the EBSD patterns for the fixed orientation of each material. These were {2 2 0},{1 1 0}, and {2 0 0} for the Si, Fe, and Ir patterns, respectively. Averaging the pixel values along lines parallel to a band (on the order of 200 values per line) produced plots, exemplified by Fig. 3, of the contrast across the band. Fig. 3 corresponds to the {2 2 0} band in an unfiltered Si EBSD pattern.」
(各材料に固定された配向のEBSDパターン内で観察された最も強い菊池バンドに焦点を当てることにより、より定量的なコントラストデータを得た。これらは、それぞれSi、Fe、およびIrパターンについて{220}、{110}、および{200}であった。バンドに平行な線に沿って画素値を平均化すると(線ごとに200個の値のオーダー)、図3に例示されるような、帯域にわたるコントラストのプロットが生成された。図3は、フィルタリングされていないSIEBSDパターンにおける{220}バンドに対応する。)

(甲5エ)第119頁右欄
「We conducted many individual experiments with different samples, beam energies, and filter settings to confirm that this observation was real.」
(我々は、この観察が正しいことを確認するために、異なるサンプル、ビームエネルギー、およびフィルタ設定を用いて多くの個別の実験を行った。)

(甲5オ)第122頁右欄
「A Monte Carlo simulation provides the necessary clarification. We used a single-scattering Monte Carlo program [10] to simulate the electron exit depth as a function of energy for Si. To better model low-energy electrons (and high atomic number materials), we modified the program to utilize the tabulated Mott cross section after [12,13].」
(モンテカルロ・シミュレーションにより必要な内容が明らかとなる。我々はSiについてのエネルギーの関数として出射電子深さをシミュレートするために、単一の散乱のモンテカルロプログラム[10]を使用した。低エネルギーの電子(および原子番号の高い物質)をよりよくモデル化するために、我々は[12、13]の後に集計されたMott断面積を利用するようにプログラムを修正した。)

6 甲6の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲6には、以下の記載がある。

(甲6ア)第3頁左欄
「All t-EBSD data were collected by use of a TSL/EDAX Digiview 1612 high-speed CCD camera with a P-22 high intensity phosphor, mounted on a LEO 1525 field-emission SEM. Figure 1 shows an infrared image of the specimen-detector geometry used to collect transmission Kikuchi diffraction patterns from a thin film in the SEM; all specimens were mounted on TEM grids. Whereas conventional EBSD requires tilting the specimen surface normal N towards the detector, we have tilted our specimen grids in the opposite direction, where N moves away from the detector, thereby minimizing backscattering into the detector, and maximizing detection of electrons that have scattered through large angles in transmission. Tilt angles α of approximately 10°to 30°gave rise to a strong signal.」
(すべてのt-EBSDデータは、LEO1525電界放出型SEMに搭載されたP-22高輝度蛍光体を有するTSL/EDAX Digiview1612高速CCDカメラの使用によって収集された。図1は、走査型電子顕微鏡(SEM)における薄膜からの透過型菊池回折パターンを収集するために使用される試料-検出器の幾何学配置の赤外像を示す。全ての試料はTEMグリッド上で設置された。従来のEBSDは、試料表面の法線Nを検出器に向けて傾斜させる必要があるが、我々は試料グリッドを反対方向に傾斜させた。ここで、Nは検出器から離れる方向であり、検出器への後方散乱を最小化し、透過時の大きな角度を介して散乱される電子の検出を最大化する。約10゜から30°の傾斜角αで強い信号を生じさせた。)

7 甲7の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲7には、以下の記載がある。

(甲7ア)第1193頁第1?3行
「Electron back-scattering patterns-A new technique for obtaining crystallographic information in the scanning electron microscope」
(電子後方散乱パターン-走査型電子顕微鏡において結晶情報を得るための新しい技術)

(甲7イ)第1197頁第12?16行
「In the present experiments patterns could be observed using a simple fluorescent screen for angle of incidence greater than about 45°. Better detection systems which allow one to back-off the unwanted background signal more effectively may enable one to extend the use of the patterns to lower angles of incidence. 」
(この実験のパターンは、約45°より大きい入射角で簡単な蛍光スクリーンを用いて観察された。望ましくないバックグラウンドのシグナルをより効率的に除去できる、より優れた検出システムがあれば、パターンの使用をより小さな入射角の使用にまで拡張できる。)

以上のことから、甲7には、「電子後方散乱パターン-走査型電子顕微鏡において結晶情報を得るために、電子後方散乱パターンは、約45°より大きい入射角で簡単な蛍光スクリーンを用いて観察され、望ましくないバックグラウンドのシグナルをより効率的に除去できる、より優れた検出システムがあれば、パターンの使用をより小さな入射角の使用にまで拡張できる。」ことが記載されていると認められる(以下、「甲7の技術事項」という)。

