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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04R 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 H04R |
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管理番号 | 1355954 |
異議申立番号 | 異議2019-700066 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-01-30 |
確定日 | 2019-08-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6367693号発明「圧電素子、圧電振動装置、音響発生器、音響発生装置および電子機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6367693号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6367693号の請求項3-8に係る特許を維持する。 特許第6367693号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6367693号の請求項1-8に係る特許についての出願は、平成26年11月21日に出願され、平成30年7月13日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月1日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 1月30日:特許異議申立人による特許異議の申立て 平成31年 3月29日:取消理由通知書 令和 元年 5月24日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 元年 7月16日:特許異議申立人による意見書提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)-(6)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に「前記積層体がバイモルフ構造になっていることを特徴とする請求項2に記載の圧電素子。」と記載されているのを、「圧電体層および内部電極層が積層された板状の積層体と、該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極と、前記積層体の端面に設けられた端面電極とを備え、該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化していて、厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位を有している形状のうちのいずれかの形態になっており、前記積層体がバイモルフ構造になっていることを特徴とする圧電素子。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4-6も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに」と記載されているのを、「請求項3に」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに」と記載されているのを、「請求項3または請求項4に」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに」と記載されているのを、「請求項3または請求項4に」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 同様に、訂正後の請求項4-6は、訂正後の請求項3の記載を直接的または間接的に引用するから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 さらに、請求項7-8は、訂正後の請求項6の記載を引用し、間接的に訂正後の請求項3の記載を引用するから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、訂正前の請求項2および請求項3に基づいた訂正である。 したがって、当該訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記アのとおり、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、カテゴリーを変更するものではなく、かつ発明の対象や目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アのとおり、訂正事項2は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり、訂正事項2は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アのとおり、訂正事項3は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり、訂正事項3は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (4)訂正事項4-6 ア 訂正の目的について 訂正事項4-6は、訂正事項3、4において削除した請求項1、2の引用を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アのとおり、訂正事項4-6は、訂正事項3、4において削除した請求項1、2の引用を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり、訂正事項4-6は、訂正事項3、4において削除した請求項1、2の引用を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (5)一群の請求項 