• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特39条先願  E04D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04D
管理番号 1355989
異議申立番号 異議2019-700425  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-27 
確定日 2019-10-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6465670号発明「屋根外装構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6465670号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6465670号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年1月27日に出願され、平成31年1月18日にその特許権の設定登録がされ、平成31年2月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和1年5月27日に特許異議申立人日本遮熱株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。


2 本件発明
特許第6465670号の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
建築物の屋根表面を形成する屋根材に装着する屋根外装構造において、
波形の凹凸を有する該屋根材の上面を覆う通気性を有さない遮熱シートと、
該屋根材の側方の該屋根材と該遮熱シートとの間の開口部を塞ぐ封止部材とを備え、
該遮熱シートを、該屋根材の頂部に接着し、該開口部を該封止部材で塞いで、該屋根材の該頂部以外の部分と該遮熱シートとの間に、空気層を設けたことを特徴とする屋根外装構造。
【請求項2】
前記遮熱シートにより、前記封止部材を形成させることを特徴とする請求項1記載の屋根外装構造。
【請求項3】
前記遮熱シートの表面が、アルミ箔で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の屋根外装構造。
【請求項4】
前記遮熱シートの前記アルミ箔の下層に、樹脂製シートからなる断熱層を有することを特徴とする請求項3記載の屋根外装構造。
【請求項5】
前記遮熱シートの前記アルミ箔の最下層に、他のアルミ箔を有することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の屋根外装構造。
【請求項6】
前記遮熱シートの前記屋根材に接着される部分に、不織布を有することを特徴とする請求項1?請求項5のいずれかに記載の屋根外装構造。」


3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証を、従たる証拠として甲第2号証?甲第6号証を提出して、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、また、証拠として甲第7号証を提出して、請求項1、3?5に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?6に係る特許は取り消すべきものである旨、主張している。
〔証拠〕
甲第1号証:特開2013-174054号公報
甲第2号証:特開平10-280577号公報
甲第3号証:特開2013-160036号公報
甲第4号証:特開2014-148888号公報
甲第5号証:特開2012-92578号公報
甲第6号証:登録実用新案第3152417号公報
甲第7号証:特許第6465640号公報
なお、甲第7号証は、本件特許の出願より前に出願された特願2014-253201号の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面として扱う。


4 証拠の記載事項
(1)甲第1号証
(下線は決定で付した。以下同様。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上に突出したボルト体やハゼ部等の突出体に挟着して固定される屋根上取付具に関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
一般に、折板屋根(角波形屋根)、丸波形屋根等の波形屋根の上面に、例えばテレビアンテナや空調機器、太陽電池パネル、遮熱シート等の屋根上取付物品を、屋根上取付物品取付用の長尺フレームを介して取り付け固定することが実施されている。」