8 甲8の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された甲8には、以下の記載がある。

(甲8ア)第80頁第2段落
「It was suggested by Venables et. al., and has now been shown, that better detection systems allow for the acquisition and use of EBSD patterns at lower angles of incidence [2, 3]. As part of the study reported here, a current TSL/EDAX OIM system, equipped with a Digiview 1612 Peltier-cooled CCD camera, was used to acquire, then to automatically index, high quality EBSPs at 0°specimen tilt (i.e. normal incidence). The OIM system was installed on a JEOL JSM 6400 equipped with a W filament. Operating conditions of the microscope were 25kV and ?75nA of beam current.」
(Venables et al.により示唆され、現在示されているように、より優れた検出システムは、より小さな入射角でのEBSDパターンの取得および使用を許容する[2、3]。ここに報告される研究の一部として、Digiview1612、ペルティエ冷却CCDカメラを有する、現行のTSL/EDAX OIMシステムが、0度の試料傾斜(即ち、垂直の入射角)での高品質のEBSPを取得し、自動的にインデックス付けすべく使用された。OIMシステムは、Wフィラメントを備えたJEOL JSM 6400の上に設置された。顕微鏡の動作条件は、25kV、及び?75nAのビーム電流であった。)

(甲8イ)FIG.1には、以下の図面が示されている。

(図1 0.85秒のカメラ露光及び2.45秒のカメラ露光をそれぞれ使用して、垂直な入射角でNi合金(a)及びSi(b)から取得されたEBSP)

以上のことから、甲8には、「より優れた検出システムは、より小さな入射角でのEBSDパターンの取得および使用を許容し、Digiview1612、ペルティエ冷却CCDカメラを有する、現行のTSL/EDAX OIMシステムが、0度の試料傾斜(即ち、垂直の入射角)での高品質のEBSPを取得し、自動的にインデックス付けすべく使用された。」ことが記載されていると認められる(以下、「甲8の技術事項」という)。

9 参考1の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された参考1には、以下の記載がある。

(参考1ア)第1492頁右欄
「At 30 kV and 10 nA, for example, the correlation coefficient of a sampling Kikuchi pattern was calculated with respect to a reference Kikuchi pattern. The reference pattern was recorded at the left grain and its position was away from the inclined twin boundary. The correlation coefficient was plotted as a function of distance across the twin boundary, as shown in Fig.11. Point A displays only the Kikuchi pattern obtained from the wedged grain at the surface, and an overlapping pattern is observed at point B. Then, at point c, only the Kikuchi pattern of the underlying grain beyond the twin boundary is observed. Therefore, the physical depth resolution of 72.3 nm is calculated by multiplying the effective distance AC of 180 nm by tan 22°. Fig. 12 shows the results of the physical resolution as a function of the accelerating voltages at 10 nA. As the accelerating voltage is decreased from 30 to 5 kV, the depth resolution is significantly improved from 72 to 38 nm. However, the depth resolution is not significantly improved by lowering the probe current. The best depth resolution of 38 nm was achieved at 5 kV and 10 nA. In comparison with the experiments of the non-coating substrate, it was observed that the measured depth of the excitation volume in real EBSD measurements was much larger due to the channel effect than that obtained without considering this effect.」
(例えば、30kv、10nAでは、基準菊池パターンに対してサンプリング菊池パターンの相関係数が算出された。基準パターンは左側の粒子で記録され、その位置は傾斜した2つの境界から遠く離れていた。相関係数は、図11に示すように、2つの境界を横切る距離の関数としてプロットされた。点Aは、(図中の)襖で示された部分の粒子から得られた菊池パターンのみを表示している。そして重なるパターンが点Bで観測される。次に、点Cでは、2つの境界を越えて下にある粒子の菊池パターンのみが観察される。そ
れ故、180nmの実効距離とtan22度との乗算により、72.3nmの物理的深さ分解能が算出される。図12は、10nAにおける加速電圧の関数としての物理的分解能の結果を示す。加速電圧が30から5kvに減少するにつれて、深さ分解能は72から38nmに著しく改善される。しかしながら、深さ分解能は、プローブ電流を低下させることによっては有意には改善されない。5kVおよび10nAで38nmの最良の深さ分解能が達成された。非コーティング基材の実験と比較すると、実際のEBSD測定における励起体積の測定深さは、この効果を考慮せずに得られたものよりもチャネル効果のためにはるかに大きいことが観察された。)