訂正事項1-6は、訂正前に引用関係を有する請求項1-8に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (6)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1-6について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項3-8(以下「本件特許発明3」-「本件特許発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項3-8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(請求項1及び2は削除された。)。 ただし、(3A)-(8D)は当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件3A」-「構成要件8D」という。 (本件特許発明3) (3A)圧電体層および内部電極が積層された板状の積層体と、 (3B)該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極と、 (3C)前記積層体の端面に設けられた端面電極とを備え、 (3D)該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化していて、 (3D-1)厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、 (3D-2)正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および (3D-3)厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位をしている形状 (3D-4)のうちのいずれかの形態になっており、 (3E)前記積層体がバイモルフ構造になっていること (3F)を特徴とする圧電素子。 (本件特許発明4) (4A)前記端面電極は、前記厚み方向の中央部で最も幅が広くなっていること (4B)を特徴とする請求項3に記載の圧電素子。 (本件特許発明5) (5A)請求項3または請求項4に記載の圧電素子と、 (5B)該圧電素子に接合された振動板とを含むこと (5C)を特徴とする圧電振動装置。 (本件特許発明6) (6A)請求項3または請求項4に記載の圧電素子と、 (6B)該圧電素子が取り付けられており該圧電素子の振動によって振動する振動板と、 (6C)該振動板を支持する枠体と (6D)を備えていることを特徴とする音響発生器。 (本件特許発明7) (7A)請求項6に記載の音響発生器と、 (7B)該音響発生器を収容する筐体と (7C)を備えていることを特徴とする音響発生装置。 (本件特許発明8) (8A)請求項6に記載の音響発生器と、 (8B)該音響発生器に接続された電子回路と、 (8C)前記音響発生器および前記電子回路を収容する筐体とを備え、 (8D)前記音響発生器から音響を発生させる機能を有することを特徴とする電子機器。 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1-8に係る特許に対して平成31年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 A(進歩性)本件特許の請求項1-8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲第1号証:特開2006-303045号 甲第2号証:国際公開第2014/069138号 3 甲各号証の記載及び甲各号証に記載された発明 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証(以下「甲1」という。)には、「積層型圧電体素子」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば、自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられる積層型圧電体素子に関するものである。 (イ)「【背景技術】 【0002】 積層型圧電体素子、特に自動車用燃料噴射弁に使用される積層型圧電体素子では、低温から高温まで広い温度領域において信頼性を確保しなくてはならない。そのような熱衝撃の加わる環境下では、圧電体素子と、圧電体素子の側面に設けられる外部電極との熱膨張差が原因となり、外部電極から圧電体素子へ熱応力が加わる為、外部電極及び圧電体素子にクラックが発生するという問題がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、特許文献1に示す従来技術では、複数設けられた外部電極の幅が同じである為、外部電極の両端に発生する熱応力が集中し易く、外部電極から圧電体素子へ加わる熱応力が大きい為、外部電極及び圧電体素子にクラックが発生するという問題があった。また、特許文献3に示す従来技術では、半田層が圧電体の積層方向に対して不連続に設けられている為、半田層と外部電極との熱膨張差によって、半田層と接していない外部電極において複数の個所にクラックが発生すると、クラック発生個所間で電気的に不導通となる部分が生じる。また、圧電体に発生したクラックが半田層と接していない外部電極まで進展した場合も同様に、クラック発生個所間で電気的に不導通となる部分が生じる。これにより、圧電体素子の一部に電圧がかからなくなり圧電体素子の変位量が減少する為、使用中に特性が変ってしまうという問題がある。また、半田層における圧電体の積層方向の両端部から外部電極及び圧電体素子へ熱応力が加わり、圧電体素子にクラックが発生する。