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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1356306 |
審判番号 | 不服2018-4510 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-04 |
確定日 | 2019-10-16 |
事件の表示 | 特願2016-182976「LTEアドバンスのためのアップリンク資源割り当て」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開,特開2017- 34694〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2010年(平成22年)10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年10月8日 米国,2009年10月27日 米国,2010年10月7日 米国)を国際出願日とする出願である特願2012-533358号の一部を,平成26年10月16日に新たな特許出願とした特願2014-211794号の一部を,平成28年9月20日に更に新たな特許出願としたものであって,平成28年10月19日に手続補正書が提出され,平成29年7月31日付けで拒絶理由が通知され,同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出され,同年12月1日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成30年4月4日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。その後,審査官が平成30年4月26日付けで作成した前置報告書に対して,同年7月9日に上申書が提出された。 第2 平成30年4月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年4月4日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正 本件補正は,平成29年11月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の 「ワイヤレス通信デバイスにおける方法であって, ダウンリンク制御チャネル内のダウンリンク制御情報(DCI)を受信することと,ここにおいて,前記ダウンリンク制御情報は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル又は連続アップリンク資源割り当てプロトコルによるアップリンク資源の割り当てを示し,前記示すことは,使用中の前記資源割り当てプロトコルを区別する少なくとも1ビットによる, 前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル及び前記連続アップリンク資源割り当てプロトコルのうちのいずれが示されているか検知することと,ここにおいて,前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,1つの資源ブロックグループの割り当て解による2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てを含み,前記割り当て解を有する前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成する全ての可能な方法が定義され,前記割り当て解は,資源ブロックの集合から前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成するための可能な組み合わせに関連しており,各資源ブロックグループのサイズはシステム帯域幅に依存しており,および 前記示されているアップリンク資源割り当てプロトコルに基づいて前記アップリンク資源を割り当てることと, を備える,方法。」 を 「ワイヤレス通信デバイスにおける方法であって, ダウンリンク制御チャネル内のダウンリンク制御情報(DCI)を受信することと,ここにおいて,前記ダウンリンク制御情報は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル又は連続アップリンク資源割り当てプロトコルによるアップリンク資源の割り当てを示し,前記示すことは,使用中の前記資源割り当てプロトコルを区別する少なくとも1ビットによる, 前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル及び前記連続アップリンク資源割り当てプロトコルのうちのいずれが示されているか検知することと,ここにおいて,前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせを含み,前記RBG割り当て解を有する前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成する全ての可能な方法が定義され,前記RBG割り当て解は,資源ブロックの集合から前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成するための可能な組み合わせに関連しており,各資源ブロックグループのサイズはシステム帯域幅に依存しており,および 前記示されているアップリンク資源割り当てプロトコルに基づいて前記アップリンク資源を割り当てることと, を備える,方法。」(下線は,補正箇所を示す。) に補正することを含むものである。 2 補正の適否 まず,新規事項の有無について検討する。 本件補正後の請求項1の「前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせを含み」との記載によれば,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解」及び「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解」の組み合わせを含むことになる。 このため,当該事項が当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものか否か検討する。 出願当初の明細書には,以下の記載(下線は当審が付与した。)がある。 「【0006】 LTEアドバンス(LTE-A)に関し,アップリンクコンポーネントキャリア上で非連続(すなわち,マルチクラスターの)資源割り当てがサポートされるべきであるということが提案されている。しかしながら,資源割り当てプロトコルは,まだ具体的に特定されていない。 (中略) 【0068】 上でみたように,PUSCH上の資源割り当てをサポートするLTE Rel-8のただ1つのDCIフォーマットは,DCIフォーマット0であり,フォーマット0の資源割り当てプロトコルは,連続資源割り当てに制限される。