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審決分類 |
審判 一部無効 4項(134条6項)独立特許用件 F23G 審判 一部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 F23G 審判 一部無効 特許請求の範囲の実質的変更 F23G 審判 一部無効 判示事項別分類コード:857 F23G 審判 一部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 F23G 審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F23G 審判 一部無効 2項進歩性 F23G |
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管理番号 | 1356299 |
審判番号 | 無効2017-800152 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2017-12-20 |
確定日 | 2019-09-09 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4831309号発明「廃棄物処理設備および廃棄物処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4831309号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正することを認める。 特許第4831309号の請求項1及び3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4831309号(以下「本件特許」という。)についての特許出願は、平成17年12月20日にされ、平成23年9月30日にその特許権が設定登録された。 そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成29年12月20日 本件無効審判請求 平成30年 3月 9日 被請求人より審判答弁書の提出 同年 5月18日 審理事項通知 同年 5月22日 審理事項通知 同年 6月18日 請求人より口頭審理陳述要領書の提出 同年 7月17日 被請求人より口頭審理陳述要領書の提出 同年 7月25日 請求人より手続補正書の提出 同年 8月 7日 口頭審理 同年 8月28日 被請求人より上申書の提出 同年 9月 7日 請求人より上申書の提出 同年 9月20日 被請求人より上申書の提出 同年10月 9日 審決の予告 同年12月25日 被請求人より訂正請求書、上申書(2通)の提出 平成31年 1月10日 被請求人より上申書の提出 同年 2月19日 請求人より審判事件弁駁書の提出 同年 4月12日 被請求人より審判事件答弁書の提出 第2 請求人の主張 請求人は、特許第4831309号の請求項1及び3についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めており、審判請求書、口頭審理陳述要領書、上申書及び審判事件弁駁書において主張する無効理由及び証拠方法は次のとおりである。 1 無効理由 本件特許発明1及び3は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術ないし周知の構成に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2 証拠方法 請求人は、審判請求書に添付して甲第1号証ないし甲第16号証を提出し、口頭審理陳述要領書に添付して甲第17号証ないし甲第22号証を提出し、上申書に添付して甲第23号証ないし甲第24号証を提出している。 甲第1号証:特開昭56-53315号公報 甲第2号証: “過給機(かきゅうき)とは-コトバンク”,[平成29年8月9日検索],インターネットURL:https://kotobank.jp/word/%E9%81%8E%E7%B5%A6%E6%A9%9F-43493 甲第3号証:平成23年3月4日付け拒絶理由通知書 甲第4号証:特表2004-506832号公報 甲第5号証:平成23年5月9日付け意見書 甲第6号証:特開平7-217839号公報 甲第7号証:特開平10-246413号公報 甲第8号証:特開昭59-23034号公報 甲第9号証:実願昭60-3598号(実開昭61-120044号)のマイクロフィルム 甲第10号証:実願昭58-96983号(実開昭60-5068号)のマイクロフィルム 甲第11号証:特開昭57-102525号公報 甲第12号証:特開2005-28251号公報 甲第13号証:特開2003-56363号公報 甲第14号証:特開2002-371860号公報 甲第15号証:”JIS 工業用語辞典第5版”,財団法人日本規格協会,2001年3月30日,表紙,p.9,10,20,22,33,328,2469,2494,2495,2581,2582,奥付 甲第16号証:”環境技術”,環境技術研究会,第8巻,第11号,表紙,目次頁,p.45-60 甲第17号証:“ファン・ブロア・送風機の選定 | 朝倉機械製作所”,[平成30年5月15日検索],インターネットURL:http://fan-blower-soufuuki.com/tweets/%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%b3%e3%81%a8%e9%80%81%e9%a2%a8%e6%a9%9f%e3%80%81%e3%83%96%e3%83%ad%e3%82%a2%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e5%8d%98%e8%aa%9e%e3%81%ae%e9%81%b8%e5%ae%9a%e3%81%a8%e4%bb%95 甲第18号証:特開平5-223232号公報 甲第19号証:特開平3-244903号公報 甲第20号証:実公平6-39227号公報 甲第21号証:特開2000-314515号公報 甲第22号証:特開平1-114610号公報 甲第23号証:”下水道維持管理指針 後編2003年版”,社団法人日本下水道協会,平成18年3月20日,p.464-465 甲第24号証:”下水汚泥処理の維持管理”,東京都下水道サービス株式会社,2005年3月31日,p.198-205 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めており、審判答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書及び審判事件答弁書における主張の概要及び証拠方法は以下のとおりである。 1 本件特許発明1及び3は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術ないし周知の構成に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 証拠方法 被請求人は、審判答弁書に添付して乙第1号証ないし乙第4号証を提出し、口頭審理陳述要領書に添付して乙第5の1号証ないし乙第7号証を提出し、上申書に添付して乙第8号証ないし乙第10号証を提出している。 乙第1号証:石川禎昭,“流動床式ごみ焼却炉設計の実務”,工業出版社,昭和62年6月15日,p.6,7,19-22,62,391 乙第2号証:横山重吉,六角康久,“新編機械工学講座18.改訂流体機械”,コロナ社,1999年1月25日,p.126-127 乙第3号証:”ごみ処理施設整備の計画・設計要領2017改訂版”,公益社団法人全国都市清掃会議,平成29年4月30日,p.359-361 乙第4号証:”新エネルギーの展望 ガスタービン技術”,財団法人エネルギー総合工学研究所,2007年3月,p.4-7 乙第5号証の1:“定義について(送風機について) | 朝倉機械製作所”,[平成30年7月4日検索],インターネットURL:http://fan-blower-soufuuki.com/handbook1_1/handbook1_4 乙第5号証の2:“分類について | 朝倉機械製作所”,[平成30年7月4日検索],インターネットURL:http://fan-blower-soufuuki.com/handbook1_1/handbook1_8 乙第6号証:石川禎昭,“増補改訂 流動床式ごみ焼却炉設計の実務”,工業出版社,平成6年8月20日,p.99,619-623 乙第7号証:特開平5-26423号公報 乙第8号証:”ごみ処理施設構造指針解説”,社団法人全国都市清掃会議,昭和62年8月25日,p.179-180 乙第9号証:特開平7-96134号公報 乙第10号証:石川禎昭,“増補改訂 流動床式ごみ焼却炉設計の実務”,工業出版社,平成6年8月20日,p.527 第4 訂正請求について 1 訂正請求の内容 被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4831309号の明細書及び特許請求の範囲を、平成30年12月25日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正するものであり、その内容は、以下のとおりである(ただし、下線は当審で付したものである。以下同様。)。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 特許請求の範囲の請求項1に 「前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させる第1の始動用空気供給装置とを、備える、」 と記載されているのを、 「前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させるブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置とを、備え、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に 「前記第1の予熱器より上流側に設けられた第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、」 と記載されているのを、 「前記第1の予熱器より上流側に設けられたブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、」 に訂正し、 「前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、」 と記載されているのを、 「前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行うと共に、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1のターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、」 に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0004】に 「前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させる第1の始動用空気供給装置とを、備える、」 と記載されているのを、 「前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させるブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置とを、備え、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、」 に訂正する。 (4)訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0008】に 「前記第1の予熱器より上流側に設けられた第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、」 と記載されているのを、 「前記第1の予熱器より上流側に設けられたブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、」に訂正し、「前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、」 と記載されているのを、 「前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行うと共に、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1のターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、」 に訂正する。 2 本件訂正についての当審の判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正後の請求項1は、「ブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置」との記載により、訂正前の請求項1に記載された「第1の始動用空気供給装置」をより具体的に限定するものである。 また、訂正後の請求項1は、「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、」との記載により、訂正前の請求項1に記載された「第1の始動用空気供給装置」及び「第1の過給機のコンプレッサ」に関して、その機能を具体的に限定したものである。 すなわち、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項2は、訂正後の請求項1に記載された、「前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させるブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置とを、備え、前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、」との記載を引用することにより、「第1の始動用空気供給装置」をより具体的に限定するとともに、「第1の始動用空気供給装置」及び「第1の過給機のコンプレッサ」の機能を具体的に限定したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、明細書の段落【0018】の「なお、始動方法の一例としては、ブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置10から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、炉の昇温を行う。その過程で、過給機のコンプレッサ空気と燃焼空気との流路をバルブ等で切り換える。」との記載に基づくものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに示したように、上記訂正事項は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないものであることは明らかであり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合する。 エ 特許出願の際独立して特許を受けることができること 本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項1について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2に係る発明は、請求人から提出された甲第1号証(特開昭56-53315号公報)、流動床式焼却炉の周知例して引用された甲第6号証(特開平7-217839号公報)及び甲第7号証(特開平10-246413号公報)には、第2の予熱器、及び第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う第2の過給機が記載されていないことの理由により、当業者といえども本件特許出願前に容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものには該当しないことが明らかである。 また、訂正後の請求項2が引用する訂正後の請求項1の「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、」との記載について検討すると、本件特許の図1を参照すると、始動用空気供給機10から出る流路(以下、「第1の流路」という。)に設けられたバルブ(以下、「バルブa」という。)、コンプレッサ4aから第1の予熱器3に向かう流路(以下、「主経路」という。)に設けられたバルブ(以下、「バルブb」という。)、主経路から外部に分岐する流路(以下、「第2の流路」という。)に設けられたバルブ(以下、「バルブc」という。)が看取できる。 特許明細書の発明の詳細な説明には、バルブaないしバルブcによって主経路、第1の流路及び第2の流路をどのように切り換えるかについては、一切記載がないところ、「前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える」ことを図1の記載に照らしてみると、「前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路」は、主流路及び第1の流路に対応し、始動時にタービンを回転させるためには、第1予熱器3に燃焼用空気を供給する必要があるから、少なくとも第1の流路のバルブaは開状態であり、また、始動後に定常運転となってからは、第1の始動用空気供給装置10から燃焼用空気は不要となり、コンプレッサ4aからの圧縮空気のみが第1予熱器3に供給されるものであるから、主流路のバルブbが開状態であり、第1の流路のバルブaが閉状態であることが明らかである。 そして、特許明細書の段落【0018】の「なお、始動方法の一例としては、ブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置10から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、炉の昇温を行う。」の記載から、始動時においては、燃焼用空気が供給されていることは明らかであるものの、主流路に設けられたバルブbがどのような状態であるかは不明であるが、特許明細書及び図面の記載から、バルブbが開状態であったか閉状態であったかのいずれの場合においても流動床式焼却炉の正常な始動に影響するものではないから、始動時においては、バルブbが開状態の場合と閉状態の両方が含まれると解される。 上記を総括すれば、結局、「前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成」とは、始動時に「第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気」の流路と「燃焼用空気」の流路の双方が開状態であったものを、「燃焼用空気」の流路を閉状態となるようにバルブaで切り換える構成と、始動時に「燃焼用空気」の流路が開状態であり「第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気」の流路が閉状態であったものを、「燃焼用空気」の流路を閉状態にし「第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気」の流路を開状態となるように、バルブa及びバルブbを切り換える構成とを含むものと解される。 そうすると、訂正後の請求項1の「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、」との記載は、明確に把握することができ、訂正後の請求項2に係る発明は明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件により特許を受けることができないものには該当しない。 被請求人は、平成31年4月12日提出の審判事件答弁書において、「続く『その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える』なる記載は、・・・『第1の流路』のバルブを開から閉に、『主経路』のバルブを閉から開になるように、バルブで切り換えることと理解できる。(9ページ4ないし13行)」と主張しているが、上述のとおり、当該記載は「第1の流路」のバルブを開から閉に、「主経路」のバルブを閉から開になるように、バルブで切り換えることのみを意味するものとは認められない。 また、被請求人は、「なお、『第2の流路』のバルブは、始動時において『始動用空気給装置10』からの『燃焼用空気』が『第1予熱器3』及び『第1過給機4のタービン4b』を通るところ、タービンの回転に伴いコンプレッサで生成された圧縮空気を逃がすためのものであることは当業者が直ちに理解するところである(『第2の流路』の先に繋がるところがないように図示されている。)。(9ページ14ないし19行)」と主張しているが、発明の詳細な説明には、図1における「第2の流路」についてはなんら説明がなく、かかる流路がどのようなときに開状態となり、或いはどのようなときに閉状態となるかについて、被請求人の主張するように一義的に限定する理由はない。 よって訂正後の、請求項2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正後の請求項3は、「ブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置」との記載により、訂正前の請求項3に記載された「第1の始動用空気供給装置」をより具体的に限定するものである。 