そして、クラック発生部位が圧電活性部分であることと、クラックの進展方向が圧電体素子の伸縮方向と一致することから、クラックの進展は助長される為、信頼性上の問題となる。 【0005】 本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、その目的は、外部電極及び圧電体素子にクラックが発生するのを抑制出来る効果を奏する積層型圧電体素子を提供することである。」 (ウ)「【0031】 (実施例1) 第1の発明の実施形態の構成を図面に従って説明する。図1は、第1の発明の実施形態における積層型圧電体素子を示す説明図である。図1(a)は本実施例の積層型圧電体1の正面図であり、図1(b)は図1(a)のX矢視図であり、図1(c)は図1(a)のY矢視図である。図1に示すように、本実施例の積層型圧電体素子1は大きく分けて、圧電体層11、内部電極層21a及び21b、第1外部電極層31、第2外部電極層32、リード線33とを備え、概略以下のように構成される。即ち、積層型圧電体素子1は、電圧が印加されると伸縮するPZTのセラミック材料よりなる複数の圧電体層11と印加電圧供給用の内部電極層21とを交互に設けてなる。積層型圧電体素子1の外周側面には、内部電極層21a及び21bが異なる極となるように電気的に導通した第1外部電極層31を設けている。そして、第1外部電極層31上には、第2外部電極層32を介して、リード線33が設けられている。」 (エ)「【0050】 ・・・ (実施例3) 第3の発明の実施形態の構成を図面に従って説明する。図9は、第3の発明の実施形態における積層型圧電体素子を示す説明図である。図9に示すように、本実施例の積層型圧電体素子1は、電圧が印加されると伸縮するPZTのセラミック材料よりなる複数の圧電体層11の外周側面に、第1外部電極層31を設けている。そして、第1外部電極層31上には、リード線33が設けられている。 【0051】 第3の発明の特徴は、圧電体11における積層方向と垂直方向の最大幅をW0、第1外部電極層31の幅をW1としたとき、2.5≦(W1/W0)×100≦60の関係を有する点である。これによると、2.5≦(W1/W0)×100≦60の関係であり、圧電体11へ加わる熱応力を緩和出来る為、クラックの発生を抑制すると共に、第1外部電極層31に接続されるリード線33と、第1外部電極層31との接合強度が十分である。また、5≦(W1/W0)×100≦30の関係であるとより効果的である。 【0052】 また、第1外部電極層31は、電圧が印加されると伸縮する圧電活性部分1aにおける圧電体層11の積層方向に連続して設けられる為、第1外部電極層31における圧電体11の積層方向の両端から圧電体11へ加わる熱応力を最小限に留めることが出来る。 【0053】 また、圧電体11における積層方向と垂直方向の最大幅W0は15mm以下となっている。これにより、第1外部電極層31の幅W1は9.0mm以下となり、第1外部電極層31で発生する熱応力が圧電体層11の強度を上回ることがなく、圧電体層11にクラックが発生し難い。」 (オ)「【0071】 (全般に係わる留意点) ここで、発明1乃至3における積層型圧電体素子における積層方向と垂直方向の最大幅(W0)及び各外部電極層の幅(W1、W2、W3)の規定方法について図11及び13を用いて説明する。 【0072】 発明1乃至3における積層型圧電体素子における積層方向と垂直方向の最大幅(W0)の規定方法について図11を用いて説明する。図11(a)乃至(d)は、積層型圧電体素子における積層方向と垂直方向の断面を示す。断面における最大幅であるW0は、断面の外周線における2点間の直線距離が最も長くなる2点間の長さとする。図11(a)に示す積層型圧電体素子1では、断面が略正方形となっている。このとき、断面における最大幅であるW0は、向かい合う頂点間を結ぶ線の長さとする。図11(b)に示す積層型圧電体素子1では、断面が長方形となっている。このとき、断面における最大幅であるW0は、向かい合う頂点間を結ぶ線の長さとする。図11(c)に示す積層型圧電体素子1では、断面が略楕円形となっている。このとき、断面における最大幅であるW0は、楕円の長手方向の軸線の長さとする。図11(d)に示す積層型圧電体素子1では、断面が2つの湾曲部を有し2つの湾曲部の端部同士を直線で結んだ形状(競技トラック形状)となっている。このとき、断面における最大幅であるW0は、2つの湾曲部の頂点同士を結ぶ2点間の長さとする。」 (カ)「【0074】 発明1乃至3における積層型圧電体素子における各外部電極層の幅(W1、W2、W3)の規定方法について図12を用いて説明する。図12(a)は、積層型圧電体素子1の側面図であり、図12(b)は、積層型圧電体素子1の積層方向と垂直方向の断面図であり、図12(c)は、積層型圧電体素子1の積層方向と垂直方向の部分断面図である。各外部電極層の幅(W1、W2、W3)は、積層型圧電体素子1の圧電活性部1aにおける各外部電極層の幅の平均値とする。図12(a)に示す積層型圧電体素子1では、外部電極層31の幅が一定でない。このとき、外部電極層31の幅は、積層型圧電体素子1の圧電活性部1aにおける外部電極層31の幅の平均値とする。図12(b)及び図12(c)に示す積層型圧電体素子1では、外部電極層31が2面に渡って設けられている。このとき、外部電極層31の幅は、圧電体11側面に対する法線A及びBと外部電極層31の両端部との交点間(31a-31b間)の幅の最小値の平均値とする。」 (キ)「【0076】 なお、本発明に用いられる構成は本発明の課題を達成出来るものであれば、本実施例の構成に限定されない。例えば、各圧電体層11は四角形に限らず、八角形等の多角形でも良い。また、外部電極層を形成する方法は、スクリーン印刷や、蒸着や、メタルマスクによるマスキング塗布や、ディスペンサで塗布して形成しても良い。また、外部電極層の材料は全て同じ材料であっても良い。