ウ 「【0022】
この屋根上取付具Aが取り付けされる屋根としては、図例(図1等参照)として示した折板屋根Y(角波形屋根)や丸波形屋根が挙げられる。また、屋根の素材としては、金属や合成樹脂、セメント系等のものが適用できる。
【0023】
この折板屋根Yは、山部Y1と谷部Y2が交互に連続する屋根であって、複数の折板屋根材を側端縁の山部Y1の頂部Y1aで重合し、その重合部でボルト体B(突出体)とナットC1の螺着によって連結した重ね式接合構造となっている。
【0024】
このナットC1は、図例においては、その下方の座金C2(図例では山座金)と一体的に形成されている。座金C2は、屋根材のボルト孔から下方への水の浸入を防止するための防水パッキンC3を備えている。
【0025】
また、折板屋根Yの裏側には、正面視で折板屋根Yと略同形状をなす、ボルト止めのための支持金具Y3が取り付けられている。なお、屋根上取付具Aを取り付けるためのボルト体Bの取付位置は隣接する折板屋根材の重合部に限らず、他の頂部Y1aに支持金具Y3を用いてボルト体Bを取り付けてもよい。
【0026】
この屋根上取付具Aは、ボルト体B等の突出体に挟着する構造とした略門形の挟着具10と、屋根上取付物品設置用の長尺フレーム1が取り付け固定され得るフレーム取付具20とを備えている。
【0027】
なお、本実施形態では長尺フレーム1として溝形状のフレームが用いられる。この長尺フレーム1は、溝開口1aの幅寸法が底部1bの幅寸法よりも小さい、両側壁1cが内側に傾斜した形状となっている。
【0028】
挟着具10は、金属板または硬質樹脂板よりなり、折板屋根Yの頂部Y1aより上方に突出したボルト体Bに挟着して、屋根上に取り付け固定される構造となっている。
【0029】
より具体的には、挟着具10の本体は、上方に配するフレーム取付具20と軸固定するための固定孔11bを有した台座部11と、その両端から下方に延びた一対の脚片12、12と、脚片12、12のそれぞれの下端から、先端が相対向するように折曲延出した挟着片13、13とが一体的に形成された略門形体により構成されている。
【0030】
挟着具10は、対向する両脚片12、12に開設された軸孔12a、12aに貫通された緊締用ボルト15と、緊締用ナット16との螺合によって、両脚片12、12を緊締して、両挟着片13、13の先端を相互に近接させて、ボルト体Bに挟着する構造となっている。
【0031】
なお図例のものでは、台座部11には補強用のリブ11aが形成され、両脚片12、12には補強用のリブ12b、12bが形成されている。
【0032】
挟着片13は対向する方向に上向きに傾斜形成され、その先端部の中央にはボルト体Bの軸部B1を係止するための係止凹所13aが形成され、両係止凹所13aでボルト体Bに挟着するようになっている。この係止凹所13aの中央にはボルト体Bを係止する係止片13bが切り起こし形成されている。また、先端部における係止凹所13aの両側には補強用のリブ13cが形成されている。
【0033】
一方、フレーム取付具20は、それを構成する複数の部材が金属または硬質樹脂の板状体よりなり、挟着具10の台座部11に載置固定される本体部21と、本体部21の上に配された、長尺フレーム1をその幅方向の両側より挟持固定する一対の挟持片22、22とを備えた構成となっている。
【0034】
本体部21は、中央部が凹んだ折曲板体よりなり、その中央部で下方に突出した固定部21aを台座部11に載置し、固定部21aの固定孔21abと台座部11の固定孔11bとにリベットRを挿通してかしめ止めできるようなっている。また、固定部21aの両側には、スライド長孔21baが本体部21の長手方向に沿って形成された挟持片取付部21bが延出形成されている。なお、固定部21aの凹み深さの寸法はリベット止めした際にリベットRの頭部が挟持片取付部21bの上面よりも突出しない程度の寸法であればよい
一方、挟持片22は、本体部21と略同幅の矩形板体よりなり、軸孔22abを有した固定片部22aと、固定片部22aの内側の辺縁より傾斜状に突出した挟持突部22bとを備えている。
【0035】
挟持片22、22のそれぞれは、本体部21の両挟持片取付部21b、21bの上に配され、ボルト23、ナット24で固定される。そして、固定された両挟持片22、22間の間隙(フレーム嵌着部25)に長尺フレーム1が取り付け固定されるようになっている。
【0036】
このように、長尺フレーム1は屋根上取付具Aに固定され、図8に示すように、さらに長尺フレーム1の他の部位が他の屋根上取付具Aに固定されて、複数の屋根上取付具A、Aによって支持されるようになっている。」

エ 「【0049】
このように取り付け固定される長尺フレーム1は、相互に略平行となるように複数のものが取り付けられる。つまり、図8に示すように、折板屋根Yの頂部Y1aの形成方向に沿って複数の屋根上取付具A、A、Aが配設され、それによって複数の長尺フレーム1、1、1が併設され、それらの併設された複数の長尺フレーム1、1、1間に跨るように遮熱シート3が張設される。
【0050】
遮熱シート3は各長尺フレーム1の溝内に固定され、その上にはフレームカバー2が取り付けられる。
【0051】
長尺フレーム1に対する遮熱シート3の取り付け構造は、その図示を省略しているが、たとえば、溝内において別部材で遮熱シート3を内底面に押し付け固定する構造としてもよいし、長尺フレーム1の溝開口1aに対するフレームカバー2の嵌着によって遮熱シート3を固定する構造としてもよく、種々の固定構造を用いることができる。
【0052】
以上のように、屋根上取付具Aは、本体部21と、その上方に取り付ける一対の挟持片22、22とにより長尺フレーム1を挟持固定する構造となっているため、溝形状に形成した長尺フレーム1を、その溝開口1aを上方に突出させ、かつ上方に向けて開放した状態で固定することができる。そのため、溝空間を利用して遮熱シート3を取り付ける場合に、遮熱シート3の長尺フレーム1への固定およびフレームカバー2の装着をしやすくでき、施工を簡易、迅速かつ確実に行うことができる。
【0053】
また、屋根上取付具Aは、挟着具10とは別体のフレーム取付具20に長尺フレーム1を取り付ける構造であるため、従来使用していた挟着具10をそのまま使用することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、複数の屋根上取付具Aの上に長尺フレーム1を介して取り付ける屋根上取付物品の例として遮熱シート3を示したが、その他の屋根上取付物品を取り付ける場合にも適用できる。」