また、訂正後の請求項3は、「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1のターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、」との記載により、訂正前の請求項3に記載された「第1の始動用空気供給装置」及び「第1の過給機のコンプレッサ」に関して、その機能を具体的に限定したものである。 すなわち、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項4は、訂正後の請求項3に記載された、「前記第1の予熱器より上流側に設けられたブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、」との記載、及び「前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行うと共に、前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1のターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、」との記載を引用することにより、「第1の始動用空気供給装置」をより具体的に限定するとともに、「第1の始動用空気供給装置」及び「第1の過給機のコンプレッサ」の機能を具体的に限定したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、明細書の段落【0018】の「なお、始動方法の一例としては、ブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置10から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、炉の昇温を行う。その過程で、過給機のコンプレッサ空気と燃焼空気との流路をバルブ等で切り換える。」との記載に基づくものであるから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに示したように、上記訂正事項は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないものであることは明らかであり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項3について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項2に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4に係る発明は、請求人から提出された甲第1号証(特開昭56-53315号公報)、流動床式焼却炉の周知例して引用された甲第6号証(特開平7-217839号公報)及び甲第7号証(特開平10-246413号公報)には、第2の予熱器、第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う第2の過給機が記載されていないことの理由により、当業者といえども本件特許出願前に容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものには該当しないことが明らかである。 また、訂正後の請求項4が引用する訂正後の請求項3の記載は、上記(1)エにおいて示したと同様の理由により、明確に把握することができ、訂正後の請求項4に係る発明は明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件により特許を受けることができないものには該当しない。 よって、訂正後の請求項4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、請求項1の記載と整合させるために行うものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 「(1)イ」と同様である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 「(1)ウ」と同様である。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正事項2による請求項3の訂正に伴い、請求項3の記載と整合させるために行うものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 「(2)イ」と同様である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 「(2)ウ」と同様である。 (5)一群の請求項について ア 訂正前の請求項1及び2について、請求項2は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。 イ 訂正前の請求項3及び4について、請求項4は、請求項3を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項3及び4に対応する訂正後の請求項3及び4は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。 (6)まとめ 以上のとおり、本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項により準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、本件訂正を認める。 第5 本件特許発明 上記第4で検討したように、本件訂正は認められたので、本件無効審判の請求に係る請求項1及び請求項3に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明3」といい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 流動床式焼却炉と、流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、 第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、 前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させるブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置とを、備え、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、 ことを特徴とする廃棄物処理設備。」 「【請求項3】 流動床式焼却炉から排出される排ガスによる連続的なガス-ガス熱交換によって、第1の予熱器にて前記流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行い、 前記第1の予熱器より上流側に設けられたブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、 前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行うと共に、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1のターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、 ことを特徴とする廃棄物処理方法。」 第6 当審の判断 1 甲各号証に記載された事項及び記載された発明等 (1)甲第1号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭56-53315号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付加した。 ア 「本発明はごみ焼却プラントの排熱回収システムに関するものである。 第1図により従来のごみ焼却プラントの排熱回収システムを説明する。クレーン設備によりホツパ(1)を介して焼却炉(2)に投入されたごみは、火格子(3)上で完全焼却される。そして残滓(4)は外部へ取出され、他方燃焼排ガス(5)は水噴射式冷却塔(6)及びガス-空気熱交換器(7)を経て、当初800?900℃であつたものが600℃程度まで冷却され、電気集塵機(8)に至る。除塵後、誘引フアン(9)により煙突(10)へ送られて大気へ放出される。前記ガス-空気熱交換器(7)には押込フアン(11)によつて常温空気が送り込まれるが、これはその出口において200?300℃に予熱され、燃焼用空気として焼却炉(2)へ送気される。これから明らかなように、従来システムにあつては、高温排ガスの保有熱をただ単に燃焼用空気の予熱用としてのみ回収し得るに過ぎなかつた。」 (第1ページ左下欄第15行ないし右下欄第11行) イ 「本発明は、高温排ガスの保有熱を従来のものに比べてさらに有効に回収し得るものを提供するものであり、以下その実施例を第2図に基づき説明する。 (20)はごみ焼却炉、(21)は水噴射式冷却塔、(22)は電気集塵器、(23)は誘引フアン、(24)は煙突であり、これらは排ガス路(25)中にこの順に介在される。(26)はタービン、(27)は圧縮機であり、これらは共通の伝動経路(28)中に介在される。(29)は通気路であり、これは圧縮機(27)の出口とタービン(26)の入口とを接続する。(30)は第1熱交換機(当審注:「第1熱交換器」の誤記)である。第1熱交換器(32)(当審注:「(30)」の誤記)は、ごみ焼却炉(20)から水噴射式冷却塔(21)に至る排ガス路(25)の一部と、前記通気路(29)の一部とを含むものである。(31)は第2熱交換器である。第2熱交換器(31)はタービン(26)の出口からごみ焼却炉(20)に至る燃焼用空気の送気路(32)の一部と図外の排熱利用設備の水路(33)の一部とを含む。(34)は押込フアン、(35)はその駆動モータであり、押込フアン(34)の出口は給気路(36)を介してタービン(26)の入口側に接続される。この給気路(36)にはその開閉装置(37)が介在される。」(第1ページ右下欄第12行ないし第2ページ左上欄第11行) ウ 「次に作動を説明する。ごみ焼却炉(20)の運転開始時から運転初期にかけては、モータ(35)により押込フアン(34)を作動させ、同時に開閉装置(37)を開とし、所要圧力で常温空気を給気路(36)を通してタービン(26)へ送り込む。タービン(26)から出た空気はほぼ大気圧となつており、これが送気路(32)を通つて燃焼用空気としてごみ焼却炉(20)へ送り込まれる。