また、外部電極層の形状は適宜変更しても良く、例えば、図13(a)に示すように、積層型圧電体素子1の外周側面において、電圧が印加されると伸縮する圧電活性部における圧電体11の積層方向に連続して設けられた外部電極層31が、圧電体ユニットの接合面1bで、分かれていると共に、分かれた外部電極層31が圧電体11の積層方向に直交する方向にずれて、互い違いに設けられていても良い。また、図13(b)に示すように、外部電極層31が、積層型圧電体素子1の外周側面における圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して斜めに設けられていても良い。また、図13(d)に示すように、外部電極層31が、積層型圧電体素子1の外周側面における圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられていても良い。また、図13(c)に示すように、外部電極層31が、円状に設けられていても良い。また、外部電極層に外部電源から電圧を供給する電極はリード線に限らず、図14乃至図16に示すような板状かつ複数の開口部を有する板状電極33であっても良い。また、図17に示すように、積層型圧電体素子1の作動による内部応力を緩和する為、圧電体層11の側面に凹部を設けた積層型圧電体素子1であっても良い。」 「【図1】 」 「【図9】 」 「【図12】 」 「【図13】 」 イ 甲1に記載された発明 甲1に記載されている「積層型圧電体素子」は、上記(ア)によると、自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられるものである。上記(イ)によると、当該「積層型圧電体素子」は、熱衝撃の加わる環境下では、圧電体素子と、圧電体素子の側面に設けられる外部電極との熱膨張差が原因となり、外部電極から圧電体素子へ熱応力が加わる為、外部電極及び圧電体素子にクラックが発生するという問題があるという課題を解決するために、外部電極及び圧電体素子にクラックが発生するのを抑制出来る効果を奏する積層型圧電体素子を提供することを目的とするものである。 上記(ウ)によると、当該「積層型圧電体素子」は、電圧が印加されると伸縮するPZTのセラミック材料よりなる複数の圧電体層11と印加電圧供給用の内部電極層21a、21bとを交互に設け、積層型圧電体素子の外周側面には、内部電極層21a及び21bが異なる極となるように電気的に導通した第1外部電極層31を設けている。 上記(エ)によると、圧電体層11における積層方向と垂直方向の最大幅をW0、第1外部電極層31の幅をW1としたとき、2.5≦(W1/W0)×100≦60の関係を有する。 上記(オ)によると、積層型圧電体素子における積層方向と垂直方向の断面における最大幅であるW0は、断面の外周線における2点間の直線距離が最も長くなる2点間の長さである。 上記(カ)によると、外部電極層31の幅は一定でなく、外部電極層31の幅W1は外部電極層の幅の平均値とする。 上記(カ)、(キ)によると、外部電極層の形状は、鼓状の電極が2つ縦につながっている形状(図12(a))、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して斜めに設けられた形状(図13(b))、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状(図13(d))、円状の電極が2つ縦に並んだ形状(図13(c))のいずれかである。 以上にまとめると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) (1a)自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられる積層型圧電体素子であって、 (1b)電圧が印加されると伸縮するPZTのセラミック材料よりなる複数の圧電体層11と印加電圧供給用の内部電極層21a、21bとを交互に設け、 (1c)積層型圧電体素子の外周側面には、内部電極層21a及び21bが異なる極となるように電気的に導通した第1外部電極層31を設け、 (1d)圧電体層11における積層方向と垂直方向の最大幅をW0、第1外部電極層31の幅をW1としたとき、2.5≦(W1/W0)×100≦60の関係を有し、 (1d-1)ここで、積層型圧電体素子における積層方向と垂直方向の断面における最大幅であるW0は、断面の外周線における2点間の直線距離が最も長くなる2点間の長さであり、 (1d-2)外部電極層31の幅は一定でなく、外部電極層31の幅W1は外部電極層の幅の平均値であり、 (1e)外部電極層31の形状は、鼓状の電極が2つ縦につながっている形状、圧電体層11の積層方向の軸線に対して斜めに設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、円状の電極が2つ縦に並んだ形状のうちいずれかである、 (1a)ことを特徴とする積層型圧電体素子。 ((1a)-(1e)は、構成を区別するために、当審で付与した。以下各構成を「構成1a」-「構成1e」という。) (2)甲第2号証 ア 甲第2号証の記載事項 甲第2号証(以下「甲2」という。)には、「圧電素子ならびにこれを備えた圧電振動装置、端末装置、音響発生器、音響発生装置および電子機器」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。 「技術分野 [0001] 本発明は、圧電振動装置、携帯端末に好適な圧電素子ならびにこれを備えた圧電振動装置、携帯端末、音響発生器、音響発生装置および電子機器に関するものである。」 「背景技術 [0002] 圧電素子として、内部電極と圧電体層とが複数積層された積層体の表面に表面電極を形成してなるバイモルフ型のものが知られている(特許文献1を参照)。 [0003] 更には、バイモルフ型の圧電素子の長さ方向における中央部や一端を振動板に固定した圧電振動装置が知られている(特許文献2、3を参照)。」 