オ 上記アないしエからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「その上面に、テレビアンテナや空調機器、太陽電池パネル、遮熱シート等の屋根上取付物品を、屋根上取付物品取付用の長尺フレームを介して取り付け固定する、折板屋根(角波形屋根)であって、
折板屋根Yは、山部Y1と谷部Y2が交互に連続する屋根であって、複数の折板屋根材を側端縁の山部Y1の頂部Y1aで重合し、その重合部で屋根上取付具Aを取り付けるためのボルト体B(突出体)とナットC1の螺着によって連結した重ね式接合構造となっており、
屋根上取付具Aは、ボルト体Bの突出体に挟着する構造とした略門形の挟着具10と、屋根上取付物品設置用の長尺フレーム1が取り付け固定され得るフレーム取付具20とを備え、
長尺フレーム1は、溝開口1aの幅寸法が底部1bの幅寸法よりも小さい、両側壁1cが内側に傾斜した形状となっており、
フレーム取付具20は、挟着具10の台座部11に載置固定される本体部21と、本体部21の上に配された、長尺フレーム1をその幅方向の両側より挟持固定する一対の挟持片22、22とを備え、固定された両挟持片22、22間の間隙(フレーム嵌着部25)に長尺フレーム1が取り付け固定されるようになっており、
遮熱シート3は、相互に略平行となるように並設して取り付けられる複数の長尺フレーム1間に跨るように張設され、各長尺フレーム1の溝内に固定され、その上にはフレームカバー2が取り付けられる、
折板屋根。」

(2)甲第2号証
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、屋根の野地部の遮熱装置に関するものである。」

イ 「【0012】図2は、遮熱材(5)の断面構造を示しており、(6)(6)は、ポリエチレン等の2枚のプラスチックシート材を、内部に多数の空気セル(7)(7)…を形成するよう、一方を円形に膨出させて貼り合わされた図3のようなエアマットであり、緩衝材として梱包材を被覆するのに広く用いられているものと同じものである。
【0013】そして、このような2枚のエアマット(6)(6)を膨出側において互いに張り合わせるとともに、その表裏両面にアルミニウム箔(8)(8)を貼着して、その表裏両面を被覆している。
【0014】上記遮熱材(5)は、野地板(3)の表面温度が高くなっても、反射断熱によってその輻射熱が天井板側に伝わるのを防止するため、天井板が加熱されることがなく、夏期の居室内の温度上昇を緩和することが可能となるものである。」

(3)甲第3号証
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、新築や既築建物の折板屋根の遮熱工法に関するものである。」

イ 「【0013】
本発明は、既存の折板屋根8と新規の折板屋根5の間に、折板屋根の形状と殆ど同じ形をしたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の遮熱折板3を設け三重構造としたものである。更に、この屋根の上流端部及び下流端部は鉄板等により空気の流れを止める通気止めを設けたものである。
【0014】
ここで、屋根の形状と遮熱折板3が同形状とは、新規折板屋根5と遮熱折板3或いは既存折板屋根8と遮熱折板3との隙間が一定になるという事で、熱伝達阻止に重要な均一な静止空気層6形成の要因が出来ることになる。これにより、遮熱折板3の両側では輻射熱を効率的に反射できるばかりか、この静止空気層6の効果で大きな熱抵抗が得られ熱の伝達を大幅に削減することができる。」

ウ 「【0017】
本発明に使用する遮熱折板3は折板屋根と殆ど同形状で、薄くて剛性のあるアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を、折板屋根材折曲機を使用することにより簡単に加工することが出来る。勿論、遮熱折板3の両端部の遮熱折板接続部2の折り曲げ形状も屋根材同様に出来る。この為、隣接する遮熱折板3との嵌合も良く、遮熱折板接合部2のスキマから上部或いは下部の空間に出入りする熱も少なくすることが可能である。」