このとき、タービン(26)の回転と共に圧縮機(27)が始動されるため、圧縮空気が通気路(29)を通してタービン(26)へ送られる。燃焼用空気の導入によりごみ焼却炉(20)ではごみ焼却が行なわれ、残滓はその下部から取出され、排ガスは排ガス路(25)を通して第1熱交換器、水噴射式冷却塔(21)、電気集塵器(22)にこの順に誘引され、最終的に煙突(24)から外気中へ放出される。」(第2ページ左上欄第14行ないし右上欄第8行) エ 「ごみ焼却炉(20)の運転時間の経過につれ、その排ガス温度は次第に上昇する。したがつてそれに応じて通気路(29)を通る圧縮空気が第1熱交換器(30)において加熱され次第に昇温する。この過程においてタービン(26)の作動状態は、当初押込フアン(34)からの給気による従動側であったものが次第に駆動側へ移行する。その結果、押込フアン(34)ないしモータ(35)の負荷は次第に小さくなる。そしてそれらの負荷が正から負へ移行する時点で、前記開閉装置(37)が自動的に閉じられ、その後給気路(36)を通してのタービン(25)への給気が停止される。第1熱交換器(30)を通つた圧縮空気は高温高圧状態でタービン(26)に入り、ここで膨張してその熱エネルギーが機械的エネルギーに変換される。タービン(26)の出力が圧縮機(27)の駆動力として消費される。タービン(26)からの排気は降温しているが、それでもなお排熱回収を行い得る場合には、水路(33)を流れる水を加熱した後、燃焼用空気としてごみ焼却炉(20)へ送り込まれる。たとえば、ごみ焼却炉(20)の初期運転後において、排ガス温度は850℃程度になる。その場合に第1熱交換器(32)(当審注:「(30)」の誤記)を通る通気路(29)の圧縮空気(2.004ata)が約410℃程度に加熱されると、タービン(26)の排気は330℃程度まで降温するがそれでもなお第2の熱交換器(31)において30℃の水を80℃の温水とし得るだけの能力をもつ。第2の熱交換器(31)を出た燃焼用空気は約250℃でごみ焼却炉(20)へ送り込まれる。」(第2ページ右上欄第8行ないし左下欄第14行) オ 上記ア及びイの記載から、第1熱交換器(30)は、ごみ焼却炉(20)からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、ごみ焼却炉(20)に送り込む燃焼用空気の予熱を行うことが明らかである。 カ 上記イ及びウの記載から、タービン(26)は、第1熱交換器(30)で加熱されてごみ焼却炉(20)に向かう燃焼用空気によって回転させられることが明らかである。 キ 上記イ及びウの記載から、圧縮機(27)は、タービン(26)の回転によって第1熱交換器(30)に供給する圧縮空気の生成および送風を行うことが明らかである。 ク 上記イ及び第2図の記載から、押込フアン(34)は第1熱交換器(30)の下流側に設けられた給気路(36)を介してタービン(26)の入口側に接続されることが明らかである。 ケ 上記ウには、 押込フアン(34)から燃焼用空気を供給すると、ごみ焼却炉(20)でごみ焼却が行われることが記載されているから、押込フアン(34)から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、ごみ焼却炉(20)の昇温を行うことが明らかである。 コ 上記ウの記載から、ごみ焼却炉(20)の運転開始時から運転初期にかけては、開閉装置(37)は開であって、タービン(26)に通じる通気路(29)には、押込フアン(34)からの燃焼用空気と圧縮機(27)からの圧縮空気が流れているから、圧縮機(27)からの圧縮空気の流路と燃焼用空気の流路の双方が開状態であることが明らかであるとともに、上記エの記載から、ごみ焼却炉(20)の昇温が行われる過程で、開閉装置(37)が閉じられ、押込フアン(34)からの燃焼用空気の供給が停止されるから、燃焼用空気の流路を閉状態となるように開閉装置(37)で切り換えることが明らかである。 これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件特許発明1及び3の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)がそれぞれ記載されている。 〔甲1発明1〕 「ごみ焼却炉(20)と、ごみ焼却炉(20)からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、ごみ焼却炉(20)に送り込む燃焼用空気の予熱を行う第1熱交換器(30)と、 第1熱交換器(30)で加熱されてごみ焼却炉(20)に向かう燃焼用空気によってタービン(26)が回転させられ、この回転によって圧縮機(27)で前記第1熱交換器(30)に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、共通の伝動経路(28)中に介在される前記タービン(26)と前記圧縮機(27)とからなる装置と、 前記第1熱交換器(30)より下流側に設けられた給気路(36)を介して前記タービン(26)の入口側に接続され、運転開始時から運転初期にかけて前記タービン(26)を回転させる押込フアン(34)とを、備える、 ごみ焼却プラント。」 〔甲1発明2〕 「ごみ焼却炉(20)から排出される排ガスによる連続的なガス-ガス熱交換によって、第1熱交換器(30)にて前記ごみ焼却炉(20)に送り込む燃焼用空気の予熱を行い、 前記第1熱交換器(30)より下流側に設けられた押込フアン(34)により、共通の伝動経路(28)中に介在されるタービン(26)と圧縮機(27)とからなる装置の前記タービン(26)の回転を始動させ、 前記第1熱交換器(30)で加熱されてごみ焼却炉(20)に向かう燃焼用空気を、前記タービン(26)と前記圧縮機(27)とからなる前記装置に供給して前記タービン(26)を継続的に回転させるとともに、前記タービン(26)と前記圧縮機(27)とからなる当該装置の前記圧縮機(27)にて前記第1熱交換器(30)に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、 ごみ焼却方法。」 また、上記の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第1号証には、以下の事項(以下、「甲1記載事項」という。)が記載されている。 「押込フアン(34)から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、ごみ焼却炉(20)の昇温を行い、その過程で、タービン(26)の回転によって圧縮機(27)で第1熱交換器(30)に供給する、圧縮機(27)からの圧縮空気の流路と燃焼用空気の流路の双方が開状態であったものを燃焼用空気の流路を閉状態となるように開閉装置(37)で切り換えること。」 (2)甲第6号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開平7-217839号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0002】 【従来の技術】図3は、従来の燃焼装置の系統図である。同図の燃焼装置は、ごみ焼却用の燃焼装置である。101は流動床式燃焼炉であり、その側部には、ごみを炉内に投入するためのごみ投入口102が設けられている。燃焼炉101に供給する燃焼空気は押込送風機103より空気予熱器104で200℃前後に加熱して燃焼炉102に設けた複数の散気管105より供給している。」 (3)甲第7号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開平10-246413号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0003】図2にはごみ焼却装置とその余熱の回収装置を示すが、この装置は流動床炉3の燃焼用空気の予熱を行うために、押し込み送風機7からの冷空気を空気予熱器5により燃焼ガスと熱交換し、高温空気として回収するものである。 【0004】図2に示す都市ごみ焼却炉において、ごみ受入ホッパ1に投入されたごみは給じん装置2により流動床炉3に投入されて焼却される。燃焼ガスは完全燃焼化の目的から800℃?950℃の範囲に制御されて流動床炉3から排出され、ガス冷却器4に導入されて、ここで水スプレにより空気予熱器5の保護の目的から約300℃?450℃程度に冷却される。」 イ 「【0029】図1に示すシステムは砂貯留槽13内部に低温ブロック空気予熱器31と温水回収伝熱管32を設置し、低温ブロック空気予熱器31からの予熱空気がガス冷却器4の後流側のガス式の空気予熱器5でさらに加熱され、焼却炉3内に導かれる構成が図2に示す従来のシステムと相違し、その他の構成は図2に開示したものと同一である。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「送り込む」は本件特許発明1の「供給する」に相当し、以下同様に、「第1熱交換器(30)」は「第1の予熱器」に、「タービン(26)」は「タービン」に、「圧縮機(27)」は「コンプレッサ」に、「共通の伝動経路(28)中に介在される前記タービン(26)と前記圧縮機(27)とからなる装置」は「第1の過給機」に、「運転開始時から運転初期にかけて」は「運転開始時に」に、「ごみ焼却プラント」は「廃棄物処理設備」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明1における「ごみ焼却炉(20)」と本件特許発明1における「流動床式焼却炉」とは、「廃棄物焼却炉」という限りにおいて一致する。また、甲1発明1における「燃焼用空気」と本件特許発明1における「燃焼用圧縮空気」とは、「燃焼用空気」という限りにおいて一致し、さらに、甲1発明1における「前記第1熱交換器(30)より下流側に設けられた給気路(36)を介して前記タービン(26)の入口側に接続され、運転開始時から運転初期にかけて前記タービン(26)を回転させる押込フアン(34)」と本件特許発明1における「前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させる第1の始動用空気供給装置」とは、「運転開始時に前記タービンを回転させる始動用空気供給装置」という限りにおいて一致する。 以上により、本件特許発明1と甲1発明1との一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 「廃棄物焼却炉と、廃棄物焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、廃棄物焼却炉に供給する燃焼用空気の予熱を行う第1の予熱器と、 第1の予熱器で加熱されて廃棄物焼却炉に向かう燃焼用空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、 運転開始時に前記タービンを回転させる始動用空気供給装置とを、備える、 廃棄物処理設備。」 