「発明が解決使用とする課題 [0005] ここで、圧電素子の表面に設けられた表面電極は、一般に焼き付けられたAg電極が使用され、圧電素子が面全域でほぼ均一に駆動するように、その全面厚さ、表面状態が全域にわたって一様に形成されている。 [0006] ところが、圧電素子の変位による応力が表面電極に加わることによって、長期間動かしたときに表面電極と圧電体層との界面にマイクロクラックが発生し、表面電極が剥がれて結果として変位量が安定しなくなるおそれがあった。」 「[0020] 図1に示す本実施形態の圧電素子10は、内部電極2および圧電体層3が積層された板状の積層体4と、積層体4の一方主面に内部電極2と電気的に接続された表面電極5とを備え、表面電極5は第一の領域501と第二の領域502とを有し、第一の領域501が銀を主成分とする領域であり、第二の領域502が銀パラジウムを主成分とし、圧電体層3と接するように設けられた領域である。 [0021] 圧電素子10を構成する積層体4は、内部電極2および圧電体層3が積層されて板状に形成されてなるもので、複数の内部電極2が積層方向に重なっている活性部41とそれ以外の不活性部42とを有し、例えば長尺状に形成されている。・・・ [0023] 図1に示す例では、第1の電極21および第2の電極22の端部がそれぞれ積層体4の対向する一対の側面に互い違いに導出されている。・・・」 「[0040] なお、図1に示す圧電アクチュエータ1は、いわゆるバイモルフ型の圧電アクチュエータであって、表面電極5から電気信号が入力されて一方主面および他方主面が屈曲面となるように屈曲振動するものであるが、本発明の圧電アクチュエータとしては、バイモルフ型に限られず、ユニモルフ型であってもよく、例えば後述する振動板に圧電アクチュエータの他方主面を接合する(貼り合わせる)ことで、ユニモルフ型でも屈曲振動させることができる。」 「[0047] なお、表面電極5と内部電極2とを電気的に接続する場合、圧電体層3を貫通するビアを形成して接続しても、積層体4の側面に側面電極を形成しても良く、どのような製造方法によって作製されてもよい。」 「 」 「 」 イ 甲2に記載された発明 甲2の段落[0001]及び[0002]によると、甲2には、圧電振動装置、携帯端末に好適なバイモルフ型圧電素子が記載されている。 甲2の段落[0020]、[0021]及び[0047]によると、甲2のバイモルフ型圧電素子は、内部電極と圧電体層とが複数積層された板状の積層体の表面に表面電極を形成し、表面電極と内部電極を接続する側面電極を形成し、図9(b)、(c)によると、一方主面及び他方主面に表面電極が形成されている。 また、甲2の段落[0040]によると、甲2のバイモルフ型圧電素子は、一方主面および他方主面が屈曲面となるように屈曲振動するものである。 以上によると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 (甲2発明) 圧電振動装置、携帯端末に好適なバイモルフ型圧電素子であって、 内部電極と圧電体層とが複数積層された積層体の一方主面及び他方主面に表面電極を形成し、表面電極と内部電極を接続する側面電極を形成し、 一方主面および他方主面が屈曲面となるように屈曲振動する バイモルフ型圧電素子。 4 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 進歩性 (ア)本件特許発明3 a 本件特許発明3、甲1発明 本件特許発明3と甲1発明とを対比するにあたり、本件特許発明3と甲1発明とを再掲する。 (本件特許発明3) (3A)圧電体層および内部電極が積層された板状の積層体と、 (3B)該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極と、 (3C)前記積層体の端面に設けられた端面電極とを備え、 (3D)該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化していて、 (3D-1)厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、 (3D-2)正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および (3D-3)厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位をしている形状 (3D-4)のうちのいずれかの形態になっており、 (3E)前記積層体がバイモルフ構造になっていること (3F)を特徴とする圧電素子。 (甲1発明) (1a)自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられる積層型圧電体素子であって、 (1b)電圧が印加されると伸縮するPZTのセラミック材料よりなる複数の圧電体層11と印加電圧供給用の内部電極層21a、21bとを交互に設け、 (1c)積層型圧電体素子の外周側面には、内部電極層21a及び21bが異なる極となるように電気的に導通した第1外部電極層31を設け、 (1d)圧電体層11における積層方向と垂直方向の最大幅をW0、第1外部電極層31の幅をW1としたとき、2.5≦(W1/W0)×100≦60の関係を有し、 (1d-1)ここで、積層型圧電体素子における積層方向と垂直方向の断面における最大幅であるW0は、断面の外周線における2点間の直線距離が最も長くなる2点間の長さであり、 (1d-2)外部電極層31の幅は一定でなく、外部電極層31の幅W1は外部電極層の幅の平均値であり、 (1e)外部電極層31の形状は、鼓状の電極が2つ縦につながっている形状、圧電体層11の積層方向の軸線に対して斜めに設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、円状の電極が2つ縦に並んだ形状のうちいずれかである、 (1a)ことを特徴とする積層型圧電体素子。 