10 参考2の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された参考2には、以下の記載がある。

(参考2ア)第2頁右欄
「The three-dimensional collection of EBSD, EDX and SE images relies on the accuracy of the piezoelectronic stage movement and accompanying beam shifts used by the microscope. The serial milling process involves alternate slicing away from the face of interest followed by EBSD and EDX data collection. This is achieved using a 180°stage rotation around a pre-specified 16°stage tilt. An image of the internal set-up of the microscope is shown in Fig. 2.」
(EBSD、EDX、およびSE画像の3次元収集は、圧電ステージの移動とそれに伴う顕微鏡でのビームシフトとの精度に依存する。シリアルミリングプロセスでは、関心のある面から別のスライスを作成し、EBSDとEDXのデータを収集する。これは、事前に指定された16度のステージ傾斜の周囲の180度のステージ回転を使用して実現される。顕微鏡の内部設定の画像を図2に示す。)

11 参考3の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された参考3には、以下の記載がある。

(参考3ア)第27頁左欄
「Summary:The backscattered electron (BSE) signal in the scanning electron microscope (SEM) can be used in two different ways. The first is to give a BSE image from an area that is defined by the scanning of the electron beam (EB) over the surface of the specimen. The second is to use an array of small BSE detectors to give an electron backscattering pattern (EBSP) with crystallographic information from a single point. It is also possible to utilize the EBSP detector and computer-control system to give an image from an area on the specimen - for example, to show the orientations of the grains in a polycrystalline sample ("grain orientation imaging"). Some further possibilities based on some other ways for analyzing the output from an EBSP detector array, are described.」
(要約:走査型電子顕微鏡(SEM)における後方散乱電子(BSE)は2つの異なる方法で使用することができる。第1は、試料の表面にわたる電子ビーム(EB)の走査により確定される領域からBSE像を得ることである。第2は、小さなBSE検出器のアレイを使用して、単一の点からの結晶解説情報を有する電子後方散乱パターン(EBSP)を与えることである。EBSP検出器およびコンピュータ制御システムを使用して、例えば、多結晶試料における粒子の配向(「粒子配向像」)を示すために、試料の領域からの像を与えることも可能である。EBSP検出器のアレイからの出力を分析するためのいくつかの他の方法に基づく、いくつかのさらなる可能性が説明される。)

12 参考4の記載事項
本件特許出願の優先権主張日前に頒布された参考4には、以下の記載がある。

(参考4ア)第2欄第56?61行
「Backscattered and secondary electrons are collected by one or more detectors which are respectively called a backscattered electron detector (BSED) and a secondary electron detector (SED), which each convert the electrons to an electrical signal used to generate images of the specimen.」
(後方散乱電子と2次電子は、夫々、後方散乱電子検出器(BSED)と2次電子検出器(SED)と呼ばれる1又は複数の検出器により収集され、それらは、電子を、試料画像を生成するために用いる電気信号に変換する。)

(参考4イ)第16欄第4?9行
「BSEDs are typically annular devices placed directly under and as close as possible to the pole piece of the objective lens of an SEM. This configuration allows the sample to be placed at a short working distance, thereby providing high image resolution and high BSE intensity while still retaining a near 90°line-of-sight from the sample to the detector.」
(BSEDは、通常、SEMの対物レンズの極片の下側に配置され、可能な限り近接した環状のデバイスである。この構成は、サンプルを短い作動距離で配置することを可能とし、それによって、サンプルから検出器までの90°近い視線を保持すると共に、高い画像解像度と高いBSE強度を提供する。)

(参考4ウ)第16欄第65行?第17欄第3行
「FIGS. 11-13 show other possible PCB assembly configurations that may be employed in alternative electron detector embodiments (i.e., in place of PCB assembly 46 ). In particular, FIG. 11 shows a PCB assembly 46' that includes four 4 mm×4 mm (16 mm^(2)) scintillator-SiPM coupled pair assemblies 24 spaced evenly about pass-through 50' of substrate 48'. 」
(図11?図13は、代替的な電子検出器の実施例において(即ち、PCBアセンブリ(46)の代わりとして)使用され得るその他のPCBアセンブリの構成を示す。具体的には、図11は、PCBアセンブリ(46')を示しており、それは、基板(48')の開口部(pass-through)(50')周りにて均等に離間した4つの4mm×4mm(16mm^(2))のシンチレータ-SiPM連結対アセンブリ(24)を含んでいる。)

(参考4エ)第17欄第21?25行
「The embodiments of electron detector 18 shown in FIGS. 8-13 enable control system 16 , and the associated software, to acquire an image from each of the scintillator-SiPM coupled pair assemblies 24 independently or to sum any number or all of them together. 」
( 図8?図13に示された電子検出器(18)の実施例は、制御システム(16)と関連ソフトウェアが、シンチレータ-SiPM連結対アセンブリ(24)の各々から独立して画像を取得するか、或いは、それらの任意の数又は全てを足し合わせることを可能としている。)