〔相違点1〕 本件特許発明1においては、「廃棄物焼却炉」が「流動床式焼却炉」であって、また、「燃焼用空気」が「燃焼用圧縮空気」であり、「始動用空気供給装置」が流動床式焼却炉の「ブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置」であるのに対し、 甲1発明1においては、「廃棄物焼却炉」が「ごみ焼却炉(20)」であって、また、「燃焼用空気」が「燃焼用空気」であり、「始動用空気供給装置」がごみ焼却炉(20)の「押込フアン(34)」である点。 〔相違点2〕 「運転開始時にタービンを回転させる始動用空気供給装置」について、 本件特許発明1においては、「前記第1の予熱器より上流側に設けられ」るのに対し、 甲1発明1においては、「前記第1熱交換器(30)より下流側に設けられた給気路(36)を介して前記タービン(26)の入口側に接続され」る点。 〔相違点3〕 本件特許発明1においては、「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした」のに対し、 甲1発明1においては、かかる構成が不明である点。 (2)判断 〔相違点1〕について まず、甲1発明1において、ごみ焼却炉(20)がストーカ式焼却炉に限定されるものか否かについて検討する。 上記1(1)アに「本発明はごみ焼却プラントの排熱回収システムに関するものである。」と記載され、また、上記1(1)イに「本発明は、高温排ガスの保有熱を従来のものに比べてさらに有効に回収し得るものを提供するものであ」ることが記載されるように、甲第1号証における発明の課題は、ごみ焼却プラントの排熱回収システムにおいて、高温排ガスの保有熱を従来のものに比べてさらに有効に回収することである。 そして、甲1発明1は、かかる課題を解決するために、従来、押込フアンを用いて燃焼用空気を予熱用の熱交換器に送出していたのにかえて、タービン(26)と圧縮機(27)とからなる装置を採用し、その際、タービン(26)を始動させるために、ごみ焼却炉(20)の運転開始時から運転初期にかけては、押込フアン(34)を作動させるようにしたものである。 ところで、甲第1号証には、従来のごみ焼却プラントの説明において、「火格子(3)」との記載があり、従来のごみ焼却プラント及びそれを改良した甲1発明1のごみ焼却プラントがストーカ式焼却炉であることが示唆されるが、他方、甲第1号証の特許請求の範囲には、ストーカ式焼却炉である旨の記載はなく、また、甲第1号証における発明の課題は上記したように、ごみ焼却プラントの排熱回収システムにおいて、高温排ガスの保有熱を従来のものに比べてさらに有効に回収することであって、「火格子(3)」などのストーカ式焼却炉に特有の構造に関連したものではない。そして、甲第1号証全体を参照しても、ストーカ式焼却炉特有の課題を解決することが読み取れる記載はない。 そうすると、甲1発明1のごみ焼却炉(20)は、十分な熱エネルギーをもった排ガスを出し、燃焼用空気を利用可能な焼却炉であれば、どのような形式の焼却炉であってもよいと解するのが相当である。 次に、甲1発明1のごみ焼却炉(20)を、流動床式焼却炉とすることができるか否かについて検討する。 流動床式焼却炉に供給する燃焼用空気の予熱を行う空気予熱器と、空気予熱器に燃焼用空気を送出する押込送風機を備えた廃棄物処理設備は、例えば、甲第6号証及び甲第7号証に記載されるように、本件特許の出願前に、周知(以下、「周知技術」という。)である。 甲1発明1のごみ焼却プラントと周知の廃棄物処理設備とは、ごみ焼却炉に供給する燃焼用空気の予熱を行う予熱器を備える廃棄物処理設備という点で共通するとともに、高温排ガスの保有熱を有効に回収することは、十分な熱エネルギーをもった排ガスを出し、燃焼用空気を利用可能な焼却炉において共通の課題であって、流動床式焼却炉を備えた廃棄物処理設備においても、当然考慮すべき課題であるから、甲1発明1のごみ焼却炉を、周知の流動床式焼却炉とすることは、当業者にとって格別困難ではない。 そして、上記周知例として示した甲第6号証の押込送風機103及び甲第7号証の押し込み送風機7は、流動床式焼却炉を機能させる程度の出力を備えたものであるのは当然のことであるところ、甲1発明1を流動床式焼却炉とする際にも、流動床式焼却炉が機能するように、始動用空気供給装置を流動床式焼却炉に対応するように出力の高いブロワ又は圧縮機を採用して、燃焼用空気を流動床式焼却炉に送り込むようにすることも当業者が適宜なし得たことである。 そうしてみると、甲1発明1に周知技術を適用して、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 〔相違点2〕について まず、甲1発明1における押込フアン(34)の機能について検討する。 上記1(1)ウの記載から、甲1発明1において、ごみ焼却炉(20)の運転開始時から運転初期にかけて、押込フアン(34)は、所定圧力で常温空気をタービン(26)に送り込んで回転させるとともに、タービン(26)から出た空気を燃焼用空気としてごみ焼却炉(20)に送り込むものであり、また、上記1(1)エの記載から、タービン(26)が十分に駆動された後は押込フアン(34)は停止されるものである。 そうすると、甲1発明1における押込フアン(34)は、運転開始時から運転初期にかけてタービン(26)に空気を送り込む機能を果たしており、かかる機能の発揮が可能な位置、すなわち、タービン(26)の上流の位置にあればよいことは当業者にとって明らかである。 甲1発明1において、押込フアン(34)は、タービン(26)に空気を送り込むことが可能な位置である限り、タービン(26)の上流のどの位置に配置するかは、他の機器との配置や接続関係、或いは利点・欠点等を考慮して当業者が適宜設定する設計的事項であるといえ、甲1発明1における第1熱交換器(30)の下流側に設けられた押込フアン(34)を、第1熱交換器(30)の上流側に設けるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。 そうしてみると、甲1発明1において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 〔相違点3〕について 甲第1号証には、「押込フアン(34)から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、ごみ焼却炉(20)の昇温を行い、その過程で、タービン(26)の回転によって圧縮機(27)で第1熱交換器(30)に供給する、圧縮機(27)からの圧縮空気の流路と燃焼用空気の流路の双方が開状態であったものを燃焼用空気の流路を閉状態となるように開閉装置(37)で切り換えること。」(甲1記載事項)が記載されており、一方、本件特許発明1の「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成」のうち、「前記第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成」は、上記第4 2(1)エで検討したように、「第1の過給機のコンプレッサからの圧縮空気」の流路と「燃焼用空気」の流路の双方が開状態であったものを「燃焼用空気」の流路を閉状態となるようにバルブaで切り換える構成を含むものである。そして、甲1発明の「開閉装置(37)」は本件特許発明1の「バルブ」に相当するから、甲1記載事項は、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する。 そうすると、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲1発明1の一態様である甲1記載事項にすぎないから、相違点3は実質的な相違点ではない。 仮に、相違点3が実質的な相違点であったとしても、甲1発明1において、押込フアン(34)及び圧縮機(27)の機能として、甲1記載事項を適用することに格別の困難性は見あたらず、当業者が容易になし得たことである。 そして、本件特許発明1は、全体としてみても、甲1発明1、甲1記載技術及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明1、甲1記載技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 本件特許発明3について (1)対比 本件特許発明3と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2の「第1熱交換器(30)」は本件特許発明3の「第1の予熱器」に相当し、以下同様に、「送り込む」は「供給する」に、「タービン(26)」は「タービン」に、「圧縮機(27)」は「コンプレッサ」に、「共通の伝動経路(28)中に介在されるタービン(26)と圧縮機(27)とからなる装置」あるいは「前記タービン(26)と前記圧縮機(27)とからなる前記装置」は「第1のターボ過給機」に、「前記タービン(26)と前記圧縮機(27)とからなる当該装置」は「当該過給機」に、「ごみ焼却方法」は「廃棄物処理方法」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明2における「ごみ焼却炉(20)」と本件特許発明3における「流動床式焼却炉」とは、「廃棄物焼却炉」という限りにおいて一致する。また、甲1発明2における「燃焼用空気」と本件特許発明3における「燃焼用圧縮空気」とは、「燃焼用空気」という限りにおいて一致し、さらに、甲1発明2における「前記第1熱交換器(30)より下流側に設けられた押込フアン(34)により、共通の伝動経路(28)中に介在されるタービン(26)と圧縮機(27)とからなる装置の前記タービン(26)の回転を始動させ」ることと本件特許発明3における「前記第1の予熱器より上流側に設けられた第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ」ることとは、「始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ」ることという限りにおいて一致する。 以上により、本件特許発明3と甲1発明2との一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 「廃棄物焼却炉から排出される排ガスによる連続的なガス-ガス熱交換によって、第1の予熱器にて前記廃棄物焼却炉に供給する燃焼用空気の予熱を行い、 始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、 前記第1の予熱器で加熱されて廃棄物焼却炉に向かう燃焼用空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、 廃棄物処理方法。」 