b 対比 本件特許発明3と甲1発明とを対比する。 (a)構成要件3Aと構成1bとを対比する。 構成1bの「複数の圧電体層11と印加電圧供給用の内部電極層21a、21bとを交互に設け」た構成は、「圧電体層および内部電極が積層された積層体」といえる。 したがって、構成要件3Aと構成1bとは、「圧電体層および内部電極が積層された積層体」として共通する。 しかしながら、「積層体」が、本件特許発明3においては、「板状の」積層体であるのに対し、甲1発明においては、「板状の」積層体と特定されていない点で相違する。 (b)構成要件3Bについて 甲1発明は、「該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極」を備えておらず、本件特許発明3と相違する。 (c)構成要件3Cと構成1cとを対比する。 構成1cの「第1外部電極層31」は、構成要件3Cの「前記積層体の端面に設けられた端面電極」に相当する。 したがって、構成要件3Cと構成1cとは、「前記積層体の端面に設けられた端面電極」として一致する。 (d)構成要件3D、3D-1-3D-4と構成1d-2、1eとを対比する。 構成1d-2においては、「外部電極層31の幅は一定でな」いから、「該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化してい」るといえる。 また、「端面電極」の形状は、本件特許発明3においては、 「(3D-1)厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、 (3D-2)正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および (3D-3)厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位をしている形状 (3D-4)のうちのいずれかの形態になって」いるのに対し、 甲1発明においては、 「(1e)外部電極層31の形状は、鼓状の電極が2つ縦につながっている形状、圧電体層11の積層方向の軸線に対して斜めに設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、円状の電極が2つ縦に並んだ形状のうちいずれかである」点で相違する。 以上によると、本件特許発明3と甲1発明とは、 「該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化してい」る形状である点で一致し、 当該形状が、本件特許発明3においては、「厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位をしている形状のうちのいずれかの形態になって」いるのに対し、甲1発明においては、「外部電極層31の形状は、鼓状の電極が2つ縦につながっている形状、圧電体層11の積層方向の軸線に対して斜めに設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、円状の電極が2つ縦に並んだ形状のうちいずれかである」点で相違する。 (e)構成要件3E、3Fと構成1aとを対比する。 構成要件3E、3Fと構成1aとを対比すると、「圧電素子」として共通する。 しかしながら、「圧電素子」が、本件特許発明3においては、「前記積層体がバイモルフ構造になっている」のに対し、甲1発明においては、「前記積層体がバイモルフ構造」になっておらず、「自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられる積層型圧電体素子」である点で相違する。 c 一致点、相違点 以上によると、一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) (3A’)圧電体層および内部電極が積層された積層体と、 (3C)前記積層体の端面に設けられた端面電極とを備え、 (3D)該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化している形状になっていること (3F)を特徴とする圧電素子。 (相違点1) 「積層体」が、本件特許発明3においては、「板状の」積層体であるのに対し、甲1発明においては、「板状の」積層体と特定されていない点 (相違点2) 本件特許発明3は、「該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極」を備えているのに対し、 甲1発明は、「該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極」を備えていない点 (相違点3) 「端面電極」の形状が、本件特許発明3においては、「厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位をしている形状のうちのいずれかの形態になって」いるのに対し、甲1発明においては、「外部電極層31の形状は、鼓状の電極が2つ縦につながっている形状、圧電体層11の積層方向の軸線に対して斜めに設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、圧電体層11の積層方向の軸線Aに対して波状に設けられた形状、円状の電極が2つ縦に並んだ形状のうちいずれかである」点 (相違点4) 「圧電素子」が、本件特許発明3においては、「前記積層体がバイモルフ構造になっている」のに対し、甲1発明においては、「前記積層体がバイモルフ構造」になっておらず、「自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられる積層型圧電体素子」である点 d 判断 上記相違点4について判断する。 上記3(2)のとおり、甲2には、甲2発明が記載されていると認められる。ここで、甲2発明を再掲する。 (甲2発明) 圧電振動装置、携帯端末に好適なバイモルフ型圧電素子であって、 内部電極と圧電体層とが複数積層された積層体の一方主面及び他方主面に表面電極を形成し、表面電極と内部電極を接続する側面電極を形成し、 一方主面および他方主面が屈曲面となるように屈曲振動する バイモルフ型圧電素子。 (a)技術分野について まず、甲1発明と甲2発明が、技術分野が共通するか検討する。 甲1発明は、自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタなどに用いられる積層型圧電体素子(構成1a)である。 甲2発明は、圧電振動装置、携帯端末に好適なバイモルフ型圧電素子である。 よって、甲1発明は、自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止用の駆動素子、インクジェットプリンタに用いられる「圧電素子」の発明であるのに対して、甲2発明は、圧電振動装置、携帯端末に用いられる「圧電素子」であるから、両者は、その用途について技術分野が異なるといえる。 したがって、甲1発明と甲2発明は、技術分野が共通するとはいえない。 (b)機能について 次に、甲1発明と甲2発明が、「圧電素子」の機能について共通するかについて検討する。 甲1発明の「圧電素子」は、「電圧が印加されると伸縮するPZTのセラミック材料よりなる複数の圧電体層11」(構成1b)であり、複数の圧電体層の積層方向へ伸縮するものであり、当該積層方向へ伸縮が奏する機能は精密位置決め又は振動防止であるといえる。 甲2発明の「圧電素子」は、複数積層された圧電体層の「一方主面および他方主面が屈曲面となるように屈曲振動する」ものであり、当該屈曲振動が奏する機能は音響発生であるといえる。 よって、両者は、圧電体層の変位の方向及び態様が異なるといえるから、甲1発明と甲2発明は、機能が共通するとはいえない。 (c)動機付けについて 甲1発明に甲2発明を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。 上記(a)及び(b)のとおり、甲1発明と甲2発明は、技術分野が共通するとはいえず、機能も共通するとはいえないから、甲1発明に甲2発明を適用する動機付けがあったとはいえない。 (d)まとめ 以上によれば、相違点4は、甲1発明と甲2発明から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そうすると、本件特許発明3は、当業者であっても、甲1発明、甲2発明に基づいて容易になし得るものではない。 (イ)本件特許発明4-8 本件特許発明4-8は、本件特許発明3を直接又は間接的に引用するから、本件特許発明3と同じ理由で、当業者であっても、甲1発明、甲2発明に基づいて容易になし得るものではない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)によっては、本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項3-8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項3-8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項1及び2に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1及び2に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 圧電体層および内部電極層が積層された板状の積層体と、該積層体の第1の主面および第2の主面にそれぞれ設けられた表面電極と、前記積層体の端面に設けられた端面電極とを備え、 該端面電極は、前記積層体の厚み方向に沿って幅が変化していて、 厚み方向の両端部に幅の広くなっている部位を有しているいわゆる鼓形状、正面から見て幅方向の端部がうねった形状、および厚み方向の両端部よりも内側に両端部における幅よりも幅の広くなっている部位を有している形状のうちのいずれかの形態になっており、前記積層体がバイモルフ構造になっていることを特徴とする圧電素子。 【請求項4】 前記端面電極は、前記厚み方向の中央部で最も幅が広くなっていることを特徴とする請求項3に記載の圧電素子。 【請求項5】 請求項3または請求項4に記載の圧電素子と、該圧電素子に接合された振動板とを含むことを特徴とする圧電振動装置。 【請求項6】 請求項3または請求項4に記載の圧電素子と、該圧電素子が取り付けられており該圧電素子の振動によって振動する振動板と、該振動板を支持する枠体とを備えていることを特徴とする音響発生器。 【請求項7】 請求項6に記載の音響発生器と、該音響発生器を収容する筐体とを備えていることを特徴とする音響発生装置。 【請求項8】 請求項6に記載の音響発生器と、該音響発生器に接続された電子回路と、前記音響発生器および前記電子回路を収容する筐体とを備え、前記音響発生器から音響を発生させる機能を有することを特徴とする電子機器。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-08-20 |
出願番号 | 特願2014-236624(P2014-236624) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H04R)
P 1 651・ 857- YAA (H04R) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 堀 洋介 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 樫本 剛 |
登録日 | 2018-07-13 |
登録番号 | 特許第6367693号(P6367693) |
権利者 | 京セラ株式会社 |
発明の名称 | 圧電素子、圧電振動装置、音響発生器、音響発生装置および電子機器 |