(参考4オ)FIG.11には、以下の図面が示されている。


以上のことから、参考4には、「後方散乱電子検出器(BSED)は、SEMの対物レンズの極片の下側に配置され、環状のデバイスであり、この構成は、基板(48')の開口部(pass-through)(50')周りにて均等に離間した4つのシンチレータ-SiPM連結対アセンブリ(24)を含んでおり、制御システム(16)と関連ソフトウェアが、シンチレータ-SiPM連結対アセンブリ(24)の各々からの画像の全てを足し合わせることを可能としている。」ことが記載されていると認められる(以下、「参考4の技術事項」という)。

第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について

1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?13に係る特許に対して、当審が平成31年3月15日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)(サポート要件)請求項1?13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえないことから、請求項1?13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)(実施可能要件)本件特許に係る出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?13に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえないことから、請求項1?13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)(明確性)請求項1?13に係る発明は、明確であるといえないことから、請求項1?13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)(進歩性)請求項1?13に係る発明は、甲1に記載された発明、甲7、8及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 当審の判断

(1)特許法第36条第6項第1号について
当審では、「コッセル像を取得する方法」を包含する、「電子後方散乱パターン(EBSP)像及び」「コッセル像を取得する方法」を包含する、「前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に配置されるとともに、電子ビームの軸上」「に設けられ」ることを包含する請求項1?8に係る発明、及び、「コッセルパターンを検出する」「荷電粒子装置」を包含する、「EBSPパターン及び」「コッセルパターンを検出する」「荷電粒子装置」を包含する、「前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に配置されるとともに、電子ビームの軸上」「に設けられ」ることを包含する請求項9?13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない旨の取消理由を通知したところ、訂正事項1-1、訂正事項1-3、訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4-1、訂正事項4-3、訂正事項5、訂正事項6に係る訂正を行った結果、本件発明1?13は、発明の詳細な説明に記載したものとなり、この理由は解消した。

(2)特許法第36条第4項第1号について
当審では、「コッセル像を取得する方法」を包含する、「電子後方散乱パターン(EBSP)像及び」「コッセル像を取得する方法」を包含する、「前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に配置されるとともに、電子ビームの軸上」「に設けられ」ることを包含する本件発明1?8、及び、「コッセルパターンを検出する」「荷電粒子装置」を包含する、「EBSPパターン及び」「コッセルパターンを検出する」「荷電粒子装置」を包含する、「前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に配置されるとともに、電子ビームの軸上」「に設けられ」ることを包含する請求項9?13に係る発明について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施できるように記載したものでない旨の取消理由を通知したところ、本件発明1?13は、上記(1)のとおり、発明の詳細な説明に記載したものとなったことから、発明の詳細な説明は、本件発明1?13の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、この理由は解消した。

(3)特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1?8について「後方散乱電子を前記検出器に照射する」こと、「EBSP像又はコッセル像を生成する」こと、「前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に配置されるとともに、電子ビームの軸上か、或いは、わずかに電子ビームの軸から外れた位置に設けられ」ること、「前記試料の平坦面は光軸に対して垂直である」こと、請求項9?13について「前記試料の平坦面は光軸に対して垂直である」こと、請求項10?13について「前記EBSP像又はコッセル像を自動的に処理する」ことは、明確といえない旨の取消理由を通知したところ、訂正事項1-1、訂正事項1-2、訂正事項1-3、訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4-1、訂正事項4-2、訂正事項4-3、訂正事項5、訂正事項6に係る訂正を行った結果、本件発明1?13は、明確となり、この理由は解消した。

(4)特許法第29条第2項について

ア 本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と甲1方法発明とを対比する。

a 甲1方法発明の「集束された電子ビームを提供するのに用いられるよう適合した電子カラム」は、本件発明1の「微細集束された電子ビームを生成する電子鏡筒」に相当する。

b (甲1エ)の「The term "pixel" here refers generally to spatially separate sensitive regions of the detector」(「画素」という用語は、ここでは一般に検出器の空間的に離れた感受性領域を意味し)との記載を踏まえると、甲1方法発明の「画素アレイを有する粒子検出器」は、本件発明1の「位置感受性を有する検出器」に相当する。また、甲1方法発明の「菊池回折パターン」/「EBSD」は、本件発明1の「EBSPパターン」/「電子後方散乱パターン(EBSP)像」/「EBSP像」に相当に相当する。
よって、甲1方法発明の「菊池回折パターンを示す受信粒子をカウント」する「画素アレイを有する粒子検出器」は、本件発明1の「EBSPパターンを検出する位置感受性を有する検出器」に相当する。