〔相違点4〕 本件特許発明3においては、「廃棄物焼却炉」が「流動床式焼却炉」であって、また、「燃焼用空気」が「燃焼用圧縮空気」であり、「始動用空気供給装置」が流動床式焼却炉の「ブロア又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置」であるのに対し、 甲1発明2においては、「廃棄物焼却炉」が「ごみ焼却炉(20)」であって、また、「燃焼用空気」が「燃焼用空気」であり、「始動用空気供給装置」がごみ焼却炉(20)の「押込フアン(34)」である点。 〔相違点5〕 「始動用空気供給装置」について、 本件特許発明3においては、「前記第1の予熱器より上流側に設けられ」るのに対し、 甲1発明2においては、「前記第1熱交換器(30)より下流側に設けられ」る点。 〔相違点6〕 本件特許発明3においては、「前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第1のターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える」のに対し、 甲1発明2においては、かかる構成が不明である点。 (2)判断 〔相違点4〕について 相違点4に係る本件特許発明3の発明特定事項は、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項と実質的に同じであるから、上記2(2)において、〔相違点1〕について示したと同様の理由により、甲1発明2に周知技術を適用して、相違点4に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 〔相違点5〕について 相違点5に係る本件特許発明3の発明特定事項は、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項と実質的に同じであるから、上記2(2)において、〔相違点2〕について示したと同様の理由により、甲1発明2において、相違点5に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 〔相違点6〕について 相違点6に係る本件特許発明3の発明特定事項は、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項と実質的に同じであるから、上記2(2)において、〔相違点3〕について示したと同様の理由により、実質的な相違点ではなく、また、仮に実質的な相違点であったとしても、甲1発明2において、甲1記載事項を適用して、相違点6に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本件特許発明3は、全体としてみても、甲1発明2、甲1記載事項及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件特許発明3は、甲1発明2、甲1記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 被請求人の主張について (1)被請求人は、口頭審理陳述要領書において、高温排ガスの保有熱を従来のものに比べてさらに有効に回収し得るという甲第1号証における課題は「第2の熱交換器(31)」を設けることにより解決できるのであるから、甲1発明1及び甲1発明2の認定において、「第2の熱交換器(31)」が必須である旨主張する。 しかしながら、上記1(1)エに「第1熱交換器(30)を通つた圧縮空気は高温高圧状態でタービン(26)に入り、ここで膨張してその熱エネルギーが機械的エネルギーに変換される。タービン(26)の出力が圧縮機(27)の駆動力として消費される。」と記載されるように、高温排ガスの保有熱を従来のものに比べてさらに有効に回収し得るという課題は、第1熱交換器(30)で得た熱エネルギーをタービン(26)で機械エネルギーに変換してタービン(26)及び圧縮機(27)を回転させることにより解決されるものである。 そして、上記1(1)エの「タービン(26)からの排気は降温しているが、それでもなお排熱回収を行い得る場合には、水路(33)を流れる水を加熱した後、燃焼用空気としてごみ焼却炉(20)へ送り込まれる。・・・タービン(26)の排気は330℃程度まで降温するがそれでもなお第2の熱交換器(31)において30℃の水を80℃の温水とし得るだけの能力をもつ。」との記載は、燃焼用空気がタービン(26)で降温した後、さらに排熱回収を行う場合には、第2の熱交換器(31)において水路(33)を流れる水を加熱することが記載されているのであって、第2の熱交換器(31)が必須のものとして記載されているわけではない。 また、被請求人は、平成30年8月28日提出の上申書において、ストーカ炉において、ストーカ保護のために降温させる必要があるために「第2の熱交換器(31)」が必須である旨主張する。 しかしながら、上記2(2)で検討したように、甲1発明1において、ごみ焼却炉(20)がストーカ式焼却炉に限定されるものではないから、ストーカ保護のための「第2熱交換器(31)」が必須であると認められず、同様に、甲1発明2においても「第2熱交換器(31)」が必須であると認められない。 よって、被請求人の、甲1発明1及び甲1発明2の認定において、「第2の熱交換器(31)」が必須である旨の主張は失当である。 (2)被請求人は、平成30年8月28日提出の上申書において、「熱交換器の上流側に始動用空気供給装置を設けたことで、流動床式焼却炉の着火が行われ、その排ガス温度の高まりに応じて、第1予熱器において燃焼用圧縮空気が加熱される結果、タービン入口に逐次温度の高い圧縮空気が送られ、コンプレッサの回転数の上昇が速くなって、「始動用空気供給装置」は早く停止する。その後は、燃焼用圧縮空気を電力不要の過給機により流動床式焼却炉に供給することができる。このように、始動時の始動用空気供給装置の運転期間が短く、運転動力費(電力費)を削減できるという効果がある(【0005】)。」(9ページ11ないし18行)と主張するが、本件特許明細書には、第1の始動用空気供給装置を第1の予熱器より上流側に設けることによる効果に関する記載は一切見当たらず、他方、甲1発明1及び甲1発明2においても、押込フアン(34)を第1熱交換器(30)の上流側に設ければ、押込フアン(34)からの空気が第1熱交換器(30)により加熱されることにより、燃焼用空気の温度が早期に上昇して、ごみ焼却炉(20)の昇温速度が速くなり、押込フアン(34)の運転期間を短くできることは、当業者であれば予測し得る程度のことである (3)被請求人は、相違点2の判断に関して、平成30年12月25日提出の上申書において、「甲1発明における、[押込フアン(34)からの常温空気と、圧縮機(27)からの圧縮空気とが、『運転開始時から運転初期にかけて』継続的かつ同時に、タービン(26)に供給される]構成が、流動床式焼却炉に適用されるとき、『タービン(26)から出た空気』、すなわち燃焼用空気は、流動床式焼却炉における流動砂を流動化させ流動床を生成させる圧力『15?25kPa』かつ、焼却炉内における空塔速度が維持できる風量が必要となる。」(10ページ2ないし8行)及び「流動床式焼却炉における流動砂を流動化させ流動床を生成させるに必要な圧力を運転開始時から生成できる圧縮機を有する過給機を採用することは動力費削減に寄与しないのであるから、押込フアン(34)を第1熱交換器(30)の上流側に設けて、この押込フアン(34)からの常温空気と、圧縮機(27)からの圧縮空気とを、継続的かつ同時に、タービン(26)に送り込む構成は、採用し得ないものであり、この構成を想起させる当業者の技術常識も存在しない。」(11ページ6ないし13行)と主張する。 しかしながら、上記2(2)の「〔相違点1〕について」で示したように、甲1発明1を流動床式焼却炉とする際に、流動床式焼却炉に対応するように出力の高いブロワ又は圧縮機を採用することは当業者が適宜なし得ることであり、運転初期において充分な圧力及び風量とすることは出力の高いブロワ又は圧縮機を採用することで自ずと得られることであるから、被請求人の主張は採用できない。 さらに、被請求人は、平成31年4月12日提出の審判事件答弁書において、「審決の予告、14頁33行?15頁1行『甲1発明1において、押込フアン(34)は、タービン(26)に空気を送り込むことが可能な位置である限り、タービン(26)の上流のどの位置に配置するかは、他の機器との配置や接続関係、或いは利点・欠点等を考慮して当業者が適宜設定する設計的事項であるといえ、甲1発明1における第1熱交換器(30)の下流側に設けられた押込フアン(34)を、第1熱交換器(30)の上流側に設けるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない』と判断しているのは、温度及び圧力が異なる2つの空気を、継続的かつ同時にタービン(26)送り込まれるものであることを捨象して、押込フアン(34)のみを第1熱交換器(30)の上流側に設けるようにするものであり、動機付けに関する判断を誤ったものである。(23ページ6ないし17行)」と主張している。 しかしながら、上記2(2)の「〔相違点3〕について」で示したように、甲1発明1は、甲1発明1の一態様である甲1記載事項を実質的に備えたもの、或いは甲1発明1に甲1記載事項を適用して当業者が容易になし得たものであるところ、いずれのものも始動時には「圧縮機(27)からの圧縮空気の流路と燃焼用空気の流路の双方が開状態であ」るから、被請求人が捨象したとする「温度及び圧力が異なる2つの空気を、継続的かつ同時にタービン(26)送り込まれるもの」であり、上記第4 2(1)エで検討したように、そもそも本件特許発明も燃焼用空気と圧縮空気を同時にタービンに送り込む構成を含んでおり、燃焼用空気と圧縮空気を同時にタービンに送り込むものであっても流動床式焼却炉の正常な始動に影響するものではないから、押込フアン(34)を第1熱交換器(30)の上流側に設けるようにする技術的な阻害要因は見あたらない。 したがって、被請求人の主張は採用できず、審決の予告の判断に誤りはない。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許発明1及び3は、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1及び3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 廃棄物処理設備および廃棄物処理方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、廃棄物の焼却処理技術に属し、特には、焼却炉および過給機を備えた廃棄物処理設備および過給機および焼却炉を用いた廃棄物処理方法に関する。 【背景技術】 【0002】 図2および図3に、従来の廃棄物焼却設備のブロック図を示す。 