エ 「【0019】
遮熱折板3の材質は、輻射熱に対して高反射率の素材であるから金属系の材料が多いので剛性はあるが、万一強度が不足する場合図4に示すとおり、全体の形状は新規折板屋根5とほぼ同じとし、遮熱折板3自体をS字やジグザグ形状7等に曲げて使うことも出来る。新たな成形機の製作で費用がかかることはあるが、より長尺の遮熱折板3を作ることが出来るため現場作業は各段に向上する。」

オ 「【0022】
輻射熱を効率的に反射するには静止空気層6の形成が最も良いので、遮熱折板3の遮熱折板接続部2等の空気遮断を確実に行うのは勿論の事、屋根流れ方向の上流及び下流の端部には空気を止める通気止めを施工することは絶対条件となる。
【0023】
既存屋根の遮熱施工方法は、既存折板屋根8のボルトに新規折板屋根用吊金物4を取り付け、この新規折板屋根用吊金物4に遮熱折板受金物7を落とし込む。続いて、新規折板屋根用吊金物4に遮熱折板3の遮熱折板前後位置決め開口部1をあわせて上から載せる。この時、隣接する遮熱折板3の遮熱折板接続部2がピッタリ嵌め合うように調整する。屋根流れ方向の上下遮熱折板3の接続は、遮熱折板受金物7の位置で重ね合わせ上部よりビス等で固定する。更に、新規折板屋根5を載せボルトにて固定する。最後に、屋根の上流と下流に鉄板等の通気止めを取り付ける。」

(4)甲第7号証
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根表面を形成する屋根材に装着する屋根外装構造において、
波形の凹凸を有する該屋根材の上面を覆う通気性を有さない遮熱シートと、
該屋根材の側方の該屋根材と該遮熱シートとの間の開口部を塞ぐ封止部材とを備え、
該開口部を該封止部材で塞いで該屋根材と該遮熱シートとの間に、空気層を設けたことを特徴とする屋根外装構造。
【請求項2】
前記遮熱シートの表面が、アルミ箔で形成されていることを特徴とする請求項1記載の屋根外装構造。
【請求項3】
前記遮熱シートの前記アルミ箔の下層に、樹脂製シートからなる断熱層を有することを特徴とする請求項2記載の屋根外装構造。
【請求項4】
前記遮熱シートの前記アルミ箔の最下層に、他のアルミ箔を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の屋根外装構造。
【請求項5】
前記屋根材の凸状の峰に沿って、上面が平坦な下方が開口した略C字状の棟金具を、該峰に所定間隔で設け、
該棟金具の上面を覆うように、略門状で峰方向に伸びるベースカバーを設け、
該ベースカバーの上から該屋根材全体を前記遮熱シートで覆い、
該ベースカバーの上に略門状で峰方向に伸びる押えカバーを設け、該遮熱シートを該ベースカバーと該押えカバーとで固定することを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の屋根外装構造。
【請求項6】
前記屋根材の凸状の峰に沿って、上面が平坦な下方が開口した略C字状の棟金具を、該峰に所定間隔で設け、
該棟金具の上面を覆うように、略門状で峰方向に伸びるベースカバーを設け、
該ベースカバーの上から該屋根材全体を前記遮熱シートで覆い、
該ベースカバーの上に略逆門状で峰方向に伸びる押えバーを設け、該遮熱シートを該ベースカバーと該押えバーとで固定することを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の屋根外装構造。


5 当審の判断
(1)特許法第29条第2項
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明を対比すると、以下の3点で相違している。
〔相違点1〕遮熱シートが、本件発明1は、通気性を有さないのに対し、甲1発明は、通気性を有さないかどうか不明な点。
〔相違点2〕遮熱シートの固定について、本件発明1は、屋根材の頂部に接着するのに対し、甲1発明は、重合した山部Y1の頂部Y1aに、挟着具10とフレーム取付具20からなる屋根上取付具Aと、長尺フレーム1を介して取り付けられており、屋根材の頂部に接着するものではない点。
〔相違点3〕本件発明1は、屋根材の側方の屋根材と遮熱シートとの間の開口部を塞ぐ封止部材を備え、該開口部を封止部材で、屋根材の頂部以外の部分と遮熱シートとの間に、空気層を設けた(つまり、屋根材の頂部と遮熱シートとの間には空気層は設けられていない。)のに対し、甲1発明は、開口部に封止部材を備えておらず、また、空気層が屋根材の頂部と遮熱シートとの間に設けられたかどうかの特定がない点。