c 甲1方法発明の「試料」を「支持」し、「試料との電子ビームの相互作用によりもたらされる(弾性的後方散乱電子を含む)粒子が、粒子検出器により受信されるよう、試料」を「所望の角度に傾け」る「平坦面」は、本件発明1の「試料の保持及び位置設定を行う試料ホルダ」に相当する。

d 甲1方法発明の「菊池回折パターンを検出するための装置」は、本件発明1の「荷電粒子装置」に相当する。

e 甲1方法発明の「平板状の試料」の「菊池回折パターンを検出するための方法」は、本件発明1の「平坦な表面を有する試料の電子後方散乱パターン(EBSP)像を取得する方法」に相当する。

f 甲1方法発明の「入射電子ビーム」に対して「平板状の試料」を「所望の角度に傾け」る段階は、本件発明1の「前記電子ビームに対して前記試料を位置設定する段階」に相当する。

g 甲1方法発明の「試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子」は、「試料との電子ビームの相互作用によりもたらされる(弾性的後方散乱電子を含む)粒子」であるから、甲1方法発明の「電子ビームが試料上に衝突するように電子カラムを操作」し、「試料との電子ビームの相互作用による試料からの粒子を粒子検出器で受信する段階」は、本件発明1の「前記試料上の衝突点に前記電子ビームを案内することで、後方散乱電子を前記検出器に照射する段階」に相当する。

h 甲1方法発明の「粒子検出器」の「各粒子カウンタ」が、「それ自身の出力信号を画像処理部に生成」することは、「画像処理部」が、「粒子検出器」の「各粒子カウンタ」からの「出力信号」を受信することである。そして、甲1方法発明の「画像処理部」が、「粒子検出器」の「各粒子カウンタ」からの「出力信号」を受信する際に、「試料」への「入射電子ビーム」を定常状態に維持することは、当然のことである。
よって、甲1方法発明の「粒子検出器」の「各粒子カウンタ」が、「それ自身の出力信号を画像処理部に生成」することは、本件発明1の「前記ビームを定常状態に維持しながら前記検出器からの信号を取得する段階」に相当する。

i 甲1方法発明の「粒子検出器は、入射電子ビームと同じ側の試料の上に配置され」ることは、本件発明1の「前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に」「配置され」ることに相当する。

j 甲1方法発明の「粒子検出器において、受信粒子のエネルギーを電子的にフィルタリングする」ことは、「EBSD解析を実行する場合」の「第2の設定」に、「エネルギー閾値を調整」し、「ハイパスフィルタリングを提供する」ことであるから、甲1方法発明の「粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき菊池回折パターンを表す受信粒子をカウントする」ことは、本件発明1の「前記検出器は、」「所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され」ることに相当する。

k 甲1方法発明の「粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき菊池回折パターンを表す受信粒子をカウント」した「出力信号」は、「EBSD解析において」「菊池回折パターン」を「検出」するために用いられることは、本件発明1の「前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子の信号は、EBSP像を生成するのに用いられ」ることに相当する。

(イ)一致点・相違点
したがって、本件発明1と甲1方法発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「微細集束された電子ビームを生成する電子鏡筒、EBSPパターンを検出する位置感受性を有する検出器、並びに、試料の保持及び位置設定を行う試料ホルダを備える荷電粒子装置内において、平坦な表面を有する試料の電子後方散乱パターン(EBSP)像を取得する方法であって、
前記電子ビームに対して前記試料を位置設定する段階、
前記試料上の衝突点に前記電子ビームを案内することで、後方散乱電子を前記検出器に照射する段階、及び、
前記ビームを定常状態に維持しながら前記検出器からの信号を取得する段階、
を有し、
前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子の信号は、EBSP像を生成するのに用いられる、
方法。」

(相違点1)
EBSPパターンを検出する検出器は、本件発明1では、「電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器」であるのに対し、甲1方法発明では、本件発明1のような複合検出器ではない点。

(相違点2)
本件発明1では、「前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記電子ビームの軸に対して垂直である」のに対し、甲1方法発明では、「試料」は「入射電子ビーム」に対して「所望の角度に傾けられ」ている点。

(ウ)判断
上記相違点1について検討する。

a 参考4の技術事項(上記「第4 12」を参照)によれば、参考4には、後方散乱電子検出器(BSED)は、電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器であることが開示されているといえるが、参考4には、その明細書の全記載を精査しても、当該複合検出器を、EBSPパターンを検出する検出器として用いることについて、記載も示唆もされていない。
また、当該複合検出器を、EBSPパターンを検出する検出器として用いることについて、甲2?8及び参考1?3のいずれにも記載も示唆もなく、周知技術といえる証拠もない。

b 次に、甲1方法発明に甲8の技術事項を適用した発明において参考4を踏まえた場合に、上記相違点1に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到できるかについて検討する。