従来の廃棄物X10の焼却処理設備101では、廃棄物X10と適宜の燃料X20との焼却処理に伴って焼却炉20から排出される排ガスX40を予熱器30に導いて、焼却炉20に供給する燃焼用圧縮空気X30’の加温に用いることが行われる。 また、廃棄物X10の焼却処理設備101では、焼却炉20からの排ガスX40を排ガス湿式処理装置70で処理することがあり、この場合、排煙筒(煙突)90から排出される排ガスの白煙防止処理が行なわれることが一般的となっている。そして、白煙防止の方法としては、排ガス湿式処理70の前段に白煙防止用の空気予熱器50を設け、この予熱器50からの加熱圧縮空気X50’を湿式処理された排ガスに混合することにより行われる。 そして、従来設備101では、これらの燃焼用圧縮空気X30’用の予熱器30や白煙防止用の予熱器50に対しては、ブロアB1,B2を用いて熱交換用の空気X30,X50を供給している。 しかし、ブロアB1,B2の運転には、多大な電力が必要であるため削減が求められる。 そこで、焼却炉の排ガスを廃熱ボイラで蒸気として回収し、発電して得られる電力の一部をブロアの動力源として利用することが試みられている。 また、特に、図3に示す加圧流動床式焼却炉20を採用する従来の廃棄物焼却設備101では、焼却炉20からの高温高圧排ガスX40を過給機40に導入して、加圧空気を発生させて燃焼用空気等に利用することによりブロアB1を用いないようにすることも試みられている。 【特許文献1】特開2005-028251 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、焼却炉の排ガスを利用して発電する方法は、廃熱ボイラおよび蒸気タービン発電設備等の種々の設備が必要となり、設備面および維持管理面のコストが高いため、大規模設備ではエネルギー回収による経済的効果が得られるものの、その他の多くの中小規模設備ではかえって経済的負担が悪化するため適するものではない。 また、図3の方式は、高温高圧の排ガスX41を過給機40に導入する必要があるため、加圧式の燃焼炉20が必須要件となる。このため、常圧近傍の焼却炉には適さない。 そこで、本発明の主たる課題は、常圧式の焼却炉であると加圧式の焼却炉であるとにかかわらず適用することができ、しかも、燃焼用圧縮空気や白煙防止用圧縮空気を生成し予熱器に供給するためのブロアを必要とせず、エネルギー効率に優れる、廃棄物焼却設備および処理方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0004】 上記課題を解決した本発明および作用効果は次記のとおりである。 <請求項1記載の発明> 流動床式焼却炉と、流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、 第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、 前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させるブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置とを、備え、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第lの過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、 ことを特徴とする廃棄物処理設備。 【0005】 (作用効果) 第1予熱器に供給する圧縮空気を生成するためのブロアが不要となる。また、当該圧縮空気得るために電力不要の過給機を用いることとしたため、電力削減が達成される。 【0006】 <請求項2記載の発明> 流動床式焼却炉からの排ガスの湿式処理を行う排ガス湿式処理装置と、 流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、前記湿式処理装置で処理された排ガスに混合する圧縮空気を加熱するための第2の予熱器と、 第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第2の過給機とを備える、 請求項1記載の廃棄物処理設備。 【0007】 (作用効果) 白煙防止処理がなされるとともに、第2予熱器に供給する圧縮空気を生成するためのブロアが不要となる。また、当該圧縮空気得るために電力不要の過給機を用いることとしたため、電力削減が達成される。 【0008】 <請求項3記載の発明> 流動床式焼却炉から排出される排ガスによる連続的なガス-ガス熱交換によって、第1の予熱器にて前記流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行い、 前記第1の予熱器より上流側に設けられたブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、 前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行うと共に、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第lのターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、 ことを特徴とする廃棄物処理方法。 【0009】 (作用効果) 請求項1記載の発明と同様の作用効果が得られる。 【0010】 <請求項4記載の発明> 前記排ガス湿式処理装置で処理された排ガスに対して加熱した圧縮空気を混合する白煙防止処理を行うにあたり、 この白煙防止処理に用いる圧縮空気の加熱を、流動床式焼却炉から排出される排ガスを熱源とする第2の予熱器を用いて連続的なガス-ガス熱交換により行ない、かつ、 前記第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気を第2の過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、 請求項3記載の廃棄物処理方法。 【0011】 (作用効果) 請求項2記載の発明と同様の作用効果が得られる。 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、流動床式焼却炉で発生する排ガスと熱交換を行った圧縮空気で過給機のタービンを回転させるとともにコンプレッサで圧縮空気を得る。そして、この圧縮空気を予熱器に供給する。従って、従来、当該圧縮空気の生成するためにブロアを要し、またこの運転のための電力を要していたところ、このブロア(電力)が不要となり、経済的に優れるシステムである。 また、既存の設備に過給機を設置するだけでよいため簡易に施工できる。さらには、従来の電力回収方法による省エネルギー化と異なり、発電設備などが不要で、小中規模設備においても、省エネルギーの効果を得ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、図面を参照して、本発明に係る汚泥処理設備および方法の一実施形態について説明する。 図1は、本発明に係る廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備1のブロック図である。この図において、符号2は気泡流動床炉(燃焼炉)、3は第1予熱器(熱交換器)、4は第1過給機(ターボチャージャー)、5は第2予熱器(熱交換器)、6は第2過給機(ターボチャージャー)、7は排ガス湿式処理装置、8は誘引ファン、9は排煙筒、10,11は始動用空気供給装置である。 【0014】 本廃棄物処理設備1は、例えば下水処理場において水分を多量に含有する汚泥等の廃棄物X1を燃料として燃焼させることによって処理するものである。なお、本実施形態における廃棄物処理設備1の気泡流動床炉2は、一日当り20?300t程度の廃棄物X1を処理する能力を有しており、本実施形態における廃棄物処理設備1は、このような廃棄物X1の処理能力が35t/日程度の小形流動床炉2に対してエネルギー効率が高いシステム構成を有している。 【0015】 気泡流動床炉2は、外部から供給された廃棄物X1及び必要に応じて供給される助燃燃料X2を燃料として燃焼を行うものである。この気泡流動床炉2は、下部から供給される圧縮空気X3’によって炉内の流動状態を維持することによって、連続的な廃棄物X1の燃焼処理を可能としたものである。 【0016】 なお、助燃燃料X2としては重油、灯油あるいは都市ガスや石炭等の可燃物質が挙げられるが、上記圧縮空気X3’の圧力及び温度が充分に高い場合や汚泥X1の保有エネルギーが高い場合には、助燃燃料X2を気泡流動床炉2に供給しなくとも廃棄物X1を連続的に燃焼させることが可能である。 【0017】 第1予熱器3は、気泡流動床炉2の後段に設けられており、気泡流動床炉2によって生成された排ガスX4と圧縮空気X3とを間接的に熱交換することによって、圧縮空気X3を所定の温度まで加温するものである。 【0018】 第1過給機4は第1予熱器3に連結されている。第1過給機4は、第1予熱器3を流通する排ガスX4との間接的な熱交換により加熱された圧縮空気X3’によって回転駆動されるタービン4b及び当該タービン4bの回転動力を伝達されることによって外気より圧縮空気X3を生成して第1予熱器3内に送気するコンプレッサ4aから構成されている。すなわち、第1過給機4の動力源となった圧縮空気X3’が燃焼用圧縮空気として気泡流動床炉2に供給される。ここで、本発明者らは、第1過給機4で圧縮した圧縮空気X3を第1予熱器3で予熱して得られる圧縮空気X3’によりタービン4bを回転させ、さらにこの動力源となった圧縮空気X3’を燃焼用空気として気泡流動床炉2に供給するサイクルが十分に成り立つことを知見している。なお、始動方法の一例としては、ブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置10から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、炉の昇温を行う。その過程で、過給機のコンプレッサ空気と燃焼空気との流路をバルブ等で切り換える。 【0019】 この第1過給機4としては、舶用のものを用いることが好ましい。これは、舶用の過給機が既に世の中に広く普及しており豊富な種類が用意されているためである。 【0020】 第2予熱器5は、第1予熱器の後段に設置され、第1予熱器を流通した排ガスX4が流通される。この排ガスX4と第2過給機6から送気される圧縮空気X5とが間接的に熱交換されて、当該圧縮空気X5の加熱が行なわれる。 【0021】 第2過給機6は第2予熱器5に連結されている。第2過給機6は、第2予熱器5を流通する排ガスX4との熱交換により加熱された圧縮空気X5’によって回転駆動されるタービン6b及び当該タービン6bの回転動力を伝達されることによって外気より圧縮空気X5を生成して第2予熱器5内に送気するコンプレッサ6aから構成されている。