(イ)上記(ア)の各相違点について検討する。
甲1発明は、遮熱シートの固定について、上記相違点2のとおり、重合した山部Y1の頂部Y1aに、挟着具10とフレーム取付具20からなる屋根上取付具Aと、長尺フレーム1を介して取り付けているものであって、該取り付けによって、甲第1号証(上記4(1)エの段落【0052】?「【0054】)に記載された顕著な作用効果を奏するものである。
よって、遮熱シートを接着にて取り付けることが、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように、本件特許の出願前に周知な技術であったとしても、該周知技術の適用は、甲1発明の上記作用効果を妨げることとなるので、甲1発明に上記周知技術を適用し、甲1発明の重合した山部Yaの頂部Y1aに遮熱シートを接着することによって、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、甲1発明は、遮熱シートを、重合した山部Y1の頂部Y1aに、挟着具10とフレーム取付具20からなる屋根上取付具Aと、長尺フレーム1を介して取り付けているものであるから、山部Y1の頂部Y1aと遮熱シートとの間には、空間が形成されるので、仮に、甲1発明に甲第3号証に記載の「通気止め」を適用することができたとしても、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、 当業者が容易になし得たことではない。
また、甲第4?6号証にも、上記相違点2及び相違点3に係る本件発明1の構成は記載されていない。
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証?甲第6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)申立人は、相違点2については、遮熱シートを甲第4及び5号証に記載される周知の接着手段で取り付けることは、当業者が容易に想到し得たものであって、相違点3については、甲第3号証に記載の「通気止め」を、甲1発明に適用することによって、当業者が容易に想到し得たものと主張するが、上記(イ)のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。

イ 本件発明2?本件発明6ついて
本件発明2?本件発明6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定したものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲第2号証?甲第6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)特許法第39条第1項
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲第7号証の請求項1に記載された発明(以下「先願発明1」という。)とを対比すると、以下の点で一応相違する。
〔相違点4〕
遮熱シートを、本件発明1は、屋根材の頂部に接着しているのに対し、先願発明1は、そのような特定がない点。
〔相違点5〕
空気層が、本件発明1は、屋根材の頂部以外の部分と遮熱シートとの間に設けられる(つまり、屋根材の頂部と遮熱シートとの間には空気層は設けられていない。)のに対し、先願発明1は、屋根材と遮熱シートとの間に設けられる点。

(イ)上記(ア)の各相違点について検討する。
遮熱シートの取り付けにおいて接着手段を用いることは、甲第4号証及び甲第5号証に記載されるように、本件特許の出願前に周知技術であるものの、両文献に記載の遮熱シートは、折板の裏側に設けられたものであるから、相違点4は、申立人が主張するような具体化手段における微差ではなく、実質的な相違点である。
また、遮熱シートを屋根材の頂部に接着により固定することによって、先願発明1の空気層は、屋根材の頂部以外の部分と遮熱シートとの間に設けられる(つまり、屋根材の頂部と遮熱シートとの間には空気層は設けられていない。)ものとなるので、相違点5についても、実質的な相違点である。
そして、上記相違点4及び相違点5に係る本件発明1の構成は、甲第7号証の特許請求の範囲の請求項2?6にも記載されていないことから、本件発明1は、甲第7号証の請求項1?6に記載されたどの発明とも同一ではない。

イ 本件発明3ないし本件発明5について
本件発明3ないし本件発明5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定したものであるから、上記アに示した理由と同様の理由により、甲第7号証の請求項1?6に記載されたどの発明とも同一ではない。


6 むすび、
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-09-30 
出願番号 特願2015-13200(P2015-13200)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04D)
P 1 651・ 4- Y (E04D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 兼丸 弘道  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 西田 秀彦
住田 秀弘
登録日 2019-01-18 
登録番号 特許第6465670号(P6465670)
権利者 株式会社ライフテック
発明の名称 屋根外装構造  
代理人 水崎 慎  
代理人 福田 伸一  
代理人 高橋 克宗  
代理人 加藤 道幸  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