甲1方法発明は、検出器(穴あきの複合検出器ではない)を用いてEBSPパターン像を取得する際、前記検出器(穴あきの複合検出器ではない)が、「試料から受信された粒子が、試料に対してビーム方向に沿って戻る軌道成分を有するような反射配置である」。
また、甲8の技術事項(上記「第4 8」を参照)によれば、甲8には、検出器(穴あきの複合検出器ではない)を用いてEBSPパターン像を取得する際、電子ビームを試料に対して垂直に入射させることが開示されているといえるが、前記検出器(穴あきの複合検出器ではない)の配置について、試料から受信された粒子が、試料に対してビーム方向に沿って戻る軌道成分を有するような反射配置であるか否かは、不明である。
そして、甲1方法発明は、「試料」が「入射電子ビーム」に対して「所望の角度に傾けられる」ことを特定しているだけで、甲1方法発明を実際に設計する際には、入射電子ビームに対する試料の具体的な角度を設定する必要があることから、甲1方法発明に甲8の技術事項を適用する動機付けは存在するといえる。
すると、検出器(穴あきの複合検出器ではない)を反射配置とする甲1方法発明において、甲8の技術事項を適用することにより、「検出器(穴あきの複合検出器ではない)を用いてEBSPパターン像を取得する際、電子ビームを試料に対して垂直に入射させ、前記検出器(穴あきの複合検出器ではない)を、試料から受信された粒子が、試料に対してビーム方向に沿って戻る軌道成分を有するような反射配置とすること」は、当業者が容易になし得ることといえる。
しかしながら、甲1方法発明に甲8の技術事項を適用してなし得た「検出器(複合検出器ではない)を用いてEBSPパターン像を取得する際、電子ビームを試料に対して垂直に入射させ、前記検出器(複合検出器ではない)を、試料から受信された粒子が、試料に対してビーム方向に沿って戻る軌道成分を有するような反射配置とすること」の発明において、前記検出器(穴あきの複合検出器ではない)の反射配置を、実際の設計では具体的に設定する必要があるにしても、前記検出器(穴あきの複合検出器ではない)を、わざわざ、「電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器(穴あきの複合検出器)」に代えてまで、EBSPパターンを検出する検出器でない参考4の技術事項を適用することの動機付けは見当たらない。
よって、甲1方法発明に甲8の技術事項を適用した発明において参考4を踏まえた場合に、上記相違点1に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到できるとはいえない。

c また、甲1方法発明において、甲8及び参考4以外の証拠を参酌しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到できるとはいえない。

d 上記a?cから、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1方法発明、並びに、甲1?8及び参考1?4に基づいて、当業者が容易に想到し得ることではない。

(エ)小括
以上のことから、本件発明1は、上記相違点2について判断するまでもなく、甲1方法発明、並びに、甲1?8及び参考1?4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

イ 本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1の構成を全て含むことから、上記アと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

ウ 本件発明9について

(ア)対比
本件発明9と甲1装置発明とを対比する。

a 上記ア(ア)a、b及びdを踏まえると、甲1装置発明の「電子ビームを提供するのに用いられるよう適合した電子カラム」と「菊池回折パターンを示す受信粒子をカウント」する「画素アレイを有する粒子検出器」とを備える「菊池回折パターンを検出するための装置」は、本件発明9の「電子ビーム鏡筒とEBSPパターンを検出する画素化された検出器を備える荷電粒子装置」に相当する。

b 上記ア(ア)iを踏まえると、甲1装置発明の「粒子検出器は、入射電子ビームと同じ側の試料の上に配置され」ることは、本件発明9の「前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に」「配置され」ることに相当する。

c 上記ア(ア)jを踏まえると、甲1装置発明の「粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき菊池回折パターンを表す受信粒子をカウントする」ことは、本件発明9の「前記検出器は、」「所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され」ることに相当する。

d 甲1装置発明が、「電子ビームが試料上に衝突するように電子カラムを操作する」ことから、制御装置(コンピュータ)を用いて、「試料」に対する「入射電子ビーム」の位置を制御していることは明らかである。また、甲1装置発明が、「粒子検出器」の「エネルギー閾値を調整する」ことから、制御装置(コンピュータ)を用いて、「粒子検出器」を制御していることは明らかである。よって、甲1装置発明は、本件発明9の「ビーム位置と前記検出器を制御するプログラム可能な制御装置」に相当する構成を備えているといえる。

e 甲1装置発明の「画像処理部」が、制御装置(コンピュータ)内にあることは明らかであるから、甲1装置発明の「画像処理部」が、「粒子検出器において、電子フィルタリングに基づき菊池回折パターンを表す受信粒子をカウント」した「出力信号」を用いて、「EBSD解析において」「菊池回折パターン」を「検出」することは、本件発明9の「前記制御装置は、前記検出器からの信号を処理してEBSP像を生成するようにさらに構成され」ることに相当する。