LTE-Aのアップリンク上の不連続の(すなわちクラスター化されている)資源割り当てをサポートするためには,新規の資源割り当てプロトコルが必要である。 (中略) 【0070】 もう1つの問題は,新規の資源割り当てと残存LTE Rel-8連続資源割り当てのサポートである。クラスター化アップリンク資源割り当て能力のあるUEの場合であってもなお,アップリンク資源割り当てに基づいてLTE Rel-8シングルキャリア波形をUEに分配することができることが望まれる。その理由は,連続資源割り当てが,優れたアップリンクCM(cubic-metric)特性を提供し,リンク予算制限のあるUEにとって有益であるからである。さらに,Rel-8資源割り当ての可能化は,1サブフレーム中の新規UE及び残存UE(これらは連続資源割り当てのみをサポートする)のスケジューリングを容易にする。したがって,クラスター化アップリンク資源割り当て能力のあるUEは,新規の資源割り当てプロトコル及びRel-8残存資源割り当てプロトコルによりダイナミックなやり方でスケジュールされることができなければならない。この2重スケジューリング能力は,2つの異なるDCIによって可能にされることができる。代替的に,使用中の資源割り当てプロトコルを区別する1ビットの単一のDCIによって,2つの資源割り当てプロトコルを伝えることもできる。 (中略) 【0073】 UL多重クラスター資源割り当て及びUL SU-MIMOをサポートするために新規DCIフォーマットを構成することについて,少なくとも2つのオプションがある。便宜上,新規DCIフォーマットをフォーマット0’(ゼロプライムと読む)と名付けておこう。1つのオプションでは,DCIフォーマット0’は,DCIフォーマット0に置き換わってもよく,その場合,それは,フォーマット0とフォーマット1Aを区別するためにRel-8で使用されるのと同じ1ビットのフラグによって,DCIフォーマット1Aから区別されることができる。もう1つのオプションでは,フォーマット0及び1Aを維持しながら,DCIフォーマット0’を付加してもよく,その場合,3つのフォーマットは,2ビットのフラグによって区別することができる。いずれのオプションにおいても,DCIフォーマット0’の多重クラスター資源割り当てがフォーマット0又はフォーマット1Aより多くのビット数を必要とする場合,後者のフォーマットは,DCIフォーマット0’のサイズと一致するようにゼロパッドがなされることができる。 (中略) 【0076】 以下の説明において,C(n,k)という表現(「n選択k」と読む)は,n個の要素の集合から反復なく選択されることができるk個の要素の組み合わせの数を表す関数n!/k!(n-k)!を提供する。例えば,長さ2から長さ10までのRBのあらゆる連続クラスターを定義するために10個のRBの集合から開始RB及び終了RB(2つのRB)を選ぶにはC(10,2)=45通りの方法がある。2つのクラスターを形成するすべての可能な方法を定義するために,10個のRBの集合から開始RB及び終了RBの2つの集合を選ぶにはC(10,4)=210通りの方法がある。反復(例えば,1ないしk-1の長さのグループを含めるために同じ要素を複数回選択すること)が許されると,可能な組み合わせの数は,C(n+1,k)で与えられる。 【0077】 1つの実施態様において,N個の資源ブロックを割り当てるDCIフォーマット0′のための設計は,多重クラスター(例えば,2クラスター)資源割り当てと,ホッピング組み合わせなしの単一クラスター資源割り当てと,及びホッピング組み合わせありの単一クラスター資源割り当てとのために,1RB解(1RBの割り当て解)を提供する。反復を許す組み合わせの合計数は,C(N_(RB) +1, 4) + 2*C(N_(RB) +1, 2)によって与えられる。表5は,6つのRB(1.4MHz)から100のRB(20MHz)までの帯域幅に必要とされる資源割り当てビットの対応数をリストしている。 (【表5】は省略。) 【0078】 別の実施態様において,DCIフォーマット0’のための設計は,周波数ホッピングあり及びなしのRel-8タイプの資源割り当て(単一クラスター)のために1RB割り当て解を提供し,及びLTE Rel-8 DL タイプ 0/1に対応するRBGサイズPの資源ブロックグループ(RBG)割り当て解を2クラスター割り当てのために提供する(N_(RB)<10の場合P=1,11<=N_(RB)<=26 RBの場合P=2,27<= N_(RB)<=63の場合P=3,及び64<=N_(RB)<=110 RB の場合P=4)。組み合わせの合計の数は,C[ceiling(N/P)+1, 4] + 2*C(N+1, 2)によって与えられる。表6は,6つのRBないし100のRBの帯域幅に必要とされる資源割り当てビットの対応数をリストしている。 (【表6】は省略。) 【0079】 別の実施形態において,LTE Rel-8 DCIフォーマット0と同じサイズのDCIフォーマット0’の設計は,周波数ホッピングあり及びなしの単一クラスター資源割り当てのために1RB割り当て解を提供し,またRBGサイズPがLTE Rel-8ダウンリンク割り当てサイズに結び付けられていないRBG割り当て解を2クラスター割り当てのために提供する。この実施形態における2クラスター資源割り当てに関し,RBGサイズPは,次のように定義されることができる:N_(RB)<10の場合P=2,11<=N_(RB)<=26RBの場合P=3,27<=N_(RB) <=63RBの場合P=4,64<=N_(RB) <=110RBの場合P=5である。組み合わせの合計数は,Pが再定義された上でのC[ceiling(N/P)+1, 4] + 2*C(N+1, 2)]によって再び与えられる。表7は,6つのRBないし100のRBまでの帯域幅について必要とされる資源割り当てビットの対応数をリストしている。 (【表7】は省略。) (中略) 【0091】 図7において,方法700は,ダウンリンク制御チャネル内のダウンリンク制御情報(DCI)を受信するオペレーション702に始まる。ここにおいて,ダウンリンク制御情報は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル又は連続アップリンク資源割り当てプロトコルによるアップリンク資源の割り当てを示すように構成されている。オペレーション704において,本方法は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル及び連続アップリンク資源割り当てプロトコルのうちのいずれが示されているか検知することにより継続する。オペレーション706において,本方法は,示されているアップリンク資源割り当てプロトコルに基づいてアップリンク資源を割り当てることにより終了する。」 これらの記載及び当業者の技術常識によれば,以下のことがいえる。 (i) 「単一クラスターの割り当て」,「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当て」,「1RB割り当て解」,「RBG割り当て解」について 上記【0068】,【0070】,【0078】の記載によれば,本件補正後の請求項1の「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解」なる記載における「単一クラスターの割り当て」は,「残存LTE Rel-8連続資源割り当て」と表現されている,連続資源割り当てを意味すると解される。そして,上記【0076】?【0079】の記載によれば,「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解」は,周波数ホッピングあり及びなしの場合を含み,その可能な組み合わせの数は 2*C(N+1, 2) で表されるものである。 また,上記【0006】,【0068】,【0070】,【0078】の記載によれば,本件補正後の請求項1の「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解」なる記載における「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当て」は,「新規の資源割り当て」,「クラスター化アップリンク資源割り当て」,「UL多重クラスター資源割り当て」と表現されている,アップリンク上の不連続の(すなわちクラスター化されている)資源割り当てを意味すると解される。そして,上記【0076】?【0079】の記載によれば,「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解」の可能な組み合わせの数は C[ceiling(N/P)+1, 4] で表されるものである。 ここで,本願明細書には「1RB割り当て解」,「RBG割り当て解」の定義が明らかにされていないが,その可能な組み合わせの数を示す上記数式に鑑みれば,資源割り当ての最小単位(粒度)がそれぞれ1RB,1RBGであることを意味すると解するのが相当である。そして,本願は外国語書面出願であるところ,外国語明細書における対応する記載はそれぞれ「1 RB resolution」,「RBG resolution」であり,「resolution」には「解像度」との意味があり,また,優先権主張の基礎となる米国特許出願61/249911号の明細書には「1 RB granularity」との表現も用いられていることとも,当該解釈は整合する。 (ii) 「連続アップリンク資源割り当てプロトコル」,「クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル」について 上記【0068】,【0070】,【0091】の記載及び技術常識によれば,本件補正後の請求項1の「連続アップリンク資源割り当てプロトコル」は,資源割り当ての最小単位が1RBである連続アップリンク資源割り当てを行うためのプロトコル(約束事)であり,本件補正後の請求項1の「クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル」は,資源割り当ての最小単位が1RBGである不連続の(すなわちクラスター化されている)アップリンク資源割り当てを行うためのプロトコル(約束事)であるといえる。 (iii) 「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせ」について 上記(i) のとおりであるから,本件補正後の請求項1の「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせ」は,資源割り当ての最小単位が1RBである連続アップリンク資源割り当ての全ての可能な場合(方法)と資源割り当ての最小単位が1RBGであるクラスター化アップリンク資源割り当ての全ての可能な場合(方法)の和を意味するものと解される。そして,上記【0076】?【0079】の記載によれば,当該組み合わせの合計数が C[ceiling(N/P)+1, 4] + 2*C(N+1, 2)] 等で表現されているといえる。そして,当該組み合わせを含むのは新規DCIフォーマットである「フォーマット0’(ゼロプライムと読む)」である。 上記(i)?(iii)を総合すると,「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせを含」むのは,フォーマット0’であって,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルではない。 そして,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルが「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解」及び「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解」の組み合わせを含むことは,出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されていない。 また,「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解」が「連続アップリンク資源割り当てプロトコル」によるアップリンク資源割り当てであり,「2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解」が「クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル」によるアップリンク資源割り当てであるから,「クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル」が「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせ」を含むことは技術的に矛盾していることが明らかである。 ここで,請求人は,平成30年7月9日に提出された上申書の「(3)理由2について」において,明細書の【0073】,【0078】には本件補正後の請求項1の「前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせを含み」との事項が記載されていると言い得る旨主張しているが,上述のとおり,【0073】,【0078】の記載はフォーマット0’についてのものであって,当該フォーマット0’はクラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルではないから,請求人の主張は採用できない。 したがって,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,「クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル」が「単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解と2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解の組み合わせを含む」という新たな技術的事項を導入するものである。 よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反する。 3 結語 以上のとおり,平成30年4月4日にされた手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年4月4日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?30に係る発明は,平成29年11月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?30に記載されたとおりものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「ワイヤレス通信デバイスにおける方法であって, ダウンリンク制御チャネル内のダウンリンク制御情報(DCI)を受信することと,ここにおいて,前記ダウンリンク制御情報は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル又は連続アップリンク資源割り当てプロトコルによるアップリンク資源の割り当てを示し,前記示すことは,使用中の前記資源割り当てプロトコルを区別する少なくとも1ビットによる, 前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル及び前記連続アップリンク資源割り当てプロトコルのうちのいずれが示されているか検知することと,ここにおいて,前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,1つの資源ブロックグループの割り当て解による2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てを含み,前記割り当て解を有する前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成する全ての可能な方法が定義され,前記割り当て解は,資源ブロックの集合から前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成するための可能な組み合わせに関連しており,各資源ブロックグループのサイズはシステム帯域幅に依存しており,および 前記示されているアップリンク資源割り当てプロトコルに基づいて前記アップリンク資源を割り当てることと, を備える,方法。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に対しては,ZTE,Uplink Non-contiguous Resource Allocation for LTE-Advanced[online],3GPP TSG-RAN WG1#58,3GPP,2009年 8月28日,R1-093205,検索日[2017.07.31],インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_58/Docs/R1-093205.zip>が引用されている。 3 引用発明 原査定の拒絶の理由で引用されたZTE,Uplink Non-contiguous Resource Allocation for LTE-Advanced(当審訳:LTE-アドバンストのためのアップリンクの不連続な資源の割り当て),3GPP TSG-RAN WG1#58,3GPP,2009年 8月28日,R1-093205,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_58/Docs/R1-093205.zip>(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「 」(1ページ8?23行) (当審訳: 1. 導入 RAN1#55bisでは,一つのコンポーネントキャリア中でアップリンクの不連続な資源割り当てがLTE Advancedでサポートされるであろうということが結論付けられた: ● コンポーネントキャリアごとに単一のDFTを用いた不連続なデータ伝送(CL-DFT-S-OFDM) ○ FFS:Rel-8 DLスキームに基づく資源の割り当て(割り当てタイプ0及び/又は1) ○ FFS:非MIMOのための,多くても1つの新しいDCIフォーマット。 アップリンクの不連続な資源の割り当てをサポートするために,いくつかの資源の割り当て(RA)タイプ/DCIフォーマットが,[1]-[3]で提案された。基本的には2つの異なる観点がある。ひとつは,LTE Rel-8 DLにおける資源の割り当てタイプ0及び/又は1を再使用することであり,これは,[1]に述べられるように,割り当てられたRBGを示すビットマップに基づくものであり,不連続な資源の割り当てに対して最大限のスケジューリングの柔軟さを可能とする。別の観点は,[2][3]にあるように,オーバーヘッドの低減を目的として,スケジュールされるクラスタの数及び/又はロケーション及び/又はサイズを制限する,全く新しい割り当てタイプを提案するものである。 本寄与において,我々は,このトピックに関する我々の見解を共有する。異なる資源の割り当てタイプ及び対応するRB割り当てフィールド([当審注]:引用例の1ページ21行の「filed」は,「field」の明らかな誤記と認める。)サイズ,DCIフォーマットのペイロードサイズ,PDCCHのブラインド検出,CM及びクラスタの数,といったいくつかの問題は,セクション2で解析され,評価される。セクション3では,より多くのオーバーヘッドの低減のため,修正されたRAタイプを示す。) イ 「 (中略) (中略) 」(1ページ24行?3ページ37行,及び4ページの表2) (当審訳: 2. 議論 2.1. 資源ブロック割り当てフィールドサイズ [1]-[3]で,LTE-A ULのための,3つの不連続なRAタイプ/DCIフォーマットが示された。それらはすべて,制御シグナリングオーバーヘッドを抑えるために,LTE Rel-8 DLにおけるRBGのコンセプトを利用するものである。 そして,LTEに従い,RBGサイズPは,5/10/15/20MHzの運用帯域幅にそれぞれ対応する2/3/4/4PRBである。異なるRAタイプは,異なるシグナリングオーバーヘッドを必要とし,これは資源ブロック割り当てフィールドサイズによって測られる。RAフィールド([当審注]:1ページ30行の「filed」は,「field」の明らかな誤記と認める。)を除き,新しいDCIフォーマット中の他の情報フィールドは全て,非MIMOケースのためのDCIフォーマット0と同じである。 RAタイプ1 タイプ1は,割り当てられたRBGを示すビットマップを使用する。RBGの粒度を除き,クラスターの数又はロケーション又はサイズについて,追加的な限定は無い。リソースブロック割り当てフィールドサイズは, N^(UL)_(RBG)=[N^(UL)_(RB)/P] (当審注:表記上の都合により,数式の「[ ]」は天井関数を示す。以下,同様。) ビットである。 RAタイプ2 図1に示されるように,不連続なPUSCH伝送は,1つのコンポーネントキャリア中,2クラスターに制限される。