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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04D |
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管理番号 | 1355992 |
異議申立番号 | 異議2019-700174 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-03-01 |
確定日 | 2019-10-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6465640号発明「屋根外装構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6465640号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6465640号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成26年12月15日(優先権主張:平成25年12月24日)に出願され、平成31年1月18日にその特許権の設定登録がされ、平成31年2月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年3月1日に特許異議申立人日本遮熱株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 2 本件発明 特許第6465640号の請求項1?6の特許に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 建築物の屋根表面を形成する屋根材に装着する屋根外装構造において、 波形の凹凸を有する該屋根材の上面を覆う通気性を有さない遮熱シートと、 該屋根材の側方の該屋根材と該遮熱シートとの間の開口部を塞ぐ封止部材とを備え、 該開口部を該封止部材で塞いで該屋根材と該遮熱シートとの間に、空気層を設けたことを特徴とする屋根外装構造。 【請求項2】 前記遮熱シートの表面が、アルミ箔で形成されていることを特徴とする請求項1記載の屋根外装構造。 【請求項3】 前記遮熱シートの前記アルミ箔の下層に、樹脂製シートからなる断熱層を有することを特徴とする請求項2記載の屋根外装構造。 【請求項4】 前記遮熱シートの前記アルミ箔の最下層に、他のアルミ箔を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の屋根外装構造。 【請求項5】 前記屋根材の凸状の峰に沿って、上面が平坦な下方が開口した略C字状の棟金具を、該峰に所定間隔で設け、 該棟金具の上面を覆うように、略門状で峰方向に伸びるベースカバーを設け、 該ベースカバーの上から該屋根材全体を前記遮熱シートで覆い、 該ベースカバーの上に略門状で峰方向に伸びる押えカバーを設け、該遮熱シートを該ベースカバーと該押えカバーとで固定することを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の屋根外装構造。 【請求項6】 前記屋根材の凸状の峰に沿って、上面が平坦な下方が開口した略C字状の棟金具を、該峰に所定間隔で設け、 該棟金具の上面を覆うように、略門状で峰方向に伸びるベースカバーを設け、 該ベースカバーの上から該屋根材全体を前記遮熱シートで覆い、 該ベースカバーの上に略逆門状で峰方向に伸びる押えバーを設け、該遮熱シートを該ベースカバーと該押えバーとで固定することを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の屋根外装構造。」 3 申立理由の概要 申立人は、主たる証拠として甲第1号証を、従たる証拠として甲第2号証及び甲第3号証を提出して、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨、主張している。 〔証拠〕 甲第1号証:特開2013-160036号公報 甲第2号証:特開平10-280577号公報 甲第3号証:特開2013-174054号公報 4 証拠の記載 (1)甲第1号証 (下線は決定で付した。以下同様。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、新築や既築建物の折板屋根の遮熱工法に関するものである。」 イ 「【0013】 本発明は、既存の折板屋根8と新規の折板屋根5の間に、折板屋根の形状と殆ど同じ形をしたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の遮熱折板3を設け三重構造としたものである。更に、この屋根の上流端部及び下流端部は鉄板等により空気の流れを止める通気止めを設けたものである。 【0014】 ここで、屋根の形状と遮熱折板3が同形状とは、新規折板屋根5と遮熱折板3或いは既存折板屋根8と遮熱折板3との隙間が一定になるという事で、熱伝達阻止に重要な均一な静止空気層6形成の要因が出来ることになる。これにより、遮熱折板3の両側では輻射熱を効率的に反射できるばかりか、この静止空気層6の効果で大きな熱抵抗が得られ熱の伝達を大幅に削減することができる。」 ウ 「【0017】 本発明に使用する遮熱折板3は折板屋根と殆ど同形状で、薄くて剛性のあるアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を、折板屋根材折曲機を使用することにより簡単に加工することが出来る。勿論、遮熱折板3の両端部の遮熱折板接続部2の折り曲げ形状も屋根材同様に出来る。この為、隣接する遮熱折板3との嵌合も良く、遮熱折板接合部2のスキマから上部或いは下部の空間に出入りする熱も少なくすることが可能である。」 エ 「【0019】 遮熱折板3の材質は、輻射熱に対して高反射率の素材であるから金属系の材料が多いので剛性はあるが、万一強度が不足する場合図4に示すとおり、全体の形状は新規折板屋根5とほぼ同じとし、遮熱折板3自体をS字やジグザグ形状7等に曲げて使うことも出来る。新たな成形機の製作で費用がかかることはあるが、より長尺の遮熱折板3を作ることが出来るため現場作業は各段に向上する。」 オ 「【0022】 輻射熱を効率的に反射するには静止空気層6の形成が最も良いので、遮熱折板3の遮熱折板接続部2等の空気遮断を確実に行うのは勿論の事、屋根流れ方向の上流及び下流の端部には空気を止める通気止めを施工することは絶対条件となる。 【0023】 既存屋根の遮熱施工方法は、既存折板屋根8のボルトに新規折板屋根用吊金物4を取り付け、この新規折板屋根用吊金物4に遮熱折板受金物7を落とし込む。続いて、新規折板屋根用吊金物4に遮熱折板3の遮熱折板前後位置決め開口部1をあわせて上から載せる。この時、隣接する遮熱折板3の遮熱折板接続部2がピッタリ嵌め合うように調整する。屋根流れ方向の上下遮熱折板3の接続は、遮熱折板受金物7の位置で重ね合わせ上部よりビス等で固定する。更に、新規折板屋根5を載せボルトにて固定する。