(イ)一致点・相違点
したがって、本件発明9と甲1装置発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「電子ビーム鏡筒とEBSPパターンを検出する画素化された検出器を備
える荷電粒子装置であって、
前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
当該装置は、ビーム位置と前記検出器を制御するプログラム可能な制御装置を備え、かつ、
前記制御装置は、前記検出器からの信号を処理してEBSP像を生成するようにさらに構成される、
荷電粒子装置。」

(相違点3)
EBSPパターンを検出する検出器は、本件発明9では、「入射電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器」であるのに対し、甲1装置発明では、本件発明9のような複合検出器ではない点。

(相違点4)
本件発明9では、「前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記入射電子ビームの軸に対して垂直である」のに対し、甲1装置発明では、「試料」は、「入射電子ビーム」に対して「所望の角度に傾けられ」ている点。

(ウ)判断
上記相違点3及び4は、上記相違点1及び2と同じ内容であるから、上記相違点3及び4に係る本件発明9の判断については、上記ア(ウ)で検討した本件発明1と同様のことがいえる。

(エ)小括
以上のことから、本件発明1は、上記相違点4について判断するまでもなく、甲1装置発明、並びに、甲1?8及び参考1?4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

エ 本件発明10?13について
本件発明10?13は、本件発明9の構成を全て含むことから、上記ウと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

3 令和元年7月24日提出の意見書における申立人の主張について

(1)特許法第29条第2項の取消理由
申立人は、「訂正後の請求項1および9に係る発明は、甲1号証に記載の発明と、甲7号証に記載の発明(技術事項)又は甲8号証に記載の発明(技術事項)と、参考資料4に記載の発明(技術事項)とを組み合わせることにより当業者に容易に想到可能である。
さらには、特許権者の主張している有利な効果は、・・・請求項1および請求項9に記載の発明における、甲1号証記載の発明との相違部分から得られる効果ではなく、・・・本件特許発明に特有の効果でもない。むしろ、甲1号証に記載の発明に対し、甲7号証に記載の発明(技術事項)又は甲8号証に記載の発明(技術事項)と、参考資料4に記載の発明(技術事項)とを組み合わせた発明に対し、さらに従来技術を組み合わせた発明から予想可能な範囲内の効果にとどまる。」(第12頁)と主張するが、本件発明1の構成は、甲1方法発明に甲8の技術事項を適用した発明において参考4を適用する動機付けがないことから、当業者が容易に想到できるとはいえないことは、上記2(4)で検討したとおりである。また、参考4の適用の適否判断の前提となる発明に、甲1方法発明に甲7の技術事項(上記「第4 7」を参照)を適用した発明を考えても、甲7には、「簡単な蛍光スクリーン」である検出器(穴あきの複合検出器ではない)の配置について記載も示唆もないことから、上記2(4)と同様の理由により、本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できるとはいえない。よって、本件発明の効果について検討するまでもなく、かかる主張には理由がない。

(2)特許法第36条第6項第2号の取消理由

ア 申立人は、「訂正後の請求項1及び9に係る発明の「前記試料の前記電子鏡筒側に、前記電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、」という事項の「前記電子ビームが通過可能な小さな穴」の「小さな」という表現は、相対的表現であって、詳細な説明の全体を参照しても何に対して小さいかを規定しておらず、その上限の大きさを一切数値的に明確に定義してもいない。下限についても「前記電子ビームが通過可能な」という限定しか与えていない。
従って、当該記載は不明確であ」る(第13頁)と主張するが、「前記電子ビームが通過可能な小さな穴」は、「前記(微細集束された)」小径の「電子ビームが通過可能な」寸法の「穴」であると理解することができるから、当該記載は不明確であるとまではいえない。よって、かかる主張には理由がない。

イ 申立人は、「訂正後の請求項7に係る発明では、「X線、又は可視光の光子」を検出する構成を除外していない。 EBSP法は電子後方散乱パターンの略であることを鑑みても、検出する対象は、「SE(二次電子)」又は「後方散乱電子(BSE)」に限定されるべきであって、「X線、又は可視光光子」を除外していない請求項7、及びその従属請求項は不明確であ」る(第13?14頁)と主張するが、本件発明7は、「EBSPパターンを検出する位置感受性有する検出器」以外の検出器を用いることを排除していないことから、X線、又は可視光の光子を検出する検出器を用いて「X線、又は可視光の光子」が検出できることは明らかである。また、本件発明7が引用する本件発明1の「EBSPパターンを検出する位置感受性有する検出器」は、粒子(電子、X線、光子など)を「エネルギー」の大きさで検出するものであり、このことは、上記(甲1ケ)の記載からも裏付けられていることから、「EBSPパターンを検出する位置感受性有する検出器」を用いても「X線、又は可視光の光子」が検出できるものといえる。以上のことから、本件発明7から「X線、又は可視光の光子」を検出する構成を除外する必要はなく、請求項7、及びその従属請求項は不明確であるとまではいえない。よって、かかる主張には理由がない。