更に,それぞれのクラスターは,1つ又は2つのクラスタースパンに制限される。1つのUEに対して,それぞれのクラスターは,それぞれのスパン内での連続的な割り当てのためのツリーベースアプローチを用いた資源指示値(RIV)によって示される。 (中略) RAタイプ3 タイプ2と比較すると,タイプ3は,スケジュールされるクラスターの数を制限するが,スケジュールされるクラスターのロケーションを制限しない。各々のクラスターは,2つのロケーション,その始まり及び終わり,によって示される。図2に示されるように,2つのクラスターに対する資源の割り当ては,各々のクラスターの始まりと終わりとを識別するために4つのロケーションを示すことを必要とする。しかしながら,そのクラスターが1つだけのRBG,すなわち始まりと終わりがオーバーラップしている,を含むことを示すために,各々のクラスターに対して1つの仮想RBGが必要である。 資源ブロック割り当てフィールドサイズは, であるべきである。 (当審訳において,図2は省略。図2のタイトルの当審訳:図2-組み合わせのアプローチによるタイプ3の2クラスターの割り当て) ここで,表1において,RAタイプ1-3の資源ブロック割り当てフィールドサイズが,計算され,かつ,R8 DCIフォーマット0のそれと比較される。 (当審訳において,表1は省略。表1のタイトルの当審訳:表1-RB割り当てフィールドサイズ(ビット)) 注意すべきは,タイプ2及びタイプ3では,N^(HO)_(RB) によって決定されるPUCCH領域中の資源ブロックは,スケジュールされ得ない,ということであり,すなわち,タイプ1及びR8 DCIフォーマット0によるRAは,全体のアップリンク伝送帯域幅 N^(UL)_(RB) をアドレスできるのに対し,タイプ2及びタイプ3は,N^(PUSCH)_(RB)=N^(UL)_(RB)-N?^(HO)_(RB) (当審注:表記上の都合により,「N」の上に「?」が付された記号は「N?」と記す。以下,同様。) によって与えられるPUSCH PRBだけをアドレスする。 N?^(HO)_(RB) は, として定義され,ここで,パラメータpusch-HoppingOffset,N^(HO)_(RB),は,LTEにおいて,より上位のレイヤにより,0から98までの範囲で,提供される。 ゆえに,もし,タイプ2及びタイプ3が,N^(PUSCH)_(RB)=N^(UL)_(RB)-N?^(HO)_(RB) によって与えられるUL PRBをアドレスすることを意図しているのであれば,資源ブロック割り当てフィールドサイズは N^(HO)_(RB) とともに変動し,これは結果としていくらかの追加の複雑さをもたらす。 我々は,様々なRAフィールドサイズを避けるため,N^(HO)_(RB) のためのUL PRBの固定の小数,例えば[2][3]における N?^(HO)_(RB)=0.2×N^(UL)_(RB) ,を仮定することができるけれども,これは,スケジューリング範囲を狭めるものであり,かつ,N^(HO)_(RB) はコンフィギャラブルであるというLTEの合意に合致するものではなく,並びに,特にPUSCH周波数ホッピングでないケースでは,パラメータN^(HO)_(RB) は使用されず,PUSCH伝送は,eNBのスケジューラに依存するN^(HO)_(RB) によって決定されるPUCCH領域でスケジュールされる。 しかしながら,もし,タイプ2/3が,全体のアップリンク伝送帯域幅N^(UL)_(RB) (不連続なRAアドレス全体か,それとも,UL帯域幅N^(UL)_(RB) の一部かは,FFSである)をアドレスすることを必要としているのであれば,資源ブロック割り当てフィールドサイズ,又は,RBGサイズのどちらかが,増やされるべきである(例えば,表1のタイプ3*を参照されたい。)。 2.2 DCIフォーマットペイロードサイズ,及び,PDCCHのブラインド検出 PUSCH PRBのみをアドレスすること(及び,タイプ2における資源ブロック割り当てフィールドを拡張するためのFHビットを用いること)によって,タイプ2及びタイプ3 RAのためのDCIフォーマットのサイズは,R8 DCIフォーマット0のそれと同等であり,これは,R8 DCIフォーマット0が再利用可能であり,これによって余分なブラインド検出が避けられることを示す。 しかしながら,連続的な/不連続な伝送の区別のために,1つのフラグビットが提供されなければならない。ゆえに,資源ブロック割り当てフィールド(当審注:3ページ19行の「filed」は,「field」の明らかな誤記と認める。)を拡張するためにFHビットが用いられると仮定すると,R8 DCIフォーマット0を再利用するために,表1によれば,タイプ3 RAのためのDCIフォーマット0においては余分なビットを必要としないのに対し,タイプ2 RAのためのR8 DCIフォーマット0において1つのさらなるパディング/スペアビットが,また,タイプ3* RAのための2つのさらなるパディング/スペアビットが,存在しなければならない。 LTEでは,DCIフォーマット0,1A,3及び3Aは,同じペイロードサイズを有するべきである。もし,DCIフォーマット0における情報ビットの数が,DCIフォーマット1Aのペイロードサイズ(フォーマット1Aに追加されたいかなるパディングビットも含む)よりも少ないのであれば,表2に示されているように,ペイロードサイズがDCIフォーマット1Aのそれと等しくなるまで,ゼロが追加されなければならない。そして,DCIフォーマット0中のパディングビット(もし存在すれば(当審注:3ページ25行の「exits」は,「exists」の明らかな誤記と認める。))が,1又は複数のクラスターで伝送が行われるかどうかを示すために用いられ得る。 注意すべきは,もし,ULグラントによりアドレスされるアップリンク伝送帯域幅が,DL割り当てによってアドレスされるダウンリンク伝送帯域幅よりも大きい場合(このシナリオはいまだにペンディングである),フォーマット0に,パディングビットは追加されないであろうことである。このようなケースにおいて,新しいDCIフォーマットのペイロードサイズは,それがDCIフォーマット0と区別できることを保証するように修正される必要があり,すなわち,DCIフォーマット0に,連続的な及び不連続なRAを区別するための,使われていない/スペアビットがなければ,16回の更なるブラインド検出をもたらし得る。 キャリアアグリゲーションについて,DCIフォーマット0/1Aのペイロードサイズは,UE UL/DLコンポーネントキャリアセットからの,最大のコンポーネントキャリアの帯域幅によって,決定されるようにみえる。もし,UE DLコンポーネントキャリアセットからの,最大のコンポーネントキャリアの帯域幅が,常に,UE ULコンポーネントキャリアセットからのそれよりも少なくない場合は,DCIフォーマット0中に少なくとも1つのパディングビットが存在する(当審注:3ページ35行の「exits」は「exists」の明らかな誤記と認める。)。 まとめると,R8 DCIフォーマット0は,アドレスされるべきアップリンク資源のサイズ,及びDCIフォーマット0のパディング/スペアビットの数次第では,不連続なタイプ2/3 RAによって再利用可能である。 (中略) (当審訳において,表2は省略。表2のタイトルの当審訳:DCIフォーマット0/1Aのペイロードサイズ(ビット)) ) ウ 「 」(4ページの下から4行?5ページ12行,及び,表5) (当審訳: 3. 修正されたRAタイプ3 クラスタの数を制限しようとするときは,タイプ2と比較して,低いオーバーヘッド,適度なコーディング/デコーディングの複雑さ,及び,少ないスケジューリングの制限から,タイプ3が好ましい。このセクションでは,オーバーヘッドをより低減するため,タイプ3に対する小さな修正を示す。 不連続な資源の割り当てにおいて,一のクラスターは,連続するPRB/RBGのかたまりとして定義され,周波数ドメインで他の任意のクラスターから離れている。そのため,図3(a)に示されているような,任意のRBG割り当て状態は望ましくなく,かつ,不連続なRAにとって意味がない。しかしながら,図3(b)に示されるように,このような種類の状態は,最後以外のあるクラスターが,1つだけのRBGを含むことを示すために用いることができ,すなわち,そのような1つだけのRBGを含むクラスターは,次のクラスターの始まりのRBG位置のすぐ前のRBG位置にある,クラスタの終わりの位置をシグナリングすることによって,示される。そして,いくつのクラスターが存在するかにかかわらず,最後のクラスターが,1つだけのRBGを含んでいることを示すために,図3(c)に表されたグレーのブロックによって示される仮想RBGが1つだけ必要である。 (当審訳において,図3は省略。図3のタイトルの当審訳:図3-組み合わせアプローチによるタイプ3の2クラスターの割り当ての修正) 資源ブロック割当フィールドサイズは, に変わる。 タイプ3及びタイプ4(修正されたタイプ3)に基づくRB割り当てフィールド(当審注:5ページ9行の「filed」は「field」の明らかな誤記と認める。)サイズは,表5で示される。この修正が,全体のアップリンク伝送帯域幅N^(UL)_(RB) をアドレッシングする(即ち,タイプ3*及びタイプ4*)ときに,5MHz及び20MHzにおいて1つのさらなるビットの節約を提供するものである,ということが分かる。FHビットは別にして,R8 DCIフォーマット0において1パディング/スペアビットを利用可能であるとすれば,タイプ4*は,DCIフォーマット0を再利用可能であるが,タイプ3*はできない。 (当審訳において,表5は省略。表5のタイトルの当審訳:表5-RB割り当てフィールドサイズ(ビット)) ) エ 「 」(5ページの下から6行?6ページ4行) (当審訳: 4. 結論 本寄与では,アップリンクの不連続な資源の割り当てについてのいくつかの問題を議論し,修正RAタイプを示した。上記の分析から,我々は,不連続なUL RAのために,シグナリングオーバーヘッドの低減,ブラインド検出の増加の回避,スケジューリングの柔軟性,及びCMの特性を,まとめて考慮した。 ブラインド検出及びCM特性の観点からみて,2クラスターに限定した不連続なRAで,R8 DCIフォーマット0を再利用することは考慮に値すべきものであるものの,DCIフォーマット0において,不連続なRAフィールドを,又は,不連続的と連続的との間のRAを区別するフラグを,提供するには,十分なパディング/スペアビットがないことに起因するいくつかのケースにおいてR8 DCIフォーマット0は不連続なRAタイプ2/3/4によって再利用できないことも,考察された。もし,LTE-Aが,それらのケースを排除することを期待されていないのであれば,LTE-A ULの不連続なRAに対してフルスケジューリングフレキシビリティを許容する,LTE Rel-8 DLタイプ0又は1 RAを採用することが素直なやり方である。) 本願の最先の優先日当時の移動体通信の分野における技術常識も踏まえてみれば,上記ア?エの記載から,以下の(ア)?(オ)がいえる。 (ア)引用例には,上記イにおける「2.2」のタイトルにあるように,PDCCHのブラインド検出について記載されているところ,当該PDCCHがDCIの伝送に用いられるものであることは当業者にとって明らかである。 また,引用例には,UEに対して,それぞれのクラスターは,資源指示値(RIV)によって示されることが記載されている(上記イにおける「RAタイプ2」の項目を参照)ところ,RIVはDCIの資源割り当てフィールドで伝送される値であることは技術常識であるから,DCIは,UEによって受け取られることも明らかである。 そうすると,引用例には,UEが,PDCCHをブラインド検出することを通じて,PDCCH内のDCIを受信することが記載されているといえる。 (イ)引用例は,そのタイトルにおいて「アップリンクの不連続な資源の割り当て」とあるように,「アップリンク」資源を割り当てることを主眼にしたものである。 また,引用例には, 上記イの「2.2」の項目の第2段落で,連続的な/不連続な伝送の区別のために,1つのフラグビット(a flag bit)が提供されなければならないことが記載され, 同第4段落で,DCIフォーマット0に,連続的な及び不連続なRAを区別するための,使われていない/スペアビットがなければ,16回の更なるブラインド検出をもたらし得ることが記載されており,またそれに加えて, 上記エにおける「4. 結論」の項目では,不連続的と連続的との間のRAを区別するフラグを提供するための,十分なパディング/スペアビットがないことに起因するいくつかのケースについての記載がある。 また,上記「連続的な及び不連続なRA」における「RA」が,資源の割り当て(Resource Allocation)を意味することは明らかである(上記アにおける「1.」の項目の第2段落にも「resource allocation (RA)」という記載がある。)。 そうすると,DCIがスペアのビットなどを通じて提供しなければならないとされる1つのフラグビットは,連続的な資源の割り当てと不連続な資源の割り当てとを区別するためのものといえる。 さらに,1つのフラグビットが区別しようとしている上記「不連続な資源の割り当て」が,上記イにおける図2や上記ウにおける図3で例示されているような「2つのクラスターに対する資源の割り当て」(上記イにおける「RAタイプ3」の項目の第1段落)を指していることは明らかである。 これらのことから,引用例に記載されたDCIは,連続的なアップリンク資源の割り当てと2つのクラスターに対するアップリンク資源の割り当てとを区別する1つのフラグビットを提供するものといえる。 (ウ)引用例には,「図2に示されるように,2つのクラスターに対する資源の割り当ては,各々のクラスターの始まりと終わりとを識別するために4つのロケーションを示すことを必要とする。しかしながら,このクラスターが1つだけのRBG,すなわち始まりと終わりがオーバーラップしている,を含むことを示すために,各々のクラスターに対して1つの仮想RBGが必要である。」