加熱された圧縮空気X5’は、後述の白煙防止用圧縮空気として利用される。ここで、本発明者らは、第2過給機6で圧縮した圧縮空気X5を第2予熱器5で予熱して得られる圧縮空気X5’によりタービン6bを回転させ、さらにこの動力源となった圧縮空気X5’を白煙防止用の圧縮空気として利用するサイクルが十分に成り立つことを知見している。 なお、始動方法の一例として、最初にブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置11から空気を第二予熱器5に供給する。第2過給機6からの圧縮空気X5は大気へ放風する。排ガスX4の温度が高くなった後、始動用空気供給装置11からの空気と第2過給機6からの圧縮空気X5とをバルブ等を使い切り換える。 【0022】 排ガス湿式処理装置7は、前記第2予熱器5の後段に設けられている。排ガス湿式処理装置は、燃焼ガスX4に、例えば水、アルカリ液などを噴射して排ガス中の硫黄成分等の有害成分等を洗浄処理するものである。散布液は、排ガス性状により適宜選択される。 【0023】 排ガス湿式処理装置7の後段には、排煙筒9が設けられている。排煙筒9から処理排ガスは最終的に大気開放される。 【0024】 排ガス湿式処理装置7から排煙筒9に続く管路の途中には、誘引ファン8が設けられている。この誘引ファン8により、排ガス湿式処理装置7から排煙筒9に処理排ガスX6を誘導される。なお、この誘引ファンは、必要ない場合もある。 【0025】 誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中には、前記第2過給機6のタービン6bから続く管路5Pが接続されている。排ガス湿式処理装置7では、高温の排ガスに対して液体を散布等するため、多量の蒸気が発生する。従って、処理したのちに処理済みガスをそのまま後段の排煙筒9に供給されると、排煙筒から白煙があがるが、本設備では第2過給機6の動作により得られる加熱された圧縮空気X5’が適宜、排煙筒9の前段で処理排ガスX6に対して混合されるので、処理排ガスX6が再加温されて白煙防止がなされる。なお、図示はしないが、圧縮空気X5’の混合比率等は管路5Pに設けたバルブおよびこの開閉を制御する適宜の制御装置を用いる。 【0026】 以上の本発明にかかる設備では、従来設備同様、燃焼用圧縮空気の生成および排ガスの白煙防止処理を行うが、いずれも電力を必要としない過給機を用いて生成する。従って、従来設備と比較して、経済的な廃棄物処理設備および廃棄物処理方法である。 【0027】 ここで、本設備の運転実施例を、1日あたり35t程度の下水汚泥を処理する廃棄物処理設備を例に示す。この規模の設備で第1予熱器に供給される排ガスの一般的な流量および温度から、第1過給機は0.12MPaG、流量2600m^(3)N/hの圧縮空気を第1予熱器に供給することができ、それとともに0.032MPaG、600℃の圧縮空気X3’を得ることができる。十分に過給機の運転ができるうえに、気泡焼却炉内に燃焼用圧縮空気を供給することが可能である。 【0028】 さらに、第2過給機は、0.036MPaG、4000m^(3)N/hの圧縮空気を第2予熱器に供給することが可能であり、0.003MPaG、温度300℃の圧縮空気を得ることが可能である。十分に過給機の運転が可能であるうえに、十分な温度および量の白煙防止用圧縮空気を得ることができる。 【0029】 同規模の処理能力の図2に示す従来設備では、燃焼用圧縮空気を得るためのブロアで概ね90kw、白煙防止用の圧縮空気を得るブロアで18.5kwを要している。 【0030】 してみると、本発明にかかる設備は、加圧式ではない気泡流動床炉でも過給機の運転が可能で適用可能であり、しかも、ブロアを用いる従来設備と比較して電力を要しない分、省エネルギー化が図られている。 【産業上の利用可能性】 【0031】 本発明は、流動床式焼却炉を用いた各種廃棄物処理に利用可能である。 【図面の簡単な説明】 【0032】 【図1】本発明に係る廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備のブロック図である。 【図2】従来の廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備のブロック図である。 【図3】従来の他の廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備のブロック図である。 【符号の説明】 【0033】 1…汚泥処理設備、2…気泡流動床炉、3…第1予熱器、4…第1過給機、4a…コンプレッサ、4b…タービン、5…第2予熱器、6…第2過給機、6a…コンプレッサ、6b…タービン、7…湿式排ガス処理装置、8,80…誘引ファン、9…排煙筒、20…焼却炉、30…予熱器、40…過給機、50…予熱器。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 流動床式焼却炉と、流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、 第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、 前記第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時に前記タービンを回転させるブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置とを、備え、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第lの過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える構成とした、 ことを特徴とする廃棄物処理設備。 【請求項2】 流動床式焼却炉からの排ガスの湿式処理を行う排ガス湿式処理装置と、 流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス-ガス熱交換により、前記湿式処理装置で処理された排ガスに混合する圧縮空気を加熱するための第2の予熱器と、 第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第2の過給機とを備える、 請求項1記載の廃棄物処理設備。 【請求項3】 流動床式焼却炉から排出される排ガスによる連続的なガス-ガス熱交換によって、第1の予熱器にて前記流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行い、 前記第1の予熱器より上流側に設けられたブロワ又は圧縮機からなる第1の始動用空気供給装置により、第1のターボ過給機のタービンの回転を始動させ、 前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気を、第1のターボ過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行うと共に、 前記第1の始動用空気供給装置から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、前記流動床式焼却炉の昇温を行い、その過程で、前記タービンの回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する、前記第lのターボ過給機のコンプレッサからの圧縮空気と前記燃焼用空気との流路をバルブで切り換える、 ことを特徴とする廃棄物処理方法。 【請求項4】 前記排ガス湿式処理装置で処理された排ガスに対して加熱した圧縮空気を混合する白煙防止処理を行うにあたり、 この白煙防止処理に用いる圧縮空気の加熱を、流動床式焼却炉から排出される排ガスを熱源とする第2の予熱器を用いて連続的なガス-ガス熱交換により行ない、かつ、 前記第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気を第2の過給機に供給して前記タービンを継続的に回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、 請求項3記載の廃棄物処理方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2019-06-20 |
結審通知日 | 2019-06-24 |
審決日 | 2019-07-31 |
出願番号 | 特願2005-365776(P2005-365776) |
審決分類 |
P
1
123・
853-
ZAA
(F23G)
P 1 123・ 855- ZAA (F23G) P 1 123・ 121- ZAA (F23G) P 1 123・ 857- ZAA (F23G) P 1 123・ 852- ZAA (F23G) P 1 123・ 851- ZAA (F23G) P 1 123・ 856- ZAA (F23G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 正浩 |
特許庁審判長 |
渋谷 善弘 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 水野 治彦 |
登録日 | 2011-09-30 |
登録番号 | 特許第4831309号(P4831309) |
発明の名称 | 廃棄物処理設備および廃棄物処理方法 |
代理人 | 特許業務法人永井国際特許事務所 |
代理人 | 小松 秀輝 |
代理人 | 加藤 和孝 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 加藤 和孝 |
代理人 | 特許業務法人永井国際特許事務所 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 加藤 和孝 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 永井 望 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 湯浅 正之 |
代理人 | 湯浅 正之 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 湯浅 正之 |
代理人 | 湯浅 正之 |
代理人 | 加藤 和孝 |
代理人 | 永井 望 |
代理人 | 永井 望 |
代理人 | 特許業務法人永井国際特許事務所 |
代理人 | 湯浅 正之 |
代理人 | 小曳 満昭 |
代理人 | 加藤 和孝 |
代理人 | 特許業務法人永井国際特許事務所 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 永井 望 |
代理人 | 永井 望 |
代理人 | 特許業務法人永井国際特許事務所 |