最後に、屋根の上流と下流に鉄板等の通気止めを取り付ける。」 カ 上記アないしオからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「既存の折板屋根8と新規の折板屋根5の間に、折板屋根の形状と殆ど同じ形をしたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の遮熱折板3を設け三重構造としたものであって、更に、この屋根の上流端部及び下流端部は鉄板等により空気の流れを止める通気止めを設けた、既築建物の折板屋根の遮熱工法。」 (2)甲第2号証 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、屋根の野地部の遮熱装置に関するものである。」 イ 「【0012】図2は、遮熱材(5)の断面構造を示しており、(6)(6)は、ポリエチレン等の2枚のプラスチックシート材を、内部に多数の空気セル(7)(7)…を形成するよう、一方を円形に膨出させて貼り合わされた図3のようなエアマットであり、緩衝材として梱包材を被覆するのに広く用いられているものと同じものである。 【0013】そして、このような2枚のエアマット(6)(6)を膨出側において互いに張り合わせるとともに、その表裏両面にアルミニウム箔(8)(8)を貼着して、その表裏両面を被覆している。 【0014】上記遮熱材(5)は、野地板(3)の表面温度が高くなっても、反射断熱によってその輻射熱が天井板側に伝わるのを防止するため、天井板が加熱されることがなく、夏期の居室内の温度上昇を緩和することが可能となるものである。」 ウ 上記ア及びイからみて、甲第2号証には、「ポリエチレン等の2枚のプラスチックシート材を、内部に多数の空気セル(7)を形成するよう、一方を円形に膨出させたエアマット(6)を膨出側において互いに張り合わせるとともに、その表裏両面にアルミニウム箔(8)を貼着して被覆している遮熱材(5)」が記載されている。 (3)甲第3号証 「【0049】 このように取り付け固定される長尺フレーム1は、相互に略平行となるように複数のものが取り付けられる。つまり、図8に示すように、折板屋根Yの頂部Y1aの形成方向に沿って複数の屋根上取付具A、A、Aが配設され、それによって複数の長尺フレーム1、1、1が併設され、それらの併設された複数の長尺フレーム1、1、1間に跨るように遮熱シート3が張設される。 【0050】 遮熱シート3は各長尺フレーム1の溝内に固定され、その上にはフレームカバー2が取り付けられる。」 5 当審の判断 (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「遮熱折板3」と本件発明1の「通気性を有さない遮熱シート」とは、「遮熱部材」で共通する。 よって、本件発明1と甲1発明は、 「建築物の屋根表面を形成する屋根材に装着する屋根外装構造において、 波形の凹凸を有する該屋根材の上面を覆う遮熱部材と、 該屋根材の側方の該屋根材と該遮熱シートとの間の開口部を塞ぐ封止部材とを備え、 該開口部を該封止部材で塞いで該屋根材と該遮熱シートとの間に、空気層を設けたことを特徴とする屋根外装構造。」で一致するものの、 遮熱部材が、甲1発明は、「通気性を有さない遮熱シート」であるのに対し、甲1発明は、「遮熱折板3」である点(以下「相違点」という。)で相違している。 イ 上記アの相違点について検討する。 (ア)甲第2号証には、「ポリエチレン等の2枚のプラスチックシート材を、内部に多数の空気セル(7)を形成するよう、一方を円形に膨出させたエアマット(6)を膨出側において互いに張り合わせるとともに、その表裏両面にアルミニウム箔(8)を貼着して被覆している遮熱材(5)」(上記4(2)ウ)が記載されている。 また、本件発明1の遮熱シートは、特許請求の範囲や発明の詳細な説明を参酌すると、アルミ箔で形成されているものである。 してみると、(アルミニウム箔(8)を貼着した)甲第1号証に記載の遮熱材(5)は、(アルミ箔で形成されている)本件発明1の通気性を有さない遮熱シートに相当する。 (イ)しかしながら、甲第1号証に「屋根の形状と遮熱折板3が同形状とは、新規折板屋根5と遮熱折板3或いは既存折板屋根8と遮熱折板3との隙間が一定になるという事で、熱伝達阻止に重要な均一な静止空気層6形成の要因が出来ることになる。」(上記4(1)イ【0014】)、及び「遮熱折板3の材質は、輻射熱に対して高反射率の素材であるから金属系の材料が多いので剛性はあるが、」(上記4(1)ウ【0017】)と記載されているように、甲1発明の「遮熱折板3」は、新規折板屋根5や既存折板屋根8との隙間が一定となる程度に自身の形状を保持できる強度を備えるものであるから、甲1発明の「遮熱折板3」を、自身の形状を保持できる強度を備えるかどうか不明である甲第2号証に記載のエアマット(6)やアルミニウム箔(8)からなる遮熱材(5)に替えることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ)また、甲第3号証にも、遮熱シート3が記載されているものの、上記(イ)で検討したことと同様に、該遮熱シート3を甲1発明の遮熱折板3に適用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。(なお、遮熱シート3は、通気性を有さないかどうか不明でもある。) ウ 申立人は、甲2発明を甲1発明の遮熱折板に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである旨、主張するが、上記イで検討したとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 以上のことから、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2?本件発明6ついて 本件発明2?本件発明6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定したものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび、 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-09-30 |
出願番号 | 特願2014-253201(P2014-253201) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E04D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 兼丸 弘道 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 西田 秀彦 |
登録日 | 2019-01-18 |
登録番号 | 特許第6465640号(P6465640) |
権利者 | 株式会社ライフテック |
発明の名称 | 屋根外装構造 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 高橋 克宗 |
代理人 | 水崎 慎 |
代理人 | 加藤 道幸 |