(上記イにおける「RAタイプ3」の項目の第1段落)という記載があるから,上記イにおける図2や,上記ウにおける図3において“Start”や“End”として指し示されている矩形のブロックのそれぞれは,1つの「RBG」すなわち資源ブロックグループであり,また上記「4つのロケーション」が,始まりと終わりの資源ブロックグループを識別していることは明らかである。 そうすると,上記「2つのクラスターに対するアップリンク資源の割り当て」(上記(イ)を参照)は,各々のクラスターの始まりの資源ブロックグループと終わりの資源ブロックグループを識別するために4つのロケーションを示すことを含むといえる。 (エ)上記イの「RAタイプ3」の項目で示されている図2のタイトルには,「組み合わせのアプローチによる」(by combinatorial approach)とあることから,上記(ウ)で指摘した上記「4つのロケーション」は,組み合わせのアプローチにより求めることができるといえる。 また,上記「RAタイプ3」の項目には,「資源ブロック割り当てフィールドサイズは, であるべきである」(同項目の第2段落)と記載されているところ,当該記載における N^(PUSCH)_(RBG) が,PUSCH領域の帯域幅,すなわちアップリンクの帯域幅の一部,を資源ブロックグループの数で表現したものであるのに対し,N^(UL)_(RBG) が,アップリンクの帯域幅全体を表現していることは明らかであることや,図2で示されている割り当ての具体例を考慮すれば,当該記載における二項係数 (当審注:表記上の都合により,以下,「(N^(UL)_(RBG)+2 4)」と記す。) が,全体のアップリンクの資源ブロックグループに2個の仮想RBG(図2の点線で囲まれた資源ブロックグループ)を加えたものの中から,4つのロケーション(4個の資源ブロックグループ)を選ぶときの全ての組み合わせの数を表していることは,明らかである。 同様に,図3で示されている割り当ての具体例を考慮すると,上記ウにおける「3.修正されたRAタイプ3」の項目の「資源ブロック割り当てフィールドサイズは, に変わる」(同項目の図3の直後にある段落)という記載における,二項係数 (当審注:表記上の都合により,以下,「(N^(UL)_(RBG)+1 4)」と記す。) が,全体のアップリンクの資源ブロックグループに,「グレーのブロック」(同項目の第2段落)によって示される1つの仮想RBGを加えたものの中から,4つのロケーション(4個の資源ブロックグループ)を選ぶときの全ての組み合わせの数を表していることも,明らかである。 これらのことから,上記「4つのロケーション」を選ぶときの全ての組み合わせの数は,(N^(UL)_(RBG)+2 4)又は(N^(UL)_(RBG)+1 4)で表されているといえる。 また,そのような場合,資源ブロック割り当てフィールドサイズは, [log_(2)(N^(UL)_(RBG)+2 4)]又は[log_(2)(N^(UL)_(RBG)+1 4)]ビットとなるべきものと解されるところ,このフィールドサイズについての式は,上記「全ての組み合わせの数」を識別できるために必要なサイズ(ビット数)を示したものであることは明らかである。そうすると,DCIの資源ブロック割り当てフィールドが,上記全ての組み合わせの数を識別できるサイズを有し,かつ,上記全ての組み合わせのうち,いずれの組み合わせが選択されたのかを示していることも,当業者にとって明らかである。 (オ)引用例には,「RBGサイズPは,5/10/15/20MHzの運用帯域幅にそれぞれ対応する2/3/4/4PRBである」(上記イにおける「2.1.」の項目)と記載されているところ,上記イにおける表1や,上記ウにおける表5にそれぞれ示されている「P」が,上記記載における「RBGサイズP」を意味していることは明らかである。 以上を総合すると,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「UEにおける方法であって, PDCCH内のDCIを受信すること,ここにおいて,前記DCIは,2つのクラスターに対するアップリンク資源の割り当てと,連続的なアップリンク資源の割り当てとを区別する1つのフラグビットを提供し, 前記2つのクラスターに対するアップリンク資源の割り当ては,各々のクラスターの始まりの資源ブロックグループと終わりの資源ブロックグループを識別するために4つのロケーションを示すことを含み,前記4つのロケーションを選ぶときの全ての組み合わせの数が,(N^(UL)_(RBG)+2 4)又は(N^(UL)_(RBG)+1 4)で表され,前記DCIの資源ブロック割り当てフィールドが,上記全ての組み合わせの数を識別できるサイズを有し,かつ,上記全ての組み合わせのうち,いずれの組み合わせが選択されたのかを示し,RBGサイズPは,5/10/15/20MHzの運用帯域幅にそれぞれ対応する2/3/4/4PRBである を備える,方法。」 4 対比 以下,本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「UE」,「PDCCH」,「DCI」,「RBGサイズP」,及び「運用帯域幅」は,本願発明の「ワイヤレス通信デバイス」,「ダウンリンク制御チャネル」,「ダウンリンク制御情報(DCI)」,「資源ブロックグループのサイズ」,及び「システム帯域幅」に,それぞれ相当する。 (2)引用発明において1つのフラグビットが区別しようとしている「2つのクラスターに対するアップリンク資源の割り当て」及び「連続的なアップリンク資源の割り当て」は,いずれも,通信を行うことができるように資源の割り当て方について装置間であらかじめ決めた約束事に基づく割り当てに他ならないから,本願発明における「クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル」によるアップリンク資源の割り当て,及び,「連続アップリンク資源割り当てプロトコル」によるアップリンク資源の割り当てと,それぞれ表現が異なるだけで実質的な差異はない。 また,引用発明の「DCIが提供する1つのフラグビット」は,別のDCIが使用する資源の割り当てを区別するのではなく,当該フラグビットを提供するDCI自身が使用中の資源の割り当てを区別するものである。ここで,資源割り当てを区別することは,結局,資源の割り当て方(プロトコル)を区別しているのと同義である。 そうすると,本願発明と引用発明は,「前記ダウンリンク制御情報は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル又は連続アップリンク資源割り当てプロトコルによるアップリンク資源の割り当てを示し,前記示すことは,使用中の前記資源割り当てプロトコルを区別する少なくとも1ビットによる,」という点で一致する。 (3)引用発明の「前記2つのクラスターに対するアップリンク資源の割り当ては,各々のクラスターの始まりの資源ブロックグループと終わりの資源ブロックグループを識別するために4つのロケーションを示すことを含み」は,資源割り当ての最小単位が資源ブロックグループ(1RBG)であるクラスター化アップリンク資源割り当てに含まれ,当該割り当てを行うための約束事をプロトコルと称するのは任意である。 