(3)特許法第36条第6項第1号の取消理由
申立人は、「特許権者は、請求項1及び9における訂正の「前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記電子ビームの軸に対して垂直である、」という事項について、段落0061「試料は水平であって良いことに留意して欲しい。つまり表面は光軸に対して垂直である」という事項を根拠としている。詳細な説明において「光軸」の定義は一切されていないため、特許権者の訂正後の請求項1および9、ならびにそれらの従属請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明でな」い(第14頁)と主張するが、「光軸」の定義を求める意図は不明であるものの、上記「第2 2(1)ウ」で述べたとおり、上記「光軸」は電子ビームの軸のことであると理解することができることから、訂正後の請求項1および9、ならびにそれらの従属請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明でないとまではいえない。よって、かかる主張には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許申立理由によっては、請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細集束された電子ビームを生成する電子鏡筒、EBSPパターンを検出する位置感受性を有する検出器、並びに、試料の保持及び位置設定を行う試料ホルダを備える荷電粒子装置内において、平坦な表面を有する試料の電子後方散乱パターン(EBSP)像を取得する方法であって、
前記電子ビームに対して前記試料を位置設定する段階、
前記試料上の衝突点に前記電子ビームを案内することで、後方散乱電子を前記検出器に照射する段階、及び、
前記ビームを定常状態に維持しながら前記検出器からの信号を取得する段階、を有し、
前記検出器は、前記試料の前記電子鏡筒側に、前記電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
前記所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子の信号は、EBSP像を生成するのに用いられ、かつ、
前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記電子ビームの軸に対して垂直である、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記検出器が画素化された検出器である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出器が、様々なエネルギーバンドの範囲内の電子を検出するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出器が、前記後方散乱電子が衝突する画素を有するセンサチップを供える検出器で、
前記センサチップは、各画素について、増幅器、比較器、及びカウンタを有するチップに結合される、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合がフリップチップ結合である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電子ビームが、取得中、5keV以下のエネルギーを有する、請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電子ビームで前記試料を走査することによって前記試料を撮像する段階、及び、SE,BSE,X線、又は可視光の光子からなる群からの信号を検出する段階をさらに有する、請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の閾値がプログラム可能な所定の閾値である、請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電子ビーム鏡筒とEBSPパターンを検出する画素化された検出器を備える荷電粒子装置であって、
前記検出器は、試料の前記電子ビーム鏡筒側に、入射電子ビームが通過可能な小さな穴が残るように複数の検出器からなる複合検出器として配置され、所定の閾値を超えるエネルギーを有する電子を選択的に検出するように構成され、
当該装置は、ビーム位置と前記検出器を制御するプログラム可能な制御装置を備え、かつ、
前記制御装置は、前記検出器からの信号を処理してEBSP像を生成するようにさらに構成され、
前記像の取得中、前記試料の平坦面は前記入射電子ビームの軸に対して垂直である、
ことを特徴とする、荷電粒子装置。
【請求項10】
前記プログラム可能な制御装置が、前記EBSP像を自動的に処理することで、結晶方位を決定し、かつ、前記試料の結晶の結晶方位を示す像を生成するように構成される、請求項9に記載の荷電粒子装置。
【請求項11】
前記所定の閾値がプログラム可能な所定の閾値である、請求項9又は10に記載の荷電粒子装置。
【請求項12】
前記EBSPパターンを検出する前に、前記試料を加工するイオンビーム鏡筒をさらに有する、請求項9乃至11のうちいずれか一項に記載の荷電粒子装置。
【請求項13】
前記試料の加工又はエッチングを改善する気体注入システムをさらに有する、請求項12に記載の荷電粒子装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-22 
出願番号 特願2015-162373(P2015-162373)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 仁美  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
三木 隆
登録日 2017-12-08 
登録番号 特許第6253618号(P6253618)
権利者 エフ イー アイ カンパニ
発明の名称 EBSPパターンの取得方法  
代理人 金子 修平  
代理人 大西 渉  
代理人 金子 修平  
代理人 井関 勝守  
代理人 井関 勝守  
代理人 大西 渉  
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