そうすると,本願発明と引用発明は,「前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,1つの資源ブロックグループの割り当て解による2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てを含」む,という点で一致する。 (4)引用発明の「DCIの資源ブロック割り当てフィールド」は,割り当てを示す「4つのロケーション」を選ぶときの全ての組み合わせの数を識別できるサイズを有するものであるところ,当該「4つのロケーション」を選ぶときの全ての組み合わせ(すなわち,2つのクラスターを形成するための可能な組み合わせ)の数は,(N^(UL)_(RBG)+2 4)又は(N^(UL)_(RBG)+1 4)で表されるものであるから,資源ブロック割り当てフィールドが取り得る値の数,すなわち上記「全ての組み合わせの数」だけ,2つのクラスターを形成する方法が存在し,また,その「全ての組み合わせの数」は,上記の二項係数によって明確に定められている。 そうすると,本願発明と引用発明は,「前記割り当て解を有する前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成する全ての可能な方法が定義され,前記割り当て解は,資源ブロックの集合から前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成するための可能な組み合わせに関連しており,」といえる点で一致する。 (5)引用発明は「RBGサイズPは,5/10/15/20MHzの運用帯域幅にそれぞれ対応する2/3/4/4PRBである」から,本願発明と同様,「各資源ブロックグループのサイズはシステム帯域幅に依存」しているといえる。 上記(1)?(5)のとおりであるから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 [一致点] 「ワイヤレス通信デバイスにおける方法であって, ダウンリンク制御チャネル内のダウンリンク制御情報(DCI)を受信することと,ここにおいて,前記ダウンリンク制御情報は,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル又は連続アップリンク資源割り当てプロトコルによるアップリンク資源の割り当てを示し,前記示すことは,使用中の前記資源割り当てプロトコルを区別する少なくとも1ビットによる, 前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,1つの資源ブロックグループの割り当て解による2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てを含み,前記割り当て解を有する前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成する全ての可能な方法が定義され,前記割り当て解は,資源ブロックの集合から前記2つ又はそれ以上のクラスターを形成するための可能な組み合わせに関連しており,各資源ブロックグループのサイズはシステム帯域幅に依存している, を備える,方法。」 [相違点] 本願発明は,「前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル及び前記連続アップリンク資源割り当てプロトコルのうちのいずれが示されているか検知すること」,及び,「前記示されているアップリンク資源割り当てプロトコルに基づいて前記アップリンク資源を割り当てること」を備えるのに対し, 引用発明は,そのようなことを備えるかどうか明示がない点。 5 当審の判断 上記相違点について検討すると,引用発明は,UEが,PDCCH内のDCIを受信することを備える方法であるところ,当該UEが,受信したDCIが使用している資源割り当てプロトコルを特定できなければ,アップリンク資源の割り当てを受けられないことは当然のことである。 そうすると,引用発明において,UEが,DCIを受信した後,当該DCIが提供する1ビット(1つのフラグビット)に基づき,クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコル及び前記連続アップリンク資源割り当てプロトコルのうちのいずれが示されているかを検知すること,及び,前記示されているアップリンク資源割り当てプロトコルに基づいてアップリンク資源を割り当てることは,いずれも,アップリンク資源の割り当てを受けることができるようにするために,当業者であれば容易になし得ることである。 また上記相違点を考慮しても,本願発明の奏する作用,効果は,引用発明の奏する作用,効果から予測される範囲内のものに過ぎず,格別顕著なものということはできない。 (なお,請求人は平成30年7月9日に提出した上申書において補正案を提示しているが,当該補正案の請求項1は, (i) 本願発明の「割り当て解」を,「RBG割り当て解」と表記し, (ii) 本願発明の「前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,1つの資源ブロックグループの割り当て解による2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てを含み」を,「前記クラスター化アップリンク資源割り当てプロトコルは,2つ又はそれ以上のクラスターの割り当てのための資源ブロックグループ(RBG)割り当て解を含み」と表記し, (iii) 「前記連続アップリンク資源割り当てプロトコルは,単一クラスターの割り当てのための1RB割り当て解を備え,」なる事項を追加したものである。 しかしながら,上記(i),(ii)の点は,単なる表記の整理に過ぎず,実質的に何等限定を加えるものではない。また,上記(iii)の点は,技術常識に照らして本願発明の「連続アップリンク資源割り当てプロトコル」が当然に有している事項を明記したに過ぎないから,本願発明に対して何等新たな技術的特徴を加えるものではない。 したがって,補正案の請求項1に係る発明は,本願発明に対する上記理由と同様の理由で,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,当該補正案は採用できない。) 6 まとめ 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-05-13 |
結審通知日 | 2019-05-14 |
審決日 | 2019-05-31 |
出願番号 | 特願2016-182976(P2016-182976) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊東 和重 |
特許庁審判長 |
岩間 直純 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 菅原 道晴 |
発明の名称 | LTEアドバンスのためのアップリンク資源割り当て |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 中丸 慶洋 |
代理人 | 井関 守三 |